(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収性物品に係る連続ウエブが所定の直線軌道を搬送される間に、前記連続ウエブに超音波振動を付与することにより、前記連続ウエブの搬送方向に間隔をおいて複数の溶着部を形成する超音波シール装置であって、
前記超音波振動を発する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンが前記超音波振動を前記連続ウエブに向けて発する際に、前記超音波ホーンと協働して、前記連続ウエブをその厚み方向から挟持するアンビルと、
前記超音波ホーン及び前記アンビルを、前記直線軌道と平行な往路及び復路に沿って移動させる往復直線移動機構と、を有し、
前記往路には、前記超音波ホーン及び前記アンビルの両者が互いに前記厚み方向に対向しつつ前記連続ウエブの搬送速度値と同じ速度値で移動する等速域が設定されており、
前記等速域を移動中に、前記超音波ホーンと前記アンビルとは、前記連続ウエブの挟持と、前記挟持の解除とを行い、
前記連続ウエブの挟持中に、前記超音波ホーンが前記超音波振動を発するように構成されており、
前記超音波ホーンと前記アンビルと前記往復直線移動機構とを有するモジュールが、前記直線軌道に沿って複数並んで配置されており、
前記複数のモジュールとして少なくとも第1モジュールと第2モジュールとを有し、
前記第1モジュール及び前記第2モジュールを支持する鏡板が設けられており、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が往路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は復路の移動動作を行い、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が復路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は往路の移動動作を行うことを特徴とする超音波シール装置。
吸収性物品に係る連続ウエブが所定の直線軌道を搬送される間に、前記連続ウエブに超音波振動を付与することにより、前記連続ウエブの搬送方向に間隔をおいて複数の溶着部を形成する超音波シール方法であって、
前記超音波振動を発する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンが前記超音波振動を前記連続ウエブに向けて発する際に、前記超音波ホーンと協働して、前記連続ウエブをその厚み方向から挟持するアンビルと、
前記超音波ホーン及び前記アンビルを、前記直線軌道と平行な往路及び復路に沿って移動させる往復直線移動機構と、を用い、
前記往路において、前記超音波ホーン及び前記アンビルの両者を互いに前記厚み方向に対向させつつ前記連続ウエブの搬送速度値と同じ速度値で移動することと、
前記同じ速度値で移動することにおいて、前記超音波ホーンと前記アンビルとが、前記連続ウエブの挟持を行うことと、
前記同じ速度値で移動することにおいて、前記挟持の解除をすることと、
前記挟持中に、前記超音波ホーンが前記超音波振動を発することと、を有し、
前記超音波ホーンと前記アンビルと前記往復直線移動機構とを有するモジュールを、前記直線軌道に沿って複数並んで配置し、
前記複数のモジュールとして少なくとも第1モジュールと第2モジュールとを設け、
前記第1モジュール及び前記第2モジュールを支持する鏡板を設け、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が往路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構が復路の移動動作を行い、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が復路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構が往路の移動動作を行うことを特徴とする超音波シール方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
吸収性物品に係る連続ウエブが所定の直線軌道を搬送される間に、前記連続ウエブに超音波振動を付与することにより、前記連続ウエブの搬送方向に間隔をおいて複数の溶着部を形成する超音波シール装置であって、
前記超音波振動を発する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンが前記超音波振動を前記連続ウエブに向けて発する際に、前記超音波ホーンとで、前記連続ウエブをその厚み方向から挟持するアンビルと、
前記超音波ホーン及び前記アンビルを、前記直線軌道と平行な往路及び復路に沿って移動させる往復直線移動機構と、を有し、
前記往路には、前記超音波ホーン及び前記アンビルの両者が互いに前記厚み方向に対向しつつ前記連続ウエブの搬送速度値と同じ速度値で移動する等速域が設定されており、
前記等速域を移動中に、前記超音波ホーンと前記アンビルとは、前記連続ウエブの挟持と、前記挟持の解除とを行い、
前記連続ウエブの挟持中に、前記超音波ホーンが前記超音波振動を発することを特徴とする超音波シール装置。
【0015】
このような超音波シール装置によれば、設定された等速域においては、超音波ホーンとアンビルとの両者は、連続ウエブと同じ速度値で同連続ウエブの直線軌道に沿って移動しながら、同連続ウエブへの挟持及びその解除を行う。よって、連続ウエブと超音波ホーンとアンビルとの三者の速度値が揃った状態で、挟持して溶着処理を行うので、これら三者の間の相対速度(相対滑り)を抑制することができる。その結果、擦れや皺の発生を抑制可能になるとともに、溶着部を安定して形成可能となる。
【0016】
かかる超音波シール装置であって、
前記超音波ホーンと前記アンビルと前記往復直線移動機構とを有するモジュールが、前記直線軌道に沿って複数並んで配置されていても良い。
【0017】
かかる超音波シール装置であって、
前記複数のモジュールとして少なくとも第1モジュールと第2モジュールとを有し、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が往路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は復路の移動動作を行い、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が復路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は往路の移動動作を行うのが望ましい。
このような超音波シール装置によれば、第1モジュールと第2モジュールとは、超音波ホーン及びアンビルの往復移動に関して、互いに略逆動作を行う関係にある。よって、これら超音波ホーンやアンビルの往復移動に起因して、これら第1モジュールや第2モジュールを支持している鏡板の如き支持部材に作用し得る慣性力を互いに相殺させることができて、その結果、上記支持部材の如き、第1モジュールや第2モジュールの周囲に配される部材に生じ得る機械的振動を低減可能となる。
【0018】
かかる超音波シール装置であって、
前記複数のモジュールとして少なくとも第1モジュールと第2モジュールとを有し、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が往路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は往路の移動動作を行い、
前記第1モジュールの往復直線移動機構が復路の移動動作を行う際に、前記第2モジュールの往復直線移動機構は復路の移動動作を行っても良い。
【0019】
かかる超音波シール装置であって、
前記挟持中に、前記超音波ホーンは前記超音波振動のエネルギーを一定量だけ前記連続ウエブに付与するのが望ましい。
このような超音波シール装置によれば、挟持中に超音波ホーンは超音波振動のエネルギーを一定量だけ連続ウエブに付与する。よって、連続ウエブの搬送速度の変動起因で溶着部毎に溶融レベルがばらつくことを有効に防ぐことができて、その結果、所定の溶着強度を有した溶着部を安定して形成可能となる。
【0020】
かかる超音波シール装置であって、
前記往復直線移動機構を制御するコントローラを有し、
前記コントローラの制御によって、前記往復直線移動機構は、前記超音波ホーンと前記アンビルとを、規定の動作パターンに基づいて前記往路及び前記復路に沿って繰り返し移動し、
前記コントローラは、互いに異なる前記動作パターンのデータを複数有し、
前記コントローラは、形成すべき前記溶着部の前記搬送方向の形成ピッチの大きさに対応する動作パターンのデータを前記複数の動作パターンのデータのなかから選択して、前記往復直線移動機構の制御に用いることが望ましい。
このような超音波シール装置によれば、コントローラは、形成すべき溶着部の形成ピッチの大きさに対応する動作パターンのデータを選択して、この選択された動作パターンのデータに基づいて往復直線移動機構を制御する。よって、溶着部の形成ピッチを容易に変更可能となる。
【0021】
かかる超音波シール装置であって、
超音波シール装置の上下方向は、前記直線軌道に対して直交しており、
前記アンビルは、前記上下方向において前記超音波ホーンの上方に位置するのが望ましい。
【0022】
このような超音波シール装置によれば、アンビルをメンテナンスし易くなる。
【0023】
かかる超音波シール装置であって、
前記アンビルは、前記上下方向に移動可能に構成され、前記超音波ホーンは前記上下方向に移動不能に構成されているのが望ましい。
【0024】
このような超音波シール装置によれば、超音波ホーンは上下方向に移動不能に構成されているので、挟持動作に係る可動部の数を少なくすることができる。
【0025】
かかる超音波シール装置であって、
前記アンビルは、前記上下方向に移動不能に構成され、前記超音波ホーンは前記上下方向に移動可能に構成されているのが望ましい。
【0026】
このような超音波シール装置によれば、アンビルは上下方向に移動不能に構成されているので、挟持動作に係る可動部の数を少なくすることができる。
【0027】
かかる超音波シール装置であって、
前記アンビル及び前記超音波ホーンの両方が、前記上下方向に移動可能に構成されていても良い。
【0028】
また、
吸収性物品に係る連続ウエブが所定の直線軌道を搬送される間に、前記連続ウエブに超音波振動を付与することにより、前記連続ウエブの搬送方向に間隔をおいて複数の溶着部を形成する超音波シール方法であって、
前記超音波振動を発する超音波ホーンと、
前記超音波ホーンが前記超音波振動を前記連続ウエブに向けて発する際に、前記超音波ホーンとで、前記連続ウエブをその厚み方向から挟持するアンビルと、
前記超音波ホーン及び前記アンビルを、前記直線軌道と平行な往路及び復路に沿って移動させる往復直線移動機構と、を用い、
前記往路において、前記超音波ホーン及び前記アンビルの両者を互いに前記厚み方向に対向させつつ前記連続ウエブの搬送速度値と同じ速度値で移動することと、
前記同じ速度値で移動することにおいて、前記超音波ホーンと前記アンビルとが、前記連続ウエブの挟持を行うことと、
前記同じ速度値で移動することにおいて、前記挟持の解除をすることと、
前記挟持中に、前記超音波ホーンが前記超音波振動を発することと、を有することを特徴とする超音波シール方法。
このような超音波シール方法によれば、連続ウエブの搬送速度値と同じ速度値で超音波ホーン及びアンビルの両者が移動することにおいては、これら両者は、同連続ウエブの直線軌道に沿って移動しながら、同連続ウエブへの挟持及びその解除を行う。よって、連続ウエブと超音波ホーンとアンビルとの三者の速度値が揃った状態で、挟持して溶着処理を行うので、これら三者の間の相対速度(相対滑り)を抑制することができる。その結果、擦れや皺の発生を抑制可能になるとともに、溶着部を安定して形成可能となる。
【0029】
===第1実施形態===
本発明に係る超音波シール装置20は、連続生産ラインで搬送される連続ウエブ1aに対して、連続ウェブ1aの搬送方向に所定ピッチP1で間隔をおいて複数の溶着部14を形成する装置である。そして、この第1実施形態では、連続ウエブ1aとしてパンツ型おむつ1の基材1aを例示している。
図3A及び
図3Bは、超音波シール装置20を備えるシール部に搬送されるおむつ1の基材1aの説明図であって、両図とも斜視図である。なお、
図3Bには、シール部に搬送される直前の状態を示しており、
図3Aには、
図3Bの直前の状態を示している。
【0030】
図3Aの時点では、おむつ1の基材1aは、着用者の肌側に位置すべき表面シート2となる連続ウエブ2aと、非肌側に位置すべき裏面シート3となる連続ウエブ3aと、これら連続ウエブ2a,3a同士の間に介装されつつ、搬送方向に製品ピッチP1で間隔をおいて配されたパルプ繊維等の吸収体4,4…と、を有する。そして、これら三つの構成要素2a,3a,4が、互いに隣接するもの同士で貼り合わされ、且つ展開された状態にある。なお、本発明は、これら3つの構成要素2a,3a,4の使用に限定されない。
【0031】
また、この時点では、既に、搬送方向に互いに隣り合う吸収体4,4同士の間には、脚周り開口部8が形成されている。また、この脚周り開口部8及び股下部13に沿って、脚周り開口部8に伸縮性を付与する弾性部材6が貼着されている。更には、胴周りに相当する端部に沿っても、胴周りに伸縮性を付与する胴周り弾性部材5が貼着されている。なお、本発明は、これの構成要素5,6の使用に限定されない。
【0032】
そして、シール部の直前においては、この
図3Aの展開状態の基材1aが、その幅方向の略中央部たる股下部13を折り位置として二つ折りにされることにより、同基材1aは、
図3Bのような二つ折り状態でシール部に送り込まれる。つまり、おむつ1の前身頃10に相当する部位と、後身頃11に相当する部位とが、上下に重ね合わされた状態で、シール部へ送り込まれる。
【0033】
但し、この時点のおむつ1の基材1aにあっては、互いに重ね合わされた前身頃10に相当する部分と後身頃11に相当する部分とが、未だ未接合の状態にある。そのため、当該基材1aに対して、シール部の超音波シール装置20が、おむつ1の胴周りの側端部1eに相当する部位1eに溶着処理を施して溶着部14を形成することにより、基材1aの前身頃10と後身頃11とを互いに接合する。なお、本発明は、基材1aを溶着すること、又は、この位置で溶着することに限定されない。
【0034】
ここで、この溶着対象部位1e、つまりおむつ1の胴周りの側端部に相当する部位1eは、基材1a上において搬送方向に製品ピッチP1で吸収体4の両脇に現れる。よって、超音波シール装置20は、基材1aのうちで吸収体4の両脇の部位1eに、搬送方向に製品ピッチP1で溶着部14を形成する。なお、このとき、
図3Bに示すように、かかる溶着部14にあっては、一箇所1eにつき、搬送方向の互いに隣り合う位置に少なくとも一対14,14が並んで形成される。そして、かかる溶着部14が形成された基材1aは下工程へと送られて、下工程では一対の溶着部14,14同士の間の位置1cで順次基材1aが分断されて、これにより、胴周りの開口部や一対の脚周り開口部8,8を有したおむつ1が生成される。
【0035】
ちなみに、表面シート2の連続ウエブ2a及び裏面シート3の連続ウエブ3aの素材例としては、熱可塑性樹脂等の熱溶着性素材からなる不織布や織布、フィルムなどが挙げられるが、超音波溶着可能な素材であれば、何等これに限らない。また、本発明は、おむつ1の製造における本プロセスでの使用に限定されない。
【0036】
図4Aは、超音波シール装置20の概略側面図であり、
図4Bは、
図4A中のB−B線矢視図であり、
図4Cは、
図4A中のC−C矢視図である。なお、
図4Aでは、アンビル保持部72等を破断して示しており、また、
図4B及び
図4C中では、図の錯綜を防ぐべく、本来断面部に示すべきハッチングを一部の部材に対しては省略して示している。
【0037】
また、以下の説明では、製造ラインの幅方向のことを「CD方向」又は「左右方向」とも言う。なお、CD方向は水平方向を向いている。また、CD方向と直交する2方向のうちで、鉛直方向のことを「上下方向」とも言い、同水平方向のことを「前後方向」とも言う。ちなみに、左右方向、上下方向、及び前後方向の三者は、互いに直交関係にある。
【0038】
この超音波シール装置20においては、基材1aは、搬送ローラー90等の搬送装置90により、搬送方向に所定の搬送速度値V1aで連続的に搬送されている。この例では、基材1aは、厚み方向を上下方向に向け、幅方向を左右方向に向けた姿勢で、前後方向を搬送方向とする直線軌道Tr1aに沿って搬送されている。つまり、前後方向の直線軌道Tr1aを搬送軌道Tr1aとして基材1aは搬送されている。
【0039】
なお、搬送装置90を制御するコントローラ(不図示)は、製造ラインの他の装置との同期を取るべく同期信号を受信して、この同期信号に基づいて搬送動作を行っている。この同期信号は、例えば製造ラインの基準となる装置(例えば、脚周り開口部8を打ち抜き形成するロータリーダイカッター装置など)での基材1aの搬送量を計測するロータリーエンコーダ等のセンサーから出力される。そして、当該同期信号は、例えば製品たるおむつ一つ分の搬送量(つまり製品ピッチP1)を単位搬送量として0°〜360°の各回転角度値を、搬送量に比例して割り当ててなる回転角度信号である。つまり、おむつ一つ分だけ搬送されると、0°から360°までの回転角度値が出力され、当該一つ分の搬送の都度、0°から360°までの回転角度値の出力が周期的に繰り返される。但し、同期信号は、何等回転角度信号に限るものではない。例えば上記単位搬送量に0〜8191の各デジタル値を、搬送量に比例して割り当ててなるデジタル信号を、同期信号として用いても良い。また、同期信号として搬送量に比例した数のパルスを有するパルス信号を用い、同信号のパルスの数をカウントして回転角度を検知しても良い。
【0040】
図4Aに示すように、超音波シール装置20は、基材1aの直線状の搬送軌道Tr1aの下方に配置された超音波ホーン30と、同搬送軌道Tr1aの上方に配置されたアンビル60と、これら超音波ホーン30及びアンビル60を、基材1aの搬送軌道Tr1aと平行な往路及び復路に沿って移動させる前後方向往復直線移動機構と、これら超音波ホーン30とアンビル60とに基材1aを厚み方向たる上下方向から挟持させる挟持駆動機構と、これら機構を制御するコントローラ80と、を有する。
【0041】
ここで、上記の往路は、基材1aの搬送方向の下流側たる前方を向いているとともに、当該往路のうちの略中央の領域には、超音波ホーン30及びアンビル60の両者が互いに厚み方向に対向した状態で基材1aの搬送速度値V1aと同じ速度値で移動する等速域Reが設定されている。また、この等速域Reを移動中に、超音波ホーン30とアンビル60とは、基材1aの挟持及び挟持の解除を行い、更に、この挟持中には、超音波ホーン30が超音波振動を発するようになっている。
【0042】
よって、この超音波シール装置20によれば、基材1aと超音波ホーン30とアンビル60との三者の前後方向の移動速度値が揃った状態で、基材1aを挟持して溶着処理を行うことができる。つまり、溶着処理の際のこれら三者30,60,1aの間の相対速度(相対滑り)を抑制できるので、擦れや基材1aの皺の発生を抑えつつ溶着部14を安定して形成可能となる。
【0043】
ちなみに、上述の溶着処理後には、超音波ホーン30及びアンビル60が等速域Reから出る前に順次超音波振動の停止及び挟持の解除がなされ、しかる後に超音波ホーン30とアンビル60とは前進限Pfにおいて速やかに移動方向を往路方向から復路方向へ反転して、復路の移動動作を開始する。そして、同復路の移動において往路の始端位置たる後退限Pbに到達したら、再度移動方向を復路方向から往路方向へ反転して、往路の移動動作を開始し、以降、既述の往路の移動動作から始まる一連の溶着処理に係る動作を行う。そして、これらを繰り返すことにより、基材1aには、搬送方向たる前後方向に製品ピッチP1で間隔をおいて複数の溶着部14が形成される。
【0044】
以下、この超音波シール装置20について詳説する。
超音波シール装置20は、例えば、製造ラインに壁面の如く立設された支持部材としての鏡板19に片持ち状態で支持されている。すなわち、鏡板19は、製造ラインのCD方向の一方側(例えば左側)において、上下方向及び前後方向に延在して配されており、その鉛直面19aを支持面として、超音波シール装置20を支持している。
【0045】
ここで、この超音波シール装置20は、前述した構成要素の区分以外に、次のような構成要素に区分することができる。すなわち、超音波シール装置20は、超音波ホーン30を具備する超音波ホーンユニット30Uと、アンビル60を具備するアンビルユニット60Uと、コントローラ80と、を有する。そして、以下の説明では、説明の都合上、この構成要素30U,60U,80の区分で説明する。なお、前述の構成要素の区分の「前後方向往復直線移動機構」や「挟持駆動機構」に相当する構成要素については、その相当する構成要素が登場したときに、随時説明する。
【0046】
<<<超音波ホーンユニット30U>>>
超音波ホーンユニット30Uは、当該超音波ホーンユニット30Uに係る各種機器を支持すべく鏡板19に相対移動不能に固定された水平な床板32と、床板32の上面に設けられて、超音波ホーン30を前後方向の直線軌道に沿って往復移動可能に案内するガイド部材40と、同床板32の上面に設けられて、超音波ホーン30に前後方向の往復移動に係る駆動力を付与する前後方向駆動機構50と、を有する。なお、上述のガイド部材40と前後方向駆動機構50とが、「前後方向往復直線移動機構」に相当する。
【0047】
床板32は、CD方向の一端縁(左端縁)にて鏡板19に固定され、これにより片持ち状態で支持されている。
【0048】
ガイド部材40は、例えばリニアガイド40である。すなわち、床板32の上面に相対移動不能に固定され、前後方向に沿って延在する左右一対のレール42,42と、各レール42,42に対してそれぞれ設けられ、前後方向にのみ相対移動可能に係合するスライダ44,44と、を有する。そして、これらスライダ44,44に適宜な支持台46を介して超音波ホーン30が相対移動不能に固定されており、これにより、超音波ホーン30はスライダ44,44と一体となって前後方向に往復移動可能に案内されている。
【0049】
前後方向駆動機構50は、モータ52と送りねじ機構56とを有する。送りねじ機構56は、モータ52の駆動回転軸52aの回転動作を、前後方向の直線移動動作に変換して超音波ホーン30に伝達するものであり、ここでは、ボールねじ機構56が使用されている。すなわち、ボールねじ機構56のねじシャフト57は、その軸方向を前後方向に沿わせて配されており、この状態においてねじシャフト57は、その両端部を床板32の上面の軸受け部材59,59により回転自在に支持されている。また、ねじシャフト57の外周面の螺旋溝(不図示)には、多数のボール状の転動体(不図示)を介してナット部材58が螺合し、且つこのナット部材58には、既述の支持台46を介して超音波ホーン30が固定されている。更には、モータ52の駆動回転軸52aとねじシャフト57とは、適宜な軸継手55を介して同芯に連結されている。よって、モータ52の駆動回転軸52aの回転動作が、ねじシャフト57に伝達されてねじシャフト57が回転されると、ナット部材58と一体に超音波ホーン30は前後方向に移動する。
【0050】
モータ52は、例えばサーボモータ52であり、外部から送信される位置指令信号(制御信号)に基づいて位置制御を行う。すなわち、サーボモータ52は、その実績位置を検出可能な位置検出要素を具備したアンプ(不図示)を有している。よって、前後方向の任意の位置を目標位置として与えられれば、サーボモータ52は、アンプの位置検出要素からの実績位置のフィードバック信号等に基づいて、前後方向の目標位置へと超音波ホーン30を移動することができる。なお、かかる目標位置は、コントローラ80から位置指令信号の形でサーボモータ52に送信され、サーボモータ52は、この位置指令信号に基づいて動作する。
【0051】
超音波ホーン30は、
図5A及び
図5Bの拡大側面図に示すように、基材1aをその厚み方向からアンビル60とで挟持すべく、基材1aの下面に近接対向する水平且つ平坦な挟持面30aを有している。そして、この挟持面30aには、付属の超音波振動発生装置31により発生された超音波振動が伝達され、これにより、
図5Bに示すように、アンビル60とで挟持した基材1aに超音波振動が投入される。そして、基材1aにおける挟持された部分は、超音波振動の摩擦発熱等の作用で溶融して同部分には溶着部14が形成される。
【0052】
この超音波振動の発生開始は、適宜なトリガー信号に基づいて行われるが、発生停止については、予め設定された所定のエネルギー量(ジュール)が投入されことを検知した超音波振動発生装置31が行う。これにより、基材1aの搬送速度値V1aの変動起因で溶着部14毎に溶融レベルがばらつくのを防ぎ、その結果、所定の溶着強度を有した溶着部14を安定して形成可能となる。なお、発生開始タイミングを規定する上記トリガー信号については、例えばコントローラ80が生成して、超音波振動発生装置31へと送信しても良いし、あるいは、同期信号を受信する超音波振動発生装置31が、同期信号からトリガー信号の発生開始タイミングを自己判断して自身で発生しても良い。なお、本第1実施形態では、コントローラ80が、トリガー信号として超音波発生指令信号を生成し、超音波振動発生装置31に送信している。この超音波発生指令信号の送信タイミングについては後述する。
【0053】
<<<アンビルユニット60U>>>
アンビルユニット60Uは、当該アンビルユニット60Uに係る各種機器を支持すべく鏡板19に相対移動不能に固定された水平な天板62と、天板62の下面に設けられて、アンビル60を前後方向の直線軌道に沿って往復移動可能に案内するガイド部材40ANと、同天板62の下面に設けられて、アンビル60に前後方向の往復移動に係る駆動力を付与する前後方向駆動機構50ANと、超音波ホーン30とで基材1aを挟持すべくアンビル60を基材1aの厚み方向たる上下方向に往復移動させる上下方向往復移動機構70と、を有する。なお、上述のガイド部材40ANと前後方向駆動機構50ANとが、「前後方向往復直線移動機構」に相当し、上下方向往復移動機構70が、「挟持駆動機構」に相当する。
【0054】
天板62は、CD方向の一端縁(左端縁)にて鏡板19に固定され、これにより片持ち支持状態で支持されている。そして、この天板62の下面にガイド部材40ANや前後方向駆動機構50ANが設けられている。これらガイド部材40ANや前後方向駆動機構50ANの基本構造は、前述の超音波ホーンユニット30Uのそれら40,50と概ね同じである。すなわち、既述の超音波ホーンユニット30Uのガイド部材40たるリニアガイド40や、前後方向駆動機構50の送りねじ機構たるボールねじ機構56を、上下反転して天板62の下面に固定したものが、ほぼそのままアンビルユニット60Uでのガイド部材40ANや前後方向駆動機構50ANになっている。よって、超音波ホーンユニット30Uのガイド部材40や前後方向駆動機構50とは、上記の点で主に異なり、それ以外の点では概ね同構造なので、アンビルユニット60Uのガイド部材40ANや前後方向駆動機構50ANに係る各種構成については、既にそうしているように、超音波ホーンユニット30Uの各種構成と同一の符号の末尾に更に「AN」を付けた符号で示し、その説明については省略する。
【0055】
図4Aに示すように、アンビルユニット60Uのリニアガイド40AN及びボールねじ機構56ANは、それぞれ、超音波ホーンユニット30Uのリニアガイド40及びボールねじ機構56とで、基材1aの搬送軌道Tr1aを上下から(厚み方向から)挟むように、これら超音波ホーンユニット30Uのリニアガイド40及びボールねじ機構56の直上に配置されている。よって、このアンビルユニット60Uのリニアガイド40ANのスライダ44ANに吊下支持されるアンビル60は、基材1aの上方の位置において、基材1a越しに超音波ホーン30と対向して配されている。そのため、アンビルユニット60Uのボールねじ機構56ANのサーボモータ52ANを、超音波ホーンユニット30Uのボールねじ機構56のサーボモータ52と連動して動作するように制御すれば、超音波ホーン30との対向状態を維持しつつ、アンビル60を超音波ホーン30に連動させて前後方向に往復移動することができる。
【0056】
図5A及び
図5Bにアンビル60及び超音波ホーン30の拡大側面図を示す。
アンビル60を上下方向に往復移動させる上下方向往復移動機構70(厚み方向往復移動機構に相当)は、
図5Aに示すように、アンビル60を上下方向に相対移動可能に保持するアンビル保持部72を有している。そして、このアンビル保持部72は、適宜な支持台76を介してリニアガイド40ANのスライダ44AN,44ANに相対移動不能に固定されており、これにより、同保持部72はアンビル60を保持しながら、スライダ44AN,44ANと一体となって前後方向に往復移動する。
【0057】
このアンビル保持部72は、例えば箱部材72を本体とし、その内部の空間には、上下方向に上記往復移動に相応する遊びをもってアンビル60を収容している。また、同箱部材72の下面壁部72dには、アンビル60の挟持面60aに係る下面60dを外方に突出させるべくアンビル60の横断面形状よりも若干大きい貫通孔72hが形成されている。更に、アンビル60の方は、その上端部から側方に環状に突出した鍔部60fを有しており、この鍔部60fは、上記箱部材72の下面壁部72dの貫通孔72hの周縁部と係合するようになっている。そして、この係合により、アンビル60の下方への移動量が所定量に制限されており、つまり、アンビル60は、所定の上限位置と下限位置との間だけ、上下移動が許容されている。
ここで、
図5Aに示すように、上限位置では、アンビル60は、下方の基材1aとは所定の間隔をもって対向した状態になる。つまり基材1aとは接触していない。一方、白い矢印で示すようにこの上限位置から下限位置へと下降する際には、
図5Bに示すように、アンビル60は、基材1aに接触するとともに、更に若干下方に基材1aを押し込み、これにより、アンビル60は、超音波ホーン30の挟持面30aとで基材1aを所定の挟持力で挟持した状態となる。そして、この挟持状態になったら、これ以上の下方への移動は、超音波ホーン30によって止められ、実際にはアンビル60が下限位置までは下降することはない。以下では、上限位置のことを「退避位置」といい、下限位置へ向かう途中で挟持状態になる位置のことを「挟持位置」とも言う。
【0058】
一方、
図5Aに示すように、かかるアンビル保持部72の上面壁部72uの下面72udとアンビル60の上面60u(アンビル60の下面60dの挟持面60aとは逆側の面)との間には、アンビル60を上下移動する駆動源として例えば空気ばね74が介装されている。空気ばね74は、密閉された袋体74を本体とする。そして、この袋体74は、空気供給により内部を加圧すると膨張する一方、空気排出により内部を減圧すると収縮する。また、アンビル保持部72の下面壁部72dと、アンビル60の鍔部60fとの間には圧縮ばね75が介装されており、その復元力によってアンビル60は常に上面壁部72u側へと(つまり上方へと)押し付けられている。よって、この圧縮ばね75と協働しながら空気ばね74に空気を給排することにより、アンビル60をアンビル保持部72に対して上下方向に往復移動させることができる。すなわち、空気ばね74に空気供給して加圧すると、同空気ばね74の膨張によりアンビル60は下方に移動して挟持位置に達し、これにより、下方の超音波ホーン30とで基材1aを挟持する(
図5B)。一方、空気ばね74から空気排出して減圧すると、アンビル60は圧縮ばね75の復元力によって上方へ押し戻され、これにより上限位置たる退避位置に戻る(
図5A)。
【0059】
かかる空気ばね74に対する空気の給排制御を実現する機構の一例としては、配管等の空気流路を介して不図示のコンプレッサ等の圧縮空気源を空気ばね74に連結するとともに、この圧縮空気源と空気ばね74との間の上記空気流路に、圧力調整弁等の不図示のレギュレータを配置した構成などが挙げられる。
【0060】
なお、この空気の給排動作は、適宜な制御信号に基づいて行われる。この制御信号については、例えばコントローラ80が生成して、上記のレギュレータに送信しても良いし、あるいは、同期信号を受信するレギュレータが、同期信号から給排動作タイミングを自己判断して自身で生成しても良い。本第1実施形態では、コントローラ80が、制御信号としての給排指令信号を生成し、レギュレータに送信している。この給排信号は、例えばONOFF信号である。そして、ON状態を受信したら、レギュレータは加圧状態にして、ON状態の受信中に亘りこれを維持し、他方、OFF状態を受信したら、減圧状態にしてOFF状態の受信中に亘りこれを維持する。なお、このことは、言い換えると、「給排指令信号のON状態では、アンビル60は基材1aを挟持する挟持状態となり、給排指令信号のOFF状態では、アンビル60は基材1aの挟持を解除した退避状態になる」と表現することもできる。そのため、以下では、かかる給排指令信号のことを「挟持指令信号」とも言う。
【0061】
ところで、アンビル60の挟持面60aは、下方の超音波ホーン30の挟持面30aと対向可能なように、アンビル60の下面60dに設定されている旨を簡単に前述したが、ここでこの挟持面60aについて詳しく説明する。
図6は、アンビル60の下面60dを斜め下方から見た概略斜視図である。当該アンビル60の下面60dには、基材1aに形成すべき前後一対の溶着部14,14の形状パターン(
図3)に対応させて、CD方向たる左右方向に沿った前後一対のリブ61,61が形成されている。そして、各リブ61の表面には、その長手方向に所定ピッチで並ぶ複数の凸部61a,61a…が形成されており、これら凸部61a,61a…の各頂面が、それぞれアンビル60の挟持面60aとなる。但し、これは一例であって、これ以外の形態の挟持面60aを採用しても良い。
【0062】
<<<コントローラ80>>>
コントローラ80は、適宜なコンピュータやシーケンサであり、不図示のプロセッサとメモリとを有している。このコントローラ80には、前述の同期信号が入力される。そして、この同期信号に基づいて、コントローラ80は、超音波ホーンユニット30U及びアンビルユニット60Uの各前後方向駆動機構50,50ANや、アンビル60の上下方向往復移動機構70などを制御する。例えば、超音波ホーンユニット30U及びアンビルユニット60Uの各前後方向駆動機構50,50ANのサーボモータ52,52ANのアンプに向けて、制御信号として位置指令信号を送信する一方、アンビルユニット60Uの上下方向往復移動機構70の空気ばね74のレギュレータに向けては、制御信号として挟持指令信号(給排指令信号)を送信し、更には、超音波ホーンユニット30Uの超音波振動発生装置31に向けて、制御信号として超音波発生指令信号を送信する。
ちなみに、コントローラ80のメモリには、上述の制御に係る制御プログラムが予め格納されている。また、同メモリには、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の往復移動動作を規定する動作パターンのデータ、挟持指令信号のON/OFF状態を規定するデータ、及び、超音波発生指令信号の送信タイミングを規定するデータも予め格納されている。そして、プロセッサがメモリから随時対応する制御プログラムやデータを適宜読み出して実行することにより、上述の超音波ホーンユニット30U及びアンビルユニット60Uに係る各前後方向駆動機構50,50ANの制御や、アンビルユニット60Uに係る上下方向往復移動機構70の制御、並びに超音波ホーンユニット30Uに係る超音波振動発生装置31の制御が実現される。
【0063】
図7は、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の往復移動動作の動作パターン(超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の目標位置と、同期信号の回転角度値との対応関係を示すパターン)のデータの説明図であり、上段には超音波ホーン30のデータを示し、下段にはアンビル60のデータを示している。縦軸には、前後方向の目標位置を取っており、前方には前進限Pfが設定され、後方には後退限Pbが設定されている。そして、勿論、往路では、後退限Pbから前進限Pfへと移動し、復路では前進限Pfから後退限Pbへと移動する。また、横軸は、同期信号に対応する回転角度値であり、つまり基材1aの製品ピッチP1分の搬送量たる単位搬送量を0°〜360°の各値に割り当てたものである。なお、360°は、0°でもある。
更に、同
図7中には、アンビル60の上下往復移動に係る挟持指令信号(給排指令信号)のON/OFF状態や、超音波ホーン30に係る超音波発生指令信号の送信タイミングを規定するデータたる第1回転角度値についても併記している。
【0064】
コントローラ80は、所定の制御周期で、同期信号の回転角度値に対応する目標位置を、メモリ内の上記動作パターンのデータから取得し、取得した目標位置のデータを位置指令信号として超音波ホーンユニット30U及びアンビルユニット60Uの各前後方向駆動機構50,50ANのサーボモータ52,52ANのアンプに送信する。すると、各サーボモータ52,52ANのアンプは、この位置指令信号の目標位置に超音波ホーン30やアンビル60を移動すべくサーボモータ52,52ANを制御し、これにより、
図7の動作パターンで、超音波ホーン30とアンビル60との両者は往復移動する。
【0065】
ここで、
図7の上段のグラフと下段のグラフとの対比からわかるように、この例では、前後方向の往復移動動作に関して、0°〜360°の回転角度値の全域に亘り、超音波ホーン30の動作パターンとアンビル60の動作パターンとは、互いの間に回転角度値の位相のずれもない完全な同一パターンとなっている。よって、超音波ホーン30とアンビル60とは、基材1a越しに互いの挟持面30a,60aを上下に対向した状態を維持しながら、互いに完全に連動して前後方向に往復移動することができる。
【0066】
また、同
図7に示すように、往路には、第1加減速域と、一定の速度値で移動する定速域と、第2加減速域とが設定されており、復路にも、同様の第3加減速域と定速域と第4加減速域とが設定されている。ここで、往路の定速域の速度値は、基材1aの前後方向の搬送速度値V1aと同値に設定されている。つまり、この定速域は、超音波ホーン30及びアンビル60の速度値が基材1aの搬送速度値V1aと等しくなる等速域Reである。また、かかる等速域Reの略中央の領域内には、挟持指令信号のON状態が、所定の回転角度値の範囲RONに亘って設定されている。更に、このON状態が対応付けられた上記回転角度値の範囲RON内には、超音波発生指令信号を超音波振動発生装置31に送信する第1回転角度値が設定されている。
【0067】
よって、同期信号が示す回転角度値が、上記の範囲RON内に入ったら、コントローラ80は、アンビルユニット60Uの上下方向往復移動機構70への挟持指令信号をOFF状態からON状態に切り換える。これにより、上限位置たる退避位置に位置するアンビル60は下降して、超音波ホーン30の挟持面30aとで基材1aを挟持する。そして、同期信号の回転角度値が上記の第1回転角度値を超えたら、コントローラ80は、超音波振動発生装置31へ向けて超音波発生指令信号を送信する。これにより、超音波ホーン30の挟持面30aから超音波振動が発せられ、超音波ホーン30の挟持面30aとアンビル60の挟持面60aとで挟持された基材1aの部分が溶融して溶着部14が形成される。なお、この超音波振動の停止は、前述したように、超音波振動発生装置31によって自動的に行われる。例えば、同超音波振動発生装置31は、投入したエネルギー量(ジュール)を溶着処理毎に累積計測しており、当該投入したエネルギー量が規定の設定値に達したことを検知したら停止する。一方、同期信号の回転角度値が、上記範囲RONから外れたら、コントローラ80は、挟持指令信号をOFF状態にする。これにより、アンビル60は上昇し、そして、基材1aの挟持状態の解除を経て、最終的には上限位置たる退避位置まで戻り、次に挟持指令信号がOFF状態からON状態に切り換わるまで待機する。
【0068】
ここで、上述したことや
図7から明らかなように、上記の回転角度値の範囲RONは、完全に往路の等速域Reに包含されている。よって、基材1aの挟持及びその解除は、完全に、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の速度値と基材1aの搬送速度値V1aとが等しい状態で行われる。そして、その結果として、互いの間に相対速度は発生せず、擦れや皺の発生は抑制され、溶着部14を安定して形成可能となる。
【0069】
ところで、
図7の例では、往路の動作パターンと復路との動作パターンとは、180°の回転角度値を境界とする鏡像関係になっている。つまり、向きが逆転している点を除けば、これら動作パターン同士は、パターン形状の点で同一になっているが、何等これに限らない。例えば、回転角度値が360°になるまでに、超音波ホーン30とアンビル60とが、後退限Pbに復位可能であれば、復路の動作パターンが、往路の動作パターンと鏡像関係になっていなくても良い。
【0070】
また、
図7の例では、前後方向の往復移動動作の動作パターンを、超音波ホーンユニット30Uとアンビルユニット60Uとで同一にしていたが、何等これに限るものでない。すなわち、往路において、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の速度値が基材1aの搬送速度値V1aと同値になるような等速域Reが、所定範囲の回転角度値として確保できるのであれば、何等超音波ホーンユニット30Uの動作パターンとアンビルユニット60Uの動作パターンとを完全同一にしなくても良い。
【0071】
更には、本第1実施形態では、コントローラ80は、前後方向の往復移動の動作パターンのデータを、超音波ホーンユニット30U用とアンビルユニット60U用とで別々に有していたが、何等これに限るものではなく、これら両者で一つの動作パターンのデータを共用しても良い。そして、その場合には、この単一の動作パターンのデータに基づいて生成された位置指令信号を、コントローラ80は、超音波ホーンユニット30Uとアンビルユニット60Uとの両者に対して送信することになる。これにより、超音波ホーン30とアンビル60とを、完全同期で往復移動させることができる。
【0072】
ところで、一般に使い捨ておむつ1の製造ラインでは、製造すべきおむつ1の製品サイズを変更する所謂サイズ替えを行うことがあるが、本第1実施形態では、このサイズ替えにも、容易に対処可能である。例えば、コントローラ80のメモリには、
図7で例示した動作パターンが、S、M、L等の製品サイズ毎にそれぞれ予め格納されている。
図8に、その一例としてSサイズ及びLサイズの動作パターンのデータを示すが、同
図8からわかるように、これらSサイズとLサイズとの間では、前進限Pfと後退限Pbとの間の距離DS,DLが異なっており、つまり、Sサイズよりも大きい製品サイズのLサイズの方が、上記距離Dが大きくなっている。
【0073】
そして、この距離Dが変化すれば、前後方向に隣り合って形成される溶着部14,14同士の間の間隔が変化する。よって、当該動作パターンのデータを、これから製造予定の製品サイズに応じてコントローラ80が選択するように構成すれば、溶着部14の前後方向の形成ピッチの大きさ(つまり、前後方向に隣り合う溶着部14,14同士の間隔寸法)の変更を通して、サイズ替えに容易に対処可能となる。
【0074】
また、製品サイズに応じて、溶着部14の溶着強度を変更したい場合には、前述した超音波振動発生装置31が、超音波振動に係り投入すべきエネルギー量(ジュール)の設定値を、S、M、L等の製品サイズ毎に設定可能に有し、同超音波振動発生装置31が、製品サイズに応じて設定値を選択するように構成すれば良い。なお、Sサイズよりも溶着部14の総面積の大きいLサイズの方が、エネルギー量の設定値が大きな値になっているのは言うまでもない。
【0075】
なお、上述の製品サイズに応じて溶着強度を変更する別の方法としては、例えば超音波ホーン30とアンビル60とで基材1aを挟持する際の挟持力の大きさを製品サイズ毎に変更することが挙げられる。この挟持力は、既述のように空気ばね74の加圧力によって生じている。よって、これを実現するには、例えば、空気ばね74の加圧力を、互いの値が異なる複数の設定値で設定可能にレギュレータを構成し、そして、当該レギュレータが、製品サイズに応じて、上記複数の設定値のなかから一つの設定値を選択するように構成すれば良い。ちなみに、この製品サイズに応じた加圧力の変更と、上述の製品サイズに応じて超音波振動のエネルギー量の設定値を変更することとの両者を行うようにしても良い。
【0076】
===第2実施形態===
図9は、第2実施形態の超音波シール装置20aの概略側面図である。
前述の第1実施形態では、超音波シール装置20として、超音波ホーンユニット30Uと、アンビルユニット60Uとを組とするモジュール20Mを1組だけ有していたが、何等これに限るものではなく、例えば複数のモジュール20M,20M…を基材1aの搬送軌道Tr1aに沿って並べて配置しても良い。
図9の例では、複数の一例として二つのモジュール20M,20Mが前後方向に並んで配置されている。なお、これ以外の点は、第1実施形態とほぼ同じなので、同一の構成には同一の符号を付して、その説明については省略する。
【0077】
ここで、前後に並ぶモジュール20M,20M同士は、それぞれの超音波ホーン30,30及びアンビル60,60の前後方向の往復移動動作に関して、互いに同じ動作をするようになっている。すなわち、後方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60が、前後方向の往路を移動する際には、前方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60も、往路を移動し、他方、後方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60が、前後方向の復路を移動する際には、前方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60も、復路を移動するように構成されている。以下では、これを「順動作」とも言う。
【0078】
このような二つのモジュール20M,20Mが互いに順動作を行う第2実施形態に係る超音波シール装置20aは、例えば、次のように構成することで実現される。先ず、コントローラ80のメモリは、
図10に示すような後方のモジュール20M用の動作パターンのデータと前方のモジュール20M用の動作パターンのデータとを有する。そして、これら動作パターンのデータ同士は、互いの間に回転角度値の位相ずれも無い完全に同一のものである。また、挟持指令信号のON状態に係る回転角度値の範囲RONや、超音波振動の発生開始を規定する第1回転角度値についても、後方のモジュール20Mと前方のモジュール20Mとの両者で同じに設定されている。
【0079】
また、この第2実施形態では、モジュール20M,20Mが二つなので、動作パターンの1周期には、おむつ二つ分の搬送量に相当する0°から720°までの回転角度値が対応付けられている。そして、これにより、これら二つのモジュール20M,20Mは互いに協働して、おむつ1の基材1aに対し製品ピッチP1で溶着部14を形成することができる。
【0080】
ところで、この第2実施形態では、モジュール20Mの数が二つの場合を例示したが、三つ以上並べて配置しても良いのは言うまでもない。
【0081】
===第3実施形態===
図11A乃至
図11Jは、第3実施形態の説明図であり、詳しくは、後方のモジュール20M及び前方のモジュール20Mの両者が、基材1aに溶着部14を形成していく様子をコマ送りで示す模式図である。なお、同図中では、後方のモジュール20Mが形成する溶着部14を○印で示し、前方のモジュール20Mが形成する溶着部14を△印で示している。
【0082】
前述の第2実施形態では、
図10に示すように、二つのモジュール20M,20M同士が、前後方向の往復移動動作に関して同一の動作たる順動作をしていたが、この第3実施形態では、逆動作を行う点で相違する。
【0083】
すなわち、
図11A乃至
図11Jに示すように、この第3実施形態では、後方のモジュール20M(第1モジュールに相当)に係る超音波ホーン30及びアンビル60が、前後方向の往路を移動する際には、前方のモジュール20M(第2モジュールに相当)に係る超音波ホーン30及びアンビル60は、復路を移動し、他方、後方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60が、前後方向の復路を移動する際には、前方のモジュール20Mに係る超音波ホーン30及びアンビル60は、往路を移動するように構成されている。
【0084】
そして、このような構成によれば、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向の往復移動に起因して、これら後方のモジュール20M及び前方のモジュール20Mを支持している鏡板19に作用し得る慣性力を互いに相殺させることができて、その結果、鏡板19に生じ得る機械的振動を低減可能となる。
【0085】
なお、このような二つのモジュール20M,20Mが互いに逆動作を行う本第3実施形態に係る超音波シール装置20bは、例えば、次のように構成することで実現される。
図12は、その説明図であって、各モジュール20M,20Mの動作パターンなどのデータの図である。
【0086】
先ず、コントローラ80のメモリには、
図12に示すような、後方のモジュール20M用の動作パターンのデータと、前方のモジュール20M用の動作パターンのデータとが格納されている。そして、これら動作パターンのデータ同士にあっては、互いのパターン形状は同一であるが、互いの回転角度値の位相は、半周期たる360°(1周期は720°)だけずれたものになっている。これにより、上述の逆動作が実現される。
また、同
図12の下段に示す前方モジュール20Mの動作パターンの回転角度値の位相が、後方モジュール20Mに対して半周期(360°)だけずれているのに伴って、同前方モジュール20Mの挟持指令信号のON状態に係る回転角度値の範囲RONや、超音波振動の発生開始を規定する第1回転角度値についても、後方のモジュール20Mの回転角度値の範囲RON及び第1回転角度値から、それぞれ半周期たる360°だけ位相がずれたものになっている。そして、これにより、前方モジュール20Mにあっても、往路の等速域Reにおいて溶着処理を行うようになっている。
【0087】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0088】
上述の実施形態では、吸収性物品の一例として、着用対象に装着されてその排泄液を吸収する使い捨ておむつ1を挙げたが、尿や経血等の排泄液を吸収するものであれば何等これに限るものではなく、例えば生理用ナプキンやペットの排泄液を吸収するペットシート等でも良い。
【0089】
上述の実施形態では、超音波ホーン30及びアンビル60の前後方向往復直線移動機構に係るガイド部材40,40AN及び前後方向駆動機構50,50ANとして、それぞれリニアガイド40,40AN及びボールねじ機構56,56ANを例示したが、基材1aの直線状搬送軌道Tr1aに沿って超音波ホーン30及びアンビル60を往復移動可能であれば、何等上述に限らない。例えば、リニアガイド40,40ANのレール42,42ANの代わりに、床板32や天板62に形成した直線溝(不図示)に、スライダ44,44ANを摺動可能に係合させても良いし、ボールねじ機構56,56ANの代わりに適宜なカム機構を用いることにより、サーボモータ52,52ANの回転動作を直線移動動作に変換しても良い。なお、カム機構を用いた場合には、カムのカム曲線の設定によって、前述の動作パターンを実現することもできるので、場合によっては、コントローラ80のメモリ内に格納された動作パターンのデータを省略することもできる。また、サーボモータ52,52ANの駆動回転軸52a,52ANと、ねじシャフト57,57ANとの連結も、何等軸継手55,55ANに限らず、例えば、タイミングベルトとプーリとを有する巻掛け伝導装置を用いて連結しても良い。
【0090】
上述の実施形態では、超音波ホーン30の上方にアンビル60を配置していたが、この上下配置関係は逆でも良い。つまり、超音波ホーン30を有する超音波ホーンユニット30Uの下方に、アンビル60を有するアンビルユニット60Uを配置しても良い。但し、メンテナンス性の観点からは、この構成よりも、
図4Aや
図5Aに示す第1実施形態の方が好ましい。理由は次の通りである。
例えば、第1実施形態の場合には、超音波ホーン30は上下方向に往復移動しないが、アンビル60は上下方向に往復移動し、その上下駆動に係り空気ばね74等の多くの可動部を有しており、必然、これら可動部はメンテナンスの対象になる。ここで、
図4Aや
図5Aの第1実施形態の構成によれば、超音波シール装置20の稼働停止状態において、アンビル60は基材1aよりも上方に位置しており、超音波ホーン30のように上方から基材1aに覆われた状態になっておらず、概ね全体が露出した状態になっている。よって、整備作業者は、アンビル60の可動部のメンテナンスを行い易くなる。
【0091】
上述の実施形態では、基材1aの前後方向の搬送軌道Tr1aは水平であったが、何等これに限るものではなく、水平から所定の傾き角でもって上方又は下方に傾いていても良い。但し、その場合には、超音波ホーン30の前後方向の往復移動に係る直線軌道及びアンビル60の前後方向の往復移動に係る直線軌道も、上述の搬送軌道Tr1aの傾き角に対応させて同じ傾き角分、水平から傾いて設定されることになる。
【0092】
上述の実施形態では、挟持駆動機構の一例として、超音波ホーン30については上下方向には移動不能に構成し、アンビル60の方を上下方向に往復移動する構成を示したが、何等これに限らない。例えば、アンビル60の方を上下方向に移動不能に構成し、超音波ホーン30の方を上下方向往復移動機構によって上下に往復移動させても良いし、更には、超音波ホーン30とアンビル60との両者を、それぞれ上下方向に往復移動するように構成しても良い。但し、超音波ホーン30及びアンビル60のうちのどちらか一方を上下方向に移動不能に構成している方が、挟持動作に係る可動部の数を少なくできるので、その方が望ましい。
【0093】
上述の実施形態では、挟持駆動機構たる上下方向往復移動機構70の駆動源として、空気ばね74を例示したが、何等これに限らない。例えば、エアシリンダーや油圧シリンダーを用いても良いし、送りねじ機構を適用しても良い。
【0094】
上述の実施形態では、超音波振動発生装置31の超音波振動の発生停止は、投入した超音波振動のエネルギー量(ジュール)が設定値に達したことを同装置31が検知して、行われていた。但し、場合によっては、超音波ホーン30とアンビル60とによる基材1aの挟持の解除後に、上記のエネルギー量が設定値に達することも想定され、その場合には、非挟持状態で超音波振動が投入された分だけ溶着不足になって、その結果、溶着部14が強度不足になる虞がある。そのため、望ましくは、次のように構成すると良い。先ず、コントローラ80は、超音波振動の発生停止の度に超音波振動発生装置31から発生停止に係る信号を受信する。そして、コントローラ80は、この信号から得られる発生停止の時刻と、挟持の解除を行った時刻とを比較し、発生停止の時刻の方が挟持の解除の時刻よりも遅い場合には、溶着不良発生の警報を適宜な警報装置に出力して、作業者に報知する。
【0095】
上述の実施形態の説明では、
図5Aの拡大側面図に示す挟持の解除状態での超音波ホーン30及びアンビル60の基材1aに対する遠近関係について詳しく述べていなかったので、この点について説明する。この解除状態においては、超音波ホーン30の挟持面30aの方が、アンビル60の挟持面60aよりも基材1aに近接している。そして、このような配置関係によれば、基材1aを挟持すべくアンビル60が下降して基材1aを超音波ホーン30の方へ押し込む際の押し込み量を少なくできる。そして、これにより、当該押し込みに伴う基材1aの搬送軌道Tr1aの乱れを抑制可能となり、結果、溶着部14をより安定して形成可能となる。