特許第5990276号(P5990276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990276
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】フライ風味増強剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20160825BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20160825BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20160825BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20160825BHJP
   A23L 13/50 20160101ALN20160825BHJP
   A23L 19/18 20160101ALN20160825BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20160825BHJP
   A23L 7/157 20160101ALN20160825BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/00 C
   A23L27/20 D
   A23D9/02
   A23L5/10 D
   !A23L13/50
   !A23L19/18
   !A23L17/00 Z
   !A23L7/157
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-546919(P2014-546919)
(86)(22)【出願日】2013年10月25日
(86)【国際出願番号】JP2013078922
(87)【国際公開番号】WO2014077105
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-250614(P2012-250614)
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J−オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】徳地 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−089684(JP,A)
【文献】 特開2000−217513(JP,A)
【文献】 特許第5150797(JP,B2)
【文献】 特開2006−034297(JP,A)
【文献】 特許第3220155(JP,B2)
【文献】 特開2011−115149(JP,A)
【文献】 特開2012−095537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A23L 5/00− 5/30
A23L 27/00−27/40,27/60
A23L 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することを含むフライ風味増強剤の製造方法
【請求項2】
前記酸化部分水素添加油脂のトランス脂肪酸含量が、5〜75重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項3】
前記酸化部分水素添加油脂の全構成脂肪酸中におけるC18:2トランス型異性体含量が、5〜60重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項4】
前記酸化部分水素添加油脂のヨウ素価が35〜135である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項5】
前記酸化部分水素添加油脂を0.003〜10重量%含有させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項6】
粉末油脂とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項7】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂、食用油脂、乳化剤、粉末化基材及び水を含む混合物を撹拌して得られる水中油型エマルジョンをさらに粉末乾燥化することを含む、請求項6に記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項8】
前記粉末油脂の脂肪球径(メディアン径)が、0.2〜2.0μmである、請求項6又は7記載のフライ風味増強剤の製造方法
【請求項9】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することによりフライ風味増強剤を製造し、そして、
前記フライ風味増強剤を油脂に添加することを含む、フライ風味を増強する油脂組成物の製造方法
【請求項10】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することによりフライ風味増強剤を製造し、そして、
前記フライ風味増強剤を食品に添加することを含む、フライ風味が増強される食品の製造方法
【請求項11】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することによりフライ風味増強剤を製造し、そして、
前記フライ風味増強剤を用いて食品を加熱調理することを含む、フライ風味が増強される食品の製造方法
【請求項12】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することによりフライ風味増強剤を製造し、そして、
前記フライ風味増強剤を食材に添加して加熱調理することからなる、調理食品のフライ風味の増強方法。
【請求項13】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として添加することを含む粉末油脂の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ風味増強剤に関し、より詳細には、調理品のフライ風味を増強することで、嗜好性を強化し又は油脂の使用量を減少させることを可能とするフライ風味増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低脂肪や低カロリーの食品の開発が旺盛に進められている。例えば、ノンフライ即席麺、フライすることなくオーブンで焼成してもフライしたときと同様の外観と食感を呈するノンフライ揚げ物様食品等のノンフライ加工食品が開発及び上市されている。
【0003】
一方で、フライ食品の油脂特有の風味、旨みや食感は、消費者がフライ食品を好む理由の一つである。ノンフライ加工食品は、低脂肪により食品の旨みや嗜好性が低減し、結果として食品価値も低くなるという問題が生じる。
【0004】
低脂肪食品に油脂感やフライ風味を付与する材料を添加することで、食品の油脂量を削減しながら食品の嗜好性を維持する試みがなされている。例えば、特許文献1は、特定のδ−ラクトン類を有効成分として含む油脂感増強剤を提案する。この増強剤を飲食品に添加することで、油脂感を増強しながら油脂の使用量を減じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−83264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、揚げ物やノンフライ揚げ物等の食材に少量添加することで調理品のフライ風味を増強することのできるフライ風味増強剤を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、また、フライ風味増強剤を含む加工食品、フライ風味増強剤又は前記加工食品を用いて調理された食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討したところ、以下の発明により解決できることが判明した。すなわち、本発明は、過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を有効成分として含むフライ風味増強剤を提供する。「フライ風味」とは、本明細書において、植物油や動物油脂で食材を加熱する、炒める等の揚げる以外の方法で調理したときにフライ食品のような印象を与える一種の油脂感を意味する。しかし、本発明のフライ風味増強剤は、フライ食品への使用を妨げるものではない。
【0009】
前記フライ風味増強剤は、前記酸化部分水素添加油脂のトランス脂肪酸含量が、5〜75重量%であることが好ましい。
【0010】
前記フライ風味増強剤は、前記酸化部分水素添加油脂の全構成脂肪酸中のC18:2トランス型異性体含量が5〜60重量%であることが好ましい。
【0011】
前記フライ風味増強剤は、前記酸化部分水素添加油脂のヨウ素価が35〜135であることが好ましい。
【0012】
前記フライ風味増強剤は、前記酸化部分水素添加油脂を0.003〜10重量%含有することが好ましい。
【0013】
前記フライ風味増強剤は、例えば粉末油脂からなる。
【0014】
上記粉末油脂からなるフライ風味増強剤は、例えば過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂、食用油脂、乳化剤、粉末化基材及び水を含む混合物を撹拌して得られる水中油型エマルジョンをさらに粉末乾燥化することにより得られる。
【0015】
前記粉末油脂の脂肪球径(メディアン径)が、0.2〜2.0μmであることが好ましい。
【0016】
本発明は、また、前記フライ風味増強剤を含有する油脂組成物を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記フライ風味増強剤を含有する食品又は該増強剤を用いて加熱調理された食品を提供する。
【0018】
本発明は、また、フライ風味増強剤の製造方法であって、過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を添加することを特徴とする、前記製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、また、過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を含むフライ風味増強剤を食材に添加して加熱調理することからなる、調理食品のフライ風味の増強方法を提供する。
【0020】
過酸化物価が25〜300の酸化部分水素添加油脂を含有する粉末油脂は新規な物質である。したがって、本発明は、上記酸化部分水素添加油脂を含有する粉末油脂を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフライ風味増強剤は、動物脂、植物油等の油脂を用いた食材の調理品のフライ風味や油脂感を増強させる。これにより、食材に用いる油脂量を大幅に削減することができる。本発明によれば、油脂独特の風味による嗜好性を維持したまま、低脂肪化を可能とする食品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。本発明のフライ風味増強剤は、一定範囲の過酸化物価(POVという)を有する酸化部分水素添加油脂(以下、「酸化部分水添脂」という)を有効成分とする。油脂の過酸化物価は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析法2.5.2.1−1996」に記載の方法に従って測定することができる。
【0023】
酸化部分水添脂のPOVの下限は、25meq/kgであり、好ましくは30meq/kgであり、さらに好ましくは80meq/kgである。POVが25meq/kgより低いと、フライ風味の強さやその持続性が不十分な場合がある。一方、POVの上限は、300meq/kgであり、好ましくは280meq/kgであり、さらに好ましくは200meq/kgである。POVが300meq/kgより高いと、加熱時の劣化に起因する不快な臭い(以下、「劣化臭」という)が発生する場合がある。
【0024】
酸化部分水添脂のヨウ素価(IVともいう)は、好ましくは35〜135であり、より好ましくは70〜130である。IVが35よりも低すぎると、あるいは、135より高すぎると、充分な効果が発揮できない場合がある。
【0025】
IVは、日本油化学会においてウィイス法によって算出されている。IVは、また、簡便な近赤外分析法でも求めることもでき、J.Am.Oil Chem.Soc.76(6)693〜9(1999)において非常に高い相関が得られている。本実施例では、近赤外分析法でIVを算出した。
【0026】
酸化部分水添脂の酸化処理前の部分水素添加油脂(以下、「部分水添脂」という)は、通常、リノール酸やオレイン酸のシス−トランス異性体や位置異性体を数重量%から数十重量%含む。水素添加反応時に、不飽和脂肪酸の二重結合がシス型からトランス型へと異性化して、トランス脂肪酸が副生し、また、二重結合の位置が移動した位置異性体も副生するためである。
【0027】
本発明のフライ風味増強剤に用いる酸化部分水添脂のトランス脂肪酸含量は、通常、5〜75重量%、好ましくは7〜70重量%、より好ましくは45〜70重量%である。この酸化部分水添脂を下記範囲で添加したフライ風味増強剤のトランス脂肪酸含量は、通常、0.00015〜7.5重量%、好ましくは0.005〜3.3重量%である。
【0028】
トランス型異性体とは、ガスクロマトグラフィー法を用いて部分水添脂を分析したときに、C18:1、C18:2及びC18:3のトランス型異性体の合計を意味する。油脂のトランス脂肪酸含量は、アメリカ油化学会公定法(Ce1h−05)に準じてガスクロマトグラフィー法にて測定することができる。
【0029】
上記酸化部分水添脂の全構成脂肪酸中におけるC18:2トランス型異性体含量は、好ましくは5〜60重量%であり、より好ましくは8〜50重量%であり、さらに好ましくは15〜45重量%であり、最も好ましくは30〜45重量%である。C18:1トランス型異性体とは、ガスクロマトグラフィー法を用いて試料を分析したときに、C18:0のピークとC18:1シス型異性体のピークとの間に出現する全てのピークに相当する脂肪酸の総称を意味する。C18:2トランス型異性体とは、ガスクロマトグラフィー法を用いて試料を分析したときに、C18:1シス型異性体のピークとC18:2シス型異性体のピークとの間に出現する全てのピークに相当する脂肪酸の総称を意味する。C18:2トランス型異性体含量が5重量%未満であると、フライ風味の強い酸化部分水添脂が得られないことがある。逆に、C18:2トランス型異性体含量が60重量%を超えると、製造が困難となる場合がある。
【0030】
酸化部分水添脂の全構成脂肪酸中のC18:1トランス異性体含量に対するC18:2トランス型異性体含量の重量比は、0.2〜1.8の範囲にあることが好ましい。この範囲をはずれると、酸化部分水添脂を配合した油脂組成物が劣化臭を発する場合がある。
【0031】
本発明に使用する酸化部分水添脂は、油脂を全構成脂肪酸中のC18:2トランス型異性体含量が好ましくは5〜60重量%になるまで部分水素添加する工程、及び油脂を過酸化物価が25〜300meq/kgになるまで酸化処理する工程を含む製造方法により得ることができる。
【0032】
油脂の部分水素添加処理及び酸化処理の順序は、特に制限されない。好ましくは、油脂を全構成脂肪酸中のC18:2トランス型異性体含量が好ましくは5〜60重量%になるまで部分水素添加した後、得られた部分水添脂を過酸化物価が25〜300meq/kgになるまで酸化処理する。
【0033】
したがって、前記酸化部分水添脂は、好ましくは油脂を部分水素添加し、得られた部分水添脂を酸化処理して得られたものである。部分水添脂を、定法に従って脱色処理、脱臭処理等の精製工程にかけてから、酸化処理してもよい。
【0034】
酸化部分水添脂及びそのもととなる部分水添脂の原料油脂は、食用として使用されるものであれば特に制限がないが、好ましくは食用植物油脂である。食用植物油脂の例としては、アマニ油、大豆油、パーム油、クルミ油、エゴマ油(シソ油)、菜種油、コーン油等が挙げられる。
【0035】
原料油脂の構成脂肪酸中にα−リノレン酸含量が、好ましくは6重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、より好ましくは45重量%以上である。原料油脂のα−リノレン酸含量が、6重量%以上であると、酸化部分水添脂を含むフライ風味増強剤の効果が強化されるとともに、調理品の劣化臭を低く抑えることができる。なお、原料油脂の全構成脂肪酸中のα−リノレン酸含量の上限は特にないが、通常の食用油脂で70重量%を超えることはない。
【0036】
α−リノレン酸含量の高い油脂は、アマニ油、エゴマ油(シソ油)及びクルミ油である。特に、アマニ油及びエゴマ油は、α−リノレン酸を50重量%以上含むので、これらの1種又は2種を原料油脂に含めることが望ましい。
【0037】
原料油脂は、上記油脂の1種又は2種以上を組み合わせてもよい。これらをエステル交換、分別等した油脂、さらにこれらの混合物でもよい。
【0038】
部分水添脂は、常法の水素添加反応により製造することができる。例えば、原料油脂の食用植物油脂に、ニッケル触媒等を対油0.01〜0.3重量%添加し、温度120〜220℃、水素圧0.01〜0.3MPaの条件で水素添加反応を行う。
【0039】
強いフライ風味を有するフライ風味増強剤を得るために、前記α‐リノレン酸含量の高い原料油脂を用いて、例えば以下に示す選択的な条件:ニッケル触媒(触媒添加量0.05〜0.3重量%)、反応温度170〜210℃、水素圧0.01〜0.2MPaで水素添加反応を行うことが好ましい。より好ましくは、触媒には低活性のニッケル触媒(例えば、水素添加反応に既に1回以上使用された触媒、又は製品名SO650(堺化学工業(株)製)を用い、触媒添加量0.1〜0.3重量%、反応温度190〜210℃、水素圧0.01〜0.1MPaで行う。
【0040】
部分水添脂の酸化処理は、通常、50〜200℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは100〜180℃の温度で、油脂を加熱すればよい。加熱時に空気を吹き込むことは必ずしも必要ではないが、一定の速度(例えば50〜350回転/分)で撹拌しながら一定量(例えば、0.2〜1.0L/分)の空気を吹き込むことで、所定の過酸化物価まで短時間で効率的に酸化させることができる。短時間の酸化により、劣化臭の発生も防止できる。なお、酸化処理前の部分水添脂(精製を行ったもの)の過酸化物価は、通常、0である。
【0041】
本発明のフライ風味増強剤には、通常、酸化部分水添脂を希釈するための食用油脂(以下「ベース油」という。)を添加してもよい。ベース油は、食用油脂であれば特に限定されない。
【0042】
ベース油の例として、パーム油、パーム核油、パーム極硬油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の植物油脂;豚脂(ラード)、牛脂、鶏脂、魚油、乳脂等の動物油脂等が挙げられる。また、これらの分別油(パーム油の中融点部、パーム油の分別軟質油、パーム油の分別硬質油等)、エステル交換油等の加工した油脂を使用できる。また、これらの食用油脂は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0043】
本発明のフライ風味増強剤には、食用油脂に汎用される添加剤を配合できる。添加剤の例には、レシチン、ジグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、カゼインナトリウム等の乳化剤;糖質、コーンシロップ、デキストリン、ゼラチン、ガム質、タンパク質、ペプチド、粉乳、ホエー、小麦粉、デンプン等の粉末化基材;トコフェロール、ビタミンCパルミテート、リグナン、オリザノール等の酸化防止剤;ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、オリゴ糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、アルパルテーム、スクラロース等の甘味料;コショウ、ナガコショウ、ニンニク、ショウガ、ゴマ、唐辛子、ホースラディシュ、マスタード、ケシノミ、ゆず、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、クレソン、コリアンダーリーフ、紫蘇、セロリー、タラゴン、チャイブ、チャービル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス等の香辛料;シリコーン等の消泡剤;コエンザイムQ等の生理活性物質等が挙げられる。
【0044】
本発明のフライ風味増強剤における酸化部分水添脂の含有量は、通常、0.003〜10重量%であり、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜10重量%である。
【0045】
本発明のフライ風味増強剤中の酸化部分水添脂及びベース油の合計(油分)は、通常、1〜100重量%であり、好ましくは、5〜100重量%である。
【0046】
本発明のフライ風味増強剤の形態は、液状、エマルジョン(油中水(W/O)型又は水中油(O/W)型)、固形(粉末、顆粒、フレーク状、ブロック状等)であり得る。本発明のフライ風味増強剤は、好ましくは粉末油脂からなる。
【0047】
上記粉末や顆粒の粒径は、通常、0.3〜3mmであり、好ましくは0.5〜2mmである。また、フレーク状物の厚みは、通常、0.2〜3mmであり、好ましくは0.5〜2mmである。
【0048】
前記粉末油脂の脂肪球径(メディアン径)は、通常、0.2〜2.0μmでよく、好ましくは0.3〜1.8μmである。脂肪球径(メディアン径)は、常法に基づいて、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定可能である。
【0049】
本発明のフライ風味増強剤は、形態に応じた適宜の方法により、調製することができる。例えば、液状又は固形油脂からなるフライ風味増強剤は、酸化部分水添脂を、ベース油としての食用油脂及び適宜の添加剤とともに混合することにより得られる。ベース油の選択により、液状又は固形に調整することができる。
【0050】
エマルジョンからなるフライ風味増強剤は、酸化部分水添脂、食用油脂(ベース油)、乳化剤、その他の添加剤及び水を含む混合物を、乳化機で撹拌混合することにより得られる。エマルジョンの水分は、通常、10〜90重量%であり、好ましくは10〜70重量%である。
【0051】
粉末油脂からなるフライ風味増強剤は、酸化部分水添脂、食用油脂(ベース油)、乳化剤、粉末化基材及び水を含む混合物を、乳化機で撹拌することにより得られるO/W型エマルジョンを、さらに乾燥粉末化することにより得られる。O/W型エマルションを調製する際に、乳化剤は、水相及び油相の両方、又はいずれか一方に含有されていればよい。
【0052】
乳化機には、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、薄膜旋回型高速ミキサー、コロイドミル、アトライターミル等を使用可能である。乾燥粉末化は、例えば、エマルジョンの噴霧乾燥、凍結粉砕、噴霧凍結、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。得られた粉末油脂を必要に応じて、破砕、造粒、分級等の処理にかけてもよい。
【0053】
本発明は、上記フライ風味増強剤を含有する油脂組成物を提供する。油脂組成物のベース油となる食用油脂は、フライ風味増強剤で例示したベース油と同様である。ベース油は、一種単独でも二種以上の併用でもよい。また、油脂組成物のベース油とフライ風味増強剤のベース油とは同一でも互いに異なってもよい。
【0054】
油脂組成物の用途は、食材を加熱する、炒める等の調理用の油脂、粉末状での調味料、練りこみや塗布等による、てり、つや、食感等の物性改質剤等である。油脂組成物を揚げ物油としてもよい。加熱は、フライパンでの焼成、スチームオーブン、オーブン、電子レンジ等での加熱を含む。
【0055】
本発明は、また、上記フライ風味増強剤を含有する食品(以下、加工食品という)か、若しくは、上記フライ風味増強剤を用いて調理又は製造された食品(以下、調理食品という)もまた提供する。
【0056】
上記加工食品の具体例としては、フライタイプ又はノンフライタイプの揚げ物(唐揚げ、コロッケ、メンチカツ、トンカツ、魚フライ、イカリング、オニオンリング等)、マーガリン・ショートニング(製菓・製パンの練り込み用・折り込み用、フライ用、炒め用、バタークリーム用等)等が挙げられる。
【0057】
上記加工食品は、本発明のフライ風味増強剤を添加する以外は、使用する食材やその形態に応じて常法により製造することができる。
【0058】
フライ風味増強剤は、例えば食材(例えばミンチ肉)内や表面、バッター液内、ブレッダー内、ピックル液内、タンブリング液内等に添加することで、多量のフライ油で揚げることなく、オーブン、電子レンジ、フライパンでの加熱調理により、フライ食品と同様の外観及び食感を得ることができる。バッター液は、畜肉、魚肉や野菜からなる中種に付着させる液であり、通常、小麦粉、全卵、卵黄、牛乳、水等を含む。ブレッダーは、唐揚げ等の調理のために、食材又はバッター液の上層へ付着させる粒体であり、通常、シリアル、パン粉、クラッカー等を含む。
【0059】
上記加工食品へのフライ風味増強剤の添加量は、酸化部分水添脂の含有量として、通常、0.0005〜3重量%でよく、好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.005〜0.5重量%である。
【0060】
上記加工食品は、本発明のフライ風味増強剤を添加する限り、使用する素材や特別な条件を必要とせず、常法により製造することができる。
【0061】
上記調理食品の具体例としては、フライタイプ又はノンフライタイプの揚げ物(例えば唐揚げ、コロッケ、メンチカツ、トンカツ、魚フライ、イカリング、オニオンリング、フライドポテト、即席麺、ドーナツ、ポテトチップス、スナック菓子)が挙げられる。
【0062】
上記調理食品は、本発明のフライ風味増強剤を用いて加熱調理する以外、使用する素材や特別な条件を必要とせず、常法により製造(調理)することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0064】
〔調製例1〜10〕
実施例に使用する酸化部分水添脂、並びに比較例に使用する部分水添脂及び酸化油脂を調製した。
【0065】
1.原料油脂の準備
以下の三種類の原料油脂を用意した。
アマニ油:株式会社J−オイルミルズ製、ヨウ素価186.7、及びα−リノレン酸含量55.3%、
大豆油:株式会社J−オイルミルズ製、ヨウ素価130、及びα−リノレン酸含量7.2%、
パーム油:株式会社J−オイルミルズ製、ヨウ素価52.9、及びα−リノレン酸含量0%
【0066】
2.部分水添処理
上記の原料油脂を、以下の条件で、所望のヨウ素価となるよう部分水素添加処理した。
触媒 製品名SO−650(ニッケル含量14重量%、堺化学工業株式会社製)
触媒添加量 0.13%
反応温度 200℃
水素圧 0.05MPa
撹拌速度 700回転/分
【0067】
3.大豆油の酸化処理
1.で用意した大豆油を以下の手順で酸化処理した。まず、大豆油250gを、500mL容ステンレスビーカーに入れて、それを油温110℃のオイルバスに浸した。
空気を吹き込みながら加熱撹拌し、表1に示す所望の過酸化物価になるまで強制酸化した。
【0068】
4.部分水添脂の酸化処理
2.で得た部分水添脂を以下の手順で酸化処理した。まず、部分水添脂250gを、500mL容ステンレスビーカーに入れて、それを油温110℃のオイルバスに浸した。空気を吹き込みながら加熱撹拌し、表1に示す所望の過酸化物価になるまで強制酸化した。
【0069】
5.組成分析
5.1 ヨウ素価
1〜4で得た油脂のヨウ素価を、近赤外分析計(製品名:近赤外分析計、型番:Model5000、株式会社ニレコ製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0070】
5.2 過酸化物価
前記油脂の過酸化物価を、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析法2.5.2.1−1996」に記載の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0071】
5.3 トランス脂肪酸含量
前記油脂を三フッ化ホウ素メタノール法にて脂肪酸メチルエステルとした後、ガスクロマトグラフィー(GC)法で脂肪酸組成を分析した。
【0072】
GC測定条件を以下に示す。
・GC装置 製品名GC2010((株)島津製作所製)
・カラム SP−2560(100m×0.25mm×0.2μm)(スペルコ社製)
・注入口温度 250℃
・キャリアガス ヘリウム(29.1ml/min)
・スプリット比 25:1
・カラム温度 180℃55min→(8℃/min)→220℃5min
・検出器 水素炎イオン検出器(260℃)
【0073】
得られたGCクロマトグラムを、「Journal of oleo science Vol.50,No.5(2001),339‐352」の図5のピーク番号1〜7、13〜27及び30〜33で示される脂肪酸と照合し、次いで、トランス脂肪酸含量、C18:1トランス型異性体(t18:1)含量、C18:2トランス型異性体(t18:2)含量を、下記のピーク番号に相当するピークの面積から算出した。結果を表1に示す。
トランス脂肪酸:図5中のピーク番号1〜7、13〜27及び30〜33で示される脂肪酸、
C18:1トランス型異性体(t18:1):図5中のピーク番号1〜7で示される脂肪酸、
C18:2トランス型異性体(t18:2):図5中のピーク番号13〜27で示される脂肪酸
【0074】
【表1】
【0075】
〔実施例1〕
1.フライ風味増強剤の調製
調製例の酸化部分水添油脂を、パーム核極硬油(株式会社J−オイルミルズ社製)に2.2重量%配合することにより、フライ風味増強剤を得た。対照として、大豆油を2.2重量%配合した比較油脂を調製した。また、比較のため、酸化部分水添脂に変えて部分水添油脂又は酸化油をパーム核極硬油に2.2重量%配合した比較油脂も調製した。
【0076】
2.フライ風味増強剤の評価
1.で得たフライ風味増強剤又は比較油脂を使用して、ノンフライ揚げ物用食品(鶏唐揚げ)を調理した。まず、食材として鶏もも肉ミンチ100gに、フライ風味増強剤又は比較油脂を0.45g添加してよく混合した。混合物に片栗粉9gを添加し、よく混合した。混合物を20gずつ団子状にした。団子をビニル袋に入れ、さらに唐揚げ粉(製品名:レンジでジューシーから揚げ粉 ザ・ノンフライ しょうゆ味、日清フーズ株式会社製)6gを添加して、唐揚げ粉が各団子に均一にまぶされるように振とうした。なお、唐揚げ粉には、スパイスとしてコショウが添加されていた。得られた団子を、180℃に予熱したスチームオーブンで15分間、焼き上げた。
【0077】
調理品のフライ風味を以下の基準で評価した。
《フライ風味》
4: 対照に比べ、フライ風味を非常に強く感じる
3: 対照に比べ、フライ風味を強く感じる
2: 対照に比べ、フライ風味をやや強く感じる
1: 対照と比べ、同じか又は弱く感じる
【0078】
調理品のスパイス感を以下の基準で評価した。
《スパイス感》
4: 対照に比べ、スパイス感を非常に強く感じる
3: 対照に比べ、スパイス感を強く感じる
2: 対照に比べ、スパイス感をやや強く感じる
1: 対照と同じか、又は弱く感じる
【0079】
調理品の劣化臭を以下の基準で評価した。
《劣化臭》
4: まったく感じない
3: わずかに感じる
2: 少し感じる
1: 強く感じる
【0080】
調理品の官能評価結果を表2に示す。
【表2】
1)添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対するフライ風味増強剤又は比較油脂の割合(重量%)、
油脂Aの添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対する油脂Aの割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0081】
表2において、酸化大豆油を含有する比較油脂を用いた調理品(比較例1)のフライ風味は、対照の大豆油を用いた場合と変わらなかった。一方、酸化部分水添脂を含有するフライ風味増強剤を用いた調理品(実施例1)のフライ風味は、対照と比較して有意に増加した。
【0082】
〔実施例2〜4〕(酸化部分水添脂のPOVの変更)
実施例1において、POVを変更した酸化部分水添アマニ油を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、フライ風味増強剤を調製し、唐揚げの官能評価を実施した。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
1)フライ風味増強剤又は比較油脂:油脂Aをパーム核極硬油(ベース油)に2.2重量%配合
2)POV:油脂Aの過酸化物価
3)添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対するフライ風味増強剤又は比較油脂の割合(重量%)、
油脂Aの添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対する油脂Aの割合(重量%)
【0084】
表3から、比較例2の調理品は、フライ風味が対照と同じかあるいは弱く感じる。一方、実施例2〜4では、対照と比べてフライ風味を非常に強く感じるか、あるいは強く感じる。比較例2と実施例1との比較から、フライ風味の強化された調理品を得るためには、酸化部分水添脂の過酸化物価は25以上であり、好ましくは30以上であることがわかる。
【0085】
酸化部分水添脂の過酸化物価は、調理品の劣化臭に影響を及ぼし得る。フライ風味が強化され、一方で劣化臭を招かない総合的に優れた調理品を得る点で、酸化部分水添脂の過酸化物価は280未満が好ましく、より好ましくは180以下である。
【0086】
本発明のフライ風味増強剤を用いると、調理品のスパイス感もまた強化することができる。したがって、本発明のフライ風味増強剤を用いれば、調理品の香辛料を削減することもできる。
【0087】
〔実施例5〜8〕(酸化部分水添脂の添加量の変更)
実施例2において、食材(鶏モモ肉ミンチ)に対するフライ風味増強剤の添加量を表4に示す量に変えた以外は、実施例2と同様の手順で唐揚げを調理した。官能評価結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
1)フライ風味増強剤又は比較油脂:油脂Aをパーム核極硬油に油脂を2.2%配合
2)添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対するフライ風味増強剤又は比較油脂の割合(重量%)、
油脂Aの添加量:食材(鶏モモ肉ミンチ)に対する油脂A(酸化部分水添脂)の割合(重量%)
【0089】
表4から、フライ風味増強剤の添加量を増やすことで、フライ風味が増強されることがわかる。また、スパイス感も増強される。一方で、食材へのフライ風味増強剤の添加量が1.35重量%(酸化部分水添脂添加量:0.0297重量%)以上になると、劣化臭が感じられ、更に2.25重量%(酸化部分水添脂添加量:0.0495重量%)以上になると、スパイス感の増強効果が弱まることが分かる。以上のことから、食材への酸化部分水添脂の添加量は、0.0005〜0.5重量%が好ましく、更には、0.002〜0.03重量%がより好ましいと言える。
【0090】
〔実施例9〜28〕粉末油脂からなるフライ風味増強剤
1.粉末油脂の調製
油脂A(表7)、パーム極硬油(ベース油)、コーンシロップ(粉末化基材)及び乳化剤を、表5に示す割合で配合した粉末油脂用組成物を得た。この組成物の油分(油脂Aとベース油の合計)は、45重量%であった。
【0091】
この組成物50重量部に、水50重量部を添加した。混合物を、高圧乳化機(製品名:LAB2000、APV社製)を用いて100〜500barで乳化することにより、O/W型エマルジョンを得た。
【0092】
得られたエマルジョンをさらに、噴霧乾燥機(製品名:B−290、日本ビュッヒ社製)を用いて乾燥粉末化することにより粉末油脂からなるフライ風味増強剤を得た。粉末油脂の脂肪球径(メディアン径)をレーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:SALD−2200、株式会社島津製作所社製)で測定したところ、0.5μmであった。
【0093】
【表5】
1)乳化剤ミックス:酸カゼイン、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルの混合物
【0094】
2.コロッケによる粉末油脂の評価
1.で得た粉末油脂を使用して、食材(コロッケ)を調理し、その調理品のフライ風味を評価した。まず、表6に示す材料を用意した。ブレッダー(パン粉:スターチ:キャノーラ油=70:30:50)100gに対して、表7に示す粉末油脂10gを添加した(粉末油脂添加ブレッダー)。
【0095】
茹でたじゃがいもを潰し、塩、コショウ、及びキャノーラ油を加え、丸めて形を整えた。バッター液は、全卵、小麦粉、及び水を混ぜて得た。ブレッダーは、パン粉とスターチ(製品名:ソフトコートEP−2、株式会社J−オイルミルズ社製)を混ぜ、熱したフライパンで油を加えて約3分間加熱し、冷却後、粉末油脂を添加した。丸めたじゃがいもを小麦粉→バッター液→粉末油脂添加ブレッダーの順にくぐらせたものを、230℃で予熱したスチームオーブンで15分間焼き上げた。
【0096】
【表6】
1)バッター液 全卵:小麦粉:水=100:200:200
【0097】
【表7】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0098】
表7の結果から、酸化部分水添脂を含有するフライ風味増強剤は、粉末油脂の形態として使用することができることがわかる。また、水添油脂の油脂原料によらず、フライ風味増強効果が得られる。
【0099】
3.粉末油脂の添加量
「2.コロッケによる粉末油脂の評価」において、粉末油脂の添加量、使用した酸化部分水添アマニ油のPOVを変えた点を除き、同様に評価を行なった。評価結果を表8に示す。
【0100】
【表8】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)、
油脂Aの添加量:食材に対する油脂Aの割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0101】
表8から、粉末油脂形態でも、フライ風味増強剤の添加量を増やすことで、フライ風味が増強されることがわかる。また、スパイス感も増強されることがわかる。一方で、粉末油脂の添加量が4.2重量%(酸化部分水添脂添加量:0.042重量%)以上になると、劣化臭が感じられ、更に7重量%(酸化部分水添脂添加量:0.07重量%)以上になると、スパイス感の増強効果が弱まる。以上のことから、酸化部分水添脂含有粉末油脂の添加量は、0.1〜5重量%が好ましく、更には、0.2〜4重量%がより好ましいと言える。
【0102】
4.添加するフライ風味増強剤の形態
「2.コロッケによる粉末油脂の評価」において、酸化部分水添アマニ油の添加方法を変えて評価した。具体的には、ブレッダーに添加する形態を油脂状、粉末油脂状にしたものを評価した。油脂Aとして調製例8の油脂を使用した。評価結果を表9に示す。
【0103】
【表9】
1)添加量:食材に対する油脂または粉末油脂の割合(重量%)
2)添加量:食材に対する油脂A(酸化部分水添脂)の割合(重量%)
3)A:フライ風味
4)B:スパイス感
5)C:劣化臭
【0104】
表9の結果から、同量の酸化部分水添アマニ油を添加した場合、粉末油脂形態の方がよりフライ風味が増強されることがわかる。
【0105】
5.種々の食材での評価
上記1.で得た粉末油脂を使用して、食材(唐揚げ、メンチカツ、トンカツ、白身魚フライ、又はオニオンリング)を調理した。粉末油脂は、唐揚げの場合には唐揚げ粉に添加し、その他の場合にはブレッダーに添加した。
【0106】
5−1.唐揚げ
鶏もも肉ミンチ100gに、片栗粉9gを添加し、よく混合した。混合物を20gずつ団子状にした。団子をビニル袋に入れ、粉末油脂さらに唐揚げ粉(製品名:レンジでジューシーから揚げ粉 ザ・ノンフライ しょうゆ味、日清フーズ株式会社製)6gを添加して、粉末油脂、唐揚げ粉が各団子に均一にまぶさるように振とうした。なお、唐揚げ粉には、スパイスとしてコショウが添加されていた。得られた団子を、180℃に予熱したスチームオーブンで15分間、焼き上げた。得られた唐揚げを食し、評価した。結果を表10に示す。
【0107】
【表10】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0108】
5−2.メンチカツ
粉末油脂を使用して、メンチカツを調理し、そのフライ風味を評価した。まず、表11に示す材料を用意した。ブレッダー(パン粉:スターチ:キャノーラ油=70:30:50)100gに対して、表12に示す粉末油脂10gを添加した(粉末油脂添加ブレッダー)。
【0109】
牛豚合挽き肉に塩、及びコショウを加え、丸めて形を整えた。バッター液は、全卵、小麦粉、及び水を混ぜて得た。ブレッダーは、パン粉とスターチ(製品名:ソフトコートEP−2、株式会社J−オイルミルズ社製)を混ぜ、熱したフライパンで油を加えて約3分間加熱し、冷却後、粉末油脂を添加した。丸めた牛豚合挽き肉を小麦粉→バッター液→粉末油脂添加ブレッダーの順にくぐらせたものを、200℃で予熱したスチームオーブンで15分間焼き上げた。得られたメンチカツを食し、評価した。結果を表12に示す。
【0110】
【表11】
1)バッター液 全卵:小麦粉:水=100:200:200
【0111】
【表12】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0112】
5−3.トンカツ
粉末油脂を使用して、トンカツを調理し、そのフライ風味を評価した。まず、表13に示す材料を用意した。ブレッダー(パン粉:スターチ:キャノーラ油=70:30:50)100gに対して、表14に示す粉末油脂10gを添加した(粉末油脂添加ブレッダー)。
【0113】
豚肉を切り分け、塩、コショウ、を加えた。バッター液は、全卵、小麦粉、及び水を混ぜて得た。ブレッダーは、パン粉とスターチ(製品名:ソフトコートEP−2、株式会社J−オイルミルズ社製)を混ぜ、熱したフライパンで油を加えて約3分間加熱し、冷却後、粉末油脂を添加した。豚肉を小麦粉→バッター液→粉末油脂添加ブレッダーの順にくぐらせたものを、200℃で予熱したスチームオーブンで15分間焼き上げた。得られたトンカツを食し、評価した。結果を表14に示す。
【0114】
【表13】
1)バッター液 全卵:小麦粉:水=100:200:200
【0115】
【表14】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0116】
5−4.白身魚フライ
粉末油脂を使用して、白身魚フライを調理し、そのフライ風味を評価した。まず、表15に示す材料を用意した。ブレッダー(パン粉:スターチ:キャノーラ油=70:30:50)100gに対して、表16に示す粉末油脂10gを添加した(粉末油脂添加ブレッダー)。
【0117】
タラ100gに、片栗粉、塩、コショウを添加し、よく混合した。混合物を団子状にした。バッター液は、全卵、小麦粉、及び水を混ぜて得た。ブレッダーは、パン粉とスターチ(製品名:ソフトコートEP−2、株式会社J−オイルミルズ社製)を混ぜ、熱したフライパンで油を加えて約3分間加熱し、冷却後、粉末油脂を添加した。丸めたタラを小麦粉→バッター液→粉末油脂添加ブレッダーの順にくぐらせたものを、200℃で予熱したスチームオーブンで15分間焼き上げた。得られた白身魚フライを食し、評価した。結果を表16に示す。
【0118】
【表15】
1)バッター液 全卵:小麦粉:水=100:200:200
【0119】
【表16】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0120】
5−5.オニオンリング
粉末油脂を使用して、オニオンリングを調理し、そのフライ風味を評価した。まず、表17に示す材料を用意した。ブレッダー(パン粉:スターチ:キャノーラ油=70:30:50)100gに対して、表18に示す粉末油脂10gを添加した(粉末油脂添加ブレッダー)。
【0121】
玉ねぎを輪切りにし、100gに対して、塩、及びコショウを添加し、よく混合した。バッター液は、全卵、小麦粉、及び水を混ぜて得た。ブレッダーは、パン粉とスターチ(製品名:ソフトコートEP−2、株式会社J−オイルミルズ社製)を混ぜ、熱したフライパンで油を加えて約3分間加熱し、冷却後、粉末油脂を添加した。玉ねぎを小麦粉→バッター液→粉末油脂添加ブレッダーの順にくぐらせたものを、200℃で予熱したスチームオーブンで15分間焼き上げた。得られたオニオンリングを食し、評価した。結果を表18に示す。
【0122】
【表17】
1)バッター液 全卵:小麦粉:水=100:200:200
【0123】
【表18】
1)添加量:食材に対する粉末油脂の割合(重量%)
2)IV:油脂Aのヨウ素価
3)POV:油脂Aの過酸化物価
4)A:フライ風味
5)B:スパイス感
6)C:劣化臭
【0124】
表10、12、14、16及び18の結果から、フライ風味増強剤を含む粉末油脂を添加することにより、一般的にフライ食品として提供される食材(唐揚げ、メンチカツ、トンカツ、白身魚フライ、オニオンリング)のノンフライ食品に、フライ風味を付与させることができることがわかる。