特許第5991859号(P5991859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5991859
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】光線路監視装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-135147(P2012-135147)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-257296(P2013-257296A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】浅香 航太
(72)【発明者】
【氏名】米山 幹夫
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−083792(JP,A)
【文献】 特開昭62−046227(JP,A)
【文献】 特開平09−229820(JP,A)
【文献】 特開平05−322695(JP,A)
【文献】 特表2006−524793(JP,A)
【文献】 特開平7−235908(JP,A)
【文献】 特開平3−9237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 − G01M 11/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被監視光線路の破断点を検出するための光線路監視装置であって、
任意の波長で発振する半導体レーザと、
前記半導体レーザの出力光を伝搬する第1の監視用光線路と、
第2の監視用光線路と、
前記第1の監視用光線路の伝搬光を、前記被監視光線路と前記第2の監視用光線路とに分波する光分波器と、
前記第1の監視用光線路と前記被監視光線路とを結ぶ光路内の任意の位置に設けられ、前記半導体レーザの出力光の偏波状態を制御する偏波制御器と、
前記第2の監視用光線路の伝搬光を電気信号に変換する第1の光電変換器と、
前記第1の光電変換器で得られた電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記A/D変換部からの出力信号の周波数スペクトラムを算出して、該周波数スペクトラムの任意の周波数区間におけるスペクトラム強度を検出して、前記偏波状態が最適な偏波状態であることを示す所定のスペクトラム強度となったか否かを判定して、その結果に基づいて制御信号を生成する演算部と、
前記演算部で生成した制御信号に基づいたアナログ電気信号を出力するD/A変換部と、
前記D/A変換部で変換されたアナログの制御信号に基づいて前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させる偏波制御器駆動部と
前記被監視光線路から前記半導体レーザに向けて伝搬する戻り光強度を増幅する光増幅器と、
前記光増幅器の出力光を電気信号に変換する第2の光電変換器と、
該第2の光電変換器の出力信号を受信して、前記光増幅器の出力光を所定のパワー以上に保持するように、前記光増幅器の利得を制御する光増幅器制御部と
を備え、
前記演算部は、所定のスペクトラム強度となったと判定した場合に、前記算出した周波数スペクトラムのスペクトル間隔に基づいて破断点の位置を演算することを特徴とする光線路監視装置。
【請求項2】
被監視光線路の破断点を検出するための光線路監視装置の制御方法であって、
前記光線路監視装置は、任意の波長で発振する半導体レーザと、前記半導体レーザの出力光を伝搬する第1の監視用光線路と、第2の監視用光線路と、前記第1の監視用光線路の伝搬光を、前記被監視光線路と前記第2の監視用光線路とに分波する光分波器と、前記第1の監視用光線路と前記被監視光線路とを結ぶ光路内の任意の位置に設けられ、前記半導体レーザの出力光の偏波状態を制御する偏波制御器と、前記第2の監視用光線路の伝搬光を電気信号に変換する第1の光電変換器と、前記第1の光電変換器で得られた電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部からの出力信号の周波数スペクトラムを算出し、制御信号を生成する演算部と、前記演算部で生成した制御信号に基づいたアナログ電気信号を出力するD/A変換部と、前記D/A変換部で変換されたアナログの制御信号に基づいて前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させる偏波制御器駆動部と、前記被監視光線路から前記半導体レーザに向けて伝搬する戻り光強度を増幅する光増幅器と、前記光増幅器の出力光を電気信号に変換する第2の光電変換器と、該第2の光電変換器の出力信号を受信して前記光増幅器の利得を制御する光増幅器制御部とを備え、
前記光増幅器制御部が、前記光増幅器の出力光を所定のパワー以上に保持するように、前記光増幅器の利得を制御するステップと、
前記演算部は、前記算出した周波数スペクトラムの任意の周波数区間におけるスペクトラム強度を検出するステップと、
前記検出したスペクトラム強度が、前記偏波状態が最適な偏波状態であることを示す所定のスペクトラム強度となったか否かを判定するステップと、
前記所定のスペクトラム強度となっていないと判定した場合に、
前記偏波制御器駆動によって前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させるステップと、
前記演算で、前記周波数スペクトラムを算出しスペクトラム強度を検出して前記所定のスペクトラム強度となったか否かを判定するステップに戻るステップと、
前記所定のスペクトラム強度となったと判定した場合に、
前記算出した周波数スペクトラムのスペクトル間隔に基づいて破断点の位置を演算するステップとを含むことを特徴とする光線路監視装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線路監視装置およびその制御方法に関し、詳細には、通信媒体として光ファイバによって構成される光線路内に存在する破断点を監視し、その破断点の位置を提供するための光線路監視装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光線路内に発生する損失や破断点を検出するOTDR(Optical time domain Reflectometer)が使用されている(特許文献1)。特許文献1には、光パルスを光線路内に出力し、破断点や接続点で発生する反射戻り光強度と伝搬時間を計測し反射位置を観測する方式が記載されている。
【0003】
この様な光パルス方式(図6)では、空間分解能はパルス幅や後方散乱光の影響度に依存し、光線路内に複数の反射点が存在し、それらの反射点とパルス源との距離差が小さい場合は、高精度に反射位置を識別することが困難である。反射位置を高精度に測定するために、反射点間に存在する共振モードの周波数間隔を計測し、それから反射点間距離を算出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−174666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、反射点間の共振状態は、伝搬光の偏波状態や強度に依存するので、安定な共振状態を維持するためには、その偏波状態や強度を最適に制御する必要がある。
【0006】
本発明は以上の問題に鑑みなされたものであって、光線路内を伝搬する偏波状態及び戻り光強度を制御して、光線路内に安定に存在可能な共振モードを維持し、光線路内の破断点を高精度に自動測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被監視光線路の破断点を検出するための光線路監視装置であって、任意の波長で発振する半導体レーザと、前記半導体レーザの出力光を伝搬する第1の監視用光線路と、第2の監視用光線路と、前記第1の監視用光線路の伝搬光を、前記被監視光線路と前記第2の監視用光線路とに分波する光分波器と、前記第1の監視用光線路と前記被監視光線路とを結ぶ光路内の任意の位置に設けられ、前記半導体レーザの出力光の偏波状態を制御する偏波制御器と、前記第2の監視用光線路の伝搬光を電気信号に変換する第1の光電変換器と、前記第1の光電変換器で得られた電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部からの出力信号の周波数スペクトラムを算出して、該周波数スペクトラムの任意の周波数区間におけるスペクトラム強度を検出して、前記偏波状態が最適な偏波状態であることを示す所定のスペクトラム強度となったか否かを判定して、その結果に基づいて制御信号を生成する演算部と、前記演算部で生成した制御信号に基づいたアナログ電気信号を出力するD/A変換部と、前記D/A変換部で変換されたアナログの制御信号に基づいて前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させる偏波制御器駆動部と、前記被監視光線路から前記半導体レーザに向けて伝搬する戻り光強度を増幅する光増幅器と、前記光増幅器の出力光を電気信号に変換する第2の光電変換器と、該第2の光電変換器の出力信号を受信して、前記光増幅器の出力光を所定のパワー以上に保持するように、前記光増幅器の利得を制御する光増幅器制御部とを備え、前記演算部は、所定のスペクトラム強度となったと判定した場合に、前記算出した周波数スペクトラムのスペクトル間隔に基づいて破断点の位置を演算することを特徴とする光線路監視装置である。
【0009】
請求項に記載の発明は、被監視光線路の破断点を検出するための光線路監視装置の制御方法であって、前記光線路監視装置は、任意の波長で発振する半導体レーザと、前記半導体レーザの出力光を伝搬する第1の監視用光線路と、第2の監視用光線路と、前記第1の監視用光線路の伝搬光を、前記被監視光線路と前記第2の監視用光線路とに分波する光分波器と、前記第1の監視用光線路と前記被監視光線路とを結ぶ光路内の任意の位置に設けられ、前記半導体レーザの出力光の偏波状態を制御する偏波制御器と、前記第2の監視用光線路の伝搬光を電気信号に変換する第1の光電変換器と、前記第1の光電変換器で得られた電気信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部からの出力信号の周波数スペクトラムを算出し、制御信号を生成する演算部と、前記演算部で生成した制御信号に基づいたアナログ電気信号を出力するD/A変換部と、前記D/A変換部で変換されたアナログの制御信号に基づいて前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させる偏波制御器駆動部と、前記被監視光線路から前記半導体レーザに向けて伝搬する戻り光強度を増幅する光増幅器と、前記光増幅器の出力光を電気信号に変換する第2の光電変換器と、該第2の光電変換器の出力信号を受信して前記光増幅器の利得を制御する光増幅器制御部とを備え、前記光増幅器制御部が、前記光増幅器の出力光を所定のパワー以上に保持するように、前記光増幅器の利得を制御するステップと、前記演算部は、前記算出した周波数スペクトラムの任意の周波数区間におけるスペクトラム強度を検出するステップと、前記検出したスペクトラム強度が、前記偏波状態が最適な偏波状態であることを示す所定のスペクトラム強度となったか否かを判定するステップと、前記所定のスペクトラム強度となっていないと判定した場合に、前記偏波制御器駆動によって前記偏波制御器を駆動制御して前記半導体レーザの出力光の偏波状態を変化させるステップと、前記演算で、前記周波数スペクトラムを算出しスペクトラム強度を検出して前記所定のスペクトラム強度となったか否かを判定するステップに戻るステップと、前記所定のスペクトラム強度となったと判定した場合に、前記算出した周波数スペクトラムのスペクトル間隔に基づいて破断点の位置を演算するステップとを含むことを特徴とする光線路監視装置の制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる光線路監視装置の一例を示す図である。
図2】共振周波数スペクトルの例を示す図である。
図3】モード間隔と反射端間距離の関係を示す図である。
図4】共振周波数スペクトル強度制御フローを示す図である。
図5】複合共振周波数スペクトルの例を示す図である。
図6】従来の光線路監視装置(パルス型OTDR)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
図1に、本発明にかかる光線路監視装置の一例を示す。図1に示すように光線路監視装置は、分布帰還型半導体レーザダイオード(DFB−LD)1と、偏波制御器(PC: polarization controller)2と、光カップラ3と、2つのPIN−フォトダイオード(PD: photo detector)5、11と、A/D変換器(ADC: A/D converter)6と、FPGA(CPU: computing circuit)8と、制御端末(CRM: control terminal)19と、D/A変換器(DAC:D/A converter)7と、偏波制御器駆動回路(PC_DRV: polarization controller driver)9と、制御スイッチ(SW: polarization controller control switch)10と、ファイバアンプ(FA: fiber amp.)14と、2つのサーキュレータ(CIR: optical circulator)17、18と、2つのアイソレータ(ISO: optical isolator)15、16と、光増幅器制御回路(OPA_CTR: fiber amp. control circuit)12と、光増幅器駆動回路(OPA_DRV: fiber amp. Driver)13とを備えて構成される。光線路監視装置の光部品間は、シングルモードファイバで接続され、電気部品間は、同軸線路で接続されている。
【0014】
DFB−LD1は、破断点等を調べるために被監視光線路4に入力する光パルスを生成する任意の波長で発振する半導体レーザである。DFB−LD1等の半導体レーザは、理想的には単一波長で発振するが、厳密にはある程度の幅を持った波長帯で発振するので、本明細書では、このようなレーザを任意の波長で発振する半導体レーザと定義している。偏波制御器2は、光線路を介してDFB−LD1に接続されており、生成された光パルスを偏波して光カップラ3のport1に入力する。偏波制御器2は、回転式の1/2波長板と1/4波長板とを用いて構成され、透過光の偏波状態を調整することができる。
【0015】
光カップラ3は、DFB−LD1の伝搬光を被監視光線路4に入力される光と偏波状態監視用の光とに分波するための手段であり、例えば1:1の入出力分波比を有する、いわゆる−3dBカプラを用いることができる。光カップラ3は、2×2の4つのポートを有し、port1には偏波制御器2を介してDFB−LD1が接続され、port2にはPD11が接続され、port3にはPD5が接続され、port4にはCIR17が接続されている。また、光カップラ3では、PD5、PD11端面からDFB−LD1及び被監視光線路4方向への伝搬光を遮断するため、ファイバ間は斜め研磨で接続する等、アイソレーションに配慮する。
【0016】
port4には、CIR17、18を介して被監視光線路4を接続することができる。ここで被監視光線路4内の破断点が反射点P1、P2とし、DFB−LD1における反射点をP0とする。DFB−LD1から出力される単一モード(任意の波長モード)の発振光は、偏波制御器2と光カップラ3とを経由して被監視光線路4に入力されると、被監視光線路4内を伝搬し、被監視光線路4内の反射点P1において反射した後、後方へ伝搬する(この伝搬光を反射戻り光と呼ぶ)。すなわち、DFB−LDの反射点P0と被監視光線路4内の反射点P1との間には、互いに進行方向が異なる2つの光波が存在し、これらは反射を繰り返し、いくつかの特定の周波数を持つ光波が安定に存在する(共振する)ことを許される。
【0017】
port3に接続されたPD5は、ADC6とCPU8とDAC7とが直列に接続されている。CPU8は、PD5で観測した値をFFT変換するFFT変換部8aと変換したデータを処理するデータ処理部8bとを有している。また、CPU8は、外部のTRM19と必要に応じて通信可能に構成されている。PD5では、共振状態となった入力光パルスと戻り光を観測できる。PD5に接続されたCPU8は、かかる観測結果に応じて、偏波制御器2に接続された偏波制御器駆動回路9の制御スイッチ10のオン・オフを制御して、光パルスの偏波状態を制御する。例えばCPU8は、PD5で光電変換された信号の周波数スペクトラムを算出して、該周波数スペクトラムの任意の周波数区間におけるスペクトラム強度を検出して、前記偏波状態が最適な偏波状態であることを示す所定のスペクトラム強度となったか否かを判定してオン・オフの制御信号を生成することができる。
【0018】
port2に接続されたPD11は、光増幅器制御回路12と、光増幅器駆動回路13とが接続されている。この光増幅器制御回路12と、光増幅器駆動回路13は、2つのCIR17、18を介してport4に接続された2つのアイソレータ15、16に挟まれたファイバアンプ14を駆動する。PD11では、共振状態となった戻り光を観測する。PD5に接続された光増幅器制御回路12は、かかる観測結果に応じて、戻り光が所定の閾値(観測に必要な信号強度)となるように光増幅器駆動回路13を制御して戻り光の増幅を行う。
【0019】
ここで被監視光線路4内の反射点が1点の場合に、反射点間距離を測定する原理を説明する。図2は、共振状態における周波数スペクトル例を示す。共振周波数の間隔Δf(モード間隔)は、反射点間の距離(共振器長)Lと一定の関係がある。関係式は、一般的に式1で表わされる。
Δf=c/(2L・neff) ・・・(式1)
【0020】
式1において、Δf:モード間隔、L:反射点間距離、neff:被監視光線路の実効屈折率、c:真空中の光速度である。neffは、既知とする。図3にモード間隔Δfと反射点間距離Lとの関係を示す。プロットは実測であり、実線は式1に基づく理論値を示す。両者は良く一致し、モード間隔を測定することにより、反射点位置を測定できることがわかる。
【0021】
被監視光線路4内の反射点が複数の場合も、1点の場合と同様の原理で、共振モード間隔を測定することが可能である。この場合、各反射点ごとに共振状態を満たす偏波状態が異なるため、偏波を調整して、各反射点に対応する共振スペクトルを単独で取得し、複数の反射点を特定することができる。
【0022】
光線路監視装置における光線路内を伝搬する偏波の制御例を説明する。DFB−LD1の発振光は、主にTE(transverse electric)波に偏光している。被監視光線路4方向への進行波と反射戻り光のTE波成分の結合率が最大となる時に、共振スペクトルの強度が最大となる。したがって、偏波制御器2によって、TE波間の結合率を制御し、共振スペクトル強度を最適化している。偏波制御器2の波長板は、モータにより制御し、制御スイッチ10を介して偏波制御器駆動回路9でモータを駆動する。モータは、制御スイッチ10がONの時、波長板が所定の角度回転するように動作し、OFFの時は、停止している。
【0023】
図4は、CPU8において所定のスペクトル強度を得て測定を行うまでの制御フローを示す。周波数スペクトルの算出は、FFT(Fast Fourier Transform)によって行う(S1)。例えば、周波数レンジを100MHz、中心周波数を7GHzとし、最大スペクトル強度比Fmax(peak to peak)をデータ処理により検出する(S2)。検出したFmaxが基準レベルFref(20dB程度)以下か否かを判定する(S3)。このとき、基準レベルFrefとして用いられる値は、被監視光線路4方向への進行波と反射戻り光のTE波成分の結合率が最大値近傍となることを示すものである。
【0024】
Fmaxが基準レベルFref(20dB程度)以下であれば、偏波制御器2の制御スイッチ10をONにしてモータ9を駆動し(S4)、1/4波長板を所定の角度Δθだけ回転する(S5)。Δθは、測定時間や精度に応じて任意に設定可能にしておく。また、1/2波長板は本例では固定されているが、必要な偏波消光比に応じて制御しても良い。波長板を回転した後、制御スイッチをOFFにする(S6)。
【0025】
上記のループを、FmaxがFref以上になるまで繰り返し、Fmaxが基準レベルFref(20dB程度)以下でないと判断されたら、波長板をそのままの状態で制御スイッチをOFFにする(S7)。この状態がTE波成分の最適な状態であることを示すので、モード間隔Δfを検出する(S8)。さらに、式1を用いて共振器長Lをデータ処理により求める(S9)。FFT及びデータ処理含む演算機能は、FPGA8等で実装する。FPGA8は、外部に設けられた制御端末9と通信し、制御、演算した結果を制御端末9に出力することができる。また、反射点が複数存在する複合共振スペクトル(図5)の場合は、偏波状態ごとに共振モード間隔を解析し記憶する機能を演算回路に持たせることにより、それら反射点を特定することが可能である。
【0026】
次に、戻り光強度の制御例について図1を用いて説明する。被監視光線路4内の反射減衰量が大きい場合、上記共振スペクトル強度が小さくなり、計測感度が低下する。これを回避するため、光カップラ3のport4と被監視光線路4の間に設置されたファイバ増幅器14により戻り光の強度を増幅する。これは、図4のフローの前に行われるのが好ましい。図1に示すように、サーキュレータ17、18をファイバ増幅器14の入出力端に設置し、異なる二つの進行波を分離し、アイソレータ15、16により戻り光のみを分離してファイバ増幅器14で増幅できる構成にする。ファイバ増幅器14の利得は、光出力が所定値以上になるように、フィードバック制御する。図1に示す例では、ファイバ増幅器14の出力光をPD5で受光し、その受光電流を基準値と比較増幅して電圧出力する。その比較増幅電圧をPID(比例、積分、微分回路)に入力し、そのPID出力を、ファイバ増幅器の駆動電流に変換して利得制御する。以上により、戻り光強度を所定値以上に保持し、常に高感度に共振スペクトル強度を得ることができる。
【0027】
以上の実施形態では、4ポートを備える光カップラを用いた場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、図1に示すような4ポートの光カップラ3に代えて、3ポートの光カップラを用いることができる。この場合、port2に接続されていた戻り光を検出するPD11は、CIR17とISO15との間に挿入することによって設けることができる。
【0028】
以上の実施形態では、図1に示すように偏波制御器2は、DFB−LD1と光カップラ3のport1との間に設けられた例を示したが、DFB−LD1と被監視光線路4との間に存在する光線路内の任意の位置に設けてもよい。
【0029】
また、以上の実施形態では、光源としてDFB−LD1を用いた場合を例に挙げて説明しているが、任意の波長で発振する半導体レーザであれば任意のものを使用できる。
【0030】
以上の実施形態の光線路監視装置によれば、光線路内を伝搬する偏波状態及び戻り光強度を制御して、光線路内の共振モードを安定に維持し、モード間隔を算出することにより、光線路内の破断点を高精度に自動測定することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 分布帰還型半導体レーザダイオード(DFB−LD)
2 偏波制御器(PC)
3 光カップラ
5、11 PIN−フォトダイオード(PD)
6 A/D変換器(ADC)
8 FPGA(CPU)
19 制御端末(CRM)
7 D/A変換器(DAC)
9 偏波制御器駆動回路(PC_DRV)
10 制御スイッチ(SW)
14 ファイバアンプ(FA)
17、18 サーキュレータ(CIR)
15、16 アイソレータ(ISO)
12 光増幅器制御回路(OPA_CTR)
13 光増幅器駆動回路(OPA_DRV)
図1
図2
図3
図4
図5
図6