特許第5989571号(P5989571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989571自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989571
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20160825BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02J3/00 170
   H02P9/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2013-31971(P2013-31971)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165934(P2014-165934A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美
(72)【発明者】
【氏名】由本 勝久
(72)【発明者】
【氏名】七原 俊也
【審査官】 古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−239782(JP,A)
【文献】 特開2012−175758(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0282601(US,A1)
【文献】 特開2011−199955(JP,A)
【文献】 特開2013−074697(JP,A)
【文献】 特開2013−232147(JP,A)
【文献】 特開2014−082868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00−80/80
G06F 17/00−17/18
G06F 19/00
G06Q 10/00−99/00
H01L 31/02
H01L 31/18
H01L 51/42−51/48
H02J 3/00− 5/00
H02P 9/00− 9/48
H02S 10/00−10/40
H02S 30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算し、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式1によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出し、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式2によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定し、前記平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式3によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定し、前記平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式5によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定し、前記合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式6によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式7によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定することを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法。
【数1】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数2】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M))
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数3】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式4によって算出される。
【数4】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数5】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数6】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数7】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【請求項2】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算し、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式8によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出し、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式9によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定し、前記平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式11によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定し、前記合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式12によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式13によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定することを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法。
【数8】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数9】
ここに、S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式10によって算出される。
【数10】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数11】
ここに、S^(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計の設備容量〔kW〕,
S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数12】
ここに、SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^(f):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数13】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【請求項3】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段と、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式14によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段と、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式15によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段と、前記平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式16によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段と、前記平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式18によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段と、前記合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式19によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式20によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段とを有することを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置。
【数14】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数15】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数16】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式17によって算出される。
【数17】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数18】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数19】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数20】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【請求項4】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段と、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式21によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段と、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式22によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定する手段と、前記平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式24によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定する手段と、前記合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式25によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式26によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定する手段とを有することを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置。
【数21】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数22】
ここに、S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式23によって算出される。
【数23】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数24】
ここに、S^(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計の設備容量〔kW〕,
S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数25】
ここに、SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^(f):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数26】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【請求項5】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式27によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式28によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段、前記平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式29によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段、前記平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式31によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段、前記合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式32によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式33によって前記自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム。
【数27】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数28】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数29】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式30によって算出される。
【数30】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数31】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数32】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数33】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【請求項6】
推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、前記天候データ及び/又は発電出力データを用いて前記計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段、前記発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び前記平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式34によって前記自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段、前記平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式35によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定する手段、前記平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式37によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定する手段、前記合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式38によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式39によって前記自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定する手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム。
【数34】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数35】
ここに、S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式36によって算出される。
【数36】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数37】
ここに、S^(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計の設備容量〔kW〕,
S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数38】
ここに、SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^(f):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数39】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、太陽光発電や風力発電のような自然エネルギー型分散電源が複数ある場合のこれら自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを少数の観測装置によって得られた情報に基づいて推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー型分散電源は、天候(具体的には日射や風)の変化によってその発電出力が変動するため、自然エネルギー型分散電源が複数設置されたエリア全体としては発電出力の大きな変動が生じる。一方、電力会社では、電力系統の周波数を適正な状態に維持させるために、発電機の出力を調整し、電力の需要と供給とを常にバランスさせている。しかし、自然エネルギー型分散電源の出力変動が、予め確保しておいた調整量や調整速度よりも大きくなるようなことがあれば、電力の需要と供給とをバランスさせることができなくなる。したがって、電力系統の周波数を安定して適正範囲内に維持するためには、自然エネルギー型分散電源の出力変動の大きさに十分に対応できる程度の発電機の調整量と調整速度とを常に確保しなければならない。このためには、まず、広いエリアに分散して設置された複数の自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを見積もる必要がある。
【0003】
自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさを推定する従来の方法としては、自然エネルギー発電機が現在はD箇所に設置されていて将来はE箇所に設置されるときの発電出力の変動を推定するにあたって、推定の元となる出力変動の時系列データとしてD箇所で取得した実測データを用いつつ実測により得られた出力変動の時系列データを総計した上で周波数データに変換することによって求められる実測型総出力変動のスペクトラムSmea.D(f)と、自然エネルギー発電機がD箇所からE箇所に設置されたときのゲイン関数G(f)とに基づく数式により、将来の想定変動のスペクトラムStra.D→E(f)を求め、想定変動のスペクトラムStra.D→E(f)を時系列データに変換して想定変動の時系列データPtra.D→E(t)を算出するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−175758
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の出力変動推定方法では、出力変動の周期別の相関が0(ゼロ)と1との間で直線的に推移するとして変動の大きさを推定するようにしているが、そのような推移は長期間のデータから求めた平均的なスペクトラムの傾向に基づく、あくまでも経験的なものにすぎない。実際の自然エネルギー型の電源群による出力変動には日々そして時々の気象条件が異なることの影響があり、これを考慮すると相関が直線的に推移するとは言い難い。このため、特許文献1の方法は、日々そして時々の出力変動の実態が求めた相関に正しく反映されていない虞があるという問題がある。したがって、特許文献1の方法は信頼性が高いとは言えない。
【0006】
また、実際の自然エネルギー型の電源群による出力変動の実態を把握しようとする場合に、自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさを知りたいエリアに多数の計測器を分散設置して天候データを収集すれば、当該エリアでの変動の大きさを見積もることができる。しかしながら、このような方法では計測器の設置とデータ回収とのために多大なコストと手間とが必要とされるという問題がある。また、データを収集したとしても、収集されるデータが大量であるためにデータ処理に多大な時間が必要とされるという問題もある。このようなことから、少量のデータから簡便な方法で検討対象とするエリアに多数の自然エネルギー型分散電源が設置された状況における合計出力の変動の大きさを推定する方法が必要とされる。
【0007】
そこで、本発明は、複数の自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを少量のデータから簡便な方法で推定することができる自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算し、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式1によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出し、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定し、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定し、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定し、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式6によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式7によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定するようにしている。
【0009】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段と、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式1によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段と、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段と、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段と、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段と、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式6によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式7によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段とを有するようにしている。
【0010】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムは、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式1によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式2によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式3によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式5によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式6によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式7によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
【0011】
【数1】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数(数学的にはM≧2であれば良い)
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数2】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M。また、数学的にはN≧3であれば良い。)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数3】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式4によって算出される。
【数4】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数5】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数6】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数7】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0012】
一定以上の拡がりを有する広さの範囲で自然エネルギー型分散電源の発電出力を合計すると、合計出力の見かけの出力変動の大きさが一つ一つの分散電源の実際の出力変動の大きさよりも小さくなる現象が平滑化効果として知られている。
【0013】
このような平滑化効果を前提として、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによると、推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスを算出して当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数に応じた平滑化効果の程度を推定すると共にこの平滑化効果の程度を踏まえて推定される合計出力のパワースペクトルに基づいて標準偏差を推定して合計出力の変動幅を推定するようにしているので、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定される。
【0014】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算し、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式8によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出し、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定し、平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式11によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定し、合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式12によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式13によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定するようにすることもできる。
【0015】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置は、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段と、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式8によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段と、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定する手段と、平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式11によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定する手段と、合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式12によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式13によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定する手段とを有するようにすることもできる。
【0016】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムは、推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置から読み込む手段、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式8によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式9によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を推定する手段、平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)を用いて数式11によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定する手段、合計出力のパワースペクトルS^(ω)に基づいて数式12によって推定される標準偏差SD^(∞)を用いて数式13によって自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の変動幅W^(∞)を推定する手段としてコンピュータを機能させるようにすることもできる。
【0017】
【数8】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数9】
ここに、S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式10によって算出される。
【数10】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数11】
ここに、S^(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kw2〕,
:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計の設備容量〔kW〕,
S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数12】
ここに、SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^(f):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数13】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0018】
これらの場合には、最初に挙げた自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによる上述の作用に加え、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数が具体的な数値ではなくて漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさが推定されるという作用が発揮される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさの推定を行うことができるので、データ収集にかかる費用と手間とを低減させ、また、特別の計算機器等の設備を用いることなく推定処理を行い、さらに、必要な場合には合計出力の変動傾向の速報性を高め、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。具体的には、自然エネルギー型分散電源の現状の設置状況に基づく、若しくは、将来の導入予測に基づく、自然エネルギー型分散電源の出力変動の対策のために用意しておく必要がある発電機の出力調整量と調整速度との検討において上述の作用効果を発揮して有用な技術になり得る。
【0020】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数を具体的な数値で特定することなく、漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定するようにもできるので、この点においても、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。
図2】実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法を自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現される自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置の機能ブロック図である。
図3】計測データに基づいて得られた自然エネルギー型分散電源の発電出力データのパワースペクトルの計算イメージを説明する図である。
図4】自然エネルギー型分散電源の出力変動の変動幅の計算方法(時刻tでの計算イメージ)を説明する図である。
図5】標準偏差と変動幅との組み合わせデータ群についての回帰直線を求める計算イメージを説明する図である。
図6】実施例1における計測地点(X1地点〜X5地点)毎の自然エネルギー型分散電源の個別の発電出力を模擬したデータを示す図である。
図7図6に示すデータから求めた5箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力(X5av)を示す図である。
図8図6に示すデータから求めた計測地点毎の自然エネルギー型分散電源の個別出力のパワースペクトル(X1地点 S1〜X5地点 S5)及び図7に示すデータから求めた5箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル(S5av)を示す図である。
図9図8に示すパワースペクトルから求めた5箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスの計算結果を示す図である。
図10】実施例1における自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標の推定値を示す図である。
図11】実施例1における自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの平均出力のパワースペクトルの推定値を示す図である。
図12】実施例1における自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの合計出力のパワースペクトルの推定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1から図5に、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムの実施形態の一例を示す。
【0024】
本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法は、図1に示すように、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)において天候データ及び/又は発電出力データの計測を行い(S1)、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算し(S2)、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式14によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出し(S3)、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式15によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定し(S4)、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式16によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定し(S5)、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式18によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定し(S6)、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式19によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式20によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する(S7)ようにしている。
【0025】
また、本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置は、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置としてのデータサーバ(16)から読み込む手段(11a)と、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段(11b)と、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式14によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段(11c)と、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式15によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段(11d)と、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式16によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段(11e)と、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式18によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段(11f)と、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式19によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式20によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段(11g)とを有する。
【0026】
さらに、本実施形態の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムは、自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された天候データ及び/又は発電出力データを記憶装置としてのデータサーバ(16)から読み込む手段(11a)、天候データ及び/又は発電出力データを用いて計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)とM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する手段(11b)、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式14によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する手段(11c)、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式15によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する手段(11d)、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式16によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する手段(11e)、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式18によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する手段(11f)、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式19によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式20によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の変動幅W^(N)を推定する手段(11g)としてコンピュータを機能させる。
【0027】
【数14】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数15】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
(ただし、N>M)
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数16】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式17によって算出される。
【数17】
ここに、Si(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数18】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【数19】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【数20】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0028】
そして、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法の実行にあたっては、まず、推定対象エリアにおける天候データと発電出力データとのうちの少なくとも一方の計測が行われる(S1)。
【0029】
本発明では、N箇所に自然エネルギー型分散電源が分散されて設置されているエリアを推定対象エリアとし、当該推定対象エリア内のM箇所に計測器を設置して計測された天候データや発電出力データを用いて当該推定対象エリア内のN箇所の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定する。なお、N>Mである。また、以下においては、複数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定することを単に合計出力変動量推定という。
【0030】
本発明における自然エネルギー型分散電源とは、例えば日射や風や波のような天候・自然現象に発電出力が影響を受ける発電設備であり、具体的は例えば太陽光発電設備や風力発電設備や潮力発電設備などが挙げられる。
【0031】
そして、天候データを収集するための計測器として、推定対象エリア内に設置された自然エネルギー型分散電源の発電出力に関係する(言い換えると、発電出力が影響を受ける)天候・自然現象に纏わるデータを収集し得る機器が用いられ、具体的には例えば推定対象エリア内に太陽光発電設備が設置されていて太陽光発電の合計出力変動量推定を行う場合には日射計,照度計,輝度計などが用いられ、風力発電設備が設置されていて風力発電の合計出力変動量推定を行う場合には風量計,風速計などが用いられ、潮力発電設備が設置されていて潮力発電の合計出力変動量推定を行う場合には波高計,風量計,風速計などが用いられる。なお、推定対象エリア内に複数種類の自然エネルギー型分散電源が設置されていてそれら複数種類の分散電源の合計出力変動量推定を行う場合には各々に対応する天候データを収集するための複数種類の計測器が設置される。
【0032】
また、本発明では、天候データの代わりに発電出力を計測して得られる発電出力データを推定に用いるようにしても良く、具体的には、推定対象エリア内に太陽光発電設備が設置されていて太陽光発電の合計出力変動量推定を行う場合には太陽光発電出力を計測し、風力発電設備が設置されていて風力発電の合計出力変動量推定を行う場合には風力発電出力を計測し、潮力発電設備が設置されていて潮力発電の合計出力変動量推定を行う場合には潮力発電出力を計測するようにしても良い。なお、発電出力を計測する場合には、推定対象エリア内に設置されている実際の発電設備に計測器を取り付けて当該実際の発電設備の発電出力を計測するようにしても良いし、発電出力データ収集用の発電設備を別に設置して発電出力を計測するようにしても良い。
【0033】
なお、天候データと発電出力データとを両方計測するようにしても良い。
【0034】
本発明における推定対象エリアは、複数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを把握する単位としての地域であり、広さなどは特定の大きさ(つまり面積)に限定されるものではなく、例えば電力系統における電力の需要と供給とのバランス運用の単位としての地域の拡がりなどを考慮し、具体的には例えば数十〜数万〔km2〕程度の範囲で設定されることが考えられる。なお、推定対象エリアの面積や形状は本発明による推定内容には影響がない。
【0035】
また、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは、推定対象エリア内の分散電源の導入設備容量に応じて適宜設定されるものであり、特定の数値或いは範囲に限定されるものではない。具体的には例えば数十〜数百〔箇所〕程度の範囲で設定されることが考えられる。
【0036】
なお、本発明は、現状における合計発電出力の変動の大きさの推定に用いるようにしても良いし、将来における合計発電出力の変動の大きさの推定に用いるようにしても良い。すなわち、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは、現状の変動の大きさを推定する場合には推定対象エリア内に実際に存在する分散電源の設置箇所数とするようにしても良いし、将来における変動の大きさを推定する場合には推定対象エリアについて将来において想定される分散電源の設置箇所数とするようにしても良い。さらに言えば、後述するように、推定対象エリア内に現状において設置されている自然エネルギー型分散電源が非常に多い場合や将来において設置が想定される自然エネルギー型分散電源が非常に多い場合などには、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nは具体的な数値ではなくて漠然と非常に大きな数値と捉えても良い。
【0037】
また、天候データや発電出力データを計測する計測器(実際の発電出力データ収集用の発電設備を含む。以下同じ)の設置箇所数Mは、2以上であり且つ本発明における目的を考慮して自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nよりも小さい数値であれば、特定の数値或いは範囲に限定されるものではない。具体的には例えば、2〜数十〔箇所〕程度の範囲で設定されることが考えられる。なお、計測器の設置箇所数Mが多いほど合計出力変動量推定の精度が高くなるため好ましい。
【0038】
また、天候データや発電出力データを計測する計測器の配置の形態は、等間隔配置など一定規則配置でもランダム配置でも良く特定の配置形態に限定されるものではないが、推定対象エリア全体に亘って満遍なく分布して計測されたデータを用いることによって発電出力変動量推定の精度の向上を図ることができるため、推定対象エリア内の一部分に寄せ集められて配置されるよりも推定対象エリア内に偏り無く均等に分布していることが好ましい。
【0039】
天候データや発電出力データは、全ての計測器で時刻同期がとられて(即ち、同時刻に)計測される。計測において時刻同期をとる方法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えばGPSを利用したりインターネット上の時刻サーバーを利用したり標準電波(電波時計)を利用したりすることが考えられる。
【0040】
次に、S1の処理によって計測され取得されたデータ(具体的には、天候データ,発電出力データ)を用いて自然エネルギー型分散電源の発電出力の推定したい時間帯における変動の大きさの指標の計算が行われる(S2)。
【0041】
ここで、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法におけるS2以降の処理は本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置によって実行され得る。
【0042】
そして、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法におけるS2以降の処理及びこれら処理を実行する自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置は、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現され得る。本明細書では、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラムをコンピュータ上で実行することによってS2以降の処理を実行する自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置が実現されると共に自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法におけるS2以降の処理が実行される場合を説明する。
【0043】
自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置10でもある)の全体構成を図2に示す。このコンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置10)は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線によって接続されている。また、コンピュータ10には記憶装置としてのデータサーバ16がバス等の信号回線によって接続されており、その信号回線を介してデータや制御指令等の信号の送受信(即ち出入力)が相互に行われる。
【0044】
制御部11は記憶部12に記憶されている自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム17によってコンピュータ10全体の制御並びに自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさの推定に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
【0045】
記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0046】
メモリ15は制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
【0047】
入力部13は少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。
【0048】
表示部14は制御部11の制御によって文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0049】
そして、本実施形態では、上述のS1の処理において計測され取得された天候データ,発電出力データが計測データベース18としてデータサーバ16に格納(保存)される。なお、S1の処理において計測されたデータは、例えば、各計測器から適当な記憶媒体に保存されて作業者によってデータサーバ16内の計測データベース18に記録・蓄積されるようにしても良いし、各計測器から通信手段(無線・有線)を介してデータサーバ16内の計測データベース18に自動的に記録・蓄積されるようにしても良い。
【0050】
ここで、本発明において用いられるデータは、日射量データや太陽光発電出力データ,風量データや風力発電出力データ,潮力データや潮力発電出力データなどであり、推定対象エリア内に存在して発電出力の変動の大きさの推定対象とされる自然エネルギー型分散電源の種類に応じたものが計測時刻と対応づけられて記録・蓄積される。S1の処理における各種データの計測間隔は、特定の値に限定されるものではなく、合計出力変動量推定を行う目的や計測機器の仕様などを踏まえて適宜設定され、具体的には例えば1〜数十〔秒〕程度の範囲で設定することが考えられる。以下では計測間隔のことをデータのサンプリング時間Tsと呼び、本実施形態ではS1の処理において1秒間隔で計測が行われ、サンプリング時間Ts=1〔秒〕とする。以下では、S1の処理において計測され取得されたデータのことを具体の種類を問わずに単に計測データと呼ぶ。
【0051】
そして、コンピュータ10(本実施形態では、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置10でもある)の制御部11には、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム17を実行することにより、S1の処理において自然エネルギー型分散電源がN箇所に設置された推定対象エリア内の計測地点i(i=1,2,…,M)毎に計測された計測データを記憶装置としてのデータサーバ16から読み込む処理を行うデータ読込部11aと、計測データを用いて計測地点iでの推定したい時間帯における自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)と推定したい時間帯におけるM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)とを計算する処理を行うパワースペクトル計算部11bと、発電出力のパワースペクトルSi(ω)及び平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を用いて数式14によって自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する処理を行う平均的コヒーレンス算出部11cと、平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を用いて数式15によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する処理を行う平滑化効果推定部11dと、平滑化効果の指標ρ^N(ω)を用いて数式16によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する処理を行う平均出力パワースペクトル推定部11eと、平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を用いて数式18によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する処理を行う合計出力パワースペクトル推定部11fと、合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて数式19によって推定される標準偏差SD^(N)を用いて数式20によって自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの推定したい時間帯における合計出力の変動幅W^(N)を推定する処理を行う合計出力変動幅推定部11gとが構成される。
【0052】
自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム17が実行されることによる具体的な処理としては、まず、コンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置10)の制御部11に構成されたデータ読込部11aが計測データの読み込みを行う(S2−1)。
【0053】
具体的には、データ読込部11aは、S1の処理において計測され取得されてデータサーバ16に格納されている計測データベース18に記録されている計測データを計測時刻と共にデータサーバ16から読み込む。
【0054】
データ読込部11aが読み込む計測データの時間帯は推定したい時間帯であり、例えば、或る一時間における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一時間分のデータを読み込み、又は、或る一日における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一日分のデータを読み込み、又は、或る一ヶ月における合計出力変動量推定を行う場合には計測時刻から当該時間帯を判別して前記或る一ヶ月分のデータを読み込む。ここで、データ読込部11aが読み込んで以降の処理の対象とするデータの長さ(言い換えると、発電出力の変動の大きさを推定したい時間帯の長さ)をデータ長a〔秒〕とする。
【0055】
パワースペクトルを計算して自然エネルギー型分散電源の合計出力変動量推定の対象とする時間帯であってデータ読込部11aが読み込む計測データの時間帯(言い換えると、期間)は、例えば、読み込むデータの期間の指定を求める内容のメッセージをS2−1の処理を行う段階で表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定に合わせて決定されるようにすることが考えられる。
【0056】
データ読込部11aは、S2−1の処理によって計測データベース18から推定したい時間帯について読み込んだ計測データが天候データである場合には、当該天候データを自然エネルギー型分散電源の発電出力に換算して発電出力データに変換する(S2−2)。
【0057】
天候データを発電出力に換算する方法は、特定の方法に限定されるものではなく、例えば換算係数を掛ける方法や物理モデルを作成してシミュレーションする方法など複数のものがあり、いずれの方法であっても良い。また、これらの換算方法自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する。なお、計測データベース18から読み込んだデータが元より発電出力データである場合にはこのS2−2の処理は行わない。
【0058】
また、データ読込部11aは、計測データベース18から読み込んだ天候データを変換した発電出力データ、或いは、計測データベース18から読み込んだままの発電出力データを0〜1の範囲の値に規格化し(S2−3)、計測時刻と対応づけてメモリ15に記憶させる。
【0059】
発電出力データの規格化は、発電出力の値を自然エネルギー型分散電源の設備容量(即ち定格容量・定格出力)で除すことによって行う。具体的には、天候データを変換して得られた発電出力データを規格化する場合には、換算処理によって得られた発電出力の値を、換算処理において前提とした容量で除すことによって行う。また、計測によって得られたままの発電出力データを規格化する場合には、計測データベース18から読み込んだ発電出力の値を、計測対象とした実際の発電設備の設備容量若しくは発電出力データ収集用の発電設備の設備容量で除すことによって行う。なお、規格化を行うための自然エネルギー型分散電源の設備容量(即ち定格容量・定格出力)の値データは、例えば設備容量データファイルとして記憶部12やデータサーバ16に予め格納(保存)される。
【0060】
続いて、制御部11のパワースペクトル計算部11bが、S2−3の処理によって規格化された発電出力データを用いて当該発電出力データのパワースペクトルの計算を行う(S2−4)。
【0061】
本発明では、計測データに基づいて得られた自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数別の変動の大きさとしてパワースペクトルを算出する。なお、パワースペクトルの算出方法自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、日野幹雄「スペクトル解析」,朝倉書店,1977年)。
【0062】
ここで、パワースペクトル計算部11bがパワースペクトルを計算する対象は以下の二つである。
【0063】
<1>計測データに基づく計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力xiのそれぞれについてのパワースペクトル
なお、発電出力xiは、S2−3の処理において0〜1の範囲の値に規格化された値である。
【0064】
<2>計測データに基づくM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力(0〜1に規格化された値)の平均値xMav(平均出力xMav)についてのパワースペクトル
なお、平均出力xMavは数式21によって算出される。
【数21】
ここに、xMav(t):M箇所の自然エネルギー型分散電源の
時刻tにおける平均出力〔pu〕,
i(t):計測地点iでの自然エネルギー型分散電源の
時刻tにおける発電出力〔pu〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0065】
計測データに基づいて得られた発電出力データのパワースペクトルの計算イメージを図3に示す。
【0066】
そして、パワースペクトル計算部11bは、計算した、計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力xi(t)のそれぞれについてのパワースペクトルSi(ω)及びM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力xMav(t)についてのパワースペクトルSMav(ω)をメモリ15に記憶させる(ここに、ω:角周波数〔rad/秒〕)。
【0067】
次に、制御部11の平均的コヒーレンス算出部11cが、S2の処理によって計算された発電出力のパワースペクトルを用いて推定対象エリア内での自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスの算出を行う(S3)。
【0068】
具体的には、平均的コヒーレンス算出部11cは、S2−4の処理においてメモリ15に記憶された計測地点i別の自然エネルギー型分散電源の発電出力xi(t)のそれぞれについてのパワースペクトルSi(ω)及びM箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力xMav(t)についてのパワースペクトルSMav(ω)をメモリ15から読み込み、数式22によってM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算出する(なお、数式22の理論的根拠については後記<参考1>を参照)。
【数22】
ここに、cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0069】
なお、コヒーレンスの物理的な意味は二組の信号の相関を変動周波数別に示したものであり(例えば、日野幹雄「スペクトル解析」,p.57,朝倉書店,1977年)、本発明におけるコヒーレンスの意味は二組の自然エネルギー型分散電源の発電出力の相関を変動周波数別に示したものということになる。
【0070】
そして、平均的コヒーレンス算出部11cは、M箇所の計測地点における計測データを用いて算出した平均的なコヒーレンスcohMav(ω)の値をメモリ15に記憶させる。
【0071】
次に、制御部11の平滑化効果推定部11dが、S3の処理によって算出された自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスを用いて推定対象エリアにおける変動周波数別の平滑化効果の指標の推定を行う(S4)。
【0072】
この処理(そしてこの処理によって推定される指標)は、本発明の特徴の一つであり、S3の処理によって得られた推定対象エリア内での自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスから、当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力変動の変動周波数別の平滑化効果の程度を表す指標を自然エネルギー型分散電源の設置箇所数に応じて推定するものである。
【0073】
具体的には、平滑化効果推定部11dは、S3の処理においてメモリ15に記憶された平均的なコヒーレンスcohMav(ω)の値をメモリ15から読み込み、数式23によって、N箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置されている推定対象エリアでの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)を推定する(なお、数式23の理論的根拠については後記<参考2>を参照)。
【数23】
ここに、ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の
変動周波数別の平滑化効果の指標,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
N:推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数N>計測地点の箇所数Mである。
【0074】
そして、平滑化効果推定部11dは、推定した変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)の値をメモリ15に記憶させる。
【0075】
次に、制御部11の平均出力パワースペクトル推定部11eが、S4の処理によって推定された平滑化効果の指標を用いて推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルの推定を行う(S5)。
【0076】
具体的には、平均出力パワースペクトル推定部11eは、S4の処理においてメモリ15に記憶された変動周波数別の平滑化効果の指標ρ^N(ω)の値をメモリ15から読み込み、数式24によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)を推定する。
【数24】
ここに、S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの平均出力の
パワースペクトル〔pu2〕,
ρ^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの発電出力の
変動周波数別の平滑化効果の指標,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0077】
数式24のSM ̄(ω)は、数式25によって算出する。すなわち、SM ̄(ω)はM箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトルSi(ω)の集合平均である。
【数25】
ここに、SM ̄(ω):M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の
パワースペクトルの集合平均〔pu2〕,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0078】
なお、数式24は以下の考え方によって導出される。まず、実際に計測したM箇所の計測データから、自然エネルギー型分散電源がM箇所であるときの発電出力についての変動周波数別の平滑化効果の指標ρM(ω)を直接的に計算する式は数式26のように表される。
【数26】
ここに、ρM(ω):M箇所の計測地点で計測したデータに基づく自然エネルギー型
分散電源がM箇所であるときの発電出力の変動周波数別の
平滑化効果の指標,
Mav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
i(ω):計測地点iで計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の発電出力のパワースペクトル〔pu2〕,
M ̄(ω):M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の
パワースペクトルの集合平均〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕,
M:推定対象エリア内の計測地点の箇所数
をそれぞれ表す。
なお、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0079】
数式26は、M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動の大きさと、1箇所あたりの自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさ(すなわち、M箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの平均値)との比であり、平均出力の変動の大きさが1箇所での変動の大きさと比べて平滑化効果によってどの程度小さくなったかを示す指標となる。
【0080】
そして、M箇所の計測地点で計測したデータに基づく自然エネルギー型分散電源がM箇所であるときの発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρM(ω)に関する数式26において、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数をM箇所からN箇所に変更することによって数式24が導出される。なお、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数が変わっても個々の自然エネルギー型分散電源での変動の大きさの平均は大きくは変わらないと考えられるため、数式24を導出する際にはSM ̄(ω)とSN ̄(ω)は等しいと仮定している。
【0081】
次に、推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nが例えば100以上の十分に大きい数である場合を考えると、1>>1/Nとなる。このため、自然エネルギー型分散電源が多数導入されている推定対象エリアでは、数式23についてN→∞として収束させた場合のρ^N(ω)=cohMav(ω)を数式24に代入して得られる数式27によって平均出力のパワースペクトルを推定するようにしても良い。
【数27】
ここに、S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
cohMav(ω):平均的なコヒーレンス,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
また、SM ̄(ω)は数式25によって算出する。
【0082】
数式27は、例えば将来の予測のように自然エネルギー型分散電源の導入設備容量は予測されている(言い換えると、予測・予想・想定などによって定量的に示されている)一方で設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難であるときに、具体的な設置箇所数に依らずに平均出力のパワースペクトルを求める場合に用いられ得る。
【0083】
そして、平均出力パワースペクトル推定部11eは、推定した、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)、或いは、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)をメモリ15に記憶させる。
【0084】
次に、制御部11の合計出力パワースペクトル推定部11fが、S5の処理によって推定された推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルを用いて推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の合計出力のパワースペクトルの推定を行う(S6)。
【0085】
具体的には、合計出力パワースペクトル推定部11fは、S5の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力のパワースペクトルS^Nav(ω)をメモリ15から読み込み、数式28によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^N(ω)を推定する。
【数28】
ここに、S^N(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
N:N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計の設備容量〔kW〕,
S^Nav(ω):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0086】
一方、例えば将来の予測のように自然エネルギー型分散電源の導入設備容量は定量的に示されていても設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難である場合で推定対象エリア内に自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときのこれら分散電源の合計出力のパワースペクトルを推定する場合には、合計出力パワースペクトル推定部11fは、S5の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の平均出力のパワースペクトルS^∞,av(ω)をメモリ15から読み込み、数式29によって、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^(ω)を推定する。
【数29】
ここに、S^(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
:自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計の設備容量〔kW〕,
S^∞,av(ω):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
ω:角周波数〔rad/秒〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
また、puは発電出力を0〜1の範囲の値に規格化したことを表す単位である。
【0087】
そして、合計出力パワースペクトル推定部11fは、推定した、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^N(ω)、或いは、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^(ω)をメモリ15に記憶させる。
【0088】
次に、制御部11の合計出力変動幅推定部11gが、S6の処理によって推定された合計出力のパワースペクトルを用いて推定対象エリアの自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動幅の推定を行う(S7)。
【0089】
具体的には、合計出力変動幅推定部11gは、まず、S6の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^N(ω)をメモリ15から読み込み、パーセバル(Perceval)の等式の周波数g〜h〔Hz〕の部分を抽出したものである数式30によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差SD^(N)を推定する。
【数30】
ここに、SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^N(f):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0090】
一方、例えば将来の予測のように自然エネルギー型分散電源の導入設備容量は定量的に示されていても設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難である場合で推定対象エリア内に自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときのこれら分散電源の合計出力の変動幅を推定する場合には、合計出力変動幅推定部11gは、S6の処理においてメモリ15に記憶された推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力のパワースペクトルS^(ω)をメモリ15から読み込み、パーセバル(Perceval)の等式の周波数g〜h〔Hz〕の部分を抽出したものである数式31によって、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差SD^(∞)を推定する。
【数31】
ここに、SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕,
S^(f):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力のパワースペクトル〔kW2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0091】
ここで、数式30,31における変動周波数の範囲の下限g,上限h〔Hz〕は以下の手順によって予め定めておく。そして、この変動周波数の範囲g,hを定めるために、発電出力の変動の大きさ(つまり変動幅)を推定する単位としての時間幅を、発電機の調整量と調整速度とを考慮して作業者が指定するようにし、この時間幅のことを時間窓b〔秒〕とする。なお、データ長a≧時間窓bである。データ長a,時間窓b,変動幅の間の関係のイメージを図4に示す。
【0092】
そして、時間窓がb〔秒〕であるときの、標準偏差推定の対象とする発電出力の周波数の範囲の下限gは数式32で算定される。
【数32】
ここに、g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
b:時間窓〔秒〕
をそれぞれ表す。
【0093】
周波数の範囲の下限は、あるいは、数式31によって算出した変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差と時間窓b〔秒〕の変動幅との間の比例関係が良好であるようなgの値を用いて適宜設定され得る(具体的には、以降で述べる数式33,34における標準偏差を変動幅に換算する係数Kを算出する手順5で求めたgの値を用いる)。
【0094】
また、標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限hは、自然エネルギー型分散電源の発電出力データのサンプリング時間Ts〔秒〕を用いて1/(2Ts)によって算定されるパワースペクトルの変動周波数の最大値とする(即ち、h=1/(2Ts))(なお、パワースペクトルの計算上の制約により、1/(2Ts)よりも大きい周波数の変動を算出することはできない:サンプリング定理)。
【0095】
時間窓b〔秒〕、標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限g〔Hz〕、標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限h〔Hz〕は、本プログラムを実行する前に記憶部12にあらかじめ格納(保存)しておく。
【0096】
そして、合計出力変動幅推定部11gは、数式30若しくは数式31を用いて自然エネルギー型分散電源の合計出力の標準偏差SD^(N)若しくはSD^(∞)を推定する。
【0097】
続いて、合計出力変動幅推定部11gは、上記で推定した推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差SD^(N)を用い、数式33によって、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅W^(N)を推定する。
【数33】
ここに、W^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの
合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
時間窓b〔秒〕の変動幅に換算する係数,
SD^(N):自然エネルギー型分散電源がN箇所であるときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0098】
一方、例えば将来の予測のように自然エネルギー型分散電源の導入設備容量は定量的に示されていても設置箇所数を具体的な数値で特定することが困難である場合で推定対象エリア内に自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときのこれら分散電源の合計出力の変動幅を推定する場合には、合計出力変動幅推定部11gは、上記で推定した推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差SD^(∞)を用い、数式34によって、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅W^(∞)を推定する。
【数34】
ここに、W^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの
合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅〔kW〕,
K:変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差を
時間窓b〔秒〕の変動幅に換算する係数,
SD^(∞):自然エネルギー型分散電源が多数導入されたときの合計出力の
変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔kW〕
をそれぞれ表す。
なお、^は推定値であることを表す。
【0099】
ここで、数式33,34における標準偏差を変動幅に換算する係数Kは以下の手順1〜5によって予め定めておく。
【0100】
<手順1>
M箇所の計測地点で計測したデータを用いて自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルSMav(ω)を算定する。このとき、データ長a〔秒〕をS2−1〜2−4の処理において発電出力データのパワースペクトルの計算に用いた計測データのデータ長a〔秒〕と同じにし、換算係数Kの決定のために、計測データベース18に記録・蓄積されている計測データからデータ長a〔秒〕の平均出力データを一つ若しくは複数個抽出し、それぞれについてパワースペクトルSMav(ω)を算定する。ここに、平均出力データを抽出する対象の期間は作業者が指定するものであるが、出力変動の大きさを推定したい時間帯を含む期間(例えば、週、月や季節など)とする。また、抽出する平均出力データの個数も作業者が指定するものであるが、特定の個数に限定されるものではない(上述のように一つでも良い)。たとえば、データ個数が多いほど換算係数Kの精度の信頼性が高まるため、データ個数をこれ以上増やしても換算係数Kが飽和して値が変わらなくなる程度の個数などが考えられる。
【0101】
<手順2>
手順1によって算定した一つ若しくは複数個のパワースペクトルSMav(ω)のそれぞれを用い、数式35によって、M箇所の自然エネルギー型分散電源の平均出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差σ(M)を算定する。
【数35】
ここに、σ(M):自然エネルギー型分散電源がM箇所であるときの
平均出力の変動周波数g〜h〔Hz〕の範囲における標準偏差〔pu〕,
Mav(f):自然エネルギー型分散電源がM箇所であるときの
平均出力のパワースペクトル〔pu2〕,
a:パワースペクトルの計算に使用した自然エネルギー型分散電源の
発電出力のデータ長〔秒〕,
f:自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数〔Hz〕,
g:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の下限〔Hz〕,
h:標準偏差推定の対象とする発電出力の変動周波数の範囲の上限〔Hz〕
をそれぞれ表す。
【0102】
<手順3>
手順1で用意した複数個のデータ長a〔秒〕の平均出力データのそれぞれについて、図4に示すように平均出力の「データ開始時刻t0」から「データ終了時刻−b(=t0+a−b)」まで時間窓b〔秒〕を或るピッチ(刻み)で移動させながら変動幅をそれぞれ算定する。なお、時間窓b〔秒〕を移動させる刻みは、特定の値に限定されるものではなく、例えば10秒刻みとすることが考えられる。
【0103】
図4では、時刻tにおける時間窓bでの変動幅を示しており、時刻tでの変動幅は時間窓b内での平均出力の最大値から最小値を引いた値で定義される。また、図4では、データ開始時刻を時刻t0とし、データ終了時刻を時刻t0+aとして図示している。
【0104】
この手順3により、複数個のデータ長a〔秒〕の平均出力データのそれぞれについて、時間窓b〔秒〕を或る刻みで移動させながら算定することによる、時間窓の位置毎の複数の変動幅が算定される。
【0105】
<手順4>
手順3によって算定されたデータ長aの平均出力データ毎に、それぞれの複数の変動幅の中から以下のうちのいずれかを作業者が選択し、データ長aの平均出力データそれぞれの変動幅w(M)とする。
1)データ長a分内における最大値
2)データ長a分内における平均値
3)データ長a分内におけるXパーセンタイル値(Xの値は作業者が指定する)
【0106】
<手順5>
手順2においてデータ長aの平均出力データのそれぞれについて算定した標準偏差σ(M)と手順3において算定して手順4において選択した変動幅w(M)とを用いてこれらσ(M)とw(M)との組み合わせを一組若しくは複数組作り、これら標準偏差σ(M)と変動幅w(M)との組み合わせデータ(群)についての原点を通る回帰直線を求め、この回帰直線の傾き(いわゆる回帰係数)を、標準偏差を変動幅に換算する係数Kとする。標準偏差σ(M)と変動幅w(M)との組み合わせデータ群についての回帰直線を求める計算イメージを図5に示す。
【0107】
ここで、数式35における変動周波数の範囲の下限g,上限h〔Hz〕は、上述の数式30,31の関連として説明したように定められる(すなわち、g=1/b,h=1/(2Ts))。ただし、標準偏差から変動幅への換算精度を高めるため、数式32で定められるgの近傍の値で手順1〜5を繰り返し行い、得られる回帰直線の誤差が最も小さくなるgを選択するようにしても良い。なお、このようにしてgの値を選択・決定した場合には、数式30,31における変動周波数の範囲の下限gもその値にする。
【0108】
そして、合計出力変動幅推定部11gは、S7までの処理による推定結果として、推定した、推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅W^(N)の値、或いは、推定対象エリア内に多数の自然エネルギー型分散電源が分散配置された場合の合計出力の時間窓b〔秒〕の変動幅W^(∞)の値を、表示部14に表示したり、例えば記憶部12やデータサーバ16に推定結果データファイルとして保存したりする。
【0109】
そして、制御部11は、自然エネルギー型分散電源群による合計出力の変動の大きさの推定の処理を終了する(END)。
【0110】
以上の構成を有する本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、推定対象エリア内の自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動間の平均的なコヒーレンスcohMav(ω)を算定して当該エリア内の自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nに応じた変動周波数別の平滑化効果の程度(平滑化効果の指標ρ^N(ω))を推定すると共にこの平滑化効果の程度を踏まえて推定される合計出力のパワースペクトルS^N(ω)に基づいて標準偏差SD^(N)を推定して合計出力の変動幅W^(N)を推定することにより、少数箇所で計測されたデータから当該計測箇所数よりも多い数の自然エネルギー型分散電源による合計出力の変動の大きさを推定するようにしているので、少量のデータから、また処理内容としては簡便に、機器にとっては小さい計算負荷で、自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定することができ、データ収集にかかる費用と手間とを低減させ、また、特別の計算機器等の設備を用いることなく推定処理を行い、さらに、必要な場合には合計出力の変動傾向の速報性を高め、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0111】
また、本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法、変動推定装置及び変動推定プログラムによれば、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数Nを具体的な数値で特定することなく、漠然と大きな数値であるとの仮定でも自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定するようにもできるので、この点においても、自然エネルギー型分散電源群の合計出力の変動推定技術としての汎用性の向上を図ることが可能になる。
【0112】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるが本発明の実施の形態がこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では計測データが蓄積される記憶手段をデータサーバ16としているが、記憶部12でも良いし、他の記憶装置を用いるようにしても良い。また、計測データを記憶装置に一旦蓄積することなく、計測器からコンピュータ10(自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置10)に直接入力し、入力されたデータから処理を順次行うようにしても良い。
【0113】
<参考1>数式22の理論的根拠
複数の計測地点でデータを計測する場合において、地点iの計測器で時刻tに計測したデータに基づく自然エネルギー型分散電源の発電出力をxi(t)〔kW〕とすると、t=0〜T〔秒〕の発電出力のパワースペクトルSi(ω)〔kW2〕は数式36で求められ、また、地点i及び地点jのデータ(発電出力xi(t),xj(t))のクロススペクトルSij(ω) 〔kW2〕は数式37で求められる。
【数36】
【数37】
ここに、E[ ]:期待値演算,
i(ω):地点iの自然エネルギー型分散電源の
発電出力xi(t)のフーリエ変換〔kW〕,
T:基本周期〔秒〕,
*:複素共役
をそれぞれ表す。
【0114】
そして、N箇所の自然エネルギー型分散電源の合計発電出力のパワースペクトルSsum(ω)は数式38で表される。
【数38】
【0115】
数式38の中括弧内を展開して数式36と数式37とを代入すると数式39が得られる。
【数39】
【0116】
一方、地点iと地点jとの発電出力間のコヒーレンスcohij(ω)は数式40で定義されると共にフェーズψij(ω)は数式41で定義される。なお、フェーズの物理的な意味は二組の信号の位相差を周波数別に示したものであり(例えば、日野幹雄「スペクトル解析」,p.63−64,朝倉書店,1977年)、本発明におけるフェーズの意味は二組の自然エネルギー型分散電源の発電出力の位相差を周波数別に示したものということになる。
【数40】
【数41】
ここに、arg( )は偏角を表す。
【0117】
数式40と数式41を考慮にいれて数式39を変形すると数式42となる。
【数42】
【0118】
数式42について、計測器の設置箇所数Mの観点で記述し直すと数式43が得られる。
【数43】
ここに、SMav(ω):M箇所の計測地点で計測したデータから得られた
自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトル〔kW2
を表す。
【0119】
数式43について、一般にはコヒーレンスは地点iと地点jとの組合せにより異なるが、全ての組合せのコヒーレンスの平均値である平均的なコヒーレンスcohMav(ω)にいずれの組合せのコヒーレンスも一致していると仮定する。また、地点iと地点jとの間の位相差は十分に小さく、 ψij(ω)=0が成立すると仮定する。その結果、数式43から数式44が得られる。
【数44】
【0120】
以上により、数式22の平均的なコヒーレンスの大きさが導出される。
【0121】
<参考2>数式23の理論的根拠
実際に計測したM箇所の計測データから自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動周波数別の平滑化効果の指標ρM(ω)を直接的に計算する式は数式45のように表される。
【数45】
【0122】
数式22に数式45を代入すると数式46が得られる。
【数46】
【0123】
ここで、推定対象エリア内ではいずれの計測地点でのパワースペクトルはM箇所のパワースペクトルの集合平均SM ̄(ω)と平均的に見て変わらないと仮定する。つまり、数式47が成り立つと仮定する。
【数47】
【0124】
この仮定により、平滑化効果の指標ρM(ω)と平均コヒーレンスcohMav(ω)との間の関係式として数式48又は数式49が得られる。
【数48】
【数49】
【0125】
なお、数式48(※数式48?)又は数式49(※数式49?)を導出する際、数式50に示す関係式を利用している。
【数50】
【0126】
数式49は、M箇所の計測地点で計測したデータから求めた自然エネルギー型分散電源の発電出力についての変動周波数別の平滑化効果の指標である。そこで、自然エネルギー型分散電源が設置された箇所数がN(N>M)の場合について、自然エネルギー型分散電源の設置箇所数が増えても平均的なコヒーレンスcohMav(ω)の大きさは変わらないと仮定すると、数式49でMの代わりにNを用いることによりN箇所に自然エネルギー型分散電源がある場合の発電出力の平滑化効果の指標が得られる。すなわち推定対象エリア内のN箇所に自然エネルギー型分散電源が分散配置されている場合の発電出力の平滑化効果の指標の推定式である数式23が得られる。
【実施例1】
【0127】
本発明の自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法を模擬データに適用した実施例を図6から図12を用いて説明する。なお、本実施例では、自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法プログラムをコンピュータ上で実行することによって自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置が実現されると共に自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定方法における処理が実行される場合を説明する。
【0128】
本実施例では、10km四方程度のエリアにおいてX1,X2,X3,X4,X5の5箇所の計測地点で計測したデータから得られた自然エネルギー型分散電源の発電出力を模擬したデータを用いて変動の大きさ(具体的には、時間窓60秒の変動幅の最大値)の推定を行った。本実施例で用いた計測地点別の模擬データを図6に示す。
【0129】
なお、本実施例では、自然エネルギー型分散電源が10箇所に分散配置されたときの合計出力の変動幅の最大値を推定することを例題としての設定内容とした。また、各自然エネルギー型分散電源の設備容量を1〔kW〕とした。これにより、発電出力を0〜1に規格化しても値は変わらないため、本実施例では規格化の結果は明示しない(すなわち、〔pu〕ではなく、〔kW〕で発電出力の単位を表記する)。また、自然エネルギー型分散電源の発電出力の変動の大きさの指標を算出する時間窓bを60秒とすると共に発電出力データのサンプリング時間Tsを1秒とした。
【0130】
次に、各計測地点X1,X2,X3,X4,X5の自然エネルギー型分散電源の発電出力を模擬したデータからこれら5箇所の計測地点X1〜X5の自然エネルギー型分散電源の平均出力X5avを求めて図7に示す結果が得られた(S1,S2−1,S2−2,S2−3の処理に該当)。図7に示す結果から、平均出力の変動は個々の計測地点X1,X2,X3,X4,X5における個別出力の変動よりも平滑化効果によって小さいことが確認された。
【0131】
計測地点別の自然エネルギー型分散電源の個別出力(図6に示すデータ)のパワースペクトルと5箇所の計測地点の自然エネルギー型分散電源の平均出力(図7に示すデータ)のパワースペクトルとを、それぞれ、個別出力データや平均出力データからスペクトル解析を行って直接求めることによって図8に示す結果が得られた(S2−4の処理に該当)。図8に示す結果から、5箇所の計測地点の自然エネルギー型分散電源の平均出力のパワースペクトルS5avは計測地点別の自然エネルギー型分散電源の個別出力のパワースペクトルS1,S2,S3,S4,S5よりも平滑化効果によって小さいことが確認された。
【0132】
また、標準偏差を変動幅に換算する係数Kを求めるため、平均出力のパワースペクトルS5avと数式35とから標準偏差(60秒周期以下の変動)を求め、平均出力X5avから変動幅(時間窓60秒)の最大値を求めて表1に示す結果が得られた。
【0133】
【表1】
【0134】
ここで、本実施例では、発電出力の変動幅を評価するための時間窓bを60秒とすると共に発電出力データのサンプリング時間Tsを1秒としたので、数式35における総和の範囲である変動周波数の範囲の下限g,上限h〔Hz〕はそれぞれ、g=1/60〔Hz〕,h=1/2〔Hz〕とした。
【0135】
表1に示す標準偏差と変動幅の最大値との組み合わせデータから、当該組み合わせデータについての原点を通る回帰直線の傾き(ここでは即ち、変動幅/標準偏差)は5.75になり、よって、本実施例における、標準偏差を変動幅(の最大値)に換算する係数K=5.75とした(S7の処理における換算係数Kの決定に該当)。
【0136】
次に、図8に示すパワースペクトルと数式22とから自然エネルギー型分散電源5箇所設置時の発電出力の平均的なコヒーレンスを計算して図9に示す結果が得られた(S3の処理に該当)。
【0137】
そして、本実施例では、当該エリアにおける10箇所に設置された自然エネルギー型分散電源の合計出力の変動の大きさを推定するため、10箇所の自然エネルギー型分散電源の発電出力の平滑化効果を推定する(S4の処理に該当)。図8に示すパワースペクトルと図9に示す平均的なコヒーレンスと数式23とから、自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの変動周波数別の平滑化効果の指標の推定値を計算して図10に示す結果が得られた。
【0138】
また、図8に示すパワースペクトルと図10に示す平滑化効果の指標の推定値と数式24とから、自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの平均出力のパワースペクトルの推定値を計算して図11に示す結果が得られた(S5の処理に該当)。
【0139】
また、図11に示す平均出力のパワースペクトルの推定値と数式28とから自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの合計出力のパワースペクトルを推定して図12に示す結果が得られた(S6の処理に該当)。なお、本実施例では、各自然エネルギー型分散電源の設備容量を1〔kW〕としたので、10箇所の自然エネルギー型分散電源の設備容量の合計は10〔kW〕である。
【0140】
次に、図12に示す合計出力のパワースペクトルの推定値と数式30とから自然エネルギー型分散電源を10箇所設置したときの合計出力の標準偏差(60秒周期以下の変動)を推定し、1.221〔kW〕になった。ここで、本実施例では、発電出力の変動幅を評価するための時間窓bを60秒とすると共に発電出力データのサンプリング時間Tsを1秒としたので、数式30における総和の範囲である変動周波数の範囲の下限g,上限h〔Hz〕はそれぞれ、g=1/60〔Hz〕,h=1/2〔Hz〕とした。
【0141】
続いて、標準偏差=1.221〔kW〕と換算係数K=5.75とから、時間窓60秒における変動幅の最大値を推定し、7.03〔kW〕になった(S7の処理に該当)。
【0142】
以上の結果から、自然エネルギー型分散電源が複数設置された場合の、エリア全体としての発電出力変動の平滑化効果を考慮した合計出力の変動の大きさについて妥当な結果を推定可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0143】
10 自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定装置
17 自然エネルギー型分散電源群の合計発電出力の変動推定プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12