(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一態様を説明する。本発明に係る耐熱性樹脂組成物は、(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂、(B)ポリオレフィン樹脂、(C)スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種、(D)パラフィン系オイル、に加えて(E)シラノール縮合触媒、を基本構成として有する。
【0021】
(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂:
本発明に係る耐熱性樹脂組成物を構成するシラン変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂に加水分解性シラノール化合物が共重合等されてシラン変性されたポリオレフィンのことをいい、かかるシラン変性ポリオレフィン樹脂を構成成分とし、架橋構造を有することで、油の浸入が困難となるため、耐油性を向上させ、また、耐熱性にも優れることになる。共重合の方法としては、従来公知のシラン変性ポリオレフィン樹脂を製造する方法等を使用することができ、例えば、ポリオレフィン、加水分解性シラノール化合物及び有機過酸化物等を有機過酸化物の分解温度以上の温度下で溶融混合することで、目的物であるシラン変性ポリオレフィン樹脂を得ることが可能となる。
【0022】
(A−1)ポリオレフィン樹脂:
シラン変性ポリオレフィン樹脂を構成するポリオレフィン樹脂としては、従来公知のポリオレフィン樹脂を使用することができ、例えば、ポリプロピレン樹脂や、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のエチレン系共重合体等のエチレン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂等は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0023】
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体、構成成分としてアタクチックのプロピレンを含むポリプロピレン、プロピレンとエチレン系共重合体ゴムとのブロック共重合体等が挙げられる。なお、本発明においては、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体のほかに、構成成分として、エチレン成分及びα−オレフィン成分のうち少なくとも1成分とプロピレン成分を有する共重合体のうち、プロピレン成分が85質量%以上のものを指すものとする。
【0024】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、VLDPE(超低密度ポリエチレン)等のエチレンホモポリマーが挙げられる。また、エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等のほか、EPR(エチレン−プロピレン共重合体ゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン三元共重合体ゴム)、EBR(エチレン−1−ブテン共重合体ゴム)等の構成成分としてエチレン成分を30〜95%含むエチレン系共重合体ゴムが挙げられる。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等により変性されていてもよい。
【0025】
エチレン−α−オレフィン共重合体以外のエチレン系共重合体としては、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリレートアルキル共重合体等が挙げられる。
【0026】
本発明におけるポリオレフィン樹脂として、エチレン系樹脂(ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のエチレン系共重合体等)を使用することが好ましく、LLDPE、LDPE、HDPE、VLDPE、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体等を使用することが特に好ましい。
【0027】
なお、ポリオレフィン樹脂として、前記したHDPE、LLDPE、LDPE、VLDPE、シングルサイト触媒存在下に合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体を使用する場合、密度を調整することにより、耐油性と柔軟性を制御することが可能となる。密度としては、例えば、0.850〜0.960g/cm
3程度とすることが好ましく、かかる範囲内で、密度が大きく、結晶性が高いものは耐油性が高く、密度が小さく、結晶性が低いものは柔軟性が高い。また、密度が小さいものは多くのシラノール基を変性することが可能であり、耐熱性に優れる。
【0028】
(A−2)加水分解性シラノール化合物:
ポリオレフィン樹脂と組み合わせて使用される加水分解性シラノール化合物としては、特に限定されるものではなく、従来公知のシラン架橋に用いられるシラノール化合物を使用することができ、例えば、下記の一般式(1)で表される加水分解性シラノール化合物を用いることができる。
【0030】
ここで、式(1)中、R
a11はエチレン性不飽和基を含有する基、Y
11、Y
12はそれぞれ加水分解する有機基、R
b11は水素原子、脂肪族炭化水素基、または加水分解する有機基(便宜上、Y
13とする。)である。Y
11、Y
12及びY
13は、それぞれが同じであってもよく、また、それぞれが異なっていてもよい。
【0031】
前記した一般式(1)で表される有機不飽和シラン化合物のR
a11は、エチレン性不飽和基を含有する基であり、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキレン基、p−スチリル基等が挙げられ、この中で、ビニル基とすることが好ましい。
【0032】
Y
11、Y
12及びY
13は加水分解する有機基であり、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基等が挙げられ、この中で、アルコキシ基とすることが好ましい。加水分解するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、アシルオキシ基等を挙げることができ、この中でも反応性の点からメトキシ基またはエトキシ基とすることが好ましい。
【0033】
R
b11は水素原子、脂肪族炭化水素基または前記した加水分解する有機基(前記したようにY
13とする。)である。脂肪族炭化水素基としては、例えば、脂肪族不飽和炭化水素基を除く炭素数1〜8の1価の脂肪族炭化水素基等が挙げられる。R
b11は、前記した加水分解する有機基(Y
13)とすることが好ましい。
【0034】
前記した加水分解性シラノール化合物としては、加水分解速度の速い有機不飽和シラン化合物とすることが好ましく、R
b11を加水分解する有機基(Y
13)とすることがさらに好ましく、かつ、加水分解する有機基であるY
11、Y
12及びY
13がそれぞれ共通する有機不飽和シラン化合物とすることが特に好ましい。
【0035】
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルジエトキシブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のオルガノシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエチレン性二重結合を末端に有するシランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤はその1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。このような架橋性のシランカップリング剤の中でも、末端にビニル基とアルコキシ基を有するシランカップリング剤とすることがさらに好ましく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等とすることが特に好ましい。
【0036】
(A−3)有機過酸化物:
有機過酸化物としては、シラン架橋に用いられる従来公知の有機過酸化物を使用することができ、例えば、R−OO−R’、R−OO−C(=O)R”やR”C(=O)−OO(C=O)R”’で表される化合物を使用することが好ましい。前記した化合物中、R及びR’、R”、R”’はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。このうち、本発明においては、RとR’、RとR”、R”とR”’がともにアルキル基であるか、一方がアルキル基で他方がアシル基とすることが好ましい。
【0037】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイド等を使用することができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等を使用することが好ましい。
【0038】
また、ポリオレフィン樹脂を、加水分解性シラノール化合物及び有機過酸化物を用いてシラン変性してシラン変性ポリオレフィン樹脂とする場合における使用量としては、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、例えば、加水分解性シラノール化合物を0.5〜7.0質量部、有機過酸化物を0.01〜0.5質量部使用することが好ましく、加水分解性シラノール化合物を1.0〜6.0質量部、有機過酸化物を0.03〜0.3質量部使用することが特に好ましい。
【0039】
なお、本発明に係る耐熱性樹脂組成物に使用可能なシラン変性ポリオレフィン樹脂として、市販されてものとしては、例えば、リンクロン(商品名:三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0040】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物にあって、前記した(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂成分((A)、(B)、(C)及び(D)を指す。以下同じ。)全体(100質量%。以下同じ。)に対して20質量%を超えて80質量%以下とする。かかる含有量が20質量%以下であると耐熱性が低くなり、高耐熱性を評価する試験であるJIS C3660−2−1に記載されているホットセット試験に合格することが困難な場合がある。一方、含有量が80質量%を超えると柔軟性が低くなる場合がある。シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、22〜80質量%であることが好ましく、25〜80質量%とすることがさらに好ましく、25〜70質量%とすることがさらに好ましい。
【0041】
(B)ポリオレフィン樹脂:
本発明に係る耐熱性樹脂組成物を構成するポリオレフィン樹脂としては、前記した(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂に適用可能なポリオレフィン樹脂として、前記した(A−1)に挙げたものと同様の樹脂を用いることができる。
【0042】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物にあって、前記した(B)ポリオレフィン樹脂の含有量は、前記した(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂となるものを除いて、樹脂成分全体に対して3〜60質量%とする。かかる含有量が3質量%より少ないと混練時に負荷がかからず、コンパウンド化することができない場合がある。一方、含有量が60質量%を超えると柔軟性が悪くなる場合がある。ポリオレフィン樹脂の含有量は、5〜50質量%とすることが好ましく、7〜40質量%とすることが特に好ましい。
【0043】
また、(B)ポリオレフィン樹脂はエチレン系樹脂とすることが好ましいが、(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂で使用されるポリオレフィンがエチレン系樹脂である場合、(B)ポリオレフィン樹脂もエチレン系樹脂であることが特に好ましい。両者をエチレン系樹脂にすることで、成形時に(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂と(B)ポリオレフィン樹脂との相溶性が良好になり、耐熱性・伸び特性が向上する。
【0044】
(C)スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種:
本発明に係る耐熱性樹脂組成物に、スチレン系エラストマーまたはエチレン−α−オレフィン共重合ゴムやエチレン−α−オレフィン共重合ゴムを添加することにより、伸び特性や柔軟性の向上の図ることができる。かかるスチレン系エラストマーとエチレン−α−オレフィン共重合ゴムは、その1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
(C−1)スチレン系エラストマー:
スチレン系エラストマーとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのブロック及びランダム構造を主体とする共重合体もしくはその水素添加物が挙げられる。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0046】
また、芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等が挙げられる。
【0047】
前記したスチレン系エラストマーとしては、具体的には、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、水素化SBS、SEEPS(スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体)、水素化SIS、HSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等を挙げることができる。市販品としては、例えば、セプトン(商品名、(株)クラレ製)、ダイナロン(商品名、JSR(株)製)等を挙げることができる。
【0048】
(C−2)エチレン−α−オレフィン共重合ゴム:
エチレン−αオレフィン共重合ゴムとしては、例えば、EPR(エチレン−プロピレンゴム)、EBR(エチレン−1ブテンゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等が挙げられる。なお、エチレン−α−オレフィン共重合ゴムとしては、エチレン含有量5〜15%程度のエチレン−プロピレンブロック共重合体や、エチレン−プロピレンランダム共重合体からなるゴムの使用は避けた方が好ましい。
【0049】
なお、スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が10〜40%であるSEPS、SEEPS、SEBS、エチレン−α−オレフィン共重合ゴムを単独で、あるいはこれらの2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。これらを使用することにより、耐熱性樹脂組成物の引張強度特性や柔軟性をより優れたものとすることができる。
【0050】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物にあって、前記した(C)スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴム(前記(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂、及び前記(B)ポリオレフィン樹脂となるものを除く。)のうち少なくとも1種の含有量は、樹脂成分全体に対して10〜50質量%とする。かかる含有量が10質量%より少ないと柔軟性が悪くなる場合がある。一方、含有量が50質量%を超えると、溶融混練が困難になったり、コスト高になる場合がある。スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種の含有量は、12〜45質量%とすることが好ましく、15〜40質量%とすることが特に好ましい。
【0051】
(D)パラフィン系オイル:
本発明の耐熱性樹脂組成物にパラフィン系オイルを添加することにより、樹脂成分が流動的になり、伸び特性、柔軟性が向上するとともに、耐油性が向上する。また、パラフィン系オイルをあらかじめ樹脂成分に分散させることにより、耐油試験時にオイルにより樹脂が膨潤し、引張強度の残率が悪化することを防ぐことができる。
【0052】
耐熱性樹脂組成物を構成するパラフィン系オイルとしては、例えば、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤等を用いることができる。一般に、ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。本発明ではこれらのうち、パラフィン系オイルを使用することができる。
【0053】
なお、本発明に係る耐熱性樹脂組成物に使用可能なパラフィン系オイルとして、市販されているものとしては、例えば、ダイナプロセスオイル(商品名、出光興産(株)製)が挙げられる。
【0054】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物にあって、前記した(D)パラフィン系オイルの含有量は、樹脂成分全体に対して5〜60質量%とする。かかる含有量が5質量%より少ないと柔軟性及び耐油性が悪くなる場合がある。一方、含有量が60質量%を超えると、オイルがブリードアウトを生じ、電線の外観が悪くなる場合がある。パラフィン系オイルの含有量は、5〜50質量%とすることが好ましく、10〜40質量%とすることが特に好ましい。
【0055】
(E)シラノール縮合触媒:
本発明に係る耐熱性樹脂組成物を構成するシラノール縮合触媒は、(A)全体(グラフト化された有機不飽和シラン化合物)を縮合反応することにより水分の存在下で結合させるはたらきがある。このシラノール縮合触媒のはたらきに基づき、有機不飽和シラン化合物を介してポリマー同士が架橋される。その結果、本発明に係る耐熱性樹脂組成物は、耐熱性に優れた樹脂組成物となる。
【0056】
シラノール縮合触媒としては、例えば、有機スズ化合物、金属石けん、白金化合物等を使用することができる。一般的なシラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズジラウリレート、ジブチルスズジオクチエート、ジブチルスズジアセテート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ナフテン酸鉛、硫酸鉛、硫酸亜鉛、有機白金化合物等が用いられる。
【0057】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物におけるシラノール触媒の含有量は、前記した(A)〜(D)の樹脂成分の合計100質量部に対して、0.005〜0.5質量部とする。かかる含有量が0.005質量部より少ないと架橋が進行しない場合がある一方、含有量が0.5質量部を超えるとキャブタイヤケーブル等の製造時に外観が悪化する場合がある。シラノール縮合触媒の含有量は、0.01〜0.2質量部とすることが好ましい。
【0058】
(F)難燃剤:
本発明に係る耐熱性樹脂組成物に難燃剤を添加することで、難燃性を向上させることができる。本発明に係る耐熱性樹脂組成物を難燃性のキャブタイヤケーブルの絶縁材料やシース材料として使用する場合には、JIS C3005で規定されている60°傾斜難燃試験に合格する難燃性が必要となる。難燃剤としては、(F−1)臭素系難燃剤及び(F−2)三酸化アンチモン、(F−3)金属水和物を使用することができる。
【0059】
(F−1)臭素系難燃剤:
臭素系難燃剤は、ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモフェニールを除くものであれば、特に制限はない。例えば、臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン等の有機系臭素含有難燃剤が使用できる。中でも、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタンが好ましく、例えば、ファイヤーマスター(商品名、ケムチュラ・ジャパン(株)製)等を使用することができる。
【0060】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物における(F−1)臭素系難燃剤の含有量は、(A)〜(D)の樹脂成分の合計100質量部に対して、10〜40質量部とすることが好ましい。含有量が5質量部より少ないと、難燃性が向上しない場合がある一方、含有量が50質量部を超えると、添加量に見合った難燃効果が得られないばかりか、柔軟性が低下する場合がある。臭素系難燃剤の含有量は、15〜40質量部とすることがさらに好ましく、15〜35質量部とすることが特に好ましい。
【0061】
(F−2)三酸化アンチモン:
臭素系難燃剤に加えて、さらに、三酸化アンチモンを使用することができる。本発明に係る耐熱性樹脂組成物における(F−2)三酸化アンチモンの含有量は、(A)〜(D)の樹脂成分の合計100質量部に対して0〜35質量部とすることが好ましい。含有量が35質量部を超えると添加量に見合った難燃効果が得られないばかりか、柔軟性が低下する場合がある。三酸化アンチモンの含有量は、3〜30質量部とすることが好ましく、5〜25質量部とすることが特に好ましい。なお、三酸化アンチモンは、前記した臭素系難燃剤の難燃助剤として併用して使用される。
【0062】
(F−3)金属水和物:
金属水和物は、臭素系難燃剤や三酸化アンチモンと併せて使用してもよく、また、単独で使用してもよい。金属水和物の種類は特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイト等の水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物が挙げられる。これらの金属水和物はその1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを使用することが好ましい。
【0063】
なお、かかる金属水和物は表面処理されていてもよい。金属水和物の表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、リン酸エステル、ビニル基またはエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤等があり、市販品としては、キスマ(商品名、協和化学工業(株)製)等を使用することができる。
【0064】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物における(F−3)金属水和物の含有量は、(A)〜(D)の樹脂成分の合計100質量部に対して40〜120質量部とすることが好ましい。含有量が40質量部より少ないと難燃性が向上しない場合がある一方、含有量が120質量部を超えると柔軟性に悪影響を及ぼす場合がある。金属水和物の含有量は、45〜115質量部とすることが好ましく、50〜110質量部とすることが特に好ましい。
【0065】
(G)添加剤:
なお、本発明の耐熱性樹脂組成物には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、前記した以外の各種の樹脂成分や各種の添加剤を必要に応じて適宜添加することができる。添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、耐候剤、滑剤、難燃助剤、充填剤等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜、配合することができる。
【0066】
酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾール及びその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。この中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、具体的には、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0067】
金属不活性剤としては、例えば、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。
【0068】
耐候剤としては、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤)、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、カーボンブラック)等、一般的な耐候剤が挙げられる。
【0069】
難燃助剤、充填剤としては、例えば、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデンシリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。
【0070】
滑剤としては、例えば、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系、シリコーン系等が挙げられ、これらの中でも、炭化水素系やシリコーン系が好ましい。
【0071】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物は、特に限定はされないが、例えば、下記の方法で(I)シラン変性ポリオレフィン樹脂及び(II)シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ)を製造し、得られた(I)及び(II)を溶融混合等により混合することにより得ることができる。
【0072】
なお、(I)及び(II)を別々の工程で行っても、タンデムの押出機や二軸押出機等で両工程を一度に実施し、一緒に溶融混合等するようにしてもよい。ただし、一度に溶融混合する場合、溶融混合中に(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂が(E)シラノール縮合触媒により縮合反応を起こしてしまい、成形工程前に架橋し、成形品の外観が悪化したり、コンパウンド後に難燃成分の水分によりシラン変性ポリオレフィン樹脂が加水分解し、成形工程中に(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂が(E)シラノール縮合触媒により縮合反応を起こしてしまい、成形工程中の押出機内に架橋し、成形品の外観が悪化したりするため、(I)、(II)を別々の工程で実施することが好ましい。(I)、(II)を別々の工程で実施する場合、得られた(I)、(II)を所望の割合で室温にてドライブレンド混合し、成形機内で溶融混合・成形を実施するようにすることが好ましい。なお、ドライブレンド混合の方法は特に制限されず、従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサーやタンブラーミキサーを用いることができる。
【0073】
また、一般にエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂は相溶性が悪いため、両者を被覆押出前のドライブレンドのみで混合した場合には、混合が不十分となり、機械強度や耐熱性に問題が起きる場合があった。そのため、(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂にエチレン系樹脂、(B)ポリオレフィン樹脂にポリプロピレン系樹脂を選択し、(I)、(II)を別々の工程で実施した場合、混合が不十分となり、機械強度や耐熱性に問題が起きる可能性がある。しかし、前述したように、(I)、(II)を同時に行った場合、成形品の外観が悪化するおそれがある。従って、(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂、(B)ポリオレフィン樹脂は(A)及び(B)がともにエチレン系樹脂、または、(A)及び(B)がともにポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。柔軟性の面より、(A)及び(B)ともにエチレン系樹脂であることがさらに好ましい。
【0074】
(I)シラン変性ポリオレフィン樹脂:
(A)シラン変性ポリオレフィン樹脂の製造は従来公知の一般手法を用いることができる。例えば、(A−1)ポリオレフィンに所定量の(A−2)加水分解性シラノール化合物、(A−3)有機過酸化物を混合し、さらに、150〜250℃の温度で溶融混合する方法を用いることができる。かかる溶融混合は、例えば、従来公知の単軸押出機や二軸押出機を用いることができる。
【0075】
(II)シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ):
シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分である(B)ポリオレフィン樹脂、(C)スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種、(D)パラフィン系オイル、(E)シラノール縮合触媒の必須成分、及び必要に応じて(F)難燃剤、さらに必要に応じて(G)添加物を加えて加熱混練するようにする。混練温度や混練時間等の混練条件は、使用する樹脂成分等の種類等により適宜決定することができるが、概ね、160〜240℃で1〜20分とすることが好ましい。
【0076】
また、混練方法としては、ゴムやプラスチック等の混練方法として通常用いられる方法であればよく、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、あるいは各種のニーダー等の各種装置を用いて従来公知の混練方法を用いて実施するようにすればよい。そして、前記したように、(I)、(II)を別々の工程で実施し、得られたものを所望の割合で室温にてドライブレンド混合し、成形機内で溶融混合し、所望の形状に合わせて成形する。なお、ドライブレンド混合の方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0077】
以上説明した本発明に係る耐熱性樹脂組成物は、所定量のシラン変性ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種、パラフィン系オイルに加えてシラノール縮合触媒を含有するので、樹脂材料として求められる機械特性を維持した上で、高い耐熱性と柔軟性と耐油性を併せ持ち、押出等された樹脂の外観も問題がない樹脂組成物となる。よって、本発明の耐熱性樹脂組成物は、耐熱性に加えて耐油性や柔軟性等が要求されるキャブタイヤケーブル等の構成材料として適用可能な樹脂組成物となる。
【0078】
本発明に係る耐熱性樹脂組成物は、前記したようにキャブタイヤケーブルの絶縁材料やシース材料等として使用することができるが、適用可能な用途はこれらに限定されず、例えば、耐熱性絶縁電線、耐熱ケーブル等の被覆材料、一般的な絶縁電線等の配線材、ケーブルの被覆材料としても使用可能である。また、その他耐熱電線部品、耐熱シート、耐熱フィルム、その他の種々の耐熱性を有する成形品等の構成材料として適用可能である。具体的には、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート、電気・電子機器の内部及び外部配線に使用される配線材等や成形品等として使用することができる。
【0079】
このような配線材(絶縁電線)、ケーブル、成形品等は、例えば、従来公知の押出被覆装置の成形装置を用いて押出成形により製造することができる。この場合における押出成形機の温度は、耐熱性樹脂組成物を構成する成分の種類、導体等の引取り速度等の諸条件にもよるが、シリンダー部で150〜220℃、ヘッド部で170〜230℃にすることが好ましい。また、その他の成形方法を用いる場合、成形装置の成形条件等は、耐熱性樹脂組成物を構成する成分の種類や各成分の含有量、用途等により適宜決定すればよい。
【0080】
また、配線材を製造する場合には、耐熱性樹脂組成物を、単線からなる導体の周囲、
光ファイバ心線、または抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた導体の周囲に押出被覆することにより被覆層(導体の場合は絶縁層)を形成して配線材を製造することができる。例えば、導体としては、軟銅の単線または撚線等の任意のものを用いることができ、また、裸線のほかに、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するもの等の従来公知の導体を用いることができる。導体の周囲に形成される絶縁層(本発明に係る耐熱性樹脂組成物からなる被覆層)の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.15〜7mm程度の厚さとすることができる。同様に、耐熱性樹脂組成物をケーブルコアの周囲に被覆層として有するケーブルを製造する場合にあっては、被覆層(シース)の厚さは、例えば、0.15〜10mm程度の厚さとすることができる。
【0081】
また、本発明に係る耐熱性樹脂組成物には、架橋処理を施してもよく、例えば、絶縁電線等の配線材を製造する場合には、導体等に押出被覆して被覆層を形成して、その後常温で放置するか、温水や水、湿熱条件下に放置することにより、耐熱性のシラン架橋被覆層を形成した配線材を得ることができる。また、その際に水分を内部に浸透させるため、圧力をかけるようにしてもよい。このように、架橋処理に際して、特別な架橋設備を必要とせず簡便な操作で実施できるため、低コストであり、生産性に優れるものとなる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
[製造例A−1〜製造例A−8]
(I)シラン変性ポリオレフィン樹脂の製造:
ポリオレフィン樹脂、加水分解性有機不飽和シラン、有機過酸化物を表1に示した組成にて単軸押出機にて溶融混合することにより、製造例A−1〜製造例A−8の(I)シラン変性ポリオレフィン樹脂を得た。なお、単軸押出機は70mm単軸押出機を用い、L/D=25で、180℃の単軸押出機で押出機内の樹脂の滞留時間が2分になるように溶融混合し、シラン変性ポリオレフィン樹脂を製造するようにした。なお、表1において、含有量は、ポリオレフィン樹脂を10質量部とした場合の加水分解性有機不飽和シラン、有機過酸化物の質量部を示している。
【0084】
(シラン変性ポリオレフィン樹脂の組成)
【表1】
【0085】
以下、表1に載せた、(A−1)〜(A−8)を構成するポリオレフィン樹脂を示す。なお、市販品である(A−9)、(A−10)のシラン変性ポリオレフィン樹脂も用いたので併せて載せた。
【0086】
(A)ポリオレフィン樹脂;
(A−1を構成するポリオレフィン樹脂)
高密度ポリエチレン(HDPE)(商品名:ノバテックHY540、日本ポリエチレン(株)製、密度:0.960g/cm
3)
【0087】
(A−2を構成するポリオレフィン樹脂)
高密度ポリエチレン(HDPE)(商品名:ハイゼックス5305E、(株)プライムポリマー社製、密度:0.951g/cm
3)
【0088】
(A−3を構成するポリオレフィン樹脂)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(商品名:NUCG−5130、ダウ・ケミカル社製、密度:0.923g/cm
3)
【0089】
(A−4を構成するポリオレフィン樹脂)
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)(商品名:エンゲージ8845、ダウ・ケミカル社製、密度:0.910g/cm
3)
【0090】
(A−5を構成するポリオレフィン樹脂)
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)(商品名:エボリューSP0540、(株)プライムポリマー製、密度:0.903g/cm
3)
【0091】
(A−6を構成するポリオレフィン樹脂)
エチレン−ブテン共重合体(商品名:エンゲージ7256、ダウ・ケミカル社製、密度:0.885g/cm
3)
【0092】
(A−7を構成するポリオレフィン樹脂)
エチレン−オクテン共重合体(商品名:エンゲージ8842、ダウ・ケミカル社製、密度:0.857g/cm
3)
【0093】
(A−8を構成するポリオレフィン樹脂)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(商品名:EV360、三井・デュポンポリケミカル(株)製)
【0094】
(A−9のシラン変性ポリオレフィン樹脂)
シラン変性PEコンパウンド(商品名:リンクロン XCF730N、三菱化学(株)製、密度:0.924g/cm
3)
【0095】
(A−10のシラン変性ポリオレフィン樹脂)
シラン変性PEコンパウンド(商品名:リンクロン XHE650N、三菱化学(株)製、密度:0.950g/cm
3)
【0096】
(加水分解性有機不飽和シラン)
ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM1003、信越化学(株)製)
【0097】
(有機過酸化物)
ジクミルパーオキサイド(商品名:Perkadox BC−FF、化薬アクゾ(株)製)
【0098】
(II)シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ):
下記に示した(B)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G)成分を、表2〜表8に示した組成で室温にてドライブレンドして混合後、バンバリーミキサーを用いて溶融混合して、(II)シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ)を得た。
【0099】
なお、表2〜表8にあって、(A)、(B)、(C)及び(D)の含有量については、(A)、(B)、(C)及び(D)の全体を100質量%とした場合の質量%であり、(E)、(F)及び(G)は、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計を100質量部とした場合の質量部である。
【0100】
[実施例1〜
31、参考例32、実施例33〜46、参考例47、実施例48〜62、比較例1〜7]
(絶縁電線の製造)
次に、前記のようにして得られた(I)(シラン変性ポリオレフィン樹脂)成分と(II
)(シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ))を、表
2〜表8に示した組成で室温にてドライブレンド混合した後、絶縁電線製造用押出被覆装
置を用いて、導体上(1/0.8A)に、肉厚:1.0mm、外径:2.8mmとなるよ
うに樹脂組成物を押出被覆した。ここで、押出機は50mm押出機(L/D=25)を用
いて、押出温度はシリンダー温度210℃、ヘッド温度220℃、線速は50m/分とし
た。
【0101】
被覆後、得られた絶縁電線を60℃×95%の湿熱槽に24時間入れることにより被覆層を架橋処理して、実施例1
〜31、参考例32、実施例33〜46、参考例47、実施例48〜62、比較例1〜比較例7の絶縁電線を得た。
【0102】
(組成1:実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例3)
【表2】
【0103】
(組成2:実施例8〜15、比較例4、比較例5)
【表3】
【0104】
(組成3:実施例16〜実施例25)
【表4】
【0105】
(組成4:実施例26
〜実施例
31、参考例32、実施例33、実施例34、比較例6)
【表5】
【0106】
(組成5:実施例35〜実施例44)
【表6】
【0107】
(組成6:実施例45
、実施例46、参考例47、実施例48〜実施例53、比較例7)
【表7】
【0108】
(組成7:実施例54〜実施例62)
【表8】
【0109】
(II)シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の成分の樹脂組成物(マスターバッチ):
(B)ポリオレフィン樹脂:
(B−1のポリプロピレン)
ブロックポリプロピレン(商品名:BC8A、日本ポリプロ(株)製)
【0110】
(B−2のポリプロピレン)
ランダムポリプロピレン(商品名:PB222A、サンアロマー(株)製)
【0111】
(B−3のエチレン系樹脂)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(商品名:NUCG−5130、日本ユニカー(株)製、密度:0.923g/cm
3)
【0112】
(B−4のエチレン系樹脂)
メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(商品名:エボリューSP0540、(株)プライムポリマー製、密度:0.903g/cm
3)
【0113】
(B−5のエチレン系樹脂)
エチレン−ブテン共重合体(商品名:エンゲージ7256、ダウ・ケミカル社製、密度:0.885g/cm
3)
【0114】
(B−6のエチレン系樹脂)
エチレン−オクテン共重合体(商品名:エンゲージ8842、ダウ・ケミカル社製、密度:0.857g/cm
3)
【0115】
(B−7のエチレン系樹脂)
エチレン−酢酸ビニル共重合体(商品名:EV180、三井デュポンケミカル(株)製)
【0116】
(B−8のエチレン系樹脂)
酸変性ポリエチレン(商品名:アドマーQE800、三井化学(株)製)
【0117】
(C)スチレン系エラストマー及びエチレン−α−オレフィン共重合ゴムのうち少なくとも1種:
(C−1−1のスチレン系エラストマー)
スチレンーエチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)(商品名:セプトン4077、(株)クラレ社製、スチレン含有量30%)
【0118】
(C−1−2のスチレン系エラストマー)
スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)(商品名:セプトン2003、(株)クラレ社製、スチレン含有量18%)
【0119】
(C−2−1のエチレン−α−オレフィン共重合ゴム)
エチレン−α−オレフィン共重合ゴム(商品名:EPT3092PM、三井化学(株)製)
【0120】
(D)パラフィン系オイル)
(D−1のパラフィン系オイル)
パラフィン系オイル(商品名:ダイナプロセスオイルPW90、出光興産(株)製)
【0121】
(E)シラノール縮合触媒:
(E−1のシラノール縮合触媒)
ジブチルスズジラウリレート(商品名:KS−120、堺化学工業(株)製)
【0122】
(E−2のシラノール縮合触媒)
ジオクチルスズジラウリレート(商品名:TN−12、堺化学工業(株)製)
【0123】
(F)難燃剤:
(F−1−1の臭素系難燃剤)
臭素系難燃剤(商品名:ファイヤーマスター2100、ケムチュラ・ジャパン(株)製)
【0124】
(F−2−1の三酸化アンチモン)
三酸化アンチモン(商品名:PATOX−C、日本精鉱(株)製)
【0125】
(F−3−1の金属水和物)
水酸化マグネシウム(商品名:キスマ5L、協和化学工業(株)製、シランカップリング剤表面処理あり)
【0126】
(F−3−2の金属水和物)
水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライト42M、昭和電工(株)製、表面未処理)
【0127】
(G)添加剤:
(G−1の添加剤)
フィンダートフェノール系酸化防止剤(商品名:イルガノックス1010、日本チバガイキー(株)製)
【0128】
(G−2の添加剤)
ポリエチレンワックス(滑剤)(商品名:ACポリエチレンNo.6、ハネウェルジャパン(株)製)
【0129】
(G−3の添加剤)
シリコーンガム(滑剤)(商品名:X−21−3043、信越ポリマー(株)製)
【0130】
(G−4の添加剤)
カーボンブラック(着色剤・耐候剤)(商品名:旭#70、旭カーボン(株)製)
【0131】
[試験例1]
前記の方法により得られた実施例1
〜31、参考例32、実施例33〜46、参考例47、実施例48〜62及び比較例1〜比較例7の絶縁電線を、下記(1)〜(9)に示した評価項目及び評価方法により比較・評価した。
【0132】
なお、評価項目において、「(1)機械特性」、「(2)耐熱性試験A」、「(3)耐油性試験A」、「(4)外観(ブリード)試験」及び「(5)難燃性試験」のすべてに合格(1つも×が付かなかった)ものを総合合格とした。一方、「(6)耐熱性試験B」、「(7)耐熱性試験C」、「(8)耐油性試験B」及び「(9)耐油性試験C」については、参考試験として実施した。結果をあわせて表2〜表8に示した。
【0133】
(1)機械特性:
機械特性はJIS C3005に基づき引張試験を実施した。上記の架橋絶縁電線より管状片を切り出し、表線間20mm、引張速度200mm/分とし、引張強さ、伸び、100%Moを測定した。ここで、「100%Mo」とは試験片の伸びが100%に達したときの引張応力であり、100%Moの値が低いほど屈曲時の応力が低く、柔軟性に優れた材料である。評価は、引張強さは、8MPa以上を○とし、伸びは200%以上を○とし、それ以外を×とし、○を合格とした。100Moは、柔軟性を示す指標とし、7Mpa未満を○、7MPa以上8MPa未満を△、8MPa以上を×とし、△、○を合格とした。
【0134】
(2)耐熱性試験A:
耐熱性試験AはJIS C3660に基づきホットセット試験を実施した。試験温度は200℃、荷重時間は15分、荷重は20N/mm
2とした。評価は、荷重時の伸びが100以下、かつ、冷却後の永久伸びが25%以下で合格であり、合格したものを○、合格しなかったものを×とした。
【0135】
(3)耐油性試験A:
耐油性試験AはJIS C3005−4.18に基づき実施した。浸漬に使用する油はJISK6258に規定する試験用潤滑油No.2油を使用した。また、浸油温度は70℃、浸油時間が4時間とした。評価は、引張強さ、伸びの残率を測定し、それぞれ60%未満を×、60%以上80%未満を△、80%以上を○とし、△、○を合格とした。
【0136】
(4)外観(ブリード)試験:
外観(ブリード)試験は前記した実施例及び比較例で得られた絶縁電線をφ4.0のマンドレルに20ターン巻付け、10℃、70℃の恒温槽内に240時間放置し、絶縁電線表面のブリードの有無を確認した。評価は、肉眼にてブリードが確認できたものを×、肉眼ではブリードが確認できなかったものを○とした。
【0137】
(5)難燃性試験A:
難燃性試験は60°傾斜難燃を行った。60°傾斜難燃は、JIS C3005に基づいて実施し、燃焼時間は30秒とした。評価は、自己消火時間が60秒以内、燃焼長が250mm以内を○とし、それを満たさないものを×とした。
なお、本試験は難燃剤である(F)成分を添加したものについてのみ実施した。
【0138】
(6)耐熱性試験B:
耐熱性試験BはJIS C3660に基づきホットセット試験を実施した。試験温度は200℃、荷重時間は15分、荷重は25N/mm
2とした。評価は、荷重時の伸びが100%以下、かつ、冷却後の永久伸びが25%以下で合格であり、合格したものを○、合格しなかったものを×とした。
なお、前記したように、本試験は参考試験として実施した。
【0139】
(7)耐熱性試験C:
耐熱性試験CはJIS C3660に基づきホットセット試験を実施した。試験温度は200℃、荷重時間は15分、荷重は30N/mm
2とした。評価は、荷重時の伸びが100%以下、かつ、冷却後の永久伸びが25%以下で合格であり、合格したものを○、合格しなかったものを×とした。
なお、前記したように、本試験は参考試験として実施した。
【0140】
(8)耐油性試験B:
耐油性試験BはJIS C3005−4.18に基づき実施した。浸漬に使用する油はJIS K6258に規定する試験用潤滑油No.2油を使用した。また、浸油温度は85℃、浸油時間は4時間とした。評価は、引張強さ、伸びの残率を測定し、それぞれ60%未満を×、60%以上80%未満を△、80%以上を○とし、△、○を合格とした。
なお、前記したように、本試験は参考試験として実施した。
【0141】
(9)耐油性試験C:
耐油性試験CはJIS C3005−4.18に基づき実施した。浸漬に使用する油はJIS K6258に規定する試験用潤滑油No.2油を使用した。また、浸油温度は100℃、浸油時間が24時間とした。評価は、引張強さ、伸びの残率を測定し、それぞれ60%未満を×、60%以上80%未満を△、80%以上を○とし、△、○を合格とした。
なお、前記したように、本試験は参考試験として実施した。
【0142】
表2〜表8に示すように、実施例1
〜31、参考例32、実施例33〜46、参考例47、実施例48〜62の絶縁電線ないしは当該絶縁電線に被覆された耐熱性樹脂組成物は、「(1)機械特性」、「(2)耐熱性試験A」、「(3)耐油性試験A」、「(4)外観(ブリード)試験」及び「(5)難燃性試験」のすべてに合格し、総合合格であった。なお、実施例1と実施例2を比較すると、実施例2は(A)、(B)ともにエチレン系樹脂を使用しているため、実施例1では不合格(×)だった耐熱性試験Bにも合格し、実施例1より高い耐熱性であった。
【0143】
一方、比較例は、シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が少ない比較例1ないし比較例3は、耐熱性が悪かった。また、ポリオレフィン樹脂を含有しない比較例4及び比較例5は、マスターバッチ化することができなかった。シラノール縮合触媒を含有しない比較例6及び比較例7は、シラノール縮合触媒を含有する実施例36及び実施例50と比較して、耐熱性に劣るものであった。このように、比較例の絶縁電線ないしは当該絶縁電線に被覆された耐熱性樹脂組成物は、総合合格することはできなかった。