特許第5990515号(P5990515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990515ジベンゾフラン化合物と8−ヒドロキシキノリノラトアルカリ土類金属錯体または8−ヒドロキシキノリノラトアルカリ金属錯体との層を含む、有機電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5990515
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ジベンゾフラン化合物と8−ヒドロキシキノリノラトアルカリ土類金属錯体または8−ヒドロキシキノリノラトアルカリ金属錯体との層を含む、有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160901BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20160901BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20160901BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
   H05B33/22 A
   C09K11/06 690
   C09K11/06 660
   C07D307/91
   C07D405/14
【請求項の数】17
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2013-514718(P2013-514718)
(86)(22)【出願日】2011年6月16日
(65)【公表番号】特表2013-535106(P2013-535106A)
(43)【公表日】2013年9月9日
(86)【国際出願番号】EP2011060025
(87)【国際公開番号】WO2011157790
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年6月13日
(31)【優先権主張番号】10166507.3
(32)【優先日】2010年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ランガー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ヴァーゲンブラスト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー モルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シルトクネヒト
(72)【発明者】
【氏名】エヴェリン フックス
(72)【発明者】
【氏名】コリンナ ドアマン
(72)【発明者】
【氏名】渡部 惣一
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ゲスナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン レナルツ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ヴォレープ
(72)【発明者】
【氏名】田辺 潤一
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−290051(JP,A)
【文献】 特表2009−525299(JP,A)
【文献】 特表2009−532431(JP,A)
【文献】 特開2008−060379(JP,A)
【文献】 特表2008−530332(JP,A)
【文献】 特表2005−510838(JP,A)
【文献】 特開2000−182774(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/003919(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/029798(WO,A1)
【文献】 特開2009−124138(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/085123(WO,A2)
【文献】 特表2008−545729(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/111176(WO,A1)
【文献】 米国特許第06229012(US,B1)
【文献】 特開2010−135467(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/004877(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/072596(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/003898(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、該陽極と該陰極との間に配置された発光層および該陰極と該発光層との間に配置された電子輸送層を含む有機電子デバイスであって、該電子輸送層が、式
【化1】
の有機金属錯体と式
【化2】
の化合物
[式中、
1およびR2は互いに独立に、F、C1〜C8アルキル、またはC6〜C14アリール(これらは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)であるか、または2つの置換基R1および/またはR2が組み合わさって縮合ベンゼン環基(これは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)を形成し、
aおよびbは互いに独立に0または整数1〜3であり、
81は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
82は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
91は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、ピリミジニル、またはジベンゾフラニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
92は、H、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
Aは、単結合、アリーレン、またはヘテロアリーレン基(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であるか;あるいは−SiR8384−(ここで、R83およびR84は互いに独立に、C1〜C18アルキル、またはC6〜C14アリール基であり、これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり;
Mは、アルカリ金属原子、またはアルカリ土類金属原子であり、
nは、Mがアルカリ金属原子である場合は1であり、nは、Mがアルカリ土類金属原子である場合は2である]
とを含む、有機電子デバイス。
【請求項2】
式IIの前記化合物が、式
【化3】
の化合物であり、かつ式IIIの前記化合物が、式
【化4】
の化合物であって、上式において、A、R81、R82、R91およびR92は請求項1に定義されたとおりである、請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項3】
81が、
【化5】
であり、
87が、H、またはC1〜C8アルキルであり;
82が、R81の意味を有し、
91が、R81の意味を有するか、あるいは
【化6】
であり、
92が、R81の意味を有するか、またはHである、請求項2に記載の有機電子デバイス。
【請求項4】
Aが、単結合、−SiR8384−基、式
【化7】
の基
[式中、
85およびR86は互いに独立に、H、またはC1〜C18アルキル基であり、
83およびR84は互いに独立にC1〜C8アルキル基である]
である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項5】
式IIまたはIIIの前記化合物が、式
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
【化8-5】
【化8-6】
【化8-7】
【化8-8】
【化8-9】
【化8-10】
【化8-11】
【化8-12】
【化8-13】
【化8-14】
の化合物である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項6】
式Iの前記化合物が、式
【化9】
の化合物である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
さらに、正孔注入層、正孔輸送層、正孔及び励起子のブロッキング層及び電子注入層を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
前記電子輸送層が、式
【化10】
の化合物と式
【化11】
の化合物との混合物を含む、請求項7に記載の有機電子デバイス。
【請求項9】
前記電子注入層が、フッ化カリウムまたはLiqを含む、あるいはフッ化カリウムまたはLiqからなる、請求項7または8に記載の有機電子デバイス。
【請求項10】
前記発光層が、式
【化12】
[式中、記号は以下の意味を有する:
1は、Co、Rh、Ir、Nb、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、AgおよびAu(それぞれの金属原子について可能な任意の酸化状態にある)からなる群から選択される金属原子であり;
カルベンは、非荷電またはモノアニオン性であってよくかつ単座、二座または三座であってよいカルベン配位子であり、前記カルベン配位子はまた、ビスカルベンまたはトリスカルベンの配位子であることもでき;
Lは、単座であっても二座であってもよい、モノアニオン性またはジアニオン性の配位子であり;
Kは、ホスフィン類;ホスホネート類およびその誘導体、アルセナート類およびその誘導体;ホスファイト類;CO;ピリジン類;ニトリル類および共役ジエン(M1とのπ錯体を形成する)からなる群から選択される非荷電の単座または二座の配位子であり;
n1は、カルベン配位子の数であって、n1は少なくとも1であり、n1>1の場合、前記式Iの錯体における前記カルベン配位子は、同一であっても異なっていてもよく;
mは、配位子Lの数であって、mは0または≧1であってよく、m>1である場合、配位子Lは同一であっても異なっていてもよく;
oは、配位子Kの数であって、oは0または≧1であってよく、o>1である場合、配位子Kは同一であっても異なっていてもよく;
ここで、n1+m+oの合計は、金属原子の酸化状態および配位数に、並びに配位子であるカルベン、LおよびKのデンティシティーに、さらにまた配位子であるカルベンおよびLの電荷に依存するが、但し、n1が少なくとも1であることを条件とする]
の化合物を含む、請求項7から9までのいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項11】
前記式IXの化合物が、式
【化13】
の化合物である、請求項10に記載の有機電子デバイス。
【請求項12】
前記正孔輸送層が、酸化モリブデン(MoOX)または酸化レニウム(ReOX)でドープされた式
【化14】
の化合物を含む、請求項7から11までのいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項13】
酸化モリブデン(MoOX)がMoO3である、請求項12に記載の有機電子デバイス。
【請求項14】
酸化レニウム(ReOX)がReO3である、請求項12に記載の有機電子デバイス。
【請求項15】

【化15】
の有機金属錯体と式
【化16】
の化合物
[式中、
1およびR2は互いに独立に、F、C1〜C8アルキル、またはC6〜C14アリール(これらは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)であるか、または2つの置換基R1および/またはR2が組み合わさって縮合ベンゼン環基(これは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)を形成し、
aおよびbは互いに独立に0または整数1〜3であり、
81は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
82は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
91は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、ピリミジニル、またはジベンゾフラニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
92は、H、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
Aは、単結合、アリーレン、またはヘテロアリーレン基(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であるか;あるいは−SiR8384−(ここで、R83およびR84は互いに独立に、C1〜C18アルキル、またはC6〜C14アリール基であり、これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり;
Mは、アルカリ金属原子、またはアルカリ土類金属原子であり、
nは、Mがアルカリ金属原子である場合は1であり、nは、Mがアルカリ土類金属原子である場合は2である]
とを含む、電子輸送層。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の有機電子デバイスにおける請求項15に記載の電子輸送層の使用。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の有機電子デバイスを含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に配置された有機層を含む有機電子デバイスであって、有機層が式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む、有機電子デバイスを提供する。
【0002】
国際公開第10072300号パンフレットは、電子輸送物質として、トリアジン誘導体を含み、場合によりで有機アルカリ金属化合物を一緒に含む、有機エレクトロルミネセンスデバイスに関する。有機アルカリ金属化合物の一例としてリチウムキノレートが挙げられている。
【0003】
国際公開第2006128800号パンフレットは、式
【化1】
の化合物、およびエレクトロルミネセンスデバイスにおけるその使用を開示している。国際公開第2006128800号パンフレットによると、式I’またはII’の化合物は、発光層中の発光物質として、場合により、ホストまたはゲスト成分として(蛍光エミッターとして、または三重項エミッターのホストとして)、または電子輸送層として使用することができる。
【0004】
M. Thelakkat et al., Chem. Mater. 12(2000)3012−3019は、リチウムキノレート錯体、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)および2−メチル−8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(LiMeq)の合成、およびそれらを従来の2層有機発光ダイオードにおいてエミッターおよび電子注入/輸送物質として、正孔輸送物質(HTL)としてのN,N''−ビス(p−メトキシフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(DMeOTPD)と併用することについて記載している。リチウム錯体は、エミッター物質としての8−ヒドロキシキノリノラト−Al(III)(Alq3)と組み合わせて、界面材料としても検討された。リチウム錯体は、Alq3とアルミニウムとの間の薄い界面層として使用した場合、最適化されたインジウムスズ酸化物(ITO)/DMeOTPD/Alq3/Alデバイスの効率を大幅に増大させる。リチウムキノレート類によるデバイス特性の向上は、LiF塩による向上と似ている。
【0005】
Z. L. Zhang et al., Synthetic Metals 158(2008)810−814は、電子輸送層(ETL)としての、8−ヒドロキシ−キノリナトリチウムがドープされた4’,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンと、正孔輸送層(HTL)としての、テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタンがドープされた4,4’,4''−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンとを有する有機発光ダイオードを記載している。参照されている(ドーピングなしの)デバイスと比較して、p−i−nデバイスの電流効率および電力効率は、それぞれおよそ51%および89%向上している。この向上は、輸送層の伝導率の向上および発光ゾーンにおける効率的な荷電平衡によるものである。
【0006】
S. H. Choi et al., Japanese Journal of Applied Physics 48(2009)062101は、リチウムキノレートがドープされた電子輸送層によってOLEDの効率および寿命が向上したことを報告している。電子輸送層は、LGC201
【化2】
(LG Chem)とLiqとから構成されている。
【0007】
国際公開第2010040777A1号パンフレットは、縮合環系で置換されたシロール類の有機電子用途における使用、ならびに縮合環系で置換された特殊なシロール類および有機電子用途におけるその使用に関する。8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)が、電子輸送物質の材料の一例として挙げられている。
【0008】
米国特許出願公開第2009230852A1号明細書による有機エレクトロルミネセンス化合物は、化学式
【化3】
[式中、L1は、(C1〜C60)アリーレン、または(C3〜C60)へテロアリーレン(N、OおよびSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む)、または以下の構造体から選択される二価基を表し:
2およびL3は独立に、化学結合、または(C1〜C60)アルキレンオキシ、(C1〜C60)アルキレンチオ、(C6〜C60)アリーレンオキシ、(C6〜C60)アリーレンチオ、(C6〜C60)アリーレンまたは(C3〜C60)ヘテロアリーレン(N、OおよびSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む)を表し;
Ar1は、NR4142、(C6〜C60)アリール、(C3〜C60)ヘテロアリール(N、OおよびSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む)、N、OおよびSから選択される1種以上のヘテロ原子を含む5員または6員のヘテロシクロアルキル、(C3〜C60)シクロアルキル、アダマンチル、(C7〜C60)ビシクロアルキル、または以下の構造体から選択される置換基を表し:さらに
xは1〜4の整数である]
によって表される。リチウムキノレート(Liq)は、実施例1で電子注入物質として使用されている。
【0009】
米国特許出願公開第2009189519A1号明細書は、式
【化4】
で表される有機化合物(これは、好ましくはホスト物質として使用される)に関する。リチウムキノレート(Liq)は実施例1〜5で電子注入物質として使用されている。
【0010】
国際公開第10001817A号パンフレットは、電子輸送層として、一般式Y−(A1−Ar)n1(1)で表される有機化合物および供与体化合物を含む有機薄膜発光素子に関する。一般式(1)において、Yは、置換または非置換のピレンあるいは置換または非置換のアントラセンを表し;A1は、単結合、アリーレン基およびヘテロアリーレン基からなる群から選択される一種を表し;Arは、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基およびジベンゾチオフェニル基からなる群から選択される一種を表し;基は置換されていても非置換であってもよく;さらにn1は1〜3の整数を表す。式1の化合物の例として、
【化5】
が挙げられる。Liqは、供与体化合物の一例として挙げられている。実施例では、電子輸送層は、Liqと
【化6】
の1:1混合物から構成されている。
【0011】
本発明の目的は、良好な効率、良好な作動寿命および熱的ストレスに対する高い安定性、および低動作電圧を示す有機電子デバイス(特に有機発光デバイス)を提供することであった。
【0012】
前記目的は、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に配置された有機層を含む有機電子デバイスであって、有機層が、式
【化7】
の有機金属錯体と式
【化8】
の化合物
[式中、
1およびR2は互いに独立に、F、C1〜C8アルキル、またはC6〜C14アリール(これらは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)であるか、または2つの置換基R1および/またはR2が組み合わさって縮合ベンゼン環基(これは、場合により1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されていてよい)を形成し、
aおよびbは互いに独立に0または整数1〜3であり、
81は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
82は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
91は、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、ピリミジニル、またはジベンゾフラニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
92は、H、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、1,10−フェナントロリニル、トリアジニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリミジニル(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル、C6〜C14アリール、またはC2〜C20ヘテロアリール基で置換されていてよい)であり、
Aは、単結合、アリーレン、またはヘテロアリーレン基(これらはそれぞれ、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であるか;あるいは−SiR8384−(ここで、R83およびR84は互いに独立に、C1〜C18アルキル、またはC6〜C14アリール基であり、これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり;
Mは、アルカリ金属原子、またはアルカリ土類金属原子であり、
nは、Mがアルカリ金属原子である場合は1であり、nは、Mがアルカリ土類金属原子である場合は2である]
とを含む有機電子デバイスによって、解決された。
【0013】
式IおよびIIまたはIIIの化合物を含む有機層が、OLEDの電子輸送層を構成する場合、優れた寿命、電力効率、量子効率および/または低動作電圧を有するOLEDが得られる。
【0014】
Mの例として、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、またはBaが挙げられる。Li、NaおよびKが好ましく、Liがもっとも好ましい。式Iの金属錯体の例として、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(Liq)および2−メチル−8−ヒドロキシキノリノラトリチウム(LiMeq)が挙げられる。もっとも好ましい金属錯体は、
【化9】
であり、これは単一化学種として、またはLigg[式中、gは整数である](例えば、Li66)など他の形態で存在しうる。Qは、8−ヒドロキシキノレート配位子、あるいは8−ヒドロキシキノレート
【化10】
の誘導体を表す。
【0015】
好ましくは、置換基R81およびR82は、ジベンゾフラン部分の酸素原子に対してオルト位またはパラ位にある。
【0016】
好ましくは、置換基A、R91およびR92は、ジベンゾフラン部分の酸素原子に対してオルト位またはパラ位にある。
【0017】

【化11】
[式中、A、R81、R82、R91およびR92は上に定義したとおりである]の化合物が好ましい。
【0018】
好ましくは、R81は、フェナントリル、ジベンゾチオフェニル、またはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり、R82は、フェナントリル、ジベンゾチオフェニル、またはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。より好ましくは、R81は、フェナントリルまたはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり、R82は、フェナントリルまたはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。
【0019】
好ましくは、R91は、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フェナントリル、またはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり、R92は、H、フェナントリル、ジベンゾチオフェニル、またはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。より好ましくは、R91は、ジベンゾフラニル、フェナントリル、またはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)であり、R92は、フェナントリルまたはピレニル(これらのそれぞれは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。R91の場合、フェナントリル基およびピレニル基がジベンゾフラニル基よりも好ましい。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、R81およびR82は互いに独立に、
【化12】
であり、ここで、R87は、HまたはC1〜C8アルキルである。
【0021】
より好ましくは、R81
【化13】
であり、R82の好ましいものはR81と同じである。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態では、R91はR81の意味を有するか、あるいは
【化14】
であり、R92はR81の意味を有するか、またはHである。
【0023】
より好ましくは、R91の好ましいものはR81と同じであるか、あるいはR91
【化15】
であり、R92の好ましいものはR81と同じであるか、またはR92はHである。
【0024】
Aは、単結合、6〜30個の環炭素原子を有する置換または非置換のアリーレン基、または5〜30個の環炭素原子を有する置換または非置換のヘテロアリーレン基、あるいは−SiR8384−である。
【0025】
好ましいアリーレン基は、フェニレン、ナフチレン、フェナントレンおよびフェナリレンであり、これらは場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基によって置換されていてよい。
【0026】
好ましいヘテロアリーレン基は、ピリジニレン、ピラジニレン、ピリミジニレン、およびトリアゾリレンであり、これらは場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい。
【0027】
より好ましいアリーレン基は、
【化16】
[式中、R85およびR86は互いに独立に、H、またはC1〜C18アルキル基である]である。
【0028】
本発明の別の実施形態では、好ましいアリーレン基は、ピレニレンまたはアントリレン基である。前記実施形態では、式
【化17】
の基がより好ましく、式
【化18】
の基がもっとも好ましく、ここで、R85およびR86は互いに独立に、H、またはC1〜C18アルキル基である。
【0029】
より好ましいヘテロアリーレン基は、
【化19】
[式中、R86は、H、またはC1〜C18アルキル基である]である。
【0030】
好ましい基−SiR8384−は、−Si(CH32−、−Si(CH2CH32−、およびSi(C(CH332−である。
【0031】
特に好ましい式IIの化合物は、化合物A−1〜A−36である。特に好ましい式IIIの化合物は、化合物B−1〜B−27である。請求項5を参照されたい。現時点では化合物A−10がもっとも好ましい。
【0032】
特に好ましい実施形態では、有機層、特に電子輸送層は、式
【化20】
の化合物と式
【化21】
の化合物との混合物を含む。
【0033】
本発明による有機電子デバイスは、好ましくは、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔および励起子のブロッキング層、電子輸送層、電子注入層および陰極を含む有機発光デバイス(OLED)であって、式IおよびII、またはIIIの化合物を含む有機層が電子輸送層を構成する有機発光デバイスである。励起子ブロッキング層を、正孔輸送層と発光層との間に配置してもよい。
【0034】
したがって本発明はまた、式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む電子輸送層に関する。
【0035】
式Iの有機金属錯体は、式IおよびII、またはIIIの化合物の量を基準にして99〜1質量%、好ましくは75〜25質量%、より好ましくは約50質量%の量で、OLEDの有機層(特に電子輸送層)に含まれる。
【0036】
式IIおよびIIIの化合物の合成は、国際公開第2006128800号パンフレットに記載されている、またはその中に記載されている方法と同様にして実施することができる。
【0037】
式Iの化合物の合成は、例えば、Christoph Schmitz et al. Chem. Mater. 12(2000)3012−3019および国際公開第00/32717号パンフレットに記載されている、またはそれらの中に記載されている方法と同様にして実施できる。
【0038】
1〜C18アルキルは、典型的には直鎖または分岐状(可能な場合)である。例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチルおよび2−エチルヘキシル、n−ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、またはオクタデシルが挙げられる。C1〜C8アルキルは、典型的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチル−プロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチルおよび2−エチルヘキシルである。C1〜C4アルキルは、典型的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルである。
【0039】
6〜C14アリール(場合により置換されていてよい)は、典型的には、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル(特に、1−ナフチルまたは2−ナフチル)、ビフェニリル、テルフェニリル、ピレニル、2−または9−フルオレニル、フェナントリル、またはアントリル(これらは、置換されていてもいなくてもよい)である。
【0040】
2〜C20ヘテロアリールは、可能なヘテロ原子が窒素、酸素または硫黄である、5個〜7個の環原子の環あるいは縮合環系を表し、典型的には、少なくとも6個の共役π電子を有する5個〜30個の原子の複素環基、例えば、チエニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、チアンスレニル、フリル、フルフリル、2H−ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、フェノキシチエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カルボリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニルまたはフェノキサ(これらは、非置換であっても、置換されていてもよい)である。
【0041】
6〜C14アリールおよびC2〜C20ヘテロアリール基は、好ましくは1つ以上のC1〜C8アルキル基で置換されている。
【0042】
アリーレン基の例として、フェニレン、ナフチレン、フェナレニレン、アントラシレンおよびフェナントレン(これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)が挙げられる。好ましいアリーレン基は、1,3−フェニレン、3,6−ナフチレン、および4,9−フェナレニレン(これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。
【0043】
ヘテロアリーレン基の例には、1,3,4−チアジアゾール−2,5−イレン、1,3−チアゾール−2,4−イレン、1,3−チアゾール−2,5−イレン、2,4−チオフェニレン、2,5−チオフェニレン、1,3−オキサゾール−2,4−イレン、1,3−オキサゾール−2,5−イレンおよび1,3,4−オキサジアゾール−2,5−イレン、2、5−インデニレン、2,6−インデニレン、特にピラジニレン、ピリジニレン、ピリミジニレン、およびトリアゾリレン(これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)がある。好ましいヘテロアリーレン基は、2,6−ピラジニレン、2,6−ピリジニレン、4,6−ピリミジニレン、および2,6−トリアゾリレン(これらは、場合により1つ以上のC1〜C18アルキル基で置換されていてよい)である。
【0044】
本出願の有機電子デバイスは、例えば、有機太陽電池(有機光電装置)、スイッチング素子であり、スイッチング素子には、有機トランジスター(例えば、有機FETおよび有機TFT、有機発光電界効果トランジスター(OLEFET))、または有機発光ダイオード(OLED)などがあり、OLEDが好ましい。
【0045】
本出願は、有機電子デバイス中の、好ましくは電子輸送層としての、式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物との併用に関する。
【0046】
したがって本出願はまた、式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む有機層、特に電子輸送層に関する。
【0047】
好適な有機電子デバイスの構造は当業者に既知であり、以下に明示する。
【0048】
有機トランジスターは一般に、正孔輸送能力および/または電子輸送能力を有する有機層から形成された半導体層;導電層から形成されたゲート電極;および半導体層と導電層との間に導入された絶縁層を含む。このようにトランジスター素子を製造するためには、ソース電極およびドレイン電極をその配列に取り付ける。加えて、当業者に既知の更なる層が有機トランジスター内に存在していてもよい。
【0049】
有機太陽電池(光電変換素子)は一般に、並列に配置された2枚のプレート型電極の間に存在する有機層を含む。有機層は、櫛型電極上に構成することができる。有機層の位置に関しては特に制限はなく、電極の物質に関しても特に制限はない。しかし、並列に配置されたプレート型電極を使用する場合、少なくとも1つの電極が、好ましくは透明電極(例えば、ITO電極またはフッ素がドープされた酸化スズ電極)から形成される。有機層は、2つの副層、すなわち、p型半導体特性または正孔輸送能力を有する層、およびn型半導体特性または電子輸送能力を有する形成された層から形成される。さらに、当業者に既知の更なる層が有機太陽電池内に存在しうる。電子輸送能力を有する層は、式Iの有機金属錯体および式IIまたはIIIの化合物を含むことができる。
【0050】
本発明はさらに、陽極Anおよび陰極Ka、陽極Anと陰極Kaとの間に配置された発光層E、陰極Kaと発光層Eとの間に配置された電子輸送層を含み、かつ適切な場合、正孔/励起子用の少なくとも1つのブロッキング層、電子/励起子用の少なくとも1つのブロッキング層、少なくとも1つの正孔注入層、少なくとも1つの正孔輸送層および少なくとも1つの電子注入層からなる群から選択される少なくとも1つの更なる層を含む有機発光ダイオードであって、電子輸送層が式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む、有機発光ダイオードに関する。
【0051】
本発明のOLEDの構造
したがって本発明の有機発光ダイオード(OLED)は一般に以下の構造を有する:
陽極(An)および陰極(Ka)、および陽極(An)と陰極(Ka)との間に配置された発光層E、および陰極Kaと発光層Eとの間に配置された電子輸送層。
【0052】
本発明のOLEDは、例えば(好ましい実施形態では)、以下の層から形成されていてよい:
1.陽極
2.正孔輸送層
3.発光層
4.正孔/励起子用のブロッキング層
5.電子輸送層
6.陰極。
【0053】
前述の構造とは異なる層順序も可能であり、当業者に既知である。例えば、OLEDは上述のすべての層を持たなくても構わない。例えば、層(1)、(3)、(4)、(5)および(6)を有するOLEDも同様に好適である。さらに、OLEDは、正孔輸送層(2)と発光層(3)との間に電子/励起子用のブロッキング層を有していてもよい。
【0054】
さらに、複数の前述の機能(電子/励起子のブロッカー、正孔/励起子のブロッカー、正孔注入、正孔輸送、電子注入、電子輸送)を1つの層が兼ね備え、その層に存在する単一物質が担うことも可能である。例えば、正孔輸送層に使用する物質は、一実施形態では、同時に、励起子および/または電子をブロックすることもできる。
【0055】
さらに、上に明記したもののうちOLEDの個々の層を、今度は2つ以上の層から形成してもよい。例えば、正孔輸送層は、電極から正孔が注入される層と、正孔注入層から離れて正孔を発光層に輸送する層とから形成してもよい。同様に、電子輸送層は、複数の層(例えば、電極によって電子が注入される層、および電子注入層から電子を受け取って発光層に電子を輸送する層)から構成してもよい。既述のこうした層はそれぞれ、エネルギー準位、熱抵抗および電荷担体移動性、ならびに有機層または金属電極によって規定される層のエネルギー差などの因子に応じて選択される。当業者は、本発明にしたがってエミッター物質として使用される有機化合物と最適なように、OLEDの構造を選択することができる。
【0056】
特に効率的なOLEDを得るためには、例えば、正孔輸送層のHOMO(最高被占分子軌道)を陽極の仕事関数に合わせるべきであり、電子輸送層のLUMO(最低空分子軌道)を陰極の仕事関数に合わせるべきである。但し、これは前述の層が本発明のOLEDに存在する場合である。
【0057】
陽極(1)は、正の電荷担体を与える電極である。これは、例えば、金属、様々な金属の混合物、金属の合金、金属酸化物または様々な金属酸化物の混合物を含む物質から形成されうる。あるいはまた、陽極は導電性ポリマーであってもよい。好適な金属には、主族の金属、遷移金属およびランタノイド金属ならびにそれらの合金、特に元素周期表のIb、IVa、VaおよびVIa族の金属、およびVIIIa族の遷移金属が含まれる。陽極を透明にする場合、一般に、元素周期表(IUPAC版)のIIb、IIIbおよびIVb族の混合金属酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO))を使用する。陽極(1)が、例えば、Nature, Vol. 357, pages 477 to 479(June 11, 1992)に記載の有機物質(例えば、ポリアニリン)を含むことも同様に可能である。生じる光を発しうるには、少なくとも陽極または陰極のいずれかが少なくとも部分的に透明であるべきである。陽極(1)に使用する物質は好ましくはITOである。
【0058】
本発明のOLEDの層(2)に適した正孔輸送物質は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,4th edition, Vol. 18, pages 837 to 860, 1996に開示されている。正孔輸送の分子およびポリマーのどちらも正孔輸送物質として使用することができる。典型的に使用される正孔輸送分子は、トリス[N−(1−ナフチル)−N−(フェニルアミノ)]トリフェニルアミン(1−NaphDATA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル)(4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、4,4’,4''−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)、4,4’,4''−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、N,N’−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(β−NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン(スピロ−TPD)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−スピロビフルオレン(スピロ−NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン(DMFL−TPD)、ジ[4−(N,N−ジトリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジメチルフルオレン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−2,2−ジメチルベンジジン、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、4,4’,4''−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4''−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(PPDN)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン(MeO−TPD)、2,7−ビス[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(MeO−スピロ−TPD)、2,2’−ビス[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(2,2’−MeO−スピロ−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ[4−(N,N−ジトリルアミノ)フェニル]ベンジジン(NTNPB)、N,N’−ジフェニル−N、N’−ジ[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン(β−NPP)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン(DPFL−TPD)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニルフルオレン(DPFL−NPB)、2,2’,7,7’−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン(スピロ−TAD)、9,9−ビス[4−(N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ)フェニル]−9H−フルオレン(BPAPF)、9,9−ビス[4−(N,N−ビス(ナフタレン−2−イル)アミノ)フェニル]−9H−フルオレン(NPAPF)、9,9−ビス[4−(N,N−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ビスフェニルアミノ)フェニル]−9H−フルオレン(NPBAPF)、2,2’,7,7’−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)アミノ]−9,9’−スピロビフルオレン(スピロ−2NPB)、N,N’−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン(PAPB)、2,7−ビス[N,N−ビス(9,9−スピロビフルオレン−2−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(スピロ−5)、2,2’−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(2,2’−スピロ−DBP)、2,2’−ビス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン(スピロ−BPA)、2,2’,7,7’−テトラ(N,N−ジトリル)アミノスピロビフルオレン(スピロ−TTB)、N,N,N’,N’−テトラナフタレン−2−イルベンジジン(TNB)、ポルフィリン化合物およびフタロシアニン類(銅フタロシアニン類およびチタンオキシドフタロシアニン類など)からなる群から選択される。一般に使用される正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール類、(フェニルメチル)ポリシラン類およびポリアニリン類からなる群から選択される。正孔輸送分子をポリマー(ポリスチレンおよびポリカーボネートなど)にドープすることによって正孔輸送ポリマーを得ることも同様に可能である。好適な正孔輸送分子は、すでに上述した分子である。
【0059】
さらに、(一実施形態では)カルベン錯体を正孔輸送物質として使用することも可能であり、少なくとも1種の正孔輸送物質のバンドギャップは一般に、使用されるエミッター物質のバンドギャップよりも大きい。本出願との関連では、「バンドギャップ」は、三重項エネルギーを意味すると理解される。好適なカルベン錯体は、例えば、国際公開第2005/019373A2号パンフレット,国際公開第2006/056418A2号パンフレット,国際公開第2005/113704号パンフレット、国際公開第2007/115970号パンフレット、国際公開第2007/115981号パンフレットおよび国際公開第2008/000727号パンフレットに記載されているカルベン錯体である。好適なカルベン錯体の一例として、次式:
【化22】
を有するfac−イリジウム−トリス(1,3−ジフェニルベンズイミダゾリン−2−イリデン−C,C2')(Ir(dpbic)3)が挙げられ、これは、例えば、国際公開第2005/019373号パンフレットに開示されている。好ましくは、正孔輸送層は、酸化モリブデン(MoOX)(特にMoO3)、または酸化レニウム(ReOX)(特にReO3)がドープされた
【化23】
の化合物を含む。ドーパントは、ドーパントおよびカルベン錯体の量を基準にして、0.1質量%、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは3〜5質量%の量で含まれる。
【0060】
発光層(3)は、少なくとも1種のエミッター物質を含む。原則として、それは蛍光エミッターでも燐光エミッターでもよく、好適なエミッター物質は当業者に既知である。少なくとも1種のエミッター物質は、好ましくは燐光エミッターである。好ましく使用される燐光エミッター化合物は、金属錯体に基づくものであり、特に金属Ru、Rh、Ir、PdおよびPtの錯体(特にIrの錯体)が、重要性を帯びてきた。
【0061】
本発明のOLEDに用いるのに適した金属錯体は、例えば、文献国際公開第02/60910A1号パンフレット、米国特許出願公開第2001/0015432A1号明細書、米国特許出願公開第2001/0019782A1号明細書、米国特許出願公開第2002/0055014A1号明細書、米国特許出願公開第2002/0024293A1号明細書、米国特許出願公開第2002/0048689A1号明細書、欧州特許出願公開第1191612A2号明細書、欧州特許出願公開第1191613A2号明細書、欧州特許出願公開第1211257A2号明細書、米国特許出願公開第2002/0094453A1号明細書、国際公開第02/02714A2号パンフレット、国際公開第00/70655A2号パンフレット、国際公開第01/41512A1号パンフレット、国際公開第02/15645A1号パンフレット、国際公開第2005/019373A2号パンフレット、国際公開第2005/113704A2号パンフレット、国際公開第2006/115301A1号パンフレット、国際公開第2006/067074A1号パンフレット、国際公開第2006/056418号パンフレット、国際公開第2006121811A1号パンフレット、国際公開第2007095118A2号パンフレット、国際公開第2007/115970号パンフレット、国際公開第2007/115981号パンフレットおよび国際公開第2008/000727号パンフレット、国際公開第2010129323号パンフレット、国際公開第2010056669号パンフレットおよび国際公開第10086089号パンフレットに記載されている。
【0062】
発光層は、好ましくは、国際公開第2005/019373A2号パンフレットに記載されている式
【化24】
[式中、記号は以下の意味を有する:
1は、Co、Rh、Ir、Nb、Pd、Pt、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Cu、AgおよびAu(それぞれの金属原子にとって可能な任意の酸化状態にある)からなる群から選択される金属原子であり;
カルベンは、非荷電またはモノアニオン性であってよくかつ単座、二座または三座であってよいカルベン配位子であり、当該カルベン配位子はまた、ビスカルベンまたはトリスカルベンの配位子であることもでき;
Lは、単座であっても二座であってもよい、モノアニオン性またはジアニオン性の配位子であり;
Kは、ホスフィン類;ホスホネート類およびその誘導体、アルセナート類およびその誘導体;ホスファイト類;CO;ピリジン類;ニトリル類および共役ジエン(M1とのπ錯体を形成する)からなる群から選択される非荷電の単座または二座配位子であり;
n1は、カルベン配位子の数であって、n1は少なくとも1であり、n1>1の場合、式Iの錯体におけるカルベン配位子は、同一であっても異なっていてもよく;
mは、配位子Lの数であって、mは0または≧1であってよく、m>1である場合、配位子Lは同一であっても異なっていてもよく;
oは、配位子Kの数であって、oは0または≧1であってよく、o>1である場合、配位子Kは同一であっても異なっていてもよく;
ここで、n1+m+oの合計は、金属原子の酸化状態および配位数、および配位子であるカルベン、LおよびKのデンティシティー(denticity)、さらにまた配位子であるカルベンおよびLの電荷に依存するが、但し、n1が少なくとも1であることを条件とする]
の化合物を含む。
【0063】
式IXの化合物は、好ましくは次の式の化合物である:
【化25-1】
【化25-2】
【化25-3】
【化25-4】
【化25-5】
【化25-6】
【化25-7】
【0064】
ホモレプチック金属−カルベン錯体は、面異性体または子午線異性体の形で存在しうる。面異性体が好ましい。
【0065】
ヘテロレプチック金属−カルベン錯体の場合、4種類の異なる異性体が存在しうる。疑似面異性体が好ましい。
【0066】
式IXの化合物は、より好ましくは式
【化26】
の化合物である。
【0067】
さらに好適な金属錯体は、市販の金属錯体であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)、イリジウム(III)トリス(2−(4−トリル)ピリジナト−N,C2')、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、イリジウム(III)トリス(1−フェニルイソキノリン)、イリジウム(III)ビス(2,2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3')(アセチルアセトネート)、トリス(2−フェニルキノリン)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2)ピコリネート、イリジウム(III)ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)、ビス(2−フェニルキノリン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(ジ−ベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)、イリジウム(III)ビス(2−メチルジ−ベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)およびトリス(3−メチル−1−フェニル−4−トリメチルアセチル−5−ピラゾリノ)テルビウム(III)、ビス[1−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)イソキノリン](アセチルアセトナト)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、ビス(2−(9,9−ジヘキシルフルオレニル)−1−ピリジン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、ビス(2−ベンゾ[b]チオフェン−2−イル−ピリジン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)である。
【0068】
さらに、以下の市販の物質が適している:トリス(ジベンゾイルアセトナト)モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(5−アミノフェナントロリン)−ユウロピウム(III)、トリス(ジ−2−ナフトイルメタン)モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(4−ブロモベンゾイルメタン)モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジ(ビフェニル)メタン)−モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(4,7−ジフェニルフェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(4,7−ジメチルフェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(4,7−ジメチルフェナントロリンジスルホン酸)ユウロピウム(III)ジナトリウム塩、トリス[ジ(4−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]モノ(フェナントロリン)ユウロピウム(III)およびトリス[ジ[4−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)ベンゾイルメタン)]モノ(5−アミノフェナントロリン)ユウロピウム(III)、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−tert−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾラト)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−1,2,4−トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(4−tert−ブチルピリジル)−1,2,4−トリアゾラト)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3−(トリフルオロメチル)−5−(2−ピリジル)−ピラゾラト)ジメチルフェニルホスフィン、トリス[4,4’−ジ−tert−ブチル(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)、オスミウム(II)ビス(2−(9,9−ジブチルフルオレニル)−1−イソキノリン(アセチルアセトネート)。
【0069】
好適な三重項エミッターは、例えば、カルベン錯体である。本発明の一実施形態では、式Xの化合物は、発光層で、三重項エミッターとしてのカルベン錯体と一緒にマトリックス材として使用される。
【0070】
【化27】
[式中、
Xは、NR、S、OまたはPRであり;
Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
1は、−NR67、−P(O)R89、−PR1011、−S(O)212、−S(O)R13、−SR14、または−OR15であり;
21、R22およびR23は互いに独立に、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであって、ここで、基R1、R2、またはR3の少なくとも1つがアリールまたはヘテロアリールであり;
4およびR5は互いに独立に、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、基A1、あるいは供与体特性または受容体特性を有する基であり;
n2およびm1は互いに独立に、0、1、2、または3であり;
6、R7は、窒素原子と一緒になって、3〜10個の環原子を有する環状残基を形成し、その環状残基は、非置換であってよいか、またはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび供与体特性または受容体特性を有する基から選択される1つ以上の置換基で置換されていてよく、かつ/または3〜10個の環原子を有する1つ以上の更なる環状残基が環付加されていてもよく、ここで、環付加残基は非置換であっても、あるいはアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび供与体特性または受容体特性を有する基から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく;さらに
8、R9、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は互いに独立に、アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである]。式Xの化合物、例えば、
【化28】
は、国際公開第2010079051号パンフレット(PCT/EP2009/067120;特に19〜26頁、および27〜34頁、35〜37頁および42〜43頁の各表)に記載されている。
【0071】
ジベンゾフランに基づく更なるマトリックス材は、例えば、米国特許出願公開第2009066226号明細書、欧州特許第1885818B1号明細書、欧州特許出願公開第1970976号明細書、欧州特許出願公開第1998388号明細書および欧州特許出願公開第2034538号明細書に記載されている。特に好ましいマトリックス材の例を以下に示す:
【化29-1】
【化29-2】
【化29-3】
【0072】
上述した化合物において、TはOまたはSであり、好ましくはOである。Tが分子中、2箇所以上に現れる場合、すべての基Tは同じ意味を有する。
【0073】
好適なカルベン錯体は当業者に既知であり、例えば、国際公開第2005/019373A2号パンフレット、国際公開第2006/056418A2号パンフレット、国際公開第2005/113704号パンフレット、国際公開第2007/115970号パンフレット、国際公開第2007/115981号パンフレットおよび国際公開第2008/000727号パンフレットに記載されている。
【0074】
発光層は、エミッター物質のほかに、更なる成分を含むことができる。例えば、エミッター物質の発光色を変えるために、発光層に蛍光色素が存在してもよい。さらに、(好ましい実施形態では)マトリックス材を使用することができる。このマトリックス材は、ポリマー(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)またはポリシラン)であってよい。とはいえ、マトリックス材は、小分子、例えば、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CDP=CBP)または芳香族第三アミン(例えば、TCTA)であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、ジベンゾフランに基づく少なくとも1種の上述したマトリックス材、特に、少なくとも1種の式Xの化合物がマトリックス材として使用される。
【0075】
好ましい実施形態では、発光層は、2〜20質量%、好ましくは5〜17質量%の、少なくとも1種の前述のエミッター物質、および80〜98質量%、好ましくは83〜95質量%の、少なくとも1種の前述のマトリックス材(一実施形態では、式Xの少なくとも1種の化合物)から形成され、エミッター物質の合計とマトリックス材の合計を合わせると100質量%になる。
【0076】
好ましい実施形態では、発光層は、式Xの化合物、例えば、
【化30】
および2種類のカルベン錯体、好ましくは、式
【化31】
のものを含む。前記実施形態では、発光層は、2〜40質量%、好ましくは5〜35質量%の
【化32】
および60〜98質量%、好ましくは65〜95質量%の、式Xの化合物および
【化33】
から形成され、カルベン錯体の合計と式Xの化合物の合計を合わせると100質量%になる。
【0077】
更なる実施形態では、ジベンゾフランに基づく上述したマトリックス材(特に式Xの化合物)が、正孔/励起子のブロッカー物質として、好ましくは三重項エミッターとしてのカルベン錯体と一緒に使用される。ジベンゾフランに基づく上述したマトリックス材(特に式Xの化合物)は、マトリックス材として、あるいはマトリックス材と正孔/励起子のブロッカー物質の両方として、三重項エミッターとしてのカルベン錯体と一緒に使用される。
【0078】
したがって、マトリックス材および/または正孔/励起子のブロッカー物質としての、ジベンゾフランに基づく上述したマトリックス材(特に式Xの化合物)と一緒に、OLED中で使用するのに適した金属錯体は、したがって、例えば、国際公開第2005/019373A2号パンフレット、国際公開第2006/056418A2号パンフレット、国際公開第2005/113704号パンフレット、国際公開第2007/115970号パンフレット、国際公開第2007/115981号パンフレットおよび国際公開第2008/000727号パンフレットに記載されているカルベン錯体でもある。本明細書では引用された国際公開出願の開示が明確に参照され、それらの開示内容は本出願で援用されると見なされるものとする。
【0079】
OLEDに一般に使用される正孔ブロッカー物質は、ジベンゾフランに基づく上述のマトリックス材(特に式Xの化合物の化合物)である2,6−ビス(N−カルバゾリル)ピリジン(mCPy)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン、(BCP))、ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェニラト)アルミニウム(III)(BAlq)、フェノチアジンS,S−ジオキシド誘導体および1,3,5−トリス(N−フェニル−2−ベンジルイミダゾリル)ベンゼン)(TPBI)であり、TPBIは電子伝導物質としても適している。更なる好適な正孔ブロッカーおよび/または電子輸送物質は、2,2’,2''−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム、4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、1,3−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、6、6’−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2’−ビピリジル、2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、2,7−ビス[2−(2,2’−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、トリス−(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−f)[1,10]−フェナントロリンである。更なる実施形態では、カルボニル基を含む基を介して結合された芳香環またはヘテロ芳香環を含む化合物(国際公開第2006/100298号パンフレットに開示されている)、ジシリル−カルバゾール類、ジシリルベンゾフラン類、ジシリルベンゾチオフェン類、ジシリルベンゾホスホール類、ジシリルベンゾチオフェンS−酸化物およびジシリルベンゾチオフェンS,S−ジオキシド類からなる群から選択されるジシリル化合物(例えば、国際公開第2009003919号パンフレット(PCT/EP2008/058207)および国際公開第2009003898号パンフレット(PCT/EP2008/058106)に明記されている)、および国際公開第2008/034758号パンフレットに開示されているジシリル化合物を、正孔/励起子用のブロッキング層(4)としてまたは発光層(3)中のマトリックス材として使用することもできる。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明は、(1)陽極、(2)正孔輸送層、(3)発光層、(4)正孔/励起子用のブロッキング層、(5)電子輸送層および(6)陰極の各層、および適切な場合には更なる層を含む本発明のOLEDであって、電子輸送層が式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む、本発明のOLEDに関する。
【0081】
本発明のOLEDの電子輸送層(5)は、式Iの有機金属錯体と式IIまたはIIIの化合物とを含む。層(5)は、好ましくは電子の移動性を向上させる。
【0082】
正孔輸送物質および電子輸送物質として上に挙げた物質の中のうち幾つかは、複数の機能を果たすことができる。例えば、電子輸送物質の幾つかは、低いHOMOを有する場合、同時に正孔ブロッキング物質でもある。それらは、例えば、正孔/励起子用のブロッキング層(4)中で使用することができる。
【0083】
使用物質の輸送特性を向上させるため、第一に層の厚さをいっそう自由に変えられるものにするために(ピンホール/短絡の回避)、また第二にデバイスの動作電圧を最小限に抑えるために、電荷輸送層を電子的にドーピングすることもできる。例えば、正孔輸送物質は、電子受容体をドープすることができる。例えば、フタロシアニン類またはアリールアミン類(TPDまたはTDTAなど)に、テトラフルオロテトラシアンキノジメタン(F4−TCNQ)を、または酸化モリブデン(MoOX)(特にMoO3)を、または酸化レニウム(ReOX)(特にReO3)、またはWO3をドープすることができる。電子的ドーピングは当業者に既知であり、例えば、W. Gao, A. Kahn, J. Appl. Phys., Vol. 94, No. 1, 1 July 2003(p−doped organic layers);A. G. Werner, F. Li, K. Harada, M. Pfeiffer, T. Fritz, K. Leo. Appl. Phys. Lett, Vol. 82, No. 25, 23 June 2003 and Pfeiffer et al., Organic Electronics 2003, 4, 89−103に開示されている。例えば、正孔輸送層は、カルベン錯体(例えば、Ir(dpbic)3)のほかに、酸化モリブデン(MoOX)(特にMoO3)、または酸化レニウム(ReOX)(特にReO3)またはWO3をドープしてもよい。
【0084】
陰極(6)は、電子または負の電荷担体を導入する電極である。陰極用の好適な物質は、ランタノイドおよびアクチノイド(例えばサマリウム)を含む、元素周期表(旧IUPAC版)のIa族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、IIa族のアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウムまたはマグネシウム)、IIb族の金属からなる群から選択される。さらに、アルミニウムまたはインジウムなどの金属、および既述の金属すべての組合せを使用することもできる。加えて、動作電圧を下げるために、リチウム含有有機金属化合物またはフッ化カリウム(KF)を、有機層と陰極との間に適用することもできる。
【0085】
本発明によるOLEDは、当業者に既知の更なる層を付加的に含んでもよい。例えば、陽電荷の輸送を促進し、かつ/または層のバンドギャップを互いに一致させる層を、層(2)と発光層(3)との間に適用してもよい。あるいはまた、この更なる層は、保護層として働いてもよい。同様に、負電荷の輸送を促進し、かつ/または層間のバンドギャップを互いに一致させるために、発光層(3)と層(4)との間に更なる層が存在してもよい。あるいはまた、この層は保護層として働いてもよい。
【0086】
好ましい実施形態では、本発明のOLEDは、層(1)〜(6)に加えて、以下に挙げた層の少なくとも1つを含む:
− 陽極(1)と正孔輸送層(2)との間の正孔注入層;
− 正孔輸送層(2)と発光層(3)との間の電子用ブロッキング層;
− 電子輸送層(5)と陰極(6)との間の電子注入層。
【0087】
正孔注入層用の物質は、銅フタロシアニン、4,4’,4''−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4''−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2T−NATA)、4,4’,4''−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(1T−NATA)、4,4’,4''−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(NATA)、チタンオキシドフタロシアニン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(PPDN)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン(MeO−TPD)、2,7−ビス[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(MeO−スピロ−TPD)、2,2’−ビス[N、N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]−9,9−スピロビフルオレン(2,2’−MeO−スピロ−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジトリルアミノ)フェニル]ベンジジン(NTNPB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンゼン−1,4−ジアミン(α−NPP)から選択することができる。原則として、正孔注入層は、ジベンゾフランに基づく少なくとも1種の上述したマトリックス材、特に少なくとも1種の式Xの化合物を正孔注入物質として含みうる。
【0088】
電子注入層の物質として、例えば、KFまたはLiqを選択することができる。KFはLiqより好ましい。
【0089】
当業者は、(例えば、電気化学的研究に基づく)好適な物質の選び方を知っている。個々の層に適した物質は、当業者に既知であり、例えば、国際公開第00/70655号パンフレットに開示されている。
【0090】
さらに、電荷担体輸送の効率を上げるため、本発明のOLEDに使用する層の幾つかが表面処理されていてもよい。既述の各層の物質の選択は、好ましくは高効率および高寿命を有するOLEDを得るために決定される。
【0091】
本発明のOLEDは、当業者に機知の方法で製造することができる。一般に、本発明のOLEDは、個々の層を好適な基材に連続蒸着させることによって製造される。好適な基材は、例えば、ガラス、無機半輸送体(典型的にはITO、またはIZO)、またはポリマーフィルムである。蒸着の場合、熱蒸発、化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)など、通例の技法を用いることができる。別の方法では、OLEDの有機層は、当業者に既知の塗布技術を使用して、適切な溶媒中の溶液または分散液から適用することができる。
【0092】
一般に、これらの種々の層の厚さは次のとおりである:陽極(1)50〜500nm、好ましくは100〜200nm;正孔伝導層(2)5〜100nm、好ましくは20〜80nm、発光層(3)1〜100nm、好ましくは10〜80nm、正孔/励起子用のブロッキング層(4)2〜100nm、好ましくは5〜50nm、電子伝導層(5)5〜100nm、好ましくは20〜80nm、陰極(6)20〜1000nm、好ましくは30〜500nm。陰極に対する本発明のOLED中の正孔および電子の再結合領域の相対位置、したがってOLEDの発光スペクトルは、幾つかある因子の中でも特に、各層の相対的厚さに影響されうる。このことは、電子輸送層の厚さを、好ましくは再結合領域の位置が、ダイオードの光共振器特性に合うように、したがってエミッターの発光波長と合うように、選択すべきであることを意味する。OLED内の各層の層厚さの比率は、使用する物質によって異なる。使用するどの付加的な層の厚さも当業者には既知である。電子伝導層および/または正孔伝導層は、電子的にドーピングされる場合に指定される層厚さよりも厚くなりうる。
【0093】
本出願の電子輸送層を使用することにより、高効率かつ低動作電圧のOLEDが得られる。多くの場合、本出願の電子輸送層を使用して得られたOLEDは、高寿命でもある。またOLEDの効率は、OLEDの他の層を最適化することによって向上させることもできる。動作電圧の低減または量子効率の上昇をもたらす成形基材および新規の正孔輸送物質は、本発明のOLEDに同様に使用することができる。さらに、種々の層のエネルギー準位を調整するため、またエレクトロルミネセンスを促進させるため、更なる層がOLED中に存在してもよい。
【0094】
OLEDは、少なくとも1つの第2発光層をさらに含んでもよい。OLEDの発光全体は、少なくとも2つの発光層の発光で構成されえ、白色光を含むこともできる。
【0095】
OLEDは、エレクトロルミネセンスが有用であるあらゆる装置に使用することができる。好適なデバイスは、好ましくは固定式および可搬式の表示装置および照明装置から選択される。固定式表示装置には、例えば、コンピュータの表示装置、テレビ、プリンターの表示装置、台所用品および広告のパネル、イルミネーションおよび情報パネルがある。可搬式表示装置には、例えば、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ、MP3プレーヤー、乗り物といったものの表示装置およびバスや列車の行先ディスプレイがある。本発明のOLEDを使用可能な更なるデバイスには、例えば、キーボード、衣類、家具、壁紙がある。
【0096】
さらに、本出願の電子輸送層は逆構造のOLEDに使用することができる。逆OLED構造およびそれに一般に使用される物質は当業者に既知である。
【0097】
さらに、本発明は、固定式の表示装置(コンピュータの表示装置、テレビ、プリンターの表示装置、台所用品および広告のパネル、イルミネーション、情報パネルなど)、および可搬式の表示装置(携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ、MP3プレーヤー、乗り物といったものの表示装置およびバスや列車の行先ディスプレイなど);照明装置;キーボード;衣類;家具;壁紙からなる群から選択される装置であって、本発明の有機電子デバイスまたは本発明の有機層、特に電子輸送層を含む装置に関する。
【0098】
以下の実施例は、説明のためにのみ含まれており、請求の範囲を限定するものではない。特に記載のない限り、部および百分率はすべて質量に基づいている。
【0099】
実施例
比較応用例1
陽極として使用するITO基材は、まずLCD製造用の市販の洗浄剤(Deconex(登録商標)20NS、および25ORGAN−ACID(登録商標)中和剤)で清浄にし、その後、超音波洗浄機中のアセトン/イソプロパノール混合物に入れる。考えられるあらゆる有機残留物を除去するため、基材をさらに25分間、オゾンオーブン中の連続オゾン流に暴露する。この処理により、ITOの正孔注入特性も改善される。その後、AJ20−1000(Plexcoreから市販されている)をスピンコートし、乾燥させて正孔注入層(約40nm)を形成する。
【0100】
その後、以下に指定した有機物質を、およそ0.5〜5nm/分の速度、約10-8mbarにおいて清浄な基材に蒸着により適用する。正孔輸送および励起子のブロッカーとして、Ir(dpbic)3(V1)を基材に45nm厚で施す。その場合、最初の35nmにMoOX(約50%)をドープして伝導率を向上する。
【0101】
【化34】
(製造については、国際公開第2005/019373号パンフレットの出願のIr錯体(7)を参照)。
【0102】
その後、30質量%の化合物
【化35】
と35質量%の化合物(V−1)と35質量%の化合物
【化36】
(V3、PCT/EP2009/067120に記載のもの)との混合物を、蒸着により20nm厚で適用する。
【0103】
その後、物質
【化37】
を励起子および正孔のブロッカーとして、蒸着により5nm厚で適用する。
【0104】
次に、50質量%の
【化38】
と50質量%の
【化39】
(8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム(Liq))との混合物を、電子輸送層として、蒸着により40nm厚で適用し、2nm厚のフッ化カリウム層(電子注入層)および最後に100nm厚のAl電極も適用する。
【0105】
比較応用例2
BCPとLiqの混合物の代わりに化合物A−10のみを使用する以外は、比較応用例1のようなOLEDの製造および構成。
【0106】
比較応用例3
BCPとLiqの混合物の代わりにLiqのみを使用する以外は、比較応用例1のようなOLEDの製造および構成。
【0107】
比較応用例4
BCPとLiqの混合物の代わりに化合物A−10を使用し、フッ化カリウムの代わりにLiqを使用する以外は、比較応用例1のようなOLEDの製造および構成。
【0108】
応用例1
BCPとLiqの混合物の代わりに、50質量%の化合物A−10と50質量%のLiqとの混合物を使用する以外は、比較応用例1のようなOLEDの製造および構成。
【0109】
応用例2
BCPとLiqの混合物の代わりに、50質量%の化合物A−10と50質量%のLiqとの混合物を使用し、フッ化カリウムの代わりにLiqを使用する以外は、比較応用例1のようなOLEDの製造および構成。
【0110】
応用例3
陽極として使用するITO基材を、まずLCD製造用の市販の洗浄剤(Deconex(登録商標)20NS、および25ORGAN−ACID(登録商標)中和剤)で清浄にし、その後、超音波洗浄機中のアセトン/イソプロパノール混合物に入れる。考えられるあらゆる有機残留物を除去するため、基材をさらに25分間、オゾンオーブン中の連続オゾン流に暴露する。この処理により、ITOの正孔注入特性も改善される。その後、AJ20−1000(Plexcoreから市販されている)をスピンコートし、乾燥させて正孔注入層(約40nm)を形成する。
【0111】
その後、以下に指定した有機物質を、およそ0.5〜5nm/分の速度、約10-8mbarにおいて清浄な基材に蒸着により適用する。正孔輸送および励起子のブロッカーとして、Ir(dpbic)3(V1)を基材に40nm厚で適用する。その場合、最初の35nmにMoOX(約50%)をドープして伝導率を向上させる。
【0112】
その後、30質量%の化合物(V2)と35質量%の化合物(V1)と35質量%の化合物(V3)との混合物を、蒸着により20nm厚で適用する。その後、物質(V3)を、励起子および正孔のブロッカーとして、蒸着により5nm厚で適用する。
【0113】
次に、50質量%の化合物(A−10)と50質量%のLiqとの混合物を、電子輸送層として、蒸着により40nm厚で適用し、1nm厚のLiq層(電子注入層)および最後に100nm厚のAl電極も適用する。
【0114】
比較応用例5
化合物A−10の代わりに化合物
【化40】
を使用する以外は、応用例3のようなOLEDの製造および構成。
【0115】
OLEDを特徴づけるために、エレクトロルミネセンスのスペクトルを様々な電流および電圧で記録する。さらに、電流電圧特性を、光出力と組み合わせて測定する。光出力は、光度計で校正し測光パラメーターに変換できる。寿命を測定するため、OLEDは、一定の電流密度で作動させ、光出力の減少を記録する。寿命は、輝度が初期輝度の半分に減少するまでに経過する時間として定義される。
【0116】
応用例および比較応用例のデバイスで測定した、300cd/m2でのV、300cd/m2でのIm/W、300cd/m2でのEQE(%)および300cd/m2での寿命(時間)を、以下の第1−1表〜第1−5表に示す。比較応用例の測定データを100に設定し、応用例のデータは、比較応用例のデータに対して相関的に明示してある。
【0117】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
1)50質量%
2)外部量子効率(EQE)は、物体またはデバイスから流出した発生光量子の数/物質またはデバイスの中を流れる電子の数である。
ET層=電子輸送層。
EI層=電子注入層。
【0118】
応用例のデバイスにおける300cd/m2での寿命、電力効率、量子効率および/または電圧は、比較応用例のデバイスと比べて優れている。