【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、血行促進作用を有する発熱具による関節痛等の予防、改善等の効果を促進すべく鋭意検討した結果、発熱組成物が収容された区画における単位面積当たりの発熱組成物の重量、及び発熱組成物が収容された区画の面積をそれぞれ特定の範囲に設定することにより、使用初期の柔軟性が高く、発熱部が身体にフィットし、使用後期には発熱部が硬化して身体を効果的に固定でき、関節痛等の予防、改善等の効果を高めることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものである。すなわち、本発明は下記項1〜9の発熱具、治療方法及び当該発熱具の使用に関する。
【0009】
項1. 身体に取り付けられる発熱具であって、
空気と接触することにより発熱する発熱組成物が区画に封入された発熱部と、
前記発熱部に取り付けられ、伸展性を有する材料で形成された少なくとも一つのバンド部と、
を備えており、
前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量は0.11〜0.94g/cm
2であり、
前記各区画の面積は15〜150cm
2である、発熱具。
項2. 前記発熱部は、一つの適用部位に対して、1個又は2〜4個の隣接した前記区画を有している、項1に記載の発熱具。
項3. 前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量は0.15〜0.71g/cm
2であり、
前記各区画の面積は24〜117cm
2である、項1又は2に記載の発熱具。
項4. 前記バンド部は、150%伸張させるのに必要な力が115N以下の伸展度である項1〜3のいずれかに記載の発熱具。
項5. 手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部、腰部のいずれかに適用される、項1〜4のいずれかに記載の発熱具。
項6. 関節痛又は腰痛の治療用である、項1〜5のいずれかに記載の発熱具。
項7. 手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部又は腰部を覆うことによって関節痛又は腰痛を治療するための、項1〜6のいずれかに記載の発熱具。
項8. 項1〜7のいずれかに記載の発熱具で手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部又は腰部を覆い、発熱組成物の酸化に従い硬化した発熱体部で関節又は腰を固定することにより関節痛又は腰痛を治療する方法。
項9. 項1〜7のいずれかに記載の発熱具の、関節痛又は腰痛の治療具の製造のための使用。
【0010】
本発明の発熱具は、身体に取り付けられる発熱具であって、
空気と接触することにより発熱する発熱組成物が区画に封入された発熱部と、
前記発熱部に取り付けられ、伸展性を有する材料で形成された少なくとも一つのバンド部と、
を備えており、
前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量は0.11〜0.94g/cm
2であり、
前記各区画の面積は15〜150cm
2である、
ことを特徴する。
【0011】
以下、本発明の発熱具の具体的構成について詳述する。
【0012】
1.発熱部
発熱部は、空気と接触することにより発熱する発熱組成物が1又は2以上の区画に封入されたものである。具体的には、発熱部は、後述のシート1(身体に接触させる層)とシート2(身体に接触させない層)との間に発熱組成物がはさみ込まれており、発熱組成物が区分けして封入(封止)されている。
【0013】
前記発熱部の形状は、身体に好適に密着できる形状であればよいが、例えば、前記区画を長手方向に配置できる矩形状が好ましい。
【0014】
前記発熱部の大きさは、適用部位の大きさに応じて適宜設定すればよい。例えば、手首、足首に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが5〜32cm程度であり、短手方向の長さが3〜20cm程度であることが好ましい。
【0015】
膝に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましい。
【0016】
腰に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましい。
【0017】
首に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが10〜30cm程度であり、短手方向の長さが3〜10cm程度であることが好ましい。
【0018】
肘に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが10〜30cm程度であり、短手方向の長さが5〜10cm程度であることが好ましい。
【0019】
指に使用し、前記発熱部が矩形状である場合、長手方向の長さが5〜15cm程度であり、短手方向の長さが3〜10cm程度であることが好ましい。
【0020】
1−1.区画
発熱部において、前記発熱組成物が封入された区画の数は、発熱具の適用部位によって異なるが、一つの適用部位に対して、通常1個又は2〜4個の隣接した前記区画を有していることが好ましい。例えば、適用部位が手首又は足首である場合には、前記区画の数は1個又は2個が好ましく、2個が特に好ましい。適用部位が膝である場合は、前記区画の数は1個又は2個が好ましく、2個が特に好ましい。適用部位が腰である場合は、前記区画の数は2個又は4個が好ましく、4個が特に好ましい。適用部位が首である場合は、前記区画の数は1又は2個が好ましく、2個が特に好ましい。適用部位が肘である場合は、前記区画の数は1又は2個が好ましく、2個が特に好ましい。適用部位が指である場合は、前記区画の数は2個又は4個が好ましく、4個が特に好ましい。
【0021】
このように、発熱組成物が封入された区画の数を少なくすると、後述の区画の面積及び発熱組成物の単位面積あたりの重量に設定することによる適用部位の動きの制限効果をより高めることができる。したがって、痛みの予防・回復効果を促進することができる。
【0022】
また、本発明の発熱具は、発熱部の各区画に発熱組成物が封入(封止)されているので、例えば後述の試験例6に示されるように、サポーターの収容袋にカイロを入れた発熱具のように収容袋の中で発熱体が動くこと無く、使用後期にも適用部位に発熱体を確実にフィットさせることができる。
【0023】
さらに、本発明の発熱具は、バンドによってサイズを調整できるので、発熱体を備えたサポーターのようなあらかじめ決められたサイズの発熱具よりも、使用者の関節や腰の大きさに応じて適用部位に無理なく巻き付けることができるという効果も奏する。
【0024】
各区画の形状は、特に限定されず、適用部位の形状に応じて適宜選択できる。例えば、矩形、円形、楕円形等が挙げられる。
【0025】
また、各区画の大きさは、前記区画の面積の範囲内となるように設定すればよく、例えば、前記発熱部が矩形状の区画を長手方向に配置させた矩形物である場合、区画の縦(発熱部の短手方向)の長さは、3〜12cm程度が好ましく、5〜10cm程度がより好ましい。また、区画の横(発熱部の長手方向)の長さは、5〜20cm程度が好ましく、5〜15cm程度がより好ましい。
【0026】
各区画間の距離は、特に限定されず、発熱部の大きさ等に応じて適宜設定すればよいが0.5〜20cm程度が好ましく、0.5〜10cm程度がより好ましい。ここで、各区画間の距離とは、最も近接する区画同士を隔てた領域の最短の距離である。
【0027】
本発明の発熱具は、前記の通り、前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量は0.11〜0.94g/cm
2であり、かつ、前記各区画の面積が15〜150cm
2である。使用初期の使用感、及び使用後期の適用部位が無理な動きをするのを防止する効果の観点から、前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量が0.15〜0.71g/cm
2、かつ、前記各区画の面積が24〜117cm
2であることがより好ましく、前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量が0.20〜0.60g/cm
2、かつ、前記各区画の面積が32〜80cm
2であることが特に好ましい。
【0028】
なお、本発明において、前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量は、各区画に封入された発熱組成物の重量(g)を発熱部内に設けられた区画において身体と接触する側の面積(cm
2)で除した値である。
【0029】
また、本発明において、使用初期とは、発熱組成物と空気と接触させて使用を開始した時から発熱組成物がある程度硬化するまでの期間をいう。なお、発熱組成物が発熱を開始してから発熱が終了する迄の時間(発熱時間)は、発熱具の形状及び単位面積当たりの発熱組成物の重量によって様々であるが、使用初期とは、例えば、発熱組成物と空気とを接触させて使用を開始した時から発熱組成物が発熱を終了するまでの時間の前半1/3〜1/2程度の時間以内(例えば、発熱時間が12時間の製品であれば、使用初期とは約0〜4時間から約0〜6時間)をいう。
【0030】
また、使用後期とは、発熱組成物がある程度硬化してから発熱反応がほぼ終了し、温熱効果が得られなくなるまでの期間をいう。発熱時間は発熱具の形状及び単位面積当たりの発熱組成物の重量によって様々であるが、使用後期とは、例えば、発熱組成物と空気とを接触させて使用を開始した時から発熱組成物が発熱を終了するまでの時間の後半1/3〜1/2程度の時間以上(例えば、発熱時間が12時間の製品であれば、使用後期とは約8〜12時間から約6〜12時間の間)をいう。
【0031】
本発明の発熱組成物が封入された区画の厚みは、発熱組成物が均一に封入された状態で測定した時、通常3〜15mm程度、好ましくは3〜10mm程度、より好ましくは3〜7mm程度である。
【0032】
1−2.シート1(身体に接触させる層)
シート1としては、特に限定されず、カイロの包剤として一般的に使用されているフィルム又はシートであれば良く、単層又は積層のフィルム又はシートが、単独で又は織布もしくは不織布などと組み合わせて用いられる。シート1は、伸縮性又は非伸縮性の何れであってもよく、通気性又は非通気性のいずれであってもよい。
【0033】
なお、本発明でいう「非伸縮性」とは、どのような力を作用させても全く伸縮しないことを示しているのではなく、伸展性のあるバンド部よりも伸縮性が小さいものであってもよい。また、「通気性」とは、気体が通過できればよいものであり、また、透湿性を有するものであってもよい。
【0034】
シート1のフィルム又はシートを構成する樹脂としては、一般に熱可塑性合成樹脂等が使用される。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、塩酸ゴム等が単独で又は組み合わせで好的に用いられる。特にフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンが好ましい。
【0035】
シート1を積層のフィルム又はシートとする場合は、通常はラミネート法によって行われるがそれに限らない。ラミネートは従来公知の任意の方法を適用することができる。例えば、熱接合あるいはホットメルト接着剤又はアクリル系もしくはウレタン系接着剤等の接着剤で積層する方法でもよく、又は全面接合であっても、柔軟性を保つために部分接合であってもよい。
【0036】
上記フィルム又はシートと積層されてもよい不織布としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹等の天然繊維を含むものが上げられる。フィルム又はシートと不織布とを積層する場合、不織布としては、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、不織布の目付けは20〜100g/m
2程度とすればよい。
【0037】
1−3.シート2(身体に接触しない層)
シート2としては、全面的に通気性を有するフィルム又はシートであればよく、一般に単層若しくは積層の多孔質フィルム又はシートが、単独で、又は織布もしくは不織布などと組み合わせて用いられる。シート2は、伸縮性、非伸縮性の何れであってもよい。
【0038】
シート2の通気性は、一般的なカイロに使用される通気性フィルム又はシートと同様であればよく、例えば、JIS K7129に規定されているA法によって測定した値が、208〜610g/m
2・day程度であればよい。
【0039】
シート2のフィルムまたはシートを構成する樹脂としては、一般に熱可塑性合成樹脂等が使用される。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、塩酸ゴム等が単独又は組み合わせで用いられている。特にフィルムまたはシートを構成する樹脂としては、ポリエチレンが望ましい。
【0040】
通気性フィルム又はシートとしては、延伸フィルム、好ましくは延伸された多孔質フィルム又はこれらを含むシートが好適に使用される。延伸多孔質フィルムは、一般に炭酸カルシウムなどの無機質充填剤を含み、延伸によって孔が形成されることにより通気性が再現するが、この孔径を制御することにより通気度が制御できる。好ましいのは、オレフィン系(特にポリエチレン系)延伸多孔質積層フィルム、及びそれと不織布との複合シートである。
【0041】
積層の多孔質フィルム又はシートの積層は、通常はラミネート法によって行われるがそれに限らない。ラミネート法は従来公知の任意の方法を適用することができる。例えば、熱接合あるいはホットメルト接着剤又はアクリル系もしくはウレタン系接着剤の接着剤で積層する方法でもよく、また全面接合であっても、柔軟性を保つために部分接合であってもよい。
【0042】
上記フィルム又はシートと積層されてもよい不織布としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹等の天然繊維を含むものが上げられる。不織布の目付けは好ましくは20〜100g/m
2程度である。
【0043】
1−4.発熱組成物
前記袋に封入する発熱組成物としては、空気と接触することにより発熱するものであればよい。特に、本発明では、前記発熱組成物として、鉄粉、保水剤、金属塩及び水を含む組成物を使用することが好ましい。
【0044】
前記発熱組成物中における鉄粉、保水剤、金属塩及び水の合計質量は、80〜100質量%程度が好ましい。
【0045】
以下、鉄粉、保水剤、金属塩及び水を含む発熱組成物を代表例として、前記発熱組成物について具体的に説明する。
【0046】
1−4−1.鉄粉
鉄粉が空気中の酸素と反応して発熱することにより、本発明の発熱体は温熱効果を発揮できる。
【0047】
前記鉄粉としては、還元鉄、鋳鉄等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
前記鉄粉の形状としては、粒状、繊維状等が挙げられる。これらの形状の鉄粉を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
粒状の鉄粉の粒径は、通常10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度である。
【0050】
なお、本明細書に記載の粒径は、測定対象となる試料(鉄粉等)100gを、700μm、650μm、500μm、400μm、300μm、250μm、100μm、50μm、10μmの篩を上から順に設けた電動振動篩機にかけ、15分間振動させた後、各篩に残った量及び通過した量を測定することにより算出できる。
【0051】
前記発熱組成物中における前記鉄粉の含有量は、30〜80質量%程度が好ましく、45〜65質量%程度がより好ましい。
【0052】
1−4−2.保水剤
本発明において、保水剤とは、水を保持する機能を有する物質である。保水剤としては、多孔質物質、吸水性樹脂等が挙げられる。
【0053】
保水剤として使用される多孔質物質としては、具体的には、活性炭、木粉、パーライト、バーミキュライト、ヒル石等が挙げられる。
【0054】
活性炭は、表面の微孔に空気を取り込んで酸素の供給を促したり、熱を保って放熱温度がばらつかないように保温することができる。活性炭は内部構造が非常に多孔性であり、そのため特に良好な水保持能を与える。さらに、活性炭は水を良く吸収するのみならず、発熱組成物の熱の発生により蒸発される水蒸気も吸収し、水蒸気の逃げの防止を助ける。従って、活性炭は水保持物質としても役立つことができる。さらに、活性炭は鉄粉の酸化により生ずる臭いも吸収することができる。前記活性炭としては、例えば、ココナツの殻、木材、木炭、石炭、骨炭等から調製された活性炭を好適に使用できる。前記活性炭の形状としては、粒状、繊維状等が挙げられる。これらの形状の活性炭を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。特に、本発明では、粒状の活性炭を使用することが好ましい。粒状の活性炭を使用する場合、その粒径は、10〜300μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましい。当該粒径の測定方法については、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。
【0055】
木粉、パーライト、バーミキュライト、及びヒル石についても、水を保持できる限り、その形状については特に制限されないが、発熱具の使用感を高めるために、粒状のものが好ましい。木粉、パーライト、バーミキュライト、及びヒル石について、粒状のものを使用する場合、その粒径は、通常300μm程度以下、好ましくは250μm程度以下である。当該粒径の測定方法についても、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。
【0056】
これらの多孔質物質の中でも、好ましくは、活性炭、ヒル石、バーミキュライトであり、更に好ましくは活性炭及びヒル石、特に好ましくは活性炭である。これらの多孔質物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
また、保水剤として使用される吸水性樹脂としては、具体的には、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール−アクリル酸共重合体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体、ポリアクリル酸塩架橋物、アクリル酸塩−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合体、ポリアクリルニトリル酸塩架橋物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂の中でも、好適なものとして、ポリアクリル酸塩架橋物が挙げられる。吸水性樹脂の粒径は、通常100〜500μm程度、好ましくは250〜400μm程度である。当該粒径の測定方法については、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。
【0058】
これらの吸水性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
保水剤は、多孔質物質及び吸水性樹脂のいずれか一方を使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。発熱組成物に使用される保水剤として、好ましくは、多孔質物質、多孔質物質と吸水性樹脂の組合せ;更に好ましくは活性炭、活性炭と他の多孔質物質(活性炭以外の多孔質物質)と吸水性樹脂の組合せ;より好ましくは活性炭とヒル石とポリアクリル酸塩架橋物の組合せが例示される。
【0060】
前記発熱組成物中における前記保水剤の含量は、2〜30質量%程度が好ましく、5〜20質量%程度がより好ましい。より具体的には、前記保水剤として、多孔質物質を単独で使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、10〜30質量%が好ましく、10〜20質量%程度がより好ましい。また、前記保水剤として、吸水性樹脂を単独で使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、2〜10質量%が好ましく、2〜7質量%程度がより好ましい。また、前記保水剤として、多孔質物質と吸水性樹脂を組み合わせて使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、多孔質物質5〜20質量%、吸水性樹脂1〜10質量%が好ましく、多孔質物質7〜20質量%、吸水性樹脂1〜5質量%がより好ましい。特に、保水剤として、活性炭と他の多孔質物質と吸水性樹脂の組合せを使用する場合であれば、活性炭3〜20質量%、他の多孔質物質1〜10質量%、吸水性樹脂1〜10質量%が好ましく、活性炭5〜15質量%、他の多孔質物質1〜5質量%、吸水性樹脂1〜5質量%がより好ましい。
【0061】
1−4−3.金属塩
金属塩は、空気との酸化反応を容易にするために、鉄粉の表面を活性化させて、鉄の酸化反応を促進させることができる。
【0062】
前記金属塩としては、公知の発熱組成物に使用されている金属塩を使用すればよい。前記金属塩としては、例えば、硫酸第二鉄、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;塩化第二銅、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、塩化第一銅等の塩化物等が挙げられる。また、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩及び他の塩も使用することができる。これら金属塩については、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0063】
前記金属塩の粒径は、通常100〜700μm程度、好ましくは250〜650μm程度である。
【0064】
発熱組成物中における前記金属塩の含有量は、0.5〜10質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。
【0065】
1−4−4.水
水としては、例えば、蒸留水、水道水等を使用できる。発熱組成物中における前記水の含有量は、1〜40質量%程度が好ましく、20〜30質量%程度がより好ましい。
【0066】
1−4−5.各成分の混合
前記各成分を混合することにより、前記発熱組成物を調製することができる。混合は、必要に応じて、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。例えば、米国特許第4,649,895号に記載された方法に従って混合すればよい。
【0067】
1−5.発熱部の作製方法
前記発熱部は、前記発熱組成物が各区画に封入されるように、前記シート1と前記シート2とを接着させることにより得られる。前記シート1及び前記シート2として、それぞれ前記積層体を用いる場合、それぞれの積層体を構成する不織布が外側(封入される発熱組成物と接触する面と反対側)になるように、前記シート1及び前記シート2同士を接着させる。このとき、発熱組成物を含む各区画が形成されるように、各区画以外の全領域を接着させる。例えば、
図1〜3の発熱部1の区画2以外の領域において、前記シート1及び前記シート2同士は接着している。
【0068】
また、発熱部には、
図3に示すように、各区画の間に貫通孔5を有していてもよい。例えば、本発明の発熱具を膝に装着する場合であれば、貫通孔5を設けておくことで、膝頭が貫通孔5に進入し、膝関節への装着性を向上させることができる。その他の関節部について使用する場合も、貫通孔を有していてもよいし、有しなくてもよい。
【0069】
なお、
図3では、貫通孔5が記載されているが、貫通孔5は無くてもよい。また、
図1及び2においては、貫通孔は記載されていないが、各区画間に貫通孔が存在していてもよい。貫通孔の数は、通常1個であるが、2個以上存在していてもよい。
【0070】
接着方法としては、特に限定されず、例えば、上記樹脂成分を用いて接着させる方法や熱圧着により接着させる方法を採用できる。
【0071】
2.バンド部
前記バンド部は、前記発熱部に取り付けられ、伸展性を有する材料で形成されたものである。該バンド部を身体に巻き付けることにより、前記発熱部を身体(患者であれば患部)に支持し、発熱部を身体に接触させた状態を維持させることができる。本発明の発熱具は、
図1に示すように、バンド部3の一端部に発熱部1が連結されたものである。なお、
図1では、発熱部1の一端部のみに前記バンド部3が連結されているが、
図2のように、発熱部1の対向する両端部に前記バンド部3が連結されてもよい。また、
図3のように、一端部に2つ以上の前記バンド部が連結されていてもよい。すなわち、前記発熱部の一端部に、一対の前記バンド部が間隔をおいて平行に連結されていてもよい。
【0072】
連結方法としては、特に限定されず、例えば、公知の接着剤で接着させる方法、糸で固定する方法、超音波を利用して溶着させる方法等が挙げられる。また、
図1〜3に示すように、前記バンド部3の他端部には、前記発熱部を身体に接触させた状態を維持させるために、前記発熱部及び/又は前記バンド部との接着力に優れた接着部4が通常設けられる。前記接着部4としては、例えば、マジックテープ(登録商標)が挙げられる。
【0073】
前記バンド部の大きさは、特に制限はなく、適用部位の大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0074】
例えば、発熱具の適用部位が手首、足首である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが5〜32cm程度であり、短手方向の長さが3〜20cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが10〜20cm程度であり、短手方向の長さが5〜12cm程度であることがより好ましい。
【0075】
また、発熱具の適用部位が膝である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが20〜30cm程度であり、短手方向の長さが10〜17cm程度であることがより好ましい。
【0076】
さらに、発熱具の適用部位が腰である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが20〜30cm程度であり、短手方向の長さが10〜17cm程度であることがより好ましい。
【0077】
発熱具の適用部位が首である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが20〜30cm程度であり、短手方向の長さが10〜17cm程度であることがより好ましい。
【0078】
また、発熱具の適用部位が肘である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが10〜50cm程度であり、短手方向の長さが5〜20cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが20〜30cm程度であり、短手方向の長さが10〜17cm程度であることがより好ましい。
【0079】
さらに、発熱具の適用部位が指である場合は、前記バンド部の長手方向の長さが3〜15cm程度であり、短手方向の長さが3〜10cm程度であることが好ましく、長手方向の長さが3〜10cm程度であり、短手方向の長さが3〜5cm程度であることがより好ましい。
【0080】
バンド部の長手方向及び短手方向の長さがこれらの範囲内にある場合、前記発熱部を身体に好適に接触させることができる。
【0081】
前記バンド部の伸長率は、該バンド部が前記発熱部を包囲して該発熱部を身体に接触させた状態を好適に維持できる範囲内にあればよく特に限定されない。一方、バンド部の伸展性が低すぎると発熱体は関節部にフィットしない。よって、例えば、バンド部を150%伸張させるのに必要な力は通常115N以下、好ましくは0.3N〜115N、より好ましくは0.3N〜102Nである。
【0082】
なお、本発明において、バンド部を150%伸張させるのに必要な力は、バンドを100mm×50mmにカットし、これを引張り試験機(AGS-H島津製作所製)により、長手方向に引っ張ったとき、150%伸張させるのに必要な力(N)を測定した値である。
【0083】
前記バンド部は、一定の伸展性を有する帯状のものであればよく具体的構成については特に限定されないが、天然繊維もしくは合成繊維の不織布又は織布が好ましく、通気孔を複数有するものがより好ましい。また、バンド部の厚みは、通常0.1〜1mm程度、好ましくは0.5〜1mm程度である。
【0084】
市販品としては、例えば商品名「Optiflex」(Golden Phoenix Fiberwebs Inc.製)が挙げられる。
【0085】
前記バンド部の透気度は、前記通気孔の孔径により決定される。例えば、前記バンド部に針、レーザー、放電加工等により微細な孔を穿設して前記透気度を調整すればよい。
【0086】
前記バンド部は、前記通気孔の合計面積が、前記バンド部の面積の3〜8%程度が好ましく、4〜6%程度がより好ましい。前記数値は、50mm×50mmの前記バンド部上の通気孔の数を目視により数え、その数に孔の面積(半径0.5mm)をかけた値を2500mm
2で割ることにより求めることができる。
【0087】
3.前記発熱具の使用態様
本発明の発熱具を構成する前記発熱部(発熱組成物)は空気下で発熱するため、通常、前記発熱具を、空気を通過させない包装体に入れ密封した状態で流通させる。
【0088】
本発明の発熱具は、発熱部が肌に直接接触することを特徴とする。また、本発明の発熱具は、前記の通り、発熱部とバンド部とが連結され、一体となったものである。本発明の発熱具は、発熱部を身体に接触させることにより、身体に温熱効果を与える。その際、前記発熱部は、バンド部によって適用部位に固定されるため、本発明の発熱具は、使用初期においても患部(装着部位)からずれにくい。また、本発明の発熱具は、通常、38〜42℃程度の温度を保持できる。
【0089】
なお、本明細書において、「温熱効果」とは、発熱することにより患部を温めることを言う。温熱効果により、例えば、患部の血液循環を改善したり、患部の組織の老廃物を除去するとともに患部の修復を促進させることができる。前記温熱効果によって患部は38〜42℃程度、好ましくは39〜41℃程度に温められる。
【0090】
前記発熱部は、例えば
図4に示すように、身体を軸にして前記帯状部を巻回させることにより固定される。
【0091】
従って、本発明の発熱具は、手首、足首、膝、首、肘、指、腰等の疾患や症状を改善できる。さらに、本発明の発熱具は、治療後にリハビリを行うための器具として好適に使用できる。なお、本発明の発熱具は、温熱効果に優れているため、治療やリハビリに限らず、体を温めるためのカイロとしても好適に使用できる。
【0092】
また、本発明の発熱具は、前記各区画に収納された発熱組成物の単位面積あたりの重量及び前記各区画の面積が上記特定の範囲内にあることにより、使用初期には、発熱部が柔軟性を有するため、身体の適用部位(例えば、手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部、腰部等)の形状にフィットした状態で発熱体が適用部位を覆い、使用感がよく、適用部位の血行を効果的に促進することができる。
【0093】
さらに、本発明においては、発熱組成物を収容した各区画の単位面積あたりの重量及び面積が上記の範囲内にあることにより、使用後期において、適用部位の形状にフィットした状態で発熱体が硬化し、適用部位の動きを制限することによって、温熱効果に加えて、適用部位を固定することによる保護効果(ギブスをしているような効果)により、関節痛等の予防・治療効果がより促進される。
【0094】
本発明は、上記の発熱具で手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部、腰部等を覆うことによって、関節痛等を治療するための発熱具、治療具として好適に使用できる。すなわち、本発明の発熱具を用いて関節痛、腰痛等の治療をすることができる(治療方法)。特に、使用後期には、発熱体が関節等の形状に沿って硬化するため、該発熱具で手首関節部、足首関節部、膝関節部、首部、肘部、指関節部又は腰部を覆い、発熱組成物の酸化に従い硬化した発熱体部で関節等を固定することにより関節痛等を治療するための発熱具、治療具として好適に使用でき、該発熱具を用いて関節痛、腰痛等の治療をすることができる(治療方法)。