特許第5989201号(P5989201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989201シリコーンオイル処理シリカ粒子、及び電子写真用トナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989201
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】シリコーンオイル処理シリカ粒子、及び電子写真用トナー
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20160825BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20160825BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
   G03G9/08 375
   G03G9/08 325
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-157151(P2015-157151)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-138035(P2016-138035A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-11088(P2015-11088)
(32)【優先日】2015年1月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 友也
(72)【発明者】
【氏名】小松原 胆治
(72)【発明者】
【氏名】中村 正博
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/139502(WO,A1)
【文献】 特開2004−045668(JP,A)
【文献】 特開2012−150172(JP,A)
【文献】 特開2015−011131(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/042372(WO,A1)
【文献】 特開2011−203496(JP,A)
【文献】 特開平02−308173(JP,A)
【文献】 特開2009−292915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/12− 33/193
G03G 9/08− 9/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子本体と、シリコーンオイルとを備えたシリコーンオイル処理シリカ粒子であって、
前記シリカ粒子本体はヒュームドシリカであり、
前記シリカ粒子本体のBET比表面積が70m/g以上120m/g以下であり、
前記シリカ粒子本体は前記シリコーンオイルによって表面処理されており、
前記シリカ粒子本体の、測定範囲20〜30nm、30〜40nm、及び50〜70nmのそれぞれにおけるフラクタル形状パラメータα値のうち最大値αmaxが2.9以上であり、
前記シリコーンオイルのうち、前記シリカ粒子本体の表面から遊離する遊離シリコーンオイルの量は、前記シリカ粒子本体に対して2.0質量%以上5.0質量%以下であり、
粒子径の中央値が5μm以上8μm以下であるスチレンアクリル樹脂粒子100質量部に対して前記シリコーンオイル処理シリカ粒子を2質量部混合させた表面処理スチレンアクリル樹脂粒子の、下記の条件により測定した凝集度が18%以下である、シリコーンオイル処理シリカ粒子。
前記凝集度は、前記シリコーンオイル処理シリカ粒子を混合させた表面処理スチレンアクリル樹脂粒子2gを用い、篩の目開きが上から150μm、75μm、45μmのものを用いたパウダテスタを使用して、振幅を1mm、振動時間を30秒の条件にて測定し、下記式にて算出
凝集度(%)=(A+0.6×B+0.2×C)/2×100
式中のA、B、Cの値は
A:150μmの目開きの篩上の残存量(g)
B:75μm上の目開きの篩上の残存量(g)
C:45μm上の目開きの篩上の残存量(g)
【請求項2】
前記シリカ粒子本体のHeガスピクノメータ法により測定した粒子密度が2.23g/cm以上である、請求項1に記載されているシリコーンオイル処理シリカ粒子。
【請求項3】
前記シリカ粒子本体の嵩比重が20g/l以上35g/l以下である、請求項1または2に記載されているシリコーンオイル処理シリカ粒子。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一つに記載されているシリコーンオイル処理シリカ粒子を外添剤として含んでいる電子写真用トナー。
【請求項5】
BET比表面積が70m/g以上120m/g以下であるシリカ粒子本体を用意する工程と、
前記シリカ粒子本体にシリコーンオイルを添加して前記シリカ粒子本体表面をシリコーンオイルで被覆する工程と
を含み、請求項1記載のシリコーンオイル処理シリカ粒子を得る、シリコーンオイル処理シリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコーンオイル処理シリカ粒子及びそれを含む電子写真用トナーに関し、特にシリカ粒子本体とシリコーンオイルとを備えたシリコーンオイル処理シリカ粒子及びそれを含む電子写真用トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザープリンター等の電子写真技術において現像剤に使用されるトナーには、流動性の付与や帯電効率の向上、帯電量の制御等を目的として、外添剤が広く使用される。かかる外添剤としては、シリカが一般的である。
【0003】
近年、複写機やプリンターにおいて、高速化、装置の小型化、カラー化、及び高画質化等がますます強く求められるようになり、使用されるトナーの設計においても、このような要求に対応すべく開発が進められている。
【0004】
特に、電子写真技術において、長期に渡って安定した画像特性を維持することは必須の課題である。そのため、トナーの外添剤であるシリカについて種々の検討が行われてきた。(例えば、特許文献1,2,3)
シリカは、数nmから数十nmの径の一次粒子が化学結合して凝集し、一次凝集粒子となり、さらにその一次凝集粒子が物理的に凝集して数十μmから数百μmの径の凝集粒子となって存在している。トナーにおけるシリカの役割は、流動性の付与と帯電特性の安定化を主としている。この役割を果たすために、シリカの凝集粒子の大きさや性質はもちろん、表面処理が重要なポイントとなっている。特許文献1〜3では、表面処理としてシリコーンオイルでの処理がなされているシリカが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−98700号公報
【特許文献2】特開2014−174475号公報
【特許文献3】特開2014−174501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら複写機やプリンターの印刷速度を大きくする検討や、高精細化の検討を行うと、従来のシリカを外添剤に用いたトナーでは凝集が生じ、その結果色抜けや濃度ムラと呼ばれる印刷不良が発生してしまうという問題が明らかになった。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、印刷時の色抜けや濃度ムラを低減させて印刷品質を向上させるトナーの外添剤としてのシリコーンオイル処理シリカ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のシリコーンオイル処理シリカ粒子の一態様は、シリカ粒子本体と、シリコーンオイルとを備えたシリコーンオイル処理シリカ粒子であって、前記シリカ粒子本体のBET比表面積が70m/g以上120m/g以下であり、前記シリカ粒子本体は前記シリコーンオイルによって表面処理されており、前記シリコーンオイルのうち、前記シリカ粒子本体の表面から遊離する遊離シリコーンオイルの量は、前記シリカ粒子本体に対して2.0質量%以上5.0質量%以下であり、粒子径の中央値が5μm以上8μm以下であるスチレンアクリル樹脂粒子100質量部に対して前記シリコーンオイル処理シリカ粒子を2質量部混合させた表面処理スチレンアクリル樹脂粒子の凝集度が18%以下である構成を有している。ここでスチレンアクリル樹脂とは、スチレンとアクリル酸またはアクリル酸アルキルエステルとを共重合させた樹脂である。
【0009】
前記シリカ粒子本体の、測定範囲20〜30nm、30〜40nm、及び50〜70nmのそれぞれにおけるフラクタル形状パラメータα値のうち最大値αmaxが2.9以上であることが好ましい。
【0010】
前記シリカ粒子本体のHeガスピクノメータ法により測定した粒子密度が2.23g/cm以上であることが好ましい。
【0011】
前記シリカ粒子本体の嵩比重が20g/l以上35g/l以下であることが好ましい。
【0012】
本開示の電子写真用トナーは、上記のシリコーンオイル処理シリカ粒子を外添剤として含んでいる。
【0013】
本開示のシリコーンオイル処理シリカ粒子の製造方法は、BET比表面積が70m/g以上120m/g以下であるシリカ粒子本体を用意する工程と、前記シリカ粒子本体にシリコーンオイルを添加して前記シリカ粒子本体表面をシリコーンオイルで被覆する工程とを含み、上述ののシリコーンオイル処理シリカ粒子を得る製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本開示のシリコーンオイル処理シリカ粒子は、電子写真用のトナーの外添剤として用いると、トナーの流動性を向上させるとともに、トナーが凝集してしまうことを防止し、印刷時の色抜けや濃度ムラが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0016】
(実施形態)
実施形態に係るシリコーンオイル処理シリカ粒子は、シリカ粒子本体をシリコーンオイルにより表面処理したものである。以下、シリコーンオイルにより表面処理を施す前のシリカ粒子本体を、単にシリカ粒子と称し、シリコーンオイルにより表面処理したものをシリコーンオイル処理シリカ粒子と称することにする。
【0017】
本実施形態のシリコーンオイル処理シリカ粒子は、トナー外添剤や、粉体塗料の外添剤として使用できる他、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等の各種樹脂材料の充填材などとして使用できる。中でも、分散性に優れ、良好な流動性を付与することから電子写真用トナーの外添剤として特に好適に使用できる。
【0018】
電子写真用トナーにおいて、シリコーンオイル処理シリカ粒子は外添剤として、トナー原料であるスチレンアクリル樹脂やポリエステル樹脂からなる樹脂粒子に添加されて攪拌・混合され、樹脂粒子の表面に付着する。このとき、シリコーンオイル処理シリカ粒子が樹脂粒子表面にサブミクロン以下の凝集粒子にまで分散して付着すると、トナーの流動性や帯電特性が向上することがわかっている。しかしながら、電子写真の印刷条件がより厳しくなると、従来のトナーでは印刷品質が不十分となってしまい、それを解決するために本願発明者らが種々の検討を行った結果、本開示の技術に至ったものである。その内容は、シリカ粒子の粒子径(BET比表面積により規定)と、シリコーンオイルにより表面処理したシリコーンオイル処理シリカ粒子の遊離シリコーンオイルの量と、シリコーンオイル処理シリカ粒子を添加したトナー(疑似トナーで代替)の凝集度とが所定の関係にあると、印刷品質が向上するということであり、さらにシリカ粒子のフラクタル形状パラメータ、粒子密度及び嵩比重も所定の関係にあることが好ましい、ということである。以下に具体的に説明する。
【0019】
基材となるシリカ粒子は、含水量が少ないことから、乾式シリカであることが好ましい。乾式シリカは、火炎中にケイ素化合物を供給して製造されるものであり、かかるシリカ粒子は、水分や粗大粒子が少なく、外添剤として用いた場合、トナー樹脂の流動性付与効果や、帯電性付与に優れる。特に、一般的にヒュームドシリカと呼ばれるクロロシランの火炎熱分解によって製造されるシリカ粒子が好ましい。
【0020】
上記乾式シリカの好適な製造方法を例示すれば、特開2008−19157号に記載されている製造方法が挙げられる。即ち、中心管とその外周に形成された第1環状管を有する多重管構造のバーナーを使用し、シロキサン化合物のガスと酸素ガスとを含む混合ガスを前記バーナーの中心管に供給し、且つ水素ガスまたは炭化水素ガスを可燃性成分として含む補助ガスを前記バーナーの第1の環状管に供給して燃焼を行うことにより乾式シリカの粒子を製造する方法が挙げられる。また、一般的にヒュームドシリカと呼ばれるクロロシランの火炎熱分解によって製造する方法も挙げられる。
【0021】
本実施形態においてはシリカ粒子のBET比表面積は、70m/g以上120m/g以下である。BET比表面積が70m/gよりも小さいとシリカ粒子の粒子径が大きくなりすぎてトナーの表面から脱離しやすくなり、外添剤としての機能である流動性やスペーサー付与効果が低下するおそれがある。またBET比表面積が120m/gよりも大きいと粒子径が小さくなりすぎて、スペーサー付与効果が低下してしまうおそれがある。さらに80m/g以上90m/g以下であると、トナーの外添剤として用いた場合にトナーの流動性やスペーサー付与効果がより良好になるため好ましい。シリカ粒子のBET比表面積は、シリカ粒子の製造方法・製造条件によって変わってくる。
【0022】
本実施形態に係るシリカ粒子は、フラクタル形状パラメータαmaxが、測定範囲の下限値が20nm以上において、2.9以上であることが好ましい。フラクタル形状パラメータは、種々の大きさの周期構造の頻度に対応する“粒子形状の指標となるフラクタル形状パラメータ(α値)”であって、詳細は、D.W.SchaeferらによるPhysical Review Letters,Volume52,Number26,p.2371−p.2374(1984)等に記載されている。なお、当該論文の内容は本願明細書中に記載の一部として組み入れられる。
【0023】
即ち、α値は、小角X線散乱測定により決定することができる。小角X線散乱測定によれば通常のX線回折では得ることのできないナノメーター以上の周期構造に関する情報(構造の周期及び頻度に関する情報)を得ることができるので、この情報に基づきα値を決定する。
【0024】
具体的には、フラクタル形状パラメータα値は、下記の方法によって測定される。即ち、小角X線散乱におけるバックグラウンド補正後の散乱強度(I)、散乱ベクトル(k)及びフラクタル形状パラメータ(α)との間には下記式(2)の関係があるので、横軸をk、縦軸をIとしてプロットした小角X線散乱曲線からα値を決定することができる。
【0025】
I∝k−α ・・・式(1)
但し、k=4πλ−1sinθ
式中、I:散乱強度
k:散乱ベクトル(単位はnm−1
π:円周率
λ:入射X線の波長(単位はnm)
θ:X線散乱角度(θは検出器の走査角度を0.5倍した値)
小角X線散乱曲線を得るためには、まず単色化されたX線をスリット及びブロックを用いて細く絞り試料に照射し、検出器の走査角度を変化させながら、試料によって散乱されたX線を検出する。そして、X線散乱角度(θ)から上記式によって求めた散乱ベクトル(k)を横軸に、バックグラウンドを補正した散乱強度(I)を縦軸にプロットした関係を求める。このとき両対数目盛りでプロットすれば、あるkの値における小角X線散乱曲線の接線の傾きが−αに等しくなるのでα値を求めることができる。
【0026】
なお、バックグラウンドの補正は、サンプルの散乱強度からサンプルのない測定セルのみの散乱強度を差し引くことによって行うことができる。ここで、α値解析対象の大きさをD(nm)とすると、DとX線散乱角度θと入射X線波長λとの間には、ブラッグの式(2D×sinθ=λ)の関係があるので、kとDの間には下記式の関係が成立する。
【0027】
D=2πk−1
ここで、シリカ粒子について、係る小角X線散乱を測定した場合には、得られた小角X線散乱曲線を解析することにより、一次粒子やその凝集粒子構造における、各大きさの周期構造の頻度に対応する該α値を求めることができる。なお、この測定に当たっては測定のレンジ(範囲)によってα値が変わってきて、レンジが小さくなればα値が大きくなる。そこで測定範囲を、20〜30nm、30〜50nm、50〜70nmとそれぞれして、各々の測定範囲のα値を算出し、その最大値をαmax値として決定する。本実施形態においてはシリカ粒子のBET比表面積は、70m/g以上120m/g以下であり、その一次粒子の粒径は約18〜26nmである。従って、20nmよりも小さい測定範囲においては一次粒子の粒子表面の一部を測定することとなり、α値は大きくなる。本実施形態においてシリカ粒子は、添加剤として使用される際に一次粒子やその凝集粒子の形態であるので、測定範囲を上記の範囲とした。BET比表面積が上記範囲であるシリカ粒子の場合、70nmを超える測定ではα値は徐々に低下して最大値を有し得ない。
【0028】
ところで、α値が4に近づいて大きくなると構造性が小さくなり、真球に近くなることが知られている。そのため一次粒子やその凝集粒子構造におけるα値が大きいほどシリカ粒子の分散性が優れているといえる。ゆえに、αmax値が2.9よりも小さいとシリカ粒子の分散性が劣って、トナーの外添剤として用いた場合にシリカ凝集体やトナー凝集体が生じやすくなり、印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じるおそれがある。αmax値は3.0以上であることが好ましく、3.1以上であることがさらに好ましい。なお、αmax値の上限は特に限定されるものではなく、4に近い方が好ましいが、実用上は3.8以下であることがより好ましい。
【0029】
また、本実施形態においてシリカ粒子のHeガスピクノメータ法により測定した粒子密度は、2.23g/cm以上であることが好ましい。シリカ粒子の粒子密度が2.23g/cmよりも小さいと、シリカ粒子が電子写真の印刷プロセスにおいて感光体へ押しつけられたときの弾性変形が大きいため、感光体の表面に傷が生じてしまう可能性がある。その結果フィルミングが生じて印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じるおそれがある。シリカ粒子の粒子密度が2.24g/cm以上であると、印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じるおそれがほとんどないのでより好ましい。
【0030】
本実施形態に係るシリカ粒子は、嵩比重が20g/l以上35g/l以下であることが好ましい。さらに、21g/l以上30g/l以下であることがより好ましく、21g/l以上27g/l以下であることが特に好ましい。嵩比重はJIS 5101−12−1 顔料試験方法に準じて測定を行う。嵩比重が20g/lよりも小さいと、シリコーンオイルにより表面処理する際に、均一に処理することが難しくなり、表面処理の程度にばらつきが生じるおそれがある。具体的には、処理のバッチ内での場所によってシリカ粒子表面のシリコーンオイルの被覆量にばらつきが生じると、そのシリコーンオイル処理シリカ粒子をトナーの外添剤として用いた場合に、シリコーンオイル処理シリカ粒子の分散不良が生じたりトナー凝集体を生成させる原因となり、印刷における色濃度の低下や色抜けが生じる原因となる。また、嵩比重が35g/lよりも大きいと、シリカ粒子が凝集した状態でシリコーンオイル処理を行うことになり、トナーに添加するとトナー凝集体が生成するおそれがあり、その場合印刷における色濃度の低下や色抜けが生じる原因となる。なお、嵩比重の調整は公知の方法を制限なく用いることができる。具体的には、嵩比重が前記範囲より小さい場合には脱気プレス等を用いて圧縮し、嵩比重が前記範囲になるように調整すればよい。
【0031】
本実施形態に係るシリカ粒子は、シリコーンオイルにより表面処理されてシリコーンオイル処理シリカ粒子となる。本実施形態において使用するシリコーンオイルは、特に限定されず、公知ものを制限なく使用することができる。具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0032】
上記シリコーンオイルの粘度は特に制限されないが、20〜500cStのものを好適に用いることが可能である。シリコーンオイルの粘度がこの範囲を超えて小さい場合には、シリコーンオイルが揮発性になるため、所定の量をシリカ粒子表面に付着させにくい傾向にあり、またこの範囲を超えて大きくなると、処理が不均一になる傾向にある。また、官能基の異なる2種類以上のシリコーンオイルを混合して用いてもよいし、同じ官能基を持ち、粘度や分子量分布が異なる2種類以上のシリコーンオイルを混合して用いてもよい。
【0033】
シリコーンオイルによる表面処理の方法は特に限定されない。処理方法として、トルエン等の溶媒中にシリコーンオイルを溶解させ、該溶液中にシリカ粒子を分散させ、溶媒を蒸発させることによりシリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させ、更に所定の熱処理を行うことによる方法(湿式処理法)、及びミキサー、あるいは流動層中で混合しながらシリカ粒子に対してシリコーンオイルを噴霧し、シリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させ、所定の熱処理を行うことによる方法(乾式処理法)が挙げられる。
【0034】
上記湿式処理法、乾式処理法のうち、より均一に処理されたシリカ粒子が得られる理由、及び有機溶媒を使用しないため、コスト面、安全面、環境面において優れている理由から乾式処理法を用いることが好ましい。
【0035】
前記乾式処理法において、良好な混合状態でシリコーンオイルを噴霧することは、均一なシリコーンオイル処理を行う上で重要である。シリカ微粉末を混合する方法としては、ミキサーが好ましい。ミキサーによる混合は、流動層による混合と比較してシリカ粒子同士の衝突頻度が高く、シリカ粒子間でのシリコーンオイルのやり取りが頻繁に行われるため、より均一に処理された表面処理シリカ粒子が得られる傾向にある。
【0036】
上記シリコーンオイル処理におけるミキサー中での攪拌においては、シリカ粒子が流動化し、且つ安定化した攪拌状態が得られるように、攪拌の回転数及び攪拌羽の形状を選定することが好ましい。容器は密閉していても、していなくても、どちらでも良い。
【0037】
本実施形態において、シリコーンオイル処理を前記乾式処理法により行う場合に、シリコーンオイルを噴霧する際の噴霧粒径は、80μm以下であることが好ましい。噴霧粒径をこの範囲内とすることにより、均一な処理を行ない易い。シリコーンオイルの噴霧装置は、1流体ノズル、2流体ノズル等を用いることが可能である。より小さな粒径で噴霧が可能である理由から、2流体ノズルにより行うことが好ましい。
【0038】
本実施形態において、シリコーンオイル処理は、シリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させた後に、所定の熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、特に限定されないが、好ましくは100℃〜300℃の環境下で行うことができる。
【0039】
シリコーンオイル処理シリカ粒子におけるシリコーンオイルは、シリカ粒子と結合しているものと、表面に単に物理吸着により付着しているだけのものとに分かれる。シリカ粒子と結合しているシリコーンオイルとは、シリカ粒子の表面にシラノール基が存しているので、それと水素結合等の弱い化学結合により固定化されたものである。また、表面に単に付着しているシリコーンオイルは、ヘキサン等の炭化水素系の有機溶媒によってシリコーンオイル処理シリカ粒子から遊離させることができる。このように有機溶媒によってシリコーンオイル処理シリカ粒子から遊離させることができるシリコーンオイルを遊離シリコーンオイルと呼ぶ。
【0040】
遊離シリコーンオイルの量は、シリコーンオイル処理シリカ粒子をノルマルヘキサンに浸漬させて溶出するシリコーンオイル量を測定することにより求めることができる。具体的には以下の方法により算出できる。すなわち、まず、容量50mlの遠心管に、試料のシリコーンオイル処理シリカ粒子0.5gとノルマルヘキサン32mlを入れ、超音波洗浄器(例えば、ヤマト科学製超音波洗浄器1510JMTH)にて30分間超音波洗浄し、懸濁させる。得られた懸濁液を遠心分離して、固相(シリカ)を分離回収する。回収したシリカに対し、さらにノルマルヘキサンを32ml加え、超音波洗浄及び遠心分離の操作を計3回繰り返し固相(シリカ)を分離回収し、減圧乾燥(120℃、12時間)して乾燥粉末を得る。この粉末の炭素含有量を、酸素循環燃焼方式による全窒素・全炭素測定装置(例えば、株式会社住化分析センター製スミグラフNC−22F)を用いて測定する。予め、試料0.5g中の総炭素含有量を測定しておき、該総炭素含有量との差分から、抽出された遊離シリコーンオイルの量を算出する。具体的には、上記差分に相当する炭素分をジメチルシロキサンを主鎖とするシリコーンオイル(構造式:−(Si(CH−O)−)量に換算し、遊離シリコーンオイル量とすれば良い。
【0041】
遊離シリコーンオイルの量は、シリカ粒子本体に対して2.0質量%以上5.0質量%以下であり、2.0質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。遊離シリコーンオイルの量が2.0質量%よりも少ないと、シリコーンオイル処理シリカ粒子をトナーの外添剤として用いた場合に、トナーとキャリアとの摩擦帯電の量が場所によってばらついてしまい、印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じる可能性が大きくなる。一方、遊離シリコーンオイルの量が5.0質量%よりも多いと、シリコーンオイル処理シリカ粒子をトナーの外添剤として用いた場合に、過剰な遊離シリコーンオイルがトナーを凝集させてしまう可能性が大きくなり、印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じるおそれがある。遊離シリコーンオイルの量は、シリカ粒子をシリコーンオイルにより表面処理する際の条件によって変わってくる。
【0042】
本実施形態においては、粒子径の中央値が5μm以上8μm以下、ガラス転移温度が58〜63℃、メルトフローレートが2.2〜5.0g/10min(150℃、21.1N)、重量平均分子量が220,000〜280,000であるスチレンアクリル樹脂粒子100質量部に対してシリコーンオイル処理シリカ粒子を2質量部混合させた表面処理スチレンアクリル樹脂粒子の凝集度が18%以下であり、15%以下であることが好ましく、13%以下であることがさらに好ましい。なお、ガラス転移温度が58.6〜62.4℃、メルトフローレートが2.5〜4.7g/10min(150℃、21.1N)、重量平均分子量が230,000〜270,000であることが好ましい。上記粒子径の中央値とは、粒度分布計で測定した体積分布の中位径(メジアン径)をいう。また、上記物性を有するスチレンアクリル樹脂粒子として、具体的には三洋化成工業(株)製ハイマーSB−317が挙げられる。ここでスチレンアクリル樹脂粒子は疑似トナーである。凝集度はパウダテスタを用いて測定を行う。凝集度が18%超であると、トナーの凝集体の量が増えるため印刷の際に色濃度の低下や色抜けが生じるおそれが大きくなる。従って、凝集度は小さければ小さいほど好ましいが、BET比表面積が70m/g以上120m/g以下のシリカ粒子本体を用いたシリコーンオイル処理シリカ粒子である場合、5%以上であるのが通常である。なお、一般的に、同じ表面処理剤を用いて表面処理をした場合、シリカ粒子本体のBET比表面積が大きいほど、凝集度は小さくなる傾向にある。また、遊離シリコーンオイル量が多かったり、シリカ粒子本体の嵩比重が小さかったりすると凝集度が大きくなる傾向にある。
【0043】
以下、本実施形態のシリコーンオイル処理シリカ粒子の製造方法について説明する。前述のシリカ粒子にシリコーンオイルを添加し表面を被覆する。本実施形態において使用するシリコーンオイルは前述したものを好適に使用することができる。
【0044】
本実施形態において、シリコーンオイルの添加量は、粒子表面に十分な疎水性を付与でき、且つ得られるシリコーンオイル処理シリカ粒子の遊離シリコーンオイル量が、前述の範囲となる量であればよい。例えば、上記遊離シリコーンオイル量がシリカ粒子本体に対して、2.0質量%以上5.0質量%以下とする場合にはシリカ粒子本体の質量あたり6〜18質量%程度、2.0質量%以上4.0質量%以下とする場合にはシリカ粒子本体の質量あたり6〜15質量%程度添加すればよい。使用するシリコーンオイルの種類や、シリカ粒子の比表面積によって異なるため一概にはいえないが、例えば、基材のシリカ粒子の比表面積が100m/gの場合であれば、基材のシリカ100質量部に対して8〜16部、より好ましくは10〜14質量部、比表面積が70m/gの場合であれば、シリカ100質量部に対して6〜14質量部、より好ましくは8〜12質量部添加することが好ましい。
【0045】
上記シリコーンオイルの被覆方法は、シリカ粒子本体の表面をシリコーンオイルで被覆できればよいのであって特に限定されず、処理方法として、トルエン等の溶媒中にシリコーンオイルを溶解させ、該溶液中にシリカ粒子を分散させ、溶媒を蒸発させることによりシリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させ、更に所定の熱処理を行うことによる方法(湿式処理法)、及びミキサー、あるいは流動層中で混合しながらシリカ粒子に対してシリコーンオイルを噴霧し、シリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させ、所定の熱処理を行うことによる方法(乾式処理法)が挙げられる。
【0046】
上記湿式処理法、乾式処理法のうち、より均一に処理されたシリカ粒子が得られる理由、及び有機溶媒を使用しないため、コスト面、安全面、環境面において優れている理由から乾式処理法を用いることが好ましい。
【0047】
前記乾式処理法において、良好な混合状態でシリコーンオイルを噴霧することは、均一なシリコーンオイル処理を行う上で重要である。シリカ微粉末を混合する方法としては、ミキサーが好ましい。ミキサーによる混合は、流動層による混合と比較してシリカ粒子同士の衝突頻度が高く、シリカ粒子間でのシリコーンオイルのやり取りが頻繁に行われるため、より均一に処理された表面処理シリカ粒子が得られる傾向にある。
【0048】
上記シリコーンオイル処理におけるミキサー中での攪拌においては、シリカ粒子が流動化し、且つ安定化した攪拌状態が得られるように、攪拌の回転数及び攪拌羽の形状を選定することが好ましい。容器は密閉していても、していなくても、どちらでも良い。
【0049】
本実施形態において、シリコーンオイル処理を前記乾式処理法により行う場合に、シリコーンオイルを噴霧する際の噴霧粒径は、80μm以下であることが好ましい。噴霧粒径をこの範囲内とすることにより、均一な処理を行ない易い。シリコーンオイルの噴霧装置は、1流体ノズル、2流体ノズル等を用いることが可能である。より小さな粒径で噴霧が可能である理由から、2流体ノズルにより行うことが好ましい。
【0050】
本発明において、シリコーンオイル処理は、シリカ粒子表面にシリコーンオイルを付着させた後に、所定の熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、特に限定されないが、好ましくは100℃〜300℃の環境下で行うことができる。
【0051】
反応時間は、使用するシリコーンオイルの反応性に応じて、適宜決定すれば良いが、通常24時間以内で十分な反応率を得ることが可能である。
【0052】
反応後は、窒素等の不活性ガスを導入、流通させて反応を完結し、残留溶媒を除去する。
【0053】
(電子写真用トナー)
本実施形態の電子写真用トナーは、バインダー樹脂からなるトナーに本実施形態のシリコーンオイル処理シリカ粒子を外添剤として含むことを最大の特徴としており、流動性に優れ、またトナー凝集体の生成が抑えられるため、色抜けや濃度ムラ等の印刷不良の発生を抑制できる。
【0054】
上記トナーのバインダー樹脂としては、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等、特に制限なく公知のものが使用可能である。また、トナーの製造方法も、粉砕・混練法はもとより、懸濁重合や乳化重合等の重合法で得られたトナーにも適用できる。
【0055】
本実施形態の電子写真用トナーにおいて、本実施形態のシリコーンオイル処理シリカ粒子からなる外添剤の量は特に限定されず、得られるトナーが所望する特性となる量とすればよいが、一般的には0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることがより好ましい。また、本実施形態のトナーに添加される外添剤は、本実施形態のシリコーンオイル処理シリカ粒子を単独で使用してもよく、目的とする性能に応じて、他の外添剤と混合して使用してもよい。後者の場合は、外添剤としての総量が上記範囲となる量とすることが好ましい。なお、外添剤のトナーへの添加方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。
【0056】
本実施形態の電子写真用トナーは、その他の構成材料として、公知のものを任意に配合することができる。具体的には、黒の着色剤やシアン、マゼンタ、イエロー等のカラー着色剤、帯電制御剤、ワックス等の離型剤も当該分野で通常使用される材料を何ら制限なく使用できる。
【0057】
本発実施形態電子写真用トナーは、着色剤を配合することによって、黒トナーとすることもカラートナーとすることもできる。また、磁性一成分、非磁性一成分、二成分等のいずれの電子写真システムにおいても好適に使用できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施形態を具体的に説明するため、実施例と比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。シリカ粒子及びシリコーンオイル処理シリカ粒子の物性及び評価は以下の方法により測定した。
【0059】
(比表面積の測定)
シリカ粒子及びシリコーンオイル処理シリカ粒子の比表面積は、柴田科学器械工業性比表面積測定装置SA−1000を用い、窒素吸着量によるBET1点法により測定した。
【0060】
(粒子密度の測定)
島津製作所製 乾式自動密度計AccuPyc1330型 10mlサンプルインサートを使用し、圧力0.16PaのHeガスを用いた。測定器の測定温度は温水循環により25℃に保持した。サンプルの前処理としてサンプル充填量を増やすため以下の条件で一軸プレスを行った。直径50mm×高さ75mmの超硬合金製プレス金型にシリカ粒子を詰め、MASADASEISAKUSHO社製 MH-15TONプレス(ラム径55mm)により、15トンの圧力下で圧縮成形した。圧力の保持は約2秒で圧力を開放し金型からサンプルを取り出した。圧縮サンプルは真空乾燥器中で200℃−0.095PaG以下の圧力下で8時間乾燥後、乾燥器中で減圧下において室温まで放冷し測定に供した。
【0061】
(小角X線散乱によるα値の測定)
シリカ粒子を縦40mm、横5mm、厚さ1mmのサンプルホルダーの貫通孔に充填し、充填した試料の両側を厚さ6μmのポリプロピレンフィルムで鋏み込むことで保持したものを測定に供した。Kratzky U−slitを装備したマック・サイエンス社製二軸小角X線散乱装置(M18XHF22)を用いて、入射X線Cu−Kα線、管電圧40kV、管電流300mA、スリット幅10μm、検出器走査角度0.025度から0.900度で測定を行った。測定は、1サンプルに付き5回行い、その平均値を測定値とした。得られた小角X線散乱曲線を解析し、20〜30nm、30〜50nm、50〜70nm各々の測定範囲に含まれる大きさの周期構造についてそれぞれα値を算出し、その最大値をαmax値とした。α値測定の詳細は日本国特許第4756040号に記載された方法により行った。なお、当該特許の内容は本願明細書中に記載の一部として組み入れられる。
【0062】
(嵩比重の測定)
JIS 5101−12−1 顔料試験方法に準じて測定を行った。
【0063】
(シリカ表面シリコーンオイル、遊離シリコーンオイルの算出方法)
容量50mlの遠心管に、試料0.5gとノルマルヘキサン32mlを入れ、ヤマト科学製超音波洗浄器1510JMTHにて30分間超音波分散し、懸濁させる。得られた懸濁液を遠心分離して、固相(シリカ)を分離回収した。回収したシリカに対し、さらにノルマルヘキサンを32ml加え、超音波分散及び遠心分離の操作を計3回繰り返し、減圧乾燥(120℃、12時間)して乾燥粉末を得る。この粉末の炭素含有量を株式会社住化分析センター製スミグラフNC−22Fを用いて測定する。予め、試料0.5g中の総炭素含有量を測定し、該総炭素含有量との差分から、抽出された遊離シリコーンオイル量を算出した。また、予め測定した試料0.5g中の総炭素含有量から、シリコーンオイル処理シリカ粒子の表面に存在している全シリコーンオイル量を算出した。
【0064】
具体的には、上記差分に相当する炭素分をジメチルシロキサンを主鎖とするシリコーンオイル(構造式:−(Si(CH3)2−O)n−)に換算し、遊離シリコーンオイル量とした。
【0065】
(凝集度の評価)
(1.疑似トナーの作製)
スチレン−アクリル樹脂(三洋化成工業(株)製、ハイマーSB−317)をジェットミルで粉砕し、レーザー散乱/回折法粒度分布測定装置((株)セイシン企業製、LMS−30)によって測定した中位径が7μmの樹脂粉とした。なお、ハイマーSB−317は、ガラス転移温度が60℃、数平均分子量が4,000、重量平均分子量が250,000、メルトフローレートが3.5g/10minである。
【0066】
得られたこの樹脂粉35gと、得られたシリコーンオイル処理シリカ粒子(外添剤)0.7g、さらに5mmのガラスビーズ200g(アズワン(株)製、ガラスビーズBZ−5)とを、容量250mlのアイボーイ広口瓶(商品名、アズワン(株)製)に入れ、該広口瓶を振とう機(イワキ産業(株)製、KM Shaker V−SX)に横型の状態で設置し、振幅4cm、振とう速度280回/分の条件で10分間振とうさせた。
【0067】
振とう後、パウダテスタ(ホソカワミクロン(株)製、PT−X型)を用いてガラスビーズを篩い分けにより除去した。このとき、篩の目開きは1.7mm、振幅は1mm、振動時間は180秒とした。得られた粉末を、さらに25℃、50%相対湿度の条件下で24時間以上放置し、これを擬似トナーとして回収した。
【0068】
(2.凝集度の測定)
上記回収した疑似トナーの凝集度を、擬似トナー2gを用いパウダテスタ(ホソカワミクロン(株)製、PT−X型)を使用して測定した。篩の目開きは、上から150μm、75μm、45μmのものを用いた。振幅は1mmとし、振動時間は30秒とした。凝集度は次式で示される。該凝集度の値が小さいほど、トナーやシリカの凝集量が少なく良好と評価できる。
【0069】
凝集度(%)=(A+0.6×B+0.2×C)/2×100
式中のA、B、Cの値は以下の通りである。
【0070】
A:150μm上の疑似トナー篩残量(g)
B:75μm上の疑似トナー篩残量(g)
C:45μm上の疑似トナー篩残量(g)
(色抜け及び濃度ムラの評価方法)
各実施例・比較例に係るシリコーンオイル処理シリカ粒子を外添剤として用いて作成した電子写真用トナーを、市販されている複写機のトナーカートリッジに充填し、コピー用紙に2000枚連続で5cm角のベタ画像を出力した。その後、更に500枚連続で5cm角のベタ画像を出力し、この500枚のベタ画像部に、色抜けもしくは濃度ムラが発生した枚数を目視で評価した。色抜けについては、色抜けの点数が3個以上であるものを色抜けが発生したものとして計測し、以下の基準で評価を行った。
5:色抜けもしくは濃度ムラが発生した画像が0枚
4:色抜けもしくは濃度ムラが発生した画像が1〜5枚
3:色抜けもしくは濃度ムラが発生した画像が6〜20枚
2:色抜けもしくは濃度ムラが発生した画像が21〜40枚
1:色抜けもしくは濃度ムラが発生した画像が41枚以上
(実施例及び比較例)
実施例1〜4
<基材製造工程>
中心管の内径100mmの密閉型三重管バーナーを密閉型反応器中に設置し、中心管に原料ガスとしてシリコンテトラクロライド(SiCl)ガス(以下、STCいう)と水素、助燃ガスとして空気および酸素を予混合した混合ガスとを供給した。第一環状管には水素と空気とを供給し、パイロット炎を形成した。第二環状管には空気を流通させバーナーへのシリカ粒子の付着を防止した。原料ガスにおいて、STCが100モル%の原料ガスに対して理論水素量の1.15倍量の水素を供給した。中心管に入れる原料ガス量と助燃ガス量を変更することにより、断熱火炎温度を表1に記載の各温度とし、STCを火炎加水分解させた。燃焼反応時の反応器内の圧力は、いずれも10kPaG以上であった。得られた各ヒュームドシリカの嵩比重は16〜19g/lであり、それぞれ脱気プレスで圧縮し、22〜23g/Lの嵩比重に調整して基材のシリカ粒子とした。
【0071】
<表面処理工程>
得られた基材のシリカ粒子400gを容積35Lのミキサー容器に入れ、撹拌しながら、窒素を供給し、容器内を窒素雰囲気にするとともに、270℃まで加熱した。容器は密閉せず、開放状態のまま、粘度50cStのジメチルシリコーンオイルを、基材のシリカ粒子に対しそれぞれ表1に記載の添加量を、2流体ノズルを用いて噴霧した。噴霧後、上記雰囲気、上記温度を保持した状態で、1時間撹拌しシリコーンオイル処理シリカ粒子を得た。製造条件と物性評価結果を表1に示す。
【0072】
実施例5
基材製造工程において、三重管バーナーの中心管に供給する原料ガスをSTCに換えてメチルトリクロロシランとした。また、原料ガスにおいて、メチルトリクロロシランが100モル%の原料ガスに対して理論水素量の1.50倍量の水素を供給した。さらに、中心管に入れる原料ガス量と助燃ガス量を変更することにより、断熱火炎温度を2040℃とし、メチルトリクロロシランを火炎加水分解させた。得られたヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を27g/Lとした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表1に示す。
【0073】
実施例6
表面処理工程において、2流体ノズルによるジメチルシリコーンオイルの噴霧量を、基材のシリカ粒子に対して14wt%とした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例7
基材製造工程において、ヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を39g/Lとした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例8
基材製造工程において、中心管に入れる原料ガスの組成を、STC90モル%、メチルジクロロシラン10モル%とした。また、この原料ガスに対して、理論水素量の1.30倍量の水素を供給した。さらに、中心管に入れる原料ガス量と助燃ガス量を変更することにより、断熱火炎温度を2140℃とし、加水分解させた。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
比較例1
基材製造工程において、中心管に入れる原料ガス量と助燃ガス量を変更することにより、断熱火炎温度を2050℃とした。得られたヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を25g/Lとした。また、表面処理工程において、噴霧するジメチルシリコーンオイルの量を、基材のシリカ粒子に対して9wt%とした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表2に示す。
【0078】
比較例2
基材製造工程において、中心管に入れる原料ガス量と助燃ガス量を変更することにより、断熱火炎温度を1870℃とした。得られたヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を23g/Lとした。また、表面処理工程において、噴霧するジメチルシリコーンオイルの量を、基材のシリカ粒子に対して20wt%とした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表2に示す。
【0079】
比較例3
基材製造工程において、ヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を19g/Lとした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表2に示す。
【0080】
比較例4
表面処理工程において、2流体ノズルによるジメチルシリコーンオイルの噴霧量を、基材のシリカ粒子に対して9wt%とした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表2に示す。
【0081】
比較例5
基材製造工程において、ヒュームドシリカの脱気プレスでの圧縮条件を変更することにより、基材のシリカ粒子の嵩比重を24g/Lとした。表面処理工程において、2流体ノズルによるジメチルシリコーンオイルの噴霧量を、基材のシリカ粒子に対して20wt%とした。その他の製造条件は実施例1と同様とした。製造条件と物性評価結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
実施例1−8のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーにおいては、シリカ粒子のBET比表面積が70m/g以上120m/g以下(より具体的には、75m/g以上100m/g以下)であり、遊離シリコーンオイルの量は、シリカ粒子本体に対して2.0質量%以上5.0質量%以下であり、疑似トナーの凝集度が18%以下であって、これらの3つの条件を全て満たしており、印刷時の色抜け及び濃度ムラが少なく、優れた印刷品質のトナー外添剤であることがわかる。
【0084】
一方比較例1のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーでは、BET比表面積が70m/g未満である65m/gであり、凝集度も30%と大きく、印刷時の色抜け及び濃度ムラも多い。
【0085】
比較例2のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーでは、BET比表面積が120m/gよりも大きい140m/gであるため、印刷時の色抜け及び濃度ムラが多い。
【0086】
比較例3のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーでは、疑似トナーの凝集度が18%よりも大きい25%であるため、印刷時の色抜け及び濃度ムラが多い。
【0087】
比較例4のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーでは、遊離シリコーンオイルの量は、シリカ粒子本体に対して2.0質量%よりも少ない1質量%であるため、印刷時の色抜け及び濃度ムラが多い。
【0088】
比較例5のシリカ粒子、シリコーンオイル処理シリカ粒子およびそれを用いたトナーでは、遊離シリコーンオイルの量は、シリカ粒子本体に対して5.0質量%よりもずっと多い10質量%であるため、印刷時の色抜け及び濃度ムラが多い。
【0089】
(その他の実施形態)
上述の実施形態及び実施例は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。