(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走査手段は、前記光源からの紫外線が前記紫外線透過窓に入射する位置を前記帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら前記光源からの紫外線を前記筐体の内部から照射するに際し、前記紫外線透過窓の内側面に対する紫外線の入射角度を変化させることにより、被殺菌体における任意の紫外線照射領域に対して異なる2以上の入射角で紫外線を照射することが可能とされている、請求項1に記載の紫外線殺菌装置。
前記移動手段は、円柱面、楕円柱面または放物線柱面からなる、前記紫外線透過窓の側から見て凹状に湾曲した曲面に沿って前記光源をスライド移動させる、請求項4に記載の紫外線殺菌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されている携帯用殺菌装置は、紫外線光源としてキセノンフラッシュランプなどの比較的強度の強い紫外線を放射状に出射する紫外線ランプを用いているため、紫外線の照射領域が比較的広く、被殺菌体の表面を短時間で殺菌できるという利点がある。その反面、消費電力が多く、また、衝撃等によりランプが損傷を受けるおそれがあるばかりでなく、その寿命も比較的短いという課題がある。一方、紫外線発光ダイオード(DUV−LED)は、消費電力が小さく耐久性が高いというメリットがあるものの、前記したように紫外線ランプと比べて発光出力が弱いため、これを用いた携帯用紫外線殺菌装置は知られていない。さらに、DUV−LEDは一般に出射される紫外線の指向性が高いため、紫外線の照射領域が狭くなってしまう。したがって、特許文献1及び2の携帯用殺菌装置において光源を単にDUV−LEDに置き換えるだけでは十分な殺菌効果を得ることは難しいと思われる。
【0007】
特許文献3に記載の発明によれば、強度を高めた平行光を照射可能であるものの、該発明の紫外線照射装置を用いて実際に物を殺菌するにあたっては、その物の照射位置を逐一変更しなければならない。
【0008】
そこで本発明は、紫外線光源としてDUV−LEDを用いた紫外線殺菌装置であって、携帯用としても使用可能であり、更に物の殺菌の操作性を向上させることが可能な、紫外線殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外線殺菌装置は、開口部を有する筐体と、内側面および該内側面と反対側の外側面を有し、筐体の開口部を塞ぐように内側面を筐体の内部に向けて配置された、紫外線を透過する紫外線透過窓と、一つ以上の紫外発光ダイオードを有し、紫外線を帯状の光束として出射する光源と、光源からの紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源からの紫外線を照射することによって、筐体の内部から紫外線透過窓の内側面の全面にわたって光源からの紫外線を照射することができる走査手段と、を有する紫外線殺菌ユニットを含んでなり、紫外線透過窓の外側面に対向して配置された被殺菌体に紫外線を照射して殺菌を行うことを特徴とする。
【0010】
本出願において、帯状の光束の「幅方向」とは、帯状の光束の伝播方向に垂直な断面における長手方向を意味する。
【0011】
本発明において、光源が波長200nm〜300nm、特に220nm〜280nmの深紫外線を発光することが好ましい。
【0012】
本発明の紫外線殺菌装置の紫外線殺菌ユニットは、次の(1)及び(2)に示す態様のいずれかあることが好ましい。
(1)走査手段が、筐体の内部に配置されるミラーと、ミラーの角度を変化させる駆動装置とを有し、光源は、帯状の光束をミラーに向けて出射するように配置されており、ミラーは、帯状の光束を、紫外線透過窓に向けて反射するように配置され、駆動装置がミラーの角度を変化させることにより、ミラーによって反射された紫外線が紫外線透過窓に入射する位置が帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらされる態様(以下、「第一の紫外線殺菌ユニット」ともいう)。
(2)光源が、帯状の光束を紫外線透過窓に向けて出射するように筐体内に配置されており、走査手段が、帯状の光束の紫外線透過窓への入射位置が変化するように光源をスライド移動させる移動手段を有する態様(以下、「第二の紫外線殺菌ユニット」ともいう)。
【0013】
上記第二の紫外線殺菌ユニットの中でも、円柱面、楕円柱面または放物線柱面からなる、紫外線透過窓の側から見て凹状に湾曲した曲面に沿って光源をスライド移動させる態様の紫外線殺菌ユニット(以下、「第三の紫外線照射ユニット」ともいう。)は、被殺菌体の下側からだけでなく被殺菌体の左右斜め下側方向からも紫外線を照射することができるという特徴を有する。
【0014】
これらの態様の中でも、走査手段が、光源からの紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源からの紫外線を筐体の内部から照射するに際し、紫外線透過窓の内側面に対する紫外線の入射角度を変化させることにより、被殺菌体における任意の紫外線照射領域に対して異なる2以上の入射角で紫外線を照射することが可能とされている態様が特に好ましい。
【0015】
また、本発明の紫外線殺菌装置は、紫外線殺菌ユニットを2以上有し、各殺菌ユニットが屈曲可能な連結部材で連結されてなる態様(以下、「連結タイプ」ともいう。)をも含む。このような連結タイプの本発明の紫外線殺菌装置は、例えば2つの紫外線殺菌ユニットを互いに対向するように配置することにより、被殺菌体の上下(或いは前後)両方向から同時に紫外線を照射することができるので、立体的な被殺菌体の殺菌を行う場合でも、一度の照射でより確実な殺菌を行うことが可能となる。特に前記第三の紫外線照射ユニットを互いに対向するように配置した場合には、左右斜め上及び左右斜め下方向からも紫外線を照射できるため、立体的な被殺菌体の殺菌を行う場合でも、一度の照射でさらに確実な殺菌を行うことが可能となる。
【0016】
これら連結タイプの紫外線殺菌装置においては、各紫外線殺菌ユニットに前記連結部材取り付用のポートを設け、前記連結部材を着脱可能とすることにより、連結部材で連結しない場合に、各紫外線殺菌ユニットをそれぞれ個別の本発明の紫外線殺菌装置(非連結タイプ)と使用できるようにすることもできる。
【0017】
また、本発明の紫外線殺菌装置において、前記光源は、深紫外線を出射する棒状光源と、該棒状光源から出射された深紫外線を集光する集光装置とを有し、前記棒状光源は、円筒状または多角柱状の基体と、複数の深紫外発光ダイオードとを有する棒状光源であって、該複数の深紫外発光ダイオードが、各深紫外発光ダイオードの光軸が前記円筒状または多角柱状の基体の中心軸を通るように前記円筒状または多角柱状の基体の側面に配置されていることにより、前記中心軸に対して放射状に深紫外線を出射し、前記集光装置が、長楕円反射ミラーを有し、前記長楕円反射ミラーの焦点軸上に前記棒状光源が配置され、前記長楕円反射ミラーは、該長楕円反射ミラーの集光軸において集光された紫外線を出射するための紫外線出射用開口部を有し、前記紫外線出射用開口部に、前記集光された紫外線の指向性を高めるコリメート光学系を有する光源(以下、「集光モジュール化光源」ともいう。)であることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の紫外線殺菌装置では、前記光源から出射された紫外線の外部への漏洩を防止するための紫外線不透過性カバーを更に有し、前記紫外線透過性窓の外面と前記カバーとの間の空間に被殺菌体を配置するようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紫外線殺菌装置によれば、光源から照射された紫外線が走査手段によって紫外線透過窓の内面の全面を照射することにより、被殺菌体を自動で殺菌することが可能である。特に、走査手段が、光源からの紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源からの紫外線を筐体の内部から照射するに際し、紫外線透過窓の内側面に対する紫外線の入射角度を変化させることにより、被殺菌体における任意の紫外線照射領域に対して異なる2以上の入射角で紫外線を照射することが可能とされている態様によれば、被殺菌体の下方(紫外線透過窓側)から様々な角度で紫外線を照射しながら走査する(照射領域を移動させる)ので、表面に凹凸を有する被殺菌体に対して、より確実な殺菌を行うことが可能となる。
【0020】
このような本発明の紫外線殺菌装置を用いることにより、たとえば手軽に日常手に触れるものを殺菌することが可能となる。たとえば、殺菌ユニットを1つのみ有する態様の本発明の紫外線殺菌装置によれば、テーブル表面、携帯電話の操作面やパーソナルコンピュータのキーボードなどの平面的な被殺菌体(平面的部分の表面の殺菌が必要なもの)の表面を自動で殺菌することができる。また、連結タイプの本発明の紫外線殺菌装置によれば、幼児用のおもちゃなどの物品、紙幣や硬貨など両面の殺菌が必要なもの、手の平や指先などの人体の一部など、などの立体的な形状を有する被殺菌体(表面全体の殺菌が必要なもの)の殺菌を自動で行うことができる。
【0021】
さらに、紫外線光源として、一つ以上の紫外発光ダイオードを有し、紫外線を帯状の光束として出射する光源を用いているため、照射領域に対応する面の全面に亘ってUV−LEDを敷き詰めるように配置する必要がなく、使用するUV−LEDの数を少なくすることができ、経済的である。特に前記集光モジュール化光源を用いた場合には、比較的少ないUV−LEDを用いて高強度の紫外線の帯状光束を得ることができるので、装置のコンパクト化を図りつつ、より効率的な殺菌を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図面は必ずしも正確な寸法を反映したものではない。また図では、一部の符号を省略することがある。
【0024】
図1は、第一の殺菌ユニット一つを有する、本発明の一の実施形態に係る紫外線殺菌装置10の構成を模式的に説明する透視斜視図である。紫外線殺菌装置10において、走査手段は、筐体11の内部に配置されるミラー14と、ミラー14の角度を変化させる駆動装置15と、を有し、光源100は、帯状の光束をミラー14に向けて出射するように配置されており、ミラー14は、帯状の光束を、紫外線透過窓12に向けて反射するように配置され、駆動装置15がミラー14の角度を変化させることにより、ミラー14によって反射された紫外線が紫外線透過窓12に入射する位置が帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらされるようになっている。
【0025】
紫外線殺菌装置10は、紫外線を通さない底面11eおよび側壁11a、11b、11c、11dを有し、上部が開口した筐体11と、この開口部を塞ぐように設けられた、紫外線を透過する紫外線透過窓12とを有している。紫外線透過窓12は内側面および該内側面と反対側の外側面を有し、内側面を筐体11内部に向けて配置されている。筐体11の一の側壁11aには紫外線出射窓13と、紫外線を出射する光源100を内部に収納する収納部16とが備えられ、筐体11内部には光源100から出射される紫外線を紫外線透過窓12に向けて反射するミラー14と、ミラー14の角度を変化させる駆動装置15とが備えられている。収納部16にはスイッチ17が備えられており、スイッチ17を操作することで光源100が発光するとともに駆動装置15がミラー14の角度を変化させる。図において一点鎖線の矢印は紫外線の進行方向を表している。
【0026】
紫外線照射装置10は、次のように物の殺菌を行う。紫外線照射装置10の紫外線透過窓12の上面に殺菌する物(被殺菌体)を置き、スイッチ17を入れる。スイッチ17を入れると、光源100が発光するとともに駆動装置15がミラー14の角度を変化させる。光源100から出射される紫外線は、紫外線出射窓13を通りミラー14に反射され、ミラー14に反射された紫外線は紫外線透過窓12を透過して被殺菌体に照射される。このとき、駆動装置15によってミラー14の角度が常に変化しているため、ミラー14によって反射された紫外線が紫外線透過窓12に入射する位置が走査され(変動し)、紫外線透過窓12の上に配置した被殺菌体全体に紫外線が照射されることになる。
なお、光源100及び駆動装置15の電源としては、外部電源を用いることもできるし、バッテリーを用いることもできる。携帯用の紫外線照射装置とする場合には、バッテリーを用いることが好ましい。
【0027】
筐体11を構成する材料は、紫外線を通さない限りにおいて特に限定されず、例えば金属や樹脂等を採用できる。ただし、筐体11の内面、より具体的には紫外線透過窓12の外側から見て目視できる部分の表面は、紫外線反射材で構成されることが好ましい。本発明で好適に使用できる紫外線反射材料を例示すれば、クロム(紫外線反射率:約50%)、白金(紫外線反射率:約50%)、ロジウム(紫外線反射率:約65%)、硫酸バリウム(紫外線反射率:約95%)、炭酸マグネシウム(紫外線反射率:約75%)、炭酸カルシウム(紫外線反射率:約75%)、酸化マグネシウム(紫外線反射率:約90%)、アルミニウム(紫外線反射率:約90%)などを挙げることができる。これらの中でも、メッキ法や蒸着法などの表面処理により高い反射率の表面とすることができるという理由から、紫外線反射材料としては、ロジウム、白金又はアルミニウムを用いることが特に好ましい。なお、紫外線反射材料として金属材料を採用する場合には、表面が酸化されたり傷付いたりすることによって反射率が低下することを防止する観点から、石英、サファイア、ポリテトラフルオロエチレン膜などの紫外線透過性材料で紫外線反射材料の表面を被覆することが好ましい。
【0028】
紫外線透過窓12は内側面および該内側面と反対側の外側面とを有し、内側面を筐体11内部に向けるように筐体11の上部に設けられ、光源100から出射されミラー14によって反射された紫外線を、紫外線透過窓12上部に置かれた被殺菌体に向けて透過する。紫外線透過窓12を構成する材料としては、例えばサファイア、石英等を好ましく採用できる。このほか、紫外線透過窓12は紫外線透過性樹脂からなる成形体又は可撓性のシート(またはフィルム)によって好適に構成できる。そのような紫外線透過性樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール樹脂など(照射する紫外線を吸収するような紫外線吸収剤や可塑剤等の添加剤を含まないもの)を好ましく例示できる。
なお、紫外線透過窓を紫外線透過性樹脂で構成した場合には、紫外線照射により樹脂が劣化することがあるので、紫外線透過窓を交換しやすくする観点から、紫外線透過窓は筐体に着脱可能に取り付けられることが好ましい。
さらに、紫外線透過窓は、必ずしも表面(外側面)が平面である必要はなく、曲面であってもよいし、被殺菌体を保持しやすくする目的で、中央部付近に窪み等を有していてもよい。
【0029】
紫外線出射窓13は筐体11の一の側面11aに設けられている。
図1では側面11aの一部を紫外線出射窓としているが、本発明はこれに限定されることはなく、側面11aの全面に紫外線出射窓が設けられていてもよい。紫外線出射窓13は、例えば側壁11aに設けた貫通孔により構成することができ、また、前記紫外線透過窓として使用できる材質からなる窓を該貫通孔に設置してもよい。
【0030】
ミラー14は筐体11の内部に設けられており、紫外線出射窓13から筐体11内部に入射した紫外線を紫外線透過窓12に向けて反射する。ミラー14の反射面は、紫外線、特に265nmの紫外線に対する反射率が40%以上、好ましくは60%以上、最も好ましくは70%以上の紫外線反射材料で構成することが好ましい。本発明で好適に使用できる紫外線反射材料を例示すれば、クロム(紫外線反射率:約50%)、白金(紫外線反射率:約50%)、ロジウム(紫外線反射率:約65%)、硫酸バリウム(紫外線反射率:約95%)、炭酸マグネシウム(紫外線反射率:約75%)、炭酸カルシウム(紫外線反射率:約75%)、酸化マグネシウム(紫外線反射率:約90%)、アルミニウム(紫外線反射率:約90%)などを挙げることができる。これらの中でも、メッキ法や蒸着法などの表面処理により高い反射率の表面とすることができるという理由から、紫外線反射材料としては、ロジウム、白金又はアルミニウムを用いることが特に好ましい。なお、紫外線反射材料として金属材料を採用する場合には、表面が酸化されたり傷付いたりすることによって反射率が低下することを防止する観点から、石英、サファイア、ポリテトラフルオロエチレン膜などの紫外線透過性材料で紫外線反射材料の表面を被覆することが好ましい。
【0031】
駆動装置15は、スイッチ17を入れることにより、ミラー14の角度を変化させることができるように構成されている。駆動装置15によって変化するミラー14の角度範囲は、光源100からミラー14に入射した紫外線がミラー14によって反射されてなる反射光によって紫外線透過窓12の全面を走査することができる限りにおいて、すなわち、ミラー14からの反射光の紫外線透過窓12への入射位置を紫外線透過窓12の全面にわたって変化させることができる限りにおいて、特に限定されるものではない。本発明の紫外線殺菌装置10は、駆動装置15を備えることにより、ミラー14によって反射される紫外線の照射位置を調整することができ、また自動で被殺菌体の全体を紫外線照射することができるため、殺菌の操作性を向上することができる。
【0032】
収納部16は、光源100を収納しスイッチ17を備える部材である。
図1に示す紫外線殺菌装置10では、収納部16は筐体11の一の側面11aの外側に取り付けられているが、収納部16が設けられる位置は当該位置に限定されるものではなく、筐体11の内部に設けられていてもよい。収納部16が筐体11内に備えられる場合、紫外線出射窓13は収納部16の表面であって、光源100から出射される紫外線がミラー14に向かうことができる位置に設けられることが好ましい。
【0033】
光源100は、一つ以上の紫外発光ダイオードを有し、紫外線を帯状の光束として出射する。光源100から出射される帯状の光束の幅方向の長さは、筐体に設けられた開口部の、該帯状の光束の幅方向と同一方向の幅の長さと同等とされている。光源100は、
図2に示すように、一つ以上の紫外発光ダイオード101、101、…が、平面上に一列(若しくは数列)縦長に配列されていることによって、紫外線を帯状の光束として出射するようになっている。この配列において横(短手)方向に配列される紫外発光ダイオードの数(列数)と縦(長手)方向に配列される紫外発光ダイオードの数(行数)の比は縦/横=2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。なお、当該比の上限は装置の大きさによって異なるが、後述する筺体の開口部の幅に並べることができる紫外発光ダイオードの数によって定まる。
【0034】
光源100から出射される帯状の光束の幅方向の長さは、筐体の開口部(又は前記紫外線透過窓12)の、帯状の光束の幅方向と同一方向の幅と同等であり、該幅の95〜105%、特に98〜102%であることが好ましい。なお、前記開口部(又は前記紫外線透過窓12)の帯状の光束の幅方向と同一方向の幅は、帯状の光束の伝播方向に垂直な断面の長手方向と平行な方向における最大幅を意味する。開口部の形状及び光源を設置する向きにもよるが、例えば、開口部の形状が長方形であり、光源を該長方形の短辺(又は長辺)平行に配した場合には、その短辺(又は長辺)の長さが当該開口部の幅である。また例えば、開口部の形状が円又は楕円形状であり、光源を円の直径又は楕円の長径(もしくは短径)と平行に配置した場合には、円の直径又は楕円の長径(もしくは短径)の長さが当該開口部の幅である。
【0035】
光源100は、スイッチ17を入れると紫外線発光ダイオードが一斉に発光し、紫外線出射窓12から紫外線の帯状の光束がミラー14に向けて出射される。ミラー14に向けて出射された紫外線はミラー14の反射面において反射され、紫外線透過窓12を透過して被殺菌体に照射される。本発明における紫外発光ダイオードとしては、波長200〜300nm、特に波長220nm〜280nmの紫外線(深紫外線)を照射する深紫外発光ダイオード(深紫外LED)を好適に使用できる。
【0036】
図2は、収納部16を模式的に説明する断面図である。光源100は
図2に示すように、基板102に配列された複数の紫外発光ダイオード101、101、…を備えることが好ましい。基板102は主として銅、アルミニウムなどの熱導電性の高い金属やセラミックスなどで構成されていることが好ましい。また、紫外発光ダイオード101はパッケージ化またはモジュール化されていることが好ましく、平行光のような指向性の強められた光を出射するような構造、例えばコリメートレンズを有するパッケージ内に収納されていることが好ましい。このとき、帯状の光束における光強度の分布をより均一にする観点から、帯状の光束の断面長手方向においては或る程度の出射角をもって放射状に光が出射されるようにしてもよい。
出射光の指向性が強められていることにより、紫外発光ダイオード101から出射された紫外線は紫外発光ダイオード101の光軸19方向に直進する。したがって基板102の紫外発光ダイオード搭載面をミラー14の反射面に向けることにより、強度の高い紫外線をミラー14の反射面に入射させることができるので、被殺菌体全体により強度の高い紫外線を照射できる。出射光の指向性が強められた紫外線を出射することにより、殺菌に要する時間を短縮することができるので、効率よく殺菌を行うことができる。
【0037】
光源100がパッケージ化またはモジュール化された例として、以下に
図3〜5を参照して説明する光源100’(集光モジュール化光源)を採用することも可能である。光源100’は、深紫外線を出射する棒状光源と、該光源から出射された深紫外線を集光する集光装置とを有し、該棒状光源は、円筒状または多角柱状の基体111と、複数の深紫外発光ダイオード112、112、…とを有する棒状光源110であって、該複数の深紫外発光ダイオード112、112、…が、各深紫外発光ダイオード112の光軸115が基体111の中心軸114を通るように基体111の側面に配置されていることにより、該中心軸114に対して放射状に深紫外線を出射する形態の深紫外光照射手段である。このような紫外光照射装置は、特許第5591305号公報(特許文献3)に記載されており、その内容はここに参照をもって組み入れられる。
【0038】
図3には、棒状光源(棒状紫外線発光モジュール)110の(X−X´面で切断したときの)横断面図および縦断面図を示している。
図3に示されるように、棒状光源110は円筒状基体111の表面上に複数の深紫外発光ダイオード112、112、…(以下において「深紫外LED112」と略記することがある。)が整列配置されており、該円筒状基体の内部には冷却媒体用流路113が形成されている。また、深紫外LED112が搭載された円筒状基体111は、石英などの紫外線透過性材料から形成されるカバー116で覆われている。該カバー116は封止剤やパッキン、O−リング等のシール部材117を用いて気密又は水密に円筒状基体111に装着され、その内部には深紫外LED112の耐久性を高めるために不活性ガスまたは乾燥空気が封入されている。
【0039】
深紫外LED112、112、…は、素子がサブマウントに搭載された状態またはパッケージに収容された状態で配置され、一定方向に向かって紫外線を出射する。なお、図示しないが、サブマウント又はパッケージには、モジュールの外部から深紫外LED112に電力を供給するための配線や深紫外LED112を正常に作動させるための回路等が形成されており、該配線や回路への電力の供給は円筒状基体111の表面又は内部に形成された配線を介して行われる。
【0040】
円筒状基体111は、深紫外LED112を固定および保持するための支持体として機能するほか、ヒートシンクとしての機能も有し、内部の冷却媒体用流路113に冷却水や冷却用エアーなどの冷却媒体118を流通することにより深紫外LED112が発する熱による温度上昇を防止して、素子の安定作動を助け、素子寿命を延ばすことが可能となる。携帯用の本発明の紫外線殺菌装置に用いる場合には、小型ファンを付設し冷却媒体118として冷却用空気を冷却媒体流路113に送風することが好ましい。
【0041】
深紫外LED112で発生した熱を効率よく除去するため、円筒状基体111は、主として銅、アルミニウムなどの熱導電性の高い金属やセラミックスなどで構成されていることが好ましく、また、冷却媒体118の熱交換面積を増大させるために冷却媒体用流路113の内壁面には溝加工を施すことが好ましい。さらに、円筒状基体111を金属材料で構成する場合には、筺体の内部もしくは外部に配置されたバッテリー又は外部電源から深紫外LED112に電力を供給するための銅線または回路との絶縁を図るための絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0042】
円筒状基体111の側面には、その周方向に沿って、複数の深紫外LED112、112、…が、各深紫外LED112の光軸115が該基体111の中心軸114を通るように配置されている。その結果、深紫外LED112から出射される深紫外線は、該中心軸114に対して放射状に出射されることになる。なお、深紫外LED112の光軸115とは、深紫外LED112から出射される光芒の中心軸を意味し、該光芒の進行方向とほぼ同義である。また、ここで、「光軸115が該基体111の中心軸114を通るように配置する」とは、なるべくこのような状態を実現するように配置するという意味であり、その状態から僅かに傾いていても問題はない。
【0043】
図3には、基体111の周方向に4個の深紫外LEDを配置した例を示しているが、当該形態に限定されるものではなく、深紫外LED112の配置数は円筒状基体111の外径に応じて適宜変更できる。周方向に配置する深紫外LED112の数は、通常3〜20個、好ましくは4〜12個の範囲であるが、周方向に配置する深紫外LED112の数が多いほど光源100’から出射される深紫外線の強度(光量子束密度)は高くなるので、より高強度の深紫外光が必要な場合には、円筒状基体111の径を大きくし、周方向に配置する紫外線発光素子の数を、上記範囲を超えて多くすることができる。
【0044】
深紫外LED112、112、…は、
図3の縦断面図に示すように円筒状基体111の長手方向に列を形成するように配置することが好ましい。このとき、深紫外LED112、112、…は、深紫外光照射領域における強度が均一になるように、円筒状基体111側面に密に規則正しく配列するように配置することが好ましい。
【0045】
図4及び
図5には、棒状光源110を有する光源100’の横断面図及び側面図を示した。光源100’は、内面が長楕円反射ミラーからなる出射側反射ミラー120となっている出射側筐体125と、内面が長楕円反射ミラーからなる集光側反射ミラー123となっていると共に深紫外光出射用開口部130が形成されている集光側筐体126と、深紫外光出射用開口部130に配置されたコリメート光学系140からなる本体150を有し、該本体150の内部に棒状光源110が配置されている。本体150において出射側筐体125と集光側筐体筐体126とは互いに着脱可能に又はヒンジ等を用いて開閉可能とされていることが好ましい。また、本体150の
図4及び
図5における上下両端開口部には、紫外線が外部に漏れ出ることを防止するためのカバー(不図示)が設けられている。
【0046】
図4及び
図5に示す態様では、出射側反射ミラー120と集光側反射ミラー123とは実質的に同形状の長楕円反射ミラーであるので、本体150において、出射側筐体125と集光側筐体126とが結合されて形成される内部空間の形状は、出射側反射ミラーの焦点軸121及び出射側反射ミラーの集光軸122の2軸をそれぞれ焦点軸とする楕円形の断面(ただし、開口部130に相当する部分が欠損している。)を有する柱状体となる。出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123の表面は、深紫外光に対する反射率が大きい材質、たとえばRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族金属、Al、Ag、Ti、これらの金属の少なくとも一種を含む合金、又は酸化マグネシウムで構成されることが好ましく、反射率が特に高いという理由から、Al、白金族金属又は白金族金属を含む合金、又は酸化マグネシウムで形成されていることが特に好ましい。
【0047】
集光側反射ミラー123及び集光側筐体126には、スリット状に深紫外光出射用開口部130が設けられ、該開口部130には、集光された紫外線を平行若しくは略平行な光束に変換するコリメート光学系140が配置されている。コリメート光学系140は合成又は天然石英、サファイア、紫外線透過性樹脂等の紫外線透過性の高い材質で構成されることが好ましい。該コリメート光学系140は深紫外線出射用開口部130に脱着可能に取り付けられていることが好ましい。
【0048】
光源100’において、棒状光源110は、その中心軸114が出射側反射ミラーの焦点軸121と一致するように配置される。このような位置に棒状光源110が配置されるので、該棒状光源110から放射状に出射される深紫外光は出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123で反射されて集光側反射ミラーの焦点軸124(すなわち出射側反射ミラーの集光軸122)上に収斂するように集光され、集光された深紫外光は紫外線出射窓13からミラー14に向けて出射される。
【0049】
このように、光源100’では、原理的には、棒状光源110から放射状に出射される深紫外光の全てを集光側反射ミラー123の焦点軸124上に集光でき、深紫外光出射用開口部130方向に向かわない方向(たとえば反対方向や横方法)に出射された紫外線をも有効に利用することができる。すなわち、棒状光源110において、光軸115が深紫外光出射用開口部130方向に向かうように深紫外LED112、112、…の全てを同一平面上に配置する必要はなく、横方向や反対方向に向けて配置することも可能となる。したがって、棒状光源110では、単位空間当たりに配置する紫外線発光素子の数を大幅に増やすことができ、光源100’では、より強い強度の紫外線を出射することができる。また、光源100’では大口径のフィールドレンズを使用する必要もない。更に光源100’では、照射領域は狭いスポット状ではなく長辺が長い長方形領域に均一な強度の紫外線を照射することができるので、被殺菌体の表面を深紫外光により均一に殺菌することが可能である。さらにまた、深紫外光をコリメートされた平行な光束として出射することができるので、光源100’から被殺菌体表面までの光路長が長い場合であっても、深紫外光の強度が低下しにくい。
【0050】
本発明に関する上記説明では、円柱を縦割りし、その断面が反射面となるような形状を有するミラー14を有し、駆動装置が該ミラーを揺動させる(ミラー14の角度を変更する)構造の紫外線殺菌装置10を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。ミラーによって反射された紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらす手段は上記の構造に限定されるものではない。
たとえば、両面が反射面である板状のミラーを駆動装置(例えば電動モーターなど。)により回転させる形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。更には、両面が反射面である板状のミラーを駆動装置により回転させると同時に、帯状の光束の幅方向に交差する方向にミラーの回転軸がスライド移動するようにミラーを移動させる構造の紫外線殺菌装置としてもよい。
板状ミラーを(好ましくは高速で)回転させながらスライド移動させることにより、走査手段において、光源からの紫外線の紫外線透過窓への入射位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら筐体内部から光源からの紫外線を照射するに際し、紫外線透過窓の内側面に対する紫外線の入射角度を変化させ、被殺菌体における任意の紫外線照射領域において異なる2以上の入射角で紫外線を照射することが可能となる。そして、このような態様とした場合には、被殺菌体の下方(紫外線透過窓側)から様々な角度で紫外線を照射させながら被殺菌体の表面を走査することができるので、表面に凹凸を有する被殺菌体についてより確実な殺菌を行うことが可能となる。かかる態様においては、板状ミラーの位置に関わらず常に帯状の光束がミラーに当たるように光源を配置するか、又は、板状ミラーの位置に関わらず常に帯状の光束がミラーに当たるように、光源が帯状の光束を出射する角度をミラーのスライド移動に同期して変化させることが好ましい。
【0051】
本発明に関する上記説明では、箱型の筐体11を有する形態の紫外線殺菌装置10を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。筐体の形状は、特に限定されず、例えば箱型であってもよく、また例えば円柱型であってもよい。また、特開2007−124124号公報(特許文献4)に開示されているような、形状記憶合金製の内部フレームが挿入された可撓性材料によって構成された筐体であって、記憶形状が復元された前記内部フレームの外形に沿う形状の筐体構造を有していてもよい。また、筺体の内部に仕切りを設けることにより、筐体内部の空間を分割することも可能である。例えば筺体の上面の一部が長方形に切り取られて開口部を形成するような場合においては、升状の箱体であってその開口部が、上記筺体の開口部と一致するような箱体を筺体内部に設け、該箱体内部にミラーや紫外線透過窓を配置してもよい。
【0052】
本発明に関する上記説明では、光源から出射された紫外線の外部への漏洩を防止するための紫外線不透過性カバーを有しない形態の紫外線照射装置10を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、光源から出射された紫外線の外部への漏洩を防止するための紫外線不透過性カバー(以下において単に「カバー」ということがある。)を更に有し、紫外線透過性窓の外側面と紫外線不透過性カバーとの間の空間に被殺菌体が配置される形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。紫外線不透過性カバーは可撓性又は可視光透過性を有することが好ましく、特に可撓性及び可視光透過性を有することが好ましい。
カバーの態様は特に限定されず、(1)開閉可能な幌構造を有するカバー、(2)シート状またはドーム状のカバー、(3)筐体の開口部の外側を囲繞するクッション性の又は高さ方向に伸縮自在な周壁部と、その上方開口部を覆うシート状またはドーム状の天蓋とを有する構造のカバーなどが採用できる。なお、上記(3)の構造を有するカバーにおいて、周壁部を高さ方向に伸縮自在とするためには、例えば周壁部を蛇腹構造とすればよい。
これらカバーは、その一部を筐体に固定して開閉自在にすることにより、またはカバー自体に開閉自在な被殺菌体出し入れ口を設けることにより、紫外線透過性窓の外側面とカバーとの間の空間に被殺菌体を容易に配置することができる。
カバーを筐体に固定する方法としては、上記(1)の開閉可能な幌構造のカバーについては、例えばカバーの端部に固定用フレームを設けて該フレームを(例えばネジ止め等により)筐体に固定する方法などを採用できる。上記(2)のシート状またはドーム状のカバーについては、例えば、カバーの一部をヒンジ等で筐体に開閉自在に固定する方法などを採用できる。上記(3)の構造を有するカバーについては、周壁部の一方の端部を(例えばネジ止めなどにより)筐体に固定し、更に該天蓋の一部を周壁部の他方の端部にヒンジ等で開閉自在に固定する方法などが採用できる。
【0053】
図6は、本発明の他の一の実施形態に係る紫外線殺菌装置1010を模式的に説明する図である。
図6(A)は紫外線殺菌装置1010の平面図であり、
図6(B)は
図6(A)のA−A断面図である。
図6(A)及び
図6(B)において、
図1〜5に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜5における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。紫外線殺菌装置1010は、第二の殺菌ユニットを一つ有する形態の紫外線殺菌装置である。
【0054】
紫外線殺菌装置1010は、開口部を有する筐体10と、内側面12aおよび内側面12aとは反対側の外側面12bを有し、筐体10の開口部を塞ぐように内側面12aを筐体10の内部に向けて配置された紫外線透過窓12と、紫外線を帯状の光束として出射する光源100と、光源100からの紫外線が紫外線透過窓12に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源100からの紫外線を照射することによって、筐体10内部から紫外線透過窓12の内側面12の全面にわたって光源100からの紫外線を照射することができる走査手段と、を有する紫外線殺菌ユニットを含んでなり、紫外線透過窓12の外側面12bに対向して配置された被殺菌体に紫外線を照射して殺菌を行う。紫外線殺菌装置1010は、上記説明した紫外線不透過性カバーをさらに有していてもよい。
【0055】
紫外線殺菌装置1010において、光源100は、帯状の光束を紫外線透過窓12に向けて出射するように筐体10内に配置されており、走査手段は、光源100をスライド移動させる移動手段1015を有する。移動手段1015は、電動モーター1015aと、一組のガイドレール1015b、1015b(以下において単に「ガイドレール1015b」ということがある。)とを有している。光源100はガイドレール1015bに保持されており、電動モーター1015aに駆動されてガイドレール1015b上を
図6(A)の矢印Bの方向に往復移動(スライド移動)する。電動モーター1015aの回転駆動力をガイドレール1015bに沿った直線運動の駆動力に変換する機構としては、ラック・アンド・ピニオン機構、クランク機構、カム機構、ベルト機構等の公知の回転運動−直線運動変換機構を特に制限なく採用することができる。
【0056】
本発明に関する上記説明では、列をなして配置された紫外発光ダイオード101、101、…から直接に紫外線透過窓12に向けて帯状の光束を照射する形態の光源100を有する紫外線殺菌装置1010を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、光源100に代えて、紫外発光ダイオードとミラーとを組み合わせたユニット型光源をガイドレールに沿ってスライド移動させる形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
図7は、そのような他の一形態に係る光源1100を模式的に説明する図である。
図7(A)は光源1100の平面図であり、
図7(B)は
図7(A)のC−C断面図である。
光源1100は、基板102と、基板102上に配列された紫外発光ダイオード101、101、…と、紫外発光ダイオード101、101、…から発せられた光を拡散する導光体1111と、導光体1111から出射された紫外光が入射する位置に配置されたミラー1114と、基板102、紫外発光ダイオード101、101、…、導光体1111、及びミラー1114を収容して所定の位置関係に保持するトレイ1110とを有する。トレイ1110はガイドレール1015b(
図6参照。)に取り付けられており、電動モーター1015aに駆動されてガイドレール1015bに沿ってスライド移動する。紫外発光ダイオード101、101、…から発せられた帯状の光束は、導光体1111によって拡散された後、ミラー1114により
図7(B)の矢印群Dのように反射され、帯状の光束の厚さ方向に広がりながら紫外線透過窓12に入射する。
このように紫外発光ダイオードとミラーとを組み合わせたユニット型光源1100によれば、帯状の光束が紫外線透過窓12に入射する角度を自由に設定することが可能である。また、
図7(B)の矢印群Dのように帯状の光束が厚さ方向に広がりながら紫外線透過窓12に入射するので、光源1100がガイドレール1015bに沿ってスライド移動することにより、被殺菌体のどの照射部位についても異なる2以上の角度から紫外線が照射されることになる。すなわち、「紫外線透過窓の内側面に対する紫外線の入射角度を変化させることにより、被殺菌体における任意の紫外線照射領域に対して異なる2以上の入射角で紫外線を照射すること」を、コンパクトな装置構成で実現することが可能である。
【0057】
また例えば、光源100や光源1100に代えて、紫外発光ダイオードと回転するミラーとを組み合わせたユニット型光源をガイドレールに沿ってスライド移動させる形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
図8は、そのような他の一形態に係る光源1200を模式的に説明する図である。
図8(A)は光源1200の平面図であり、
図8(B)は
図8(A)のE−E矢視図である。
光源1200は、トレイ1210と、基板102と、基板102上に配列された紫外発光ダイオード101、101、…と、紫外発光ダイオード101、101、…から発せられた紫外光が入射する位置に配置された、両面に反射面を有する板状のミラー1214と、ミラー1214の両端部に設けられたシャフト1215a、1215bと、シャフト1215aに貫通されてシャフト1215aに固定された従動プーリー1216と、電動モーター1217と、電動モーター1217により回転される駆動プーリー1218と、駆動プーリー1218及び従動プーリー1216に巻き掛けられ、駆動プーリー1218の回転を従動プーリー1216に伝えるベルト1219とを有している。シャフト1215a、1215bはトレイ1210の側壁に設けられた軸受(不図示)に回転可能に保持されている。トレイ1210は上記の部材を収容して所定の位置関係に保持している。電動モーター1217の回転力は駆動プーリー1218、ベルト1219、及び従動プーリー1216を介してミラー1214の端部に設けられたシャフト1215aに伝達され、ミラー1214を
図8(B)の矢印Fの向きに回転させる。紫外発光ダイオード101、101、…から発せられた帯状の光束は、両面に反射面を有する板状のミラー1214により反射されて紫外線透過窓12に入射する。このときミラー1214は電動モーター1217に駆動されて回転しているので、ミラー1214の角度は常に変化しており、したがってミラー1214に反射された帯状の光束が紫外線透過窓12に入射する角度は常に変化する。同時に、トレイ1210はガイドレール1015b(
図6参照。)に取り付けられており、電動モーター1015aに駆動されてガイドレール1015bに沿ってスライド移動する。
このような光源1210を有する形態の紫外線殺菌装置によっても、光源1210からの紫外線が紫外線透過窓12に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源1210からの紫外線を筐体10の内部から照射するに際し、紫外線透過窓12の内側面12aに対する紫外線の入射角度を変化させることにより、被殺菌体における任意の紫外線照射領域に対して異なる2以上の入射角で紫外線を照射することが可能となる。
【0058】
本発明に関する上記説明では、一組のガイドレール1015b、1015bによって定められる平面に沿って光源100(又は光源1100/1200)をスライド移動させる形態の紫外線殺菌装置1010を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、曲面に沿って光源をスライド移動させる形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
図9は、そのような他の一の実施形態に係る紫外線殺菌装置2010を模式的に説明する図である。
図9(A)は紫外線殺菌装置2010の平面図であり、
図9(B)は
図9(A)のG−G断面図である。なお
図9(B)には光源100が取り得る姿勢を複数記載しているが、これは紫外線殺菌装置2010が複数の光源100を有することを意味するものではない。
紫外線殺菌装置2010は、第三の殺菌ユニット一つを有する形態の紫外線殺菌装置である。該紫外線殺菌装置2010において、光源100は、円柱面、楕円柱面または放物線柱面からなる、被殺菌体側(紫外線窓2012の側)から見て凹状に湾曲した曲面に沿って、
図9(A)の矢印Hの方向にスライド移動する。紫外線殺菌装置2010は、一対の直線状のガイドレール1015b、1015bに代えて、一対の湾曲したガイドレール2015b、2015b(以下において単に「ガイドレール2015b」ということがある。)を有する点、および、平板状の紫外線透過窓12に代えて、筐体10の内部に向けて突出するように湾曲した曲面板状の紫外線透過窓2012を有する点において、紫外線殺菌装置1010と異なっている。一対の湾曲したガイドレール2015b、2015bは、円柱面、楕円柱面または放物線柱面からなる、被殺菌体側(紫外線窓2012の側)から見て凹状に湾曲した曲面を規定しており、光源100はガイドレール2015bに規定される曲面に沿って電動モーター1015aの駆動力によりスライド移動する。紫外線殺菌装置2010によれば、
図9(B)の矢印群Iに示すように、照射位置によって紫外線の帯状の光束が紫外線透過窓2012bに入射する角度を変化させることが可能である。
なお、上記ガイドレール2015bのように湾曲したガイドレールにより規定される曲面に沿って光源をスライド移動させる形態の紫外線殺菌装置であっても、上記例示した紫外線透過窓12のように平板状の紫外線透過窓を有する形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
【0059】
本発明に関する上記説明では、一つの紫外線殺菌ユニットからなる紫外線殺菌装置10、1010、2010を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。紫外線殺菌ユニットを2以上有し、各殺菌ユニットが屈曲可能な連結部材で連結されてなる形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
図10は、そのような他の一の実施形態に係る紫外線殺菌装置3000を模式的に説明する側面図である。
図10において、
図1〜9に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜9における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。紫外線殺菌装置3000は、第一の紫外線殺菌ユニット10を2つ連結した、連結タイプの紫外線殺菌装置である。紫外線殺菌装置3000は、一組の紫外線殺菌ユニット10、10と、該一組の紫外線殺菌ユニット10、10を相互に連結する連結部材3020とを有している。連結部材3020は、連結棒3021a、3021b、3021cと、ヒンジ3022a、3022b、3022c、3022dとを有している。ヒンジ3022a〜3022dは、連結された2つの物体がなす角度を調整可能であって、かつ、調整された角度を保持することが可能なヒンジである。連結棒3021aの一方の端部は、一方の紫外線殺菌ユニット10に設けられた貫通孔からなるポート(不図示)にヒンジ3022aを介して着脱可能に連結されている。連結棒3021aの他方の端部はヒンジ3022bを介して連結棒3021bの一方の端部に連結されている。連結棒3021bの他方の端部はヒンジ3022cを介して連結棒3021cの一方の端部に連結されている。連結棒3021cの他方の端部は、他方の紫外線殺菌ユニット10に設けられた貫通孔からなるポート(不図示)にヒンジ3022dを介して着脱可能に固定されている。紫外線殺菌装置3000において、一組の紫外線殺菌ユニット10、10は、連結部材3020によって相互に連結されることにより、その紫外線透過窓12、12の外側面12b、12bが所定の距離を隔てて向かい合った位置関係を維持することが可能とされている。
このような紫外線殺菌装置3000によれば、一方の紫外線殺菌ユニット10の紫外線透過窓12の外側面12b上に被殺菌体1を載置し、且つ、紫外線透過窓12、12の外側面12b、12bが所定の距離を隔てて向かい合うように連結部材3020のヒンジ3022a〜3022dの角度を調整した後に、一組の紫外線殺菌ユニット10、10の両方から紫外線を照射することにより、被殺菌体1の上下両方から同時に紫外線を照射して殺菌を行うことが可能である。よって紫外線殺菌装置3000によれば、被殺菌体1の全体に対して紫外線照射による殺菌を素早く行うことが可能である。
【0060】
本発明に関する上記説明では、殺菌ユニット10、10に設けられたポートに連結部材3020が着脱可能に固定される形態の紫外線殺菌装置3000を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。連結部材が着脱できない態様で各殺菌ユニットに固定された形態の紫外線殺菌装置とすることも可能である。
【0061】
本発明に関する上記説明では、紫外線不透過性カバーを有しない形態の紫外線殺菌装置3000を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。光源から出射された紫外線の外部への漏洩を防止するための紫外線不透過性カバーを更に有する形態の、連結タイプの紫外線殺菌装置とすることも可能である。連結タイプの紫外線殺菌装置3000においては、例えば、
図11に示すように、一方又は両方の紫外線殺菌ユニット10の筐体側面に板状の紫外線不透過性カバー3030(以下において単に「板状カバー3030」ということがある。)を設けることも可能である。
図11において、
図1〜10に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜10における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。なお
図11においては他方の紫外線殺菌ユニット10および連結部材3020は省略している。板状カバー3030は、
図11の矢印Jに示すように、紫外線殺菌ユニット10の筐体側面に沿って位置を調整することが可能に設けられ、紫外線照射を行わないときには筐体側部に収容することが可能であることが好ましい。このような板状カバー3030の取り付け方としては、例えば紫外線殺菌ユニット10の筐体側面に設けられたレールに取り付ける態様を挙げることができる。また例えば、
図12に示すように、一組の紫外線殺菌ユニット10、10のうち一方の(上側に配置される)紫外線殺菌ユニット10の筐体側部から、他方の(下側に配置される)紫外線殺菌ユニット10の筐体側面に向けて垂れ下がるカーテン型(またはシート状)の紫外線不透過性カバー3040(以下において単に「カーテン型カバー3040」ということがある。)を設けることも可能である。
図12において、
図1〜11に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜11における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。なお
図12においては連結部材3020は省略している。カーテン型カバー3040の一方の端部は、一組の紫外線殺菌ユニット10、10のうち一方の紫外線殺菌ユニット10の筐体側部に固定されており、カーテン型カバー3040の他方の端部は固定されていない。なおカーテン型カバー3040は、紫外線照射を行わないときには、当該カーテン型カバー3040の一方の端部が固定されている紫外線殺菌ユニットの筐体側部に巻き上げて収容することが可能であることが好ましい。そのような機構としては、ロールカーテン等に用いられる公知の巻き上げ機構を特に制限なく採用することができる。
【0062】
本発明に関する上記説明では、第一の紫外線殺菌ユニット10が2つ連結された形態の連結タイプの紫外線殺菌装置3000を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、上記説明した第二の紫外線殺菌ユニット1010や、第三の紫外線殺菌ユニット2010が2つ以上連結された形態の連結タイプの紫外線殺菌装置とすることも可能である。また本発明に関する上記説明では、連結棒3021a〜3021c及びヒンジ3022a〜3022dを有してなる連結部材3020を有する形態の連結タイプの紫外線殺菌装置3000を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、一組の紫外線殺菌ユニットが弾性体で連結された形態の連結タイプの紫外線殺菌装置とすることも可能である。
図13は、そのような他の一の実施形態に係る紫外線殺菌装置4000を模式的に説明する側面図である。
図13において、
図1〜12に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜12における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。紫外線殺菌装置4000は、上記説明した第三の紫外線殺菌ユニット2010を2つ連結した連結タイプの殺菌装置である。紫外線殺菌装置4000は、一組の紫外線殺菌ユニット2010、2010と、該一組の紫外線殺菌ユニット2010、2010を相互に連結する連結部材4020とを有している。連結部材4020は弾性体とストッパーとを有しており、弾性体の屈曲を所定の程度で固定することが可能とされている。連結部材4020の弾性体の一方の端部は一方の紫外線殺菌ユニット2010の筐体に固定されており、連結部材4020の弾性体の他方の端部は他方の死体線殺菌ユニット2010の筐体に固定されている。一組の紫外線殺菌ユニット2010、2010は、連結部材4020によって相互に連結されることにより、その紫外線透過窓2012、2012の外側面2012b、2012bが所定の距離を隔てて向かい合った位置関係を維持することが可能とされている。
このような紫外線殺菌装置4000によれば、一方の紫外線殺菌ユニット2010の紫外線透過窓2012の外側面2012b上に被殺菌体1を載置し、且つ、紫外線透過窓2012、2012の外側面2012b、2012bが所定の距離を隔てて向かい合うように連結部材4020の弾性体の屈曲を調整してストッパーで固定した後に、一組の紫外線殺菌ユニット2010、2010の両方から紫外線を照射することにより、被殺菌体1の上下両方から同時に紫外線を照射して殺菌を行うことが可能である。よってこのような紫外線殺菌装置4000によっても、被殺菌体1の全体に対して紫外線照射による殺菌を素早く行うことが可能である。
【課題】 紫外線光源としてDUV−LEDを用いた紫外線殺菌装置であって、携帯用としても使用可能であり、更に物の殺菌の操作性を向上させることが可能な、紫外線殺菌装置を提供する。
【解決手段】 開口部を有する筐体と、内側面および該内側面と反対側の外側面を有し、筐体の開口部を塞ぐように内側面を筐体の内部に向けて配置された、紫外線を透過する紫外線透過窓と、一つ以上の紫外発光ダイオードを有し紫外線を帯状の光束として出射する光源と、光源からの紫外線が紫外線透過窓に入射する位置を帯状の光束の幅方向に交差する方向にずらしながら光源からの紫外線を照射することによって筐体の内部から紫外線透過窓の内側面の全面にわたって光源からの紫外線を照射することができる走査手段とを有する紫外線殺菌ユニットを含み、紫外線透過窓の外側面に対向して配置された被殺菌体に紫外線を照射して殺菌を行う、紫外線殺菌装置。