(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射線源から発せられ、被写体を透過した放射線に基づく放射線画像を検出する放射線画像検出装置を備える放射線撮影システムであり、前記放射線源と前記放射線画像検出装置のうちの少なくともいずれかを複数台有する場合において、撮影に使用する放射線源と放射線画像検出装置の組み合わせを選択することが可能な前記放射線撮影システムに用いられる信号通信システムにおいて、
前記放射線源に配され、撮影に使用すると選択された組み合わせに対応する放射線画像検出装置が前記放射線源に対向して配置されているか否かを検出するための検出信号を無線送信する送信機と、
前記放射線画像検出装置に配され、前記検出信号を受信する受信機と、
前記送信機と前記受信機の間で前記検出信号を中継する信号中継装置であり、
任意の箇所に配置可能で、前記送信機が発した前記検出信号を受信する中継受信部と、
任意の箇所に配置可能で、前記中継受信部で受信した前記検出信号を前記受信機に無線送信する中継送信部とを有する信号中継装置とを備えることを特徴とする信号通信システム。
前記信号中継装置は、前記中継受信部および前記中継送信部を前記任意の箇所に着脱自在に取り付けるための取付具を有することを特徴とする請求項1に記載の信号通信システム。
前記中継受信部および前記中継送信部は、前記放射線源および前記放射線画像検出装置が設置される撮影室の壁面、撮影室の天井、または前記放射線画像検出装置が取り付けられる撮影台の少なくともいずれかに取り付け可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号通信システム。
前記信号中継装置が複数組ある場合、前記中継受信部と前記中継送信部は、組毎に識別可能な形態で前記検出信号を遣り取りすることを特徴とする請求項7に記載の信号通信システム。
前記信号中継装置は、1組の前記送信機および前記受信機につき、前記中継受信部を複数台有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の信号通信システム。
前記受信機による前記検出信号の受信有無に応じて、撮影に使用すると選択された組み合わせに対応する放射線画像検出装置が前記放射線源に対向して配置されているか否かを判定する判定装置と、
撮影に使用すると選択された組み合わせに対応する放射線画像検出装置が前記放射線源に対向して配置されていないと前記判定装置で判定した場合、撮影に使用する放射線源と放射線画像検出装置の組み合わせの選択が誤っていたことを報せる表示装置とを備えることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の信号通信システム。
前記判定装置は、複数台の放射線画像検出装置の前記受信機で前記検出信号が受信された場合、前記信号強度測定部の測定結果に応じて、前記受信機で前記検出信号が受信された複数台の放射線画像検出装置のうち、前記放射線源と真に対向して配置されている1台の放射線画像検出装置を選別し、前記判定を行うことを特徴とする請求項13に記載の信号通信システム。
前記表示装置は、前記信号強度測定部の測定結果に応じて、前記受信機で前記検出信号が受信された複数台の放射線画像検出装置のうち、前記放射線源と真に対向して配置されている可能性が高い放射線画像検出装置を表示することを特徴とする請求項13または14に記載の信号通信システム。
放射線源から発せられ、被写体を透過した放射線に基づく放射線画像を検出する放射線画像検出装置を備える放射線撮影システムであり、前記放射線源と前記放射線画像検出装置のうちの少なくともいずれかを複数台有する場合において、撮影に使用する放射線源と放射線画像検出装置の組み合わせを選択することが可能な前記放射線撮影システムに用いられる信号中継装置において、
任意の箇所に配置可能な中継受信部であり、前記放射線源に配された送信機から無線送信された、撮影に使用すると選択された組み合わせに対応する放射線画像検出装置が前記放射線源に対向して配置されているか否かを検出するための検出信号を受信する前記中継受信部と、
任意の箇所に配置可能な中継送信部であり、前記中継受信部で受信した前記検出信号を、前記放射線画像検出装置に配された受信機に無線送信する前記中継送信部とを備えることを特徴とする信号中継装置。
放射線源から発せられ、被写体を透過した放射線に基づく放射線画像を検出する放射線画像検出装置を複数台備え、撮影に使用する放射線源と放射線画像検出装置の組み合わせを選択することが可能な放射線撮影装置において、
前記放射線画像検出装置に配された受信機と、
前記放射線源に配された送信機から無線送信された、撮影に使用すると選択された組み合わせに対応する放射線画像検出装置が前記放射線源に対向して配置されているか否かを検出するための検出信号を前記受信機に中継する信号中継装置であり、
任意の箇所に配置可能で、前記送信機が発した前記検出信号を受信する中継受信部と、
任意の箇所に配置可能で、前記中継受信部で受信した前記検出信号を前記受信機に無線送信する中継送信部とを有する前記信号中継装置とを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1において、X線撮影システム2は、X線撮影装置10とX線発生装置11とを備える。X線撮影装置10は、可搬型のX線画像検出装置であり、被写体(患者)Hを透過したX線を検出してX線画像を出力する2台の電子カセッテ12a、12bと、電子カセッテ12a、12bの駆動制御を行う撮影制御装置13と、X線画像の保存や表示処理を担うコンソール14とで構成されている。X線発生装置11は、被写体Hに向けてX線を照射するX線源15と、X線源15の駆動を制御する線源制御装置16とで構成されている。
【0024】
X線撮影装置10とX線発生装置11は電気的に接続されていない。したがってこれらの装置が同期して動作するための信号は、これらの装置間で遣り取りされない。その代わりに、電子カセッテ12a、12bには、X線の照射開始を検出する機能が備えられており、この照射開始検出機能により、X線発生装置11によるX線の照射開始タイミングと電子カセッテ12a、12bの動作タイミングとの同期をとることが可能となっている。
【0025】
電子カセッテ12a、12bは、被写体Hを立位姿勢で撮影するための立位撮影台17のホルダ17aや、被写体Hを臥位姿勢で撮影するための臥位撮影台18のホルダ18aに着脱自在に取り付けられる。
図1では、電子カセッテ12aが立位撮影台17のホルダ17aに、電子カセッテ12bが臥位撮影台18のホルダ18aにそれぞれ取り付けられ、電子カセッテ12aを用いてX線撮影を行っている状態を示している。
図1に示す取り付け状態とは逆に、電子カセッテ12aを臥位撮影台18のホルダ18aに、電子カセッテ12bを立位撮影台17のホルダ17aに付け替えることも可能である。なお、電子カセッテ12a、12bは同じ構成を有するため、以下の説明では、特に区別が必要ない場合はこれらをまとめて「電子カセッテ12」と表現する。
【0026】
電子カセッテ12は、前面44a(
図6参照)がX線源15と対向する姿勢で各撮影台17、18のホルダ17a、18aに保持される。被写体Hは、撮影部位がX線源15と電子カセッテ12との間に位置するよう、オペレータによりポジショニングされる。X線源15は、線源移動装置(図示せず)により所望の方向および位置にセット可能であり、立位撮影台17のホルダ17aに保持された電子カセッテ12aと対向する実線で示す位置と、臥位撮影台18のホルダ18aに保持された電子カセッテ12bと対向する破線で示す位置とに移動され(
図2〜
図4も参照)、立位撮影台17および臥位撮影台18で共用される。
【0027】
コンソール14は、キーボードやマウスといった入力デバイス14a、ディスプレイ14b、ストレージデバイス14cなどを有する。入力デバイス14aは、撮影条件などのオペレータからの各種操作指示を受け付ける。操作指示には、2台の電子カセッテ12a、12bのうち、撮影に使用する1台の電子カセッテ12を選択する指示も含まれる。
【0028】
ディスプレイ14bは、電子カセッテ12で検出したX線画像を表示する他、撮影条件の入力画面といった各種操作画面を表示する。ストレージデバイス14cは例えばハードディスクドライブであり、電子カセッテ12からのX線画像やX線撮影に必要な各種情報を記憶する。なお、X線画像は、コンソール14とネットワーク接続された画像蓄積サーバ(図示せず)に記憶することも可能である。
【0029】
ストレージデバイス14cには、電子カセッテ12a、12bを識別するためのIDが記憶されている。IDは、電子カセッテ12a、12bの購入時に、オペレータが入力デバイス14aを介して手入力するか、電子カセッテ12a、12bに取り付けられたバーコードやRFIDタグなどをリーダ(図示せず)で読み取ることにより入力される。コンソール14は、このIDによって、入力デバイス14aで撮影に使用する1台の電子カセッテ12として選択されたものが、電子カセッテ12a、12bのどちらかを判断する。そして、その判断結果である電子カセッテ12の選択状態を、IDに対応付けてストレージデバイス14cに記憶させる(
図8参照)。なお、以下の説明では、撮影に使用すると選択された電子カセッテ12を選択カセッテ、選択されなかった電子カセッテ12を非選択カセッテという。
【0030】
コンソール14は、被写体Hの性別、年齢、頭部、胸部、腹部、手、指といった撮影部位などの情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ14bに表示する。検査オーダは、病院情報システム(HIS;Hospital Information System)や放射線情報システム(RIS;Radiology Information System)などの、被写体情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システム(図示せず)から入力される。検査オーダは、入力デバイス14aを介してオペレータが手動入力することも可能である。
【0031】
X線源15は、X線を発生するX線管15aと、X線管15aから発生されたX線の被写体Hへの照射野を限定する照射野限定器(コリメータともいう)15bとを有する。X線管15aには、フィラメント、ターゲット、グリッド電極など(いずれも図示せず)が設けられている。陰極であるフィラメントと陽極であるターゲットの間には電圧(管電圧)が印加される。フィラメントはこの管電圧に応じた熱電子を生成する。生成された熱電子はターゲットに向けて放出される。ターゲットはフィラメントからの熱電子が衝突することによりX線を放射する。グリッド電極はフィラメントとターゲットの間に配置されており、印加される電圧に応じてフィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量(管電流)を変更する。
【0032】
照射野限定器15bは、X線を遮蔽する4枚の鉛板を四角形の各辺上に配置し、X線を透過させる四角形の照射開口が中央部に形成されたものである。各鉛板の位置が変わることで照射開口の大きさが変化し、これによりX線の照射野が変更される。
【0033】
線源制御装置16は、管電圧およびグリッド電極に印加する電圧を発生する電圧発生部16aと、この電圧発生部16aの動作を制御することにより、管電圧、管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部16bとを有する。また、線源制御装置16には、オペレータがX線の照射条件を入力するためのタッチパネル19と、X線源15へのウォームアップ開始とX線の照射開始を指示するための照射スイッチ20とが接続されている。
【0034】
タッチパネル19を通じて入力される照射条件には、管電圧、管電流、およびX線の照射時間が含まれる。制御部16bは、胸部用、腹部用といった典型的な照射条件が予め数種類格納されたメモリ(図示せず)を有する。制御部16bは、メモリから典型的な照射条件を読み出して、タッチパネル19に羅列して表示する。オペレータは、タッチパネル19に表示された典型的な照射条件の中から、所望の照射条件を選択して入力する。選択入力した典型邸な照射条件を微調整することも可能である。制御部16bは、タッチパネル19から入力された照射条件に基づき、電圧発生部16aで発生する管電圧、グリッド電極に印加する電圧、および管電圧を印加する時間、すなわちX線の照射時間を制御する。
【0035】
照射スイッチ20は2段押下型である。照射スイッチ20は、1段目まで押された(半押しされた)ときウォームアップ指示信号を発生し、2段目まで押された(全押しされた)とき照射開始指示信号を発生する。これら各信号は制御部16bに入力される。
【0036】
ウォームアップ指示信号が入力された場合、制御部16bは、電圧発生部16aを動作させてX線源15のウォームアップを開始させる。具体的には、フィラメントに所定の電圧を印加させてフィラメントを予熱し、同時にターゲットの回転を開始させる。このとき、グリッド電極には、フィラメントで生成された熱電子がターゲットに到達してX線が放射されないような電圧が印加される。フィラメントの予熱が完了し、ターゲットが規定の回転数となったときにウォームアップが終了する。
【0037】
照射開始指示信号が入力された場合、制御部16bは、電圧発生部16aを動作させてX線源15によるX線の照射を開始させる。具体的には、照射条件で設定された管電圧をターゲットに印加させた後、照射条件で設定された管電流に応じた電圧をグリッド電極に印加させる。
【0038】
制御部16bはX線の照射が開始されたときに計時を開始するタイマー21を有する。タイマー21で計時した時間が照射条件で設定された照射時間となった場合、制御部16bは、電圧発生部16aを動作させてX線源15によるX線の照射を停止させる。具体的には、グリッド電極に印加する電圧をウォームアップ時の印加電圧に切り替えさせ、続いてターゲットに対する電圧印加を停止させ、最後にフィラメントに対する電圧印加を停止させる。なお、制御部16bは、安全規制上、線源制御装置16に設定されている最大照射時間となった場合も、タイマー21で計時した時間が照射条件で設定された照射時間となった場合と同様にX線の照射を停止させる。
【0039】
撮影制御装置13は、制御部13aと通信部13bとを有する。通信部13bは、電子カセッテ12とコンソール14間の情報の送受信を中継する。電子カセッテ12とコンソール14間で遣り取りされる情報には、X線画像や撮影条件の情報などがある。
【0040】
コンソール14のストレージデバイス14cには、撮影条件テーブルが格納されている。撮影条件には、撮影部位、被写体Hの性別、年齢、被写体Hの体厚などの被写体Hに関する情報と、X線源15が照射するX線の照射条件とが含まれる。照射条件は、上述の通り管電圧、管電流、およびX線の照射時間を含み、撮影部位や被写体Hに関する情報を考慮して決められる。
【0041】
撮影条件テーブルには、胸部や腹部などの撮影部位と、撮影部位に応じた照射条件との対応関係が記録されており、入力デバイス14aを介してオペレータが撮影部位を選択すると対応する照射条件が読み出されてディスプレイ14bに表示される。撮影条件テーブルから読み出した照射条件の各値を、被写体Hの性別、年齢、体厚に応じて微調整することも可能である。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイ14bで確認し、その内容に応じた撮影条件を入力デバイス14aで入力する。設定された撮影条件の情報は、コンソール14から撮影制御装置13に送信され、撮影制御装置13から選択カセッテに転送される(
図2および
図3参照)。線源制御装置16には、コンソール14に入力したものと同じ照射条件がタッチパネル19を通じてオペレータにより設定される。なお、本実施形態では、管電流と照射時間が撮影条件テーブルに個別に記録される例を挙げたが、管電流と照射時間の積でX線の照射線量の総量が決まるため、両者の積である管電流照射時間積(mAs値)の値を記録しておいてもよい。
【0042】
図2および
図3において、コンソール14は、電子カセッテ12a、12bのうち、撮影に使用する1台の電子カセッテ12を選択する際に、ディスプレイ14bに選択画面25を表示させる。選択画面25には、電子カセッテ12aを選択するためのアイコン26aと、電子カセッテ12bを選択するためのアイコン26bが設けられている。これらのアイコン26a、26bは、一方を選択すると他方は自動的に選択が解除され、いずれかが択一的に選択される。
図2および
図3では、ハッチングで示すように、いずれもアイコン26aが選択されている。
【0043】
コンソール14は、電子カセッテ12a、12bのうち、選択カセッテに対して撮影条件を送信する。他方、非選択カセッテに対しては何も送信しない。
図2および
図3では、アイコン26aが選択されているので、電子カセッテ12aが選択カセッテ、電子カセッテ12bが非選択カセッテであり、電子カセッテ12aに撮影条件が送信されている。
【0044】
図2では、選択カセッテである電子カセッテ12aとX線源15が対向して配置され、X線撮影が行われている。この場合、選択画面25で撮影に使用すると選択した電子カセッテ12と、実際にX線が照射された電子カセッテ12とが一致している。つまり選択画面25による電子カセッテ12の選択が正しい。一方、
図3では、非選択カセッテである電子カセッテ12bとX線源15が対向して配置され、X線撮影が行われている。この場合、選択画面25で撮影に使用すると選択した電子カセッテ12と、実際にX線が照射された電子カセッテ12とが異なる。つまり選択画面25による電子カセッテ12の選択が誤っていたことになる。こうしたことが起きてしまうのは、選択画面25でアイコン26bを選択しなければいけないところを、オペレータがその選択を怠った、あるいは間違えてアイコン26aを選択したためである。
【0045】
図1および
図4に示すように、X線源15の照射野限定器15bには、送信機30が配されている。送信機30は、X線源15と選択カセッテが対向して配置されているか否かを検出する無線の検出信号Swl(
図5参照)を発する。一方、電子カセッテ12a、12bには、検出信号Swlを受信する受信機31a、31bがそれぞれ内蔵されている。検出信号Swlは、光(赤外光など)、電波、超音波といった周知の無線信号である。なお、受信機31a、31bは、区別する必要がない場合はまとめて「受信機31」と表記する。
【0046】
制御部16bは、例えばオペレータによるタッチパネル19を介した照射条件の入力作業終了後に送信機30を駆動させ、検出信号Swlの出力を開始させる。そして、照射スイッチ20が半押しされたときに送信機30の駆動を停止させ、検出信号Swlの出力を停止させる。選択カセッテの受信機31で検出信号Swlが受信された場合は、X線源15と選択カセッテが対向して配置されている、つまりオペレータによる選択が正しいことになる。逆に選択カセッテの受信機31で検出信号Swlが受信されなかった場合、あるいはいずれの受信機31でも検出信号Swlが受信されなかった場合は、X線源15と選択カセッテが対向して配置されていない、つまりオペレータによる選択が誤っていたか、オペレータによるX線源15と選択カセッテの対向配置のセッティングが正しくなされていないことになる。
【0047】
X線源15と電子カセッテ12a、12bの間には、送信機30と受信機31a、31bの間で検出信号Swlを中継する信号中継装置32a、32bがそれぞれ配されている。信号中継装置32a、32bは、送信機30が発した無線の検出信号Swlを、被写体Hなどの遮蔽物に邪魔されずに受信機31a、31bで確実に受信させるためのものである。なお、信号中継装置32a、32bは、区別する必要がない場合はまとめて「信号中継装置32」と表記する。以降に説明する中継受信部35、中継送信部36、ケーブル37なども同様である。
【0048】
信号中継装置32は、中継受信部35、中継送信部36、およびこれらの中継受信部35、中継送信部36を接続するケーブル37を備えている。中継受信部35および中継送信部36は別体であり、これらは着脱自在な取付具である両面テープ38により、任意の箇所に配置可能である(
図4では中継送信部36の両面テープ38は不図示)。なお、中継受信部35および中継送信部36の取付具としては、例示した両面テープ38の他に、吸盤、面ファスナー、磁石、フック、クリップ、鋲、釘などの周知の取付具を用いることができる。
【0049】
中継受信部35の配置箇所としては、例えばX線の照射野外である。本実施形態では、中継受信部35を、X線源15や電子カセッテ12、各撮影台17、18などが設置される撮影室の壁面39に配置している。より具体的には、立位撮影台17にセットされた電子カセッテ用の中継受信部35aは、立位撮影台17の後方の壁面39aの上に、臥位撮影台18にセットされた電子カセッテ用の中継受信部35bは、壁面39aと直交する、臥位撮影台18の横の壁面39bの中央にそれぞれ取り付けられている。
【0050】
一方、中継送信部36は、受信機31との間で検出信号Swlを確実に送受信するために、受信機31にできるだけ近い位置で、対応する受信機31のみが検出信号Swlを受信可能な位置に配置される。本実施形態では、各撮影台17、18のホルダ17a、18aの裏面の、各受信機31a、31bと対向する位置に、中継送信部36a、36bがそれぞれ取り付けられている。
【0051】
図5において、中継受信部35は、送信機30から無線の検出信号Swlを受信し、受信した無線の検出信号Swlを有線通信可能な形態の検出信号Swに変換して、この検出信号Swを、ケーブル37を介して中継送信部36に送信する。送信機30が発する検出信号Swlは、所定の角度範囲Φ1に指向性が限定された信号である。角度範囲Φ1は、送信機30と中継受信部35との距離、角度といった幾何学的な関係に基づいて決められる。
【0052】
中継送信部36は、ケーブル37を介して中継受信部35から検出信号Swを受信する。そして受信した検出信号Swを再び無線の検出信号Swlに変換して、これを受信機31に送信する。この際、中継送信部36は、送信機30と同様に、検出信号Swlを、所定の角度範囲Φ2に指向性が限定された信号とする。
【0053】
送信機30は、X線源15が各撮影台17、18のホルダ17a、18aにセットされた電子カセッテ12と対向したときに、中継受信部35a、35bそれぞれで検出信号Swlを受信可能なように、予め位置や角度が調整されている。
【0054】
図6において、電子カセッテ12は、受信機31と、センサパネル40と、制御基板41と、バッテリ42と、通信部43と、これらを収納する扁平な箱型をした可搬型の筐体44とを有する。筐体44は例えば導電性樹脂で形成されている。X線が入射する筐体44の前面44aには矩形状の開口が形成されており、開口には天板として透過板45が取り付けられている。透過板45は、軽量で剛性が高く、かつX線透過性が高いカーボン材料で形成されている。なお、検出信号Swlが赤外光などの光信号である場合は、光信号を取り込むための窓が筐体44の受信機31の周囲に設けられる。
【0055】
筐体44は、例えば、フイルムカセッテやIPカセッテの国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさである。このため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。また、電子カセッテ12は、撮影台にセットされる他に、被写体Hが仰臥するベッド上に置いたり被写体H自身にもたせたりして単体で使用されることもある。
【0056】
このように、電子カセッテ12は、各撮影台17、18に装着したまま複数回のX線撮影で連続して使用されたり、各撮影台17、18から取り外されて単体で使用されたり、再び各撮影台17、18へ取り付けられたりという使い方がされる。それ故に、コンソール14で撮影に使用すると選択した電子カセッテ12が、X線源15と対向して配置されていない状態でX線撮影を行って、被写体が写り込んでいないX線画像が取得されてしまうという間違いが起こりやすい。送信機30、受信機31、および信号中継装置32は、こうした間違いが起きた場合に、そのことをX線撮影の前にオペレータに報せ、被写体Hへの無用な被曝を避けるために設けられている。
【0057】
バッテリ42は、電源回路(図示せず)を通じて電子カセッテ12の各部に電力を供給する。バッテリ42は、筐体44内から外部に取り出し可能であり、専用の充電器(図示せず)にセットして充電することが可能である。通信部43は、撮影制御装置13と無線接続され、撮影制御装置13との間で、前述の撮影条件、X線画像などの各種情報を送受信する。通信部43は、受信した各種情報を制御部64(
図7参照)に出力する。また、通信部43は、メモリ62に記録された各種補正処理済みのX線画像を、制御部64を介して受け取ってコンソール14に送信する。通信部43は、X線画像などの各種情報にIDを付してコンソール14に送信する。
【0058】
センサパネル40は、シンチレータ46と、光検出基板47とで構成される。シンチレータ46と光検出基板47は、X線の入射側からみてシンチレータ46、光検出基板47の順に積層されている。シンチレータ46は、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd
2O
2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)などの蛍光体を有し、透過板45を介して入射したX線を可視光に変換して放出する。
【0059】
光検出基板47は、シンチレータ46から放出された可視光を検出して電気信号に変換する。制御基板41は、光検出基板47の駆動を制御するとともに、光検出基板47から出力された電気信号に基づきX線画像を生成する。
【0060】
図7において、光検出基板47は、ガラス基板(図示せず)上に、N行×M列の2次元マトリクスに配列された画素50と、N本の走査線51と、M本の信号線52とが設けられたものである。走査線51は、画素50の行方向に沿うX方向に延伸し、かつ画素50の列方向に沿うY方向に所定のピッチで配置されている。信号線52は、Y方向に延伸し、かつX方向に所定のピッチで配置されている。走査線51と信号線52とは直交しており、走査線51と信号線52の交差点に対応して画素50が設けられている。画素50が配列されたガラス基板の領域が撮像領域53を形成している。N、Mは2以上の整数であり、例えばN、M≒2000である。画素50の位置は、例えば左上の画素50の座標を原点(0、0)においたXY座標で表される。なお、画素50の配列は、本例のように正方配列でなくともよく、ハニカム配列でもよい。
【0061】
各画素50は、周知のように、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生してこれを蓄積する光電変換部54、およびスイッチング素子であるTFT(Thin-Film Transistor)55を備える。光電変換部54は、電荷を発生する半導体層とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。半導体層は例えばPIN(p-intrinsic-n)型であり、上部電極側にN型層、下部電極側にP型層が形成されている。TFT55は、ゲート電極が走査線51に、ソース電極が信号線52に、ドレイン電極が光電変換部54の下部電極にそれぞれ接続されている。
【0062】
光電変換部54の上部電極にはバイアス線(図示せず)が接続されている。バイアス線は画素50の行数分(N行分)設けられて1本の母線に接続されている。母線はバイアス電源に繋がれている。母線とその子線のバイアス線を通じて、バイアス電源から光電変換部54の上部電極に正のバイアス電圧が印加される。正のバイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じる。光電変換部54は逆バイアスの状態で使用される。光電変換により半導体層内で発生した電子−正孔対のうちの電子は、上部電極に移動してバイアス線に吸収され、正孔は、下部電極に移動して信号電荷として収集される。
【0063】
制御基板41には、ゲートドライバ60と、信号処理部61と、メモリ62と、照射開始判定部63と、これらを制御する制御部64とが設けられている。ゲートドライバ60は、各走査線51の端部に接続され、TFT55を駆動するためのゲートパルスG(K)(K=1〜N)を発する。制御部64は、ゲートドライバ60を通じてTFT55を駆動することにより、画素50から暗電荷を読み出してリセット(破棄)する画素リセット動作と、X線の到達線量に応じた信号電荷を画素50に蓄積させる蓄積動作と、画素50から信号電荷を読み出す画像読み出し動作とをセンサパネル40に行わせる。
【0064】
信号処理部61は、各信号線52の端部に接続されている。信号処理部61は、積分アンプ65と、ゲインアンプ66と、CDS(Correlated Double Sampling)回路67と、マルチプレクサ68と、A/D変換器69とを有する。
【0065】
積分アンプ65は信号線52毎に設けられている。積分アンプ65は、オペアンプ65a、キャパシタ65b、およびアンプリセットスイッチ65cを有する。オペアンプ65aは、2つの入力端子と1つの出力端子を有し、2つの入力端子の一方に信号線52が接続され、他方にグランド線が接続されている。キャパシタ65bおよびアンプリセットスイッチ65cは、信号線52が接続された入力端子と、出力端子との間に並列接続されている。
【0066】
積分アンプ65は、信号線52から入力される信号電荷をキャパシタ65bに蓄積することにより積算し、積算値に対応するアナログの電圧値(信号電圧)を出力する。アンプリセットスイッチ65cは、制御部64により駆動制御される。アンプリセットスイッチ65cをオン状態とすることで、キャパシタ65bに蓄積された信号電荷がリセット(破棄)される。
【0067】
ゲインアンプ66は、オペアンプ65aの出力端子に接続されており、積分アンプ65から出力された信号電圧を所定のゲイン値で増幅する。ゲイン値は、コンソール14からの撮影条件に基づいて制御部64により設定される。
【0068】
CDS回路67は、ゲインアンプ66の出力端子に接続されており、ゲインアンプ66により増幅された信号電圧に対して周知の相関二重サンプリング処理を施し、信号電圧から積分アンプ65のリセットノイズ成分を除去する。具体的には、CDS回路67は、2つのサンプルホールド回路(図示せず)と、1つの差分回路(図示せず)とを有している。一方のサンプルホールド回路でゲインアンプ66から出力される信号電圧をサンプルして保持し、他方のサンプルホールド回路で積分アンプ65がリセットされた際にゲインアンプ66から出力される積分アンプ65のリセットノイズ成分をサンプルして保持する。差分回路で両者の差分を取ることにより、ノイズが除去された信号電圧を得る。
【0069】
マルチプレクサ68は、各CDS回路67の出力端子に接続されており、1列目からM列目のCDS回路67を1つずつ順番に選択し、A/D変換器69に各CDS回路67から出力される信号電圧をシリアルに入力する。A/D変換器69は、入力された信号電圧に対してA/D変換処理を行い、デジタルの信号電圧を出力する。メモリ62は、A/D変換器69から出力されたデジタルの信号電圧をX線画像として記憶する。
【0070】
照射開始判定部63は、制御部64により駆動制御される。照射開始判定部63は、X線の照射が開始されたか否かを判定する照射開始判定を行う。
【0071】
制御部64は、タイマー70を内蔵している。タイマー70にはコンソール14で設定された撮影条件のうちの照射時間がセットされる。タイマー70は、照射開始判定部63でX線の照射が開始されたと判定したときに計時を開始する。制御部64は、タイマー70の計時時間が照射時間となったときにX線の照射が停止したと判断する。
【0072】
制御部64には、メモリ62に記憶されたX線画像に対して、オフセット補正、感度補正、および欠陥補正の各種補正処理を施す回路(図示せず)が設けられている。オフセット補正回路は、X線を照射せずに画像読み出し動作を行って取得したオフセット補正画像をX線画像から画素単位で差し引くことで、信号処理部61の個体差や撮影環境に起因する固定パターンノイズをX線画像から除去する。感度補正回路はゲイン補正回路とも呼ばれ、各画素50の光電変換部54の感度のばらつきや信号処理部61の出力特性のばらつきなどを補正する。欠陥補正回路は、出荷時や定期点検時に生成される欠陥画素情報に基づき、欠陥画素の画素値を周囲の正常な画素の画素値で線形補間する。なお、上記の各種補正処理回路を撮影制御装置13やコンソール14に設け、各種補正処理を撮影制御装置13やコンソール14で行ってもよい。
【0073】
X線の照射前、制御部64は、受信機31と通信部43のみが駆動する待機状態で電子カセッテ12を動作させている。受信機31で検出信号Swlが受信された場合、制御部64は、検出信号Swlが受信されたことを示す受信確認信号を、通信部43を介してコンソール14に向けて送信する。受信確認信号にはIDが付され、電子カセッテ12a、12bのいずれから送信されたかがコンソール14で分かるようになっている。
【0074】
選択カセッテへの撮影条件の送信後、コンソール14は、電子カセッテ12からの受信確認信号の待ち受け状態となり、コンソール14のCPUには、
図8に示すように判定部75が構築される。判定部75は、受信機31による検出信号Swlの受信有無に応じて、X線源15と選択カセッテが対向して配置されているか否かを判定する。具体的には、判定部75は、ストレージデバイス14cに記憶された、電子カセッテ12の選択状態の情報から、選択カセッテのIDを読み出す。そして、読み出した選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが一致するか否かを判定する。
【0075】
図8(A)に示すように、選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが「DR0001」で一致する場合、判定部75は、X線源15と選択カセッテが対向して配置されていると判定する。この場合、コンソール14は何もしない。
【0076】
一方、
図8(B)に示すように、選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが「DR0001」と「DR0002」で一致しない場合、判定部75は、X線源15と選択カセッテが対向して配置されていないと判定する。
【0077】
この場合、コンソール14は、
図9に示す警告ウィンドウ80をディスプレイ14bにポップアップ表示させる。警告ウィンドウ80は、「カセッテの選択が誤っています。」といった、コンソール14による電子カセッテ12の選択が誤っていたことを報せるメッセージと、「選択状態を再度確認して下さい。」といった、電子カセッテ12の選択状態の確認を促すメッセージを表示する。コンソール14は判定装置および表示装置に相当する。なお、警告ウィンドウ80のポップアップ表示に代えて、あるいは加えて、スピーカからビープ音などの音声を出力してもよい。
【0078】
撮影条件が通信部43で受信された場合、選択カセッテの制御部64は、ゲートドライバ60、信号処理部61への電力供給を開始する。そして、X線の照射が開始されたか否かを検出する照射開始検出動作をセンサパネル40に開始させる。制御部64は、照射開始検出動作として画素リセット動作をセンサパネル40に行わせる。
【0079】
照射開始判定部63は、X線源10によるX線の照射が開始されたと判定した場合、制御部64に照射開始判定信号を出力する。制御部64は、照射開始判定部63から照射開始判定信号を受けて、センサパネル40の動作を、画素リセット動作から蓄積動作に移行させる。制御部64は、画素リセット動作が途中の行であっても、画素リセット動作を直ちに停止させ蓄積動作を開始させる。
【0080】
蓄積動作では、ゲートドライバ60はいずれの走査線51にもゲートパルスG(K)を与えない。したがって蓄積動作時は、TFT55はオフ状態となる。その間に画素50にX線の入射量に応じた信号電荷が蓄積される。制御部64は、タイマー70の計時時間が撮影条件で設定された照射時間となったとき、蓄積動作を終了させて画像読み出し動作を開始させる。
【0081】
画像読み出し動作では、ゲートドライバ60は、先頭行である1行目から最終行であるN行目までの各走査線51に、順に所定の間隔でゲートパルスG(K)を与え、各走査線51に接続されたTFT55を1行ずつ順次オン状態とする。TFT55がオン状態となる時間は、ゲートパルスG(K)のパルス幅で規定されており、TFT55はパルス幅で規定された時間が経過するとオフ状態に復帰する。画像読み出し動作終了後、制御部64は、ゲートドライバ60および信号処理部61への電力供給を停止して、電子カセッテ12を待機状態に戻す。
【0082】
画素リセット動作でも、ゲートドライバ60の動作は画像読み出し動作と同様である。画素リセット動作では、1行目からN行目に向かって1行ずつ順次電荷を掃き出し、N行目の電荷が掃き出されて1フレーム分の電荷の掃き出しが終了すると、再び1行目に戻って電荷の掃き出しを繰り返す、順次画素リセット動作を行う。
【0083】
画像読み出し動作において、制御部64は、ゲートドライバ60、および信号処理部61の各部(積分アンプ65、CDS回路67、マルチプレクサ68、A/D変換器69)をそれぞれ所定の周期で駆動し、走査線51を1行目からN行目まで順に選択して、その結果A/D変換器69から出力された1行分の信号電圧をメモリ62に順次に記憶させる。1行目からN行目までの1フレーム分の画像読み出し動作が終了すると、メモリ62には、それぞれの画素50のXY座標に対応付けられて、1枚分のX線画像を表す信号電圧が記憶される。この信号電圧のデータはメモリ62から制御部64に読み出され、制御部64で各種補正処理を施された後、通信部43を通じてコンソール14に向けて送信される。こうして被写体HのX線画像が検出される。以下では、画像読み出し動作で読み出される信号電圧を画像信号という。
【0084】
画素リセット動作では、TFT55がオン状態になっている間、画素50から信号電荷が信号線52を通じて積分アンプ65のキャパシタ65bに流れる。画素リセット動作においても、画像読み出し動作と同様に、信号処理部61は信号電圧の読み出しを行う。メモリ62には、1行分の画素リセット動作が終了する毎に1行分の信号電圧が記憶される。このメモリ62に記憶された1行分の信号電圧は照射開始判定部63に出力され、照射開始判定部63によるX線の照射開始の判定に使用される。以下では、画素リセット動作で読み出される信号電圧を線量信号という。
【0085】
X線が照射されていない段階では、画素50からキャパシタ65bに流れ出す電荷は暗電荷であり、このときの線量信号はほぼゼロである。一方、X線の照射が開始されると、画素50からキャパシタ65bに流れ出す電荷は、撮像領域53へのX線の入射量に応じて変化するため、このときの線量信号は、撮像領域53に到達するX線の単位時間(1行分の画素リセット動作の間隔)当たりの線量を表す。
【0086】
画素リセット動作において、積分アンプ65のアンプリセットスイッチ65cには、画像読み出し動作と同様に、1行分の画素リセット動作が行われる毎に、制御部64からアンプリセットパルスが入力されて蓄積電荷がリセットされる。1行分の画素リセット動作では、画像読み出し動作と同様に、複数のCDS回路67がマルチプレクサ68によって順次選択されて、1行分の線量信号がメモリ62に出力される。メモリ62は、こうした1行分の線量信号を、画素50のXY座標と対応付けて記録する。
【0087】
照射開始判定部63は、所定の間隔で順次出力される1行分の線量信号を1回分ストックする内部メモリを有する。照射開始判定部63は、内部メモリから読み出した前回の線量信号と、今回メモリ62から読み出した線量信号の差分をとり、この差分と予め設定された判定閾値の大小を比較する。照射開始判定を迅速かつ正確に行うためには、被写体による減衰の影響が少ない、比較的値が大きい線量信号を判定に用いることが好ましい。そのため、判定閾値と比較する線量信号としては、1行分の線量信号のうちの最大値が好ましい。なお、1行分の線量信号の平均値や合計値でもよい。線量信号は、X線の照射が開始されると増加し、前回と今回の線量信号の差分はある時点で判定閾値を上回るレベルに達する。照射開始判定部63は、この線量信号の差分が判定閾値を上回った時点でX線源15によるX線の照射が開始されたと判定する。なお、前回と今回の線量信号の差分ではなく、今回の線量信号と判定閾値との大小比較により照射開始判定を行ってもよい。
【0088】
次に、
図10に示すフローチャートを参照して、上記構成による作用を説明する。X線撮影システム2でX線撮影を行う場合には、まず、被写体Hを立位、臥位の各撮影台17、18のいずれかの撮影位置にセットし、電子カセッテ12の高さや水平位置を調節して、被写体Hの撮影部位と位置を合わせる。そして、電子カセッテ12の位置および撮影部位の大きさに応じて、X線源15の高さや水平位置、照射野の大きさを調整する。
【0089】
次いで、コンソール14で、電子カセッテ12a、12bのうち、撮影に使用する電子カセッテ12を選択し、さらに撮影条件を設定する。また、コンソール14に設定したものと同じX線の照射条件を線源制御装置16に設定する。コンソール14で設定された撮影条件は撮影制御装置13に送信され、撮影制御装置13から選択カセッテに転送される。
【0090】
図10のステップS100に示すように、線源制御装置16への照射条件の設定後、送信機30から検出信号Swlが発せられる。検出信号Swlは、立位撮影台17にセットされた電子カセッテ12用の中継受信部35a、臥位撮影台18にセットされた電子カセッテ12用の中継受信部35bのうち、X線源15と対向している撮影台にセットされた電子カセッテ12用の中継受信部35で受信される。検出信号Swlは、所定の角度範囲Φ1に指向性が限定された信号であるため、対応する中継受信部35のみが検出信号Swlを受信可能である。
【0091】
また、中継受信部35は任意の箇所に配置可能であるため、送信機30との間の検出信号Swlの送受信が遮蔽物に邪魔されない位置に中継受信部35を配置することができ、検出信号Swlを中継受信部35に確実に受信させることができる。
【0092】
本実施形態では、X線の照射野外である、撮影室の壁面39に中継受信部35を配置している。X線の照射野内は被写体Hが被る確率が高い。また、被写体Hだけでなく、X線が被写体Hを透過する際に発生する散乱線を除去するためのグリッドが電子カセッテ12の前面に配され、これが検出信号Swlの送受信を妨げる遮蔽物となることもあるので、X線の照射野内に中継受信部35を配置することは避けたほうがよい。X線の照射野外に中継受信部35を配置すれば、被写体Hやグリッドによって検出信号Swlの送受信が邪魔されるおそれが少ない。
【0093】
中継受信部35では、受信した検出信号Swlが有線通信用の検出信号Swに変換され、この検出信号Swがケーブル37を介して中継送信部36に送信される(ステップS110)。中継受信部35と中継送信部36の間の検出信号Swの送受信を、ケーブル37を介した有線で行うので、遮蔽物に邪魔されることなく検出信号Swを確実に送受信することができる。
【0094】
中継送信部36では、受信した検出信号Swが無線の検出信号Swlに変換され、この検出信号Swlが受信機31に送信される(ステップS120)。検出信号Swlは、所定の角度範囲Φ2に指向性が限定された信号であるため、対応する受信機31のみが検出信号Swlを受信可能である。また、対応する受信機31のみが検出信号Swlを受信可能な位置、本実施形態では各撮影台17、18のホルダ17a、18aの裏面の、各受信機31a、31bと対向する位置に、中継送信部36a、36bをそれぞれ取り付けているので、例えば、立位撮影台17にセットされた電子カセッテ12用の中継送信部36aが発した検出信号Swlを、臥位撮影台18にセットされた電子カセッテ12bの受信機31bで受信してしまうような、検出信号Swlの混信を防ぐことができる。
【0095】
受信機31で検出信号Swlが受信された場合、そのことを示す受信確認信号が電子カセッテ12からコンソール14に送信される(ステップS130)。コンソール14では、判定部75により、電子カセッテ12の選択状態の情報から読み出した選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが一致するか否かが判定される(ステップS140)。
【0096】
選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが一致する場合(ステップS140でYES)は、判定部75により、X線源15と選択カセッテが対向して配置されていると判定される。一方、選択カセッテのIDと、受信確認信号に付されたIDとが一致しない場合(ステップS140でNO)、判定部75により、X線源15と選択カセッテが対向して配置されていないと判定される。そして、警告ウィンドウ80がディスプレイ14bにポップアップ表示される(ステップS150)。なお、所定時間経過後も受信確認信号が受信されない場合も、同様に判定部75はX線源15と選択カセッテが対向して配置されていないと判定し、警告ウィンドウ80がディスレイ14bに表示される。
【0097】
オペレータは、この警告ウィンドウ80により、選択カセッテがX線源15と対向して配置されていないこと、すなわち電子カセッテ12の選択が誤っていたことを認識することができる。オペレータは、選択カセッテの配置を確認し、選択画面25で撮影に使用する電子カセッテ12を選択し直す、あるいは選択カセッテがX線源15に対向するよう配置し直すなどの対策を講じる。
【0098】
遮蔽物の介在により受信機31で検出信号Swlを受信できないという事態が起こらないため、選択カセッテとX線源15が対向して配置されているか否かの判定、およびこの判定に基づく警告ウィンドウ80の表示に信頼性がもてる。このためオペレータは、警告ウィンドウ80の表示に疑念を抱くことなく直ちに対策に移ることができる。
【0099】
コンソール14への撮影条件の設定および線源制御装置16への照射条件の設定が完了し、選択カセッテがX線源15と対向して配置されていることを確認すると、オペレータは照射スイッチ20を半押しする。照射スイッチ20が半押しされると、送信機30の駆動が停止されて検出信号Swlの出力が停止される。また、線源制御装置16にウォームアップ指示信号が入力され、X線源15のウォームアップが開始される。
【0100】
選択カセッテは、コンソール14からの撮影条件の受信を待ち受けている。撮影条件を受信したとき、選択カセッテは照射開始検出動作を開始する。照射開始検出動作では、画素リセット動作が行われる。
【0101】
画素リセット動作により、画素50に蓄積される暗電荷が信号線52に掃き出されて画素50がリセットされる。画素リセット動作では、信号線52を通じて積分アンプ65に蓄積された信号電荷に応じた線量信号が1行ずつ読み出される。積分アンプ65に蓄積された信号電荷は、1行分の画素リセット動作毎にリセットされる。1行分の画素リセット動作では、CDS回路67がマルチプレクサ68によって順次選択されて、1行分の線量信号がメモリ62に記録される。照射開始判定部63は、1行分の線量信号がメモリ62に記録される毎に、メモリ62から1行分の線量信号を読み出して、前回と今回の1行分の線量信号の最大値の差分を算出し、算出した差分と判定閾値の大小を比較する。
【0102】
X線の照射が開始される前は、線量信号には暗電荷に対応する出力しか含まれないので、線量信号はほぼゼロでその差分は判定閾値を上回らない。オペレータによって照射スイッチ12が全押しされると、X線源10からX線が照射される。X線源10の照射開始直後は、単位時間当たりの線量が低く、線量はそれから徐々に増加する。そのため、X線源10の照射開始直後の線量信号は低い値となる。X線の線量が増加すると、画素50が感応して信号電荷の量が増える。画素リセット動作が行われると、蓄積された信号電荷が信号線52に掃き出される。そのため、1行分の画素リセット動作で得られる線量信号の値が増加する。その後、線量信号の差分が判定閾値を上回る。照射開始判定部63は、この時点でX線の照射が開始されたと判定し、制御部64に照射開始判定信号を出力する。
【0103】
照射開始判定部63から照射開始判定信号を受けた場合、制御部64は、全TFT55をオフ状態として画素リセット動作を停止して、センサパネル40に蓄積動作を開始させる。蓄積動作では、ゲートドライバ60からゲートパルスは与えられず、したがって画素50には照射されたX線の線量に応じた信号電荷が蓄積される。これによりX線の照射開始タイミングと蓄積動作の開始タイミングとの同期がとられる。またこれと同時に、制御部64のタイマー70により計時が開始される。
【0104】
線源制御装置11は、タイマー21の計時時間が設定された照射時間となったとき、X線源10によるX線の照射を停止させる。制御部64は、タイマー70の計時時間が撮影条件で設定された照射時間となったとき、センサパネル40の動作を蓄積動作から画像読み出し動作に移行させる。画像読み出し動作では、ゲートドライバ60からゲートパルスが発せられ、1行分の画素50の信号電荷が信号線52に読み出されて、信号電荷に応じた1行分の画像信号が積分アンプ65から取り出されて、A/D変換後メモリ62に記録される動作が繰り返し行われる。これによりメモリ62には1枚分のX線画像を表す画像信号が記録される。このX線画像は、制御部64で各種補正処理を施された後、通信部43により撮影制御装置13に送信される。X線画像はさらに撮影制御装置13からコンソール14に転送される。X線画像は、ディスプレイ14aに表示されて診断に供される。
【0105】
上記第1実施形態では、信号中継装置32が最初からX線撮影システム2に組み込まれているように説明しているが、本発明は、送信機30を有するX線源15および受信機31を有する電子カセッテ12を元々備えていて、検出信号Swlの送受信が遮蔽物に邪魔されてうまくいかないX線撮影システム2に、信号中継装置32を新たに追加する場合も想定している。信号中継装置32を新たに追加する場合でも、送信機30および受信機31は元々行っていた動作をすればよいので、送信機30および受信機31には特に手を加えずに済む。
【0106】
中継受信部35および中継送信部36は、両面テープ38などの着脱自在な取付具により任意の箇所に配置可能であるため、大々的な取り付け工事をする必要がなく、比較的手軽に、送信機30を有するX線源15および受信機31を有する電子カセッテ12を元々備えるX線撮影システム2に導入することができる。また、X線源15や各撮影台17、18のレイアウトを変更した際にも柔軟に対応することができる。
【0107】
上記第1実施形態では、X線源15を1台、電子カセッテ12を2台としたが、これらのうちの少なくともいずれかが複数台用意され、撮影に使用するX線源と電子カセッテの組み合わせの選択が複数種可能であればよい。また、信号中継装置32は、送信機30と受信機31の組毎に全て設ける必要はなく、検出信号Swlの送受信が遮蔽物に邪魔されてうまくいかない送信機30と受信機31の組だけに設けてもよい。
【0108】
中継受信部35を取り付ける位置は、上記第1実施形態で例示した撮影室の壁面39に限らない。例えば
図11に示すように、X線の照射野外であって被写体Hが被る可能性が少ない、撮影室の天井82や、
図12に示すように、立位撮影台17のホルダ17aの右上端などに中継受信部35aを取り付けてもよい。とにかく、中継受信部35を取り付ける位置は任意に変更可能であるため、遮蔽物により検出信号Swlの送受信が妨げられない位置を探して取り付ければよい。
【0109】
上記第1実施形態では、選択カセッテとX線源15が対向して配置されているか否かを判定する判定装置の機能を、コンソール14に担わせているが、撮影制御装置13に担わせてもよい。また、これらとは別に判定装置を設けてもよい。電子カセッテ12の選択が誤っていたことを報せる表示装置の機能も同様であり、撮影制御装置13や電子カセッテ12に表示装置の機能を担わせてもよい。また、これらとは別に警告灯などの専用の表示装置を設けてもよい。
【0110】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、1組の送信機30および受信機31につき、中継受信部35を1台用意しているが、この場合、送信機30と中継受信部35の位置関係が多少ずれただけで、中継受信部35で検出信号Swlを受信することができなくなるおそれがある。検出信号Swlが上記第1実施形態のように指向性が限定された信号であった場合は、より中継受信部35で検出信号Swlを受信することができなくなる可能性が高まる。そこで、本実施形態では、1組の送信機30および受信機31につき、中継受信部を複数台用意する。
【0111】
図13に示すように、本実施形態の信号中継装置85aは、複数台、例えば16台の中継受信部35aを有する。16台の中継受信部35aは、1枚の両面テープ86に、等間隔で2次元マトリクス状に配列されている。複数台の中継受信部35aは、上記第1実施形態と同様に、X線の照射野外である撮影室の壁面39aに取り付けられる。この場合、ケーブル87aは、16台の中継受信部35aからの16本のケーブル37aを束にしたものである。
【0112】
このように、中継受信部35aを複数台設ければ、送信機30との位置関係が多少ずれた場合でも、複数台の中継受信部35aのうちのいずれかで検出信号Swlを受信することができ、送信機30と中継受信部35の間で検出信号Swlをより確実に送受信することができる。
【0113】
なお、複数台の中継受信部35を設ける場合、全ての中継受信部35に被写体Hが被ってしまうことを避けるため、中継受信部35のうちの少なくとも1台は、X線の照射野外に配置されることが好ましい。また、複数台の中継受信部35は、
図13で例示したように2次元配列ではなく、縦または横、あるいは斜めに1次元配列してもよく、配列間隔を等間隔ではなくランダムにしてもよい。さらに、複数台の中継受信部35を、複数個の取付具で個別に取り付けてもよい。
【0114】
なお、
図11〜
図13では、立位撮影台17にセットされる電子カセッテ12用の信号中継装置を例示しているが、臥位撮影台18にセットされる電子カセッテ12用の信号中継装置にも同様に適用することができる。
【0115】
[第3実施形態]
上記第2実施形態では、送信機30と中継受信部35の位置関係が多少ずれた場合に、中継受信部35で検出信号Swlを受信することができなくなることを避けるため、複数台の中継受信部35を設けて対処したが、本実施形態では、送信機30が発する検出信号Swlを走査する。
【0116】
図14において、走査装置90は、送信機30に取り付けられ、送信機30の向きを2次元的に変えるためのモータやギヤなどの駆動部を有する走査機構91と、走査機構91を駆動するためのドライバ92と、ドライバ92を介して走査機構91の駆動を制御する制御部93とを備える。走査機構91は、制御部93の制御の下、送信機30が発する検出信号Swlが、1点鎖線の矢印で示すジグザグの軌跡94に沿って2次元走査されるよう、送信機30を動かす。このように、送信機30が発する検出信号Swlを走査することで、送信機30との位置関係が多少ずれた場合でも、中継受信部35で検出信号Swlを受信する確率を高めることができる。また、中継受信部35を取り付ける位置が比較的アバウトでもよくなる。
【0117】
この場合、中継受信部35は、上記第1実施形態のように1台でもよいし、上記第2実施形態のように複数台でもよい。中継受信部35が複数台の場合は、仮に何台かの中継受信部35が遮蔽物に邪魔されて検出信号Swlを受信できない状態であっても、遮蔽物に邪魔されていない中継受信部35で検出信号Swlを拾うことが可能である。
【0118】
なお、検出信号Swlの走査軌跡は、
図14で例示したジグザグの軌跡94に限らない。例えば渦巻状の軌跡に沿って走査してもよい。また、縦または横、あるいは斜めに1次元走査してもよい。さらに、走査装置90は、上記例のように送信機30と別体でもよいし、送信機30内に組み込んでもよい。ドライバ92を線源制御装置16内に設け、制御部93の機能を、線源制御装置16の制御部16bが担ってもよい。
【0119】
上記第2実施形態のように中継受信部35を複数台設けたり、上記第3実施形態のように送信機30が発する検出信号Swlを走査したりした場合、検出信号Swlの送受信範囲が広がる分、X線源15と対向して配置されている電子カセッテ12用の中継受信部35だけでなく、X線源15と対向して配置されていない電子カセッテ12用の中継受信部35でも、意図せず送信機30からの検出信号Swlを拾ってしまうおそれがある。上記第1実施形態においても、検出信号Swlの指向性が限定されていない場合は、X線源15と対向して配置されていない電子カセッテ12用の中継受信部35で意図せず検出信号Swlを拾ってしまうことはあり得る。そこで、以下の第4、第5実施形態では、X線源15と対向して配置されていない電子カセッテ12用の中継受信部35で意図せず検出信号Swlを拾ってしまった場合の対処方法を提示する。
【0120】
[第4実施形態]
図15において、本実施形態の信号中継装置100は、信号強度測定部101を有している。信号強度測定部101は、中継受信部35で受信した、送信機30からの検出信号Swlの信号強度を測定する。信号強度測定部101による信号強度の測定結果の情報(以下、強度測定情報という)は、中継受信部35から中継送信部36に送信する検出信号Swに重畳される。中継送信部36は、強度測定情報が重畳された検出信号Swを検出信号Swlに変換し、受信機31に送信する。
【0121】
図16において、電子カセッテ12の制御部64は、IDとともに強度測定情報を受信確認信号に付し、通信部43を介してコンソール14に向けて送信する。ここでは2台の電子カセッテ12の受信機31で検出信号Swlを受信し、2台の電子カセッテ12から受信確認信号がコンソール14に送信された場合を示している。このうちの1台がX線源15と真に対向して配置されている電子カセッテ12である。
【0122】
この場合、コンソール14のCPUには、判定部75に加えて選別部105が構築される。選別部105は、1台の電子カセッテ12のみから受信確認信号が送信された場合は駆動せず、複数台の電子カセッテ12から受信確認信号が送信された場合に駆動する。選別部105は、受信確認信号に付された強度測定情報に応じて、受信機31で検出信号Swlが受信された複数台の電子カセッテ12のうち、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12を選別する。例えば、強度測定情報で表される信号強度が最も大きいものを、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12として選別する。選別部105は、選別した電子カセッテ12からの受信確認信号を判定部75に送信する。以降の処理は上記第1実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0123】
このように、中継受信部35で受信した検出信号Swlの信号強度の測定結果に応じて、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12を選別するので、X線源15と対向して配置されていない電子カセッテ12用の中継受信部35で意図せず検出信号Swlを拾ってしまった場合でも、X線源15と選択カセッテとが対向して配置されているか否かの判定を正しく行うことができる。
【0124】
なお、送信機30と中継受信部35の配置如何によって検出信号Swlの信号強度は変わるため、X線源15と真に対向して配置されている電子カセッテ12用の中継受信部35で受信した検出信号Swlの信号強度が最も大きいとは限らない。そこで、様々なシチュエーションにおける、中継受信部35で受信する検出信号Swlの信号強度を予め測定して、測定結果をシチュエーション毎にテーブル化してストレージデバイス14cに記憶しておき、このテーブル化した情報に基づいて、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12を選別してもよい。
【0125】
上記第1実施形態を例に説明すると、立位撮影台17にセットされた電子カセッテ12用の中継受信部35aに送信機30を向けたときと、臥位撮影台18にセットされた電子カセッテ12用の中継受信部35bに送信機30を向けたときの、中継受信部35a、35bそれぞれで受信する検出信号Swlの信号強度を予め測定し、記憶しておく。そして、強度測定情報で表される信号強度が、中継受信部35aに送信機30を向けたときと中継受信部35bに送信機30を向けたときのいずれのシチュエーションに近いかで、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12を選別する。
【0126】
[第5実施形態]
本実施形態の構成は、第4実施形態と同じである。本実施形態では、コンソール14は、
図17に示す警告ウィンドウ110をディスプレイ14bにポップアップ表示させる。警告ウィンドウ110は、「複数台のカセッテで検出信号を受信しました。」といった、X線源15と対向して配置されていない電子カセッテ12用の中継受信部35でも意図せず検出信号Swlを拾ってしまったことを報せるメッセージと、「ID:DR0001のカセッテを選別します。よろしいですか?」といった、選別部105で選別した電子カセッテ12のIDと、その電子カセッテ12を、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12として選別する旨のメッセージを表示する。
【0127】
警告ウィンドウ110には、選別部105で選別した電子カセッテ12のIDが表示されるので、オペレータは、選択カセッテのIDと、警告ウィンドウ110に表示されたIDとが一致しているか否かで、選択カセッテがX線源15と対向して配置されているか否かを予め察知することができる。
【0128】
なお、警告ウィンドウ110の代わりに、信号強度の測定結果が高い順に、電子カセッテ12のIDをリスト表示してもよい。そして、リスト表示されたIDの中から、X線源15と真に対向して配置されている1台の電子カセッテ12をオペレータに選択させてもよい。この場合、選別部105は不要となる。
【0129】
[第6実施形態]
上記各実施形態では、中継受信部と中継送信部をケーブルで接続し、これらの間の検出信号の送受信を有線で行っているが、送信機と中継受信部間、中継送信部と受信機間と同様に、中継受信部と中継送信部との間で無線の検出信号Swlを送受信してもよい。
【0130】
図18において、本実施形態の信号中継装置115の中継受信部116および中継送信部117は、上記各実施形態のようにケーブルで接続されておらず、無線の検出信号Swlを送受信する。なお、
図18(A)は、立位撮影台17にセットされた電子カセッテ12用の信号中継装置115a、
図18(B)は、臥位撮影台18にセットされた電子カセッテ12用の信号中継装置115bを示している。
【0131】
この場合、信号中継装置115a、115bでは、互いに識別可能な形態で、中継受信部116と中継送信部117の間の検出信号Swlの送受信を行う。具体的には、信号中継装置115aにはID「001」、信号中継装置115bにはID「002」を設定し、この信号中継装置115に固有のIDを検出信号Swlに付して中継受信部116と中継送信部117の間で遣り取りする。あるいは、信号中継装置115a、115bで検出信号Swlの送受信周波数帯(チャンネル)を変えてもよい。このように、各信号中継装置115a、115bで識別可能な形態で検出信号Swlを無線通信することで、各信号中継装置115a、115b間の検出信号Swlの混信を避けることができる。また、中継受信部116と中継送信部117がケーブルで繋がれていないので、これらの配置の自由度が増す。
【0132】
上記各実施形態では、中継受信部と中継送信部が別体である例で説明を行っているが、本発明では、中継受信部と中継送信部が別体である必要はない。中継受信部と中継送信部を一体化してもよい。
【0133】
[第7実施形態]
図19において、本実施形態の信号中継装置120は、中継受信部121と中継送信部122が1つの筐体に一体化されている。中継受信部121および中継送信部122は、筐体内で有線接続されている。これにより信号中継装置を小型化することができる。ただし、信号中継装置120は、送信機30および受信機31の両方との間の検出信号Swlの送受信が遮蔽物に邪魔されない位置に配置する必要があり、こうした位置は限られるため、信号中継装置120の配置に苦労するおそれがある。このため、中継受信部と中継送信部は別体であるほうがより好ましい。
【0134】
上記各実施形態では、複数台の電子カセッテ12の受信機31が全て駆動され、全受信機31が常時検出信号Swlの待ち受け状態である例を説明したが、選択カセッテの受信機31のみを駆動させてもよい。
【0135】
この場合、選択カセッテの制御部64は、通信部43を介してコンソール14から撮影条件を受け取ったときに、受信機31への電力供給を開始する。これにより受信機31は、検出信号Swlの待ち受け状態となる。非選択カセッテでは、受信機31は駆動されない。受信機31で検出信号Swlが受信されて受信確認信号を送信した後、あるいは受信機31で検出信号Swlが受信されない状態が所定時間経過した場合、選択カセッテの制御部64は、受信機31への電力供給を停止して、受信機31の駆動を停止させる。
【0136】
このように、選択カセッテの受信機31のみを駆動させるようにすれば、中継送信部36を、対応する受信機31のみが検出信号Swlを受信可能な位置に配置したり、中継送信部36が発する検出信号Swlの指向性を限定したり、第4、第5実施形態のような混信対策は必要なくなる。
【0137】
上記第1実施形態では、シンチレータを光検出基板のX線入射側に配置したセンサパネルを例示しているが、シンチレータを光検出基板のX線入射側とは反対側に配置したセンサパネルを用いてもよい。この場合、シンチレータは、光検出基板を透過したX線を吸収して可視光を発生し、光検出基板は、この可視光を光電変換して信号電荷を生成する。
【0138】
上記第1実施形態では、X線を可視光に変換し、この可視光を信号電荷に変換する間接変換型のセンサパネルを例示しているが、アモルファスセレンなどの光導電膜によりX線を直接信号電荷に変換する直接変換型のセンサパネルを用いてもよい。
【0139】
上記第1実施形態では、TFT型のセンサパネルを例示しているが、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のセンサパネルを用いてもよい。また、撮影制御装置13とコンソール14は上記第1実施形態のように別体でもよいし、一体としてもよい。
【0140】
本発明は、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテに限らず、撮影台に据え付けるタイプのX線画像検出装置に適用してもよい。また、本発明は、X線に限らず、γ線などの他の放射線を撮影対象とした場合にも適用することができる。