特許第5990624号(P5990624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5990624光ファイバセンサシステム、光ファイバセンサ及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5990624
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】光ファイバセンサシステム、光ファイバセンサ及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20060101AFI20160901BHJP
   G01L 1/24 20060101ALI20160901BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20160901BHJP
   G01B 11/255 20060101ALI20160901BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   G01K11/32 Z
   G01L1/24 A
   G01D5/353 A
   G01B11/255 G
   G01M11/00 S
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-103631(P2015-103631)
(22)【出願日】2015年5月21日
【審査請求日】2015年5月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構、『革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発』委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰志
(72)【発明者】
【氏名】五藤 幸弘
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−149881(JP,A)
【文献】 特開2010−121960(JP,A)
【文献】 特開2013−148551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 11/32
G01B 11/255
G01D 5/353
G01L 1/24
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記測定波長を有する測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性のうち、
前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、
前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、
前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する、
光ファイバセンサ。
【請求項2】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、
前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、
前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する、
光ファイバセンサ。
【請求項3】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、
前記第2の波長依存性の光強度が最大もしくは最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、
前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、
前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する、
光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記数モード光ファイバは、ステップ型の屈折率分布を有し、LP11モードの遮断波長が1650nm以上であり、規格化周波数V値が2.9以上3.8以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
前記数モード光ファイバは、ステップ型の屈折率分布を有し、LP11モードの遮断波長が1650nm以上であり、規格化周波数V値が2.9以上3.8以下であり、
前記第1の測定波長の中心波長と前記第2の測定波長の中心波長の間隔Δλが、規格化周波数Vを用い、以下の関係式を満たす、
請求項2又は3に記載の光ファイバセンサ。
(数1)
Δλ≧464−334V+64V
【請求項6】
前記数モード光ファイバは、クラッド外径が125μm以下である、
請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項7】
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記測定波長を有する測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を測定し、前記測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性のうち、前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析部と、
を備える光ファイバセンサシステム。
【請求項8】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
記第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析部と、
を備える光ファイバセンサシステム。
【請求項9】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
記第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、前記第2の波長依存性の光強度が最大は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する解析部と、
を備える光ファイバセンサシステム。
【請求項10】
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記測定波長を有する測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を測定する測定手順と、
前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する測定方法。
【請求項11】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性を測定する測定手順と、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する測定方法。
【請求項12】
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性を測定する測定手順と、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、前記第2の波長依存性の光強度が最大もしくは最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光センシング技術に関し、特に光ファイバ内のモード間干渉を用いた温度及び張力の光センシングに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多モード光ファイバ(MMF:Multi−mode fiber)の両端に、単一モード光ファイバ(SMF:Single−mode fiber)を接続して構成される、光ファイバセンサ(以下、SMSセンサとする)に関する検討が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
SMSセンサは作製が容易で、かつ波長領域の光強度変化を観測することでセンシングが実現できる特徴を有し、例えば、非特許文献2ではMMFを用いたSMSセンサにより、温度と張力の同時検出が可能となることが報告されている。また、非特許文献3には、空孔構造を有する光ファイバをMMF媒体として用い、その空孔領域に適切な屈折率を有する液体を充填することにより、温度に対する感度を向上したSMSセンサが実現できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Q. Wang, and G. Farrell, “All−fiber multimode−interference−based refractometer sensor: proposal and design.” Opt. Lett., vol. 31, no. 3, pp. 317−319, 2006.
【非特許文献2】J. Zhou. C. Liao, Y. Wang, G. Yin, X. Zhong, K. Yang, B. Sun, G. Wang, and Z. Li, “Simultaneous measurement of strain and temperature by employing fiber Mach−Zehnder interferometer,” Opt. Express, vol. 22, no. 2, pp. 1680−1686, 2014.
【非特許文献3】W. Lin, B. Song, Y. Miao, H. Zhang, D. Yan, B. Liu, and Y. Liu, “Liquid−filled photonic−crystal−fiber−based multimodal interferometer for simultaneous measurement of temperature and force,” Appl. Opt., vol. 54, no. 6, pp. 1309−1313, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MMFのコア直径が数10μm以上となる場合、当該MMF中を伝搬するモード数が増大し、MMF中を伝搬するモードの制御が困難となり、出力端で観測される干渉パターンとMMF中の伝搬モードの関係を把握することが困難になる。このため、複数の所望の物理量の相対変化量を明確に算出することができなくなる課題があった。また、空孔構造を有する光ファイバは、光ファイバ自身の製造が難しく、一般にセンサの価格が高価になるといった課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、光ファイバの製造が容易であり、かつ、複数の所望の物理量の相対変化量を明確に算出することの可能な光ファイバセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ファイバセンサは、伝搬可能なモード数が2〜4つに限定された数モード光ファイバ(FMF:Few−mode fiber)を用い、光ファイバセンサの出力端で観測される伝搬モードとモード間干渉の関係を明確化する手段としている。
【0008】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサは、
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記測定波長を有する測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性のうち、
前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、
前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、
前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する。
【0009】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサは、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、
前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、
前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する。
【0010】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサは、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を備え、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、
前記第2の波長依存性の光強度が最大もしくは最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、
前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、
前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する。
【0011】
本願発明の光ファイバセンサでは、
前記数モード光ファイバは、ステップ型の屈折率分布を有し、LP11モードの遮断波長が1650nm以上であり、規格化周波数V値が2.9以上3.8以下であってもよい。
【0012】
本願発明の光ファイバセンサでは、
前記数モード光ファイバは、ステップ型の屈折率分布を有し、LP11モードの遮断波長が1650nm以上であり、規格化周波数V値が2.9以上3.8以下であり、
前記第1の測定波長の中心波長と前記第2の測定波長の中心波長の間隔Δλが、規格化周波数Vを用い、式(5)を満たしてもよい。
【0013】
本願発明の光ファイバセンサでは、
前記数モード光ファイバは、クラッド外径が125μm以下であってもよい。
【0014】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサシステムは、
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記測定波長を有する測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を測定し、前記測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性のうち、前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析部と、
を備える。
【0015】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサシステムは、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
記第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析部と、
を備える。
【0016】
具体的には、本願発明の光ファイバセンサシステムは、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部と、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光を前記センサ部に入射させる測定光源と
記第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性のうち、前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、前記第2の波長依存性の光強度が最大は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する解析部と、
を備える。
【0017】
具体的には、本願発明の測定方法は、
所定の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記測定波長を有する測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を測定する測定手順と、
前記波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する波長変化量、及び、前記波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する。
【0018】
具体的には、本願発明の測定方法は、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性を測定する測定手順と、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、及び、前記第2の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、を用いて、前記センサ部における温度又は張力の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する。
【0019】
具体的には、本願発明の測定方法は、
所定の第1の測定波長及び第2の測定波長で少なくとも2種類以上の伝搬モードを導波可能な数モード光ファイバの両端に、前記第1の測定波長及び前記第2の測定波長で1種類の伝搬モードを導波可能な単一モード光ファイバが接続されたセンサ部を用いる測定方法であって、
前記第1の測定波長を有する第1の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第1の波長依存性及び前記第2の測定波長を有する第2の測定光の前記センサ部の出射端における光強度の波長依存性を示す第2の波長依存性を測定する測定手順と、
前記第1の波長依存性の光強度が最大又は最小になる波長の変化量に相当する第1の波長変化量、前記第2の波長依存性の光強度が最大もしくは最小になる波長の変化量に相当する第2の波長変化量、及び、前記第1の波長依存性又は前記第2の波長依存性の光強度の最大値と最小値の差分に相当する光強度変化量、を用いて、前記センサ部における温度、張力、曲率及び側圧のうちの任意の3種類の物理量の相対変化量を検出する解析手順と、
を有する。
【0020】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光ファイバの製造が容易であり、かつ、複数の所望の物理量の相対変化量を明確に算出することの可能な光ファイバセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1における光ファイバセンサシステムの構成の一例を示す模式図である。
図2】受光部20で検出される出力波形の一例の概念図である。
図3】実施形態1における、波長変化量δλ及び光強度変化量δPの温度依存性の一例を示す図面である。
図4】実施形態1における、波長変化量δλ及び光強度変化量δPの歪量依存性の一例を示す図面である。
図5】実施形態2における、受光部での測定結果の一例を示す図面である。
図6】実施形態2における、波長変化量δλの温度依存性の一例を示す図面である。
図7】実施形態2における、波長変化量δλの歪量依存性の一例を示す図面である。
図8】実施形態3における、FMFのコア構造のパラメータの一例について示す図面である。
図9】実施形態3における、実効屈折率差の相対変化量と波長変化量の関係の一例を示す図面である。
図10】実施形態3における、実効屈折率差の相対変化量の温度依存性と波長の関係の一例を示す図面である。
図11】実施形態3における、実効屈折率差の相対変化量の温度依存性とFMFのV値の関係の一例を示す図面である。
図12】実施形態3における、2つの測定波長間における実効屈折率差の相対変化量の温度依存性と測定波長間隔の関係の一例を示す図面である。
図13】実施形態3における、2つの測定波長帯の最小波長間隔とFMFのV値の関係の一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0024】
本実施形態に係る光ファイバセンサは、伝搬可能なモード数が2〜4つに限定された数モード光ファイバ(FMF:Few−mode fiber)を用い、伝搬モードとモード間干渉の関係を明確化する手段としている。また、本発明の光ファイバセンサに用いるFMFは、ステップ型の屈折率分布を用いることにより、より簡便な構造を実現する手段としている。
【0025】
本実施形態に係る光ファイバセンサシステムは、数モード光ファイバの両端に単一モード光ファイバが接続された光ファイバセンサと、該光ファイバセンサの一端から広帯域光を入射する広帯域光源と、該光ファイバセンサの他端からの出射光の光強度の波長依存性を測定する光スペクトルアナライザと、測定された光強度の波長依存性に基づき該光ファイバセンサの温度および張力の相対変化量を算出する解析装置とを備えた光ファイバセンサシステムにおいて、解析装置が以下のいずれかの処理を実行する。
第1の波長帯における光強度が最大(もしくは最小)となる波長の基準値からの変化量δλ1、第1の波長帯における光強度の最大値と最小値の差δP、および第2の測定波長帯における光強度が最大(もしくは最小)となる波長の基準値からの変化量δλ2のうち、いずれか2つの値から式(3)を用いて、該光ファイバセンサの温度および張力の相対変化量を算出する。
第1の波長帯における光強度が最大(もしくは最小)となる波長の基準値からの変化量δλ1、第1の波長帯における光強度の最大値と最小値の差δP、および第2の測定波長帯における光強度が最大(もしくは最小)となる波長の基準値からの変化量δλ2の3つの値から式(4)を用いて、該光ファイバセンサの温度、張力、曲率、および側圧のうち、いずれか3つの相対変化量を算出する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバセンサシステムの構成を示す模式図である。本実施形態の光ファイバセンサシステムは、測定光源10と、センサ部30と、受光部20と、解析部40を備える。
【0027】
本実施形態に係る測定方法は、センサ部30を用いる測定方法であって、測定手順と、解析手順と、を順に有する。
【0028】
測定手順では、測定光源10は、所定の測定波長を有する測定光を出射してセンサ部30に入力する。測定光源10には、例えば、Super luminescent diode(SLD)等の広帯域光源が利用できる。受光部20は、センサ部30から出力された測定光を受光し、受光した光強度の波長依存性を示す波長スペクトラムを測定する。また、受光部20には、例えば、光スペクトルアナライザ(OSA:Optical spectrum analyzer)が利用できる。
【0029】
センサ部30は、通常のSMF31a及び31bと、2〜4モードを伝搬可能なFMF32を備える。SMF31a及び31bは、FMF32の両端に接続される。この時、FMF32中の複数の伝搬モードの励振効率を向上するため、FMF32の入力側は、FMF32とSMF31aの一端との間に軸ズレを設定して接続することが好ましい。ここで、複数の伝搬モードの励振比率が同一となるように軸ズレ量を設定すると、各伝搬モード間の干渉が最大化されるためより好ましい。
【0030】
解析手順では、解析部40は、受光部20の測定した波長スペクトラムの波形を用いて、センサ部30における温度変化δT及び歪量変化δεの相対変化量を算出する。解析部40は、歪量変化δεからセンサ部30に加えられている張力の相対変化量を算出する。温度変化δT及び歪量変化δεの算出方法については後述する。
【0031】
解析部40は、コンピュータを、解析部40として機能させることで実現してもよい。この場合、解析部40が備えるCPU(Central Processing Unit)(不図示)が記憶部(不図示)に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、各構成を実現する。ここで、解析部40を実現する際のコンピュータは、コンピュータによって制御される任意の機器をさらに備えてもよい。また、解析部40を実現する際のプログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0032】
図2に、受光部20の測定した波長スペクトラムの波形の一例を示す。温度や歪量等の異なる環境下で測定した波長スペクトラムは、L2A及びL2Bのように変化する。L2A及びL2Bは、波長スペクトラムにおける光強度変化量δPが変化するとともに、ピーク波長がシフトする。本実施形態では、図2中のL2A又はL2Bの同一波形内の光強度の最大値と最小値の偏差を光強度変化量δPとして定義する。また、L2A及びL2Bの2つの異なる波形間で検出される、光強度の最大値もしくは最小値の変化量を波長変化量δλとして定義する。図2では、波長変化量δλは、L2A及びL2Bの最小値の変化量である。
【0033】
以下では、長さLが0.48mのFMF32を用いた光ファイバセンサシステムについて説明する。尚、本実施形態で用いたセンサ部30に備わるFMF32はステップ型の屈折率分布を有し、その比屈折率差は0.58%、コア半径は6.2μmである。当該FMF32は、1457nmより長波長でLP01及びLP11の2つのモードを伝搬できる。また、FMF32は、1457nmより短波長では、LP01及びLP11にLP21及びLP02を加えた4つのモードを伝搬することができる。尚、本実施形態で用いたFMF32のクラッド外径は100μmである。
【0034】
ここで、光ファイバに印加される張力が一定の場合、クラッド外径を減少させると、単位断面積当たりの張力を増大することが可能となり、張力に対する感度を向上することができる。従って、本実施形態の光ファイバセンサシステムでは、FMF32のクラッド外径を通常の光ファイバと同等の125μm、もしくはそれ以下として設定することが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る光ファイバセンサシステムでは、第1の測定波長に1580nm帯を用い、当該波長帯において受光部20の受光光強度が最小となる波長変化量δλと、当該波長帯における最大光強度と最小光強度の差分となる光強度変化量δPを用いた、センサ部30の温度及び張力の評価を行うことができる。尚、OSAの波長掃引範囲及び分解能は、それぞれ20nm及び0.01nmとした。
【0036】
図3に、波長変化量δλ及び光強度変化量δPの温度依存性について測定した結果を示す。センサ部30は張力無しの状態で設置し、歪量εは0%となるようにした。図3より、波長変化量δλはL31のように温度Tに比例して減少し、その温度係数は−0.042nm/℃であることが分かる。一方、光強度変化量δPの温度Tに対する依存性はL32のように殆ど無視できることが分かる。尚図3では、光強度変化量δPの縦軸は温度Tが20℃の時の値で規格化して示している。
【0037】
図4に、波長変化量δλ及び光強度変化量δPの歪量依存性について測定した結果を示す。ここで、センサ部30の両端は、微動台上にセンサ部30が直線状になる様に固定し、一方の微動台を光ファイバの伝搬方向に引っ張ることにより、センサ部30の長手方向に張力を印加した。図4の横軸はこの時のセンサ部30の伸び歪量εを%単位で表示しており、0.083%の歪量εは400μmの引張り量に対応する。尚、測定中の外部温度Tは24℃で一定とした。
【0038】
図4より、L41で示した波長変化量δλは、センサ部30の歪量εに比例して減少し、その比例係数は−27.9nm/%であった。また、L42で示した光強度変化量δPは、センサ部30の歪量εの増加に伴い増加し、その比例係数は27.1dB/%であった。従って、解析部40が、波長変化量δλ及び光強度変化量δPの変化量を測定し、δλ及びδPを下記の数式(1)及び(2)に代入することにより、温度Tと歪量εの相対変化である温度変化δTと歪量変化δεをそれぞれ検出することが可能となる。また、歪量変化δεから、センサ部30に加えられた張力の相対変化量を検出することができる。
【0039】
【数1】
【0040】
【数2】
【0041】
例えば、X(単位dB)のδPの変化と、Y(単位nm)のδλ1を観測したとする。この場合、式(1)において、δPにXを、dP/dεに27.1(単位dB/%)に代入することにより、歪量変化δε(単位%)を求めることができる。更に、式(2)において、δλにYを、δεに式(1)で求めた数値を、dP/dεに27.1(単位dB/%)を、dλ/dTに−0.042(単位nm/℃)を代入することにより、温度変化δT(単位℃)を求めることが可能となる。
【0042】
ここで、歪量εが一定の場合、FMF32のクラッド外径の減少に伴いFMF32の単位断面積当たりの張力が増加する。このため、センサ部30に用いるFMF32のクラッド外径を細径化することにより、光ファイバセンサシステムの張力に対する感度を制御することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバセンサシステムは、センサ部30における温度変化δT及び歪量変化δεを求めることができるため、温度及び張力の同時検出を行うことができる。このように、本発明の光ファイバセンサによれば、2〜4モードを伝搬可能なFMFをセンサ部に適用したことにより、検出する物理パラメータとモード間干渉の関係が明確化でき、必要な測定条件も明確に導出可能になるといった効果を奏する。
【0044】
また、FMF32に汎用的なステップ型の屈折率分布を用いた事により、通常のSMFと同様に簡便にFMFの製造が行えると言った効果も奏する。また、ステップ型のFMF32を用いた事により、汎用的なSMFと接続性の良いコア構造を容易に実現できるといった効果も奏する。
【0045】
(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係る光ファイバセンサシステムは、2つの測定波長の測定光を用いて、温度変化δT及び歪量変化δεを測定する。
【0046】
本実施形態に係る測定方法は、センサ部30を用いる測定方法であって、測定手順と、解析手順と、を順に有する。
【0047】
測定手順では、測定光源10は、第1の測定波長として1580nm帯を用いる第1の測定光と、第2の測定波長として1430nm帯を用いる第2の測定光と、をセンサ部30に入力する。受光部20は、センサ部30から出力された第1の測定光を受光し、第1の波長スペクトラムを測定する。また、受光部20は、センサ部30から出力された第2の測定光を受光し、第2の波長スペクトラムを測定する。
【0048】
解析手順では、解析部40は、各測定波長帯で受光部20の受光強度が最小となる波長の変化量として、第1の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ1と第2の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ2を用い、センサ部30の温度T及び歪量εの相対変化量である温度変化δT及び歪量変化δεを算出する。尚、受光部20が有するOSAの波長掃引範囲及び分解能は、それぞれ20nm及び0.01nmとした。
【0049】
図5に、第2の波長スペクトラムの1例を示す。本実施形態で用いたFMF32は1430nm帯でLP01、LP11、LP21及びLP02の4つのLPモードを導波可能である。このため第2の波長スペクトラム波形では複数の干渉パターンが観測され、少なくとも周期が概ね4nmのモード間干渉であるL5δλ1と、周期が概ね0.5nmであるL5δλ2の干渉パターンの2つが存在することがわかる。
【0050】
本実施形態では、解析部40が、測定した波長スペクトラム波形から各周期に対応する波形を逆フーリエ変換により抽出することにより、2種類のモード間干渉に伴う波長変化量δλについて評価する。例えば、図5の波長スペクトラムを逆フーリエ変換すると、L5δλ1およびL5δλ2に対応する周期T1およびT2が抽出できる。ここで、図5の波長スペクトラムから周期T2の光強度変化を減算すると、L5δλ1に対応する光強度の波長依存性を抽出することができる。同様に、図5の波長スペクトラムから周期T1の光強度変化を減算すると、L5δλ2に対応する光強度の波長依存性を抽出することができる。尚、測定波形では複数のモード間干渉が混在しているため、4モードが伝搬する波長帯では、解析部40による光強度変化量δPの検出精度は劣化するものと考えられる。
【0051】
図6に、第2の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ2の温度依存性を示す。L61及びL62は、それぞれ周期が4nm及び0.5nmの干渉パターンに対する評価結果を示している。周期が4nmの干渉パターンでのL61では、第2の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ2は温度に比例して減少し、その比例係数は−0.028nm/℃である。また、L61と図3のL31とを比較すると、1580nm帯と1430nm帯では比例係数に十分な有意差が存在することがわかる。一方、周期が0.5nmの干渉パターンでのL62については、第2の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ2の明確な温度依存性は観測されなかった。
【0052】
図7に、第2の波長スペクトラム波形での波長変化量δλ2の歪量依存性を示す。L71及びL72は、それぞれ周期が4nm及び0.5nmの干渉パターンに対する評価結果を示している。L71は、歪量に比例して減少し、その比例係数は−21.8nm/%である。また、L71と図4のL41とを比較すると、1580nm帯と1430nm帯では比例係数に十分な有意差が存在することがわかる。一方、L72は、歪量に対する依存性は観測されなかった。
【0053】
従って、解析部40は、第1の測定波長である1580nm帯と第2の測定波長である1430nm帯の2つの波長帯で、それぞれ波長変化量δλ1とδλ2を測定し、以下の式(3)として示した関係式に代入することにより、FMF32の温度Tと歪量εの相対変化である温度変化δT及び歪量変化δεを算出することが可能となる。また、解析部40は、LP01、LP11、LP21及びLP02の4つのLPモードが伝搬する4LPモード領域であっても、より低次のモード間の干渉パターンを抽出することにより、複数モード間の干渉の影響を受けることなく温度及び歪量εが抽出できることが分かる。
【0054】
【数3】
【0055】
例えば、波長1580nm帯でX(単位nm)のδλ1と、波長1430nm帯でY(単位nm)のδλ2を観測した場合、解析部40は、上述のX及びYを、式(3)に代入する。具体的には、解析部40は、式(3)のdλ1/dT、dλ1/dε、dλ2/dT、dλ2/dεに、それぞれ−0.042(単位nm/℃)、−27.9(単位nm/%)、−0.028(単位nm/℃)、−21.8(単位nm/%)を代入し、連立方程式を解くことによりδT(単位℃)及びδε(単位%)を求めることが可能となる。
【0056】
ここで、本実施形態に係る受光部20では、センサ部30から出力される測定光の、2つの波長帯における波長変化量δλ1とδλ2、並びにLP01及びLP11の2つのLPモードが伝搬する2LPモード領域における光強度変化量δPの、最大で3種類の変化を測定することができるため、センサ部30の温度T、及び歪量εに加え、側圧Fもしくは曲率Rに依存した温度係数あるいは歪量係数を知ることにより、最大で3種類の環境パラメータの変化を同時に評価することが可能となる。例えば、センサ部30に加えられる温度Tと張力による歪量εを一定とし、FMF32の側面に印加する押圧力である側圧Fを変化させた時の波長シフト量δλ3を、所望の波長帯で測定することにより、解析部40は、当該センサ部30の押圧力に対する係数(dδλ3/dF)を算出することができる。
【0057】
例えば、1580nmでX(単位dB)のδPの変化と、Y(単位nm)のδλ1を、1430nm帯でZ(単位nm)のδλ2を解析部40が観測した場合、解析部40は、式(1)の光強度変化量δPにXを、dP/dεに27.1(単位dB/%)に代入することにより、δε(単位%)を求めることができる。更に、解析部40は、式(4)の第1の測定光での波長変化量δλ1にYを、第2の測定光での波長変化量δλ2にZを、δεに式(1)より求めたδε(単位%)を代入し、T、ε、Fに対する各波長帯の係数を用いることにより、δT(単位℃)及びδF(単位N)を求めることが可能となる。
【0058】
【数4】
【0059】
また同様に、センサ部30に加えられる温度と張力を一定とし、センサ部30の曲率Rを変化させた時の波長シフト量δλ3を、所望の波長帯で測定することにより、当該センサ部30の曲率Rに対する係数(dδλ3/dR)を知ることができ、式(4)の温度T、側圧Fの何れかを曲率Rに置きかえることで、曲率Rの相対変化を検出することが可能となる。
【0060】
(実施形態3)
本実施形態では、FMF32に好適な構造条件、並びにセンシング条件の関係について説明する。
【0061】
図8に、ステップ型FMF32におけるコア半径と比屈折率差の関係を示す。L81及びL82は遮断波長条件を表す。L82は、FMF32のLP11モードの遮断波長が1650nmとなる構造境界を表し、L82より上側の領域でLP01とLP11の2モードが伝搬可能となる。一方、L81はFMF32のLP21およびLP02モードの遮断波長が1500nmとなる構造条件を表し、L81より上側の領域でLP01、LP11、LP21及びLP02の4モードが伝搬可能となる。
【0062】
本実施形態に係る光ファイバセンサは実施形態2に示した様に、LP01、LP11、LP21及びLP02の4つのLPモードが伝搬する4LPモード領域でも適用する事が出来るが、より高次のモード間の干渉による影響を除去するにはLP01及びLP11の2つのLPモードが伝搬する2LPモード領域で利用することが望ましい。従って、1500nm帯に測定波長を設定する場合、図8中のL81及びL82で囲まれる領域でコア半径と比屈折率差を設定することが望ましい。
【0063】
図8に示すL83及びL84は構造境界を示す。L84は、波長1310nmにおけるLP01モードのモードフィールド径(MFD:Mode field diameter)が8.6μmになる構造境界を示す。L83は、波長1310nmにおけるLP01モードのモードフィールド径が9.5μmになる構造境界を示す。
【0064】
ここで、汎用的なSMFの波長1310nmにおけるMFDの代表値は8.6μmから9.5μmである。従って、FMF32が、図中のL83及びL84で囲まれる領域でコア半径と比屈折率差を設定することにより、FMF32に通常のSMFと同等のMFDを実現することが可能となり、本実施形態のセンサ部30を構成する際に、FMF32とSMF31a及び31bとの接続損失を低減することが可能となる。従って、図8に示すL81及びL82と、L83及びL84で囲まれる領域でFMF32のコア半径と比屈折率差を設定することにより、波長1500nm以上1650nm以下の1500nm帯に2モード領域を有し、通常のSMFのMFDと整合性の高いセンサ部30を構成することが可能となる。
【0065】
図8に示すL81及びL82とL83及びL84とが交差する比屈折率差(約0.42%、0.52%、0.62%、及び0.73%の4点)において、MFDが8.6μmもしくは9.5μmになるコア半径に着目し、各コア構造における実効屈折率と屈折率の温度依存性の関係について検討を行った。ここで、上記の比屈折率差とコア半径の組合せにおける規格化周波数V値は、約2.9、3.3及び3.8の3水準になる。尚、以下の検討では石英ガラスの屈折率の温度依存性を8.75×10−7/℃とした。
【0066】
図9に、実効屈折率差δneffの相対変化量を示す実効屈折率差変化量Δ(δneff)と波長変化量δλの関係を示す。図9に示す実効屈折率差変化量Δ(δneff)は、LP01モードとLP11モード間の実効屈折率差δneffの相対変化量を示す。一般に、SMSセンサ中の波長変化量δλは対応する2モード間の実効屈折率差に比例して変化することが知られている(例えば、非特許文献3参照。)。仮に、受光部20の波長掃引分解能の最小値が0.01nmであるとすると、図9から1.9×10−8以上のΔ(δneff)が発生すれば、本実施形態のセンサ部30で検出可能となることが分かる。
【0067】
図10は、実効屈折率差変化量Δ(δneff)の温度依存性と波長の関係を示す。縦軸は、温度変化に対するΔ(δneff)の変化量であるdΔ(δneff)/dTを示し、単位は(10−7/℃)である。前述のとおり、石英ガラスの屈折率の温度依存性は8.75×10−7/℃としている。
【0068】
図10中のL101a及びL101bは規格化周波数V値が2.9になるコア構造に対する計算結果を示し、L102a及びL102bは規格化周波数V値が3.3になるコア構造に対する計算結果を示し、L103a及びL103bは規格化周波数V値が3.8になるコア構造に対する計算結果を示す。L101a、L102a及びL103aは、MFDが8.6μmとなるコア構造に対する計算結果を示し、L101b、L102b及びL103bは、MFDが9.5μmとなるコア構造に対する計算結果を示す。
【0069】
図10のように、規格化周波数V値が一定であれば、L101aとL101bのようにΔ(δneff)の波長依存性も同等となる。また、Δ(δneff)の温度係数の絶対値は規格化周波数V値が小さいほど、また長波長側ほど増加する。
【0070】
図11に、本実施形態に係る光ファイバセンサでの測定波長1550nmにおける実効屈折率差変化量Δ(δneff)を規格化周波数V値の関数として示す。縦軸は、温度変化に対するΔ(δneff)の変化量であるdΔ(δneff)/dTを示し、単位は(10−7/℃)である。前述のとおり、石英ガラスの屈折率の温度依存性は8.75×10−7/℃としている。
【0071】
Δ(δneff)の温度係数の絶対値は低V値側で増加する。また、規格化周波数V値が3.12以下の領域では、Δ(δneff)の絶対値が1.9×10−7以上となり、約0.1℃の温度分解能が得られより好ましい。
【0072】
図12に、2つの測定波長間における、dΔ(δneff)/dTの差と波長間隔の関係を示す。縦軸は、2つの測定波長間におけるdΔ(δneff)/dTの差を示し、単位は(10−8/℃)である。図中のL121、L122、L123は、それぞれ規格化周波数V値が2.9、3.3、3.8となるコア構造に対する計算結果を表す。前述のとおり、石英ガラスの屈折率の温度依存性は8.75×10−7/℃としている。
【0073】
図12より2波長間のdΔ(δneff)/dTの差の絶対値は波長間隔とともに増大する。ここで、図中のL124はΔ(δneff)の絶対値が1.9×10−8となるレベルを表す。従って、図9に示したように、2測定波長の間隔を、各規格化周波数V値の実線L121〜L123が破線L124と交わる波長間隔以上に設定することにより、2測定波長における第1の波長変化量δλ1と第2の波長変化量δλ2の間に0.01nm以上の偏差を生じさせることが可能となる。このため、受光部20の波長掃引分解能を0.01nmにすることで、第1の波長変化量δλ1と第2の波長変化量δλ2の差を用いて、式(3)より温度Tの相対変化である温度変化δT及び歪量εの相対変化である歪量変化δεを求めることが可能となる。
【0074】
図13に、本実施形態に係る光ファイバセンサでのΔ(δneff)の絶対値を1.9×10−8以上とする最小波長間隔と規格化周波数V値の関係を示す。図13のように、最小波長間隔は規格化周波数V値とともに増加し、規格化周波数V値が3.8の場合、約120nmの波長間隔が必要となる。従って、図8及び図13に示した様に、規格化周波数V値が2.9〜3.8の範囲であるFMF32を用いてセンサ部30を構成し、波長1500nm以上1650nm以下の範囲を用いることにより、1℃以下の分解能で温度評価が可能となる。ここで、図13に示した最小波長間隔ΔλとV値の関係は次式(5)で近似できる。
【0075】
【数5】
【0076】
従って、本発明の光ファイバセンサに備わるセンサ部30において、規格化周波数V値とΔλを式(5)の関係を満たす様に設定することにより、効率的な温度センサを実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10:測定光源
20:受光部
30:センサ部
31a:SMF
31b:SMF
32:FMF
40:解析部
【要約】
【課題】本発明は、空孔構造を有しないMMFを用い、出力端で観測される干渉パターンとMMF中の伝搬モードの関係を把握することが容易な光ファイバセンサシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光ファイバセンサは、伝搬可能なモード数が2〜4つに限定された数モード光ファイバ(FMF:Few−mode fiber)を用い、光ファイバセンサの出力端で観測される伝搬モードとモード間干渉の関係を明確化する。また、本発明の光ファイバセンサシステムでは、FMFは、空孔を有さないステップ型の屈折率分布を用いる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13