(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記厚さを調整する工程では、前記帯状の集電箔の幅方向の中央部分において、前記集電箔の上に堆積した前記造粒粒子の粉体を幅方向の両側に案内して、前記帯状の集電箔の幅方向の中央部分から前記造粒粒子の粉体を除去する工程が含まれる、請求項1に記載されたリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで提案されるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法についての一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は模式的に描かれており、例えば、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜に省略または簡略化する。
【0010】
ここでは、適用されうるリチウムイオン二次電池10の構造例を説明する。その後、リチウムイオン二次電池10について、ここで提案される構造を説明する。
【0011】
《リチウムイオン二次電池10》
図1は、リチウムイオン二次電池10を示す断面図である。
図2は、当該リチウムイオン二次電池10に内装される電極体40を示す図である。なお、
図1および
図2に示されるリチウムイオン二次電池10は、本発明が適用されうるリチウムイオン二次電池の一例を示すものに過ぎず、本発明が適用されうるリチウムイオン二次電池を特段限定するものではない。
【0012】
リチウムイオン二次電池10は、
図1に示すように、電池ケース20と、電極体40(
図1では、捲回電極体)とを備えている。
【0013】
《電池ケース20》
電池ケース20は、ケース本体21と、封口板22とを備えている。ケース本体21は、一端に開口部を有する箱形を有している。ここで、ケース本体21は、リチウムイオン二次電池10の通常の使用状態における上面に相当する一面が開口した有底直方体形状を有している。この実施形態では、ケース本体21には、矩形の開口が形成されている。封口板22は、ケース本体21の開口を塞ぐ部材である。封口板22は凡そ矩形のプレートで構成されている。かかる封口板22がケース本体21の開口周縁に溶接されることによって、略六面体形状の電池ケース20が構成されている。
【0014】
電池ケース20の材質は、例えば、軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成された電池ケース20が好ましく用いられうる。このような金属製材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼等が例示される。本実施形態に係る電池ケース20(ケース本体21および封口板22)はアルミニウム若しくはアルミニウムを主体とする合金によって構成されている。
【0015】
図1に示す例では、封口板22に外部接続用の正極端子23(外部端子)および負極端子24(外部端子)が取り付けられている。封口板22には、安全弁30と、注液口32が形成されている。安全弁30は、電池ケース20の内圧が所定レベル(例えば、設定開弁圧0.3MPa〜1.0MPa程度)以上に上昇した場合に該内圧を開放するように構成されている。また、
図1では、電解液80が注入された後で、注液口32が封止材33によって封止された状態が図示されている。かかる電池ケース20には、電極体40が収容されている。
【0016】
《電極体40(捲回電極体)》
電極体40は、
図2に示すように、帯状の正極(正極シート50)と、帯状の負極(負極シート60)と、帯状のセパレータ(セパレータ72、74)とを備えている。
【0017】
《正極シート50》
正極シート50は、帯状の正極集電箔51と正極活物質層53とを備えている。正極集電箔51には、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。正極集電箔51には、例えば、予め定められた幅を有し、厚さが凡そ15μmの帯状のアルミニウム箔を用いることができる。正極集電箔51の幅方向片側の縁部に沿って露出部52が設定されている。図示例では、正極活物質層53は、正極集電箔51に設定された露出部52を除いて、正極集電箔51の両面に形成されている。ここで、正極活物質層53は、正極集電箔51に保持され、少なくとも正極活物質が含まれている。
【0018】
正極活物質には、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO
2)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO
2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn
2O
4)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩等が挙げられる。正極活物質は、粒子形態で使用され、適宜に、正極活物質粒子と称されうる。
【0019】
《負極シート60》
負極シート60は、
図2に示すように、帯状の負極集電箔61と、負極活物質層63とを備えている。負極集電箔61には、負極に適する金属箔が好適に使用され得る。この負極集電箔61には、予め定められた幅を有し、厚さが凡そ10μmの帯状の銅箔が用いられている。負極集電箔61の幅方向片側には、縁部に沿って露出部62が設定されている。負極活物質層63は、負極集電箔61に設定された露出部62を除いて、負極集電箔61の両面に形成されている。負極活物質層63は、負極集電箔61に保持され、少なくとも負極活物質が含まれている。
【0020】
負極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物等が挙げられる。負極活物質は、粒子形態で使用され、適宜に、負極活物質粒子と称されうる。上述した正極活物質粒子と負極活物質粒子は、適宜に、活物質粒子と称されうる。また、正極活物質粒子と負極活物質粒子とは、それぞれ適宜に粉体で使用されうる。ここで、正極活物質層53や負極活物質層63には、適宜に導電材やバインダや増粘剤が含まれうる。
【0021】
〈導電材〉
導電材としては、例えば、カーボン粉末、カーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、例えば、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、黒鉛、ケッチェンブラックなどの粉末を用いることができる。
【0022】
〈バインダ、増粘剤〉
また、バインダは、正極活物質層53に含まれる正極活物質と導電材の各粒子を接着させたり、これらの粒子と正極集電箔51とを接着させたりする。かかるバインダとしては、使用する溶媒に溶解または分散可能なポリマーを用いることができる。例えば、水性溶媒においては、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)など)、ゴム類(スチレンブタジエン共重合体(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)など)、ポリビニルアルコール(PVA)、酢酸ビニル共重合体、アクリレート重合体などの水溶性または水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。また、非水溶媒においては、ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)など)を好ましく採用することができる。また、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース系ポリマーが好適に用いられる。
【0023】
《セパレータ72、74》
セパレータ72、74は、
図2に示すように、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材である。この例では、セパレータ72、74は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ72、74には、樹脂製の多孔質膜、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータ或いは積層構造のセパレータを用いることができる。この例では、
図2に示すように、負極活物質層63の幅b1は、正極活物質層53の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ72、74の幅c1、c2は、負極活物質層63の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
【0024】
また、セパレータ72、74は、正極活物質層53と負極活物質層63とを絶縁するとともに、電解質の移動を許容する。図示は省略するが、セパレータ72、74は、プラスチックの多孔質膜からなる基材の表面に耐熱層が形成されていてもよい。耐熱層は、フィラーとバインダとからなる。耐熱層は、HRL(Heat Resistance Layer)とも称される。
【0025】
《電極体40の取り付け》
この実施形態では、電極体40は、
図2に示すように、捲回軸WLを含む一平面に沿った扁平な形状を有している。
図2に示す例では、正極集電箔51の露出部52と負極集電箔61の露出部62とは、それぞれセパレータ72、74の両側において、らせん状に露出している。
図1に示すように、電極体40は、セパレータ72、74からはみ出た正負の露出部52、62が、正負の電極端子23、24の電池ケース20の内部に配置された先端部23a、24aに溶接されている。
【0026】
図1に示す形態では、捲回軸WLを含む一平面に沿って扁平な捲回電極体40が電池ケース20に収容されている。電池ケース20には、さらに電解液が注入される。電解液80は、捲回軸WL(
図2参照)の軸方向の両側から電極体40の内部に浸入する。
【0027】
《電解液(液状電解質)》
電解液80としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(以下、適宜に「EC」という。)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート(以下、適宜に「DMC」という。)、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート(以下、適宜に「EMC」という。)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3等のリチウム塩を用いることができる。一例として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば体積比1:1)にLiPF
6を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。
【0028】
なお、
図1は、電池ケース20内に注入される電解液80を模式的に示しており、電池ケース20内に注入される電解液80の量を厳密に示すものではない。また、電池ケース20内に注入された電解液80は、捲回電極体40の内部において、正極活物質層53や負極活物質層63の空隙などに十分に染み渡っている。
【0029】
かかるリチウムイオン二次電池10の正極集電箔51と負極集電箔61は、電池ケース20を貫通した電極端子23、24を通じて外部の装置に電気的に接続される。以下、充電時と放電時のリチウムイオン二次電池10の動作を説明する。
【0030】
《充電時の動作》
充電時、リチウムイオン二次電池10は、正極シート50と負極シート60との間に、電圧が印加され、正極活物質層53中の正極活物質からリチウムイオン(Li)が電解液に放出され、正極活物質層53から電荷が放出される。負極シート60では電荷が蓄えられるとともに、電解液中のリチウムイオン(Li)が、負極活物質層63中の負極活物質に吸収され、かつ、貯蔵される。これにより、負極シート60と正極シート50とに電位差が生じる。
【0031】
《放電時の動作》
放電時、リチウムイオン二次電池10は、負極シート60と正極シート50との電位差によって、負極シート60から正極シート50に電荷が送られるとともに、負極活物質層63に貯蔵されたリチウムイオンが電解液に放出される。また、正極では、正極活物質層53中の正極活物質に電解液中のリチウムイオンが取り込まれる。
【0032】
このようにリチウムイオン二次電池10の充放電において、正極活物質層53中の正極活物質や負極活物質層63中の負極活物質にリチウムイオンが吸蔵されたり、放出されたりする。そして、電解液を介して、正極活物質層53と負極活物質層63との間でリチウムイオンが行き来する。
【0033】
ところで、本発明者は、活物質粒子とバインダとを含む造粒粒子の粉体を用いて、粉体成形によって、リチウムイオン二次電池10の正極シート50の正極活物質層53と、負極シート60の負極活物質層63とを作製することを検討している。かかる粉体成形は、例えば、実験室レベルであれば、集電箔に粉体を堆積させ、これをプレスすることによって成形できる。しかし、リチウムイオン二次電池用の電極シートでは、極めて薄く長い帯状の集電箔に活物質層を形成する必要がある。この際、単純に、集電箔に粉体を堆積させ、これをプレスすることによって、品質を安定して高く保ちつつ、高い生産性を確保することは難しい。
【0034】
このような観点において、リチウムイオン二次電池10の正極シート50の正極活物質層53と、負極シート60の負極活物質層63を、活物質粒子とバインダとを含む造粒粒子の粉体を用いて、粉体成形によって作製する技術は、十分に確立されていない。ここでは、品質を安定して高く保ちつつ活物質層を作製しうる、リチウムイオン二次電池の電極シートの新規な製造方法を提案する。
【0035】
ここで、
図3は、リチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法を具現化した製造装置100の側面図であり、
図4は、製造装置100の平面図である。
【0036】
この製造装置100は、集電箔201を搬送する搬送装置310と、圧延ローラ101、102と、定量フィーダー103(粉体供給装置)と、外側ガイド104、105と、スキージ部材106と、粉体除去部材108と、内側ガイド109とが設けられている。
【0037】
《搬送装置310》
ここで、搬送装置310は、集電箔201を送る複数のローラで構成されている。ここでは、駆動機構312を備えた搬送ローラ301と、搬送ローラ301に従って回転する従動ローラ302と、集電箔201を支持しつつ転動する複数のプーリ303とを備えている。ここでは、電池に用いられる帯状の電極シートの2本分の幅(2条幅)を有する帯状の集電箔201が用意される。そして、かかる2条幅の帯状の集電箔201が搬送装置310の各ローラによって送られる。
【0038】
《定量フィーダー103》
ここで、定量フィーダー103は、搬送装置310によって搬送される帯状の集電箔201の上方に配置されている。定量フィーダー103は、搬送装置310によって搬送される集電箔201の上に造粒粒子の粉体220を供給する。造粒粒子の粉体220を得る工程については、後で述べる。
【0039】
《外側ガイド104、105》
図5は、集電箔201の搬送経路を横断した断面図(
図4中のV−V断面図)である。外側ガイド104、105は、
図5に示すように、搬送装置310によって集電箔201の幅方向両側に配置されている。この実施形態では、外側ガイド104、105は、集電箔201の幅方向両側の縁に沿って立った壁を備えている。外側ガイド104、105は、定量フィーダー103が配置された部位から圧延ローラ101、102が配置された部位まで、搬送装置310の搬送経路に沿って連続して設けられている。なお、集電箔201の幅方向の両側に設けられた外側ガイド104、105は無くてもよい。外側ガイド104、105が無い場合、余剰の粉体220が集電箔201の両側から落ちるが、粉体220の外側の縁220bはある程度の精度が保たれる。また、集電箔201の両側から落ちる余剰の粉体220は、トレイなどで受けて回収されるように装置を構成すれば無駄もない。ただし、集電箔201の幅方向の両側に設けられた外側ガイド104、105があると、粉体220の外側の縁220bはより精度よく成形される。このため、
図4に示すように、集電箔201の幅方向の両側に外側ガイド104、105を設ける方が好ましい。
【0040】
《スキージ部材106》
スキージ部材106は、集電箔201の上に供給された粉体220の厚さを調整する部材である。この実施形態では、スキージ部材106は、搬送装置310の搬送経路において、定量フィーダー103が配置された部位と、圧延ローラ101、102が配置された部位との間に配置されている。スキージ部材106は、一対のローラ状の部材であり、スキージローラ106aと、バックローラ106bとを備えている。ここで、スキージローラ106aは、集電箔201の上面に対して予め定められた隙間を空けて配置されている。バックローラ106bは、集電箔201の下側において、スキージローラ106aと対向するように配置されている。バックローラ106bは、スキージローラ106aが集電箔201の上の粉体220に当たる部位で集電箔201の下面を支持している。かかるバックローラ106bに支持されることによって、集電箔201とスキージローラ106aとの間隙は一定になる。集電箔201の上に供給された粉体220は、スキージ部材106を通過する際に、集電箔201の上面とスキージローラ106aとの間隙に応じた厚さに調整される。なお、スキージ部材106は、
図3および
図4に示す形態では、ローラ状の部材で構成されているが、これに限らず、例えば、ブレード状(板刃状)の部材でもよい。
【0041】
《粉体除去部材108》
粉体除去部材108は、集電箔201の上に堆積した粉体220を部分的に除去する部材である。この実施形態では、粉体除去部材108は、スキージローラ106aの前方において、集電箔201の幅方向の中央部分202、203に集電箔201の長さ方向に沿って配置されている。ここで、
図6は、ここで作製される2条幅の電極シートの中間生産品が示す図である。
図7は、ここで作製される2条幅の電極シートが切断される前の状態を示している。
図8は、ここで作製される2条幅の電極シートが切断された状態を示している。ここで、粉体除去部材108によって粉体220が除去される集電箔201の幅方向の中央部分202、203の幅(
図6参照)は、2条の電極シート207、208の露出部202、203を合わせた幅(
図8参照)に相当する。この実施形態では、集電箔201が搬送されると、かかる粉体除去部材108によって集電箔201の中央部分202、203の粉体220が除去される。粉体除去部材108は、例えば、集電箔201の上を滑るように配置されているとよい。例えば、粉体除去部材108は、定量フィーダー103、外側ガイド104、105、あるいは、スキージ部材106に支持されているとよい。
【0042】
この実施形態では、搬送経路の上流側(集電箔201が送られてくる側)では、粉体除去部材108の先端108aは、幅方向の中心に向けて徐々に細くなっている。かかる粉体除去部材108によれば、集電箔201の中央部分202、203において粉体220が左右に押し分けられる。本発明者の知見によれば、粉体除去部材108が粉体220を左右に分ける部分が幅方向の中央部分であれば、粉体220はスムーズに左右に押し分けられる。この実施形態では、粉体除去部材108の先端108aは、集電箔201の幅方向の中央部分202、203で粉体220に当たって、粉体220を左右に押し分ける。このため、粉体220は、集電箔201の幅方向の中央部分202、203からスムーズに除去される。そして、集電箔201の幅方向の中央部分202、203からスムーズに粉体220を除去されるので、左右の粉体220の内側の縁220a(集電箔201の幅方向の中央部分202、203の縁)は精度良く成形される。
【0043】
《内側ガイド109》
内側ガイド109は、粉体除去部材108の後端と同じ幅を有しており、粉体除去部材108の後端から搬送経路の後方に延びている。内側ガイド109は、
図4に示すように、粉体除去部材108によって集電箔201の中央部分202、203から左右に押し分けられた粉体220の内側の縁220aを支持する。内側ガイド109は、例えば、集電箔201の上を滑るように配置されているとよい。搬送経路320の搬送方向において内側ガイド109の下流側には、圧延ローラ101、102が設けられている。
【0044】
《圧延ローラ101、102》
圧延ローラ101、102は、粉体220を集電箔201に押し付けて、集電箔201の上に粉体220の堆積層204、205を形成する。圧延ローラ101、102に供給される集電箔201は、粉体除去部材108によって幅方向の中央部分202、203から粉体220が除去されている。
【0045】
圧延ローラ101は、集電箔201の上面に対して予め定められた隙間を空けて配置されている。また、圧延ローラ102は、圧延ローラ101のバックローラとして、集電箔201の下側において、圧延ローラ101と対向するように配置されている。圧延ローラ102は、圧延ローラ101が集電箔201の上の粉体220に押し当たる部位で集電箔201の下面を支持している。かかる圧延ローラ102に支持されることによって、集電箔201と圧延ローラ101との間隙は一定になる。集電箔201の上に供給された粉体220は、圧延ローラ101、102を通過する際に、集電箔201の上面に押し付けられるとともに、集電箔201と圧延ローラ101との間隙に応じた厚さに調整される。
【0046】
粉体220は、圧延ローラ101、102を通過する際に、圧延ローラ101、102によって圧縮され、かつ、集電箔201に押し付けられる。粉体220中にはバインダ成分が含まれている。粉体220が圧縮され、かつ、集電箔201に押し付けられることによって、粉体220中の粒子や集電箔201にバインダが密着する面積が広くなる。粉体220中の粒子や集電箔201にバインダが密着する面積が広くなることによって、粉体220と集電箔201との間および粉体220の粒子間の接着力が高くなり、粉体220の接合強度が高くなる。
【0047】
また、圧延ローラ101、102に供給される前において、スキージローラ106aと集電箔201との間隙によって、圧延ローラ101、102に供給される粉体220の厚さが設定されている。また、圧延ローラ101と集電箔201との間隙によって、圧延ローラ101、102を通過した後の粉体220(堆積層204、205)の厚さが設定されている。このため、スキージローラ106aと集電箔201との間隙、および、圧延ローラ101と集電箔201との間隙の差によって、圧延ローラ101、102を通過した後の活物質層204、205の密度が決められる。
【0048】
また、圧延ローラ101、102を通過させる際、幅方向両側の粉体220が堆積した部分(堆積層204、205が形成された部分)は、集電箔201が圧延ローラ101、102から圧力を受ける。これに対して、幅方向中央部分に形成された活物質層未形成領域202、203では、集電箔201は圧延ローラ101、102から圧力を受けない。しかし、集電箔201は、幅方向の両側に粉体220が堆積した部分が設けられている。この場合、圧延ローラ101、102を通過する際に、集電箔201の幅方向の両側の部分が伸ばされるのに応じて、集電箔201の中央部分も伸ばされる。このため、圧延ローラ101、102を通過する際に集電箔201に生じうる歪みは小さく抑えられる。
【0049】
また、
図9は、集電箔201の上側に配置された圧延ローラ101を示す斜視図である。
図9では、内側ガイド109は図示が省略されている。この実施形態では、圧延ローラ101は、
図9に示すように、壁部材121、122、123を備えている。壁部材121、122、123は、粉体220がプレスされる際に粉体220を集電箔201の上に適切に維持するための部材である。ここで、壁部材121、122は、通過する集電箔201の両側に配置されており、粉体220の外側の縁220bを支持している。また、壁部材123は、内側ガイド109の後方において、粉体220が除去された集電箔201の活物質層未形成領域202、203に収められており、粉体220の内側の縁220aを支持している。
【0050】
ここでは、圧延ローラ101、102に導入される前に、粉体除去部材108によって、集電箔201の幅方向の中央部分202、203から造粒粒子の粉体220を除去している。このため、圧延ローラ101、102に導入される粉体220は、均一に整っている。さらに、集電箔201の中央部分202、203の両側に残った粉体220をプレスしている。このため、
図8に示すように、品質のよい電極シート207、208が得られる。この実施形態では、さらに、粉体220は、内側の縁220aが壁部材123によって支持され、かつ、外側の縁220bが壁部材121、122によって支持されつつプレスされる。このため、成形された堆積層204、205は、内側の縁204a、205aおよび外側の縁204b、205bが精度良く成形される。
【0051】
次に、圧延ローラ101の変形例を説明する。
図10は、圧延ローラ101の変形例を示す斜視図である。ここでは、圧延ローラ101は、
図10に示すように、両側の壁部材121、122と、中央部の壁部材123との間にそれぞれ独立した圧延ローラ101a、101bが設けられている。このように、圧延ローラ101は、左右のローラ101a、101bが独立した形態でもよい。
【0052】
かかる製造装置によって得られる電極シート200は、
図6に示すように、2条幅を有する集電箔201の幅方向の中央部分に活物質層未形成領域202、203を有し、かつ、その両側に粉体220が堆積した活物質層204、205が形成されている。電極シート200は、
図7に示すように、同様に集電箔201の反対側の面にも、幅方向の中央部分202、203の両側に粉体220が堆積した活物質層204、205を形成するとよい。かかる電極シート200は、
図8に示すように、集電箔201の幅方向の中央部分が長さ方向に沿って切断され、1条の電極シート207、208が2本作成される。この場合、粉体220が堆積した活物質層204、205は切断されない。このため、粉体220が堆積した活物質層204、205が切断された場合に生じるような異物は発生しにくい。また、上述したように、圧延ローラ101、102によって活物質層204、205がプレスされる際には、粉体220が精度良く成形されているので、活物質層204、205の品質のよい電極シート207、208が得られる。
【0053】
《リチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法》
ここで提案されるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法について、具現化した製造装置の装置構成を例示した。ここで提案されるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法は、上述した製造装置に限定されない。ここで提案されるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法は、以下の工程が含まれているとよい。なお、以下の記載の順番は、特に言及されない限りにおいて、工程の順番を言及するものではない。
ここで提案される電極シートの製造方法は、
工程1:帯状の集電箔201を用意する工程;
工程2:造粒粒子の粉体220を用意する工程;
工程3:帯状の集電箔201を搬送する工程;
工程4:造粒粒子の粉体220を堆積させる工程;
工程5:厚さ調整工程;および、
工程6:プレス工程;
を含んでいる。
【0054】
工程1:帯状の集電箔201を用意する工程では、例えば、2条幅の集電箔201が用意される。
【0055】
工程2:活物質粒子とバインダとを含む造粒粒子の粉体220を用意する工程では、例えば、スプレードライ製法によって得られる造粒粒子の粉体を用意すると良い。
図11は、ここで得られる造粒粒子240を模式的に示している。
【0056】
ここで用意される造粒粒子240は、
図11に示すように、活物質粒子241と、バインダ242とを少なくとも含んでいるとよい。かかる造粒粒子240の粉体220は、例えば、活物質粒子241とバインダ242とを溶媒に混ぜ合わせた合剤(懸濁液)を、スプレードライ製法で造粒することによって得られる。スプレードライ製法では、合剤が乾燥雰囲気中に噴霧される。この際、噴霧される液滴に含まれる粒子が概ね1つの塊になって造粒される。このため、液滴の大きさによって、造粒粒子240に含まれる固形分量が変わり、造粒粒子240の大きさや質量などが変わる。噴霧される液滴には、活物質粒子241とバインダ242とが少なくとも含まれているとよい。噴霧される液滴には、活物質粒子241とバインダ242と以外の材料が含まれていてもよく、例えば、導電材や増粘材が含まれていてもよい。ここで用意される造粒粒子240は、例えば、平均粒径が凡そ60μm〜100μmであるとよい。なお、本明細書中において「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径、すなわち50%体積平均粒子径を意味するものとする。
【0057】
〈活物質粒子241〉
ここで提案される電極の製造方法は、種々の電極に適用できる。例えば、リチウムイオン二次電池では、正極用の電極および負極用の電極の何れにも適用できる。造粒粒子240に含まれる活物質粒子241は、作製される電極によって異なる。例えば、活物質粒子241には、リチウムイオン二次電池の正極用の電極を製造する場合には、当該正極に用いられる活物質粒子が用いられる。また、リチウムイオン二次電池の負極用の電極を製造する場合には、当該負極に用いられる活物質粒子が用いられる。
【0058】
工程3:帯状の集電箔201を搬送する工程では、例えば、
図3および
図4に示すように、搬送装置310によって帯状の集電箔201を搬送するとよい。つまり、帯状の集電箔201を長手方向に送り出しつつ、後述する、造粒粒子の粉体220を堆積させる工程、厚さ調整工程およびプレス工程が施されると良い。
【0059】
工程4:造粒粒子の粉体220を堆積させる工程では、例えば、
図3および
図4に示すように、帯状の集電箔201の上に造粒粒子の粉体220を堆積させる。ここでは、定量フィーダー103によって、集電箔201の上に造粒粒子の粉体220を供給するとよい。ここでは、搬送装置310によって搬送された集電箔201の上に、粉体220を供給されている。
【0060】
工程5:厚さ調整工程では、集電箔201の幅方向の中央部分から造粒粒子の粉体220を除去し、集電箔201の中央部分の両側に残った造粒粒子の粉体220にスキージ部材106が当てられ、当該造粒粒子の粉体220の厚さが調整される。例えば、
図3、
図4に示す例では、粉体除去部材108によって、集電箔201の幅方向の中央部分から造粒粒子の粉体220が除去されている。そして、集電箔201の中央部分の両側において、帯状の集電箔201の上に堆積した造粒粒子の粉体220にスキージ部材106が当てられ、当該造粒粒子の粉体220の厚さが調整される。
【0061】
かかる工程では、集電箔201に堆積した粉体220が集電箔201の中央部分から左右に押し分けられて、集電箔201の中央部から粉体220が除去される。この場合、集電箔201に堆積して送られてくる粉体220は、幅方向の中央部分において、
図3、
図4に示すような粉体除去部材108を当てても、粉体220はスムーズに左右へ流れていき、集電箔201の幅方向の中央部分からスムーズに除去される傾向がある。従って、集電箔201の幅方向に粉体220を堆積させた後で、集電箔201の中央部分において、粉体220が左右に押し分ける場合には、集電箔201の中央部分に形成された左右の粉体220の内側の縁は精度良く成形される。
【0062】
これに対して、2条幅を有する帯状の集電箔201を基材として、幅方向の片側に活物質層が形成されずに集電箔が露出する露出部を有する帯状の電極シートを得る場合に、他にも方法がある。例えば、図示は省略するが、集電箔201の幅方向に粉体220を堆積させた後で、集電箔201の幅方向の両側において粉体220を除去して、露出部となる活物質層未形成領域202、203を形成することも考え得る。この場合、集電箔201を搬送しつつ、集電箔201の幅方向に粉体220を堆積させた後で、集電箔201の両側にスキージを当てて、集電箔201の両側に堆積した粉体220を除去することになる。しかし、この場合には、集電箔201の両側に堆積した粉体220は、スキージが当てられた部位で滞留していく。そして、かかる両側の滞留を基点として、集電箔201に堆積した粉体220が乱れていく。このため、残される集電箔201の内側(幅方向の中間部分)において、粉体220の状態が不均一な状態になる傾向がある。
【0063】
本発明者は、かかる知見から、
図3および
図4に示すように、集電箔201の幅方向の中央部分202、203から造粒粒子の粉体220を除去することが望ましいと考えている。そして、集電箔201の幅方向の中央部分202、203から造粒粒子の粉体220を除去し、集電箔201の中央部分202、203の両側に残った造粒粒子の粉体220にスキージ部材106を当てて、当該造粒粒子の粉体220の厚さを調整するのがよいと考えている。
【0064】
工程6:プレス工程では、集電箔201の中央部分202、203の両側に残った造粒粒子の粉体220がプレスされる。ここでは、
図3および
図4に示す例では、厚さ調整工程において集電箔201の中央部分202、203の両側で厚さが調整された粉体220の状態が良好である。このため、成形された活物質層204、205が精度良く成形される。
【0065】
ここで、厚さを調整する工程では、例えば、
図4に示すように、帯状の集電箔201の幅方向の中央部分202、203において、集電箔201の上に堆積した造粒粒子の粉体220を集電箔201の幅方向の両側に案内して、帯状の集電箔201の幅方向の中央部分202、203から造粒粒子の粉体220を除去する工程が含まれていてもよい。上述した実施形態では、帯状の集電箔201の幅方向の中央部分202、203において、粉体除去部材108の先端108aが押し当てられることによって、集電箔201の上に堆積した造粒粒子の粉体220は、集電箔201の幅方向の両側に案内されている。これによって、集電箔201の上に堆積した造粒粒子の粉体220の状態を維持しつつ、帯状の集電箔201の幅方向の中央部分202、203から造粒粒子の粉体220を除去することができる。このため、成形された活物質層204、205が精度良く成形される。
【0066】
さらに、プレス工程では、造粒粒子の粉体220の内側の縁220aにガイド(
図4の例では、壁部材123)を当てつつ、造粒粒子の粉体220がプレスされてもよい。この場合、成形された活物質層204、205の内側(活物質層未形成領域202、203側)の縁204a、205aが精度良く成形される。
【0067】
さらに、プレス工程では、さらに造粒粒子の粉体220の外側の縁220bにガイド(
図4の例では、壁部材121、122)を当てつつ、造粒粒子の粉体220がプレスされてもよい。この場合、成形された活物質層204、205の外側の縁204b、205bが精度良く成形される。
【0068】
このように、かかるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法によれば、集電箔201を搬送させつつ、造粒粒子の粉体220を集電箔201に堆積させる。そして、集電箔201の中央部分から、造粒粒子の粉体220を除去してスキージ(厚さを調整)し、造粒粒子の粉体220をプレスする。この場合、集電箔201に粉体220を成形することによって形成された活物質層204、205の品質が良く、品質の良い電極シート207、208が安定的に得られる。このため、造粒粒子の粉体220からなる活物質層204、205を有する電極シート207、208の歩留まりが高くなり、生産性が向上する。
【0069】
以上、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法を説明したが、ここで提案されるリチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法は、上述した実施形態に限定されない。特に、リチウムイオン二次電池用電極シートの製造方法を具現化する製造装置を例示したが、かかる製造装置は特に言及されない限りにおいて、製造方法を限定するものではない。
【0070】
また、ここで提案される製造方法によって製造されるリチウムイオン二次電池は、活物質層の品質が良く、低抵抗で、かつ、高い電池性能を有している。したがって、高いエネルギー密度や出力密度が要求される用途で好ましく用いることができる。かかる用途としては、例えば車両に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)が挙げられる。車両の種類は特に限定されないが、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす、電気鉄道等が挙げられる。なお、かかるリチウムイオン二次電池は、複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態で使用されてもよい。