(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貼付工程の直前における、前記非金属基板の前記一方の主面に塗布された前記接着剤の表面は、表面粗さ指標の最大高さRmaxが200μm以下である請求項1に記載のラミネート方法。
前記貼付工程の直前における、前記非金属基板の前記一方の主面に塗布された前記接着剤の平均厚さが50μm〜300μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のラミネート方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るラミネート方法を添付の図面に示す実施形態に基づいて以下詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明のラミネート方法の実施形態の一例を示すフローチャートであり、
図2は、
図1に示す製造方法で作製される積層体を概念的に示す断面図であり、
図3は、
図1に示す製造方法を実施するラミネート装置の一例を概念的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、本発明のラミネート方法は、所定の搬送経路で搬送される基板16上に接着剤を塗布する塗布工程S200、接着剤が塗布された基板16と所定の搬送経路で搬送される支持体14とを挟み込んで押圧(ニップ)し貼り合せる第1ニップ工程S202、張り合わされた基板16と支持体14とをさらに挟んで押圧する第2ニップ工程S204および第3ニップ工程S206、ならびに、接着剤を硬化させる硬化工程S208を順次行うものである。
【0027】
また、本発明の製造方法で得られる積層体は、
図2に示すように、表面に凹凸を有する基板16と、基板16上に積層される接着剤層18と、接着剤層18上に積層される支持体14からなり、基板16表面の凹凸を接着剤層18で包埋し、平滑な面を有するものである。積層体10については、後に詳述する。
【0028】
また、
図3に示すように、ラミネート装置20は、基板16を搬送する基板搬送部22と、塗布工程S200を行う接着剤塗布部24と、支持体14を搬送する支持体搬送部26と、第1ニップ工程S202を行う第1ニップ部40、第2ニップ工程S204を行う第2ニップ部42および第3ニップ工程S206を行う第3ニップ部44を有するニップ部28と、硬化工程S208を行う光照射部30とを有する。
【0029】
ここで、本発明に用いられる基板16は、非金属の基板であれば特に限定はないが、ゴムシートまたは樹脂シートからなる基板であることが好ましい。本発明は、膜厚バラツキのある基板に対してより効果的であるので、膜厚がばらつきやすいゴムシートを基板として用いる場合により好適である。
【0030】
なお、本発明に用いられるゴムシートとしては特に限定はなく、種々の公知の方法で製造されたゴムシートを利用することができる。すなわち、ゴムシートは、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押出成形、遠心成形など公知の方法で製造することができる。具体的には、日本ゴム協会誌vol.68(1995)p76〜85、p108〜118、vol.69(1996)p375〜383に記載されている。また、材料については、「ゴム・プラスチック配合薬品 改訂第二版」(株式会社ラバーダイジェスト社)に記載の材料を使用することができる。
【0031】
なお、本発明は、膜厚が厚く、表面の凹凸が大きくなるゴムシート、例えば、印刷版の原版として用いるゴムシートに対してより好適に利用することができる。あるいは、精密印刷用ブランケット、OA機器用の中間転写体などに好適に利用することができる。
また、基板16として、キャスティングコンベア上に塗設して成形する製造方法で製造される基板が好適に利用可能である。このような製造方法で製造される基板は、コンベアとの接触面は平滑に形成されるものの、上面は流延ムラや乾燥風の影響で大きな凹凸ができてしまう。本発明は、大きな凹凸であっても好適に包埋できるため、このようなゴムシートに、より好適に適用できる。
【0032】
また、本発明は、厚さが、400μm〜6000μmの範囲の基板16に好適に適用できる。
また、本発明は、弾性率が、0.5N/mm
2〜5.0N/mm
2であるゴムシートにより好適に適用できる。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0033】
また、本発明に用いられる樹脂シートも、特に限定はなく、例えば、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、PETフィルム、PPフィルム等を挙げることができる。また、基板16として、種々の公知の方法で製造された樹脂シートを利用することができる。例えば、樹脂シートは、特許文献3〜5に記載された公知の方法で製造することができる。
また、基板16は、1層からなるものに限定はされず、複数の膜を積層したシートであってもよい。
【0034】
以下、ラミネート装置20の各部を説明することにより、本発明のラミネート方法を説明する。
【0035】
基板搬送部22は、基板ロール34から巻き出した長尺な基板16を、所定の搬送経路で基板16の長手方向に搬送するものである。
基板搬送部22は、基板ロール34を装着する回転軸32と、基板16を所定の搬送経路で案内する複数のガイドローラとを有する。
【0036】
基板ロール34が、回転軸32に装着されると、基板16は、複数のガイドローラに案内され、接着剤塗布部24、ニップ部28、光照射部30を順次通過する所定の経路を通される(挿通される)。基板16は、駆動用ローラ(図示せず)等の搬送手段によって所定の経路を搬送される。
【0037】
ここで、
図3に示すように、ラミネート装置20において、基板16の搬送経路上に、上流側から接着剤塗布部24、ニップ部28、光照射部30が順に配置される。
【0038】
ラミネート装置20においては、基板ロール34から基板16を送り出し、長尺な基板16を所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、基板16の搬送経路上に配置された各部によって、基板16に支持体をラミネートする。
なお、基板16は、駆動用ローラ等の搬送手段によって、速度制御され、一定速度で搬送されることが好ましい。
【0039】
(塗布工程S200)
接着剤塗布部24は、塗布工程S200を行う部位である。具体的には、接着剤塗布部24は、基板16の主面(支持体14側の面)に所定の厚さの接着剤を塗布する。
ここで、接着剤塗布部24は、グラビア塗布方式で接着剤を塗布することが好ましい。グラビア塗布方式で接着剤を塗布することにより、接着剤をより均一に、すなわち、接着剤の表面が平滑になるように塗布することができる。特に、基板16の幅方向において、接着剤を均一に塗布することができる。
【0040】
グラビア塗布方式を行う塗工機としては、例えば、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、グラビアロールを用いたキッスコーター、複数本のロールで構成されるリバースロールコーターなどが挙げられる。その他にも、円筒状のブレードを有し、塗布部に接着剤を供給してブレードで掻き落としつつ塗布するコンマコーター、スロットダイなどを応用して直接接着剤を供給するダイコーター、液溜めを作って、ナイフで余分な液を掻き落としつつ塗布するナイフコーターなど、種々の塗工機のうち支持体の種類、塗布量、塗布速度等の条件を勘案し塗布手段を決定すればよい。
【0041】
また、使用する接着剤には特に限定はなく、光硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、嫌気性接着剤等が例示される。これらの中でも、硬化反応の制御の容易性から、光硬化性接着剤であることが好ましく、光硬化型接着剤としては、紫外線硬化型接着剤が好ましい。
接着剤としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
【0042】
図4は、基板16の主面に接着剤を塗布し、支持体14を貼り付ける前の状態の積層体を概念的に示す断面図である。
支持体14を貼り付ける前の積層体において、基板16に塗布された接着剤層18の表面は、表面粗さ指標の最大高さRmaxが200μm以下であることが好ましい。接着剤層18の表面の最大高さRmaxを200μm以下とすることにより、後述するニップ部28で支持体14を貼り付けた際に、表面を平滑化でき、膜厚精度を向上することができる。
ここで、本願において、最大高さRmaxとは、JIS B0601:2001にて、規定される最大高さRzである。なお、本実施例においては、基板16の他方の主面(接着剤層18とは反対側の面)は、実質的に平滑であると考えて、Rmax=(接着剤層18と基板16との積層体の最大膜厚)−(接着剤層18と基板16との積層体の最小膜厚)と定義する。
具体的には、レーザー変位計や超音波変位計等の非接触式変位計で前述の(最大膜厚)−(最小膜厚)を測定してRmaxを求める。
【0043】
また、接着剤の粘度は、0.001Pa・s〜100Pa・sであることが好ましく、より好ましくは0.01Pa・s〜10Pa・sであり、更に好ましくは0.05Pa・s〜5Pa・sである。接着剤の粘度を上記範囲とすることにより、接着剤を付与した際に液だれが抑制され、また、基板16に接着剤を塗布した際に表面がならされ、接着剤層18の表面の最大高さRmaxを200μm以下とすることができる。さらに、接着剤の粘度を上記範囲とすることにより、後述するニップ部28でニップを行った際に表面を平滑化でき、膜厚精度を向上することができる。
ここで、本願において、粘度は、毛細管粘度計、落下球粘度計、回転粘度計、振動粘度計、平行平板粘度計、気泡粘度計等公知の粘度計で測定する。
【0044】
接着剤として、光硬化性接着剤を使用する場合は、接着剤は、室温(25℃)において液状であっても固体状であってもよい。室温で液状である場合には、25℃における粘度が上記範囲となることが好ましい。
【0045】
また、接着剤が、室温において固体状である場合には、光硬化性接着剤が軟化する温度まで加熱することが好ましい。すなわち、粘度が上記範囲となる温度まで加熱することが好ましい。
また、接着剤を溶剤に溶解させたものを使用して塗布後、溶剤を乾燥除去させてもよい。あるいは、無溶剤型のホットメルト光硬化性接着剤を加熱した状態で塗布してもよい。
【0046】
また、支持体14を貼り付ける前の、基板16に塗布された接着剤層18の厚さは、基板16の厚さや基板16表面の凹凸の大きさ、積層体10に求められる膜厚精度等に応じて適宜決定すればよいが、50μm〜300μmであることが好ましい。
接着剤層18の厚さを50μm以上とすることにより、より好適に、接着剤のロスを抑制しながら接着強度を確保しつつ、基板16主面の凹凸を包埋し、表面を平滑にすることができる。また、接着剤層18の厚さを300μm以下とすることにより、接着剤硬化時の硬化収縮に起因する歪を抑えつつ、表面を平滑にすることができる。
接着剤が塗布された基板16は、ニップ部28の第1ニップ部に供給される。
【0047】
支持体搬送部26は、支持体ロール38から巻き出した長尺な支持体14を、所定の搬送経路で支持体14の長手方向に搬送するものである。
支持体搬送部26は、支持体ロール38を装着する回転軸36と、支持体14を所定の搬送経路で案内する複数のガイドローラとを有する。
【0048】
支持体ロール38が、回転軸36に装着されると、支持体14は、複数のガイドローラに案内され、ニップ部28を通過する所定の経路を通される。支持体14は、駆動用ローラ(図示せず)等の搬送手段によって所定の経路を搬送される。
支持体14は、ニップ部28の第1ニップ部40に供給される。
【0049】
ここで、支持体14としては特に限定はないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用される。例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、熱可塑性樹脂(例えばシクロオレフィン系樹脂、結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂)、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。さらに、支持体14としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやスチール基板がより好ましく用いられる。
【0050】
また、支持体14は、透明であることが好ましく、PETフィルムであることがより好ましい。
支持体が透明であれば、接着剤として光硬化性接着剤を使用する場合に、支持体14側から光を照射することができ、少ない照射量で硬化反応を行うことができる。
また、支持体14の厚さは、50μm〜350μmとするのが好ましく、75μm〜250μmとするのがさらに好ましい。
【0051】
(ニップ工程S202〜S206)
ニップ部28は、それぞれ所定の搬送経路で搬送された基板16と支持体14とを挟み込んで押圧し(すなわち、ニップして)、貼り合せると共に、積層体10の膜厚精度を補正する部位である。ニップ部28は、第1ニップ工程S202を行う第1ニップ部40と、第2ニップ工程を行う第2ニップ部42と、第3ニップ工程を行う第3ニップ部44とを有する。
【0052】
なお、第1ニップ部40、第2ニップ部42および第3ニップ部44は、ニップローラ対の間隔(ニップ間隔)が、それぞれ異なる以外は、基本的に同じ構成を有するので、代表して第1ニップ部40について説明する。第2ニップ部42および第3ニップ部44については、異なる点のみ説明する。
【0053】
図5は、第1ニップ部40の構成を概念的に示す図である。
ここで、第1ニップ部40は、ニップ間隔を調整可能な機構を有する。
図5に示すように、第1ニップ部40は、下ニップローラ50aと上ニップローラ50bからなる1対のニップローラ対50と、くさび型ストッパ52a、52bと、調整ネジ54a、54bと、ガイドレール56と、軸受部57と、エアシリンダ58とを有する。
【0054】
下ニップローラ50aおよび上ニップローラ50bは、基板16の搬送方向と直交する方向を軸として回転する。
【0055】
下ニップローラ50aは、所定の位置で回転可能に保持されている。一方、下ニップローラの上方に配置される上ニップローラ50bは、軸受部57に回転可能に保持されている。
【0056】
軸受部57は、側面にスリットを有し、このスリットに嵌合するガイドレール56によって、上下方向に案内されている。
【0057】
また、軸受部57の下面には、一対のくさび型ストッパ52a、52bが上下方向に重ねて配置されている。くさび型ストッパ52a、52bは、それぞれ調整ネジ54a、54bによって、水平方向の位置を変更して、くさび型ストッパ52bの高さを調整可能に構成されている。
【0058】
さらに、軸受部57は、上面をエアシリンダ58によって下方に押圧されている。従って、軸受部57は、その下面をくさび型ストッパ52bの上面に当接して保持される。
【0059】
このような構成により、第1ニップ部40は、調整ネジ54a、54bによってくさび型ストッパ52bの高さを調整することにより、軸受部57、すなわち、上ニップローラ50bの高さを調整して、上ニップローラ50bと下ニップローラ50aとの間隙(ニップ間隔)を調整することができる。
【0060】
第1ニップ部40、第2ニップ部42および第3ニップ部44は、このようなニップ間隔の調整機構によって、それぞれ異なるニップ間隔となるように調整されている。
具体的には、基板16の搬送方向の下流側ほど、ニップ間隔が狭くなる(もしくは同等に)ように設定される。すなわち、第1ニップ部40のニップ間隔が最も大きく、第3ニップ部44のニップ間隔が最も小さく設定される。
【0061】
第1ニップ部40のニップローラ対50は、その間を通過する接着剤付きの基板16と支持体14とを連続的に貼り合せる(ラミネートする)。その際、ニップ間隔により、接着剤を計量し、ラミネート厚みを規定する。
【0062】
次に、第2ニップ部42の、下ニップローラ対60aおよび上ニップローラ60bからなるニップローラ対60は、第1ニップ部40を通過した、基板16、接着剤および支持体14の積層体を、さらにニップして、第1ニップ部40よりも小さいニップ間隔により接着剤を計量し、ラミネート厚みを規定する。
【0063】
さらに、第3ニップ部44の、下ニップローラ70a、上ニップローラ70bからなるニップローラ対70は、第1ニップ部40および第2ニップ部42を通過した、基板16、接着剤および支持体14の積層体を、さらにニップして第2ニップ部42よりも小さいニップ間隔により接着剤を軽量し、最終的なラミネート厚みを規定する。
【0064】
前述のとおり、従来、ゴムシートや樹脂シートを製造する際に、シートの膜厚精度を向上することが種々、行われていた。
しかしながら、精度が不十分であったり、製造方法を実施するための設備上の制約があり汎用性が無かったり、装置に特殊加工が必要となりコストが増加するという問題があった。
【0065】
これに対して本発明は、ゴムシートや樹脂シートを基板16として、基板16上に接着剤を塗布して支持体14をラミネートする際に、後段ほどニップ間隔が狭くなる複数のニップローラ対によって、順次ニップを行った後に、接着剤を硬化させる。これにより、基板16表面の凹凸を包埋し、また、複数回のニップによって接着剤をならすことにより、支持体14表面での平滑性を向上して、積層体10の膜厚精度を向上することができる。
【0066】
ここで、単に、1段のニップローラ対でニップして支持体をラミネートした場合には、基板16の弾性や接着剤の粘性(液抵抗)の影響によって、ニップローラ対を通過する際に基板16が変形し、実質的なニップ間隔が変化してしまう。そのため、接着剤を十分にならすことができず、支持体表面の平滑性を向上して膜厚精度を十分に向上することができない。
【0067】
これに対して、本発明は、複数段のニップローラ対で複数回ニップするので、徐々に接着剤をならして、支持体14表面の平滑性を向上させることができ、膜厚精度を向上させることができる。
【0068】
特に、基板16がゴムシートのような弾性体の場合には、基板16がニップローラ対の間を通過する際に変形しやすい。そのため、1回のニップでは、接着剤を十分にならすことができない。これに対して、本発明は、複数回ニップを行うので、基板16がゴムシートのような弾性体の場合であっても、接着剤を十分にならすことができる。従って、本発明は、基板としてゴムシートを用いる際に、特に、好適に用いられる。
【0069】
ここで、ニップローラ50a、50bの材質には、特に限定はないが、金属ロールと金属ロールの組み合わせであることが好ましい。基板16の特性等に応じて、金属ロールとゴムロールや、ゴムロールとゴムロールの組み合わせであってもよい。
【0070】
また、支持体14側のローラである上ニップローラ50bは、加熱機構を有することが好ましい。ニップローラ50bが加熱機構を有し、ニップする際に接着剤の温度を上げて粘度を下げることにより、ニップローラ間を通過する際の液抵抗を下げて、基板16の変形を防止し、支持体14表面の平滑性を向上させることができる。
【0071】
ここで、接着剤がニップローラ間を通過するのは、一瞬ではあるが、加熱手段で加熱した場合、接着剤の表面の温度が上がり、接着剤の表面部分の粘度が下がる。そのため、接着剤の表面は、よりならしやすくなり、支持体14表面の平滑性を向上させることができる。
【0072】
なお、全てのニップローラ対が、加熱手段を有していても良いが、少なくとも最終段のニップローラ対の上ニップローラ70bが加熱手段を有していることが好ましい。最終段の上ニップローラ70bが加熱手段を有することにより、積層体10の最終的な膜厚精度を好適に向上させることができる。
【0073】
また、加熱手段による加熱温度には、特に限定はなく、接着剤の特性、基板16および支持体14の材質やロール径、搬送速度等の動作条件、求められる膜厚精度等に応じて適宜決定すればよい。
上ニップローラ50bの加熱手段としては、例えば、特開平6−315980号に記載の電気ヒーター、液体ジャケット等、種々の公知の加熱手段を利用することができる。
【0074】
また、ニップローラ50a、50bのロール径は、製作コスト上、小径であることが好ましいが、小径化するとローラが液抵抗により曲がってしまうおそれがある。また、加熱手段を有する場合には、小径化によって伝熱面積が減少するため、接着剤を十分に加熱して液抵抗を減少させることができず、やはり、ベンディングの原因となるおそれがある。
【0075】
ニップローラ50a、50bのロール径は、上記の点を考慮して適宜決定すればよい。例えば、接着剤の粘度範囲が0.05Pa・s〜5Pa・sで、ニップローラ50bが加熱機構を有する場合には、Φ150mm〜Φ500mmの範囲のニップローラ50a、50bを用いることが好ましい。これにより、ロールベンディングを発生させずに、正確なニップ間隔を設定することができる。
【0076】
また、第1ニップ部40、第2ニップ部42および第3ニップ部44のそれぞれのニップ間隔は、接着剤の特性、基板16および支持体14の材質や弾性率、ロール径、加熱手段の有無、搬送速度等の動作条件、求められる膜厚精度等に応じて、適宜決定すればよい。
【0077】
また、ニップ間隔を調整する機構は、図示例の構成に限定はされず、ニップ間隔を調整する種々の公知の機構が利用可能である。
また、図示例においては、ニップ間隔を調整する機構を有する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、ニップ間隔を調整する機構を有さず、第1ニップ部40、第2ニップ部42、第3ニップ部44が、それぞれ所定のニップ間隔に固定されていてもよい。
【0078】
また、図示例においては、ニップ部28は、3対のニップローラ対を有する構成としたが、本発明はこれに限定はされず、2対のニップローラ対を有する構成であっても良いし、あるいは、4対以上のニップローラ対を有する構成であっても良い。膜厚精度向上の効果およびコストを考慮すると、2〜5対のニップローラ対を有することが好ましい。
ニップ部28通過した基板16は、光照射部30に供給される。
【0079】
(硬化工程S208)
光照射部30は、硬化工程S208を行うものであり、例えば、紫外線(UV光)等の光を照射して、基板16と支持体14との間の接着剤(接着剤層18)を硬化させるものである。紫外線等の光を照射して接着剤を硬化させて、基板16と支持体14とを接着することにより、積層体10を得る。
【0080】
硬化工程S208において使用する光としては、その照射により光硬化性接着剤を硬化することができる活性光線であれば特に制限はなく、広くα線、γ線、X線、紫外線(UV)、可視光線、電子線、レーザー光などを包含するものである。中でも、紫外線を使用することが特に好ましい。
なお、レーザー光とは、コヒーレンスの高い光であり、指向性や収束性に優れ、例えば、後述する赤外線レーザーなどが例示できる。
【0081】
また、硬化工程S208で照射する光は、200〜600nmの光であることが好ましい。硬化工程S208に用いることができる光源としては、特に制限はないが、水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく例示できる。
また、硬化工程における光の露光量は、光硬化性接着剤が硬化する量であればよいが、10〜4,000mJ/cm
2であることが好ましく、20〜2,500mJ/cm
2であることがより好ましい。
【0082】
また、光による硬化の容易性の点から、支持体14及び基板16の少なくとも1方は、透明であることが好ましく、支持体14が透明であることがより好ましい。
接着剤層18硬化後の、基板16と支持体14との間の剥離力は、2N/cm以上であることが好ましく、3N/cm以上であることがより好ましく、4N/cm以上であることが更に好ましい。また、20N/cm以下であることが好ましい。
【0083】
光照射手段を通過した積層体10は、次の工程に供される。例えば、積層体10として巻き取られても良いし、後述するカバーフィルム19を貼り付ける工程に供されてもよい。
【0084】
次に、ラミネート装置20の作用および本発明のラミネート方法を
図1および
図3を用いて説明する。
前述のように、回転軸32に基板ロール34が装填されると、基板ロール34から基板16が引き出され、所定の搬送経路を挿通される。基板16が所定の搬送経路に挿通されると、図示しない駆動源により駆動され基板16の搬送を開始する。
一方、回転軸36には支持体ロール38が装填され、支持体ロール38から支持体14が引き出され、所定の搬送経路を挿通される。支持体14が所定の搬送経路に挿通されると、図示しない駆動源より駆動され、基板の16の搬送と同期して、支持体14の搬送を開始する。
【0085】
基板16の搬送が開始されると、塗布工程S200として、接着剤塗布部24によって、基板16の主面に光硬化性の接着剤が塗布される。
【0086】
次に、第1ニップ工程S202として、第1ニップ部40は、接着剤が塗布された基板16に支持体14を貼り合せる。次に、第2ニップ工程S204として、第2ニップ部42は、基板16、接着剤および支持体14の積層体をニップして、接着剤を計量し、ラミネート厚みを規定する。さらに、第3ニップ工程S206として、第3ニップ部44は、基板16、接着剤および支持体14の積層体をニップして、接着剤を計量し、ラミネート厚みを規定する。
【0087】
次に、硬化工程S208として、光照射部30は、接着剤にUV光等を照射して、接着剤を硬化させ、基板16と支持体14とを接着し、基板16、接着剤層18および支持体14が積層された積層体10が作製される。
【0088】
次に、本発明のラミネート方法で作製した積層体10について、
図2および
図6を用いて説明する。
図6は、
図2に示す積層体10の支持体14側の面の表面の凹凸を強調して示した図である。
【0089】
図2に示すように、積層体10は、主面に凹凸を有する基板16と、基板16上に積層される接着剤層18と、接着剤層18上に積層される支持体14とを積層してなるものである。すなわち、積層体10は、基板16と支持体14とを接着剤を介して貼り合せることにより、基板16の凹凸を接着剤層18で包埋して、積層体10表面(支持体14表面)を平滑にして、積層体10の膜厚精度を向上したものである。
【0090】
ここで、積層体10の基板16と接着剤層18との界面zの、表面粗さ指標の最大高さをR
0とすると、基板16の平均厚さd
0との比R
0/d
0は好ましくは、5%〜30%である。
また、積層体10の基板16の平均厚さd
0は、好ましくは、400μm〜6000μmである。
また、基板16の材質は、好ましくはゴムであり、好ましくは、弾性率が0.5N/mm
2〜5.0N/mm
2である。
表面粗さR
0および厚さd
0が上記範囲を満たす基板16に対して、本発明のラミネート方法を適用することにより、好適に基板16の凹凸を包埋して、膜厚精度を向上させることができる。特に、材質がゴムで弾性率が上記範囲を満たす基板16は、ニップの際に変形してしまうため、膜厚精度を向上させることが難しいが、本発明を適用することにより、好適に膜厚精度を向上させることができる。
【0091】
また、積層体10の接着剤層18の平均厚さd
1は、好ましくは、50μm〜300μmである。
接着剤層18の平均厚さd
1が上記範囲を満たすことにより、より好適に基板16の凹凸を包埋して、膜厚精度を向上させることができる。
【0092】
また、本発明のラミネート方法で作製した積層体10は、支持体14表面での表面粗さ指標の最大高さをR
1とすると、最大高さR
1と、積層体10の厚さdとの比R
1/dを、0.5%〜2.5%とすることができる。
【0093】
ここで、
図7に示すように、作製した積層体10の基板16側の面(基板16の、支持体14とは反対側の面)への傷・凹みを抑制するために、基板16側の面にカバーフィルム19を積層してもよい。
カバーフィルム19としては、支持体14と同様のフィルムを使用することができる。なお、取り扱い性、コストの観点からPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが特に好ましい。カバーフィルム19は、上述した支持体14のラミネート方法と同様な方法により、支持体14と同時または逐次にラミネートすることができる。
【0094】
カバーフィルム19の厚みは、傷・凹み防止の観点から、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。一方、コストの観点から、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
またカバーフィルム19の表面はプレーンでもよいし、マット化処理されていてもよい。
また、カバーフィルム19を設ける場合、カバーフィルム19は剥離可能でなければならない。カバーフィルム19が剥離不可能もしくは困難な場合や、逆に基板16とカバーフィルム19の接着が弱く剥がれやすい場合には、両層間にスリップコート層を設けてもよい。
また、スリップコート層に使用される材料は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分鹸化ポリビニルアルコール、ヒドロシキアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂など、水に溶解又は分散可能で、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0095】
以上、本発明のラミネート方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0096】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0097】
[実施例1]
実施例1として、
図3に示すラミネート装置20を用いて積層体10を作製した。
ここで、基板16の厚さd
0、および、基板16表面の最大高さR
0は接着剤塗工前にレーザー変位計にて表面を走査して計測した。また、接着剤塗布時の最大高さRmaxは接着剤の塗工後にレーザー変位計にて表面を走査して計測した。また、積層体10の厚さd、表面粗さR
1はラミネート後にそれぞれレーザー変位計にて表面を走査して計測した。レーザー変位計は株式会社キーエンス製LK―H008を用い、塗工前、塗工後、ラミネート後の各パスロール(図示せず)上に幅方向に各3列ずつ配置し、エッジより50mm内側の位置とウエブセンターをオンラインで連続的に100m計測した。
【0098】
基板16は、硬度64度(ショアA)、平均厚さd
0が1.5mmのゴムシート(タイガースポリマー株式会社製 TAKL6503)を用いた。基板16表面の最大高さR
0は、200μmであった。すなわち、ラミネート前の基板16の厚さd
0と最大高さR
0との比R
0/d
0は、13%であった。
また、接着剤として、株式会社スリーボンド製の紫外線硬化型接着剤(TB3042B)を用いた。接着剤の粘度は、0.5Pa・s(25℃)であった。また、塗布時の接着剤厚さは120μm、最大高さRmaxは、60μmとなるように塗布した。
また、支持体14は、厚さ0.1mmのPETフィルムを用いた。
【0099】
また、ニップローラは全て、材質がSUS304、ロール径が300mmとした。
また、第1ニップ部40のニップ間隔は、60μmとし、第2ニップ部42のニップ間隔は、30μmとし、第3ニップ部44のニップ間隔は、10μmとした。
また、上ニップローラ70bは加熱手段により、50℃に加熱した。
【0100】
また、光照射部30は、UV光を照射するものとした。露光量は、1200mJ/cm
2とした。
【0101】
このような条件の下、ラミネート装置20において、基板16に支持体14をラミネートした後、得られた積層体10の厚さd、および支持体14側の表面での表面粗さ指標の最大高さR
1を測定した。測定の結果、厚さdは1.7mm、最大高さR
1は、34μmであった。すなわち、厚さdと最大高さR
1との比R
1/dは2%であった。
【0102】
[比較例1]
ニップ部のニップローラ対の数を1対とし、また、接着剤塗布部24に代えて接着剤を滴下して基板16に接着剤を付与する構成とした以外は、実施例1と同様にして、積層体の作製を行った。作製した積層体の厚さdは、1.7mmで、最大高さR
1は、85μmであった。すなわち、比R
1/dは5%であった。
【0103】
以上のとおり、本発明の実施例である実施例1は、比較例1と比較して、膜厚のバラツキを補正することができ、膜厚精度を向上させることができることがわかる。
以上の結果から、本発明の効果は、明らかである。