【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0039】
また、以下の実施例及び比較例において、体積抵抗率は、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPにより測定し、扁平状の粒子の形状は、日立ハイテク株式会社製 FE−SEM S−5200により10点撮影し、厚さは実測値の数平均値を求めた。なお、比較例1で使用した球状粒子は日機装株式会社製 マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3000IIシリーズ USVR(レーザー回折・散乱法)により測定し、球近似により粒径を求めメジアン径をD50とした。参考までに実施例に用いた扁平状酸化金属粒子の形状についても同様にD50を求めた。
【0040】
<扁平状酸化銅粒子1の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO
3)
2(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより180℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子1を得た。
【0041】
図2(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子1のSEM写真が示される。
図2(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子1は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは80〜120nmの範囲内であり、平均値として100nm、アスペクト比は20であった。また、参考までに測定したD50は1.28μmであった。
【0042】
また、この扁平状酸化銅粒子1を乾燥後、TGA(Rigaku社製、Thermo
plus Evo II差動型示差熱天秤TG8120(高温型赤外線加熱TG−DTA))(測定条件:窒素雰囲気で、5℃/minの昇温速度で室温から500℃まで昇温)を測定し、2.5質量%の熱重量減少が観測された。また、XRD(X線回折 Rigaku社製、湾曲IPX線回折装置 RINT RAPIDII、測定条件:標準ホルダーを用いて連続スキャン測定、X線管球:Cu(40kV/30mA)、コリメーター:f0.8mm、ω:20°、f:1/sec、スキャン時間:360sec、レシービングスリット(RS): 0.15mm)も測定した。TGAの測定結果を
図3に、XRDの測定結果を
図4にそれぞれ示す。TGAより、ポリマー分の残留がわかり、また、XRDより、合成時点ではほぼ酸化第二銅であったものが、TGAの測定時に一部酸化第一銅(亜酸化銅)に変化していることがわかる。
【0043】
<扁平状酸化銅粒子2の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO
3)
2(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより120℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子2を得た。
【0044】
図5(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子2のSEM写真が示される。
図5(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子2は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは50nm、アスペクト比は40であった。また、参考までに測定したD50は0.808μmであった。
【0045】
また、この扁平状酸化銅粒子2を乾燥後、扁平状酸化銅粒子1と同じ測定条件でXRD(X線回折)も測定した。XRDの測定結果を
図6に示す。XRDの結果より、扁平状酸化銅粒子1と異なり、より薄片になったために、還元されやすくなりほぼ銅になっていることがわかる。
【0046】
<扁平状酸化銅粒子3の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO
3)
2(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をオートクレーブにより80℃で20時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子3を得た。
【0047】
図7(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子3のSEM写真が示される。
図7(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子3は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは30nm、アスペクト比は68であった。また、参考までに測定したD50は3.69μmであった。
【0048】
<扁平状酸化銅粒子4の調製>
ポリビニルピロリドン(0.245g)、Cu(NO
3)
2(0.374g)、水(48ml)をそれぞれ室温で溶解させた後、NaOH(1.6g)を加えて、2〜3分混合した。この溶液をガラス容器でそのまま80℃で2時間加熱反応した。得られた析出物を遠心分離により単離し、乾燥して、本実施例にかかる扁平状酸化金属粒子としての扁平状酸化銅粒子4を得た。
【0049】
図8(a)、(b)には、上記工程により得られた扁平状酸化銅粒子4のSEM写真が示される。
図8(a)、(b)に示されるように、扁平状酸化銅粒子4は板状(扁平状)であり、粒子の厚さは35nm、アスペクト比は30であった。また、参考までに測定したD50は1.62μmであった。
【0050】
実施例1
還元剤としてエチレング
リコール、グリセリン(関東化学株式会社製の試薬)の混合水溶液(質量比 エチレングリコール:グリセリン:水=70:15:15)を調製し、この混合水溶液にバインダー樹脂としてポリビニルピロリドン(日本触媒株式会社製)を溶解して、40質量%のバインダー樹脂溶液を調製した。このバインダー樹脂溶液1.5gと上記混合水溶液0.5gとを混合し、上記調製した扁平状酸化銅粒子1を6.0g加え、自転・公転真空ミキサー あわとり練太郎 ARV−310(株式会社シンキー製)を用いて良く混合し、印刷用のペーストを作製した。
【0051】
得られたペーストをスクリーン印刷にて、2cm×2cm角のパターンをポリイミドフィルム(厚さ25μm)(カプトン100N、東レ・デュポン株式会社製)上に印刷し、溶媒を室温大気雰囲気下で乾燥除去した。このようにして得られたサンプルの印刷パターンに対して、Novacentrix社製PulseForge3300を用いてパルス光照射を行い、上記パターンを導電パターンに転化した。照射条件は、電圧250V、パルス幅1600マイクロ秒で単発照射した。その際のパルスエネルギーは3.47J/cm
2であった。以上により形成した導電パターンの厚さは25μmで、体積抵抗率は2.05×10
−5Ω・cmであった。表1に測定結果を示す。なお、光照射前の乾燥除去後の印刷パターンは絶縁性であり、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPでは体積抵抗率は測定できなかった。
【0052】
図9(a)、(b)には、パルス光照射前後の上記パターンのSEM写真が示される。パルス光照射前である
図9(a)に較べて、パルス光照射後である
図9(b)の方が空孔が少ないことがわかる。
【0053】
実施例2〜4
実施例1と同様にして、他の扁平状酸化銅粒子2〜4をそれぞれ用いてインク化(ペースト作製)、印刷後光照射を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
球状の酸化銅粒子として、古河ケミカルズ株式会社製1−550(D50=720nm)6gを使用し、実施例1と同様にして印刷用のペーストを作製した。得られたペーストを実施例1と同様にしてパターン印刷し、光照射を行った。形成した導電パターンの厚さは23μmであったが、体積抵抗率が高く、株式会社三菱アナリテック製 ロレスタGPでは測定できなかった。測定結果を表1に示す。
【0055】
比較例2
球状の酸化金属粒子として、シーアイ化成株式会社製NanoTek CuO(D50=270nm)6.0gを使用し、実施例1と同様にして印刷用のペーストを作製した。得られたペーストを実施例1と同様にしてパターン印刷し、光照射を行った。形成した導電パターンの厚さは22μmであり、体積抵抗率は7.68×10
−4Ω・cmであった。測定結果を表1に示す。
【0056】
図10(a)、(b)には、比較例2のパルス光照射前後の上記パターンのSEM写真が示される。パルス光照射前である
図10(a)に較べて、パルス光照射後である
図10(b)では非常に空孔が多いことがわかる。粒径が小さい球状の粒子を使用したため、短時間に強い光照射を行った場合に吹き飛びやすく、転化された導体内部に空隙が生じやすいためと考えられる。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、比較例1、2にかかる導電パターンに較べて、実施例1〜4にかかる導電パターンは、体積抵抗率が一桁低下していることがわかる。