(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
照明光を発する光源装置と、前記照明光の反射光で検体を撮像して第1画像信号を出力するとともに、前記第1画像信号の出力時よりも拡大された前記検体を撮像して第2画像信号を出力するセンサと、を備える内視鏡システムのプロセッサ装置において、
前記センサから前記第1,第2画像信号を受信する受信部と、
前記第1,第2画像信号に基づいてそれぞれ前記検体の酸素飽和度を算出する酸素飽和度算出部と、
前記第1画像信号と、前記第1画像信号に基づいて算出された前記酸素飽和度とに基づいて第1酸素飽和度画像を生成するとともに、前記第2画像信号と前記第2画像信号に基づいて算出された前記酸素飽和度に基づいて第2酸素飽和度画像を生成する画像生成部と、
前記第1酸素飽和度画像からカットオフ周波数未満の低周波成分を抽出する低周波成分抽出部と、
前記第2酸素飽和度画像から前記カットオフ周波数以上の高周波成分を抽出する高周波成分抽出部と、
前記低周波成分と前記高周波成分を合成し、合成酸素飽和度画像を生成する合成処理部と、
を備えるプロセッサ装置。
照明光を発する光源装置と、前記照明光の反射光で検体を撮像して第1画像信号を出力するとともに、前記第1画像信号の出力時よりも拡大された前記検体を撮像して第2画像信号を出力するセンサと、を備える内視鏡システムのプロセッサ装置において、
前記センサから前記第1,第2画像信号を受信する受信部と、
前記第1画像信号からカットオフ周波数未満の低周波成分を抽出する低周波成分抽出部と、
前記第2画像信号から前記カットオフ周波数以上の高周波成分を抽出する高周波成分抽出部と、
前記低周波成分と前記高周波成分を合成し、合成画像信号を生成する合成処理部と、
前記合成画像信号に基づいて前記検体の酸素飽和度を算出する酸素飽和度算出部と、
前記合成画像信号と前記酸素飽和度に基づいて、前記検体の酸素飽和度を表す酸素飽和度画像を生成する画像生成部と、
を備える内視鏡システムのプロセッサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16、モニタ18と、コンソール20とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続されるとともに、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、検体内に挿入される挿入部21と、挿入部21の基端部分に設けられた操作部22と、挿入部21の先端側に設けられた湾曲部23及び先端部24を有している。操作部22のアングルノブ22aを操作することにより、湾曲部23は湾曲動作する。この湾曲動作にともなって、先端部24が所望の方向に向けられる。
【0026】
また、操作部22には、アングルノブ22aの他、モード切替SW(モード切替スイッチ)22bと、ズーム操作部22cが設けられている。モード切替SW22bは、通常観察モードと、特殊観察モードの2種類のモード間の切り替え操作に用いられる。通常観察モードは、検体内をフルカラー画像化した通常光画像をモニタ18に表示するモードである。特殊観察モードは、検体内の血中ヘモグロビンの酸素飽和度を画像化した酸素飽和度画像をモニタ18に表示するモードである。ズーム操作部22cは、内視鏡12内のズーミングレンズ47(
図2参照)を駆動して、検体を拡大するズーム操作に用いられる。
【0027】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びコンソール20と電気的に接続される。モニタ18は、通常光画像や酸素飽和度画像等の画像、及びこれらの画像に関する情報(以下、画像情報等という)を表示する。コンソール20は、機能設定等の入力操作を受け付けるUI(ユーザインタフェース)として機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像情報等を記録する記録部(図示省略)を接続しても良い。
【0028】
図2に示すように、光源装置14は、中心波長473nmの第1青色レーザ光を発する第1青色レーザ光源(473LD(レーザダイオード))34と、中心波長445nmの第2青色レーザ光を発する第2青色レーザ光源(445LD)36とを発光源として備えている。これらの半導体発光素子からなる各光源34,36の発光は、光源制御部40により個別に制御される。このため、第1青色レーザ光源34の出射光と、第2青色レーザ光源36の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0029】
光源制御部40は、通常観察モードの場合には、第2青色レーザ光源36を点灯させ、第2青色レーザ光を発光させる。これに対して、特殊観察モードの場合には、1フレーム間隔で、第1青色レーザ光源34と第2青色レーザ光源36を交互に点灯させ、第1青色レーザ光と第2青色レーザ光が交互に発光させる。なお、第1,第2青色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、第1青色レーザ光源34と第2青色レーザ光源36は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としても良い。
【0030】
各光源34,36から出射される第1,第2青色レーザ光は、集光レンズ、光ファイバ、合波器等の光学部材(いずれも図示せず)を介してライトガイド(LG)41に入射する。ライトガイド41は、光源装置14と内視鏡12を接続するユニバーサルコードに内蔵されている。ライトガイド41は、各光源34,36からの第1,第2青色レーザ光を、内視鏡12の先端部24まで伝搬する。なお、ライトガイド41としては、マルチモードファイバを使用することができる。一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用することができる。
【0031】
内視鏡12の先端部24は、照明光学系24aと撮像光学系24bを有している。照明光学系24aには、蛍光体44と、照明レンズ45が設けられている。蛍光体44には、ライトガイド41から第1,第2青色レーザ光が入射する。蛍光体44は、第1または第2青色レーザ光が照射されることで蛍光を発する。また、一部の第1または第2青色レーザ光は、そのまま蛍光体44を透過する。蛍光体44を出射した光は、照明レンズ45を介して検体内に照射される。
【0032】
通常観察モードにおいては、第2青色レーザ光が蛍光体44に入射するため、
図3に示すスペクトルの白色光(第2白色光)が検体内に照射される。この第2白色光は、第2青色レーザ光と、この第2青色レーザ光により蛍光体44から励起発光する緑色〜赤色の第2蛍光とから構成される。したがって、第2白色光は、波長範囲が可視光全域に及んでいる。
【0033】
一方、特殊観察モードにおいては、第1青色レーザ光と第2青色レーザ光が蛍光体44に交互に入射することにより、
図4に示すスペクトルの第1白色光と第2白色光が交互に検体内に照射される。第1白色光は、第1青色レーザ光と、この第1青色レーザ光により蛍光体44から励起発光する緑色〜赤色の第1蛍光とから構成される。したがって、第1白色光は、波長範囲が可視光全域に及んでいる。第2白色光は、通常観察モード時に照射される第2白色光と同様である。
【0034】
第1蛍光と第2蛍光は、波形(スペクトルの形状)がほぼ同じであり、第1蛍光の強度(I1(λ))と第2蛍光の強度(I2(λ))の比(以下、フレーム間強度比という)は、何れの波長λにおいても同じである。例えば、I2(λ1)/I1(λ1)=I2(λ2)/I1(λ2)である。このフレーム間強度比I2(λ)/I1(λ)は、酸素飽和度の算出精度に影響を与えるものであるため、光源制御部40により、予め設定された基準フレーム間強度比を維持するように高精度に制御されている。
【0035】
なお、蛍光体44は、第1及び第2青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜赤色に励起発光する複数種類の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl
10O
17)等の蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。また、本実施形態のように、半導体発光素子を蛍光体44の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の第1白色光及び第2白色光が得られる。また、各白色光の強度を容易に調整できる上に、色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0036】
内視鏡12の撮像光学系24bは、撮像レンズ46、ズーミングレンズ47、センサ48を有している(
図2参照)。検体からの反射光は、撮像レンズ46及びズーミングレンズ47を介してセンサ48に入射する。これにより、センサ48に検体の反射像が結像される。ズーミングレンズ47は、ズーム操作部22cを操作することでテレ端とワイド端との間を移動する。ズーミングレンズ47がワイド端側に移動すると検体の反射像が拡大する。一方、ズーミングレンズ47がテレ端側に移動することで、検体の反射像が縮小する。なお、拡大観察をしない場合(非拡大観察時)には、ズーミングレンズ47はワイド端に配置されている。そして、ズーム操作部22cを操作して拡大観察を行う場合に、ズーミングレンズ47はワイド端からテレ端側に移動される。
【0037】
センサ48は、カラーの撮像素子であり、検体の反射像を撮像して画像信号を出力する。センサ48は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサである。また、センサ48は、撮像面にRGBカラーフィルタが設けられたRGB画素を有しており、RGBの各色の画素で光電変換をすることによってR,G,Bの三色の画像信号を出力する。
【0038】
図5に示すように、Bカラーフィルタは380〜560nmの分光透過率を有しており、Gカラーフィルタは450〜630nmの分光透過率を有しており、Rカラーフィルタ580〜760nmの分光透過率を有している。したがって、通常観察モード時に第2白色光が検体内に照射された場合には、B画素には第2青色レーザ光と第2蛍光の緑色成分の一部が入射し、G画素には第2蛍光の緑色成分の一部が入射し、R画素には第2蛍光の赤色成分が入射する。但し、第2青色レーザ光は第2蛍光よりも発光強度が極めて大きいのでB画素から出力するB画像信号の大部分は第2青色レーザ光の反射光成分で占められている。
【0039】
一方、特殊観察モード時に第1白色光が検体内に照射された場合には、B画素には第1青色レーザ光と第1蛍光の緑色成分の一部が入射し、G画素には第1蛍光の緑色成分の一部が入射し、R画素には第1蛍光の赤色成分が入射する。但し、第1青色レーザ光は第1蛍光よりも発光強度が極めて大きいので、B画像信号の大部分は第1青色レーザ光の反射光成分で占められている。なお、特殊観察モード時に第2白色光が検体内に照射されたときのRGB各画素での光入射成分は、通常観察モードの場合と同様である。
【0040】
なお、センサ48としては、撮像面にC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)及びG(グリーン)の補色フィルタを備えた、いわゆる補色イメージセンサを用いても良い。センサ48として補色イメージセンサを用いる場合は、CMYGの四色の画像信号からRGBの三色の画像信号に色変換する色変換部を、内視鏡12、光源装置14またはプロセッサ装置16のいずれかに設けておけば良い。こうすれば補色イメージセンサを用いる場合でも、CMYGの4色の画像信号から色変換によってRGB3色の画像信号を得ることができる。
【0041】
撮像制御部49はセンサ48の撮像制御を行う。
図6に示すように、センサ48の1フレームの期間は、検体からの反射光を光電変換して電荷を蓄積する蓄積期間と、その後に蓄積した電荷を読み出して画像信号を出力する読出期間とからなる。通常観察モード時には、1フレームの期間毎に、第2白色光で照明された検体内をセンサ48で撮像する。これにより、1フレーム毎にセンサ48からRGBの各画像信号が出力される。
【0042】
撮像制御部49は、特殊観察モード時も、通常観察モード時と同様にしてセンサ48に蓄積期間と読出期間を行わせる。但し、特殊観察モード下ではセンサ48の撮像のフレームに同期して第1白色光と第2白色光が交互に検体内に照射されるので、
図7に示すように、センサ48は、1フレーム目に第1白色光で検体内を撮像し、次の2フレーム目では第2白色光で検体内を撮像する。センサ48は、1フレーム目,2フレーム目ともRGBの各色の画像信号を出力するが、依拠する白色光のスペクトルが異なるので、以下では区別のために、1フレーム目に第1白色光で撮像して得られるRGB各色の画像信号をそれぞれR1画像信号,G1画像信号,B1画像信号といい、2フレーム目に第2白色光で撮像して得られるRGB各色の画像信号をR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号という。また、非拡大観察時の各画像信号を第1画像信号、拡大観察時の各画像信号を第2画像信号という。
【0043】
センサ48から出力される各色の画像信号は、CDS(correlated double sampling)/AGC(automatic gain control)回路50送信される(
図2参照)。CDS/AGC回路50は、センサ48から出力されるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路50を経た画像信号は、A/D変換器52によってデジタル画像信号に変換される。こうしてデジタル化された画像信号はプロセッサ装置16に入力される。
【0044】
プロセッサ装置16は、受信部54と、画像処理切替部60と、通常観察画像処理部62と、特殊観察用画像処理部64と、画像表示信号生成部66とを備えている。受信部54は、内視鏡12から入力される画像信号を受信する。受信部54はDSP(Digital Signal Processor)56とノイズ除去部58を備えており、DSP56は、受信した画像信号に対して色補正処理等のデジタル信号処理を行う。ノイズ除去部58は、DSP56で色補正処理等が施された画像信号に対して、例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等によるノイズ除去処理を施す。ノイズが除去された画像信号は、画像処理切替部60に入力される。
【0045】
画像処理切替部60は、モード切替SW22bが通常観察モードにセットされている場合には、画像信号を通常観察画像処理部62に入力する。一方、モード切替SW22bが特殊観察モードに設定されている場合、画像処理切替部60は、画像信号を特殊観察用画像処理部64に入力する。
【0046】
通常観察画像処理部62は、色変換部68と、色彩強調部70と、構造強調部72とを有する。色変換部68は、入力された1フレーム分のRGBの各画像信号を、それぞれR画素、G画素、B画素に割り当てたRGB画像データを生成する。そして、RGB画像データに対して、さらに3×3のマトリックス処理、階調変換処理、3次元LUT処理等の色変換処理を施す。
【0047】
色彩強調部70は、色変換処理済みのRGB画像データに対して、各種色彩強調処理を施す。構造強調部72は、色彩強調処理済みのRGB画像データに対して、空間周波数強調等の構造強調処理を施す。構造強調部72で構造強調処理が施されたRGB画像データは、通常観察画像として画像表示信号生成部66に入力される。
【0048】
特殊観察画像処理部64は、酸素飽和度画像生成部76と、構造強調部78とを有する。酸素飽和度画像生成部76は、酸素飽和度を算出するとともに、算出した酸素飽和度を表す酸素飽和度画像を生成する。また、拡大観察時には、酸素飽和度を算出して酸素飽和度画像を生成するとともに、さらに酸素飽和度のアーチファクトを低減する補正をし、合成酸素飽和度画像を生成する。以下、区別が必要な場合には、酸素飽和度画像生成部76が生成する酸素飽和度画像のうち、非拡大観察時の酸素飽和度画像を非拡大酸素飽和度画像(第1酸素飽和度画像)、拡大観察時の酸素飽和度画像を拡大酸素飽和度画像(第2酸素飽和度画像)、拡大酸素飽和度画像等を用いてアーチファクトを低減した酸素飽和度画像を合成酸素飽和度画像という。
【0049】
構造強調部78は、酸素飽和度画像生成部76から入力される非拡大酸素飽和度画像、または合成酸素飽和度画像に対して、空間周波数強調処理等の構造強調処理を施す。構造強調部72で構造強調処理が施された酸素飽和度画像は、画像表示信号生成部66に入力される。
【0050】
表示用画像信号生成部66は、通常観察画像または酸素飽和度画像を表示用形式の信号(表示用画像信号)に変換し、モニタ18に入力する。これにより、モニタ18には通常観察画像または酸素飽和度画像が表示される。
【0051】
図8に示すように、酸素飽和度画像生成部76は、信号比算出部81と、相関関係記憶部82と、酸素飽和度算出部83と、画像生成部84と、ズーム検出部86と、画像記憶部87と、アーチファクト補正部88と、を備えている。
【0052】
信号比算出部81には、酸素飽和度画像生成部76に入力される2フレーム分の画像信号のうち、B1画像信号、G2画像信号、R2画像信号が入力される。信号比算出部81は、B1画像信号とG2画像信号の信号比B1/G2と、G2画像信号とR2画像信号の信号比R2/G2とを、画素毎に算出する。
【0053】
相関関係記憶部82は、信号比B1/G2及び信号比R2/G2と、酸素飽和度の相関関係を記憶している。この相関関係は、
図9に示す二次元空間上に酸素飽和度の等高線を定義した2次元テーブルで記憶されている。信号比B1/G2及び信号比R2/G2に対する等高線の位置及び形状は、光散乱の物理的なシミュレーションによって予め得られ、各等高線の間隔は、血液量(信号比R2/G2)に応じて変化する。なお、信号比B1/G2及び信号比R2/G2と、酸素飽和度との相関関係はlogスケールで記憶されている。
【0054】
なお、上記相関関係は、
図10に示すように、酸化ヘモグロビン(グラフ90)や還元ヘモグロビン(グラフ91)の吸光特性や光散乱特性と密接に関連し合っている。例えば、第1青色レーザ光の中心波長473nmのように、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数の差が大きい波長では、酸素飽和度の情報を取り扱いやすい。しかしながら、473nmの光に対応する信号を含むB1画像信号は、酸素飽和度だけでなく、血液量にも依存度が高い。そこで、B1画像信号に加え、主として血液量に依存して変化する光に対応するR2画像信号と、B1画像信号とR2画像信号のリファレンス信号となるG2画像信号から得られる信号比B1/G2及びR2/G2を用いることで血液量に依存することなく、酸素飽和度を正確に求めることができる。
【0055】
酸素飽和度算出部83は、相関関係記憶部82に記憶された相関関係を参照し、信号比算出部81で算出された信号比B1/G2及び信号比R2/G2に対応する酸素飽和度を画素毎に算出する。例えば、所定画素における信号比B1/G2及び信号比R2/G2がそれぞれB1
*/G2
*及びR2
*/G2
*である場合、
図11に示すように、相関関係を参照すると、信号比B1
*/G2
*及び信号比R2
*/G2
*に対応する酸素飽和度は「60%」である。したがって、酸素飽和度算出部83は、この画素の酸素飽和度を「60%」と算出する。
【0056】
なお、信号比B1/G2及び信号比R2/G2が極めて大きくなったり、極めて小さくなったりすることはほとんどない。すなわち、信号比B1/G2や信号比R2/G2の値が、酸素飽和度0%の下限ライン93を上回ったり、反対に酸素飽和度100%の上限ライン94を下回ったりすることはほとんどない。但し、算出する酸素飽和度が下限ライン93を下回ってしまった場合には酸素飽和度算出部83は酸素飽和度を0%とし、上限ライン94を上回ってしまった場合には酸素飽和度を100%とする。なお、信号比B1/G2及び信号比R2/G2に対応する点が下限ライン93と上限ライン94の間から外れた場合には、その画素における酸素飽和度の信頼度が低いことが分かるように表示をしたり、酸素飽和度を算出しないようにしても良い。
【0057】
画像生成部84は、酸素飽和度算出部86で算出された酸素飽和度と、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号を用いて、酸素飽和度を画像化した酸素飽和度画像を生成する。具体的には、画像生成部84は、入力される元のB2画像信号,G2画像信号,R2画像信号に対して、酸素飽和度に応じたゲインを画素毎に施し、ゲインを施したB2画像信号,G2画像信号,R2画像信号を用いてRGB画像データを生成する。例えば、画像生成部84は、酸素飽和度が60%以上の画素ではB2画像信号,G2画像信号,R2画像信号のいずれにも同じゲイン「1」を乗じる。これに対して、酸素飽和度が60%未満の画素では、B2画像信号に対して「1」未満のゲインを乗じ、G2画像信号及びR2画像信号に対しては「1」以上のゲインを乗じる。このゲイン処理後のB1画像信号,G2画像信号,R2画像信号を用いて生成されたRGB画像データが酸素飽和度画像である。画像生成部84が生成する酸素飽和度画像のうち、非拡大観察時の各色の画像信号に基づいて生成されたものは非拡大酸素飽和度画像であり、拡大観察時の各色の画像信号に基づいて生成されたものは拡大酸素飽和度画像である。
【0058】
画像生成部84が生成した非拡大酸素飽和度画像や拡大酸素飽和度画像では、高酸素の領域(酸素飽和度が60〜100%の領域)では、通常観察画像と同様の色で表される。一方、酸素飽和度が所定値を下回る低酸素の領域(酸素飽和度が0〜60%の領域)は、通常観察画像とは異なる色(疑似カラー)で表される。
【0059】
なお、本実施形態では、画像生成部84は、低酸素の領域のみ疑似カラー化するゲインを乗じているが、高酸素領域でも酸素飽和度に応じたゲインを施し、酸素飽和度画像の全体を疑似カラー化しても良い。また、低酸素領域と高酸素領域を酸素飽和度60%で分けているがこの境界も任意である。
【0060】
ズーム検出部86は、ズーム操作部22cの操作状況を監視し、ズームの有無(拡大観察をしているか否か)を検出する。ズーム検出部86による検出結果は、画像生成部84に入力される。また、拡大観察をしている場合、ズーム検出部86は例えばズーム操作部22cの操作量に基づいて観察範囲の拡大率を算出する。拡大観察をしていない場合、画像生成部84は、生成した酸素飽和度画像を、構造強調部84に出力するとともに、画像記憶部87に記憶させる。一方、拡大観察時には、画像生成部84は、生成した拡大酸素飽和度画像をアーチファクト補正部88に入力し、酸素飽和度のアーチファクトを補正してから構造強調部78に出力する。
【0061】
画像記憶部87は、非拡大酸素飽和度画像を記憶しておくメモリである。本実施形態では、画像記憶部87は、非拡大酸素飽和度画像のうち最新のものを一つ記憶する。すなわち、画像生成部84が非拡大酸素飽和度画像を生成する度に、画像記憶部87に記憶される非拡大酸素飽和度画像は順次最新のものに更新される。拡大観察が行われると、画像記憶部87に記憶する非拡大酸素飽和度画像の更新は停止する。
【0062】
アーチファクト補正部88は、高周波成分抽出部101と、拡大部分抽出部102と、低周波成分抽出部103と、合成処理部104とを有する。
【0063】
高周波成分抽出部101は、拡大観察時に画像生成部84から入力される拡大酸素飽和度画像からカットオフ周波数以上の高周波成分を抽出する。拡大酸素飽和度画像は、画像記憶部87に記憶された非拡大酸素飽和度画像の一部を拡大したものに対応する。拡大酸素飽和度画像から抽出された高周波成分の画像(以下、高周波成分画像という)は、合成処理部104に入力される。なお、カットオフ周波数は拡大率に応じて予め定められており、拡大率が大きいほどカットオフ周波数が低周波数側にシフトするように定められている。これにより、高周波成分抽出部101は、検体の拡大状況に応じた適切な高周波成分を抽出する。
【0064】
拡大部分抽出部102は、対応領域検出部102aと拡大処理部102bとを有する。対応領域検出部102aは、画像生成部84から拡大酸素飽和度画像を取得するとともに、画像記憶部87から非拡大酸素飽和度画像を取得する。そして、拡大酸素飽和度画像と非拡大酸素飽和度画像のパターンマッチングを行うことにより、非拡大酸素飽和度画像から拡大酸素飽和度画像に対応する領域を抽出する。拡大処理部102bは、非拡大酸素飽和度画像から抽出した領域の画像を、拡大酸素飽和度画像と同じサイズになるように拡大する。
【0065】
低周波成分抽出部103は、拡大部分抽出部102が非拡大酸素飽和度画像から抽出し、拡大処理部102bで拡大された画像から、カットオフ周波数未満の低周波成分を抽出する。低周波成分抽出部が非拡大酸素飽和度画像から抽出した低周波成分の画像(以下、低周波成分画像という)は、合成処理部104に入力される。なお、低周波成分抽出部103が閾値として用いるカットオフ周波数は、高周波成分抽出部101で用いるものと同じ値である。
【0066】
合成処理部104は、高周波成分抽出部101から入力される高周波成分画像と、低周波成分抽出部103から入力される低周波成分画像とを、位置合わせをして合成することにより、アーチファクトが補正された合成酸素飽和度画像を生成する。合成処理部104が生成した合成酸素飽和度画像は、構造強調部78に入力され、構造強調処理を施された後、画像表示信号生成部66で表示用画像信号に変換され、モニタ18に表示される。
【0067】
次に、本実施形態の内視鏡システム10による観察の流れを
図12のフローチャートに沿って説明する。まず、通常観察モードにおいて、最も遠景の状態からスクリーニングを行う(S10)。通常観察モードでは、通常観察画像がモニタ18に表示される。このスクリーニング時に、ブラウニッシュエリアや発赤等の病変の可能性がある部位(以下、病変可能性部位という)を発見した場合(S11)には、モード切替SW22bを操作して、特殊観察モードに切り替える(S12)。そして、この特殊観察モードにおいて、病変可能性部位が低酸素状態になっているか否かの診断を行う。
【0068】
特殊観察モードでは、第1及び第2白色光がセンサ48の撮像フレームに同期して交互に検体内に照射されるので、第1白色光が照射されたフレームではセンサ48はR1画像信号,G1画像信号,B1画像信号を出力し、第2白色光が照射されたフレームではR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号を出力する。これら2フレーム分の画像信号に基づいて、画素毎に酸素飽和度が算出される(S13)。
【0069】
また、酸素飽和度画像生成部76はズーム検出部86によって拡大観察をしているか否かを検出する(S14)。非拡大観察時には、画像生成部84により、R2画像信号,G2画像信号,B2画像信号に酸素飽和度に応じてゲインを施し、非拡大酸素飽和度画像を生成する(S15)。生成された非拡大酸素飽和度画像は、画像記憶部87に記憶されるとともに(S16)、モニタ18に表示される。
【0070】
そして、モニタ18に表示された非拡大酸素飽和度画像に基づいて、ドクターは病変可能性部位が低酸素状態になっているかどうかを確認する。こうした酸素飽和度の表示は、通常観察モードに切り替えられるまで継続して行わる(S25)。また、診断を終了する場合には、内視鏡12の挿入部21を検体内から抜き出す(S26)。
【0071】
一方、例えばモニタ18に表示された非拡大酸素飽和度画像によって、病変可能性部位が疑似カラーで表示され、低酸素状態になっていることが確認されると、正確な診断のために、ズーム操作部22cを操作して低酸素状態の病変可能性部位(以下、低酸素領域という)を拡大観察する。この場合、ズーム検出部86は拡大観察を行なっていることを検出する(S14)。すると、画像生成部84は、拡大観察時のR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号に酸素飽和度に応じてゲインを施し、拡大酸素飽和度画像を生成する(S18)。ここで生成される拡大酸素飽和度画像では非拡大酸素飽和度画像には見られないような酸素飽和度のアーチファクトが発生する場合があるので、内視鏡システム10では拡大観察時に特有のアーチファクトを補正する。
【0072】
具体的には、
図13に示すように、高周波成分抽出部101によって、拡大酸素飽和度画像120からカットオフ周波数以上の高周波成分を抽出し(S19)、抽出した高周波成分からなる高周波成分画像121が生成される。
【0073】
拡大酸素飽和度画像120は、低酸素領域123が拡大されたことにより非拡大酸素飽和度画像125では確認できない微細構造や酸素飽和度の局所的な変化等(以下、まとめて高周波構造という)124を確認することができるが、低周波なアーチファクト122が発生する。このため、拡大酸素飽和度画像120では高周波構造124が確認できるとしても、アーチファクト122のために必ずしも高周波成分124を確認しやすい状態とはいえない。しかし、高周波成分画像121では、主にアーチファクト122である低周波成分がカットされているので、高周波構造124がより鮮明に表れる。但し、高周波成分画像121では、低周波成分がカットされているので、低周波な検体の構造やなだらかな酸素飽和度の変化は確認できない。
【0074】
一方、拡大部分抽出部102は、拡大酸素飽和度画像120を取得するとともに、画像記憶部87から非拡大酸素飽和度画像125を取得し、対応領域検出部102aによってこれらのパターンマッチングをすることによって、非拡大酸素飽和度画像125から拡大観察している部分(拡大酸素飽和度画像120)に対応する領域126を検出する(S20)。検出された領域126の画像は、拡大処理部102bによって拡大酸素飽和度画像120に合わせてサイズ変換される(S21)。そして、低周波成分抽出部103によって、サイズ変換後の領域126の画像127からカットオフ周波数未満の低周波成分が抽出され、抽出した低周波成分からなる低周波成分画像128が生成される(S22)。
【0075】
非拡大酸素飽和度画像125では、遠景画像であるため、微細構造124は確認できないものの、拡大観察時に起こり得るような酸素飽和度のアーチファクト122は発生しないので、例えば低酸素領域123の範囲等が表れている。このため、非拡大酸素飽和度画像125に基づいて生成された低周波成分画像128は、検体の低周波な構造や酸素飽和度のなだらかな変化等(以下、まとめて低周波構造という)129が正しく表れている。
【0076】
こうして高周波成分画像121と低周波成分画像128が生成されると、合成処理部104はこれらを合成し、合成酸素飽和度画像130を生成する(S23)。すなわち、合成酸素飽和度画像130では、高周波成分画像121の高周波構造124と低周波成分画像128の低周波構造129が重畳した画像である。このため、合成酸素飽和度画像130は、拡大酸素飽和度画像120に見られるようなアーチファクト122はなく、かつ、高周波構造124と低周波構造129を両方とも確認可能である。こうして生成された合成酸素飽和度画像130は、構造強調処理等を経た後、モニタ18に表示される(S24)。
【0077】
なお、
図14に示すように、拡大観察時に合成酸素飽和度画像130を生成及び表示した場合、内視鏡システム10は、内視鏡システム10がアーチファクト122を補正するための特別な上記画像処理を行ったことを明示する表示131を、合成酸素飽和度画像130とともにモニタ18の表示画面上に表示する。表示131は、例えば「拡大画像処理」等である。
【0078】
以上のように、内視鏡システム10は、酸素飽和度を算出及び表示する特殊観察モードにおいて拡大観察を行う場合に、非拡大酸素飽和度画像125の低周波成分と拡大酸素飽和度画像120の高周波成分を合成した合成酸素飽和度画像130を生成及び表示する。この合成酸素飽和度画像130は、拡大酸素飽和度画像125のアーチファクト122は補正(除去)されており、かつ、検体の高周波構造124と低周波構造129を両方とも観察することができるので、ドクターは低酸素領域123をより仔細に確認して正確な診断を行うことができる。
【0079】
なお、上記第1実施形態では、非拡大観察時に低酸素領域123を確認した後、低酸素領域123の拡大観察をしているが、非拡大観察時に低酸素領域123を検出しない場合でも、拡大観察をしてよい。例えば、
図15に示すように、通常観察モードでのスクリーニング時に病変可能性部位を発見し、特殊観察モードに切り替えても、非拡大酸素飽和度画像141に低酸素領域が認められないことがある。この場合、ドクターは病変可能性部位が低酸素状態の病変でないことを確実に確認するために、病変可能性部位を拡大観察することがある。しかし、この場合の拡大酸素飽和度画像142では、高周波構造143が確認できるものの、拡大観察をしていることによって酸素飽和度のアーチファクト122も発生する。
【0080】
内視鏡システム10は、特殊観察モードで拡大操作がなされれば、非拡大酸素飽和度画像141に低酸素領域があるか否かに関わらず、拡大酸素飽和度画像142から高周波成分を抽出し、高周波成分画像144を生成する。この高周波成分画像144では、アーチファクト122が補正され、高周波構造143が確認できる。但し、高周波成分画像144では、アーチファクト122と同程度の周波数の低周波構造も除去されてしまっている。
【0081】
また、内視鏡システム10は、非拡大酸素飽和度画像141から拡大酸素飽和度画像142に対応する領域145を抽出し、サイズ変換をした画像146を生成する。そして、この画像146から低周波成分を抽出し、低周波成分画像147を生成する。低周波成分画像147では、検体の低周波構造148が表れる。
【0082】
そして、高周波成分画像144と低周波成分画像147を合成し、合成酸素飽和度画像150を生成すると、合成酸素飽和度画像150では、アーチファクト122に邪魔されることなく、検体の高周波構造143と低周波構造148を両方とも観察することができる。高周波構造143が低酸素状態であれば、擬似カラーで表示されているので、非拡大酸素飽和度画像141で低酸素状態が確認できなくても、拡大観察をしてはじめて観察され得る低酸素状態の高周波構造143を合成酸素飽和度画像150から発見することができる。
【0083】
[第2実施形態]
第1実施形態の内視鏡システム10では、ズーム操作を監視することにより、非拡大酸素飽和度画像125,141をそのまま表示するか、アーチファクト122が補正された合成酸素飽和度画像130,150を生成して表示をするかを切り替えているが、ズーム操作を監視する代わりに、生成された酸素飽和度画像(非拡大酸素飽和度画像または拡大酸素飽和度画像)からアーチファクト122を検出することにより、合成酸素飽和度画像を生成するか否かを切り換えても良い。
【0084】
この場合、第1実施形態の内視鏡システム10の酸素飽和度生成部76を、
図16に示す酸素飽和度画像生成部160に置き換える。その他の構成は、第1実施形態の内視鏡システム10と同じである。
【0085】
図16に示すように、酸素飽和度画像生成部160は、第1実施形態の酸素飽和度画像生成部76に対して、ズーム検出部86を除き、アーチファクト検出部161を加えたものである。また、酸素飽和度画像生成部160は、第1実施形態の酸素飽和度画像生成部76と同じ信号比検出部81,相関関係記憶部82,酸素飽和度算出部83,画像生成部84,画像記憶部87及びアーチファクト補正部88を備える。なお、第1実施形態では、ズーム操作の有無に応じて、画像生成部84が生成する酸素飽和度画像を非拡大酸素飽和度画像と拡大酸素飽和度画像に区別したが、本実施形態では、非拡大酸素飽和度画像と拡大酸素飽和度画像の区別はせず、画像生成部84が生成する画像を全て酸素飽和度画像という。
【0086】
アーチファクト検出部161は、画像生成部84から酸素飽和度画像を取得し、取得した酸素飽和度画像からアーチファクト122を検出する。拡大観察によって発生するアーチファクト122は、発生の仕方(分布や強度等)が先端部24での照明光学系24aと撮像光学系24bの配置等の内視鏡12の構造と、検体の拡大率(または先端部24と検体の距離)によってほぼ定まっている。このため、アーチファクト検出部161は、酸素飽和度画像の任意の1点または複数点で画素値を監視することにより、アーチファクト122が発生しているか否かを検出する。
【0087】
例えば、必ず低酸素状態になるアーチファクトが発生する位置の画素を監視する場合、そのB画素値を第1閾値と比較し、ゲインによってB画素値が第1閾値以下になっている場合(低酸素の疑似カラーになっている場合)にアーチファクトの発生を検出する。監視している画素で検体自体がアーチファクトではなく本当に低酸素状態になっている場合もあるが、アーチファクトは検体で発生し得る低酸素状態よりも概ね大きいので、第1閾値をある程度大きく設定しておけば、誤検出することなく、アーチファクトの発生を検出可能である。
【0088】
なお、必ず高酸素状態になるアーチファクトが発生する位置の画素を監視しても良い。また、複数点で画素値を監視すれば検出精度が向上するので、2点以上で画素値を監視することが好ましい。さらに、アーチファクトの検出方法は任意であり、画素値を閾値と比較する代わりに、アーチファクトの周波数成分を抽出することにより、アーチファクト122の発生を検出しても良い。
【0089】
画像生成部84から取得した酸素飽和度画像からアーチファクトが検出されなかった場合、アーチファクト検出部161は、取得した酸素飽和度画像を構造強調部78に出力し、モニタ18に表示させる。また、アーチファクト検出部161は、アーチファクトが検出されなかった酸素飽和度画像を画像記憶部87に記憶させる。すなわち、アーチファクト検出部161でアーチファクトが検出されなかった酸素飽和度画像は、第1実施形態の非拡大酸素飽和度画像に対応する。
【0090】
一方、アーチファクト検出部161は、アーチファクトを検出した場合、アーチファクトを検出した酸素飽和度画像をアーチファクト補正部88に入力し、検出したアーチファクトを補正してから構造強調部87に出力させる。すなわち、アーチファクトが検出された酸素飽和度画像は、第1実施形態の拡大酸素飽和度画像に対応する。
【0091】
アーチファクト補正部88の構成は、第1実施形態と同じであり、高周波成分抽出部101によって、アーチファクトが検出された酸素飽和度画像から高周波成分が抽出され、高周波成分画像が生成される。
【0092】
一方、拡大部分抽出部102は、画像記憶部87からアーチファクトが検出されなかった過去の酸素飽和度画像を取得するとともに、アーチファクト検出部161からアーチファクトが検出された酸素飽和度画像を取得し、対応領域検出部102aでこれらのパターンマッチングを行なって、アーチファクトが検出されなかった酸素飽和度画像から、アーチファクトが検出された酸素飽和度画像に対応する領域を検出し、この領域を拡大処理部102bによってサイズ変換をする。そして、低周波成分抽出部103によって、サイズ変換された画像から低周波成分を抽出し、低周波成分画像を生成する。
【0093】
そして、合成処理部104で高周波成分画像と低周波成分画像を合成し、アーチファクトが補正された合成酸素飽和度画像を生成し、構造強調部87に出力する。
【0094】
このように、第2実施形態の酸素飽和度生成部160を備える内視鏡システムは、ズーム操作の監視する代わりに、酸素飽和度画像からアーチファクト122の発生を検出し、アーチファクトが検出された場合に検出されたアーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像を生成する。すなわち、酸素飽和度生成部160を備える内視鏡システムはアーチファクトの検出することで、拡大観察を検出する。この内視鏡システムは、ズーム操作によらず、内視鏡12の先端部24を検体に近づけて拡大観察をする場合に、アーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像を生成し、表示することができる。
【0095】
なお、第1及び第2実施形態を組み合わせても良い。具体的には、第1実施形態のようにズーム操作を監視しつつ、ズーム操作が検出されない場合には、第2実施形態の流れでアーチファクトの補正を行い、ズーム操作が検出された場合には、アーチファクトが発生するものとして第1実施形態のように強制的にアーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像を生成すれば良い。このように、第1及び第2実施形態を組み合わせた内視鏡システムによれば、ズーム操作によって拡大観察をする場合と、ズーム操作によらず、内視鏡12の先端部24を検体に近づけて拡大観察をする場合とのどちらでも正確な酸素飽和度画像(合成酸素飽和度画像)を生成し、表示することができる。
【0096】
[第3実施形態]
第1,第2実施形態では、画像生成部84で生成された酸素飽和度画像(非拡大酸素飽和度画像,拡大酸素飽和度画像)を用いてアーチファクトが補正された合成酸素飽和度画像を生成しているが、酸素飽和度画像を用いる代わりに、各画像信号の段階でアーチファクトを補正しても良い。この場合、第1実施形態の内視鏡システム10の酸素飽和度生成部76を、
図17に示す酸素飽和度画像生成部170に置き換える。その他の構成は、第1実施形態の内視鏡システム10と同じである。
【0097】
図17に示すように、酸素飽和度画像生成部170は、信号比検出部81と、相関関係記憶部82と、酸素飽和度算出部83と、画像生成部84と、ズーム検出部86と、画像記憶部87と、アーチファクト補正部171と、画像信号記憶部172と、信号処理切替部173とを備える。これらのうち、信号比検出部81、相関関係記憶部82、酸素飽和度算出部83、画像生成部84及びズーム検出部86は第1実施形態のものと同じものである。
【0098】
但し、ズーム検出部86による検出結果は、信号処理切替部173に入力される。信号処理切替部173は、特殊観察モード時に入力される各色の画像信号の入力先を切り替えることにより、入力された画像信号に施す信号処理の内容を切り替える。具体的には、ズーム検出部86によってズーム操作が検出されない場合(非拡大観察をする場合)、信号処理切替部173は、酸素飽和度画像生成部170に入力される各画像信号を、信号比算出部81と画像生成部84に入力し、酸素飽和度画像を生成させる。
【0099】
また、ズーム操作が検出されない場合に入力された画像信号は、画像信号記憶部172に記憶させる。すなわち、画像信号記憶部172は、第1実施形態の非拡大酸素飽和度画像に対応する非拡大観察時の画像信号(以下、非拡大画像信号という)を記憶する。
【0100】
一方、ズーム検出部86によってズーム操作が検出され、拡大観察をしていることが検出された場合、信号処理切替部173は、この拡大観察時の画像信号(以下、拡大画像信号という)をアーチファクト補正部171に入力する。
【0101】
アーチファクト補正部171は、高周波成分抽出部181と、拡大抽出部182と、低周波成分抽出部183と、合成処理部184を備える。また、拡大抽出部182は、対応領域検出部182aと拡大処理部182bとを備える。これら各部の基本的な作用は第1実施形態のものと同じであるが、アーチファクト補正部171の高周波成分抽出部181、拡大抽出部182(対応領域検出部182aと拡大処理部182b)、低周波成分抽出部183及び合成処理部184は、酸素飽和度画像ではなく、画像信号に対して各処理をする。
【0102】
すなわち、高周波成分抽出部181には、拡大観察時に出力された各色の画像信号(以下、拡大画像信号という)が入力され、これらの各色の拡大画像信号からそれぞれ高周波成分を抽出する。そして、抽出した高周波成分からなる高周波成分画像信号をフレーム毎及び色毎に生成する。
【0103】
また、対応領域検出部182aは、信号処理切替部173から拡大画像信号を取得するとともに、画像信号記憶部172から非拡大観察時に記憶された各色の画像信号(以下、非拡大画像信号という)を取得する。そして、各色の拡大画像信号と非拡大画像信号のパターンマッチングを行うことにより、拡大画像信号が表す像に対応する部分を、非拡大画像信号から抽出する。拡大処理部182bは、拡大画像信号に対応するサイズになるように、非拡大画像信号から抽出された部分を拡大するサイズ変換をする。低周波成分抽出部183は、このサイズ変換がなされた画像信号から低周波成分を抽出し、低周波成分画像信号を生成する。そして、合成処理部184は、対応するフレーム及び色の高周波成分画像信号と低周波成分画像信号とを合成し、合成画像信号を生成する。
【0104】
これらの処理はフレーム毎及び色毎に行われる。アーチファクト補正部171には1フレーム目のR1画像信号,G1画像信号,B1画像信号と2フレーム目のR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号が入力されるので、これに対応するように、合成処理部184からは、アーチファクトが補正された各合成画像信号(例えば、R1合成画像信号,G1合成画像信号,B1合成画像信号と2フレーム目のR2合成画像信号,G2合成画像信号,B2合成画像信号)を出力する。
【0105】
合成処理部184が出力する各合成画像信号は、信号比算出部81と画像生成部84に入力される。これにより、各合成画像信号に基づいてアーチファクトがない合成酸素飽和度画像が生成され、表示される。
【0106】
このように、第1実施形態のアーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像を生成する処理は、酸素飽和度画像の生成前に、画像信号の段階で予め行うことができる。もちろん、第2実施形態の合成酸素飽和度画像を生成する処理や、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせる場合も同様にすれば良い。
【0107】
なお、第3実施形態では、酸素飽和度画像生成部170に入力される各画像信号の段階でアーチファクトを補正する処理をしているが、信号比算出部81が出力する信号比B1/G2及び信号比R2/G2に対して同様のアーチファクトを補正する処理を施しても良い。また、酸素飽和度算出部83が出力する酸素飽和度のデータに対して同様のアーチファクトを補正する処理を施しても良い。
【0108】
なお、第1〜第3実施形態の内視鏡システムでは、内視鏡12の先端部24に蛍光体44を設けたが、これに代えて
図18に示す内視鏡システム300のように、光源装置14の内部に蛍光体44を設けても良い。この場合には、第1青色レーザ光源(473LD)34及び第2青色レーザ光源(445LD)36と、ライトガイド41との間に蛍光体44を設ける。そして、第1青色レーザ光源34または第2青色レーザ光源36に、第1青色レーザ光または第2青色レーザ光を蛍光体44に向けて照射させる。これにより、第1白色光または第2白色光が発せられる。この第1または第2白色光は、ライトガイド41を介して、検体内に照射される。それ以外については、第1〜第3実施形態の内視鏡システムと同様である。
【0109】
また、第1〜第3実施形態では、第1及び第2青色レーザ光を同一の蛍光体44に入射させているが、第1青色レーザ光と第2青色レーザ光をそれぞれ別々の第1蛍光体、第2蛍光体に入射させても良い。
【0110】
[第4実施形態]
図19に示すように、内視鏡システム400の光源装置14には、第1及び第2青色レーザ光源34,36と光源制御部40の代わりに、LED(Light Emitting Diode)光源ユニット401と、LED光源制御部404が設けられている。また、内視鏡システム400の照明光学系24aには蛍光体44が設けられていない。それ以外については、第1〜第3実施形態の内視鏡システムと同様である。
【0111】
LED光源ユニット401は、特定の波長帯域に制限された光を発光する光源として、R−LED401a,G−LED401b,B−LED401cを有する。
図20に示すように、R−LED401aは、600〜720nmの赤色領域の赤色帯域光(以下、単に赤色光という)し、G−LED401bは、480〜620nmの緑色領域の緑色帯域光(以下、単に緑色光)を発光する。また、B−LED401cは、400〜500nmの青色領域の青色帯域光(以下、単に青色光という)を発光する。
【0112】
また、LED光源ユニット401は、B−LED401cが発する青色光の光路上に挿抜されるハイパスフィルタ(HPF)402を有する。ハイパスフィルタ402は、450nm以下の波長帯域の青色光をカットし、450nmより長波長帯域の光を透過する。
【0113】
ハイパスフィルタ402のカットオフ波長(450nm)は、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数がほぼ等しい波長であり(
図10参照)、この波長を境に酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数が逆転する。本実施形態の場合、相関関係記憶部82に記憶された相関関係は、酸化ヘモグロビンの吸光係数が還元ヘモグロビンの吸光係数よりも大きい場合のものなので、カットオフ波長以下の波長帯域に基づくシグナルは、信号比B1/G2が473nmで測定する本来の値よりも低下し、不正確な酸素飽和度が算出される原因になる。このため、ハイパスフィルタ402は、酸素飽和度を算出するためのB1画像信号を取得する時に、カットオフ波長以下の波長帯域の光が検体に照射されないようにする。
【0114】
したがって、ハイパスフィルタ402は、特殊観察モード時にB−LED401cの前に挿入され、通常観察モード時には退避位置に退避される。ハイパスフィルタ402の挿抜は、LED光源制御部404の制御の下、HPF挿抜部403によって行われる。
【0115】
LED光源制御部404は、LED光源ユニット401の各LED401a〜401cの点灯/消灯、及びハイパスフィルタ402の挿抜を制御する。具体的には、
図21に示すように、通常観察モードの場合、LED光源制御部404は、各LED401a〜401cを全て点灯させ、ハイパスフィルタ402はB−LED401cの光路上から退避させる。
【0116】
一方、
図22に示すように、特殊観察モードの場合、LED光源制御部40は、ハイパスフィルタ402をB−LED401cの光路上に挿入する。そして、1フレーム目は、B−LED401cを点灯させ、R−LED401a及びG−LED401bを消灯させることにより、450nm以下の波長帯域がカットされた青色光を検体内に照射する。そして、2フレーム目は、R−LED401a、G−LED401b、B−LED401cを全て点灯させ、B−LED401cが発する青色光のうち450nm以下の波長帯域がカットされた青色光と、R−LED401aが発する赤色光と、G−LED401bが発する緑色光からなる白色光を検体内に照射させる。これにより、センサ48は、1フレーム目には、B1画像信号を出力し、2フレーム目にはR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号をそれぞれ出力する。
【0117】
したがって、その後の処理は第1〜第3実施形態の内視鏡システムと同様に行うことができる。このため、LEDを用いた第4実施形態の内視鏡システム400によってもアーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像の生成し、表示することができる。
【0118】
なお、第4実施形態では、特殊観察モード時の1フレーム目、2フレーム目ともハイパスフィルタ102を挿入したまま検体を撮像しているが、1フレーム目だけハイパスフィルタ102を挿入し、2フレーム目にはハイパスフィルタ102を退避させても良い。また、特殊観察モード時の1フレーム目では、B−LED401cだけを点灯させ、青色光だけを検体に照射しているが、1フレーム目でもR−LED401a及びG−LED401bを点灯させ、R1画像信号及びG1画像信号をセンサ48に出力させても良い。
【0119】
[第5実施形態]
図23に示すように、内視鏡システム500の光源装置14には、第1及び第2青色レーザ光34,36と光源制御部40の代わりに、広帯域光源501と、回転フィルタ502と、回転フィルタ制御部503が設けられている。また、内視鏡システム500のセンサ505は、カラーフィルタが設けられていないモノクロの撮像素子である。それ以外については、第1〜第3実施形態の内視鏡システムと同じである。
【0120】
広帯域光源501は、例えばキセノンランプ、白色LED等からなり、波長帯域が青色から赤色に及ぶ白色光を発する。回転フィルタ502は、通常観察モード用フィルタ510と特殊観察モード用フィルタ511とを備えており(
図24参照)、広帯域光源501から発せられる白色光がライトガイド41に入射される光路上に、通常観察モード用フィルタ510を配置する通常観察モード用の第1位置と、特殊観察モード用フィルタ511を配置する特殊観察モード用の第2位置との間で径方向に移動可能である。この第1位置と第2位置への回転フィルタ502の相互移動は、選択された観察モードに応じて回転フィルタ制御部503によって制御される。また、回転フィルタ502は、第1位置または第2位置に配置された状態で、センサ505の撮像フレームに応じて回転する。回転フィルタ502の回転速度は、選択された観察モードに応じて回転フィルタ制御部503によって制御される。
【0121】
図24に示すように、通常観察モード用フィルタ510は、回転フィルタ502の内周部に設けられている。通常観察モード用フィルタ510は、赤色光を透過するRフィルタ510aと、緑色光を透過するGフィルタ510bと、青色光を透過するBフィルタ510cと有する。したがって、回転フィルタ502を通常光観察モード用の第1位置に配置すると、広帯域光源501からの白色光は、回転フィルタ502の回転に応じてRフィルタ510a、Gフィルタ510b、Bフィルタ510cのいずれかに入射する。このため、検体には、透過したフィルタに応じて、赤色光、緑色光、青色光が順次照射され、センサ505は、これらの反射光によりそれぞれ検体を撮像することにより、R画像信号、G画像信号、B画像信号を順次出力する。
【0122】
また、特殊観察モード用フィルタ511は、回転フィルタ502の外周部に設けられている。特殊観察モード用フィルタ511は、赤色光を透過するRフィルタ511aと、緑色光を透過するGフィルタ511bと、青色光を透過するBフィルタ511cと、473±10nmの狭帯域光を透過する狭帯域フィルタ511dとを有する。したがって、回転フィルタ502を通常光観察モード用の第2位置に配置すると、広帯域光源501からの白色光は、回転フィルタ502の回転に応じてRフィルタ511a、Gフィルタ511b、Bフィルタ511c、狭帯域フィルタ511dのいずれかに入射する。このため、検体には、透過したフィルタに応じて、赤色光、緑色光、青色光,狭帯域光(473nm)が順次照射され、センサ505は、これらの反射光によりそれぞれ検体を撮像することにより、R画像信号、G画像信号、B画像信号、及び狭帯域画像信号を順次出力する。
【0123】
特殊観察モードで得られるR画像信号とG画像信号は、第1実施形態のR1(またはR2)画像信号とG1(またはG2)画像信号に対応する。また、特殊観察モードで得られるB画像信号は、第1実施形態のB2画像信号に対応し、狭帯域画像信号はB1画像信号に対応する。したがって、その後の処理は第1〜第3実施形態の内視鏡システムと同様に行うことができる。このため、回転フィルタ502を用いた第5実施形態の内視鏡システム500によってもアーチファクトを補正した合成酸素飽和度画像の生成し、表示することができる。
【0124】
なお、第1〜第5実施形態では、信号比B1/G2と信号比R2/G2に基づいて酸素飽和度を算出しているが、信号比B1/G2のみに基づいて酸素飽和度を算出しても良い。この場合には、相関関係記憶部82には信号比B1/G2と酸素飽和度の相関関係を記憶しておけば良い。
【0125】
なお、第1〜第5実施形態では、酸素飽和度を画像化した酸素飽和度画像を生成及び表示しているが、これに加えて、血液量を画像化した血液量画像を生成及び表示しても良い。血液量は信号比R2/G2と相関があるので、信号比R2/G2に応じて異なる色を割り当てることで、血液量を画像化した血液量画像を作成することができる。
【0126】
なお、第1〜第5実施形態では酸素飽和度を算出しているが、これに代えて、あるいはこれに加えて、「血液量(信号比R2/G2)×酸素飽和度(%)」から求まる酸化ヘモグロビンインデックスや、「血液量×(1−酸素飽和度)(%)」から求まる還元ヘモグロビンインデックス等、他の生体機能情報を算出しても良い。