特許第5989763号(P5989763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989763太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989763
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20160825BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20160825BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCES
   H01L31/04 560
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-508262(P2014-508262)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2013060140
(87)【国際公開番号】WO2013147313
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73087(P2012-73087)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 礼
(72)【発明者】
【氏名】森本 順次
(72)【発明者】
【氏名】余田 宏章
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/016557(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/059332(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031788(WO,A1)
【文献】 特開2014−189617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−28
H01L 23/28−31
H01L 21/56
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む水性エマルションを、太陽電池封止材用ペレットに付与する方法。
【請求項2】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤、並びに、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
(式(I)中、Xは水素原子又は−SOMを表し、Mは水素原子又はNHを表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜100の整数を表す。)
【請求項3】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤と、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤とを含む請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
太陽電池封止材用ペレットの互着防止剤であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む互着防止剤。
【請求項6】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤、並びに、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの界面活性剤である請求項5に記載の互着防止剤。
(式(I)中、Xは水素原子又は−SOMを表し、Mは水素原子又はNHを表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜100の整数を表す。)
【請求項7】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤を含む請求項6に記載の互着防止剤。
【請求項8】
金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤と、式(1)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤とを含む請求項6又は請求項7に記載の互着防止剤。
【請求項9】
平均粒径が0.01μm以上30μm以下である請求項5〜8のいずれかに記載の互着防止剤。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の互着防止剤が、表面に付着している太陽電池封止材用ペレット。
【請求項11】
太陽電池封止材用ペレットの表面に互着防止剤が付着している太陽電池封止材用ペレットの製造方法であって、エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む水性エマルションを、太陽電池封止材用ペレットの表面に付与する製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の太陽電池封止材用ペレットを用いて得られる太陽電池封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ペレットの表面を無機化合物粉末又は低分子量ポリエチレンワックスでコーティングして、ペレット同士の互着を防止する方法が知られている(特開平1−288408号公報、特開2001−342259号公報及び特公平2−014934号公報)。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む水性エマルションを、太陽電池封止材用ペレットに付与する方法。
[2] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤、並びに、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの界面活性剤を含む[1]に記載の方法。
(式(I)中、Xは水素原子又は−SOMを表し、Mは水素原子又はNHを表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜100の整数を表す。)
[3] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤を含む[3]に記載の方法。
[4] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤と、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤とを含む[2]又は[3]に記載の方法。
[5] 太陽電池封止材用ペレットの互着防止剤であって、
エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む互着防止剤。
[6] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤、並びに、式(I)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの界面活性剤である[5]に記載の互着防止剤。
(式(I)中、Xは水素原子又は−SOMを表し、Mは水素原子又はNHを表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜100の整数を表す。)
[7] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤を含む[6]に記載の互着防止剤。
[8] 金属を有さない界面活性剤が、式(I)で表される界面活性剤と、式(1)で表される界面活性剤とは構造を異にし、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤とを含む[6]又は[7]に記載の互着防止剤。
[9] 平均粒径が0.01μm以上30μm以下である[5]〜[8]のいずれかに記載の互着防止剤。
[10] [5]〜[9]のいずれかに記載の互着防止剤が、表面に付着している太陽電池封止材用ペレット。
[11] 太陽電池封止材用ペレットの表面に互着防止剤が付着している太陽電池封止材用ペレットの製造方法であって、エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む水性エマルションを、太陽電池封止材用ペレットの表面に付与する製造方法。
[12] [10]に記載の太陽電池封止材用ペレットを用いて得られる太陽電池封止材。
【発明を実施するための形態】
【0004】
〈水性エマルション〉
水性エマルションは、エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む。
〈エチレン−不飽和エステル共重合体〉
水性エマルションは、エチレン−不飽和エステル共重合体を含む。
エチレン−不飽和エステル共重合体の不飽和エステルに由来する構造単位の含有率は、加工性、透明性を高める観点から、好ましくは10質量%以上、35質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上、30質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以上、30質量%以下である。なお、エチレン−不飽和エステル共重合体が、二種類以上の不飽和エステルに由来する構造単位を含む場合は、当該エチレン−不飽和エステル共重合体が含む全ての不飽和エステルに由来する構造単位の含有量の合計を、不飽和エステルに由来する構造単位の含有率とする。
不飽和エステルとしては、カルボン酸ビニルエステル、不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
エチレン−不飽和エステル共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体及びエチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
エチレン−不飽和エステル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、加工性を高める観点から、好ましくは4g/10分以上、100g/10分以下である。MFRの上限はより好ましくは40g/10分以下である。MFRの下限はより好ましくは5g/10分以上である。MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるものをいう。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、スミテートKA−40(住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体としては、例えばアクリフトWH303、アクリフトWH302(共に住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体としては、例えばボンドファーストE、ボンドファーストCG5001(共に住友化学社製)等が挙げられる。
エチレン−不飽和エステル共重合体の含有量は、水性エマルションの全量に対して、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下であり、例えば、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
エチレン−不飽和エステル共重合体は、モノマー成分としてのエチレンと不飽和エステルを、ラジカル重合開始剤を用いて、ラジカル重合反応させることにより製造することができる。ラジカル重合反応を行う重合槽(重合反応器)としては、ベッセル型反応器又はチューブラー型反応器が挙げられる。
〈その他の樹脂〉
水性エマルションは、エチレン−不飽和エステル共重合体以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
その他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、AS樹脂等のポリマー及び共重合体並びに変性ポリマー及び変性物等の種々のものが挙げられる。これらは単独で又は2種以上をブレンドしてもよい。
〈界面活性剤〉
界面活性剤とは、乳化剤として作用する両親媒性分子のことであり、本発明における金属を有さない界面活性剤とは、対を成す金属カチオンを有さない、前記両親媒性分子のことである。金属を有さない界面活性剤は、単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよいが、2種類以上を組み合わせるのが好ましい。
金属を有さない界面活性剤としては、高分子型界面活性剤、低分子型界面活性剤、またそれぞれのカチオン性の界面活性剤、アニオン性の界面活性剤、ノニオン性の界面活性剤及び両性の界面活性剤が挙げられる。好ましくはアニオン性の界面活性剤及びノニオン性界面活性剤であり、より好ましくはアニオン性の界面活性剤である。
好ましくは、式(I)で表される界面活性剤が挙げられる。
(式(I)中、Xは水素原子又は−SOMを表し、Mは水素原子又はNHを表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜100の整数を表す。)
アニオン性の界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート及び式(A)で表される化合物等が挙げられる。好ましくは式(A)で表される化合物である。
高分子型のアニオン性界面活性剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、およびそのエステルの共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体等が挙げられる。
カチオン性の界面活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウム塩及びセチルトリメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩、セチルピリジウム塩及びデシルピリジウム塩等のアルキルピリジウム塩、オキシアルキレントリアルキルアンモニウム塩、ジオキシアルキレンジアルキルアンモニウム塩、アリルトリアルキルアンモニウム塩、ジアリルジアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
ノニオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンプロピレンエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体及び式(B)で表される化合物などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。
高分子型のノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等が挙げられる。
両性の界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
金属を有さない界面活性剤としては、具体的には、特開昭58−127752号公報に記載された界面活性剤、ラテムルAD−25(花王株式会社製)、ラテムルE−1000A(花王株式会社製)、ノイゲンEA−177(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。中でも、ラテムルE−1000A(花王株式会社製)が好ましい。
このような界面活性剤は市場から容易に入手することができる。
また、好ましい金属を有さない界面活性剤としては、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤が挙げられる。かかる界面活性剤は、湿潤時のペレットの互着を防止できる点で好ましい。
前記界面活性剤は、アニオン性であっても、カチオン性であっても、ノニオン性であっても、両性であってもよく、また、芳香族基を有するものであっても、脂肪族構造のみからなるものであってもよいが、好ましくはノニオン性であり、また、脂肪族構造のみからなるものである。中でも、オキシプロピレン基を有するものがより好ましい。
前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンプロピレンエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸等が挙げられる。好ましくは、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体である。中でも、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体がより好ましい。
このような界面活性剤は市場から容易に入手することができる。市販品としては、プルロニックL−62、プルロニックL−64、プルロニックL−81、プルロニックL−92(ADEKA社製)等が挙げられる。
金属を有さない界面活性剤としては、式(I)で表される界面活性剤と、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤との組み合わせが特に好ましい。
金属を有さない界面活性剤の含有量は、通常、エチレン−不飽和エステル共重合体100質量部に対して、0.1〜50質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜10質量部である。
水性エマルションが、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤と、それ以外の金属を有さない界面活性剤を含む場合、金属を有さない界面活性剤の全量に対する、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有し、10℃〜50℃において液体である界面活性剤の含有量は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、また、通常30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
〈塩基性化合物〉
水性エマルションは、さらに、塩基性化合物を含んでいてもよい。
塩基性化合物としては、カルボキシル基を中和できるものが好ましく、例えば、アンモニア又は有機アミン化合物等が好ましい。特に、沸点が200℃以下の有機アミン化合物は、通常の乾燥によって容易に蒸発させることができ、水性エマルションを用いてペレットの互着防止性能を向上する場合に好ましい。
有機アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。なかでも、好ましくは、N,N−ジメチルエタノールアミン等である。
水性エマルションが塩基性化合物を含む場合、その含有量は、好ましくは、エチレン−不飽和エステル共重合体に対して、1〜30質量%であり、より好ましくは、2〜20質量%であり、より好ましくは2〜10質量%である。
〈水〉
水性エマルションに含まれる水には、通常、水道水又は脱イオン水等が用いられる。
〈溶剤〉
水性エマルションは、溶剤を含まないことが好ましいが、溶剤を含んでもよい。溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;メタノ−ル、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)、ブチルカルビトール等のセルソルブ系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル,3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒;等の有機溶剤が挙げられる。これらは単独でもよく、組み合わせてもよい。
水性エマルションが溶剤を含む場合、その含有量は、エチレン−不飽和エステル共重合体を100質量部として、通常、0.001〜30質量部、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.001〜5質量部である。
〈その他の成分〉
水性エマルションには、必要に応じて、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤;揺変剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、防腐剤、耐候剤、顔料、顔料分散剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料、硬化剤(架橋剤)などの添加剤;酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラック等の顔料;ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤等が含まれていてもよい。
〈水性エマルションの製造方法〉
水性エマルションの製造方法は、当該分野で公知の方法、例えば、共重合体を重合した後にその共重合体を水性媒体中に分散させる後乳化法(例えば、機械乳化法、強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など)のいずれをも利用して製造することができる。
具体的には、(1)反応器に、エチレン−不飽和エステル共重合体及び溶剤を投入し、攪拌、加熱溶解し、これに金属を有さない界面活性剤、水及び/又は溶剤を投入し、加熱及び攪拌し、この前後にさらに任意に水及び/又は溶剤を投入して攪拌する方法、(2)混練機に、エチレン−不飽和エステル共重合体、任意に溶剤を投入し、攪拌、加熱溶融し、これに金属を有さない界面活性剤、水及び/又は溶剤を投入し、加熱及び攪拌し、この前後にさらに任意に水及び/又は溶剤を投入して攪拌する方法等が挙げられる。
上述した(1)の製造方法において、反応器としては、加熱可能な加熱装置と、内容物に対して剪断力等を与えることができる撹拌機とを備えた容器(好ましくは、密閉及び/又は耐圧容器)が用いられる。
撹拌機は、通常のものを用いることができる。このような耐圧容器としては、撹拌機付耐圧オートクレーブ等が挙げられる。攪拌は、例えば、常圧又は減圧のいずれで行なってもよい。また、撹拌機の回転数は、例えば、50〜1000rpm程度の回転数で行なうことができる。必要に応じて、水性エマルションの分散/攪拌が進むにつれて、回転数を上げることが好ましい。
加熱は、通常、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜100℃で行う。
攪拌した後、得られた分散体から溶剤留去(好ましくは、減圧/加圧留去)することが好ましい。ここでの留去の方法は、当該分野で公知の方法を利用することができる。減圧/加圧の程度は、±0.001〜1MPa程度が挙げられ、±0.001〜0.5MPa程度が好ましい。
上述した(2)の製造方法において、混練器としては、ロールミル、ニーダー、押出機、インクロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。特に、スクリューを1本又は2本以上ケーシング内に有する押出機又は多軸押出機を用いてもよい。
押出機を用いて撹拌する方法としては、溶融したエチレン−不飽和エステル共重合体及び金属を有さない界面活性剤を混合し、これを押出機のホッパー又は供給口より連続的に供給し、これを加熱溶融混練し、さらに押出機の圧縮ゾーン、計量ゾーン及び脱気ゾーン等に設けられた少なくとも1つの供給口より、水を供給し、スクリューで混練した後、ダイから連続的に押出す。
金属を有さない界面活性剤を過剰に用いた場合には、得られた水性エマルションから過剰の金属を有さない界面活性剤を分離除去してもよい。金属を有さない界面活性剤の分離除去は、例えば、遠心分離機、平均細孔径が水性エマルションに含まれる分散質の平均粒径よりも小さい細孔を有する濾過フィルター(好ましくは、0.05〜0.5μmの平均細孔径を有する精密濾過膜)または限外濾過膜などを用いる方法が挙げられる。
得られた水性エマルションは、冷却することが好ましい。これにより、微細な分散質を含む水性エマルションが得られる。冷却方法としては、常温で放置する方法等が挙げられる。常温で放置する方法によれば、冷却過程でエチレン−不飽和エステル共重合体等が凝集することなく、微細で均質な水性エマルションを得ることができる。
また、得られた水性エマルションは、必要に応じて、例えば、種々の孔径を有するフィルター等を用いてろ過等してもよい。
水性エマルションに含まれる分散質の平均粒径は、体積基準メジアン径として測定することができる。分散質の平均粒径は、通常30μm以下であり、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.01〜10μmであり、この範囲内であれば静置安定性が良好である。体積基準メジアン径とは、体積基準で積算粒子径分布の値が50%に相当する粒径である。
分散質は、エチレン−不飽和エステル共重合体と、金属を有さない界面活性剤とを含む。
本発明における互着防止剤は、水性エマルションに含まれる分散質から水を除去したものに均一に含まれる。
水の有無によって水性エマルションに含まれる分散質の粒径はほとんど変化しないため、水性エマルションに含まれる分散質の平均粒径と、互着防止剤の平均粒径とは、略同一である。
〈太陽電池封止材用ペレット〉
太陽電池封止材用ペレット(以下、本ペレットということがある。)は、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる。
前記エチレン−不飽和エステル共重合体の不飽和エステルに由来する構造単位の含有率は、加工性、透明性を高める観点から、好ましくは23質量%以上、33質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上、32質量%以下である。なお、本発明のエチレン−不飽和エステル共重合体が、二種類以上の不飽和エステルに由来する構造単位を含有する場合は、当該エチレン−不飽和エステル共重合体が含有する全ての不飽和エステルに由来する構造単位の含有量の合計を、不飽和エステルに由来する構造単位の含有率とする。
不飽和エステルとしては、上記と同しものが挙げられる。
本ペレットのエチレン−不飽和エステル共重合体としては、例えば、上記水性エマルションが含むエチレン−不飽和エステル共重合体と同じものが挙げられる。
本ペレットのエチレン−不飽和エステル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、加工性を高める観点から、好ましくは4g/10分以上、50g/10分以下である。MFRの上限はより好ましくは40g/10分以下である。MFRの下限はより好ましくは5g/10分以上である。MFRは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるものをいう。
本ペレットのエチレン−不飽和エステル共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、加工性を高める観点から、2以上、8以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以上、4以下である。なお、Mwは、上記共重合体の重量平均分子量を指し、Mnは、上記共重合体の数平均分子量を指す。
本ペレットのエチレン−不飽和エステル共重合体のポリエチレン換算の重量平均分子量は、40000〜80000であることが好ましく、50000〜70000であることがより好ましい。ポリエチレン換算の重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量を求め、上記ポリスチレン換算の重量平均分子量と、ポリエチレンとポリスチレンのQファクターの比(17.7/41.3)との積として、ポリエチレン換算の重量平均分子量を求めた。
本ペレットのエチレン−不飽和エステル共重合体の製造方法としては、上記水性エマルションが含むエチレン−不飽和エステル共重合体と同じものが挙げられる。
本ペレットの形状は、例えば、球状、楕円球状、円柱状、楕円柱状、角状、棒状等が挙げられる。また、本ペレットの大きさは、直径又は長さが3mm以上で5mm以下が好ましい。
〈水性エマルションの使用方法〉
水性エマルションを本ペレットの表面に付与し、水を除去することにより、互着防止剤が表面に付着している本ペレットが得られる。互着防止剤が付着している本ペレットは互着防止性能に優れる。
水性エマルションを、本ペレットの表面に付与し、水を除去する方法としては、例えば、ホッパー内又は空送ライン内に水性エマルションを噴霧して本ペレットを水性エマルションで被覆後、乾燥することにより水を除去する方法や、本ペレットと、水性エマルションとを容器へ入れ、攪拌後、乾燥する方法等が挙げられる。
また、工業的規模で行うには、包装(例えば、袋、ドラム缶、プラスチック容器等に詰めること)などの作業(包装工程の一例)を連続的かつ簡単な操作で行う必要性があることから、例えば、以下のような方法で、互着防止剤を本ペレットに付与する。
水性エマルションを、本ペレットの表面に付与し、水を除去する方法としては、
工程1a) エチレン−不飽和エステル共重合体を押出機から押し出して、水中でペレット状に切断して本ペレットを製造する工程と、
工程1b) 本ペレットを、空送ラインを通じて次工程へ移送しながら、当該空送ライン内において、水性エマルションを本ペレット表面に付与する工程と、
工程1c) 水性エマルションが表面に付与された本ペレットを乾燥し、工程1a)において付着した水を除去して、互着防止剤が表面に付着している本ペレットを得る工程と、
工程1d) 互着防止剤が表面に付着している本ペレットを包装する工程とを有する方法や、
工程2a) エチレン−不飽和エステル共重合体を押出機から押し出して、水中でペレット状に切断して本ペレットを製造する工程と、
工程2b) 本ペレットを、空送ラインを通じて、ホッパーへ移送する工程と、
工程2c) ホッパー内において、水性エマルションを本ペレット表面に付与する工程と、
工程2d) 水性エマルションが表面に付与された本ペレットを乾燥し、工程2a)において付着した水を除去して、互着防止剤が表面に付着している本ペレットを得る工程と、
工程2e) 互着防止剤が表面に付着している本ペレットを包装する工程とを有する方法が挙げられる。
工程2d)は、工程2c)のホッパー内で行ってもよい。
工程1a)と工程1b)との間に、または、工程2a)と工程2b)との間に、
工程b’) 本ペレットの水切りを行う工程
を設けてもよい。
本ペレットの表面に付着している互着防止剤の量は、互着防止剤が表面に付着している本ペレットを水中で超音波洗浄を行い、水中に溶出した互着防止剤を乾燥し秤量することで算出することが可能である。
本ペレット100質量部に対して、互着防止剤に含まれるエチレン−不飽和エステル共重合体が0.001〜5質量部付着していることが、本ペレット同士の互着が抑える点で好ましい。
必要に応じて耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤からなる群より選ばれる一種以上の化合物を、ペレット中に練り込んでもよく、また、互着防止剤と共に、本ペレットの表面に付着させてもよい。
耐光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系化合物、リン系化合物等が挙げられる。滑剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド化合物等が挙げられる。
〈太陽電池封止材〉
本発明の互着防止剤が表面に付着した本ペレットを用いて得られる樹脂製品は、体積固有抵抗が向上する。そのため、本発明の互着防止剤が表面に付着した本ペレットを用いて作製したシート等は、太陽電池素子(結晶、多結晶、アモルファス等)の封止及び保護に用いられる太陽電池封止材に好適に用いられる。
シート状の太陽電池封止材の製造方法は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機等を用いてエチレン−不飽和エステル共重合体が表面に付与された本ペレットを加工する方法が挙げられる。シートに加工する段階で、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、防曇剤、可塑剤、界面活性剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶核剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0005】
以下に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。例中の部及び%は、特に断らないかぎり質量基準を意味する。
物性の測定及び評価等は、以下の方法で行った。
<不揮発分濃度(単位:%)>
水性エマルションの不揮発分濃度はJIS K−6828−1に準じた方法で測定した。
<平均粒径(単位:μm)>
水性エマルションに含まれる分散質の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−950V2(株式会社堀場製作所製)を用い、粒子屈折率1.50で得られる体積基準メジアン径として測定した。
<酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率(単位:質量%)>
エチレン−酢酸ビニル共重合体に含まれる酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率は、エチレンに由来する構造単位の含有率と、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有率の総和を100質量%とするときの値であり、JIS K7192に従い測定した。
<メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
<実施例1>
<水性エマルションの製造例1>
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた容器1Lのセパラブルフラスコ反応容器に、トルエン200部、及び、エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)[エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリフトWH303 住友化学社製]100部を入れ、95℃にて攪拌した。次いで、反応容器中に、界面活性剤としてラテムルE−1000A(30%水溶液、花王株式会社製)33.3部を10分間かけて滴下した。さらに5分間攪拌後、28%アンモニア水溶液16.7部を投入し、さらに5分間攪拌した。次いで、反応容器に、イオン交換水300部を30分間かけて滴下しながら攪拌を続け、乳白色の分散液を得た。
得られた分散液を2Lナスフラスコに投入し、エバポレーターにて減圧留去を行い、200メッシュナイロン網にて濾過し、エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)及び界面活性剤を含む水性エマルション(E−1)を得た。得られた水性エマルション(E−1)に含まれる分散質の平均粒径(体積基準)は1.35μm、不揮発分濃度は43%であった。
<太陽電池封止材用ペレットの製造例1>
オートクレーブ式反応器にて、反応温度188〜195℃、反応圧力180〜185MPa、フィードガス組成(エチレン:63〜68wt%、酢酸ビニル:37〜32wt%)の条件で、開始剤として、t−ブチルパーオキシ 2−エチルヘキサノエートを用いてエチレン−酢酸ビニル共重合体を合成し、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる太陽電池封止材用ペレット(P1)(酢酸ビニル含量32質量%、MFR37、ペレット質量32g)を作製した。
<互着防止剤が表面に付着している太陽電池封止材用ペレット(Q1)の製造例1>
太陽電池封止材用ペレット(P1)100部と、水性エマルション(E−1)(不揮発分濃度43%)0.698部(固形分で0.3部)とをポリエチレン製の容器へ入れ5分間攪拌後、乾燥窒素を吹き付けながら更に2時間乾燥させ、互着防止剤が表面に付着している太陽電池封止材用ペレット(Q1)を得た。
<互着防止剤が表面に付着している太陽電池封止材用ペレット(Q2)の製造例2>
乾燥を実施しない以外は、<Q1の製造例1>と同様にして、湿潤したままの互着防止剤が表面に付着している太陽電池封止材用ペレット(Q2)を得た。
<互着試験>
60mm×85mmのチャック付ポリ袋に、ペレット(Q1)32gを入れ、チャックを閉じた。次いで、40℃で、上記袋に100g/cmの荷重をかけて24時間保った後、5℃で24時間保った。その後、荷重を取り除き23℃において24時間保った。その後、袋を破り、ペレット(Q1)を取り出して観察し、○、×で評価した。
○:ペレットの互着なし
△:ペレットが5〜50粒くっついている
×:ペレットが51粒以上くっついている
<流下性試験>
底をパラフィルムにて封止したポリ製ロートに、ペレット(Q2)100gを入れ、次いで、40℃で、24時間静置保管した。
保管後、室温まで戻した後、封止したパラフィルムを取り外し、ロートからペレットが全て流れ落ちる時間(流下時間)を測定し、○、×で評価した。
○:30秒未満に全て流れ落ちた。
△:30秒〜3分未満に全て流れ落ちた。
×:3分以上経っても流れ落ちなかった。
<シートの作製>
ペレット(Q1)100質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(パーブチル E、日本油脂株式会社製、1時間半減期温度 121℃:架橋剤としての有機過酸化物)0.4部、
トリアリルイソシアヌレート(TAIC、東京化成工業株式会社製:架橋助剤)0.9部、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−174、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製:シランカップリング剤)0.12部、
2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(Sumisorb130、住化ケムテックス株式会社製、平均粒径178μm)0.3部、及び、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin770 DF、BASF社製)0.08部
を、ラボプラストミルにより5分間混練した後、150℃の熱プレス機により2MPaの圧力で5分間プレスし、30℃の冷却プレス機で5分間冷却して、厚さ約500μmのシート(S1)を作製した。
<体積固有抵抗(Ω・cm)>
シート(S1)を、平板試料用大径電極(東亜ディーケーケー株式会社製 SME−8310)に設置して、500Vの電圧を印加し、デジタル絶縁計(東亜ディーケーケー株式会社製 DSM−8103)にて1分後の抵抗値を測定し、その値をもとに体積固有抵抗値を算出した。
<光線透過率(%)>
シート(S1)の厚み方向の光線透過スペクトルを分光光度計(株式会社 島津製作所製 UV−3150)により測定し、波長範囲400〜1200nmにおける光線透過率の平均値を算出した。
<実施例2>
エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)をエチレン−不飽和エステル共重合体(A−2)[エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリフトWH302 住友化学社製]に変更する点以外は、実施例1と同様に水性エマルション(E−2)を製造し、評価した。
<実施例3>
エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)をエチレン−不飽和エステル共重合体(A−3)[エチレン−酢酸ビニル共重合体、MFR 9、酢酸ビニル濃度 18wt%、住友化学社製]に変更する点以外は、実施例1と同様に水性エマルション(E−3)を製造し、評価した。
<実施例3−1>
水性エマルション(E−3)に、プルロニックL−64(ADEKA社製)4部を添加し、よく攪拌し水性エマルション(E−3−1)を製造し、評価した。
<実施例3−2>
水性エマルション(E−3)に、プルロニックL−64(ADEKA社製)6部を添加し、よく攪拌し水性エマルション(E−3−2)を製造し、評価した。
<実施例4>
エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)をエチレン−不飽和エステル共重合体(A−4)[エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリフトCM5021 住友化学社製]に変更する点以外は、実施例1と同様に水性エマルション(E−4)を製造し、評価した。
<高分子型のアニオン性界面活性剤水溶液の製造例1>
アクリル酸30.0部、アクリル酸エチル60部、メタクリル酸ラウリル10.0部、およびイソプロピルアルコール150部を攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロートを装着した4つ口フラスコ内に仕込み、窒素ガス置換後、2、2’−アゾイソブチロニトリル0.6部を開始剤とし、80℃にて3時間重合した。次いで28%アンモニア水溶液37.9部で中和した後、イソプロピルアルコールを留去しながら水を添加して置換し、最終的に不揮発分30%の粘稠なアクリル系重合体の中和物の水溶液(X−1)を得た。
<実施例5>
エチレン−不飽和エステル共重合体(A−1)を100部/時間の割合で、同方向回転噛合型二軸スクリュー押出機(池貝鉄工社商品名PCM45、三条ネジ浅溝型、L/D30)のホッパーより連続的に供給する。
また同押し出し機のベント部に設けた供給口より、水溶液(X−1)26.8部(不揮発分としては8部)に更に水を113.2部加えたものを、140部/時間の割合でギヤーポンプで加圧して連続的に供給しながら、加熱温度130℃で連続的に押出し、乳白色の水性エマルション(E−5)を得る。実施例1と同様に評価すると、実施例1と同様の結果が得られる。
<実施例6>
アクリル酸21.6部、アクリル酸エチル30部、メタクリル酸ブチル56.8部、28%アンモニア水溶液18.2部を用いる点以外は、<高分子型のアニオン性界面活性剤水溶液の製造例1>と同様に不揮発分30%の粘稠なアクリル系重合体の中和物の水溶液(X−2)を得、さらに<実施例5>と同様の方法にて水性エマルション(E−6)を得る。実施例1と同様に評価すると、実施例1と同様の結果が得られる。
<比較例1>
水性エマルション(E−1)の代わりに、シリカ(サイリシア 430、富士シリシア化学社製、平均粒径2.9μm)0.30質量部をすり潰さずに用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。
<比較例2>
水性エマルション(E−1)の代わりに、ステアリン酸カルシウム(共同薬品株式会社製、平均粒径9.3μm)0.10質量部をすり潰さずに用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。
<参考例>
水性エマルションを用いないこと以外は実施例1と同様に評価した。
【表1】
【表2】
実施例1〜4では、互着が防止され、体積固有抵抗及び光線透過率は参考例と同等であった。一方、比較例1では参考例に比較して光線透過率が低下し、比較例2では参考例に比較して体積固有抵抗が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0006】
本発明の方法は、太陽電池封止材用ペレットの互着防止方法として有用である。