(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
港湾荷役機器の主要動作を行う主機以外の装置であり、前記主機を冷却する主機用冷却装置、荷役動作範囲を照らす荷役用照明装置、前記港湾荷役機器の室内を冷却する室内用冷却装置、及び前記室内を照らす室内用照明装置を含む補機を備える港湾荷役機器の制御方法において、
前記港湾荷役機器の運転中に、前記主機の動作状況または室内状況が予め定めた電力削減条件を満たすと、前記主機の動作状況または前記室内状況を維持している前記補機を通常稼働時よりも消費される電力が少ない省電力状態にして、
前記主機が動作している場合に前記主機の温度が予め定めた第1主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして前記主機用冷却装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に前記主機の温度が第2主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして前記主機用冷却装置を前記省電力状態にする第1工程と、
前記主機が動作している場合に前記荷役動作範囲の明るさが予め定めた主機照度判定値以上になると前記電力削減条件を満たしたとして前記荷役用照明装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に前記電力削減条件を満たしたとして前記荷役用照明装置を前記省電力状態にする第2工程と、の少なくともどちらか一方を含むことを特徴とする港湾荷役機器の制御方法。
前記補機制御装置が、前記港湾荷役機器の運転中に、前記室内の温度が予め定めた室内温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用冷却装置を前記省電力状態にし、
前記室内の明るさが予め定めた室内照度判定値以上なると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用照明装置を前記省電力状態にする第3手段を備える請求項4または5に記載の港湾荷役機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、港湾荷役機器の走行や巻上げなどの主要動作を行う主機以外の装置である補機が消費する電力を削減し、港湾荷役機器の消費電力を削減することができる港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するための本発明の港湾荷役機器の制御方法は、港湾荷役機器の主要
動作を行う主機以外の装置であり、前記主機を冷却する主機用冷却装置、荷役動作範囲を照らす荷役用照明装置、前記港湾荷役機器の室内を冷却する室内用冷却装置、及び前記室内を照らす室内用照明装置を含む補機を備える港湾荷役機器の制御方法において、前記港湾荷役機器の運転中に、前記主機の動作状況、又は室内状況が予め定めた電力削減条件を満たすと、前記主機の動作状況、又は前記室内状況を維持している前記補機を通常稼働時よりも消費される電力が少ない省電力状態にすることを特徴とする方法である。
【0011】
この方法によれば、主機(主巻きモータ、横行モータ、及び走行用モータなど)以外の装置である補機を、例えば主巻きモータの冷却ファン、機械室の換気ファン、運転室の室内灯、及び投光器などを、港湾荷役機器の運転中に通常稼働時よりも消費される電力が少ない省電力状態にすることができる。そのため、補機の消費電力を抑え、港湾荷役機器の消費エネルギーを低減することができる。
【0012】
なお、ここでいう省電力状態とは、通常の稼働と比較して、消費される電力が低減された状態であり、停止した状態や、低電力で稼働している状態を示す。例えば、主巻きモータの冷却ファンの場合は、冷却ファンの回転速度が通常よりも低速な状態で動作することや、投光器の場合は、通常よりも減光した状態で動作することを含む。
【0013】
加えて、ここでいう主要動作とは、例えば岸壁クレーンの場合は、船舶から、又は船舶へコンテナを積み上げ、又は積み卸しする動作(荷役動作)などのことであり、荷役動作範囲とは、岸壁クレーンのトロリの横行範囲や吊り具の巻上げ下げの範囲のことを示す。
【0014】
また、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記主機が動作している場合に、前記主機の温度が予め定めた第1主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記主機用冷却装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に、前記主機の温度が第2主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記主機用冷却装置を前記省電力状態にする第1工程と、前記主機が動作している場合に、前記荷役動作範囲の明るさが予め定めた主機照度判定値以上になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記荷役用照明装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に、前記電力削減条件を満たしたとして、前記荷役用照明装置を前記省電力状態にする第2工程と、の少なくともどちらか一方を含むと、港湾荷役機器の運転中に過剰に動作している主機用冷却装置と荷役用照明装置を省電力状態にすることができるので、補機が消費するエネルギーを低減することができる。
【0015】
例えば、主巻きモータを使用していないときに、主巻きモータの温度が低い場合に、主巻きモータを冷却するファンを通常よりも低速で駆動する、又は停止することができ、また、日中の荷役作業の場合に、運転室の下の室外灯を通常よりも減光する、又は停止することができる。
【0016】
加えて、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記主機の動作速度と動作経路とを、少なくとも荷役時間の短縮を目的関数とする遺伝的アルゴリズムを用いて最適化する最適化工程と、前記最適化工程で最適化された前記動作速度と前記動作経路で前記主機を動作し、荷役動作の完了後に、前記主機を停止する主機停止工程と、を含むと、港湾荷役機器の主要動作、例えばトロリの横行速度や吊り具の巻上げ下げの速度、及びトロリの横行経路や吊り具の巻上げ下げの経路を、遺伝的アルゴリズムを用いて最適化し、荷役時間を短縮することで、主機を早く停止し、短縮した分の補機が消費する電力も削減することができので、より消費エネルギーを削減することができる。
【0017】
なお、遺伝的アルゴリズムとは、生物の進化過程を模倣した最適解採索手法であり、例えば交叉と突然変異の二つの操作により、すでに存在する解から新しい解候補を生成し、
自然淘汰のアイデアに基づいて解の選択を行なって、世代交代を繰り返して最適解を探索する手法である。
【0018】
さらに、上記の港湾荷役機器の制御方法において、前記港湾荷役機器の運転中に、前記室内の温度が予め定めた室内温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用冷却装置を前記省電力状態にし、前記室内の明るさが予め定めた室内照度判定値以上になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用照明装置を前記省電力状態にする第3工程を含むと、港湾荷役機器の運転中に、過剰に動作している機械室の換気ファンや、運転室の室内灯などの補機を省電力状態にすることができる。
【0019】
また、上記の問題を解決する港湾荷役機器は、港湾荷役機器の主要動作を行う主機以外の装置であり、前記主機を冷却する主機用冷却装置、荷役動作範囲を照らす荷役用照明装置、前記港湾荷役機器の室内を冷却する室内用冷却装置、及び前記室内を照らす室内用照明装置を含む補機を備える港湾荷役機器において、前記港湾荷役機器の運転中に、前記主機の動作状況、又は室内状況が予め定めた電力削減条件を満たすと、前記主機の動作状況、又は前記室内状況を維持している前記補機を通常稼働時よりも消費される電力が少ない省電力状態にする補機制御装置を備えて構成される。
【0020】
また、上記の港湾荷役機器において、前記補機制御装置が、前記主機が動作している場合に、前記主機の温度が予め定めた第1主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記主機用冷却装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に、前記主機の温度が第2主機温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記主機用冷却装置を前記省電力状態にする第1手段と、前記主機が動作している場合に、前記荷役動作範囲の明るさが予め定めた主機照度判定値以上になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記荷役用照明装置を前記省電力状態にし、前記主機が動作していない場合に、前記電力削減条件を満たしたとして、前記荷役用照明装置を前記省電力状態にする第2手段と、の少なくともどちらか一方を備えると、従来港湾荷役機器の運転中に稼働していた補機を、主機の動作に合せて省電力状態にすることができる。
【0021】
これにより、補機制御装置が、補機を省電力状態にしても主機、又は室内に問題が起きないことを判断するので、港湾荷役機器の動作に影響を与えずに、港湾荷役機器の運転中に過剰に動作していた補機を省電力状態にすることができ、補機が消費していた分の電力を削減することで、港湾荷役機器の消費電力を削減することができる。
【0022】
加えて、上記の港湾荷役機器において、前記主機の動作を制御する制御装置を備えると共に、前記制御装置が、前記主機の動作速度と動作経路とを、少なくとも荷役時間の短縮を目的関数とする遺伝的アルゴリズムを用いて最適化する最適化プログラムと、前記最適化プログラムを用いて最適化された前記動作速度と前記動作経路で前記主機を動作し、荷役動作の完了後に、前記主機を停止する主機停止手段と、を備えると、制御装置が、港湾荷役機器の主要動作にかかる時間を短縮して、その短縮した時間で、補機を停止することにより、さらに港湾荷役機器の消費電力を削減することができる。
【0023】
さらに、上記の港湾荷役機器において、前記補機制御装置が、前記港湾荷役機器の運転中に、前記室内の温度が予め定めた室内温度判定値以下になると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用冷却装置を前記省電力状態にし、前記室内の明るさが予め定めた室内照度判定値以上なると前記電力削減条件を満たしたとして、前記室内用照明装置を前記省電力状態にする第3手段を備えると、より補機が消費している電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、港湾荷役機器の走行や巻上げなどの主要動作を行う主機以外の装置である補機が消費する電力を削減し、港湾荷役機器の消費電力を削減することができる。また、主機の動作を最適化して、荷役時間を短縮し、その短縮した時間分の補機が消費する電力を削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器の制御方法と港湾荷役機器について、図面を参照しながら説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。
【0027】
なお、この実施の形態では、港湾荷役機器として岸壁に沿って走行し、船舶に対して荷役を行う岸壁クレーンを例に説明するが、本発明を適用することができる港湾荷役機器は岸壁クレーンに限定しない。例えば、岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、天井クレーン、及びストラドルキャリアなどの港湾荷役機器に適用することができる。
【0028】
まず、主機と室内と補機について定義する。主機とは、港湾荷役機器の主要動作(荷役作業、及び走行を含む)を行う際に稼働する装置であり、例えば、港湾荷役機器を走行させるための走行用モータや、港湾荷役機器がコンテナを巻き上げ下げするための主巻モータなどの駆動装置や、吊り具などのその駆動装置により動作する装置などのことをいう。また、合わせてそれらモータへ電力を供給する電力供給装置も含む。加えて、室内とは主機を設ける機械室、運転手が搭乗する運転室などのことをいう。
【0029】
補機とは、前述の主機以外の装置を示し、港湾荷役機器の荷役動作には直接関わることがないが、主機の稼働を補助する装置や主要動作を安全に行うために補助する装置である。例えば、主巻モータを冷却する冷却ファンなどの冷却装置や、荷役動作範囲を照らす投光器などの照明装置のことであり、主機の動作状況(動作中の温度や動作範囲の照度)又は室内状況(室内温度や室内照度)を最適に維持する装置である。
【0030】
実施の形態の説明では、図示しないが主機全般を示す場合は主機10a、室内全般を示す場合は室内10b、補機全般を示す場合は補機20、補機20の中で主機10aを冷却
する装置を主機用冷却装置20a、主機10aの動作範囲を照らす装置を荷役用照明装置20b、室内10bを冷却する装置を室内用冷却装置20c、及び室内10bを照らす装置を室内用照明装置20dとする。
【0031】
次に、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器(岸壁クレーン)について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、船舶Sに対して荷役を行う岸壁クレーン1は、ブーム2、ガーダー3、トロリ4、吊り具5、脚構造物8、及び走行装置9を備え、室内10bとして運転室6と機械室7a(電気室7bを含む)とを備える。
【0032】
また、
図2に示すように、岸壁クレーン1は、主機10aとして、ケーブルリール11、コンバータ12、インバータ13、主巻モータ14、ドラム15、横行モータ16、及び走行モータ17を備える。加えて、主機用冷却装置20aとして、主巻モータ用冷却ファン23と横行モータ用冷却ファン24とを備え、室内用冷却装置20cとして、機械室用換気ファン21、電気室用空調装置22、及び運転室用空調装置25を備え、さらに、荷役用照明装置20bとして、投光器27、28a〜28c、及び29を備え、室内用照明装置20dとして、運転室内灯26を備える。
【0033】
なお、荷役用照明装置20bが照らす荷役動作範囲の一例として、岸壁クレーン1の場合、吊り具5が動作する範囲A1をしめす。この荷役動作範囲A1は、吊り具5の動作を、運転室6から確認することができるように、投光器27と投光器28aで照らされている。この他、この荷役動作範囲として、トロリ4の横行する範囲などがある。
【0034】
この実施の形態では、上記の主機用冷却装置20a、荷役用照明装置20b、室内用冷却装置20c、及び室内用照明装置20dのそれぞれを、通常稼働(駆動と停止)の他に、消費される電力を低減した状態(省電力状態)にすることが可能な装置を用いる。例えば、主巻モータ用冷却ファン23の場合は、通常稼働時よりも回転速度の遅い低速で回転可能なファンを用い、また、運転室内灯26の場合は、調光して、減光可能な照明を用いる。しかし、本発明はこれに限定せず、稼働又は停止の制御しかできない補機20にも適用することができる。
【0035】
また、この実施の形態では上記の構成を例に説明するが、本発明は上記の構成に限定せず、周知の技術のクレーンを用いることができる。例えば、走行装置9にディーゼルエンジンを搭載したものや、動力として蓄電池を用いたものなどを使用することができる。また、図示しないブーム2を上げ下げするモータを備えてもよい。加えて、機械室7aと電気室7bに室内灯を設けてもよい。
【0036】
本発明に係る実施の形態の岸壁クレーン1は、上記の構成に加えて、
図3に示すように、制御装置30に補機制御装置31を備える。そして、岸壁クレーン1を運転する際には、運転室6に設けた操作装置32から操作信号を制御装置30へ送り、制御装置30からインバータ13へ制御信号を送って、主機10aを稼働する。また、この制御装置30と接続される温度センサ33a〜33e、及び、照度センサ34a〜34fを備える。
【0037】
制御装置30は、パーソナルコンピュターのように通信手段や記憶手段を備えており、主機10aの動作を制御する装置である。この実施の形態では、制御装置30を電気室7bに設けたが、図示しないコンテナターミナルの管理棟や運転室6に設けてもよい。
【0038】
補機制御装置31は、主機10aの動作状況(動作中の主機の温度や荷役動作範囲の照度)又は室内状況(室内温度や室内照度)が予め定めた電力削減条件満たすと、その主機10aの動作状況、又は室内状況を維持していた補機20を省電力状態にする装置であり、制御装置30にプログラムとして組み込まれている。この実施の形態では、補機制御装
置31を制御装置30に設けたが、制御装置30と別々に設けてもよく、運転室6などの別の場所に設けることができる。
【0039】
なお、ここでいう省電力状態とは、補機20を停止する状態、又は補機20を通常稼働時よりも低い電力で稼働する(低電力駆動ともいう)する状態のどちらか一方のことを示しており、通常稼働時よりも消費される電力が少ない状態のことである。
【0040】
温度センサ33a〜33eは、周知の技術の温度センサであり、温度センサ33aは機械室7a内の温度を、温度センサ33bは主巻モータ14の温度を、温度センサ33cは電気室7b内の温度を、温度センサ33dは横行モータ16の温度を、温度センサ33eは運転室6内の温度をそれぞれ検知している。照度センサ34a〜34fは、周知の技術の照度センサであり、照度センサ34aは運転室6内の照度を、照度センサ34bは運転室6の下方の吊り具5の巻上げ下げの範囲(荷役動作範囲)の照度を、照度センサ34c〜34eはブーム2又はガーダー3の下方のトロリ4の横行の範囲(荷役動作範囲)の照度を、照度センサ34fは脚構造物8の上部の照度をそれぞれ検知している。
【0041】
上記の構成の岸壁クレーン1は、岸壁クレーン1の運転中に、主機10aの動作状況、又は室内10bの状況が予め定めた電力削減条件を満たすと、主機10aの動作状況、又は室内10bの状況を維持している補機20を通常稼働時よりも消費される電力が少ない省電力状態にすることを特徴とし、岸壁クレーン1の消費電力を低減することができる。
【0042】
次に、
図3に示すように、岸壁クレーン1の補機20の動作について説明する。この岸壁クレーン1は、ケーブルリール11から電力を受電し、電気室7b内に設けたインバータ13から各装置へ電力を分配している。そして、操作装置32の操作によって、制御装置30がインバータ13を制御することによって、横行モータ16を駆動してトロリ4を横行し、主巻モータ14を駆動してドラム15を回転させて吊り具5を巻上げ下げし、及び走行モータ17を駆動して岸壁クレーン1を走行する。
【0043】
この主要動作を行う際に、主機10a、又は室内10bは、温度が上昇する。そこで、機械室用換気ファン21、電気室用空調装置22、主巻モータ用冷却ファン23、横行モータ用冷却ファン24、及び運転室用空調装置25も稼働させ、主機10a又は室内10bを冷却する。
【0044】
また、特に悪天候時や夜間時の作業の場合に、荷役動作範囲(例えば、
図1の荷役動作範囲A1)が暗いと作業を安全に行うことができないため、荷役用照明装置20bである投光器27、28a〜28c、及び29で照らす。
【0045】
補機20は、岸壁クレーン1の主要動作に関わらない装置であればよく、上記の種類に限定しない。例えば、岸壁クレーン1がブーム2を上げ下げする構成であれば、その駆動モータを冷却するファンや、この実施の形態では自冷式とした走行モータ17を他冷式にしたときの冷却ファンなども含む。また、上記の種類以外の補機を用いる場合は、その補機が補助する役割を考慮したセンサも同時に用いることとする。
【0046】
次に、制御装置30と補機制御装置31について説明する。
図3に示すように、制御装置30は、補機制御装置31の他に、最適化プログラム35を備える。また、補機制御装置31に、第1手段(工程)36、第2手段(工程)37、及び第3手段(工程)38を備える。なお、この図では、温度センサ33a〜33eを統合して温度センサ33、及び照度センサ34a〜34fを照度センサ34とする。また、図中の矢印は信号の流れを示す。
【0047】
上記で説明した主機10aの操作を、操作装置32で行い、その操作による主機10aの動作、詳しくは主機10aの動作速度と、動作経路を制御装置30の最適化プログラム35で最適化して、主機10aを実際に稼働する。この最適化プログラム35を用いた最適化を予め行い、各主機10aの動作速度と動作経路を制御してもよい。
【0048】
この最適化プログラム35とは、少なくとも荷役時間の短縮を目的関数とし、主巻モータ14、及び横行モータ16それぞれの回転速度、回転加速度、及び回転減速度、若しくはトロリ4及び吊り具5それぞれの動作経路(例えば、トロリ4の場合は横行距離や、吊り具5の場合は巻上げ下げの長さのこと)を変数とし、遺伝的アルゴリズムを用いて、その変数を最適化したプログラムである。
【0049】
なお、遺伝的アルゴリズムとは、生物の進化過程を模倣した最適解採索手法であり、例えば交叉と突然変異の二つの操作により、すでに存在する解から新しい解候補を生成し、自然淘汰のアイデアに基づいて解の選択を行なって、世代交代を繰り返して最適解を探索する手法である。
【0050】
例えば、主巻モータ14を駆動して吊り具5を巻上げ下げするときに、最大巻き上げ下げ速度に達する前の回転加速度、及び回転減速度を大きく設定して、吊り具5の巻上げ下げにかかる時間を短縮する最適化を用いることができる。また、吊り具5の巻上げ下げの長さ、又はトロリ4の横行距離などを正確にし、無駄な動作をしない最適化も用いることができる。
【0051】
上記の最適化プログラム35で、主機10aを動作させることにより、主機10aが最適化された動作速度及び動作経路で動作するので、荷役時間を短縮することができる。
【0052】
加えて、この制御装置30に、主機10aによる荷役作業が完了したときに、主機10aを停止する手段を備えると、岸壁クレーン1の荷役作業を短縮して、その短縮した時間分で消費される電力を削減することができるので、より消費電力の少ない岸壁クレーン1を提供することができる。
【0053】
さらに、この実施の形態では、主機10aの動作速度と動作経路を最適化プログラム35により最適化した例を説明したが、例えば、港湾荷役機器としてアンローダを用いる場合には、バケットの掴み容量などを最適化してもよい。
【0054】
ここで、岸壁クレーン1の制御装置30に、最適化プログラム35が無いものと、有りのものとの主巻モータ14の作業時間と吊り具5の巻き上げ下げ速度を示す
図4のグラフと、主巻モータ14の作業時間と消費電力を示す
図5のグラフを参照しながら、最適化プログラム35の効果について説明する。
【0055】
図4に示すように、最適化プログラム35を用いると、吊り具5の巻上げの加速度と巻き下げの減速度が増加していることがわかる。また、吊り具5の巻き下げの最高速度も増加している。これにより、最適化プログラム35が無いものと比較すると、作業が終了する時間が短縮されていることがわかる。
【0056】
また、
図5に示すように、最適化プログラム35を用いると、吊り具5の巻き上げのとき、特に加速時に消費される電力が増加していることがわかる。一方、巻き下げのときに発生する回生電力が増加していることがわかる。よって、最適化プログラム35を用いても主機10aである吊り具5の巻上げ下げで消費される電力には、略変化が無いことがわかる。
【0057】
よって、最適化プログラム35を用いることで、荷役時間が短縮された分だけ、補機20を停止することで、岸壁クレーン1の消費される電力を低減することができる。これは、その短縮された分に通常は動作していた補機20を補機制御装置31で停止することができ、その分の消費電力を低減するからである。
【0058】
補機制御装置31について、説明する。この補機制御装置31が補機20を稼働、停止、又は省電力状態にする方法は、インバータ13に制御信号を送り、供給電力を制御する方法を用いる。なお、ここで主機10aの温度をTx、室内10bの温度をTy、荷役動作範囲の照度をLx、及び室内10bの照度をLyとし、第1主機温度判定値をTα、第2主機温度判定値をTβ、室内温度判定値をTσ、主機照度判定値をLα、及び室内照度判定値をLβとする。
【0059】
第1手段36は、主機10aが動作している場合に、主機10aの温度Txが予め定めた第1主機温度判定値Tα以下になると電力削減条件を満たしたと判断して、主機用冷却装置20aを省電力状態にし、主機10aが動作していない場合に、主機10aの温度Txが予め定めた第2主機温度判定値Tβ以下になると電力削減状態を満たしたと判断して、主機用冷却装置20aを省電力状態にする手段である。
【0060】
例えば、主巻モータ14の動作中に、温度センサ33bが検知する主巻モータ14の温度Txが第1主機温度判定値Tαよりも低くなった場合に、主巻モータ用冷却ファン23を低電力で稼働させる(低速回転させる)、又は停止する。一方、温度Txが第1主機温度判定値Tαよりも高くなった場合に、主巻モータ用冷却ファン23を稼働する。また、主巻モータ14の動作が完了した後に、温度センサ33bが検知する主巻モータ14の温度Txが第1主機温度判定値Tαよりも低くなった場合に、主巻モータ用冷却ファン23を低電力で稼働させる(低速回転させる)、又は停止する。
【0061】
第2手段37は、主機10aが動作している場合に、荷役動作範囲の照度Lxが予め定めた主機照度判定値Lα以上になると電力削減条件を満たしたと判断して、荷役用照明装置20bを省電力状態にする手段であり、主機10aが動作していない場合に、荷役用照明装置20bを省電力状態にする手段である。
【0062】
例えば、吊り具5の動作中に、照度センサ34bが検知する投光器27の照射範囲、つまり吊り具5の荷役動作範囲の照度Lxが主機照度判定値Lαよりも高くなった場合に、投光器27を低電力で稼働させる(減光させる)、又は停止する。一方、照度Lxが主機照度判定値Lαよりも低くなった場合に、投光器27を稼働する。また、吊り具5の動作が完了した後に、投光器27を減光させる、又は停止する。
【0063】
第3手段38は、室内10bの室内温度Tyが予め定めた室内温度判定値Tσ以下になると電力削減条件を満たしたとして、また、室内照度Lyが予め定めた室内照度判定値Lβ以上になると電力削減条件を満たしたとして室内用冷却装置20cと室内用照明装置20dを省電力状態にする手段である。
【0064】
例えば、機械室7aに設けた温度センサ33aが検知した室内温度Tyが室内温度判定値Tσよりも低くなった場合に、機械室用換気ファン21を低速で駆動する、又は停止する。また、運転室6に設けた照度センサ34aが検知した室内照度Lyが室内照度判定値Lβ以上になった場合に、運転室内灯26を減光する、又は停止する。
【0065】
この実施の形態では、上記の第1手段36〜第3手段38を用いて、岸壁クレーン1の補機20を停止しているが、岸壁クレーン1の運転中に、主機10aの動作に関わらず、補機20を主機10aが安全に動作する範囲内で停止することができればよく、例えば、
主機10aが停止すると電力削減条件を満たしたとして、補機20を省電力状態にする手段を設けてもよい。
【0066】
次に、本発明に係る実施の形態の港湾荷役機器の制御方法について、
図6〜
図8を参照しながら説明する。まず、主機用冷却装置20aの制御方法である第1工程について、
図6を参照しながら説明する。
【0067】
岸壁クレーン1が稼動し、荷役を開始すると、運転手が操作装置32を操作する(ステップS10)。次に、操作装置32に入力された操作信号を制御装置30に伝達し、制御装置30が、最適化工程を行う。この最適化工程は、最適化プログラム35で主機10aの動作速度と動作経路を最適化する(ステップS20)工程である。このとき、少なくとも荷役時間の短縮を目的関数とする遺伝的アルゴリズムを用いて主機10aの動作速度と動作経路を最適化する。
【0068】
なお、このステップS20の最適化工程で、主機10aの温度の上昇を抑制するように目的関数を追加すると、主機10aの温度の上昇を抑制することができるので、主機10aの動作中の主機用冷却装置20aの停止時間を長くすることができ、さらに消費電力を低減することができる。
【0069】
また、このステップS20を予め行い、主機10aの最適化された動作速度と動作経路を制御装置30に記憶させておき、操作装置32の操作に応じて読み出してもよい。
【0070】
次に、制御装置30により、主機10aが動作をする(ステップS30)と、次に、温度センサ33で主機10aの温度Txを検知し、補機制御装置31が主機10aの温度Txが第1主機温度判定値Tα以下か否かを判断する(ステップS40)。
【0071】
このステップS40で、主機10aの温度Txが第1主機温度判定値Tαよりも大きいと判断されると、次に、補機制御装置31は主機用冷却装置20aを通常稼働する(ステップS50)。これにより、主機10aを冷却し、主機10aの温度Txが過剰に上昇することを防ぐことができる。
【0072】
一方、ステップS40で主機10aの温度Txが第1主機温度判定値Tα以下と判断されると、次に、補機制御装置31は、主機用冷却装置20aを省電力状態にする(ステップS60)。このステップS60により、主機10aを過剰に冷却することを抑制して、主機用冷却装置20aの消費する電力を低減することができる。
【0073】
このステップS40からS60までは、主機10aの動作が完了するまでの間、常に主機10aの温度Txを監視して、行われる工程であり、予め定めた時間毎に行うようにするとよい。
【0074】
次に、制御装置30が、主機10aの動作が完了したか否かを判断する(ステップS70)。このステップS70では、操作装置32の操作信号より、主機10aの動作が完了し、制御装置30が、主機停止工程を行い、主機10aを停止すると、主機10aの動作が完了したと判断する。
【0075】
次に、温度センサ33で主機10aの停止後の温度Txを検知し、補機制御装置31が主機10aの温度Txが第2主機温度判定値Tβ以下か否かを判断し(ステップS80)、主機10aの温度Txが第2主機温度判定値Tβより大きいと判断すると、次に、主機用冷却装置20aを通常稼働して(ステップS90)、ステップS80へと戻る。一方、ステップS80で、主機10aの温度Txが第2主機温度判定値Tβ以下と判断すると、
次に、主機用冷却装置20aを省電力状態にする(ステップS100)。以上で主機用冷却装置20aの制御方法は完了する。
【0076】
第1主機温度判定値Tαと第2主機温度判定値Tβはそれぞれ任意に設定できる値であり、主機10aが過剰に加熱することを防ぐことができる値に設定すればよい。好ましくは、この実施の形態のように、第1主機温度判定値Tαと第2主機温度判定値Tβを別々に設定し、第2主機温度判定値Tβを第1主機温度判定値Tαよい高く設定すると、主機10aが動作していないとき(主機10aの停止後)は、その後の加熱がないので、過剰な冷却による電力のロスを防ぐことができる。
【0077】
この方法によれば、主機10aの温度Txを各主機温度判定値Tα又はTβと比較することによって、主機用冷却装置20aを省電力状態にすることができるので、主機10aを過剰に冷却することがなく、主機用冷却装置20aが消費していた分の電力を低減することができるので、岸壁クレーン1の消費エネルギーを削減することができる。
【0078】
また、最適化プログラム35を用いて主機10aの動作速度と動作経路を最適化するので、最適化プログラム35を用いない主機10aの動作と比べると、より早く主機10aを停止し、その分主機用冷却装置20aも早く省電力状態にすることができるので、消費電力を低減することができる。
【0079】
例えば、操作装置32の操作信号により横行モータ16を駆動してトロリ4を横行する。横行モータ16の温度が上昇し、温度センサ33dの検知する温度Txが第1主機温度判定値Tαより大きくなると、横行モータ用冷却ファン24が駆動して、横行モータ16を冷却する。また、横行モータ16の動作中に温度Txが第1主機温度判定値Tα以下になると、横行モータ用冷却ファン24を通常よりも低速で回転させて、省電力状態にする。
【0080】
次に、操作装置32の操作信号により、横行モータ16を停止してトロリ4を停止する。次に、横行モータ16の温度が低下し、温度センサ33dの検知する温度Txが第2主機温度判定値Tβ以下になると、横行モータ用冷却ファン24を停止する。
【0081】
これにより、横行モータ16を使用していないときや、横行モータ16の温度Txが低いときに、横行モータ用冷却ファン24を停止することができ、その分消費電力を低減することができる。
【0082】
次に、荷役用照明装置20bの制御方法について、
図7を参照しながら説明する。なお、
図6のフローチャートで説明したステップと同様のステップについては、同じ符号を用いて、その説明を省略する。まず、ステップS10〜S30までが完了すると、次に、照度センサ34で荷役動作範囲の照度Lxを検知し、補機制御装置31が荷役動作範囲の照度Lxが主機照度判定値Lα以上か否かを判断する(ステップS110)。
【0083】
ステップS110で照度Lxが主機照度判定値Lαより小さいと判断されると、次に、補機制御装置31は荷役用照明装置20bを通常稼働する(ステップS120)。これにより、荷役作業が開始される前に、荷役動作範囲を安全に作業することができる照度にすることができる。
【0084】
一方、ステップS110で照度Lxが主機照度判定値Lα以上と判断されると、次に、荷役用照明装置20bを省電力状態にする(ステップS130)。このステップS130により、荷役動作範囲を過剰に明るくすることを抑制して、荷役用照明装置20bの消費する電力を低減することができる。
【0085】
このステップS110からS130までは、主機10aの動作が完了するまでの間、常に主機10aの動作範囲の照度Lxを監視して、行われる工程であり、予め定めた時間毎に行うようにするとよい。
【0086】
次に、制御装置30が、主機10aの動作が完了したか否かを判断する(ステップS70)。このステップS70では、操作装置32の操作信号より、主機10aの動作が完了し、制御装置30が、主機停止工程を行い、主機10aを停止すると、主機10aの動作が完了したと判断する。主機10aの動作が完了したと判断すると、次に、荷役用照明装置20bを省電力状態にする(ステップS140)。以上で荷役用照明装置20bの制御方法は完了する。
【0087】
上記の制御方法によれば、主機10aの動作前は、主機10aの動作範囲の照度Lxによって荷役用照明装置20bを省電力状態にすることができ、また、主機10aが停止した後は、直ぐに荷役用照明装置20bを省電力状態にすることができるので、稼働の必要のない荷役用照明装置20bが消費する電力を削減し、岸壁クレーン1の消費エネルギーを削減することができる。
【0088】
加えて、最適化プログラム35を用いて主機10aの動作速度と動作経路を最適化するので、最適化プログラム35を用いない主機10aの動作と比べると、より早く主機10aを停止することができるので、その分消費電力を低減することができる。
【0089】
例えば、吊り具5を巻き上げ下げするときに、運転室6の下方に設置した照度センサ34bが検知した荷役動作範囲の照度Lxが主機照度判定値Lαより小さくなると、投光器27を稼働する。投光器27により荷役動作範囲が明るくなると吊り具5の巻き上げ下げを開始する。一方、吊り具5の動作中に照度Lxが主機照度判定値Lα以上になると、投光器27を調光して減光する。
【0090】
吊り具5の巻上げ下げが完了すると、主巻モータ14を停止する。次に、投光器27を停止する。これにより、吊り具5の巻上げ下げ作業を確認するために使用する投光器27を、吊り具5を使用しないときに停止することができ、その分消費電力を低減することができる。
【0091】
一方、ブーム2又はガーダー3の下の複数の投光器28a〜28cの照射範囲を検知している照度センサ34c〜34eは、それぞれの投光器28a〜28cそれぞれの照射範囲がトロリ4の影になる場合を検知して、トロリ4の影になる投光器を消して、その分の消費電力を削減してもよい。
【0092】
次に、室内用冷却装置20cと室内用照明装置20dの制御方法について、
図8を参照しながら説明する。岸壁クレーン1の運転中に、
図8の(a)に示すように、室内10bの室内温度Tyが室内温度判定値Tσ以下になるか否かを判断し(ステップS210)、室内温度判定値Tσよりも大きいと判断すると、補機制御装置31が室内用冷却装置20cを通常稼働し(ステップS220)、一方、室内温度Tyが室内温度判定値Tσ以下と判断すると、補機制御装置31が室内用冷却装置20cを省電力状態にする(ステップS230)。
【0093】
また、岸壁クレーン1の運転中に、
図8の(b)に示すように、室内10bの室内照度Lyが室内照度判定値Lβ以上になるか否かを判断し(ステップS240)、室内照度判定値Lβよりも小さいと判断すると、補機制御装置31が室内用照明装置20dを通常稼働し(ステップS250)、一方、室内照度Lyが室内照度判定値Lβ以上と判断すると
、補機制御装置31が室内用照明装置20dを省電力状態にする(ステップS260)。
【0094】
例えば、上記の制御方法は、運転室6の運転室用空調装置25と運転室内灯26に適用することができる。また、室内10bに運転手や点検者が入室することを検知するセンサを設け、そのセンサが室内10bへの出入りを検知すると室内用冷却装置20cと室内用照明装置20dを稼働するようにしてもよい。