特許第5991830号(P5991830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧 ▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特許5991830導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物
<>
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000003
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000004
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000005
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000006
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000007
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000008
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000009
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000010
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000011
  • 特許5991830-導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991830
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20160901BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20160901BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20160901BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20160901BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20160901BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   H01B1/20 Z
   H05K3/12 610B
   H05K3/12 610D
   H05K1/09 A
   H01B1/00 H
   H01B5/00 H
   H01B13/00 503D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-61816(P2012-61816)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-196881(P2013-196881A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 克昭
(72)【発明者】
【氏名】能木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】酒 金▲てい▼
(72)【発明者】
【氏名】菅原 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊雄
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505966(JP,A)
【文献】 特開2012−028136(JP,A)
【文献】 特開昭63−055807(JP,A)
【文献】 物理学辞典,株式会社培風館,1992年,改訂版,p.2052
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/22
H01B 5/00−5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物であって、扁平状の形状を持つ酸化金属粒子、還元剤およびバインダー樹脂を含み
前記酸化金属粒子の厚さが10〜800nmであり、前記酸化金属粒子のアスペクト比が20〜200であり、前記酸化金属粒子が酸化銅、酸化コバルト又は酸化ニッケルであることを特徴とする導電パターン形成用組成物。
【請求項2】
前記酸化金属粒子が酸化銅または酸化コバルトであることを特徴とする請求項1に記載の導電パターン形成用組成物。
【請求項3】
前記酸化金属粒子が、種々の酸化状態を持つ酸化物のいずれかまたはこれらの混合粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の導電パターン形成用組成物。
【請求項4】
前記還元剤が、多価アルコールまたはカルボン酸であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導電パターン形成用組成物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリウレタンのいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導電パターン形成用組成物。
【請求項6】
前記酸化金属粒子100質量部に対して、還元剤20〜200質量部およびバインダー樹脂1〜50質量部を含む請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導電パターン形成用組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の導電パターン形成用組成物を準備し、
前記導電パターン形成用組成物に光照射またはマイクロ波加熱を行う、
ことを特徴とする導電パターン形成方法。
【請求項8】
前記組成物に照射する光は、200〜3000nmの波長の連続光、または1回の光照射期間が5マイクロ秒から1秒のパルス光であることを特徴とする請求項に記載の導電パターン形成方法。
【請求項9】
前記組成物を加熱するマイクロ波は、1m〜1mmの波長であることを特徴とする請求項に記載の導電パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電パターン形成方法及び光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な配線パターンを作製する技術として、従来銅箔とフォトレジストを組み合わせてリソグラフィー法で配線パターンを形成する方法が一般的に用いられているが、この方法は工程数も長い上に、排水、廃液処理の負担が大きく、環境的に改善が望まれている。また、加熱蒸着法やスパッタリング法で作製した金属薄膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングする手法も知られている。しかし、加熱蒸着法やスパッタリング法は真空環境が不可欠である上に、価格も非常に高価になり、配線パターンへ適用した場合には製造コストを低減させることが困難であった。
【0003】
そこで、金属インキ(酸化物を還元剤により還元して金属化するものも含む)を用いて印刷により配線を作製する技術が提案されている。印刷による配線技術は、低コストで多量の製品を高速に作製することが可能であるため、既に一部で実用的な電子デバイスの作製が検討されている。
【0004】
しかし、加熱炉を用いて金属インキを加熱焼成する方法では、加熱工程で時間がかかる上に、金属インキの焼成に必要な加熱温度にプラスチック基材が耐えることが出来ない場合には、プラスチック基材の耐える温度で焼成せざるを得ず、満足な導電率に到達しないと言う問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1〜3に記載のように、ナノ粒子を含む組成物(インキ)を用いて、光照射により金属配線に転化させようとの試みがあった。
【0006】
光エネルギーやマイクロ波を加熱に用いる方法は、インキ部分のみを加熱出来る可能性があり、非常に良い方法ではあるが、金属粒子そのものを用いた場合には、得られる導電膜の導電率が満足に向上しないという問題や、酸化銅を用いた場合には、得られる導電膜の空隙率が大きかったり、一部還元されないまま、酸化銅粒子が残るという問題があった。
【0007】
また、これらの焼結には少なくとも直径が1μm以下の金属または金属酸化物粒子を用いる必要があり、これらのナノ粒子の調製には非常にコストがかかるという問題がある上に、照射時のエネルギーを強くすると、微粒子なので、焼結する前に飛散しやすいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−522369号公報
【特許文献2】国際公開2010/110969号パンフレット
【特許文献3】特表2010−528428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、基板上に形成された導電膜は、導電率が高い(体積抵抗率が低い)ほど性能が高いといえる。そのため、上記従来の技術により形成された導電パターンも、さらに導電率を向上させることが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、光照射やマイクロ波加熱のような内部発熱による選択加熱により基板に印刷された組成物パターンを効率的に導電化するために好適に用いられる組成物および導電化するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、光照射またはマイクロ波加熱による導電パターン形成用組成物であって、扁平状の形状を持つ酸化金属粒子、還元剤およびバインダー樹脂を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記酸化金属粒子の厚さが10〜800nmであることを特徴とする。また、上記酸化金属粒子のアスペクト比が5〜200であることを特徴とする。
【0013】
上記酸化金属粒子が酸化銅または酸化コバルトであることを特徴とする。また、上記酸化金属粒子が、種々の酸化状態を持つ酸化物のいずれかまたはこれらの混合粒子であることを特徴とする。
【0014】
また、上記還元剤が、多価アルコールまたはカルボン酸であることを特徴とする。また、前記バインダー樹脂が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリウレタンのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
また、上記酸化金属粒子100質量部に対して、還元剤20〜200質量部およびバインダー樹脂1〜50質量部を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態は、導電パターン形成方法であって、上記導電パターン形成用組成物を準備し、前記導電パターン形成用組成物に光照射またはマイクロ波加熱を行う、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記組成物に照射する光は、200〜3000nmの波長の連続光、または1回の光照射期間(on)が5マイクロ秒から1秒のパルス光であることを特徴とする。
【0018】
また、上記組成物を加熱するマイクロ波は、1m〜1mmの波長であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電パターン形成用組成物によれば、光照射やマイクロ波加熱のような内部発熱による選択加熱により基板に印刷されたパターンを効率的に導電化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】パルス光の定義を説明するための図である。
図2】実施例1用に製造した扁平状酸化銅粒子1のSEM写真を示す図である。
図3】実施例1用に製造した扁平状酸化銅粒子1のTGAの測定結果を示す図である。
図4】実施例1用に製造した扁平状酸化銅粒子1のXRDの測定結果を示す図である。
図5】実施例2用に製造した扁平状酸化銅粒子2のSEM写真を示す図である。
図6】実施例2用に製造した扁平状酸化銅粒子2のXRDの測定結果を示す図である。
図7】実施例3用に製造した扁平状酸化銅粒子3のSEM写真を示す図である。
図8】実施例4用に製造した扁平状酸化銅粒子4のSEM写真を示す図である。
図9】実施例1で製造した印刷パターンのパルス光照射前後のSEM写真を示す図である。
図10】比較例2で製造した印刷パターンのパルス光照射前後のSEM写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について説明する。
【0022】
本実施形態にかかる導電パターン形成方法では、扁平状の形状を持つ酸化金属粒子(以後、扁平状酸化金属粒子という)と還元剤とを含む組成物を準備し、この組成物に光照射またはマイクロ波加熱を行うことにより金属の焼結体を生成し、導電パターンとすることが特徴となっている。ここで、準備とは、例えばスクリーン印刷、グラビア印刷等により、あるいはインクジェットプリンタ等の印刷装置を使用し、適宜な基板上に上記組成物で所定の印刷パターンを形成すること、あるいは基板の全面に上記組成物層を形成すること等をいう。
【0023】
上記扁平状酸化金属粒子の厚みは10〜800nmが好適であり、好ましくは20nm〜500nmの範囲がよく、より好ましくは20nm〜300nmがよい。10nmより薄いものは調製するのが難しく、また800nmよりも厚いと焼結されにくくなるという問題が起こる。また、アスペクト比(粒子の幅/厚さ)については、ある程度大きくないと接触面積を大きくする効果が出ない。また、あまりに大きすぎると印刷精度が落ち、さらに粒子の分散をうまく行うことが出来ないという問題がある。そこで、好ましいアスペクト比は5〜200の範囲であり、より好ましくは5〜100の範囲である。扁平状酸化金属粒子の形状は、3万倍の倍率で観察箇所を変えて10点SEM観察して厚さと幅を実測し、厚さはその数平均値として求める。
【0024】
扁平状酸化金属粒子としては、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等が挙げられる。これらの中でも還元された金属の導電性が高い点から酸化銅がより好ましい。また、磁性等他の物性の点では酸化コバルトがより好ましい。
【0025】
また、扁平状酸化金属粒子には、種々の酸化状態を持つ酸化物、例えば酸化第一銅や酸化第二銅のように酸化状態の違うものも含まれる。
【0026】
本発明の導電膜形成用組成物には上記扁平状酸化金属粒子を含むことが必須であるが、他の形状、例えば球状、棒状等の上記酸化金属粒子や銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、インジウム、錫、あるいはこれらの合金の金属粒子を併用することができる。その場合扁平状酸化金属粒子が全粒子に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0027】
扁平状酸化金属粒子と併用せず、球状の酸化金属粒子のみを使用して光照射またはマイクロ波加熱により導電膜を形成する場合には、特に粒径の小さい酸化金属粒子を用いた場合には、化学還元焼結により、粒子が連続的に連結された金属膜を与えることができる。しかし、酸化金属粒子の中心部まですべて還元するためには、照射する光またはマイクロ波のエネルギーを大きくし、かつ小さい粒子径の酸化金属粒子を使用する必要がある。このため、光照射またはマイクロ波加熱中に酸化金属粒子が一部吹き飛んでしまい、導電膜の厚さを厚くすることが困難であるという問題がある。また、焼成時に吹き飛ばないように、粒径の大きな酸化金属粒子を用いた場合には、粒子の内部の金属酸化物が還元できず抵抗が下がらないという問題が起こる。
【0028】
これに対して、本実施形態では、扁平状の形状を持つ扁平状酸化金属粒子と還元剤とを混合した組成物に光照射またはマイクロ波加熱を行うことにより金属の焼結体を効率的に生成し、抵抗が十分に下がった導電膜を形成する点に特徴がある。
【0029】
本実施形態の導電パターン形成用組成物は扁平状酸化金属粒子を主成分とするため、光照射またはマイクロ波加熱により導電パターンを形成するための還元剤を含む。還元剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール、テルペニオールのようなアルコール化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、蟻酸、酢酸、蓚酸、コハク酸のようなカルボン酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ベンズアルデヒド、オクチルアルデヒドのようなカルボニル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニルのようなエステル化合物、ヘキサン、オクタン、トルエン、ナフタリン、デカリンのような炭化水素化合物を使用することが出来る。この中で、還元剤の効率を考えると、エチレングリコール、プロピレングリコールやグリセリン等の多価アルコール、蟻酸、酢酸、蓚酸のようなカルボン酸が好適である。上記還元剤の配合量は扁平状酸化金属粒子に対してその還元に必要な量であれば制限はいが、通常後述のバインダー樹脂を含む組成物の溶剤としての機能を兼ねるので扁平状酸化金属粒子100質量部に対して20〜200質量部配合される。
【0030】
上記扁平状酸化金属粒子を主成分とする組成物を印刷するためには、バインダー樹脂が必要となる。バインダー樹脂として使用できる高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクトンのようなポリ−N−ビニル化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリTHFのようなポリアルキレングリコール化合物、ポリウレタン、セルロース化合物およびその誘導体、エポキシ化合物、ポリエステル化合物、塩素化ポリオレフィン、ポリアクリル化合物のような熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が使用できる。これらのバインダー樹脂は効果の程度に差はあるが、いずれも還元剤としての機能を有する。この中でもバインダー効果を考えるとポリビニルピロリドンが、還元効果を考えるとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが、また、バインダーとしての粘着力の観点からはポリウレタン化合物が好ましい。なお、ポリエチレングリール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールは多価アルコールの分類に入り、特に還元剤として好適な特性を有する。
【0031】
上記の通り扁平状酸化金属粒子を主成分とする導電パターン形成用組成物を印刷するためにはバインダー樹脂の存在は必須であるが、あまり多く用いると導電性が発現しにくくなるという問題があり、またあまりに少なすぎると粒子同士を繋ぎ止める能力が低くなってしまう。そのため、扁平状酸化金属粒子100質量部に対して、1〜50質量部、より好ましくは3〜20質量部の使用量が好ましい。上述の通りバインダー樹脂は還元剤としての機能を有するため、前述のバインダー樹脂を兼用しない還元剤は本発明の導電パターン形成用組成物における必須成分ではない。しかしながら、バインダー樹脂単独でその配合量が少ない場合には還元剤としては不十分となるため、バインダー樹脂の溶剤を兼ねる還元剤を上記配合割合を満たす範囲で併用することが好ましい。
【0032】
上記扁平状酸化金属粒子を主成分とする導電パターン形成用組成物には、印刷する方法に応じて組成物の粘度調整等を目的として必要に応じて公知の有機溶媒、水溶媒等を使用することができる。
【0033】
なお、本実施形態にかかる導電パターン形成用組成物には、公知のインキの添加剤(消泡剤や、表面調整剤、チクソ剤等)を必要に応じて存在させても良い。
【0034】
上記導電パターン形成用組成物を導電性とするためには、導電パターン形成用組成物に光照射またはマイクロ波加熱を行う。また、基板上に導電性パターンを形成するためには、導電パターン形成用組成物を基板に印刷し、上記光照射またはマイクロ波加熱を行う。基板の材質は特に限定されず、例えばプラスチック基板、ガラス基板、セラミックス基板等を採用することができる。
【0035】
導電パターン形成用組成物に照射する光としては、波長200nm〜3000nmの連続光またはパルス光がよく、焼成時の蓄熱が起こりにくいパルス光がより好ましい。本明細書中において「パルス光」とは、光照射期間(照射時間)が短時間の光であり、光照射を複数回繰り返す場合は図1に示すように、第一の光照射期間(on)と第二の光照射期間(on)との間に光が照射されない期間(照射間隔(off))を有する光照射を意味する。図1ではパルス光の光強度が一定であるように示しているが、1回の光照射期間(on)内で光強度が変化してもよい。上記パルス光は、キセノンフラッシュランプ等のフラッシュランプを備える光源から照射される。このような光源を使用して、上記組成物の層にパルス光を照射する。n回繰り返し照射する場合は、図1における1サイクル(on+off)をn回反復する。なお、繰り返し照射する場合には、次パルス光照射を行う際に、基材を室温付近まで冷却できるようにするため基材側から冷却することが好ましい。
【0036】
パルス光の1回の照射期間(on)としては、5マイクロ秒から1秒、より好ましくは20マイクロ秒から10ミリ秒の範囲が好ましい。5マイクロ秒よりも短いと焼結が進まず、導電性パターンの性能向上の効果が低くなる。また、1秒よりも長いと光劣化、熱劣化による悪影響のほうが大きくなる。パルス光の照射は単発で実施しても効果はあるが、上記の通り繰り返し実施することもできる。繰返し実施する場合、照射間隔(off)は20マイクロ秒から5秒、より好ましくは2000マイクロ秒から2秒の範囲とすることが好ましい。20マイクロ秒よりも短いと、連続光と近くになってしまい一回の照射後に放冷される間も無く照射されるので、基材が加熱され温度がかなり高くなってしまう。また、5秒より長いと、放冷が進むのでまったく効果が無いわけはないが、繰り返し実施する効果が低減する。
【0037】
また、導電パターン形成用組成物をマイクロ波により加熱することもできる。導電パターン形成用組成物をマイクロ波加熱する場合に使用するマイクロ波は、波長範囲が1m〜1mm(周波数が300MHz〜300GHz)の電磁波である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0039】
また、以下の実施例及び比較例において、体積抵抗率は、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPにより測定し、扁平状の粒子の形状は、日立ハイテク株式会社製 FE−SEM S−5200により10点撮影し、厚さは実測値の数平均値を求めた。なお、比較例1で使用した球状粒子は日機装株式会社製 マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3000IIシリーズ USVR(レーザー回折・散乱法)により測定し、球近似により粒径を求めメジアン径をD50とした。参考までに実施例に用いた扁平状酸化金属粒子の形状についても同様にD50を求めた。
【0040】
<扁平状酸化銅粒子1の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより180℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子1を得た。
【0041】
図2(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子1のSEM写真が示される。図2(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子1は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは80〜120nmの範囲内であり、平均値として100nm、アスペクト比は20であった。また、参考までに測定したD50は1.28μmであった。
【0042】
また、この扁平状酸化銅粒子1を乾燥後、TGA(Rigaku社製、Thermo
plus Evo II差動型示差熱天秤TG8120(高温型赤外線加熱TG−DTA))(測定条件:窒素雰囲気で、5℃/minの昇温速度で室温から500℃まで昇温)を測定し、2.5質量%の熱重量減少が観測された。また、XRD(X線回折 Rigaku社製、湾曲IPX線回折装置 RINT RAPIDII、測定条件:標準ホルダーを用いて連続スキャン測定、X線管球:Cu(40kV/30mA)、コリメーター:f0.8mm、ω:20°、f:1/sec、スキャン時間:360sec、レシービングスリット(RS): 0.15mm)も測定した。TGAの測定結果を図3に、XRDの測定結果を図4にそれぞれ示す。TGAより、ポリマー分の残留がわかり、また、XRDより、合成時点ではほぼ酸化第二銅であったものが、TGAの測定時に一部酸化第一銅(亜酸化銅)に変化していることがわかる。
【0043】
<扁平状酸化銅粒子2の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより120℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子2を得た。
【0044】
図5(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子2のSEM写真が示される。図5(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子2は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは50nm、アスペクト比は40であった。また、参考までに測定したD50は0.808μmであった。
【0045】
また、この扁平状酸化銅粒子2を乾燥後、扁平状酸化銅粒子1と同じ測定条件でXRD(X線回折)も測定した。XRDの測定結果を図6に示す。XRDの結果より、扁平状酸化銅粒子1と異なり、より薄片になったために、還元されやすくなりほぼ銅になっていることがわかる。
【0046】
<扁平状酸化銅粒子3の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより80℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子3を得た。
【0047】
図7(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子3のSEM写真が示される。図7(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子3は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは30nm、アスペクト比は68であった。また、参考までに測定したD50は3.69μmであった。
【0048】
<扁平状酸化銅粒子4の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をガラス容器でそのまま80℃で2時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子4を得た。
【0049】
図8(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子4のSEM写真が示される。図8(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子4は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは35nm、アスペクト比は30であった。また、参考までに測定したD50は1.62μmであった。
【0050】
実施例1
還元剤としてエチレングコール、グリセリン(関東化学株式会社製の試薬)の混合水溶液(質量比 エチレングリコール:グリセリン:水=70:15:15)を調製し、この混合水溶液にバインダー樹脂としてポリビニルピロリドン(日本触媒株式会社製)を溶解して、40質量%のバインダー樹脂溶液を調製した。このバインダー樹脂溶液1.5gと上記混合水溶液0.5gとを混合し、上記調製した扁平状酸化銅粒子1を6.0g加え、自転・公転真空ミキサー あわとり練太郎 ARV−310(株式会社シンキー製)を用いて良く混合し、印刷用のペーストを作製した。
【0051】
得られたペーストをスクリーン印刷にて、2cm×2cm角のパターンをポリイミドフィルム(厚さ25μm)(カプトン100N、東レ・デュポン株式会社製)上に印刷し、溶媒を室温大気雰囲気下で乾燥除去した。このようにして得られたサンプルの印刷パターンに対して、Novacentrix社製PulseForge3300を用いてパルス光照射を行い、上記パターンを導電パターンに転化した。照射条件は、電圧250V、パルス幅1600マイクロ秒で単発照射した。その際のパルスエネルギーは3.47J/cmであった。以上により形成した導電パターンの厚さは25μmで、体積抵抗率は2.05×10−5Ω・cmであった。表1に測定結果を示す。なお、光照射前の乾燥除去後の印刷パターンは絶縁性であり、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPでは体積抵抗率は測定できなかった。
【0052】
図9(a)、(b)には、パルス光照射前後の上記パターンのSEM写真が示される。パルス光照射前である図9(a)に較べて、パルス光照射後である図9(b)の方が空孔が少ないことがわかる。
【0053】
実施例2〜4
実施例1と同様にして、他の扁平状酸化銅粒子2〜4をそれぞれ用いてインク化(ペースト作製)、印刷後光照射を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
球状の酸化銅粒子として、古河ケミカルズ株式会社製1−550(D50=720nm)6gを使用し、実施例1と同様にして印刷用のペーストを作製した。得られたペーストを実施例1と同様にしてパターン印刷し、光照射を行った。形成した導電パターンの厚さは23μmであったが、体積抵抗率が高く、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPでは測定できなかった。測定結果を表1に示す。
【0055】
比較例2
球状の酸化金属粒子として、シーアイ化成株式会社製NanoTek CuO(D50=270nm)6.0gを使用し、実施例1と同様にして印刷用のペーストを作製した。得られたペーストを実施例1と同様にしてパターン印刷し、光照射を行った。形成した導電パターンの厚さは22μmであり、体積抵抗率は7.68×10−4Ω・cmであった。測定結果を表1に示す。
【0056】
図10(a)、(b)には、比較例2のパルス光照射前後の上記パターンのSEM写真が示される。パルス光照射前である図10(a)に較べて、パルス光照射後である図10(b)では非常に空孔が多いことがわかる。粒径が小さい球状の粒子を使用したため、短時間に強い光照射を行った場合に吹き飛びやすく、転化された導体内部に空隙が生じやすいためと考えられる。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、比較例1、2にかかる導電パターンに較べて、実施例1〜4にかかる導電パターンは、体積抵抗率が一桁低下していることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10