(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、発光素子の模式断面図においては、説明の便宜上、各層を基板に対して実状とは異なる比率で誇張して示す。なお、
図1は
図2のI−I断面である。
【0025】
本発明の一実施形態である半導体発光素子100は、
図1に示すとおり、基板101上に、バッファ層102と、半導体積層体106と、コンタクト層107とオーミック電極層108とが積層してなるコンタクト部109と、をこの順に有している。
【0026】
半導体積層体106は、第1伝導型の半導体層としてのp型半導体層105と、発光層104と、第1伝導型とは異なる第2伝導型の半導体層としてのn型半導体層103とからなる。本実施形態では、バッファ層102側からn型半導体層103、発光層104、p型半導体層105の順に形成される。
【0027】
第1電極としてのp型電極113は、
図1および
図2に示すように、コンタクト部109、より厳密にはオーミック電極層108の一部上に位置し、オーミック電極層108に接し、コンタクト部109を介してp型半導体層105と電気的に接続されている。第2電極としてのn側電極112は、半導体積層体106のn型半導体層103側に形成される。n側電極112は、n型半導体層103と電気的に接続されている。
図1では、その一例として、半導体発光素子100の一部の領域においてコンタクト部109および半導体積層体106の一部を除去して、n型半導体層103の表面を露出させ、露出したn型半導体層103上にn型電極112を設ける、典型的な「ラテラル(lateral)型」発光素子を模式的に示す。
【0028】
基板101としては、半導体積層体106のエピタキシャル成長の温度に耐性のある基板を用いるのが好ましく、例えばサファイア基板や、AlN単結晶層をサファイアなどの基板上に形成したAlNテンプレートが使用できる。
【0029】
バッファ層102は、MOCVD法、MOVPE法、HVPE法、MBE法などの既知の手法を用いて基板101上にエピタキシャル成長させる。例えば、厚さ20〜1500nm、好ましくは500〜1500nm、より好ましくは800〜1000nmのAlN層や複数のAlGaN層による積層体を用いることができる。バッファ層102は、基板101とn型半導体層103との歪緩衝層として機能する。また、バッファ層102は組成傾斜層や超格子歪緩衝層を含むこともできる。
【0030】
n型半導体層103およびp型半導体層105は、Al
xGa
1−xN材料(0<x≦1)を、MOCVD法など既知の手法を用いてエピタキシャル成長させることにより形成することができる。なお、所望の発光波長での吸収が問題にならないのであれば、III族元素として、B、Inが含まれていても良く、V族元素として、Asが含まれていても良い。p型不純物としては、Be、Mg、n型不純物としては、Si、Geが例示できる。
【0031】
発光層104は、例えばAlInGaN/AlInGaNの多重量子井戸構造を挙げることができる。これは、MOCVD法などにより成長させて形成することができる。発光層104は、発光中心波長が380nm以下の紫外光や、495nm以下の可視光(青色、紫色)などを発することが可能な、比較的広いバンドギャップを有する材料とすることができる。紫外光を発する発光層104の場合、例えばGaN(x=0)層を通過する際に吸収が起こり、発光中心波長に対する透過率が50%以下となる、発光中心波長が380nm以下の紫外光を発する発光層とすることができ、GaN層をほぼ透過しない発光中心波長が365nm以下の紫外光を発する発光層とすることができ、さらには、発光中心波長が350nm以下の紫外光を発する発光層とすることができる。なお、AlInGaN/AlInGaNの多重量子井戸構造の場合、発光波長は主に井戸層のAl組成比で制御することができる。
【0032】
各層の厚みは、例えばn型半導体層103は1000〜5000nm、発光層104は10〜100nm、p型半導体層105は50〜300nmとすることができる。
【0033】
ここで、コンタクト部109について説明する。
【0034】
まず、p型のコンタクト層107をp型半導体層105上にエピタキシャル成長させる。コンタクト層107は、低抵抗なp型伝導が得られ、p側電極113との接触抵抗がp型半導体層105よりも低い層である。さらに、コンタクト層はp型半導体層105と格子整合がよく、p型半導体層105上にエピタキシャル成長可能な格子定数を有することが好ましい。
【0035】
コンタクト層107のバンドギャップは、発光層104のバンドギャップよりも狭い場合に、本発明の効果が非常に大きい。この場合、発光層104から発した光のコンタクト層107による吸収の問題が顕著に生じるためである。
【0036】
半導体積層体106が例えばIII族窒化物半導体からなる場合、コンタクト層107のAl組成は、発光層よりもバンドギャップが狭くなる組成、または、発光層からの発光中心波長に対する透過率が50%未満となる組成である場合に本発明の効果が非常に大きい。コンタクト層107のAl組成は、組成式をAl
xGa
1−xNとした場合、発光波長にもよるが、例えば0≦x<0.5とすることが好ましく、0≦x≦0.05がより好ましい。この場合コンタクト層107は、Al含有量が少ない、または、Alを含まないため、p型半導体層105との格子整合が良く、また、p側電極113との接触抵抗がp型半導体層105よりも十分に低いからである。すなわち、x<0.5とすれば、キャリア密度が大幅に減少することがなく好ましく、x≦0.05とすれば、GaNと同様に低いコンタクト抵抗を得ることが容易であるためより好ましい。なお、発光中心波長が350nm以下の紫外光を発する発光層の場合、コンタクト層をx=0.05とした場合であっても、コンタクト層による光の吸収が大きい。なお、コンタクト層はInなど他の同族元素を少量含んでいてもよい。
【0037】
次に、p側のオーミック電極層108を、p型コンタクト層107上に形成する。オーミック電極層108は、p型コンタクト層107とのオーミック接触を形成するのに適した、接触抵抗の低い層とする。例えば、Ni、Co、ITO、Pt等の金属とAu、Rhなどの金属との組み合わせによるオーミック電極層が好ましい。また、p側オーミック電極層108は、p側電極113と金属接合ができることが必要である。
【0038】
コンタクト部109を構成するコンタクト層107およびオーミック電極層108は、いずれも発光層104で発生する光を吸収するものである。なお、コンタクト部109は該光の一部を吸収し一部を透過または反射させてもよいが、発光中心波長に対し50%以上吸収する場合に本発明の効果が得られやすい。
【0039】
ここで、本発明の特徴的構成は、
図1および
図2に示すように、コンタクト部109が、p型半導体層105が露出する島状の開口部111を有することである。p型半導体層105上の開口部111では、発光層104で発生した光が、コンタクト部109を構成するコンタクト層107およびオーミック電極層108に吸収されることがない。そのため、開口部111から光を外部に有効に取り出すことができる。一方で、p型半導体層105上のコンタクト部109を形成した領域では、p型半導体層105とp側電極113とは、オーミック電極層108およびコンタクト層107を介して良好なオーミック接触を得ることが出来る。このように本発明では、コンタクト部109に開口部111を設けたことにより、コンタクト部による光吸収の抑制と、電極と半導体層との良好なオーミック接触との両立を図ることができる。その結果、順方向電圧をさほど上昇させることなく、発光出力を向上させることが可能となる。
【0040】
また、本発明ではコンタクト部109の中に島状の、すなわち孤立した開口部111が存在する構成なので、孤立したコンタクト部を形成せず、
図2に示すように、コンタクト部109の全体がp側電極113と電気的に接続されている状態を実現しうる。よって、p側電極113の直下の半導体積層体のみならず、コンタクト部109の位置する領域およびその近傍の下方の半導体積層体にも十分に電流を流すことができる。これが発光効率の向上につながる。
【0041】
p側電極113の位置は、p側電極113がコンタクト部109のオーミック電極層108の一部と接触していれば、特に
図2には限定されない。
【0042】
本発明は、本実施形態のように、第1伝導型半導体層すなわち開口部から露出する半導体層がp型半導体層であると効果的である。p型半導体層105は、n型半導体層に比べて層内を電流が広がりにくいため、コンタクト部109をp側電極113直下のみならず、p型半導体層105上のなるべく広い範囲に延在させることが好ましいためである。つまり、p型半導体層105上の全面にコンタクト部109を形成し、その一部を開口部111とすることにより、より広い範囲で発光を得つつ、発光効率をより高めることが可能となる。
【0043】
また、開口部から露出する半導体層がp型半導体層である場合、
図2に示すように、複数の開口部111がp型半導体層105上に分散している、すなわち、素子上面から見たときに、開口部111がその面全体に分散して分布していることが好ましい。その結果、コンタクト部109もp型半導体層105上全体に敷設することになり、p側電極113から供給される電流を、p型半導体層105の全体に供給できるからである。
【0044】
素子上面から見たコンタクト部109中の開口部111の配置パターンは特に限定されず、
図2の模式図に例示するような規則的なパターンで形成してもよいし、
図5のようなランダムなパターンで形成してもよい。
【0045】
素子上面から見た開口部の形状は特に限定されないが、
図5のように不均一である、すなわち、複数の開口部の形状は規則性が無く不揃いであることが好ましい。p型半導体層105の一部の側面が開口部111の側面としてコンタクト部109下に存在するため、開口部111が不均一な形状であれば、上面からみたp型半導体層105の露出面積が同じ(開口率が同じ)であっても開口部の側面の面積を含めたp型半導体層105の合計露出面積が大きくなることから開口部111からの光取り出し効率が向上する。
【0046】
ここで、良好なオーミック接触と高い光取り出し効率との両立を十分に得る観点から、p型半導体層105上のコンタクト部109を設けた面積をS1とし、開口部111の総和の面積をS2としたとき、開口率(S2/(S1+S2))は0.05〜0.65の範囲であることが好ましく、0.2〜0.4の範囲がさらに好ましい。開口率が0.05以上であれば、開口部による光取り出し向上の効果が確実に得られ、開口部の割合が0.65以下であれば、コンタクト部111が不連続となる箇所が発生しにくく、十分なオーミック接触を得ることができるからである。
【0047】
n側電極112としては、n型半導体103との接触抵抗が低いという理由から、例えば真空蒸着法によりTi含有膜およびAl含有膜を順次蒸着させたTi/Al電極を用いることができる。p側電極113としては、p型半導体層105との接触抵抗が低いという理由から、例えば真空蒸着法によりNi含有膜およびAu含有膜を順次蒸着させたNi/Au電極、およびNi/Pt電極を用いることができる。
【0048】
これまで、本発明における第1伝導型をp型、第2伝導型をn型として、III族窒化物半導体発光素子100を説明したが、本発明はこれに限定されず、第1伝導型をn型、第2伝導型をp型としても良いことは勿論である。この場合、オーミック電極層108の材料としては、n型半導体層であるn−AlGaNと比較的良好なオーミック接触を形成するTi/Al、Mo/Al、などの金属とすることが好ましい。
【0049】
次に、半導体発光素子100の製造方法の一例を、
図3を用いて説明する。まず、
図3(A)に示すように、例えばMOCVD法を用いて、基板101上にバッファ層102を形成する。次に、
図3(B)に示すように、例えばMOCVD法を用いて、バッファ層102上に第2伝導型であるn型の半導体層103、発光層104、および第2伝導型とは異なる第1伝導型であるp型の半導体層105、p型のコンタクト層107を順にエピタキシャル成長させて、半導体積層体106およびp型のコンタクト層107を形成する。次に、
図3(C)に示すように、p型のコンタクト層107上にp側のオーミック電極層108を順に積層し、コンタクト部109を形成する。p側オーミック電極層は、スパッタ法、真空蒸着法などにより製膜することができる。p側オーミック電極層形成後、アニール工程を行うことが好ましい。
【0050】
次に、
図3(D)および(E)に示すように、コンタクト部109上の一部、厳密にはオーミック電極層108上の一部にマスク110を形成する。まず、マスク材料の層を全面に形成し(
図3(D))、その後、この層をパターニングする(
図3(E))。これは、次工程でコンタクト層107およびオーミック電極層108を部分的にエッチングする際、マスク110の下部のエッチングを防ぐためである。このマスク110の形状により、コンタクト部109および開口部111の形状が決まる。そのため、マスク110は上面視で、矩形または円形などの所定またはランダム形状の開口部が不規則または規則的に点在する形状となるように形成する。
【0051】
マスク110のパターン形成方法は特に限定されず、マスク材料の層をオーミック電極108上の全面に形成し、フォトリソグラフ法を用いてそのマスク材料の層上にレジストパターンを形成して、露出したマスク材料層部分のみエッチングすることにより、フォトマスクと同じパターンを有するマスクを形成することができる。
【0052】
このようなフォトマスクを用いる一般的手法では、任意のフォトマスクを用いることで所望のパターンのマスク110が得られるという利点がある。しかし、開口部は微細であるほど、露出したp型半導体層105上で電気が流れ易いため好ましいところ、設計上の制限からフォトマスクパターン幅を1〜2μm以下にして微細な開口形状を形成することは困難であり、また、工程が煩雑である。
【0053】
本発明者らは、フォトリソグラフ法を用いない効果的なマスク形成工程を開発した。このマスク形成工程は、酸素雰囲気下の金属蒸着により、コンタクト部109の全面上に金属酸化膜110を形成する工程と、この金属酸化膜110を部分的にエッチングする工程と、を有する。このマスク形成工程に用いる金属としては、後のエッチング用のマスクとして用いることができ、さらにフォトマスクを用いることなく不均一な複数の開口部を形成できるものであればどのような金属を用いてもよいが、例えばアルミニウムが好ましい。本発明者らは、酸素雰囲気下のアルミニウム蒸着により形成したアルミニウム酸化膜は、フォトマスクを用いることなく、単にウェットエッチング環境下にさらすのみで、部分的にエッチングされ、寸法および形状が不均一な複数の微細な形状の開口部がオーミック電極層108上に分散したパターンのマスク110(
図3(E))を形成できることを見出した。微細な開口部とは例えば幅が2μm以下の開口部である。
【0054】
特定の条件の酸素雰囲気下のアルミニウム蒸着により形成したアルミニウム酸化膜は、面内の酸素濃度が不均一であり、ドライエッチング用のマスクとして利用できる酸化アルミニウム(Al
2O
3)以外に、部分的にアルミニウムまたは酸化数の異なるアルミニウム酸化物が形成されると考えられる。このことに起因して、面内でのエッチング性の相違が発生するためであると考えられる。この方法で作製したマスクを用いて形成すると、不規則で微細かつ不均一な形状の開口部を適度に分散して形成することができる。なお、第1電極をコンタクト部109上の一部に形成する場合において、開口部を適度に分散して形成するとは、コンタクト部109がp型半導体層105上全体で電気的な連続性を維持できる程度に開口させることである。電流の広がりを維持し開口による順方向電圧の上昇を抑制するためである。第1電極をコンタクト部109上全面に形成する場合においては、このコンタクト部109の電気的な連続性は好ましい形態であるが必須ではない。また、アルミニウム酸化膜の形成条件やエッチング条件によって開口率を制御できるうえ、フォトマスクを用いる方法に比べて工程が簡易であるという利点があるためより好ましい。
【0055】
アルミニウム酸化膜の蒸着条件は上記のような開口部が形成できる条件であれば特に限定されないが、例えば以下のようなものとすればよい。酸素の流量は5〜15sccm程度、EB蒸着装置の内部圧力は5.0×10
−3〜5.0×10
−2Pa程度とする。成膜速度は0.5〜2.0Å/秒で、500〜5000Å程度の厚みで形成すればよい。
【0056】
アルミニウム酸化膜のエッチング条件は特に限定されないが、例えば63BHFに3〜10分程度浸漬させればよい。また、アルミニウム酸化膜に寸法および形状が不均一な複数の開口部が形成される。この開口部を拡大するべく、引き続きドライエッチングを行ってもよい。このとき、圧力は1.0〜4.0Pa程度、エッチングガスはCF
4/O
2として、流量はそれぞれ10〜25sccm/2〜5sccm程度、エッチング時間は0.5〜3.0分程度とすればよい。
【0057】
マスク110の形成後、
図3(F)に示すように、マスク110が形成されず露出したコンタクト部109の部分をエッチングにより選択的に除去して、p型半導体層105が露出する島状の開口部111を形成する。この選択エッチングの方法としては、例えば塩素系ガスやArガスを用いたドライエッチング法を用いることができ、コンタクト層107およびオーミック電極層108の材料により適宜選択すればよい。
【0058】
図3(F)に示すように、p型半導体層105が例えば10〜200nm程度削れるまでエッチングすることが好ましい。これにより、コンタクト層107を確実にエッチング除去することができる。また、開口部111におけるp型半導体層105の側面には複雑な凹凸形状が形成されるため、コンタクト部109下のp型半導体層105に侵入した光はp型半導体層105からなる開口部111の側面のこの凹凸によってスムーズに出射する。このため、この側面で反射することによりコンタクト層に吸収される光は少なく、発光出力が向上する。
【0059】
その後、エッチングによりマスク110を除去する(
図3(G))。マスクは、例えばフッ化水素を用いたウェットエッチングで除去することができる。
【0060】
その後、
図3(H)に示すように、オーミック電極層108の一部上に、p型半導体層105と電気的に接続する第1電極113を形成し、さらに、n型半導体層103に電気的に接続する第2電極112を形成する。n側電極112は、例えばドライエッチングまたはウェットエッチングなどにより、半導体積層体106の一部を除去して、n型半導体層103の表面を露出させ、露出したn型半導体層103上に、スパッタ法または真空蒸着法などにより形成することができる。p側電極113は、同じくスパッタ法または真空蒸着法などにより、コンタクト部109上およびp型半導体層105上の一部に、直接形成することができる。
【0061】
以上、ラテラル型の半導体発光素子100の製造方法を説明したが、本発明は、フィリップチップ型、および、垂直(Vertical)型の半導体発光素子に適用することもできる。以下に、その製造方法の一例を示す。
【0062】
フィリップチップ型とする場合の製造方法は、開口部111を有するコンタクト部109を形成する工程までは、実施形態1の製造方法として
図3(G)までに示した工程と同様であり、その後、p側電極113は、スパッタ法または真空蒸着法などにより、コンタクト部109および開口部111のp型半導体層上の全面に直接形成する。このとき、p側電極113には反射率の高い金属を用いることが好ましく、例えばMo、Ru、Rh、Wが挙げられる。n側電極112は、例えばドライエッチングまたはウェットエッチングなどにより、半導体積層体106の一部を除去して、n型半導体層103の表面を露出させ、露出したn型半導体層103上に、スパッタ法または真空蒸着法などにより形成することができる。そして、実装する際には、
図4のようにバンプ114を用いる。本実施形態でも、開口部に到達した光はコンタクト部109に吸収されることなくp側電極113に反射されるため、発光効率を向上させることができる。
【0063】
垂直型とする場合は、バッファ層にリフトオフ可能な材料を用いる以外は、開口部111を有するコンタクト部109を形成する工程(
図3(G))までは、実施形態1の製造方法として
図3で示した工程と同様であり、その後、コンタクト部109上に順次、p側電極、接着金属層、サポート基板を形成する。
【0064】
p側電極は、スパッタ法または真空蒸着法などにより、コンタクト部および開口部のp型半導体層上の全面に直接形成する。このとき、p側電極には反射率の高い金属を用いることが好ましく、紫外光に対しては例えばMo、Ru、Rh、Wが挙げられる。
【0065】
接着金属層は、接合によりサポート基板と接続する場合は、Au含有材料とするのが好ましく、より好ましくはAuまたはAuSnとする。めっき法によりサポート基板を形成する場合はAu、Pt、Pdなどの貴金属やNi,Cuのいずれかを含む材料を用いるのが好ましい。また、ケミカルリフトオフ法により基板を剥離する際に使用するエッチング液に対して耐性を持つ金属を選択することが望ましい。接着金属層からのAuの拡散を止めるバリア層として、接着金属層とp側電極との間に、Pt含有材料からなるバリア層をさらに形成してもよい。
【0066】
サポート基板は、放熱性の良い材料からなるものとすることができ、例えば導電性Si基板やMo、W、Ni、Cuおよびこれらの合金を材料とする基板を用いるのが好ましい。上記のようにめっき法により直接形成してもよいが、その場合は、その後のケミカルリフトオフのエッチング液に対する耐性を有する材料を選択することが好ましい。
【0067】
続いて、バッファ層をエッチングなどにより除去し、半導体積層体から基板を剥離する。そして、この剥離により露出したn型半導体層上にn側電極を形成する。このようにして、垂直型の半導体発光素子を製造することができる。なお、垂直型の場合、このようにバッファ層を除去する必要があるため、バッファ層は、ケミカルリフトオフが可能な金属材料である、クロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)などか、または、これらの金属窒化物で作製することが好ましい。
【0068】
上述したところはいずれも代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
サファイア基板(0001)面上にAlNエピタキシャル層を有するAlNテンプレートの上に、MOCVD法により、初期層としてAlN層を積層後、超格子歪緩衝層としてAlN/GaN超格子層、i型AlGaN層、n型窒化物半導体層としてAlGaN(コンタクト層、クラッド層のAl組成:0.23)、発光波長が340nmの発光層としてInAlGaN量子井戸型構造(井戸層のAl組成:0.15)、p型窒化物半導体層としてAlGaN(ブロック層のAl組成:0.47、ガイド層とクラッド層のAl組成:0.22、クラッド層の厚さ:160nm)、を順次エピタキシャル成長させ、半導体積層体を形成した。さらに、最上層のp型AlGaNクラッド層上にp型コンタクト層としてGaN(厚み:50nm)をエピタキシャル成長させた。なお、上記の超格子歪緩衝層は第1の層をGaNとし、AlN層(厚さ9nm)とGaN層(厚さ2.1nm)とを交互に20組積層した超格子層Iと、AlN層(厚さ2.7nm)とGaN層(厚さ2.1nm)とを交互に30組積層した超格子層IIと、AlN層(厚さ0.9nm)とGaN層(厚さ2.1nm)とを交互に50組積層した超格子層IIIとを順次積層した構造とし、GaN層(第1の層)には、Mgを添加した。
【0070】
p型コンタクト層上に、p側オーミック電極層(Ni:厚さ10nmおよびAu:厚さ20nm)をスパッタ法により形成した。その後、550℃による熱処理を行った。
【0071】
その後、EB蒸着機にて真空引き後に酸素ガスを導入しながらAlを蒸着することにより、p側オーミック電極膜上にマスク材としてアルミニウム酸化膜(厚さ200nm)を成膜した。このとき、酸素ガスは10sccm、1×10
−2Paとし、1Å/secにて成膜した。その後、BHFに10分間浸漬したところ、アルミニウム酸化膜が部分的にエッチングされ、p側オーミック電極層が部分的に露出した島状の穴を有するマスクが形成された。その後、1Paの圧力で、流量が20sccmの塩素ガスによる3分間のドライエッチングによりマスクに覆われていない部分のp側オーミック電極層を除去し、さらに、4Paの圧力で、流量が22.5sccmの塩素ガスと7.5sccmの4塩化ケイ素ガスとの混合ガスに1.5分間曝露することによりマスクに覆われていない部分のp型コンタクト層を除去した。後処理として、1Paの圧力で、流量が20sccmのアルゴンガスに3.5分曝露した。45%フッ化水素酸(HF)に15秒間浸漬して、アルミニウム酸化膜のマスクを完全に除去した。マスク除去後の表面のSEM写真(倍率1万倍)を
図5(A)に示す。このように、複数の島状の開口部を有するコンタクト部が形成された。素子上面から見た複数の開口部の形状は不均一な形状であった。また、この表面の拡大写真(倍率5万倍)を
図6に示す。このように、p型半導体層を有する開口部の側部と底部には凹凸が見られた。開口率は、SEM写真の面積比から計算したところ、30.3%であった。
【0072】
ドライエッチング法によりn型窒化物半導体層の表面を一部露出させ、n側電極(Ti/Al)をn型窒化物半導体層上に形成し、550℃でアニール後、p側電極(Ti/Au)を、上記開口部を有するコンタクト部上に形成し、本発明にかかる半導体発光素子を作製した。
【0073】
(実施例2)
p側オーミック電極層が部分的に露出した島状の穴を有するマスクを形成した後に、4Paの圧力で、流量が21sccmの4フッ化メタンガスと4sccmの酸素ガスとの混合ガスに2.5分間曝露する工程を追加したこと以外は、実施例1と同様の方法で、半導体発光素子を作製した。マスク除去後の表面のSEM写真(倍率1万倍)を
図5(B)に示す。素子上面から見た複数の開口部の形状は不均一な形状であった。このように、上記処理によってマスクの穴が拡張し、開口率は、SEM写真の面積比から計算したところ、38.3%であった。また、p型半導体層を有する開口部を観察したところ、実施例1にみられたような凹凸が見られた。
【0074】
(実施例3)
実施例1の手順においてp側オーミック電極層形成後の熱処理を行った後、p側オーミック電極膜上にマスク材としてアルミニウム酸化膜の代わりにCVD法によるSiO
2膜を成膜し、SiO
2膜上にフォトリソグラフ法により直径5μm、中心間間隔10μmの開口部を複数有するフォトレジストのパターンを形成した。その後、レジストパターンをマスクとしてドライエッチング法によりSiO
2膜のエッチングを行い、レジストを除去した。こうして形成したSiO
2膜パターンを複数の島状の開口を有するマスクとして使用し、実施例1と同様のドライエッチング法によりp側オーミック電極およびp−コンタクト層をエッチングし、その後、BHFに浸漬してSiO
2マスクを除去した。マスク除去後の表面のSEM写真(倍率5千倍)を
図7に示す。その後、実施例1と同様にして半導体発光素子を作成した。その結果、コンタクト部には、フォトマスクのパターンと対応した形状の開口部が形成され、すなわち、直径5μmの開口部が10μmピッチで均一に形成された。開口率は、フォトマスク設計上は19%であり、SEM写真の面積比から計算したところ、20%であった。
【0075】
(実施例4)
p側オーミック電極膜上にマスク材としてアルミニウム酸化膜(厚さ200nm)を成膜した後のマスク材のBHFへの浸漬時間を10分から6分に変えた以外は、実施例1と同様に行った。コンタクト部の拡大写真(倍率5万倍)を
図8に示す。開口部の形状は不均一な形状であった。開口率は、SEM写真の面積比から計算したところ、20%であった。なお、素子上面から見た複数の開口部の形状は実施例1と同様であり、実施例3とは開口部の形状が異なるが開口率は等しかった。
【0076】
(実施例5)
アルミニウム酸化膜のマスクを完全に除去した後に、開口部およびコンタクト部の全面を覆うように、スパッタ法により反射電極(Ru、厚さ50nm)を形成し、p側電極(Ti/Au)を、上記の反射電極上に形成した以外は、実施例1と同様に行った。
【0077】
(実施例6)
発光層として、発光波長が465nmのInGaN量子井戸型構造を用いた以外は、実施例2と同様に半導体発光素子を形成した。
【0078】
(比較例1〜6)
マスク形成およびドライエッチングによるコンタクト部の開口部の形成をしない以外は、それぞれ実施例1〜6と同様に半導体発光素子を形成した。
【0079】
(評価方法)
得られた発光素子に定電流電圧電源を用いて20mA、50mAまたは100mAの電流を流したときの発光出力Poおよび順方向電圧Vfを測定した。表1中、実施例1〜6のPo比は、それぞれ比較例1〜6におけるPo値を1とした場合の相対値である。表1中実施例1〜6のΔVfは、それぞれの試験例におけるVfの実測値からそれぞれ比較例1〜6におけるVfの実測値を差し引いた値である。ΔVfは、小さいほどコンタクト面積減少の影響が小さく優れた特性であることを示す。Poについては、相対値が大きいほど発光出力向上効果が大きく優れた特性であることを示す。なお、Poは、反射電極を形成した実施例5は反射によりサファイア基板側から取り出された光について測定し、それ以外は開口部を有するp型窒化物半導体層側から取り出された光について測定した。
【0080】
【表1】
【0081】
(評価結果)
実施例1〜5は比較例1〜5に対し、Poについては概ね1.3倍から2倍以上となり、Vfについては僅かな上昇しかなかった。よって、順方向電圧をさほど上昇させることなく、発光出力を大幅に向上させることができた。また、開口率が大きいほど出力向上効果が大きくなる傾向を示した。
【0082】
さらに、開口率の等しい実施例3と実施例4とを比較すると、実施例3よりも実施例4のPoは高いことが判明した。フォトリソグラフ法では、フォトマスクパターン幅の設計上の制限から1〜2μm以下の微細な開口部を形成することは容易ではなかったため、実施例3では各々の開口部が大きく、実施例4のような各々が幅2μm以下の微細かつ複雑な形状であって不均一な開口形状の集まりではないということも要因として考えられる。また、実施例4よりも実施例3のΔVfは高いことが判明した。これは、実施例3における各々の開口部の中心部は、コンタクト部から遠いために電気が流れにくく、Vfが上昇しやすいことが要因として考えられる。さらには、SEM写真から、実施例3の開口部底面は比較的平坦であるが、実施例4の開口部底面は実施例3に比べると凹凸を有することが分かった。不均一な開口形状であるので開口面内のエッチング速度も不均一となり、開口部のp型窒化物半導体層の表面が凹凸となったことも発光出力の向上に寄与していると推察される。
【0083】
また、青色発光ダイオードでの実施例6は、比較例6に対してPoについて14%程度の向上効果が得られた。ただし、実施例1〜5のほうがより効果が得られた。これは、紫外発光ダイオードの実施例2と比較して波長が長く、コンタクト層による光の吸収が少ない素子であるためと考えられる。よって、本発明の効果は、コンタクト層のバンドギャップが発光層のバンドギャップよりも狭い発光素子、特に紫外光を発する発光素子に対して非常に有効な効果を有することが判明した。
【0084】
実施例5における反射電極を形成した場合であっても、Poについて30%程度の向上効果が得られており、本発明の効果を有することが確認された。なお、測定条件の違いもあるため、実施例1に対して割合が小さかったことの理由は判明していない。理由の一つとしては、反射電極の反射率は100%ではなく、実質の反射率が低かったことが挙げられる。
【0085】
なお、リフトオフ層としてScNを用い、p側電極として紫外光の反射率の高いRuを全面に形成し、接続金属としてAuSnを用いて導電性Si基板に接合した垂直型の半導体発光素子を形成した場合でも、類似の効果を得ることができた。