(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合した光デバイスウエーハの光デバイス層を、移設基板に移し替える光デバイスウエーハの加工方法であって、
エピタキシー基板の裏面にレーザー光線を拡散させるための粗面を形成するための拡散処理を施す拡散処理工程と、
該拡散処理が施されたエピタキシー基板の裏面側からバッファー層にエピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程と、
該バッファー層破壊工程を実施した後に、エピタキシー基板を光デバイス層から剥離して光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層移設工程と、を含む、
ことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法。
該拡散処理工程は、エピタキシー基板の裏面を面粗さRa:0.01〜1μmの粗面を施したパルスレーザー光線を透過する部材で被覆する、請求項1記載の光デバイスウエーハの加工方法。
該拡散処理工程は、粒径が1〜10μmのダイヤモンド砥粒をボンド剤で固めた砥石によって研削して粗面を施す、請求項2又は3記載の光デバイスウエーハの加工方法。
該バッファー層破壊工程において照射するパルスレーザー光線は、波長が160〜300nmで平均出力が0.05〜0.1Wに設定されている、請求項1から4のいずれかに記載の光デバイスウエーハの加工方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サファイア基板や炭化珪素等のエピタキシー基板の表面にバッファー層を介してn型半導体層およびp型半導体層からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスが形成された光デバイスウエーハにおける光デバイス層を、移設基板に移し替える光デバイスウエーハの加工方法に関する。
【0002】
光デバイス製造工程においては、略円板形状であるサファイア基板や炭化珪素等のエピタキシー基板の表面にバッファー層を介してn型半導体層およびp型半導体層からなる光デバイス層が積層され格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスを形成して光デバイスウエーハを構成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って分割することにより個々の光デバイスを製造している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
また、光デバイスの輝度を向上させる技術として、光デバイスウエーハを構成するサファイア基板や炭化珪素等のエピタキシー基板の表面にバッファー層を介して積層されたn型半導体層およびp型半導体層からなる光デバイス層をモリブデン(Mo)、銅(Cu)、シリコン(Si)等の移設基板を金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),インジウム(In),パラジウム(Pd)等の接合金属層を介して接合し、エピタキシー基板の裏面側からバッファー層にレーザー光線を照射することによりエピタキシー基板を剥離して、光デバイス層を移設基板に移し替えるリフトオフと呼ばれる製造方法が下記特許文献2に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、一般に用いられている集光レンズを備えた集光器によって集光されるレーザー光線のエネルギー分布は、中心部が強く外側に行くほど弱くなるガウシアン分布をしている。従って、レーザー加工装置においてバッファー層にパルスレーザー光線を照射してバッファー層を破壊する際に、バッファー層の破壊にムラが生じて品質の低下を招くという問題がある。また、光デバイス層およびバッファー層の成長を促すためにサファイア基板の表面に凹凸が形成されている場合には、パルスレーザー光線が凹凸に遮られてバッファー層が均一に破壊されず、エピタキシー基板の剥離が困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、バッファー層を均一に破壊し、エピタキシー基板を確実に剥離することができる光デバイスウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、エピタキシー基板の表面にバッファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を接合金属層を介して移設基板に接合した光デバイスウエーハの光デバイス層を、移設基板に移し替える光デバイスウエーハの加工方法であって、
エピタキシー基板の裏面にレーザー光線を拡散させるための
粗面を形成するための拡散処理を施す拡散処理工程と、
該拡散処理が施されたエピタキシー基板の裏面側からバッファー層にエピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程と、
該バッファー層破壊工程を実施した後に、エピタキシー基板を光デバイス層から剥離して光デバイス層を移設基板に移設する光デバイス層移設工程と、を含む、
ことを特徴とする光デバイスウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
上記拡散処理工程は、エピタキシー基板の裏面に面粗さRa:0.01〜1μmの粗面を施す。
また、上記拡散処理工程は、エピタキシー基板の裏面を面粗さRa:0.01〜1μmの粗面を施したパルスレーザー光線を透過する部材で被覆する。
上記拡散処理工程は、粒径が1〜10μmのダイヤモンド砥粒をボンド剤で固めた砥石によって研削して粗面を施す。
上記バッファー層破壊工程において照射するパルスレーザー光線は、波長が160〜300nmで平均出力が0.05〜0.1Wに設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による光デバイスウエーハの加工方法は、エピタキシー基板の裏面にレーザー光線を拡散させるための
粗面を形成するための拡散処理を施す拡散処理工程を実施し後に、拡散処理が施されたエピタキシー基板の裏面側からバッファー層にエピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程を実施するので、パルスレーザー光線がエピタキシー基板の裏面に施された粗面で適度に拡散され、集光点におけるパルスレーザー光線のエネルギー分布が均一化してバファー層を満遍なく破壊する。また、パルスレーザー光線が拡散するので、エピタキシー基板の表面に凹凸が形成されている場合でも、パルスレーザー光線が凹凸の壁に遮られることなくバファー層が均一に破壊される。従って、エピタキシー基板を光デバイス層から容易に且つ確実に剥離して光デバイス層を移設基板に移設することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による光デバイスウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1の(a)および(b)には、本発明による光デバイスウエーハの加工方法によって加工される光デバイスウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。
図1の(a)および(b)に示す光デバイスウエーハ2は、直径が50mmで厚みが600μmの円板形状であるサファイア基板からなるエピタキシー基板21の表面21aにn型窒化ガリウム半導体層221およびp型窒化ガリウム半導体層222からなる光デバイス層22がエピタキシャル成長法によって形成されている。なお、エピタキシー基板21の表面にエピタキシャル成長法によってn型窒化ガリウム半導体層221およびp型窒化ガリウム半導体層222からなる光デバイス層22を積層する際に、エピタキシー基板21の表面21aと光デバイス層22を形成するn型窒化ガリウム半導体層221との間には窒化ガリウム(GaN)からなる厚みが例えば1μmのバファー層23が形成される。このように構成された光デバイスウエーハ2は、図示の実施形態においては光デバイス層22の厚みが例えば10μmに形成されている。なお、光デバイス層22は、
図1の(a)に示すように格子状に形成された複数のストリート223によって区画された複数の領域に光デバイス224が形成されている。
【0013】
上述したように光デバイスウエーハ2におけるエピタキシー基板21を光デバイス層22から剥離して移設基板に移し替えるためには、光デバイス層22の表面22aに移設基板を接合する移設基板接合工程を実施する。即ち、
図2の(a)、(b)および(c)に示すように、光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の表面21aに形成された光デバイス層22の表面22aに、厚みが1mmの銅基板からなる移設基板3を金錫からなる接合金属層4を介して接合する。なお、移設基板3としてはモリブデン(Mo)、シリコン(Si)等を用いることができ、また、接合金属層4を形成する接合金属としては金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),インジウム(In),パラジウム(Pd)等を用いることができる。この移設基板接合工程は、エピタキシー基板21の表面21aに形成された光デバイス層22の表面22aまたは移設基板3の表面3aに上記接合金属を蒸着して厚みが3μm程度の接合金属層4を形成し、この接合金属層4と移設基板3の表面3aまたは光デバイス層22の表面22aとを対面させて圧着することにより、光デバイスウエーハ2を構成する光デバイス層22の表面22aに移設基板3の表面3aを接合金属層4を介して接合して複合基板200を形成する。
【0014】
以下、上述したように光デバイスウエーハ2を構成する光デバイス層22の表面22aに移設基板3の表面3aを接合金属層4を介して接合した複合基板200における光デバイスウエーハ2のエピタキシー基板21を光デバイス層22から剥離し、光デバイス層22を移設基板3に移し替える加工方法について説明する。
先ず、エピタキシー基板21の裏面にレーザー光線を拡散させるための拡散処理を施す拡散処理工程を実施する。この拡散処理工程は、図示の実施形態においては
図3に示す研削装置5を用いて実施する。
図3に示す研削装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研削する研削手段52を具備している。チャックテーブル51は、上面に被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない回転駆動機構によって
図3において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研削手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研削ホイール524とを具備している。この研削ホイール524は、円環状の基台525と、該基台525の下面に環状に装着された研削砥石526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に締結ボルト527によって取り付けられている。なお、研削砥石526は、粒径が1〜10μmのダイヤモンド砥粒をボンド剤で固めた砥石を用いることが望ましい。
【0015】
上述した研削装置5を用いて上記拡散処理工程を実施するには、
図3に示すようにチャックテーブル51の上面(保持面)に上記複合基板200の移設基板3側を載置する。そして、図示しない吸引手段によってチャックテーブル51上に複合基板200を吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル51上に保持された複合基板200は、光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル51上に複合基板200を吸引保持したならば、チャックテーブル51を
図3において矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段52の研削ホイール524を
図3において矢印524aで示す方向に例えば500rpmで回転せしめて、
図4の(a)に示すように研削砥石526を被処理面であるエピタキシー基板21の裏面21bに接触せしめ、研削ホイール524を
図3および
図4の(a)において矢印524bで示すように例えば0.1μm/秒の研削送り速度で下方(チャックテーブル51の保持面に対し垂直な方向)に所定量研削送りする。この結果、
図4の(b)に示すように光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bが研削され、エピタキシー基板21の裏面21bは粗面に形成される。このように粗面に形成されるエピタキシー基板21の裏面21bは面粗さRa:0.01〜1μmの粗面に施されることが望ましく、本発明者の実験によると、研削砥石526として上述したように粒径が1〜10μmのダイヤモンド砥粒をビトリファイドボンド等のボンド剤で固めた砥石を用いることによって達成することができた。
【0016】
次に、拡散処理工程の他の実施形態について、
図5を参照して説明する。
図5の(a)および(b)に示す実施形態は、光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bを面粗さRa:0.01〜1μmの粗面を施したパルスレーザー光線を透過する部材6で被覆する。パルスレーザー光線を透過する部材6は例えばサファイア基板でよく、粗面6aは上記
図3および
図4に示した拡散処理工程と同様に研削装置5によって実施することができる。このようにして面粗さRa:0.01〜1μmの粗面が施された部材6は、
図5の(b)に示すようにエピタキシー基板21の裏面21bに被覆する。なお、エピタキシー基板21の裏面21bと部材6との間にエアーギャップが生じることを避けるために、両者間に水等の液体を介在させることが望ましい。
【0017】
なお、エピタキシー基板21の裏面21bおよびエピタキシー基板21の裏面21bを被覆する部材6に粗面を施す方法としては、上述した研削加工の他に、サンドブラスト処理やエッチング処理を用いることができる。
【0018】
上述した拡散処理工程を実施したならば、エピタキシー基板21の裏面21b側からバッファー層23にエピタキシー基板21に対しては透過性を有しバッファー層23に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射し、バッファー層23を破壊するバッファー層破壊工程を実施する。このバッファー層破壊工程は、
図6に示すレーザー加工装置7を用いて実施する。
図6に示すレーザー加工装置7は、被加工物を保持するチャックテーブル71と、該チャックテーブル71上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72を具備している。チャックテーブル71は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り手段によって
図6において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り手段によって
図6において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0019】
上記レーザー光線照射手段72は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング721を含んでいる。ケーシング721内には図示しないパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング721の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光レンズ722aを備えた集光器722が装着されている。なお、レーザー光線照射手段72は、集光器722によって集光されるパルスレーザー光線の集光点位置を調整するための集光点位置調整手段(図示せず)を備えている。
【0020】
上記レーザー加工装置7を用いてバッファー層破壊工程を実施するには、
図6に示すようにチャックテーブル71の上面(保持面)に上記複合基板200の移設基板3側を載置する。そして、図示しない吸引手段によってチャックテーブル71上に複合基板200を吸着保持する(ウエーハ保持工程)。従って、チャックテーブル71上に保持された複合基板200は、光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル71上に複合基板200を吸引保持したならば、図示しない加工送り手段を作動してチャックテーブル71をレーザー光線照射手段72の集光器722が位置するレーザー光線照射領域に移動し、上記エピタキシー基板21の裏面21b(上面)側からバファー層23にサファイアに対しては透過性を有し窒化ガリウム(GaN)に対しては吸収性を有する波長のレーザー光線を照射し、バファー層23を破壊するレーザー光線照射工程を実施する。このレーザー光線照射工程は、チャックテーブル71を
図7の(a)で示すようにレーザー光線照射手段72の集光器722が位置するレーザー光線照射領域に移動し、一端(
図7の(a)において左端)をレーザー光線照射手段72の集光器722の直下に位置付ける。次に、
図7の(b)に示すように集光器722から照射するパルスレーザー光線のバファー層23の上面におけるスポットSのスポット径を400μmに設定する。このスポット径は、集光スポット径でも良いし、デフォーカスによるスポット径でも良い。そして、レーザー光線照射手段72を作動して集光器722からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル71を
図7の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、
図7の(c)で示すようにレーザー光線照射手段72の集光器722の照射位置にエピタキシー基板21の他端(
図7の(c)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル71の移動を停止する(レーザー光線照射工程)。このレーザー光線照射工程をバファー層23の全面に対応する領域に実施する。この結果、バファー層23が破壊され、バファー層23によるエピタキシー基板21と光デバイス層22との結合機能が喪失する。上述したバッファー層破壊工程においては、エピタキシー基板21の裏面21bが面粗さRa:0.01〜1μmの粗面に形成されているので、エピタキシー基板21の裏面21b側からバッファー層23にエピタキシー基板21に対しては透過性を有しバッファー層23に対しては吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射すると、パルスレーザー光線が適度に拡散され、集光点におけるパルスレーザー光線のエネルギー分布が均一化してバファー層23を満遍なく破壊する。また、パルスレーザー光線が拡散するので、エピタキシー基板21の表面に凹凸が形成されている場合でも、パルスレーザー光線が凹凸の壁に遮られることなくバファー層23が均一に破壊される。
【0021】
上記バッファー層破壊工程におけるレーザー光線照射工程の加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :エキシマレーザー
波長 :248nm
繰り返し周波数 :50Hz
平均出力 :0.08W
パルス幅 :10ns
スポット径 :φ400μm
加工送り速度 :20mm/秒
【0022】
上記バッファー層破壊工程において照射するパルスレーザー光線は、波長が160〜300nmで平均出力が0.05〜0.1Wの範囲に設定される。即ち、サファイアの吸収端が150nmで窒化ガリウム(GaN)からなるバファー層の吸収端が310nmであるので、サファイアに対しては透過性を有しバッファー層に対しては吸収性を有する波長としては160〜300nmであることが望ましい。
なお、上記バファー層23を破壊するレーザー光線照射工程は、集光器722をエピタキシー基板21の最外周に位置付け、チャックテーブル71を回転しつつ集光器722を中心に向けて移動することによりバファー層23の全面にレーザー光線を照射し、バファー層23を破壊してバファー層23によるエピタキシー基板21と光デバイス層22との結合機能を喪失させてもよい。
【0023】
上述したバッファー層破壊工程を実施したならば、エピタキシー基板21を光デバイス層22から剥離して光デバイス層22を移設基板3に移設する光デバイス層移設工程を実施する。この光デバイス層移設工程は、
図8の(a)および(b)に示す移設装置8を用いて実施する。
図8の(a)および(b)に示す移設装置8は、上記複合基板200の移設基板3を保持する第1の保持手段81と、第1の保持手段81上において移設基板3が接合されている光デバイスウエーハ2のエピタキシー基板21側を保持する第2の保持手段82を具備している。第1の保持手段81は、上面である保持面上に移設基板3を介して複合基板200を吸引保持するように構成されている。また、第1の保持手段81は、図示しない回転駆動機構によって回動せしめられるようになっている。第2の保持手段82は、吸引保持パッド83と、該吸引保持パッド83を支持する支持軸部84を具備している。吸引保持パッド83は、円盤状の基台831とパッド832とからなっている。基台831は適宜の金属材によって構成され、その上面中央部に支持軸部84が突出して形成されている。吸引保持パッド83を構成する基台831は、下方が開放された円形状の凹部831aを備えている。この凹部831aにポーラスなセラミックス部材によって円盤状に形成されたパッド832が嵌合されている。このようにして基台831の凹部831aに嵌合されたパッド832の下面である保持面は、上記第1の保持手段81の上面である保持面と対向するように配設される。吸引保持パッド83を構成する基台831に形成された円形状の凹部831aは、支持軸部84に設けられた吸引通路84aを介して図示しない吸引手段に連通されている。従って、図示しない吸引手段が作動すると、吸引通路84a、基台831の凹部831aを介してパッド832の下面である保持面に負圧が作用せしめられ、該パッド832の下面である保持面に後述するように光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21を吸引保持することができる。
【0024】
以上のように構成された第2の保持手段82は、
図8の(a)および(b)において上下方向に移動可能な分離手段85に連結されている。この分離手段85は、図示の実施形態においてはエアシリンダ機構からなり、そのピストンロッド851が第2の保持手段82を構成する支持軸部84に連結されている。このように構成された分離手段85は、第2の保持手段82を第1の保持手段81の上側に位置付け、下降および上昇することにより、第2の保持手段82と第1の保持手段81とを相対的に近接および離反する方向に移動せしめる。
【0025】
上述した移設装置8を用いて光デバイス層移設工程を実施するには、
図8の(a)に示すように移設装置8の第1の保持手段81上に上述した複合基板200の移設基板3側を載置し、図示しない吸引手段を作動して第1の保持手段81上に複合基板200を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。従って、第1の保持手段81上に保持された複合基板200は、光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bが上側となる。次に、エアシリンダ機構からなる分離手段85を作動して第2の保持手段82を下降し、
図8の(a)に示すように吸引保持パッド83を構成するパッド832の下面である保持面を第1の保持手段81に吸引保持されている複合基板200の光デバイスウエーハ2を構成するエピタキシー基板21の裏面21bである上面に接触させる。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、吸引保持パッド83を構成するパッド832の下面である保持面にエピタキシー基板21の裏面21bである上面を吸引保持する。従って、移設基板3が第1の保持手段81に吸引保持されるとともに、エピタキシー基板21が第2の保持手段82に吸引保持されることになる。次に、
図8の(a)に示すように第1の保持手段81を回転駆動する図示しない回転駆動機構を作動して第1の保持手段81を矢印81aで示す方向に所定角度回動する。このとき、バッファー層23は上記バッファー層破壊工程において均一に破壊されているので、容易に完全破壊される。このようにバファー層23が破壊されたならば、
図8の(b)に示すようにエアシリンダ機構からなる分離手段85を作動して第2の保持手段82を上昇させる。この結果、エピタキシー基板21は第2の保持手段82の吸引保持パッド83を構成するパッド832の下面に吸引保持された状態で光デバイス層22から剥離され、光デバイス層22は移設基板3に移設される(光デバイス層移設工程)。
【0026】
2:光デバイスウエーハ
21:エピタキシー基板
22:光デバイス層
23:バファー層
3:移設基板
4:接合金属層
200:複合基板
5:研削装置
51:研削装置のチャックテーブル
52:研削手段
524:研削ホイール
526:研削砥石
7:レーザー加工装置
71:レーザー加工装置のチャックテーブル
72:レーザー光線照射手段
722:集光器
8:移設装置
81:第1の保持手段
82:第2の保持手段
83:吸引保持パッド
85:分離手段