特許第5990136号(P5990136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990136感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物及びこれを用いてなる皮革様材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990136
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物及びこれを用いてなる皮革様材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20160825BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20160825BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20160825BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C08L75/04
   D06N3/14 101
   C08K5/17
   C08L71/02
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-132338(P2013-132338)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7172(P2015-7172A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100087631
【弁理士】
【氏名又は名称】滝田 清暉
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝明
(72)【発明者】
【氏名】島村 信之
(72)【発明者】
【氏名】小坂 竜巳
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−036960(JP,A)
【文献】 特表2014−534354(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/057099(WO,A1)
【文献】 特開2006−036909(JP,A)
【文献】 特開2003−221791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂(A)100質量部、及び、感熱凝固剤として、下記一般式(I)〜(III)で表される多官能の第4級アンモニウム塩化合物から選択される少なくとも1種の化合物(B)0.1〜50質量部を含有することを特徴とする感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物;
但し、式(I)〜(III)中のR、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又はベンジル基、AはM価の有機基、Xは一価のアニオン、nは1〜30の数であり、Mは2〜6の数である。
【請求項2】
前記多官能の第4級アンモニウム塩化合物(B)が、下記式(1)で表される多官能の第4級アンモニウム塩である、請求項1に記載された感熱凝固性水性ポリウレタン樹脂組成物;

但し、式中のnは1〜30の数である。
【請求項3】
前記多官能の第4級アンモニウム塩化合物(B)の含有量が、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、5〜20質量部である、請求項1又は2に記載された感熱凝固性ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載された感熱凝固性ポリウレタン樹脂組成物を、繊維材料に含浸させ、感熱凝固させてなる皮革様シート材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物に関し、特に、保存安定性に優れ、かつ、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性に優れた皮革様材料を提供することができる感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物、及び、該水系ポリウレタン樹脂組成物を用いてなる皮革様材料に関する。
【背景技術】
【0002】
天然皮革の代替品として使用される皮革様材料には、ポリウレタン樹脂と不織布からなる繊維基材で構成された人工皮革、及びポリウレタン樹脂と織物又は編物からなる繊維基材で構成された合成皮革がある。皮革様材料の製造には、例えば、有機溶媒系ポリウレタン樹脂が含浸又は塗布された繊維基材を、該ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒であって、かつ、前記有機溶媒と相溶性のある凝固液(水等)に浸漬してポリウレタン樹脂を凝固させ、次いで水洗、乾燥する、湿式凝固法と呼ばれる方法が使用されていた。
【0003】
しかしながら、湿式凝固法において多く用いられるジメチルホルムアミド等の有機溶剤は、一般に、引火性及び毒性が高いため、火災や環境汚染、又は人体への毒性等の問題がある。
従って、皮革様材料に用いられるポリウレタン樹脂を、水系ポリウレタン樹脂に移行すべく検討がなされてきた。
【0004】
しかしながら、水系ポリウレタン樹脂は、溶剤系のものと比べて凝集しやすい等、保存安定性が低いという問題がある。
また、水系ポリウレタン樹脂を用いた皮革様材料は、有機溶媒系ポリウレタン樹脂を用いたものと比較すると、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性等の物性において、未だ満足することのできるものではないという欠点があった。
【0005】
このような欠点を解決するために、強制乳化されたエマルジョンに無機塩類を溶解した水系樹脂組成物を付与して加熱乾燥する方法(特許文献1)、感熱凝固温度が40〜90℃である水系ポリウレタン樹脂と会合型増粘剤からなる水系樹脂組成物を、スチームで感熱凝固させる方法(特許文献2)、HLBが10〜18のノニオン系界面活性剤と無機塩を含むカルボン酸塩型ポリウレタン樹脂を繊維材料基体に付与し、感熱凝固させる方法(特許文献3)が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法によって得られた皮革様材料は、マイグレーション防止性においては改善が見られるものの、残存する、界面活性剤、無機塩或いは増粘剤等の影響により、皮革様材料としての風合い及び耐熱水性が、十分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−316877号公報
【特許文献2】特開2000−290879号公報
【特許文献3】特開2003−138131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の第1の目的は、保存安定性に優れ、比較的低温で凝固させることが可能であると共に、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性等の物性に優れた皮革様材料に好適な、水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性等の物性に優れた皮革様材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の諸目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂に、感熱凝固剤として、特定の第4級アンモニウム塩化合物を含有させた水系ポリウレタン樹脂組成物が、保存安定性が良好である上、感熱凝固剤の配合量を大きく増量させることなく、感熱凝固温度を低くすることのできること、また、該水系ポリウレタン樹脂組成物を用いることにより、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性に優れた皮革様材料が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、分子内にカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂(A)100質量部、及び、感熱凝固剤として、下記一般式(I)〜(III)で表される多官能の第4級アンモニウム塩化合物から選択される少なくとも1種の化合物(B)を0.1〜50質量部含有することを特徴とする感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物;及び、該感熱凝固性ポリウレタン樹脂組成物を、繊維材料に含浸させ、感熱凝固させてなる皮革様シート材料である。
但し、式(I)〜(III)中の、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基又はベンジル基、AはM価の有機基、Xは一価のアニオン、nは1〜30の数であり、Mは2〜6の数である。
【0011】
本発明の感熱凝固性ポリウレタン樹脂組成物に使用する前記多官能の第4級アンモニウム塩化合物(B)は、下記式(1)で表される多官能の第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
但し、式中のnは1〜30の数である。
また、上記多官能の第4級アンモニウム塩化合物(B)の含有量は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、保存安定性に優れ、比較的低温で凝固させることが可能であるだけでなく、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性等の物性に優れた皮革様材料を得るのに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物に使用する、分子内にカルボキシル基/及び又はスルホン酸基を有するポリウレタン樹脂(A)の組成及び製造方法は、特に限定されるものではないが、通常、以下の方法により製造する。
【0014】
先ず、ポリオール成分(a)、ポリイソシアネート成分(b)、及び、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するアニオン性基導入剤成分(c)とを、反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒を、必要に応じて用い、反応させてウレタンプレポリマーを製造する。
【0015】
次いで、得られたウレタンプレポリマーから水系ポリウレタン樹脂組成物を製造する方法としては、以下の2つの方法が挙げられる。
(1)プレポリマー及び/又は水中にアニオン性基中和剤(d)を添加し、水中にプレポリマーを加えて分散させるプレポリマーミキシング法。この場合、前記水中には、必要に応じてアニオン性基中和剤成分(d)及び/又は乳化剤成分(e)を含有させておくこともできる。
(2)プレポリマー及び/又は水中にアニオン性基中和剤(d)を添加し、更に、必要に応じて、プレポリマー中にアニオン性基中和剤成分(d)及び/又は乳化剤成分(e)を含む水を加えて分散させる転相法等によって、水中で、水分散したウレタン樹脂を鎖伸長剤成分(f)を用いて鎖伸長させる方法。
【0016】
前記ポリオール成分(a)は特に制限されるものではないが、具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類及び、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類等が挙げられ、分子量200未満の低分子ポリオール類等を併用することができる。
【0017】
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の前記低分子ポリオールの他、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0018】
前記ポリエステルポリオール類としては、後述する分子量200未満の低分子ポリオール等のポリオールと、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸、又は、そのエステル、無水物、カルボン酸ハライド等のエステル形成性誘導体との直接エステル化反応又はエステル交換反応によって得られるポリエステルポリオール;及び、前記ポリオールと、ラクトン類又はその加水分解開環反応によって得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0019】
上記多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0020】
前記多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、上述した多価カルボン酸の、無水物、又はクロライド、ブロマイド等のカルボン酸ハライド;上記多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル等が挙げられる。
【0021】
前記ラクトン類としては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオール類としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートと多価アルコールとの反応生成物に有機ジカルボン酸と反応させて得られた反応生成物が挙げられる。
【0023】
また、前記結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類としては、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及び/又はポリテトラメチレングリコール等のジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)若しくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物等が挙げられる。
【0024】
前記ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類の数平均分子量は、300〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましい。
【0025】
前記分子量200未満の低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオールが挙げられる。
【0026】
前記ポリイソシアネート成分(b)は、特に限定されるものではなく、ジイソシアネート及びイソシアネート基を1分子中に3個以上有するポリイソシアネート等を使用することができる。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0027】
前記イソシアネート基を1分子中に3個以上有するポリイソシアネートとしては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、これらの混合物等からなる3官能以上のイソシアネート、これら3官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物、これらを各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート、前述したジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)及びビウレット三量体等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、入手が容易で、耐候性及び強度等に優れたポリウレタン樹脂の塗膜が得られるという観点から、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートを使用することが好ましく、中でも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0029】
前記カルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するアニオン性基導入剤成分(c)としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。本発明に使用するアニオン性基導入剤成分(c)としては、入手が容易であるという観点から、カルボキシル基を含有するポリオール類を使用することが好ましく、ジメチロールプロピオン酸を使用することが特に好ましい。
【0030】
ポリオール(a)及びアニオン性基導入剤成分(c)の全水酸基当量に対するポリイソシアネート成分(b)の全イソシアネート基との当量比(NCO/OH)については、NCO/OH比が1.0未満であると、末端が水酸基のウレタンプレポリマーが得られるので好ましくない。一般に、末端がイソシアネートのプレポリマーの方が、水分散及び鎖伸長による高分子量化等が容易であるので、本発明においては、イソシアネートのプレポリマーを使用することが好ましい。
【0031】
従って、末端がイソシアネートのプレポリマーを得るために、本発明における、前記ポリオール成分(a)、ポリイソシアネート(b)及びアニオン性基導入剤成分(c)の配合量は、ポリオール(a)及びアニオン性基導入剤成分(c)の全水酸基当量に対するポリイソシアネート成分(b)の全イソシアネート基との当量比(NCO/OH)が1.1〜2.5となる量であることが好ましく、1.2〜2.0、特に1.3〜1.8となる量であることが更に好ましい。
【0032】
NCO/OH比が1.0以上1.1未満ではウレタンプレポリマーが比較的高分子量化するためウレタンプレポリマーの水への分散性が劣る傾向にあり、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性等が悪くなる場合がある。また、NCO/OH比が2.5を超えると、プレポリマーの水分散時において、イソシアネート基と水との反応に伴う二酸化炭素の生成によって急激に発泡する等の製造上の問題や、ポリウレタン樹脂塗膜の基材に対する接着性が劣るといった問題を生じる場合がある。
【0033】
更に、前記アニオン性基導入剤成分(c)の配合量は、前記ポリオール成分(a)、ポリイソシアネート成分(b)及びアニオン性基導入剤成分(c)からなるウレタンプレポリマーにおける、(c)成分のカルボキシル基に基づく酸価が5〜50mgKOH/gとなる量であることが好ましく、更に、酸価が10〜30mgKOH/gであることが好ましい。
前記酸価が5mgKOH/g未満では、ウレタンプレポリマーの水分散性が劣り、水系ポリウレタン樹脂の保存安定性が悪くなる傾向となり、また、50mgKOH/gを超えると、前記ウレタンプレポリマーの粘度が高くなり、水分散が困難になったり、ポリウレタン樹脂の塗膜の耐水性が劣ったりする等の問題を生じる。
【0034】
前記アニオン性基中和剤成分(d)としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類;N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類;N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類;トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類の3級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられる。
【0035】
アニオン性基中和剤成分(d)の使用量は、アニオン性基1当量に対して0.5〜2.0当量であることが好ましく、0.8〜1.5当量であることがより好ましい。このアニオン性基中和剤の使用量の過不足が大きいと、水系ウレタン樹脂組成物の保存安定性のみならず、水系ウレタン樹脂膜の強度等の機械物性や耐水性等の諸物性が低下するおそれがある。
【0036】
前記乳化剤成分(e)としては、例えば、通常のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤;第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤;更に、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤;等の公知の界面活性剤を挙げることができる。
【0037】
前記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0038】
前記ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0039】
前記アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0040】
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。また、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたもの等が挙げられる。更に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物であってもブロック付加物であってもよい。
【0041】
前記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
【0042】
前記両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酸ベタイン、2‐アルキル‐N‐カルボキシメチル‐N‐ヒドロキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタイン、ヒドロキシプロピルリン酸の金属塩等のベタイン型、β‐ラウリルアミノプロピオン酸の金属塩等のアミノ酸型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等が挙げられる。
【0043】
前記乳化剤成分(e)の使用量は特に制限されるものではないが、水系ウレタン樹脂組成物を塗布して得られる塗膜の耐水性等の観点から、ポリウレタン樹脂固形分の総量100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、0〜20質量部であることがより好ましく、特に乳化剤成分を使用しない方が好ましい。
【0044】
前記鎖伸長剤成分(f)としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール等、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン等の低分子ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、アミノエチルアミノエタノール、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類等のポリアミン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジン類;及び水等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易である上、反応が容易に起きるという観点から、ジアミン類、ヒドラジン類及び水を使用することが好ましく、エチレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン及び水を使用することが特に好ましい。
【0045】
前記鎖伸長剤成分(f)の使用量は、水系アクリルウレタン樹脂の塗膜物性等の観点から、鎖伸長反応前のウレタンプレポリマーにおけるイソシアネート基の1当量に対する、鎖伸長剤のイソシアネート反応基の当量比が0.1〜1.0の範囲となる量であることが好ましい。
【0046】
前記反応に不活性であって、且つ、水との親和性が大きい溶媒として好適なものとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、通常、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3〜200質量部となるように用いることが好ましい。これらの溶媒として、沸点100℃以下の溶媒を使用する場合には、水系ポリウレタン樹脂を合成した後、その溶媒を減圧留去等によって除去することが好ましい。
【0047】
一般式(I)中の有機基としては、例えば、下記の有機基があげられる。
【0048】
一般式(I)中のXで表されるアニオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、多官能の第4級アンモニウム塩化合物の中でも、特に下記式(1)で表される化合物を使用することが好ましい。
但し、式中のnは1〜30の数である。
【0050】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、通常用いられる各種添加剤を添加することができる。
【0051】
該添加剤としては、例えば、架橋剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤等の各種耐候剤、基材に対する密着性を特に強固にするシランカップリング剤、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ等の無機質コロイドゾル、テトラアルコキシシラン及びその縮重合物、キレート剤、エポキシ化合物、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、外部架橋剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、凝固防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機又は有機の充填剤、可塑剤、滑剤、フッ素系又はシロキサン系等の帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、ワックス類、防曇剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤、及び防錆剤等が挙げられる。
【0052】
前記架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等とホルムアルデヒドとの付加物、これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物等のアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多官能性アジリジン化合物等が挙げられ、例えば、オキサゾリン系化合物、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、メラミン系化合物及び亜鉛錯体等が挙げられる。
【0053】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第3−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第3オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0054】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)‐4,6‐ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5‐トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール‐1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特に、ニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0055】
前記酸化防止剤としては、リン系、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤が挙げられる。
リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12アルキル乃至C15アルキルの混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール-2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0056】
前記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェロール等が挙げられる。
【0057】
前記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0058】
前記耐候剤(ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤)の使用量は、水系ポリウレタン樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることがより好ましい。0.001質量部より少ないと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より多い場合には水分散安定性や塗膜物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0059】
これらの耐候剤を添加する方法としては、ウレタン原料のポリオールに添加する方法、
ウレタンプレポリマーに添加する方法、ウレタン樹脂の水分散時における水相に添加する方法、水分散後に添加する方法の何れでもよいが、操作が容易であるという観点から、原料ポリオールに添加する方法及びウレタンプレポリマーに添加する方法が好ましい。
【0060】
本発明に係る皮革様シート材料の製造において使用される繊維基材としては、特に限定されないが、例えば、不織布や編織布が用いることができる。不織布としては、補強用等の目的で編織布等が内部又は表面に積層されたものでもよく、繊維材料としては、天然繊維、化学繊維のいずれでもよく、天然繊維としては綿、羊毛、絹及び石綿等が挙げられ、化学繊維としてはレーヨン及びテンセル等の再生繊維、アセテート及びトリアセテート等の半合成繊維、並びに、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維及びアクリル系繊維等の合成繊維が挙げられる。またこれらを混合使用した繊維を適宜用いてもよい。中でも、天然の皮革に近い風合い及び品位が得られることから、ポリアミド繊維、又はポリエステル繊維を使用したものが好適に用いられる。
【0061】
本発明に係る皮革様シート材料の製造方法は、特に制限されず、通常行われる方法であればいずれでもよく、塗布又は含浸による方法を挙げることができる。
塗布による製造方法としては、ナイフコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング及びスプレーコーティング等の方法が挙げられ、含浸による方法としては、例えば、感熱凝固性ポリウレタン樹脂組成物を不織布へ含浸させ、プレスロールなどで絞るか又はドクターナイフ等によって適量の含浸量とした後に凝固させる方法を用いることができる。
凝固方法としては、70℃以上の熱水浴中で凝固させる方法、スチーム雰囲気下で凝固させる方法、直接50〜150℃の熱風乾燥機中で凝固させる方法等が挙げられ、凝固させた後に、乾燥機中で乾燥させることにより皮革様シートを得ることができる。
【0062】
上記の凝固方法の中では、伝熱速度が大きく水系樹脂を均一に瞬間的に凝固させることができ、樹脂のマイグレーションをより防止できるという観点から、70℃以上の熱水浴中で凝固させる方法又はスチーム雰囲気下で凝固させる方法が好ましい。含浸、凝固及び乾燥の工程で、感熱凝固性の感度の低い水系樹脂を使用すると、含浸後に熱水中で凝固させる場合には凝固熱水浴中に水系樹脂が流出し、熱風乾燥機中で凝固又は乾燥させる場合にはマイグレーションの発生によりポリウレタン樹脂を均一に付与できず、得られるシートの強伸度や柔軟性等の物理的性質、風合いに著しく悪影響を与える。
【0063】
水系樹脂を含浸、凝固及び乾燥させて得られるシートに付与される樹脂量は、繊維基材100質量部に対して3〜100質量部であることが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましい。ポリウレタン樹脂の付与量が3質量部未満では得られるシートの充実感が不足し、皮革様の風合いが悪くなる傾向があり、100質量部を超えると、得られるシートは硬くなり、皮革様の風合いが悪くなる傾向がある。
【0064】
本発明の皮革様シート材料は、車両、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等の分野に用途があり、例えば、カーシート等の自動車内装材、壁材、マットレス、クッション地、鞄内張り材料、スポーツシューズ、紳士靴等に使用することができる。
【0065】
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の用途としては、上記皮革様シート材料の他に、塗料、接着剤、表面改質剤、有機粉体及び/又は無機粉体のバインダー、成型体、建材、シーリング剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤等が挙げられる。
【0066】
より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル及びポリカーボネート等のプラスチック用コーティング剤、ガラス繊維集束剤、ラミネート用接着剤、農業用フィルムコーティング剤、感熱紙コーティング剤、インクジェット記録紙用バインダー、グラビア用印刷インキのバインダー剤、鋼板用塗料、ガラス、スレート、コンクリート等の無機系構造材用の塗料、木材用塗料、繊維処理剤、繊維コーティング剤、電子材料部品コーティング剤、スポンジ、パフ、手袋、コンドーム等が挙げられる。
【0067】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0068】
[製造例1:水系ポリウレタン樹脂PUD−1の製造]
<ウレタンプレポリマー製造工程>
数平均分子量2000のポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオール+アジピン酸)350g(0.350モル)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)221g(0.844モル)、ジメチロールプロピオン酸28.7g(0.214モル)、溶媒としてメチルエチルケトン150g、並びに、触媒としてオクチル錫ジラウレート0.018gを配合し、窒素雰囲気下の85〜95℃で2時間反応させてイソシアネート含有量(NCO%)が3.1%となったことを確認し、ウレタンプレポリマーUP−1を得た。
【0069】
<水分散/高分子量化工程>
水560g中に、消泡剤((株)ADEKA製、製品名アデカノールB1016)0.1g、トリエチルアミン14.4g(0.142モル)を添加し、前記で得たウレタンプレポリマーUP−1を500g加え、20〜40℃で15分間撹拌を行った。ついで、鎖伸長剤としてエチレンジアミン/水(1/3)水溶液18.0g(0.075モル)を滴下し、20〜40℃で10分間攪拌した。さらに鎖伸長剤としてアジピン酸ジヒドラジド/水(1/3)混合液52.4g(0.075モル)を添加し、20〜40℃で1〜2時間、NCO基が消失するまで撹拌を継続した後、メチルエチルケトン溶媒を留去し、固形分40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−1を得た。
【0070】
[比較製造例1:水系ポリウレタン樹脂PUD−2の製造]
<ウレタンプレポリマー製造工程>
数平均分子量2000のポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオール+アジピン酸)246g(0.246モル)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)294g(1.12モル)、N−メチルジエタノールアミン60g(0.50モル)、溶媒としてメチルエチルケトン150gを配合し、窒素雰囲気下の85〜95℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が4.2%となったことを確認してウレタンプレポリマーUP−2を得た。
【0071】
<水分散/高分子量化工程>
水571g中に消泡剤((株)ADEKA製、製品名アデカノールB1016)0.2g、酢酸30.2g(0.503モル)を添加し、前記で得たウレタンプレポリマーUP−2を500g加え、20〜40℃で2〜3時間、NCO基が消失するまで撹拌を継続した後、メチルエチルケトン溶媒を留去し、固形分が40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−2を得た。
【0072】
[比較製造例2:水系ポリウレタン樹脂PUD−3の製造]
<ウレタンプレポリマーの製造工程>
数平均分子量2000のポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオール+アジピン酸)431g(0.431モル)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)169g(0.645モル)、溶媒としてメチルエチルケトン150g、並びに、触媒としてオクチル錫ジラウレート0.018gを配合し、窒素雰囲気下の85〜95℃で2時間反応させ、イソシアネート含有量(NCO%)が2.4%となったことを確認してウレタンプレポリマーUP−3を得た。
【0073】
<水分散/高分子量化工程>
水538g中に乳化剤((株)ADEKA製、製品名アデカプルロニックL−64)41.5g、を添加し、前記で得たウレタンプレポリマーUP−3を500g加え、20〜40℃で15分間撹拌を行った後、鎖伸長剤としてエチレンジアミン/水(1/3)水溶液14.0g(0.058モル)を滴下し、20〜40℃で10分間攪拌した。さらに鎖伸長剤としてアジピン酸ジヒドラジド/水(1/3)混合液40.0g(0.057モル)を添加し、20〜40℃で1〜2時間、NCO基が消失するまで撹拌を継続した後、メチルエチルケトン溶媒を留去して固形分40%の水系ポリウレタン樹脂PUD−3を得た。
【実施例1】
【0074】
[実施例1−1]
製造例1で得られた水系ポリウレタン樹脂PUD−1のポリウレタン樹脂固形分100質量部に対して、下記一般式(1)で表され、n=15である多官能第4級アンモニウム塩化合物(「アミン化合物1a」とする)の50質量%水溶液を、該アミン化合物1が5質量部になるように加えて、第4級アンモニウム塩化合物を含有した水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0075】
[実施例1−2]
アミン化合物1aに代えて、前記一般式(1)で表され、n=25である第4級アンモニウム塩化合物(「アミン化合物1b」とする)を使用したこと以外は、実施例1−1と同様の方法により、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0076】
[比較例1]
[比較例1−1]
比較製造例1で得られた水系ポリウレタン樹脂PUD−2のポリウレタン樹脂固形分100質量部に対して、前記アミン化合物1aの50質量%水溶液を、該アミン化合物1aが5質量部になるように加えて、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0077】
[比較例1−2]
比較製造例2で得られた水系ポリウレタン樹脂PUD−3のポリウレタン樹脂固形分100質量部に対して、前記アミン化合物1aの50質量%水溶液を、該アミン化合物1aが5質量部になるように加えて、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0078】
[比較例1−3]
前記アミン化合物1aに代えて、下記式(2)で表され、n=15である第4級アンモニウム塩化合物(「アミン化合物2」とする。)を使用したこと以外は実施例1−1と同様の方法により、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂組成物を製造したが、アミン化合物2を加えた直後に凝集物が発生し、保存可能な水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。
【0079】
[比較例1−4]
前記アミン化合物1aの代わりに、下記式(3)で表され、n=20である第4級アンモニウム塩化合物(「アミン化合物3」とする。)に替え、実施例1−1と同様の方法で、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0080】
[比較例1−5]
アミン化合物Iaの替わりに、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(「アミン化合物4」とする。)を使用したこと以外は、実施例1−1と同様の方法で、第4級アンモニウム塩化合物含有水系ポリウレタン樹脂組成物を製造したが、アミン化合物4を加えた直後に凝集物が発生し、保存可能な水系ポリウレタン樹脂組成物を得ることができなかった。
【0081】
[比較例1−6]
アミン化合物Iaの替わりに、硫酸アンモニウム(20%水溶液)を使用したこと以外は、実施例1−1と同様の方法で水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0082】
各実施例及び比較例で得られた水系ポリウレタン樹脂組成物につき、保存安定性及び感熱凝固温度の評価を行った。結果を表1に記す。
【0083】
<保存安定性の評価>
30℃の雰囲気下に3ヶ月間放置し、分離状態を目視にて評価した。
○:全く分離がない。
△:僅かに分離又は樹脂の沈降がある。
×:分離又は、樹脂の沈降が大きい。
【0084】
<感熱凝固温度の測定>
前記で得られた水系ポリウレタン樹脂PUD−1−1〜PUD−1−10を、それぞれ100mlビーカー中に50gを入れ、これを95℃熱水浴中で撹拌しながら徐々に加熱し、水系樹脂が凝固するときの温度を測定した。
【0085】
【表1】
比較例1−1及び比較例1−2は、90℃を超えても凝固しなかった。
また、前述した通り、比較例1−3及び比較例1−5は、第4級アンモニウム塩化合物を配合した直後に凝集物が生じ、保存可能な水系ポリウレタン樹脂組成物が得られなかった。
このように、比較例1−1〜1−3及び1−5は、水系ポリウレタン樹脂組成物として使用することが不可能であるため、これらについては、以後の比較例2及び3の評価を行わなかった。
【実施例2】
【0086】
<皮革様シートの作製>
実施例1−1及び1−2の水系ポリウレタン樹脂組成物を、それぞれ不織布に含浸率200質量%で含浸させた後、熱風乾燥機を使用して、100℃で5分間、次いで150℃で3分間乾燥し、皮革様シートを得た。
【0087】
[比較例2]
比較例1−4及び1−6の水系ポリウレタン樹脂組成物を使用して、実施例2と同様の方法によって皮革様シートを作製した。
【0088】
実施例2及び比較例2で作製した皮革様シートにつき、下記の通りマイグレーション防止性、耐クラック性及び風合いを評価した。結果を表2に記す。
【0089】
<マイグレーション防止性評価>
皮革様シートの断面を、電子顕微鏡(日本電子(株)製:JSM−6390LA)を用いて検査し、下記の基準に基づき評価した。
○:マイグレーションが発生しない。
△:マイグレーションが若干見られた。
×:マイグレーションが多く見られた。
【0090】
<耐クラック性評価>
皮革様シートの表面を下記の基準に基づき、目視評価した。
○:クラックは発生していない。
△:一部にクラックが発生した。
×:全体的にクラックが発生した。
【0091】
<風合い評価>
皮革様シートの触感を、下記の基準に基づき風合いを評価した。
○:天然皮革と同様の柔軟性を有していた。
△:天然皮革より、やや柔軟性に劣っていた。
×:天然皮革より、柔軟性にかなり劣っていた。
【0092】
【表2】
【実施例3】
【0093】
[実施例3−1,3−2]
[塗膜フィルムの作製]
実施例1−1及び1−2の水系ポリウレタン樹脂PUD−1−1及びPUD−1−2を、乾燥状態で厚さ100μmとなるように、バーコーターを用いてガラス板上に塗布し、100℃で5分間、次いで120℃で2時間乾燥させ塗膜フィルムを得た。
【0094】
[比較例3]
比較例1−4及び1−6の水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて、それぞれ、実施例3と同様の方法によって塗膜フィルムを作製した。
【0095】
実施例3及び比較例3で得られた塗膜フィルムを用い、90℃の熱水に30分間浸漬後の面積膨潤率を測定し、下記評価基準に基づき耐熱水性の評価を行った。結果を表3に示す。
<耐熱水性評価>
○:面積膨潤率3%未満
△:面積膨潤率3〜5%
×:面積膨潤率5%超
【0096】
【表3】
【0097】
実施例1並びに比較例1−3及び1−5の結果から、本発明で使用する特定の構造を有する第4級アンモニウム塩化合物を使用する水系ポリウレタン樹脂は、保存安定性が良好である上、比較例1−6のような汎用の感熱凝固剤を用いた水系ポリウレタン樹脂よりも保存安定性に優れていることが確認された。
また、比較例1−1及び1−2の結果から、ウレタン樹脂中にカルボキシル基及び/又はスルホン酸基を有するウレタン樹脂と、前記特定の第4級アンモニウム塩化合物を使用することにより、良好な保存安定性と共に、良好な感熱凝固性を有する水系ポリウレタン樹脂組成物が得られることが確認された。
【0098】
実施例2及び3と、比較例2及び3との比較から、本発明に使用する特定の感熱凝固性水系ポリウレタン樹脂組成物のみが感熱凝固性及び皮革様シート諸性能の全てにおいて良好な結果を示していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、有機溶剤を使用しないために、火災や、環境又は人体への汚染等の問題が生じない上、保存安定性及び感熱凝固性が共に良好であり、皮革様シート材料、塗料、接着剤、表面改質剤、有機粉体及び/又は無機粉体のバインダー、成型体、建材、シーリング剤、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤等の製造に極めて有用である。
特に、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物を用いて製造される皮革様シート材料は、マイグレーション防止性、耐クラック性、風合い及び耐熱水性等の物性に優れているため、自動車内装材、家具、衣料、靴、鞄、袋物、サンダル、雑貨等の製造に極めて有用である。