特許第5989138号(P5989138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989138
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】エマルション組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20160825BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20160825BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/63
   A61K8/06
   A61K8/37
   A61K8/60
   A61K8/55
   A61Q19/00
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-557334(P2014-557334)
(86)(22)【出願日】2013年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2013080592
(87)【国際公開番号】WO2014112193
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-8701(P2013-8701)
(32)【優先日】2013年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】森 幹永
(72)【発明者】
【氏名】荒河 純
(72)【発明者】
【氏名】田代 朋子
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−241254(JP,A)
【文献】 特開2003−095969(JP,A)
【文献】 特開2011−195553(JP,A)
【文献】 特開2011−195554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0095731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/44
A61K 8/06
A61K 8/37
A61K 8/55
A61K 8/60
A61K 8/63
A61Q 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相と、
(3)乳化剤と、
を含有し、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量が、油相を構成する成分の全質量に対して、30質量%〜95質量%であるエマルション組成物。
【請求項2】
(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分が、イソステアリン酸又はラウロイルグルタミン酸と、フィトステロール又はコレステロールとのエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエマルション組成物。
【請求項3】
(3)乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびレシチンからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のエマルション組成物。
【請求項4】
有効成分として酸型の5環性トリテルペンを含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項5】
水中油型エマルションである請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項6】
平均粒子径150nm以下のエマルション粒子を含む請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項7】
油中水型エマルションである請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエマルション組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエマルション組成物を含有する皮膚外用組成物。
【請求項9】
請求項に記載の皮膚外用組成物を含有する頭皮用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルション組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、水又は油への溶解度の低い成分を溶解するための溶媒として利用されている。
【0003】
例えば、特開2010−30959号公報では、水及び油への溶解性が極めて低いシリビンの溶媒として利用されている。なお、シリビンは、しわ等の皮膚の老化の予防に効果を奏すると考えられている成分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、親水性の高い成分であるため、エマルション組成物中の油相中にN−ラウロイルサルコシンイソプロピルが含まれる場合には、経時保存によりエマルション粒子の合一や凝集といった現象が生じ、エマルション組成物の保存安定性を維持することが困難になるという問題が生じることが明らかになった。
【0005】
本発明は、保存安定性を維持し得る、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルを油相に含有するエマルション組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、保存安定性を維持し得る皮膚外用組成物及び頭皮用化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相と、
(3)乳化剤と、
を含有し、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量が、油相を構成する成分の全質量に対して、30質量%〜95質量%であるエマルション組成物
<2> (2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分が、イソステアリン酸又はラウロイルグルタミン酸と、フィトステロール又はコレステロールとのエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種である<1>に記載のエマルション組成物。
> (2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分が、フィトステロール、コレステロール、イソステアリン酸フィトステリル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸コレステリル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル及びマカデミアナッツ脂肪酸コレステリルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種である<1>に記載のエマルション組成物。
> (3)乳化剤がショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびレシチンからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種である<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
> 有効成分として酸型の5環性トリテルペンを含む<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
> 水中油型エマルションである<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
> 平均粒子径150nm以下のエマルション粒子を含む<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
> 油中水型エマルションである<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
> さらに、水相に含まれる水性成分として多価アルコールを含む、<1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物。
10> <1>から<>のいずれか1つに記載のエマルション組成物を含有する皮膚外用組成物。
11> <10>に記載の皮膚外用組成物を含有する頭皮用化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保存安定性を維持し得る、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルを油相に含有するエマルション組成物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、保存安定性を維持し得る皮膚外用組成物及び頭皮用化粧料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<エマルション組成物>
本発明のエマルション組成物は、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相と、(3)乳化剤と、を含有する。
【0009】
本発明のエマルション組成物は、上記の構成を有することにより、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルを油相に含有する場合にも優れた保存安定性を発揮させ得る。
【0010】
N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、親水性の高い成分である。そのためエマルション組成物中の油性成分にN−ラウロイルサルコシンイソプロピルが含まれる場合には、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルが含まれない場合に比べて水相と油相との界面における界面張力が低くなる傾向にある。その結果、乳化剤の界面への吸着によるエマルション粒子安定化の効果が小さくなると推測され、経時保存により、エマルション組成物の保存安定性を維持することが困難になると推測される。
一方、本発明のエマルション組成物においては、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルに、フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分(以下、「特定油性成分」と称する場合がある。)を組み合わせることにより、油相にN−アシルアミノ酸モノエステルが含有されている場合にも、エマルション組成物の長期間に亘る保存安定性を維持できるものである。
【0011】
本明細書においてエマルション組成物は、特に断らない限り、水中油型のエマルション組成物及び油中水型のエマルション組成物のいずれであってもよい。また、エマルション組成物は、水性成分を含有する水相組成物から構成された水相と、油性成分を含有する油相組成物から構成された油相とを含む。
本発明のエマルション組成物は、後述する如く、水相組成物と、油相組成物とを乳化混合して得られることが好ましい。
【0012】
本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明において「水相」とは、溶媒の種類にかかわらず「油相」に対する語として使用する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「ポリグリセリン脂肪酸エステル」とは、複数のグリセリン単位と、少なくとも1以上の脂肪酸単位とを含むエステルを意味する。
また、本発明において「保存安定性」とは、エマルション組成物を調製した後、経時のエマルション粒子の凝集や合一等を抑制でき、乳化状態の安定性が損なわれずに持続することを意味する。
以下、本発明における各構成要素ついて詳細に説明する。
【0013】
((1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピル)
本発明のエマルション組成物は、油相中に、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルを含む。
N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、N−ラウロイルサルコシンと、イソプロパノールとを用いて、公知の方法により合成することができる。合成方法の例としては、特開平11−246841号公報の段落番号[0051]に述べられている方法を挙げることができる。
【0014】
N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、公知の合成方法に準じて合成できる他、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、味の素株式会社製のN−ラウロイルサルコシンイソプロピル(商品名 エルデュウSL−205)等が挙げられる。
【0015】
本発明のエマルション組成物におけるN−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量は、油相組成物の全質量に対して、30質量%〜95質量%であることがエマルション組成物の保存安定性の観点から好ましい。また、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量は、油相組成物の全質量に対して、50質量%〜80質量%であることがより好ましく、55質量%〜75質量%であることが更に好ましい。
【0016】
((2)特定油性成分)
本発明のエマルション組成物は、油相中に、フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分を含む。
【0017】
フィトステロールは、ステロールの一種であり、植物ステロールとも称される白色固体の水には不溶の成分である。天然物としては、多種のフィトステロールが存在する。例えば、β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。
フィトステロールは、天然物及び合成品のいずれであってもよく、主に植物などから得ることができる。具体的には、大豆などから抽出し、精製することで得ることができる。
またフィトステロールは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、タマ生化学社製のフィトステロール(商品名);ヘンケルジャパン社製のジェネロール122N(商品名)などが挙げられる。
これらのフィトステロールは一種単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
コレステロール(CAS登録番号 57−88−5)は、ステロールの一種であり、白色又は微黄色の固体の水には不溶の成分である。
コレステロールは、天然物及び合成品のいずれであってもよく、主に高等動物の脂から得ることができる。具体的には、例えば羊毛脂から精製することで得ることができる。
またコレステロールは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、理研ビタミン社製の理研コレステロール(商品名);日本精化社製のコレステロール(商品名)などが挙げられる。
【0019】
フィトステリルエステルは、脂肪酸とフィトステロールとのエステル化反応により得られる。
脂肪酸の例としては、総炭素数6〜30の脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ラノリン酸やマカデミアナッツ脂肪酸など、天然物から抽出した混合物でもよい。また、ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル脂肪酸やN-ラウロイルグルタミン酸などのアミノ酸誘導体も挙げられる。中でも、エマルション界面の安定性向上の観点から、イソステアリン酸又はN-ラウロイルグルタミン酸が好ましい。
フィトステリルエステルとしては、イソステアリン酸フィトステリル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル等が好ましい。
【0020】
これらのフィトステリルエステルは一種単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
コレステリルエステルは、脂肪酸とコレステロールとのエステル化反応により得られる。
脂肪酸の例としては、総炭素数6〜30の脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。ラノリン酸やマカデミアナッツ脂肪酸など、天然物から抽出した混合物でもよい。また、ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシル脂肪酸やN-ラウロイルグルタミン酸などのアミノ酸誘導体も挙げられる。中でも、エマルション界面の安定性向上の観点から、イソステアリン酸又はラウロイルグルタミン酸が好ましい。
コレステリルエステルとしては、イソステアリン酸コレステリル、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル等が好ましい。
【0022】
これらのコレステリルエステルは一種単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる特定油性成分は、必要に応じて少なくとも1種を単独又は混合して用いることができる。
特定油性成分の含有量は、エマルション界面の安定性向上の観点から、油相組成物の全質量に対し、0.1質量%〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜30質量%であり、さらに好ましくは2質量%〜25質量%である。
【0024】
(その他の油性成分)
本発明のエマルション組成物は、油相中に、N−ラウロイルサルコシンイソプロピル及び特定油性成分の他に、種々の油性成分を含むことができる。
その他の油性成分の例としては、例えば化粧品等に使用した際に人体に対して何らかの好ましい影響を及ぼす有効成分、油脂、高級脂肪酸類等が挙げられる。
【0025】
(有効成分)
有効成分としては、天然物及び合成品のいずれであってもよく、人体に対して何らかの好ましい影響を及ぼす成分であればよい。
例えば、カルボキシル基を有する5環性トリテルペン(以下、「5環性トリテルペン」と称する場合がある。)、ポリフェノール、カロテノイド、スフィンゴ脂質等が挙げられる。
以下に、有効成分について、5環性トリテルペンを例に挙げて説明するが、有効成分はこれに限定されるものではない。
【0026】
5環性トリテルペンは、天然物及び合成品のいずれであってもよく、主に植物エキスから得ることができる。具体的には、5環性のトリテルペンは、植物エキスからエタノール等の溶媒を用いて抽出することができる。
【0027】
5環性トリテルペンの例としては、酸型、配糖体型、又は脂肪酸エステル型の5環性トリテルペンなど、基本骨格に1つ以上のカルボキシル基又はその誘導体を置換基として有する5環性トリテルペンが挙げられ、本発明においてはこれらのトリテルペンのいずれについても適用することができる。
【0028】
ここで、酸型の5環性トリテルペンとは、カルボキシル基を置換基として基本骨格に有する5環性トリテルペンである。
また、配糖体型の5環性トリテルペン及び脂肪酸エステル型の5環性トリテルペンは、カルボキシル基の誘導体を置換基として基本骨格に有する5環性トリテルペンである。配糖体型の5環性トリテルペンは、基本骨格が有するカルボキシル基が糖変性されたものであり、脂肪酸エステル型の5環性トリテルペンは、基本骨格が有するカルボキシル基が、脂肪酸エステル型変性されたものである。
【0029】
配糖体型の5環性トリテルペンにおいて、配糖体の構成成分である糖としては、単糖、2糖、又はオリゴ糖が好ましい。その例としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース(以上単糖)、マルトース、スクロース、ラクトース(以上2糖)、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラフィノース、スタキオース(以上オリゴ糖)などが挙げられる。
脂肪酸エステル型において、5環性トリテルペンのカルボキシル基とエステル化させるアルコールの例としては、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の全てのアルコール等が挙げられる。
【0030】
薬理活性の観点からは、5環性トリテルペンとしては、酸型の5環性トリテルペンであることが好ましい。
酸型の5環性トリテルペンは多くの油性成分への溶解性が低く、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルへの溶解性が高いことから、本発明の組成物への適用による効果が大きい。
【0031】
植物エキスから得ることができる酸型の5環性トリテルペンの例としては、ツボクサエキスに含まれるアジアチン酸、マデカシン酸;ローズマリーエキスに含まれるウルソール酸、オレアノール酸、ベツリン酸;シソ葉エキスに含まれるオレアノール酸、ウルソール酸、トルメント酸;甘草エキスに含まれるグリチルレチン酸;バナバエキスに含まれるマスリン酸、コロソリン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
また、植物エキスから得ることができる5環性トリテルペンとしては、上記の如き酸型の5環性トリテルペンの他に、糖と結合した配糖体型の5環性トリテルペンが挙げられる。該配糖体型の5環性トリテルペンは、植物体内における貯蔵形態(ヘテロサイドという)として多く存在する形態であり、加水分解や酵素分解により容易に酸型トリテルペン(サポゲニン又はアグリコン)を生成することが知られている。
【0033】
これらのカルボキシル基を有する5環性のトリテルペンの中でも、抗炎症効果、抗酸化効果、抗老化作用効果等の観点から、グリチルレチン酸が好ましい。
グリチルレチン酸は、甘草から得られるグリチルリチン酸の加水分解によって得られるβ-アミリン(オレアナン)系のペンタサイクリックテルペノイド誘導体の一つである。グリチルレチン酸は、化粧品分野では抗炎症作用、抗酸化作用、抗老化作用を期待して、アンチエイジングケアなどを目的とする化粧品や医薬部外品などに配合することが可能である。
また、グリチルレチン酸は急性または慢性の皮膚炎に対し著しい効果があるといわれ、抗炎症効果、抗アレルギー作用、細菌(黄色ブドウ球菌、ジフテリア菌、サルモネラ菌など)発育阻止作用を有することが知られている。また、グリチルレチン酸は、皮膚の炎症緩和、ニキビなどにおける皮脂の分泌抑制、及び消炎効果に優れており、多くの皮膚ケア製品や口紅に用いられる。その他、頭皮ケア製品にも、脱毛予防効果、フケやかゆみ抑制などの効果があるため、多く使用されている。
【0034】
5環性トリテルペンとしては、例えば植物エキスから抽出された抽出物の形態で用いることができる。この場合、植物エキス中では、通常、構造の異なるトリテルペンが複数種混ざって含まれていることから、エマルション粒子には複数種の5環性トリテルペンが混在することとなる。
【0035】
また、5環性トリテルペンは、公知の合成方法に準じて合成できるβグリチルレチン酸、アジアチン酸、ウルソール酸、オレアノール酸、ベツリン酸、コロソリン酸などを用いてもよい。
また、5環性トリテルペンは市販品を用いてもよい。市販品の例としては、バイエルヘルスケア社製のTECA(商品名);丸善製薬(株)製のツボクサエキス、セキセツソウエキス、βグリチルレチン酸;バイエルヘルスケア製のアジアチン酸;サビンサジャパン製のウルソール酸;東京化成製のオレアノール酸などが挙げられる。
これらの5環性トリテルペンは、一種単独で用いてもよく複数を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の油性組成物における有効成分の含有量は、油性組成物の全質量に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは、1質量%以上である。
【0037】
(有効成分以外の他の油性成分)
有効成分以外の他の油性成分の例としては、化学構造面から、油脂類、炭化水素類、ロウ類、エステル類、脂肪酸類、高級アルコール類、高分子類、油溶性色素類、油溶性蛋白質類などが挙げられる。また、これらの混合物である、各種の植物油、動物油も、油性成分の例に含まれる。
油性成分の例として、より具体的には、ヤシ油、オリーブ油、コーン油、ホホバ油などの油脂類;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸類;ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、へキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノールなどの高級アルコール類;コレステロール、フィトステロールなどのステロール類;パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル類;スクワラン、水添ポリデセン、水添ポリイソブテンなどの炭化水素類等が挙げられる。
【0038】
また、特徴のある機能を有する油性成分(機能性油性成分)として、βカロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテインなどのカロテノイド類;トコフェロール、トコトリエノールなどのビタミンE類;コエンザイムQ10などのユビキノン類;EPA、DHA、リノレン酸などのω−3油脂類なども含むことができる。
【0039】
更に、保湿機能を持った油性成分として高価ではあるが、セラミドI、セラミドII、セラミドIII、セラミドV、セラミドVIなどの活性セラミド類;グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドなどのスフィンゴ糖脂質類;スフィンゴミエリン類、疑似セラミド類も含むことができる。
また、他の油性成分として、フェノール系酸化防止剤などを含有することもできる。
【0040】
((3)乳化剤)
本発明のエマルション組成物は、乳化剤を含む。
乳化剤としては、非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤のいずれでもよい。
【0041】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキエチレンステロール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中では、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0042】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
エマルション組成物が水中油型である場合には、水中油型エマルション組成物の保存安定性をより向上させるという観点から、水相中に、HLB10〜16のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加してもよい。
【0043】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、乳化力の観点から、HLBが10〜16であることが好ましく、11〜15がより好ましい。
ここで、HLBは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。川上式を次に示す。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の乳化剤を得ることができる。
【0044】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノリノール酸エステル、デカグリセリンジイソステアリン酸エステル等が挙げられる。この中で、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルが好ましく、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステルが特に好ましい。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、イソステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)(日光ケミカル製)、オレイン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)(日光ケミカル製)、ミリスチン酸ポリグリセリル−10(HLB=14)、ステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)、ミリスチン酸ポリグリセリル−6(HLB=11)ラウリン酸ポリグリセリル−10(HLB=15.5)(日光ケミカル製)等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、一種単独又は複数種を混合して用いることができる。
【0045】
本発明のエマルション組成物におけるポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、水性成分の全質量に対して、0.1質量%〜40質量%であることが好ましく、0.5質量%〜30質量%であることがより好ましく、1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0046】
ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキエチレンステロール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルショ糖エルカ酸エステル等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン)などが挙げられる。これらの中では、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレンステロールが好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の好ましい例としては、PEG−60水添ヒマシ油、PEG−80水添ヒマシ油等が挙げられる。ポリオキシエチレンステロールの例としては、PEG−20ダイズステロール、PEG−30ダイズステロール等が挙げられる。
これらの非イオン性界面活性剤は、一種単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0047】
ポリグリセリン脂肪酸エステルも含めた非イオン性界面活性剤の総量は、エマルション組成物全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは5〜10質量%である。
【0048】
イオン性界面活性剤の例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。
これらのイオン性界面活性剤は、一種単独又は複数を組み合わせて用いることができる。また、これらのイオン性界面活性剤は、水性組成物の全質量に対して任意の割合で混合して用いることができる。
【0049】
(レシチン)
N−ラウロイルサルコシンイソプロピルは、親水性の高い成分であるため、経時保存により、エマルション組成物の保存安定性を維持することが困難になると推測される。
一方、エマルション組成物にレシチンを添加すると、油相にN−ラウロイルサルコシンイソプロピルを含有するエマルション組成物の長期間に亘る保存安定性を維持することができるため好ましい。
【0050】
本明細書において、レシチンとはフォスファチジルコリン(PC)に限定されず、各種リン脂質を主成分とする脂質混合物を意味する。脂質の例としては、例えばフォスファチジン酸、フォスファチジルグリセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルメチルエタノールアミン、フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリン、ビスフォスファチジン酸、ジフォスファチジルグリセリン(カルジオリピン)等のグリセロレシチン;スフィンゴミエリン等のスフィンゴレシチン等が挙げられる。
【0051】
レシチンはその安全性と、油を水に分散させてエマルションを作る乳化力とから、食品や化粧品用の乳化剤としてよく用いられる。また、医薬品においても、皮膚や粘膜から物質を透過吸収する浸透作用を利用して、医薬用リポソームの材料、静脈注射用脂肪乳剤、痔や皮膚病の治療薬などに利用されている。食品や化粧料用途には、主にコストの観点から大豆レシチンが多く用いられている。
【0052】
また、レシチンはグリセロリン脂質の一種で、自然界の動植物のすべての細胞中に存在しており、生体膜の主要構成成分である。
使用可能な自然物由来のレシチンの例としては、大豆由来のレシチン、卵黄由来のレシチンをはじめ、動植物由来のレシチン等が挙げられる。
【0053】
大豆レシチンは、大豆油精製工程で副生する油滓を乾燥し、精製することにより製造される。リン脂質含量70%以下のペースト状レシチンは、大豆粗油を30%程度含むため、安価であり、特に食品分野ではこのリン脂質含量70%以下のペースト状のレシチンが用いられる。
近年、リン脂質自体の生理活性や、より高度な乳化剤へのニーズから、高度精製、分別、改質などの技術が加えられ、性能、機能の異なる種々のレシチン群が作られている。
【0054】
高度精製レシチンは、上記ペースト状レシチンから、アセトン等の溶媒を用いて脱油し、粉末化したもので、一般にレシチン含量が90%以上となっている。
この高度精製レシチンの例としては、フォスフォリポン20(リポイド社)、レシオンP(理研ビタミン)、SLPホワイト(辻製油)、エマルメティック300(ルーカスマイヤーコスメティックス社)などが市販されている。
【0055】
通常の精製レシチンの他に、主にフォスファチジルコリン(PC)含量を高めた分別レシチンや、酵素分解により一本鎖化した酵素分解(リゾ)レシチンや水素添加処理を行った水素添加レシチンなどの改質レシチンも用いることができる。
【0056】
分別レシチンは、上記高度精製レシチンから、各種溶媒への溶解度差を利用したり、蒸留等の操作により特定のリン脂質の含有量を高めたもので、一般にはPC含量を高めたものが市販されている。
PC含量を高めた分別レシチンの例としては、フォスフォリポン50(PC45%)、フォスフォリポン85G(PC80%)、フォスフォリポン90G(PC94%)(以上、リポイド社)、エメルメティック900(PC50%)、エメルメティック930(PC95%)(以上、ルーカスマイヤーコスメティックス社)、SLP−PC70、SLP−PC90(以上、辻製油)などが市販されている。
【0057】
改質レシチンとしては、大別すると、水素添加レシチンと酵素分解レシチンがある。
このうち、水素添加レシチンは、レシチン構造中の脂肪酸ポリエン酸を酸化や光安定性向上のために、水素添加処理を行って飽和脂肪酸に変換したものである。このレシチンは化粧料や医薬品には好ましく用いることができる。
水素添加レシチンの例としては、エマルメティック320(ルーカスマイヤーコスメティックス社)、SLPホワイトH(辻製油)などがある。PC含量を高めた上に水素添加処理を行ったものの例としては、エマルメティック950(ルーカスマイヤーコスメティックス社)、SLP−PC92H(辻製油)、フォスフォリポン90H(リポイド社)などが市販されている。
【0058】
一方、酵素分解レシチンとは、通常グリセリンに結合している2位の脂肪酸のエステル結合を酵素によって選択的に分解したもので、通常のレシチンと区別するためにリゾレシチンと呼ばれる。リゾレシチンは元のレシチンと比較して、水溶性が向上し、一般に乳化力も向上する。この酵素分解処理は、最初のペースト状レシチンに対して行い、それを高度精製するのが通常であるが、分別レシチンに対して酵素分解処理を行うこともある。代表的なリゾレシチンとして、SLPホワイトリゾ(辻製油)が挙げられる。
【0059】
また、異なる酵素処理レシチンとして、リン酸と塩基の間のエステル結合を分解するものも作られている。この処理を行うことで、リン脂質から塩基が除かれ、フォスファチジン酸の形になることで強いアニオン性を示すようになる。このタイプの酵素処理レシチンの例としては、PAナガセ、リゾリン脂質ナガセHなどが市販されている。
【0060】
上述したレシチンのうち、いずれのものを使用してもよいが、エマルション組成物の保存安定性維持という観点から、大豆レシチンが好ましく、その中でも、高度精製レシチン、分別レシチンがより好ましい。
【0061】
また、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、SLP−ホワイト(辻製油製)、エメルメティック900(ルーカスマイヤー製)、フォスフォリポン50(リポイド製)、レシオンP(理研ビタミン製)などが挙げられる。
レシチンは、一種単独又は複数種類の混合物の形態で用いることができる。
【0062】
レシチンの含有量は、エマルション組成物全質量に対して、0.01質量%〜30質量%であることが好ましく、0.1質量%〜20質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0063】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびレシチンが好ましい。
上述した乳化剤は、用途に合わせて、一種単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(水性成分)
本発明のエマルション組成物は、水相中に、水性成分を適宜含有することができる。
本発明のエマルション組成物の水性成分として、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色素、香料等などを含有することができる。
【0065】
本発明のエマルション組成物は、防腐性や粘度調節の目的で、多価アルコールを含有することができる。
本発明のエマルション組成物に使用可能な多価アルコールの例としては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられる。
これらの二価以上の多価アルコールを、一種単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。また、これらの多価アルコールは、水相組成物の全質量に対して任意の割合で混合して用いることができる。
【0066】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の塩基、塩酸等の酸、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液等の緩衝液を用いることができる。
酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、クエン酸モノグリセリド等が挙げられる。
防腐剤の例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメート等が挙げられる。
【0067】
(水中油型エマルション組成物に含まれるエマルション粒子)
本発明のエマルション組成物が、水中油型のエマルション組成物である場合には、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相と、(3)乳化剤と、を含有するという構成を採用することによりエマルション組成物の保存安定性及び透明性を維持することができる。
本発明の水中油型エマルション組成物に含有されるエマルション粒子は、水中油型エマルション組成物の保存安定性及び透明性の観点から、平均粒子径が150nm以下のエマルション粒子であることが好ましい。
【0068】
エマルション粒子の平均粒子径とは、水中油型エマルション組成物中に存在するエマルション粒子の体積平均粒子径を意味する。すなわち、エマルション組成物の形態が水中油型である場合には、エマルション粒子は油滴である。
エマルション粒子の平均粒子径は、保存安定性及び透明性の観点から、5nm〜150nmであることが好ましく、10nm〜100nmがより好ましく、10nm〜90nmが更に好ましい。
【0069】
水中油型エマルション組成物中に含まれるエマルション粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡、遠心沈降法、液体排除クロマト法、レーザー散乱回折法、動的光散乱法などの公知の方法で求めることができるが、精度と測定の簡便さから、動的光散乱法を用いて測定することが好ましい。
動的光散乱を用いた市販の測定装置の例としては、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))、ナノトラックUPA(日機装(株))、ナノサイザー(マルバーン社製)等が挙げられるが、本発明における粒子径は、FPAR−1000を用いて25℃で測定した値を採用する。
具体的には、水中油型エマルション組成物を水で100倍(重量)に希釈して、メジアン径(d=50)として求める。
なお、エマルション粒子の平均粒子径は、組成物の成分以外に、製造方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、油相と水相との比率、などの要因によって調整することができる。
【0070】
本発明のエマルション組成物は、水中油型のエマルション組成物及び油中水型のエマルション組成物のいずれであってもよい。
本発明のエマルション組成物は、公知の方法に従い製造することが可能である。本発明のエマルション組成物の好ましい製造方法の例としては以下に述べる製造方法が挙げられる。
【0071】
<水中油型エマルション組成物の製造方法>
水中油型エマルション組成物は、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相組成物と、乳化剤と、水相組成物とを混合し、乳化すること等により製造することができる。以下に水中油型エマルション組成物の製造方法を示す。但し、水中油型エマルション組成物の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。なお、乳化剤は、使用する乳化剤の性質に応じて、油相組成物に添加してもよく、水相組成物に添加してもよい。
【0072】
まず、上述したN−ラウロイルサルコシンイソプロピル及び特定油性成分に、レシチン(乳化剤)を混合して、60℃〜90℃に加熱して、油相組成物を調製することが好ましい。該組成物は、必要に応じてその他の油性成分を含んでいてもよい。
次に、調製した油相組成物を、40℃〜90℃に加熱した所定のイソステアリン酸ポリグリセリル(乳化剤)入り水相組成物中に撹拌しながら添加混合することができる。
【0073】
この際の油相組成物と水相組成物との混合比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相組成物/水相組成物比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相組成物/水相組成物比率を0.1/99.9以上とすることにより、有効成分が低くならないためエマルション組成物の実用上の問題が生じない傾向となり好ましい。また、油相組成物/水相組成物比率を50/50以下とすることにより、乳化剤濃度が薄くなることがなく、エマルション組成物の安定性が悪化しない傾向となり好ましい。
【0074】
油相組成物と水相組成物とを混合し、乳化する際には、油相組成物と水相組成物とを混合して粗乳化物を得て、その後、微細乳化手段を用いて微細化することが好ましい。
油相組成物と水相組成物とを混合して粗乳化物を得る手段としては、市販のいずれの混合手段を用いてもよい。例えば、水性媒体をマグネチックスターラー、家庭用ミキサー、パドルミキサー、インペラーミキサーなどで混合撹拌することで、均一な粗乳化液を調製できる。
また、強い剪断力を有する撹拌手段、すなわち、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサーなどを用いて油相組成物と水相組成物とを混合する方がより好ましい。
さらに粗乳化の効果を高める目的で、これらの撹拌手段に加えて、超音波を利用することも好ましい。
超音波付与手段としては、超音波ホモジナイザーを用いることが好ましい。超音波ホモジナイザーの例としては、超音波ホモジナイザーUS−600、同US−1200T、同RUS−1200T、同MUS−1200T(以上、(株)日本精機製作所製)、超音波プロセッサーUIP2000,同UIP−4000、同UIP−8000、同UIP−16000(以上、ヒールッシャー社製)等が挙げられる。
これらの高出力超音波照射装置は25kHz以下、好ましくは15kHz〜20kHzの周波数で使用することができる。
また、他の混合手段として、外部からの撹拌部を持たず、低エネルギーしか必要としない、スタチックミキサー、マイクロチャネル、マイクロミキサーなどを用いることもできる。
この粗乳化処理における温度は、20℃以上90℃以下の任意の温度で実施可能であるが、好ましくは40℃以上80℃以下の温度で処理することが挙げられる。
【0075】
次に、得られた粗乳化物を、微細乳化手段を用いて微細化することが好ましい。
微細化の手段としては、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。高圧ホモジナイザーは、攪拌方式と比べて大きな剪断力を与えることができるために、微細化が可能であり、種々の装置が市販されている。
高圧ホモジナイザーには大きく分けて、固定した絞り部を有するチャンバー型高圧ホモジナイザーと、絞りの開度を制御するタイプの均質バルブ型高圧ホモジナイザーがある。前者のチャンバー型高圧ホモジナイザーの例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、スターバースト((株)スギノマシン製)等が挙げられる。後者の均質バルブ型高圧ホモジナイザーの例としては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)、ホモゲナイザー(三和機械(株)製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ(株)製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0076】
高圧ホモジナイザーは、流路の中に非常に狭いチャンバー部や絞り部を備え、狭い流路にポンプを用いて強制的に液を送ることで、絞り部の前後で非常に大きな圧力差を生じ、この圧力差を駆動エネルギーとして、液は狭い管路を音速に匹敵する速度で移動するために、流路壁との間で大きな剪断力が発生し、これが分散力となる。
加える圧力と生成する剪断力は比例関係にあり、高圧を加えれば加えるほど、分散に使われる剪断エネルギーは高くなる。しかし、剪断力が全て分散に使われるわけではなく、高圧になればなるほど、エネルギー効率としては低下して熱に変換される割合が増える傾向にあることが知られており、高圧にも限界はある。
【0077】
水中油型エマルション組成物の製造においては、分散性(微細化)の観点から、圧力は100MPa以上とし、より好ましくは150MPa以上であることが好ましい。高圧側の限界は市販の装置では、温度上昇と耐圧性の観点から300MPa以下であることが好ましい。
【0078】
微細乳化手段を用いて微細化する場合の、高圧処理を行う回数は1回でもよいが、液全体の均一性を高めるためには、2回以上の高圧処理を行うことが好ましく、2回〜5回の高圧処理を行うことがより好ましい。
高圧分散処理前の温度は、20℃〜80℃に設定することが好ましいが、より好ましくは40℃〜70℃である。高圧分散処理直後に冷却手段を用いて迅速に冷却し、所定の温度に下げるのが好ましい。冷却装置としては、任意の市販の熱交換器を用いることができる。
【0079】
<油中水型エマルション組成物の製造方法>
油中水型エマルション組成物は、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相組成物と、乳化剤と、水相組成物とを混合し、乳化すること等により製造することができる。以下に油中水型エマルション組成物の製造方法を示す。但し、油中水型エマルション組成物の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。なお、乳化剤は、使用する乳化剤の性質に応じて、油相組成物に添加してもよく、水相組成物に添加してもよい。
【0080】
まず、上述したN−ラウロイルサルコシンイソプロピル及び特定油性成分に、非イオン性界面活性剤(乳化剤)を混合して、60℃〜90℃に加熱して、油相組成物を調製することが好ましい。該組成物は、必要に応じてその他の油性成分を含んでいてもよい。
次に、40℃〜90℃に加熱した所定の水性成分を含有する水相組成物中を、調製した油相組成物に撹拌しながら添加混合することができる。
【0081】
油相組成物と水相組成物とを混合し、乳化するときの方法、具体的手段、温度条件などについては、上述した水中油型エマルション組成物の製造方法と同様の手段を用いることができる。
【0082】
<皮膚外用組成物>
皮膚外用組成物は、(1)N−ラウロイルサルコシンイソプロピルと、(2)フィトステロール、コレステロール、フィトステリルエステル及びコレステリルエステルからなる化合物群より選ばれる少なくとも1種の油性成分と、を含む油相と、(3)乳化剤と、を含有するエマルション組成物を含有する。
これにより、皮膚外用組成物は、保存安定性を維持し得る。また、エマルション組成物が水中油型のエマルション組成物である場合には、保存安定性及び透明性を維持することができる。
【0083】
エマルション組成物の詳細については、前述した事項をそのまま適用する。
皮膚外用組成物は、エマルション組成物の項に記載された成分以外にも、食品、化粧品等の分野において通常用いられる添加成分(以下、「他の添加成分」ともいう。)を、その形態に応じて適宜含有させてもよい。
【0084】
他の添加成分としては、例えば、pH調整剤、pH緩衝剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、着色剤、賦形剤、粘度調整剤、ラジカル捕捉剤など、通常その用途で使用される他の添加物を用いることができる。
また、その機能に基づいて各種成分を配合することができる。例えば、エモリエント剤、トリートメント剤、潤滑剤、保湿剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗白髪剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、清涼剤、温感剤などを挙げることができる。
【0085】
なお、水中油型のエマルション組成物を含有する皮膚外用組成物の透明性は、外観を目視することによって簡便に判断することができる。なお、より正確に判断するためには、濁度を測定すればよい。
この場合、濁度は、UV−VISIBLEスペクトルフォトメーターUV−2550(島津製作所製)を使用し、10mmセルにて、25℃における650nmの吸光度として測定する。
本発明において、皮膚外用組成物が透明であるということは、650nmの吸光度の測定値が0.1以下であることを意味する。また、650nmの吸光度の測定値が0.05以下である皮膚外用組成物がより好ましい。
【0086】
水中油型のエマルション組成物を含有する皮膚外用組成物は、上述した通り、保存安定性に加えて透明性に優れているのが特徴の一つである。
一般的には、水中油型のエマルション組成物を含有する皮膚外用組成物は、保存中に油滴(エマルション粒子)が成長、及び/又は凝集し、測定されたエマルション粒子の平均粒子径が増大することにより、水中油型のエマルション組成物を用いて調製した皮膚外用組成物の透明性が損なわれる。
そこで、上記濁度を経時保存前後に測定することで、皮膚外用組成物の保存安定性を評価することができる。
本発明の皮膚外用組成物は、効果発現に十分な量の有効成分を含有しうるものであり、且つ冷蔵保存が可能であることから、化粧料、軟膏として使用することができる。中でも、顔用化粧料、頭皮用化粧料として用いることが好ましく、頭皮用化粧料として用いられることが特に好ましい。
化粧料の形態には特に制限はなく、化粧水(ローション)、美容液(エッセンス)、クリーム、乳液等の化粧料を例示することができる。化粧料の形態は、透明性の高い乳化物を好適に用いることができる観点から、中でも化粧水(ローション)、美容液(エッセンス)が好ましい。
【0087】
なお、本発明の皮膚外用組成物は、公知の方法に従い製造することが可能である。例えば、上述のエマルション組成物の製造方法により調製されたエマルション組成物を、皮膚外用組成物の全質量に対する、有効成分の含有濃度が0.00001%〜10%等になるように精製水等を用いて希釈すること等で得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
<実施例1>
(水中油型エマルション組成物の調製)
N−ラウロイルサルコシンイソプロピル(味の素製;エルデュウSL−205)16.00g、コレステロール(日本精化製)4.00g及び高純度大豆レシチン(辻製油製;SLP−ホワイト)1.50gを混合し、70℃にて撹拌しながら溶解し、これを油相組成物とした。
一方、イソステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB=12)(日光ケミカル製)6.00gを、グリセリン(和光純薬製)47.50g及び精製水25.00gの混合液中に70℃にて溶解させたものを水相組成物とした。
各々溶解した水相組成物と油相組成物を、TKホモミキサー(プライムミックス製)で60℃にて、500rpmの回転数で15分間粗乳化した。この粗乳化物を、超高圧分散装置であるスターバーストミニ機(スギノマシン製)で、60℃に保ちながら、圧力200MPaで2回通過させて微細乳化物(水中油型エマルション組成物)を調製した。
【0090】
(平均油滴サイズ測定)
粒子径は、FPAR−1000を用いて25℃で測定した値を採用した。
具体的には、水中油型エマルション組成物を水で100倍(重量)に希釈して、メジアン径(d=50)として求めて、表1に示した。
【0091】
(透明性の評価)
精製水で100倍に希釈した微細乳化物を、1cm角の光学セルに入れて、目視にて透明性の評価を以下の基準に従い行った。結果を表1に示した。
A:透明であると感じる
B:濁りはあるが、透明感がある。
C:濁りが強く透明感がない。
【0092】
(保存安定性の評価)
50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、冷蔵(5℃)で1ヵ月間保存したエマルション組成物とを、それぞれ水で100倍に希釈して、1cm角の光学セルに入れて、目視にて保存安定性の評価を以下の基準に従い行った。結果を表1に示した。
A:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、冷蔵(5℃)で1ヵ月間保存したエマルション組成物とで差がない。
B:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物の方が濁りは強いが、50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物にも透明感は残る。
C:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物の方が、濁りが強いく、透明感もない。
【0093】
<実施例2〜12及び比較例1〜4>
コレステロールを表1に記載のものに変更し、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、油相組成物を調製し、実施例1と同様に透明性及び保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
<実施例13>
(油中水型エマルション組成物の調製)
N−ラウロイルサルコシンイソプロピル(味の素製;エルデュウSL−205)16.00g、コレステロール(日本精化製)4.00g及びショ糖エルカ酸エステル(三井化学フーズ製;ER−190)3.00gを混合し、70℃にて撹拌しながら溶解し、これを油相組成物とした。
一方、メチルパラベン(上野製薬製;メッキンスM)0.20g、1,3−ブチレングリコール(和光純薬)7.00gを、グリセリン(和光純薬製)7.00g及び精製水62.80gの混合液中に70℃にて溶解させたものを水相組成物とした。
各々溶解した水相組成物と油相組成物を、ホモミキサー(みづほ工業(株)製、真空乳化装置PVQ−1D型)で80℃にて、6,000rpmの回転数で10分間乳化して、乳化物(油中水型エマルション組成物)を調製した。
【0096】
(保存安定性の評価)
50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、室温で1ヵ月間保存したエマルション組成物とを、それぞれ水で100倍に希釈して、1cm角の光学セルに入れて、目視にて外観及び粘性について性状を比較し、以下の基準に従い評価した。結果を表2に示した。
A:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、室温で1ヵ月間保存したエマルション組成物とで差がない。
B:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、室温で1ヵ月間保存したエマルション組成物とを比較したときに、50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物に、わずかな粘性の変化や、油相と水相との分離が認められた。
C:50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物と、室温で1ヵ月間保存したエマルション組成物とを比較したときに、50℃の温度で1ヵ月間保存したエマルション組成物に、顕著な粘性の変化や、油相と水相との顕著な分離が認められた。
【0097】
<実施例14〜22及び比較例5〜8>
コレステロールを表2に記載のものに変更し、N−ラウロイルサルコシンイソプロピルの含有量を表2に記載のように変更した以外は、実施例13と同様にして、油相組成物を調製し、実施例13と同様に保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
この結果から、本発明のエマルション組成物は、保存安定性に優れることが明らかになった。また、水中油型エマルション組成物は、保存安定性及び透明性に優れることが明らかになった。
【0100】
2013年1月21日に出願された日本国特許出願2013−008701号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。