特許第5992000号(P5992000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5992000ケテンイミン化合物、ポリエステルフィルム、太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992000
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】ケテンイミン化合物、ポリエステルフィルム、太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20160901BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20160901BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20160901BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20160901BHJP
   C07C 251/16 20060101ALI20160901BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   C08L67/00
   H01L31/04 140
   C08K5/29
   C08K3/22
   C07C251/16
   C08J5/18
【請求項の数】22
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2014-8327(P2014-8327)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-198826(P2014-198826A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-49370(P2013-49370)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠
(72)【発明者】
【氏名】牧野 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】上平 茂生
(72)【発明者】
【氏名】水村 理俊
(72)【発明者】
【氏名】小川 倫弘
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03692745(US,A)
【文献】 特開平10−130482(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/041827(WO,A1)
【文献】 特開2014−080561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00 − 67/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるケテンイミン化合物とポリエステルを含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。)
【請求項2】
前記ケテンイミン化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
【請求項3】
前記ケテンイミン化合物が下記一般式(3−1)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3−1)中、R11、R12およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。nは〜4の整数を表し、L2は、n価の連結基を表す。)
【請求項4】
前記ケテンイミン化合物が下記一般式(3−2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化4】
(一般式(3−2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは〜4の整数を表し、L2は、n価の連結基を表す。)
【請求項5】
前記ケテンイミン化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【化5】
(一般式(4)中、R21およびR22の少なくとも一方は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。nは〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(4)におけるR21およびR22の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(4)におけるR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項5または6に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記ケテンイミン化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化6】
(一般式(5)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15、R25、R35およびR45は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R31、R32およびR35は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R41、R42およびR45は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3およびR6は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。L3は、単結合または二価の連結基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(5)におけるR11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項8に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記一般式(5)におけるR21、R22、R31およびR32の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項8または9に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記ケテンイミン化合物の分子量は500以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
前記ケテンイミン化合物のケテンイミン価(全分子量/ケテンイミンの官能基数)が420以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエステルに対して、前記ケテンイミン化合物を0.1〜2.0質量%含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
顔料をさらに含有していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項15】
前記顔料が酸化チタンであることを特徴とする請求項14に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物から形成されるポリエステルフィルム。
【請求項17】
請求項16に記載のポリエステルフィルムを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項18】
請求項17に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項19】
一般式(6)で表されることを特徴とするケテンイミン化合物。
【化7】
(一般式(6)中、R21およびR22の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。nは〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
【請求項20】
前記一般式(6)におけるR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項19に記載のケテンイミン化合物。
【請求項21】
下記一般式(7)で表されることを特徴とする請求項19に記載のケテンイミン化合物。
【化8】
(一般式(7)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15、R25、R35およびR45は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R31、R32およびR35は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R41、R42およびR45は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3およびR6は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。L3は、単結合または二価の連結基を表す。)
【請求項22】
前記一般式(7)におけるR21、R22、R31およびR32の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする請求項21に記載のケテンイミン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケテンイミン化合物、ポリエステルフィルム、太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光が入射する受光面側からガラスまたはフロントシート/透明な充填材料(封止材)/太陽電池素子/封止材/バックシートがこの順に積層された構造を有している。太陽電池素子は一般にEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の樹脂(封止材)で包埋され、さらにこの上に太陽電池用保護シートが貼り付けられた構造を有する。太陽電池用保護シートの中でも特に最外層に配置される太陽電池モジュール用バックシートは、太陽電池素子を保護する働きをする。太陽電池モジュールが屋体に設置された場合、バックシートは、風雨に曝されたり、高温多湿環境下に長期間置かれることが想定されるため、優れた耐候性が求められる。
【0003】
太陽電池モジュール用バックシートには、従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムが使用されている。ポリエステルフィルムは、優れた耐熱性、機械特性及び耐薬品性などを有しているため、太陽電池モジュール用バックシートに好ましく用いられている。しかし、これらのフィルムは、耐加水分解性に乏しいため、加水分解により分子量が低下し、脆化が進行して機械的性質が低下してしまうため、太陽電池用のバックシートとして長期間に渡り実用的な強度を保持することができなかった。
【0004】
そこで、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めるために、特許文献1および2では、ポリエステルフィルムにケテンイミン化合物を末端封止剤として添加することが提案されている。ここでは、ケテンイミン化合物は、ポリエステルの末端カルボキシル基と反応することで、ポリエステルの加水分解を抑制する働きをする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許3692745号公報
【特許文献2】特開平10−130482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2で提案されているように、ポリエステルフィルムにケテンイミン化合物を含有させることにより、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させることはできる。しかしながら、ケテンイミン化合物をポリエステルフィルムに含有させると、ポリエステルフィルムが黄色く着色するということが、本発明者らの検討により明らかとなった。このようなポリエステルフィルムを太陽電池モジュールのバックシートとして用いた場合、バックシートの光反射率が低減し、太陽電池モジュールの発電効率を下げてしまうため問題となる。
また、着色したポリエステルフィルムを太陽電池モジュールのバックシートとして用いた場合、太陽電池モジュール全体の意匠性を悪化させてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、耐加水分解性を向上させることに加え、黄着色が低減されたポリエステルフィルムを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特定の構造を有するケテンイミン化合物を用いるより、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めつつも、ポリエステルフィルムが黄色く着色することを抑制することを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表されるケテンイミン化合物とポリエステルを含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。)
[2]上記のケテンイミン化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】
(一般式(2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
[3]上記のケテンイミン化合物が下記一般式(3−1)で表されることを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3−1)中、R11、R12およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L2は、n価の連結基を表す。)
[4]上記のケテンイミン化合物が下記一般式(3−2)で表されることを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化4】
(一般式(3−2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L2は、n価の連結基を表す。)
[5]上記のケテンイミン化合物が下記一般式(4)で表されることを特徴とする[1]記載のポリエステル樹脂組成物。
【化5】
(一般式(4)中、R21およびR22の少なくとも一方は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
[6]上記の一般式(4)におけるR21およびR22の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[5]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[7]上記の一般式(4)におけるR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[5]または[6]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[8]上記のケテンイミン化合物が下記一般式(5)で表されることを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化6】
(一般式(5)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15、R25、R35およびR45は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R31、R32およびR35は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R41、R42およびR45は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3およびR6は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。L3は、単結合または二価の連結基を表す。)
[9]上記の一般式(5)におけるR11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[8]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[10]上記の一般式(5)におけるR21、R22、R31およびR32の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[8]または[9]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[11]上記のケテンイミン化合物の分子量は500以上であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
[12]上記のケテンイミン化合物のケテンイミン価(全分子量/ケテンイミンの官能基数)が420以下であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
[13]上記のポリエステルに対して、上記のケテンイミン化合物を0.1〜2.0質量%含有することを特徴とする[1]〜[12]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
[14]顔料をさらに含有していることを特徴とする[1]〜[13]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
[15]上記の顔料が酸化チタンであることを特徴とする[14]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[16][1]〜[15]のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物から形成されるポリエステルフィルム。
[17][16]に記載のポリエステルフィルムを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール用バックシート。
[18][17]に記載の太陽電池モジュール用バックシートを用いたことを特徴とする太陽電池モジュール。
[19]一般式(6)で表されることを特徴とするケテンイミン化合物。
【化7】
(一般式(6)中、R21およびR22の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。)
[20]上記の一般式(6)におけるR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[19]に記載のケテンイミン化合物。
[21]下記一般式(7)で表されることを特徴とする[19]に記載のケテンイミン化合物。
【化8】
(一般式(7)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15、R25、R35およびR45は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R31、R32およびR35は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R41、R42およびR45は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3およびR6は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。L3は、単結合または二価の連結基を表す。)
[22]上記の一般式(7)におけるR21、R22、R31およびR32の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことを特徴とする[21]に記載のケテンイミン化合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の構造を有するケテンイミン化合物を用いるより、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めつつも、ポリエステルフィルムが黄色く着色することを抑制することができる。これにより、太陽電池モジュール用バックシートの光反射率を高めることができ、太陽電池モジュールの発電効率を高めることができる。また、ポリエステルフィルムの黄着色を抑制することにより、意匠性に優れた太陽電池モジュール用バックシートを得ることができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、ケテンイミン化合物の分子量を一定以上とすることにより、製造工程におけるケテンイミン化合物の揮散を抑制することができる。これにより、製造適性を高めることができるというさらなる効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(ケテンイミン化合物)
本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化9】
【0015】
ここで、一般式(1)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
【0016】
11、R12、R21およびR22で表される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基部分の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。R11、R12、R21およびR22が表すアルキル基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R11、R12、R21およびR22が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基などを挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基とすることがより好ましい。
11、R12、R21およびR22が置換基を有する場合、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を過度に低下させない限り、置換基は特に制限されることはない。置換基としては、上記の置換基を同様に例示することができる。
【0017】
11、R12、R21およびR22で表される置換基を有してもよいアリール基のアリール基部分の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。R11、R12、R21およびR22が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。R11、R12、R21およびR22が置換基を有する場合、置換基としては、上記の置換基を同様に例示することができる。
アリール基にはヘテロアリール基が含まれるものとする。ヘテロアリール基とは、芳香族性を示す5員、6員又は7員の環又はその縮合環の環構成原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されたものをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
11、R12、R21およびR22が表すヘテロアリール基はさらに置換基を有していてもよく、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を過度に低下させない限り、置換基は特に制限されない。
【0018】
11、R12、R21およびR22で表される置換基を有してもよいアルコキシ基のアルコキシ基部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。R11、R12、R21およびR22が表すアルコキシ基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R11、R12、R21およびR22が表すアルコキシ基の好ましい例としては、上述したR11、R12、R21およびR22が表すアルキル基の末端に−O−が連結した基を挙げることができる。R11、R12、R21およびR22が置換基を有する場合、置換基としては、上記の置換基を同様に例示することができる。
【0019】
11、R12、R21およびR22で表される置換基を有してもよいアリールオキシ基のアリールオキシ基部分の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。R11、R12、R21およびR22が表すアリールオキシ基のアリール部としては、上述したアリール基の例を挙げることができる。
【0020】
一般式(1)中、R11、R12、R21およびR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましく、置換基を有してもよいアルコキシ基であることがさらに好ましく、アルコキシ基の酸素原子のβ位に水素原子を持たないアルコキシ基が特に好ましい。R11、R12、R21およびR22の好ましい例としては、メトキシ基、t−ブチルメトキシ基などを上げることができ、最も好ましいものはメトキシ基である。
【0021】
本発明では、以上のように、ケテンイミン化合物のR11、R12、R21およびR22が置換基を有することにより、該ケテンイミン化合物を含むポリエステルフィルムが黄変することを抑制することができる。これは、R11、R12、R21およびR22が上記のような置換基を有することにより、ケテンイミン部の周辺に立体障害基が導入され、ポリエステル樹脂組成物中やポリエステルフィルム中において、ケテンイミン化合物が2量化することが抑制されるためである。ケテンイミン化合物の2量化は、R11、R12、R21、R22のような結合位から見たオルト位に、立体障害基を導入することにより抑制され得る。
【0022】
ケテンイミン化合物の2量化生成物の構造は、たとえば文献Tetrahedron Vol.49,6285,(1993)に示唆されている。ここでは、ケテンイミンは電気酸化により下記のように2量化していることが示されており、この2量化物は400nm以上にも吸収を有している(黄色)ことが明示されている。
【0023】
【化10】
【0024】
本発明では、R11またはR12の少なくとも一方と、R21またはR22の少なくとも一方が上記のような置換基であることが好ましい。すなわち、ケテンイミン部に連結する2つのフェニル基の両方が置換基を有することが好ましい。この場合も、置換基は、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましく、置換基を有してもよいアルコキシ基であることがさらに好ましく、アルコキシ基の酸素原子のβ位に水素原子を持たないアルコキシ基が特に好ましい。このように、ケテンイミン部に連結する2つのフェニル基の両方が立体障害基を有することにより、ケテンイミン化合物の2量化をより効果的に抑制することができ、ケテンイミン化合物を含むポリエステルフィルムの黄変を抑制することができる。
【0025】
一般式(1)においては、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15およびR25が表す置換基は、R11、R12、R21およびR22と同様であり、好ましい範囲も同様である
【0026】
11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R11、R12およびR15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、およびR21、R22およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環はベンゼン環同士の縮合環であってもよいし、ベンゼン環と脂肪環、ベンゼン環とヘテロ環、ベンゼン環と脂肪環とヘテロ環の縮合環であってもよい。中でも、ベンゼン環同士の縮合環であることが好ましい。
【0027】
3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。R3で表される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。R3が表すアルキル基は直鎖であっても分枝であっても環状であってもよい。R3が表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、シクロヘキシル基とすることがより好ましい。
3が置換基を有する場合、ケテンイミン基とカルボキシル基との反応性を低下させない限り、置換基は特に制限されることはない。置換基としては、上記の置換基を同様に例示することができる。
【0028】
3で表される置換基を有してもよいアリール基のアリール基部分の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。R3が表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。R3が置換基を有する場合、置換基としては、上記の置換基を同様に例示することができる。
アリール基にはヘテロアリール基が含まれるものとする。ヘテロアリール基とは、芳香族性を示す5員、6員又は7員の環又はその縮合環の環構成原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換されたものをいう。ヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
【0029】
一般式(1)において、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。aおよびbはそれぞれ独立に0〜2の整数を表すことが好ましく、0または1の整数を表すことがより好ましい。
【0030】
なお、一般式(1)は、繰り返し単位を含んでいてもよい。この場合、この繰り返し単位には、ケテンイミン部が含まれることが好ましい。
【0031】
また、本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0032】
【化11】
【0033】
ここで、一般式(2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。
【0034】
一般式(2)中、R11、R12、R21およびR22は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(2)中、R15およびR25は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0035】
一般式(2)中、R11、R12およびR15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、およびR21、R22およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0036】
一般式(2)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0037】
一般式(2)において、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。aは0または1の整数を表すことが好ましく、bは0〜2の整数を表すことが好ましく、0または1の整数を表すことがさらに好ましい。
【0038】
一般式(2)中、L1はn価の連結基を表し、ここで、nは1〜4の整数を表す。中でも、nは2〜4であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。
二価の連結基の具体例としては、例えば、−NR8−(R8は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、水素原子が好ましい)で表される基、−SO2−、−CO−、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、アルキニレン基、置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のビフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、−O−、−S−および−SO−ならびにこれらを2つ以上組み合わせて得られる基が挙げられる。
三価の連結基の具体例としては、例えば、二価の連結基の例として挙げた連結基のうち置換基を有するものから1つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
四価の連結基の具体例としては、例えば、例えば、二価の連結基の例として挙げた連結基のうち置換基を有するものから2つの水素原子を取り除いた基が挙げられる。
【0039】
本発明では、nを2〜4とすることにより、ケテンイミン部を一分子中に2以上有する化合物とすることができ、より優れた末端封止効果を発揮することができる。また、ケテンイミン部を一分子中に2以上有する化合物とすることにより、ケテンイミン化合物の分子量を大きくすることができ、ケテンイミン化合物やケテン化合物が揮散することを抑制することができる。さらに、ケテンイミン部を一分子中に2以上有する化合物とすることにより、ケテンイミン価(全分子量/ケテンイミンの官能基数)を低くすることができ、効率良くケテンイミン化合物とポリエステルの末端カルボキシル基を反応させることができる。
【0040】
一般式(2)中、nは3または4であることがより好ましい。nを3または4とすることにより、ケテンイミン部を一分子中に3または4つ有する化合物とすることができ、より優れた末端封止効果を発揮することができる。また、nを3または4とすることにより、より効果的にケテンイミン化合物の揮散を抑制することができる。
【0041】
本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(3−1)で表されることが好ましい。
【0042】
【化12】
【0043】
ここで、一般式(3−1)中、R11、R12およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L2は、n価の連結基を表す。
【0044】
一般式(3−1)中、R11、R12およびR22は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(3−1)中、R15およびR25は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0045】
一般式(3−1)中、R11、R12およびR15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、およびR22およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
一般式(3−1)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
一般式(3−1)において、aおよびbはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。aおよびbはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表すことが好ましく、0または1の整数を表すことがさらに好ましい。
【0048】
一般式(3−1)中、L2はn価の連結基を表し、ここで、nは1〜4の整数を表す。中でも、nは2〜4であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。L2の連結基の具体例としては、一般式(2)のL1で例示した連結基を挙げることができる。
【0049】
本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(3−2)で表されることが好ましい。
【0050】
【化13】
【0051】
ここで、一般式(3−2)中、R11、R12、R21およびR22のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。
【0052】
一般式(3−2)中、R11、R12、R21およびR22は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(3−2)中、R15およびR25は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0053】
一般式(3−2)中、R11、R12およびR15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、およびR21およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0054】
一般式(3−2)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
一般式(3−2)において、aは0〜2の整数を表し、bは0〜3の整数を表す。aは、0または1の整数を表すことが好ましい。また、bは0〜2の整数を表すことが好ましく、0または1の整数を表すことがより好ましい。
【0056】
一般式(3−2)中、L2はn価の連結基を表し、ここで、nは1〜4の整数を表す。中でも、nは2〜4であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。L2の連結基の具体例としては、一般式(2)のL1で例示した連結基を挙げることができる。
【0057】
本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(4)で表されることが好ましい。
【0058】
【化14】
【0059】
ここで、一般式(4)中、R21およびR22の少なくとも一方は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15およびR25は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。nは1〜4の整数を表し、L1はn価の連結基を表す。
【0060】
一般式(4)中、R21およびR22は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(4)中、R15およびR25は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
一般式(4)中、R15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、およびR21、R22およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0062】
一般式(4)中、R3は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
一般式(4)において、aは0〜2の整数を表し、bは0〜5の整数を表す。aは0または1の整数を表すことが好ましい。また、bは0〜3の整数を表すことが好ましく、0〜2の整数を表すことがより好ましく、0または1の整数を表すことがさらに好ましい。
【0064】
一般式(4)中、L1はn価の連結基を表し、ここで、nは1〜4の整数を表す。中でも、nは2〜4であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。L1の連結基の具体例としては、一般式(2)のL1で例示した連結基を挙げることができる。
【0065】
一般式(4)におけるR21およびR22の少なくとも一方は、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましい。さらに、一般式(4)におけるR22は、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基であることがより好ましい。
【0066】
本発明に用いるケテンイミン化合物は、下記一般式(5)で表されることが好ましい。
【0067】
【化15】
【0068】
ここで、一般式(5)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42のうち少なくとも一つは、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。R15、R25、R35およびR45は、それぞれ独立に置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。なお、R11、R12およびR15は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R21、R22およびR25は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R31、R32およびR35は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよく、R41、R42およびR45は互いに隣り合う置換基同士で縮合環を形成してもよい。R3およびR6は置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。また、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。L3は、単結合または2価の連結基を表す。
【0069】
一般式(5)中、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42は、一般式(1)におけるR11、R12、R21またはR22と同意であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(5)中、R15、R25、R35およびR45は、一般式(1)におけるR15またはR25と同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0070】
一般式(5)中、R11、R12およびR15が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、R21、R22およびR25が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、R31、R32およびR35が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環、R41、R42およびR45が互いに隣り合う置換基同士で形成する縮合環は、一般式(1)におけるそれと同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
一般式(5)中、R3およびR6は、一般式(1)におけるR3と同意であり、好ましい範囲も同様である。
【0072】
一般式(5)において、aおよびdはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜3の整数を表す。aおよびdはそれぞれ独立に、0または1の整数を表すことが好ましい。また、bおよびcはそれぞれ独立に、0〜1の整数を表すことが好ましく、0または1の整数を表すことがより好ましい。
【0073】
一般式(5)中、L3は単結合または二価の連結基を表す。二価の連結基の具体例としては、一般式(2)のL1で例示した連結基を挙げることができる。
【0074】
一般式(5)におけるR11、R12、R21、R22、R31、R32、R41およびR42の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことが好ましい。さらに、R21、R22、R31およびR32の少なくとも一つは、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表すことが好ましい。
【0075】
上述したようなケテンイミン部に連結する2つのフェニル基のオルト位の少なくとも1つに置換基が導入されたケテンイミン化合物は、マンデル酸またはその誘導体と、フェノール化合物のフリーデルクラフト反応、アミド化、フェノール保護(アルコキシ基の導入)、アミド脱水により合成することができる。
フリーデルクラフト反応は、一般的には酸を用いた脱水縮合によるラクトン環の形成、または加熱による脱水縮合によるラクトン環の形成により行うことができる。一般的なケテンイミン化合物の合成方法は下記の通りである。
【0076】
【化16】
【0077】
また、n価の連結基を有するケテンイミン化合物を合成する場合は、フェノール骨格をn価の連結基で結合し、n価のケテンイミンとしてもよいが、n価のフェノール骨格を用いてケテンイミンとして、n価のケテンイミン化合物とすることが好ましい。なお、多価フェノール母核は、n価の多価フェノールから、n個のヒドロキシ基を取り去ることで形成されるn価の残基である。フェノール置換基のオルト位に水素原子があることがケテンイミン導入の観点で必須である。オルト位に水素原子を有するn価の多価フェノールの例として、下記一般式P−1〜P−8のものを例示することができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0078】
【化17】
【0079】
なお、一般式P−1〜P−8において、R7は、水素原子、アルキル基、アリール基、L3は単結合、アルキレン基、酸素原子、硫黄原子を表し、R8は、水素原子、アルキル基、アリール基を表すものとする。
【0080】
本発明では、ケテンイミン化合物の分子量は、500以上であることが好ましい。ケテンイミン化合物の分子量は500以上であることが好ましく、600以上であることがより好ましく、630以上であることがさらに好ましい。例えば分子量は、597〜1325の範囲、597〜667の範囲、639〜667の範囲などが挙げられる。また、ケテンイミン価は、420以下であることが好ましく、380以下であることがより好ましく、340以下であることがさらに好ましい。例えばケテンイミン価は、299〜376の範囲、320〜334の範囲などが挙げられる。ここで、ケテンイミン価とは、(全分子量/ケテンイミンの官能基数)を表す。本発明では、ケテンイミン化合物の分子量上記範囲内とすることにより、ケテンイミン化合物の揮散を抑制しすることができる。さらにケテンイミン価を上記範囲内とすることにより、ポリエステルの末端カルボキシル基の封止を効率よく行うことができる。
【0081】
下記に一般式(1)の好ましい具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
【化20】
【0085】
【化21】
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】
【0089】
本発明に用いられるケテンイミン化合物は、多価フェノールから誘導されることが好ましい。これにより、多官能ケテンイミン化合物を容易に合成することができる。例えば、例示化合物19〜25、27〜50、および59〜63はケテンイミン化合物として好ましい例である。より好ましくは2官能ケテンイミン化合物を形成しうる点で例示化合物19〜25、例示化合物27〜34、例示化合物41〜50、および例示化合物59〜63である。さらに好ましくは安価に合成できPETフイルムとの相溶性に優れる点で、ビスフェノールAを基本骨格とする例示化合物21、例示化合物41〜48、または例示化合物59〜63である。もっとも好ましくは、黄着色の要因となるケテンイミン化合物の2量化体の生成を、置換基の立体効果によって顕著に抑制できる点で、例示化合物59〜63である。
【0090】
本発明のポリエステル末端カルボキシル基の化学修飾は、一般式(1)で表されるケテンイミン化合物とポリエステルを溶融状態で混合することで行うことができる。
【0091】
ケテンイミン化合物とポリエステルを溶融状態で混合することは、US3692745号公報に記載があり公知である。この公報によれば、ケテンイミン化合物とポリエステルを溶融状態で混合した場合、下記反応スキームのようにケテンイミン基とポリエステル−COOHが反応し、イミド化合物(1)が生じる。このメカニズムにより、ポリエステル末端カルボキシル基が封止されるとされている。
しかし、本発明者が詳細に検討した結果、溶融混合中にケテンイミン化合物及びケテン化合物(1)が揮散してくることが判明した。このことは、反応にてイミド化合物(1)の一部が熱によりケテン化合物(1)と、末端アミド基にて封止されたポリエステルが得られているものと推定できる。
【0092】
【化25】
【0093】
本発明では、上記反応スキームにより生成するケテン化合物(1)が揮散することも抑制することができる。ケテンイミン化合物の質量を所定の範囲内とすることにより、ケテンイミン化合物とケテン化合物の揮散を抑制することができる。
【0094】
(ポリエステル樹脂組成物)
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述したようなケテンイミン化合物とポリエステルを含む。なお、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、本発明のポリエステル樹脂組成物には、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料および染料などを含むこととしても良い。
【0095】
ポリエステルは特に限定されるものではないが、飽和ポリエステルであることが好ましい。このように飽和ポリエステルを用いることで、不飽和のポリエステルを用いたフィルムと比べて力学強度の観点で優れるポリエステルフィルムを得ることができる。
【0096】
ポリエステルは、高分子の分子鎖中に、−COO−結合、又は、−OCO−結合を有する。また、ポリエステルの末端基は、OH基、COOH基又はこれらが保護された基(ORX基、COORX基(RXは、アルキル基等任意の置換基)であって、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体と、から合成される線状飽和ポリエステルであることが好ましい。線状飽和ポリエステルとしては、例えば、特開2009−155479号公報や特開2010−235824号公報に記載のものを適宜用いることができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0097】
線状飽和ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、このうち、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが、力学的物性及びコストのバランスの点で特に好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより特に好ましい。なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリブチレンテレフタレートは製膜時に230℃以上に加熱して溶融製膜するのに対し、PETでは270℃以上に加熱して溶融製膜するため、さらにケテンイミン化合物またはケテン化合物が生成しやすいが、本発明のポリエステルフィルムでは、ポリエステルがPETの場合でもケテンイミン化合物またはケテン化合物の揮発量を低減させることができる。
【0098】
ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。また、ポリエステルとして、溶融製膜時に異方性を形成することができる結晶性のポリエステルを用いてもよい。
【0099】
ポリエステルの分子量は、耐熱性や粘度の観点から、重量平均分子量(Mw)5000〜100000であることが好ましく、8000〜80000であることが更に好ましく、12000〜60000であることが特に好ましい。ポリエステルの重量平均分子量は、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値を用いることができる。
【0100】
本発明では、ケテンイミン化合物は、ポリエステル樹脂組成物中に含まれるポリエステルに対して、0.1〜2.0質量%含有されることが好ましく、0.15〜0.95質量%含有されることがより好ましく、0.2〜0.9質量%含有されることがさらに好ましい。ケテンイミン化合物の含有率を上記範囲内とすることにより、本発明のポリエステルフィルムの耐加水分解性および膜厚均一性を改善することができる。なお、ケテンイミン化合物の含有率が上記上限値を超えると、ポリエステルフィルムが黄着色する傾向となり、上記下限値未満であると十分な耐加水分解性が得られない傾向となり好ましくない。
【0101】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、本発明のケテンイミン化合物以外の化合物を含むことを拒むものではない。例えば、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物と併用することができる。本発明のポリエステルフィルム中に含まれるポリエステル以外の有機化合物に対して、重量で70%以上が本発明のケテンイミン化合物であることが好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0102】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、顔料を含むことが好ましい。顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。中でも、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの白色顔料を用いることが好ましく、酸化チタンを用いることが特に好ましい。
【0103】
これら顔料は、入射する太陽光等の光を散乱させ、ケテンイミン化合物が持つ特有の黄色味を隠蔽(低減)する働きをする。中でも、酸化チタンは、より効果的に光を散乱させることができ、隠蔽率が高いため、好ましく用いられる。
また、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池モジュール用のバックシートに用いる場合、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からも、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料が好ましく用いられる。
【0104】
さらに、顔料は、ケテンイミン化合物とポリエステルの末端カルボキシル基が反応することにより生成されるケテン化合物の揮散を抑制する働きもする。これは、顔料の粒子表面にケテン化合物が吸着されることによって、ケテン化合物がポリエステルフィルム外に揮散しなくなるものと考えられる。このため、顔料としては、ケテン化合物との吸着性がよいものが特に好ましく用いられる。
このように、ケテン化合物の揮散が抑えられると、製造工程においてケテン化合物を含むガスの発生を抑制することができ、製造工程における作業環境を良好にすることができる。
【0105】
顔料の平均粒径は、体積平均粒径で0.03〜0.8μmであることが好ましく、0.15〜0.5μmであることがより好ましい。平均粒径を上記範囲内とすることにより、光の反射効率を高めることができる。なお、平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0106】
顔料は、ポリエステルの総量に対して、1〜10質量%となるように添加することが好ましく、2〜9質量%となるように添加することがより好ましく、3〜8質量%となるように添加することがさらに好ましい。なお、顔料は製膜したポリエステルフィルム中のポリエステルに対して、上記範囲内となるように含有されることが好ましい。
【0107】
ポリエステル中の末端カルボキシル基含量(ポリエステルの酸価、以下、AVともいう)は、ポリエステルに対して25eq/ton以下が好ましく、20eq/ton以下がより好ましく、特に好ましくは16eq/ton以下であり、より特に好ましくは15eq/ton以下である。カルボキシル基含量が25eq/ton以下であると、ケテンイミン化合物と組み合わせることでポリエステルフィルムの耐加水分解性、耐熱性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。末端カルボキシル基含量の下限は、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池モジュール用バックシートとするときに形成される層(例えば白色層)との間の密着性(接着性)を保持する点で、10eq/ton以上が望ましい。ポリエステル中の末端カルボキシル基含量は、重合触媒種、重合時間、製膜条件(製膜温度や時間)によって調整することが可能である。カルボキシル基含量は、H.A.Pohl,Anal.Chem.26(1954)2145に記載の方法に従って、滴定法にて測定することができる。具体的には、ポリエステルを、ベンジルアルコールに205℃で溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定することで、その適定量から酸価(eq/ton)を算出することができる。
【0108】
ポリエステル中の末端ヒドロキシル基含量は、ポリエステルに対して120eq/ton以下が好ましく、より好ましくは90eq/ton以下である。ヒドロキシル基含量が120eq/ton以下であると、後述の特定の位置に嵩高い官能基を有するカルボジイミドとヒドロキシル基の反応が抑制され、カルボキシル基と優先的に反応し、酸価をより低下させることができる。ヒドロキシル基含量の下限は、上層との密着性の観点で、20eq/ton以上が望ましい。ポリエステル中のヒドロキシル基含量は、重合触媒種、重合時間、製膜条件(製膜温度や時間)によって調整することが可能である。末端ヒドロキシル基含量は、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いて、1H−NMRにより測定した値を用いることできる。
【0109】
また、本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、0.70〜0.94dl/gが好ましく、0.71〜0.84dl/gが更に好ましく、0.72〜0.84dl/gが特に好ましい。ポリエステルフィルムの固有粘度は上記下限値以下であることが、製膜性を改善し、膜厚均一性を改善する観点から好ましい。
ポリエステルの固有粘度(IV)は、フィルム製膜時に使用するポリエステルが2種以上である場合(特開2011−256337号公報の回収ポリエステルを使用する場合など)、すべてのポリエステルを混合したポリエステルの固有粘度が、上記範囲を満たすことが好ましい。
ポリエステルの固有粘度(IV)は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、25℃で測定した溶液粘度から、下式より固有粘度を得た。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量であり(本測定では1g/100mlとする)、Kはハギンス定数(0.343とする)であり、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0110】
ポリエステルは公知の方法によって合成することができる。例えば、公知の重縮合法や開環重合法などによってポリエステルを合成することができ、エステル交換反応及び直接重合による反応のいずれでも適用することができる。
【0111】
本発明で用いるポリエステルが、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応又はエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させることによって製造することができる。また、原料物質や反応条件を選択することにより、ポリエステルの酸価や固有粘度を制御することができる。なお、エステル化反応又はエステル交換反応及び重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合触媒を添加することが好ましい。
【0112】
ポリエステルを重合する際の重合触媒としては、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Al系、Sb系、Ge系、及びTi系の化合物を用いることが好ましいが、特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1〜30ppm、より好ましくは3〜15ppmの範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0113】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624、特許第3335683、特許第3717380、特許第3897756、特許第3962226、特許第3979866、特許第3996871、特許第4000867、特許第4053837、特許第4127119、特許第4134710、特許第4159154、特許第4269704、特許第4313538等に記載の方法を適用でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0114】
ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましい酸価を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固層重合には、特許第2621563、特許第3121876、特許第3136774、特許第3603585、特許第3616522、特許第3617340、特許第3680523、特許第3717392、特許第4167159等に記載の方法を適用することができ、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0115】
固相重合の温度は、170〜240℃が好ましく、より好ましくは180〜230℃であり、さらに好ましくは190〜220℃である。また、固相重合時間は、5〜100時間が好ましく、より好ましくは10〜75時間であり、さらに好ましくは15〜50時間である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0116】
(ポリエステルフィルム)
本発明は、上述したポリエステル樹脂組成物から作成されるポリエステルフィルムに関する。
【0117】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、用途によって異なるが、太陽電池モジュール用バックシートの部材として用いる場合には、25μm〜300μmであることが好ましく、120〜300μmであることがより好ましい。厚みが25μm以上であることで、十分な力学強度が得られ、300μm以下とすることで、コスト上のメリットが得られる。
【0118】
本発明のポリエステルフィルムは延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがさらに好ましく、平面二軸延伸されていることがチューブラーなどの延伸と比較して特に好ましく、逐次二軸延伸されていることがより特に好ましい。本発明のポリエステルフィルムのMD(Machine Direction:長手方向)配向度、及び、TD(Transverse Direction:幅方向)配向度は、それぞれ0.14以上であることが好ましく、0.155以上が更に好ましく、0.16以上が特に好ましい。各配向度が0.14以上であると、非晶鎖の拘束性が向上し(運動性が低下)、耐加水分解性が向上する。MD及びTD配向度は、アッベの屈折率計を用い、光源としては単色光ナトリウムD線を用い、マウント液としてはヨウ化メチレンを用いて25℃雰囲気中で二軸配向フィルムのx、y、z方向の屈折率を測定し、MD配向度:Δn(x−z)、TD配向度;Δn(y−z)から算出することができる。
【0119】
また、本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、0.70〜0.94dl/gが好ましく、0.71〜0.84dl/gが更に好ましく、0.72〜0.84dl/gが特に好ましい。ポリエステルフィルムの固有粘度は上記下限値以下であることが、製膜性を改善し、膜厚均一性を改善する観点から好ましい。
【0120】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、本発明のポリエステルフィルムには、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料および染料などが添加されてもよい。
【0121】
(ポリエステルフィルムの製造方法)
(フィルム形成工程)
フィルム形成工程においては、本発明のポリエステルフィルムを形成するための樹脂組成物に含まれるポリエステルおよびケテンイミン化合物を溶融させた溶融体をギアポンプや濾過器を通し、その後、ダイを介して冷却ロールに押出し、これを冷却固化させることで(未延伸)フィルムを形成することができる。なお、押出された溶融体は、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させることができる。この際、冷却ロールの表面温度は、おおよそ10℃〜40℃とすることができる。
【0122】
(延伸工程)
フィルム形成工程によって形成された(未延伸)フィルムは、延伸工程において、延伸処理を施すことができる。延伸工程においては、冷却ロールで冷却固化させた(未延伸)フィルムに1つまたは2つの方向に延伸されることが好ましく、2つの方向に延伸されることがより好ましい。2つの方向への延伸(二軸延伸)は、長手方向(MD:Machine Direction)の延伸(以下「縦延伸」ともいう)及び幅方向(TD:Transverse Direction)の延伸(以下、「横延伸」ともいう)であることが好ましい。当該縦延伸、横延伸は各々1回で行っても良く、複数回に亘って実施しても良く、同時に縦、横に延伸してもよい。
延伸処理は、フィルムのガラス温度(Tg)℃〜(Tg+60)℃で行うのが好ましく、より好ましくはTg+3℃〜Tg+40℃、さらに好ましくはTg+5℃〜Tg+30℃である。
【0123】
好ましい延伸倍率は少なくとも一方に280%〜500%、より好ましくは300%〜480%、さらに好ましくは320%〜460%である。二軸延伸の場合、縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×(延伸後の長さ)/(延伸前の長さ)
【0124】
二軸延伸処理は、例えば、フィルムのガラス転移温度である(Tg1)℃〜(Tg1+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上、合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後、(Tg1)℃〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるよう施すことができる。
【0125】
二軸延伸処理は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸することができ(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げておこなうことができる(横延伸)。
【0126】
延伸工程においては、延伸処理の前又はその後、好ましくは延伸処理後に、フィルムに熱処理を施すことができる。熱処理を施すことによって、微結晶を生成し、力学特性や耐久性を向上させることができる。180℃〜210℃程度(更に好ましくは、185℃〜220℃)で1秒間〜60秒間(更に好ましくは2秒間〜30秒間)の熱処理をフィルムに施してもよい。
【0127】
延伸工程においては、熱処理後、熱緩和処理を施すことができる。熱緩和処理とは、フィルムに対して応力緩和のために熱を加えて、フィルムを収縮させる処理である。熱緩和処理は、フィルムのMD及びTDの両方向に施すことが好ましい。熱緩和処理における諸条件は、熱処理温度より低い温度で処理することが好ましく、130℃〜220℃が好ましい。また、熱緩和処理は、フィルムの熱収縮率(150℃)がMD及びTDがいずれも1〜12%であることが好ましく、1〜10%が更に好ましい。尚、熱収縮率(150℃)は、測定方向350mm、幅50mmのサンプルを切り出し、サンプルの長手方向の両端近傍300mm間隔に標点を付け、150℃の温度に調整されたオーブンに一端を固定、他端をフリーで30分間放置し、その後、室温で標点間距離を測定し、この長さをL(mm)とし、かかる測定値を用いて、下記式にて熱収縮率を求めることができる。
150℃熱収縮率(%)=100×(300−L)/300
また、熱収縮率が正の場合は縮みを、負は伸びを表わす。
【0128】
以上説明したように、上述の方法によって、耐加水分解性に優れたフィルムを作製することができる。本発明のポリエステルフィルムは、後述するように太陽電池モジュールの保護シート(太陽電池モジュール用バックシート)として好適に用いることができるのみならず、他の用途にも用いることができる。
また、本発明のフィルムは、その上に、COOH、OH、SO3H、NH2及びその塩から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む塗布層を設けた積層体として用いることもできる。
【0129】
[太陽電池モジュール用バックシート]
本発明のポリエステルフィルムは、その上に易接着層等の塗布層を設けた積層フィルムとして用いることもできる。本発明のポリエステルフィルムや積層フィルムは、様々な用途に用いられるが、太陽電池モジュール用バックシート(太陽電池モジュールの保護シート)として好適に用いられる。本発明のポリエステルフィルムは、優れた密着性や耐湿熱性を有するため、太陽電池モジュール用バックシートに用いた場合、長期間に亘って太陽電池モジュールを保護することができ、太陽電池モジュールの発電効率を損ねることがない。また、本発明のポリエステルフィルムは、黄変することが抑制されているため、太陽電池モジュールの意匠性を損ねたりすることもない。
【0130】
本発明のポリエステルフィルムに、下記のような機能性層を積層することで太陽電池モジュール用バックシートを形成することができる。機能性層を積層する際に、易接着層を間に設けることが好ましい。なお、機能性層を積層する前に、ポリエステルフィルムの表面を表面処理することが好ましく、例えば、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等を施すことができる。
【0131】
<反射層(着色層)>
本発明のバックシートは内側面(封止材に接着する側)に光の反射層を設けることが好ましい。反射層を設けることにより太陽電池モジュールに入射した太陽光のうち、太陽電池セルをすり抜けてバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことが可能になる。これにより、発電効率を向上させることができる。
更に、反射層は封止材に対して10N/cm以上、より好ましくは20N/cm以上の接着強度を持つことが好ましい。
【0132】
(バインダー)
初めに反射層のバインダーについて述べる。本発明の反射層のバインダーとしてはアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系ポリマー等を用いることができるが、この中ではポリオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0133】
本発明の反射層は、封止材との接着性をより向上させるため、エポキシ系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等の架橋剤を含有することが好ましい。
これらの架橋剤のうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。本発明で用いられるカルボジイミド系架橋剤は分子内に1つ以上のカルボジイミド基を持つ化合物である。
【0134】
本発明の反射層には反射率を上げる目的で白色顔料を添加することが好ましい。
好ましい白色顔料としては、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等を挙げることができる。これらの内で白色度、反射率、耐久性の観点から酸化チタンは特に好ましい。酸化チタンにはルチル、アナターゼ、ブルカイトの3種類の結晶系があるが、高い屈折率と白色度、及び低い光触媒活性からルチル型の結晶構造を持つものが好ましい。
【0135】
本発明の反射層には必要に応じて界面活性剤、防腐剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げることができる。アニオン系界面活性剤としてはアルキル硫酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩などがあり、ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルなどがある。また、パーフロロアルキル硫酸ナトリウム塩のようなフッ素系界面活性剤も好ましい。
【0136】
本発明の反射層の厚みは3〜10μm、より好ましくは4〜8μmの範囲が好ましい。
反射層の厚みを3〜10μmの範囲にすることで、必要な反射率と接着性を両立することができる。
【0137】
本発明の反射層を塗布する方法には特に制限はなく、ロールコート法、バーコーター法スライドダイ法、グラビアコーター法などの公知の塗布方法を用いることができる。
塗布溶媒にも制約はなく、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンのような有機溶剤系の溶媒を用いても、水を溶媒として用いてもよい。しかし、環境負荷が小さいことを考えると水を溶媒とした塗布は特に好ましい。塗布溶媒は単独で用いても混合して用いてもよい。特に水系の塗布溶媒の場合、水に水混和性の有機溶剤を少量加えた混合溶媒として用いてもよい。
反射層の乾燥にも特に制限はないが、乾燥時間の短縮化の観点から120〜200℃程度の温度で1〜10分間程度乾燥させることが好ましい。乾燥温度が120℃未満の場合、乾燥時間が長くなり製造をする上で不利である。逆に200℃を超えると得られるバックシートの平面性が損なわれる場合がある。
【0138】
<オーバーコート層>
本発明のバック層には封止材との接着性を向上させる目的で反射層の上にオーバーコート層を設けてもよい。
【0139】
オーバーコート層のバインダーとしては反射層のところで述べたものを好ましく用いることができる。
【0140】
オーバーコート層の架橋剤種としては反射層のところで述べたものを好ましく用いることができる。
オーバーコート層の架橋剤の含有量としては、オーバーコート層を構成するバインダーに対して、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、40質量%以下とすると塗布液のポットライフをより長く保つことができる。
【0141】
オーバーコート層のその他の添加剤の種類と添加量としては反射層のところで述べたものを好ましく用いることができる。
【0142】
オーバーコート層の膜厚は0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmの範囲が好ましい。オーバーコート層の厚みを0.1〜1.0μmの範囲にすることで、封止材との強固な接着性を得ることができる。
【0143】
オーバーコート層の塗布方法、塗布溶媒、乾燥方法については反射層のところで述べたものや方法を好ましく用いることができる。
【0144】
<裏面層>
本発明のバックシートは外側面(太陽電池セルの反対側の面)に支持体を保護するための裏面層を設ける。
【0145】
初めに裏面層のバインダーについて説明する。裏面層のバインダーとしては耐久性と支持体との接着性の点から以下に述べるシリコーン系複合ポリマーを用いることが好ましい。本発明のシリコーン系複合ポリマー(以降「複合ポリマー」と言う場合がある)は、分子中に−(Si(R1)(R2)−O)n−部分と該部分に共重合するポリマー構造部分を含むポリマーである。
【0146】
裏面層のバインダーとしてシリコーン系複合ポリマーを用いることにより、裏面層と支持体の間の接着性を特に良好にすることが可能になり、長期間経時させても接着性の低下を小さく保つことが可能になる。
【0147】
シリコーン系複合ポリマーは水系のポリマー分散物(いわゆるラテックス)の形とすることが好ましい。シリコーン系複合ポリマーのラテックスの好ましい粒径は50〜500nm程度であり、好ましい濃度は15〜50質量%程度である。
本発明のシリコーン系複合ポリマーは水系のポリマーをラテックスの形態とする場合、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミド基などの水親和性の官能基を持つものであることが好ましい。本発明のシリコーン系複合ポリマーがカルボキシル基を持つ場合、カルボキシル基はナトリウム、アンモニウム、アミンなどで中和されていてもよい。
また、ラテックスの形態で使用する場合、安定性を向上させるために界面活性剤(例:アニオン系やノニオン系界面活性剤)、ポリマー(例:ポリビニルアルコール)等の乳化安定剤を含有させてもよい。さらに、必要に応じてpH調整剤(例:アンモニア、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム等)、防腐剤(例:1、3、5−ヘキサヒドロ――(2−ヒドロキシエチル)―s―トリアジン、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール等)、増粘剤(例:ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース等)、造膜助剤(例:ブチルカルビトールアセテート等)等のラテックスの添加剤として公知の化合物を添加してもよい。
【0148】
本発明の裏面層には支持体への接着性を向上させるため架橋剤を添加する事が好ましい。架橋剤の種類については反射層のところで述べたものを使用することができる。
架橋剤の含有量としては、裏面層を構成するバインダーに対して、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、5質量%以上であると、支持体との接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、40質量%以下とすると塗布液のポットライフをより長く保つことができる。
【0149】
本発明の裏面層には紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
紫外線吸収剤の例としては、例えば、有機系の紫外線吸収剤の場合は、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。
また、無機系の紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、などの金属酸化物や、カーボン、フラーレン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの炭素系成分等が挙げられる。 これらの中でコストと耐久性の観点から酸化チタンは特に好ましい。
裏面層の紫外線吸収剤添加量は紫外線吸収剤の種類によっても異なるが、0.2〜5g/m2、より好ましくは0.3〜3g/m2の範囲が好ましい。
【0150】
裏面層には反射層の反射率を補う目的で白色顔料を添加してもよい。白色顔料の種類については反射層のところで述べた白色顔料を好ましく使用することができる。
裏面層の白色顔料の添加量は0.3〜10g/m2、より好ましくは4〜9g/m2の範囲が好ましい。添加量を0.3〜10g/m2とすることで良好な接着性と反射率向上を両立できる。なお、白色顔料として酸化チタンを用いる場合は顔料と紫外線吸収剤を兼ねることができる。裏面層のその他の添加剤の種類と添加量としては反射層のところで述べたものを好ましく用いることができる。
【0151】
反射層の厚みは3〜12μm、より好ましくは4〜8μmの範囲が好ましい。
裏面層の厚みを3〜12μmの範囲にすることで、必要な耐久性と接着性を両立することができる。
【0152】
裏面層の塗布方法、塗布溶媒、乾燥方法については反射層のところで述べたものや方法を好ましく用いることができる。
【0153】
<裏面保護層>
本発明のバックシートでは、耐久性をさらに向上させる目的で裏面層の上に裏面保護層を設けてもよい。
【0154】
本発明の裏面保護層のバインダーは耐久性の観点からフッ素系ポリマーが好ましい。
本発明で好ましく用いることができるフッ素系ポリマーは、主鎖又は側鎖にフッ素含有モノマーを含むポリマーである。フッ素含有モノマーは主鎖、側鎖のどちらに含まれていてもよいが、耐久性の観点から主鎖に含まれている事が好ましい。
【0155】
本発明のフッ素系ポリマーをラテックス形態で使用する場合、粒径は50〜500nm程度が好ましく、固形分濃度は15〜50質量%程度が好ましい。
本発明のフッ素系ポリマーは水系のポリマーをラテックスの形態とする場合、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、アミド基などの水親和性の官能基を持つものであることが好ましい。
【0156】
本発明の裏面保護層には支持体への接着性を向上させるため架橋剤を添加する事が好ましい。架橋剤の種類については反射層のところで述べたものを使用することができる。
【0157】
本発明の裏面保護層には必要に応じてすべり剤を添加してもよい。
すべり剤としては、例えば、合成ワックス系化合物、天然ワックス系化合物、界面活性剤系化合物、無機系化合物、有機樹脂系化合物などが挙げられる。中でも、ポリマー層の表面強度の点で、合成ワックス系化合物、天然ワックス系化合物、及び界面活性剤系化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0158】
本発明の裏面保護層には必要に応じてコロイダルシリカを添加してもよい。
本発明で使用できるコロイダルシリカは、ケイ素酸化物を主成分とする微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒として微粒子状態で存在するものである。
【0159】
裏面保護層のその他の添加剤の種類と添加量としては反射層のところで述べたものを好ましく用いることができる。
【0160】
裏面保護層の厚みは0.5〜6μm、より好ましくは1〜5μmの範囲が好ましい。裏面保護層の厚みが0.5未満になると耐久性が不充分になる場合があり、6μmを超えるとコスト上不利である。
【0161】
裏面保護層の塗布方法、塗布溶媒、乾燥方法については反射層のところで述べたものや方法を好ましく用いることができる。
【0162】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、本発明のポリエステルフィルムまたは本発明の太陽電池モジュール用バックシートを含むことを特徴とする。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明のポリエステルフィルム(太陽電池用バックシート)との間に配置して構成されている。基板とポリエステルフィルムとの間は、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂(いわゆる封止剤)で封止して構成することができる。
【0163】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0164】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0165】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0166】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0167】
本発明の一般式(1)で表されるケテンイミン化合物であって、以下の構造のケテンイミン化合物を末端封止剤として、各実施例に用いた。なお、以下の記載において「DMSO」はジメチルスルホキシドの略号である。
【0168】
【化26】
【0169】
(合成例1)
例示化合物1の合成
メシチレン2.4g(20mmol)とグリオキシル酸一水和物0.8g(9mmol)に、メタンスルホン酸50mLと酢酸50mLを加え、80℃で4時間攪拌した。これを酢酸エチルで抽出し蒸留水で洗浄したのち濃縮して白色固体を得た。これをジクロロメタン100mLに溶解させたのち塩化チオニル1.18g(10mmol)を滴下し6時間加熱還流した。残存した塩化チオニルを減圧溜去しアニリン1.9g(20mmol)を加えて70℃で2時間攪拌した。これを酢酸エチルで抽出し、1N塩酸水溶液で洗浄し、有機層を減圧濃縮して白色固体を得た。
これをクロロホルム50mLに溶解させ、トリエチルアミン1.02g(10mmol)、トリフェニルホスフィン2.1g(8mmol)、四塩化炭素1.27g(8mmol)を加えて65℃で6時間反応させた。これに酢酸エチルを加えてろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製することで例示化合物1を1.2g(3.3mmol 33%収率、黄色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):2.12(s,12H)、2.17(s、6H)、7.0−7.5(m、5H)
【0170】
(合成例2)
例示化合物5の合成
ヒドロキノン138g(1.25mol)とマンデル酸76g(0.50mol)に73%硫酸300mLを加えて100℃で30分間加熱攪拌した。2Lの氷水に開け、生じた薄桃色固体をろ取し純水で洗浄した。さらにトルエン500mLで再結晶を行うことで中間体5Aを102g(0.45mmol、90%収率、薄桃色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):5.28(s、1H)、6.54(s、1H)、6.74(d、1H)、7.10(d、1H)、7.31(d、2H)、7.3−7.5(m、3H)
【0171】
中間体5A 15.0g(66.3mmol)にアニリン30.7g(0.33mol)を加え125℃で2時間加熱攪拌した。室温に冷却したのち酢酸エチル200mLを加え、生じた白色固体をろ取し、さらに酢酸エチルで洗浄し風乾することで中間体5Bを21.0g(66.1mmol、99%収率、白色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):5.34(s、1H)、6,45(s、1H)、6.62(d、2H)、7.01(t、H)、7.2−7.4(m、7H)、7.64(d、2H)、8.60(s、1H)、8.94(s、1H)、10.30(s、1H)
【0172】
中間体5B7.5g(23.5mmol)と炭酸カリウム19.3g(0.14mol)を100mLフラスコに加えて窒素で置換した。窒素雰囲気中でアセトン30mlとヨードメタン19.8g(0.14mol)を加えて室温で6時間攪拌した。その後純水300mLに晶析し、ろ取、乾燥の後、メタノールで再結晶することで中間体5Cを6.2g(17.8mmol,76%収率、白色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):3.63(s、3H)、3.70(s、3H)、5.38(s、1H)、6.70(s、1H)、6.81(d、1H)、6.92(d、1H)、7.02(t、1H)、7.2−7.4(m、7H)、7.61(d、2H)、10.3(s、1H)
【0173】
中間体5C 16.1g(46.4mmol)をクロロホルム100mLに溶解し、トリフェニルホスフィン15.8g(60.3mmol)とトリエチルアミン9.4g(92.8mmol)、さらに四塩化炭素9.6g(60.3mmol)を加え65℃で8時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ヘキサン400mLに晶析した。ろ液を濃縮しカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製することで例示化合物5を10.2g(収率67%、黄色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):3.63(s、6H)、6.64(s、1H)、6.86(d、1H),7.03(d、1H)、7,25(t、3H),7.3−7.5(m、7H)
【0174】
【化27】
【0175】
(合成例3)
例示化合物18の合成
中間体5B(4.2mmol)をアセトンに溶解し、炭酸カリウム(4.2mmol)とペンタエリトリトールテトラブロミド(1.0mmol)を加えて60℃で2時間加熱攪拌した。その後室温に戻し炭酸カリウム(8.4mmol)とヨードメタン(8.4mmol)を加えて室温下で4時間攪拌した。これを純水に晶析し得られた白色固体をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することで中間体18Aを得た。1H−NMR(DMSO−d6):3.65(s、12H)、4.30(s、8H)、5.40(s、4H)、6.75(s、4H)、6.78(d、4H)、6.90(d、4H)、7.06(t、4H)、7.2−7.4(m、28H)、7.65(d、8H)、10.1(s、4H)
【0176】
中間体18A 2.3g(1.6mmol)をクロロホルム30mLに溶解し、トリフェニルホスフィン2.6g(9.9mmol)とトリエチルアミン1.3g(13.2mmol)、さらに四塩化炭素1.0g(6.6mmol)を加え65℃で8時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ヘキサン200mLに晶析した。ろ液を濃縮しカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製することで例示化合物18を1.2g(黄色固体、収率78%)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):3.63(s、12H)、4.32(s、8H)、6.64(s、4H)、6.86(d、4H)、7.03(d、4H)、7.25(t、12H)、7.3−7.5(m、28H)
【0177】
【化28】
【0178】
(合成例4)
例示化合物21の合成
ビスフェノールA 40g(0.175mol)とマンデル酸64g(0.21mol)を300mLフラスコに加え、220℃で減圧し発生する水をディーンスタークトラップで溜去しながら6時間加熱攪拌した。室温に冷却し酢酸エチルで溶解抽出し蒸留水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥して有機層を濃縮し中間体21を72g(0.158mol、収率90%、オレンジ色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):1.54(s、6H)、5.30(s、2H)、7.01(s、2H)、7.12(d、4H)、7.18(s、4H)、7.32(m、6H)
【0179】
中間体21A 13.6g(29.5mmol)をアニリン27.9g(0.3mol)に溶解し120℃で3時間加熱攪拌した。反応液をメタノールで希釈し1N塩酸水に晶析させ、生じた固体をろ取し風乾することで中間体21Bを17.2g(26.2mmol、89%収率、淡黄色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):1.35(s、6H)、5.29(s、2H)、6.62(d、2H)、6.74(d、2H)、7.0−7.3(m、18H)、7.56(m、4H)、9.43(s、2H)、10.26(s、2H)
【0180】
中間体21B 20.0g(30.9mmol)をアセトンに溶解し、炭酸カリウム16.6g(0.12mol)とヨードメタン17.0g(0.12mol)を加えて室温下で7時間攪拌した。これを酢酸エチルで抽出し蒸留水で洗浄後、有機層を乾燥濃縮しカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で精製することで中間体21C 7.6g(11.3mmol、37%収率、白色固体)を得た。1H−NMR(DMSO−d6):1.37(s、6H)、3.68(s、6H)、5.31(s、2H)、6.79(d、2H)、6.9−7.2(m、20H)、7.53(t、4H)、10.2(s、2H)
【0181】
中間体21C 7.2g(10.7mmol)をクロロホルム50mLに溶解し、トリフェニルホスフィン7.3g(27.9mmol)とトリエチルアミン4.3g(42.8mmol)、さらに四塩化炭素4.4g(27.9mmol)を加え65℃で8時間加熱攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、ヘキサン/酢酸エチル=2/1 200mLに晶析した。ろ液を濃縮しカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/2)で精製することで例示化合物21を5.1g(7.9mmol,74%収率、黄色固体)で得た。1H−NMR(DMSO−d6):1.47(s、6H)、3.62(s、6H)、6.83(s、2H)、6.99(dd、6H)、7.13(m、4H)、7.22(t、4H)、7.31(m、6H)、7.42(t、4H)
【0182】
【化29】
【0183】
(合成例5)
例示化合物22の合成
例示化合物21の合成において、ビスフェノールAの代わりにビフェノールを用いたこと以外は同様の方法にて例示化合物22を合成した。1H−NMR(DMSO−d6):3.72(s、6H)、7.1−7.5(m、26H)
【0184】
(合成例6)
例示化合物41の合成
例示化合物21の合成において、アニリンの代わりにo-トルイジンを用いたこと以外は同様の方法にて例示化合物41を合成した。1H−NMR(DMSO−d6):1.47(s、6H)、2.23(s、6H)、3.67(s、6H)、6.8−7.6(m24H)
【0185】
(合成例7)
例示化合物45の合成
例示化合物21の合成において、マンデル酸の代わりに2−ヒドロキシー2−(2,4,6−トリメチルフェニル)−プロピオン酸を用い、アニリンの代わりにo−トルイジンを用いたこと以外は同様の方法にて例示化合物45を合成した。1H−NMR(DMSO−d6):1.31(s、6H)、2.09(s、6H)、2.12(s、12H)、2.17(s、6H)、3.44(s、6H)、6.7−7.2(m、18H)
【0186】
(合成例8)
例示化合物61の合成
酢酸750ml、p−メチルアニソール610g(5.0モル)、グリオキシル酸一水和物437g(4.75モル)を5L三口フラスコに仕込み、内温が5〜10℃となるように氷浴で冷却しながらメタンスルホン酸750mLを滴下した後2時間攪拌した。その後、p−クレゾール650g(6.0モル)を加え、60℃で2時間攪拌した。この反応液を氷浴で20℃に冷却し、エタノール2.5Lを加え、析出した固体をろ取することで中間体61Aを910g(3.4モル)で得た。
1H−NMR(DMSO−d6):2.25(s、3H)、2.30(s、3H)、3.55(s、3H)、5.19(s、1H)、6.8−7.2(m、6H)
【0187】
トルエン1.8L、中間体61C 900g(3.35モル)、m−トルイジン540g(5.0モル)を5L三口フラスコに仕込み、70℃で20時間攪拌した。その後、この反応液を氷浴で20℃に冷却し、エタノール2.0Lを加え、析出した固体をろ取することで中間体61Bを1127g(3.0モル)で得た。
1H−NMR(DMSO−d6):2.18(s、3H),2.21(s,3H),2.28(s,3H)、3.74(s、3H)、5.58(s、1H)6.6−6.9(m、6H)、7.0−7.2(m、2H)、7.3−7.6(m、2H)、9.24(s、1H)、10.09(s、1H)
【0188】
アセトン5.0L、中間体61B 1100g(2.93モル)、ジブロモブタン301g(1.4モル)、炭酸カリウム1200g(8.8モル)を10L三口フラスコに仕込み、60℃で24時間攪拌した。その後、この反応液を氷浴で20℃に冷却し、4N塩酸水溶液4.0Lを加え、析出した固体をろ取した。アセトニトリル8.5Lと得られた固体を10L三口フラスコに仕込み、70℃で1時間攪拌した。この反応液を氷浴で20℃に冷却し、固体をろ取することで中間体61Cを800g(1.0モル)で得た。
1H−NMR(DMSO−d6):1.52(s、4H),2.18(s、6H),2.21(s、6H),2.28(s,3H)、3.50(s、4H),3.72(2,6H),3.57(s,2H),6.60(m、4H),6.8−7.2(m、12H),7.4−7.6(m,4H),10.08(s,2H)
【0189】
トルエン4.0L、中間体61C 800g(1.0モル)、トリエチルアミン807g(8.0モル)を10L三口フラスコに仕込み、内温が15℃以下となるように氷浴で冷却しながらオキシ塩化リン460g(3.0モル)を滴下し、5時間攪拌した。その後、この反応液を水浴で20℃まで冷却した後、5%NaHCO3水溶液で2回、5%NaCl水溶液で1回分液処理を行い、硫酸マグネシウム100g加え1時間攪拌した。反応液から硫酸マグネシウムをろ過して除去した後、減圧濃縮した。得られた濃縮物にメタノールを加え、析出した固体をろ取することで例示化合物(61)を615g(0.8モル)で得た。
1H−NMR(DMSO−d6):1.31(s、4H),2.19(s,6H),2.21(s,6H),2.29(s、6H),3.62(s、4H),3.71(s、6H),6.59(s、2H)、6.76(d、2H),6.82(s、2H),6.9−7.3(m、14H)
【0190】
【化30】
【0191】
ケテンイミン系の末端封止剤として、以下の化合物を各比較例に用いた。なお、比較例で用いたケテンイミン化合物の比較例1(分子量269)及び比較例2(分子量550)は米国特許3692745号公報の実施例に記載のmonoおよびbisで表される化合物である。
【化31】
【0192】
(実施例1)
1.飽和ポリエステル樹脂の作製
−工程(A)−
高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンとを90分間かけて混合してスラリーを形成し、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。次いで、クエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(「VERTEC AC−420」、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に第一エステル化反応槽に供給し、反応槽内温度250℃として攪拌しながら平均滞留時間約4.4時間で反応を行なってオリゴマーを得た。この際、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。得られたオリゴマーの酸価は500eq/tonであった。
【0193】
得られたオリゴマーを第二エステル化反応槽に移送し、反応槽内温度250℃・平均滞留時間1.2時間で攪拌して反応させ、酸価が180eq/tonのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が第1ゾーン〜第3ゾーンまでの3つのゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で75ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。なお、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液は、25℃のエチレングリコール液に、25℃のリン酸トリメチル液を加え、25℃で2時間攪拌することにより調製した(溶液中のリン化合物含有量:3.8質量%)。
以上により、エステル化反応生成物を得た。
【0194】
−工程(B)−
工程(A)で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給した。次いで、反応温度270℃・反応槽内圧力20torr(2.67×10-3MPa)でエステル化反応生成物を攪拌しながら、平均滞留時間約1.8時間で重縮合(エステル交換反応)させた。
【0195】
次いで、得られた反応物を、第一重縮合反応槽から第二重縮合反応槽に移送した。その後、反応物を第二重縮合反応槽反応槽において、反応槽内温度276℃・反応槽内圧力5torr(6.67×10-4MPa)で攪拌し、滞留時間約1.2時間の条件で反応(エステル交換反応)させた。
【0196】
次いで、エステル交換反応によって得られた反応物を、第二重縮合反応槽から、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力1.5torr(2.0×10-4MPa)で攪拌しながら、滞留時間1.5時間の条件で反応(エステル交換反応)させ、酸価:22eq/ton、IV(固有粘度):0.65dl/gの反応物(ポリエチレンテレフタレート(PET))を得た。
【0197】
更に、連続固相重合装置を用いて、窒素気流下で、得られたPETに205℃で24時間加熱処理(固相重合)を行った。なお、固相重合時間を長くすることでIVは増加しAVは減少し易く、固相重合温度を上げることでAVは増加しIVは低下し易い。
その後、真空重合装置内に、25℃の窒素ガスを流し、ペレットを25℃まで、冷却し、酸価15eq/ton、IVが0.78dl/gのPETを得た。
【0198】
2.ポリエステルフィルムの作製と評価
−押出成形(合成工程・フィルム形成工程)−
得られた上述のPETを直径50mmの2軸混練押出し機のホッパーに主フィーダーで投入し、副フィーダーに本発明の例示化合物1を投入し、280℃で溶融して押出した。押出した溶融体(メルト)をギアポンプ及び濾過器(孔径20μm)を通した後、ダイから20℃の冷却ロールに押出し、非晶性シートを得た。なお、押出されたメルトは、静電印加法を用い冷却ロールに密着させた。
【0199】
−延伸(二軸延伸工程)−
冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、厚み175μmのポリエステルフィルムを得た。
<延伸方法>
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を90℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.5倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した上記のフィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:100℃
・延伸温度:110℃
・延伸倍率:4.2倍
・延伸速度:70%/秒
【0200】
−熱固定・熱緩和−
続いて、縦延伸及び横延伸を終えた後の延伸フィルムを下記条件で熱固定した。さらに、熱固定した後、テンター幅を縮め下記条件で熱緩和した。
<熱固定条件>
・熱固定温度:198℃
・熱固定時間:2秒
<熱緩和条件>
・熱緩和温度:195℃
・熱緩和率:5%
【0201】
−巻き取り−
熱固定及び熱緩和の後、ポリエステルフィルムの両端を10cmずつトリミングした。その後、両端に幅10mmで押出し加工(ナーリング)を行なった後、張力25kg/mで巻き取った。なお、幅は1.5m、巻長は2000mであった。
以上のようにして、実施例1のポリエステルフィルムを作製した。得られたサンプルフィルムはブツや皺などなく面状も良好であった。
【0202】
[実施例2〜23、比較例1〜3]
下記表1に記載のケテンイミン化合物、添加量及び顔料の添加条件を変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のポリエステルフィルムを製造した。
【0203】
−プロセス評価−
<揮散>
得られたポリエステルフィルムに対して、290℃で10分の加熱処理を行い、発生したガス(ケテンイミン化合物)を検出した。発生したガスは、フィルム中の揮散成分の量をガスクロマトグラフィ(商品名P&T−GC/MS、日本分光(株)社製)により測定し、評価した。得られた結果を下記表1に記載した。
A: ガス量が0.1ppm以下
B: ガス量が0.1ppm以上10ppm未満
C: ガス量が10ppm以上1000ppm未満
D: ガス量が1000ppm未満
【0204】
−ポリエステルフィルムの性能−
<耐加水分解性(PCT試験)>
耐加水分解性(耐湿熱性)の評価は破断伸度保持率半減期で評価した。破断伸度保持率半減期は、実施例1にて得られたポリエステルフィルムに対して、120℃、相対湿度100%の条件で保存処理(加熱処理)を行い、保存後のポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)が、保存前のポリエステルフィルムが示す破断伸度(%)に対して50%となる保存時間を測定することで評価した。得られた結果を下記表1に記載した。
A:破断伸度半減期が200時間以上
B:破断伸度半減期が170時間以上200時間未満
C:破断伸度半減期が140時間以上170時間未満
D:破断伸度半減期が140時間未満
破断伸度保持率半減期が長い程、ポリエステルフィルムの耐加水分解性が優れていることを示す。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、120℃、相対湿度100%の条件で保存処理した前後の破断伸度半減期が130時間以上であることが好ましく、160時間以上であることがより好ましい。
【0205】
<色味>
得られたポリエステルフィルムの透過率を測定し、この値からYI(Yellowness Index)値を計算した。
A:YI値が0以上10未満
B:YI値が10以上20未満
C:YI値が20以上40未満
D:YI値が40以上
【0206】
各実施例および比較例において、上記の評価を行った結果を下記表1に記載した。なお、表1において、ケテンイミン価とは、全分子量/ケテンイミンの官能基数を表す。
【0207】
【表1】
【0208】
実施例1〜23のポリエステルフィルムは、上述した一般式(1)で表されるケテンイミン化合物を含むため、耐湿熱性(耐加水分解性)に優れ、ポリエステルフィルムの黄着色が抑制されていることがわかる。中でも、実施例9〜23のポリエステルフィルムは、全分子量が500以上のケテンイミン化合物を含むため、製造工程中のケテンイミン化合物の記載が大幅に抑制されていることがわかる。
また、表1の結果より、ポリエステルに対してケテンイミン化合物の含有率は、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、ケテンイミン化合物の含有率が0.1質量%を下回ると十分な耐湿熱性が得られない傾向となり、2.0質量%を上回ると黄着色が発生する傾向となる。
さらに、ポリエステルフィルムが顔料を含む場合であって、特に酸化チタンを含む場合は、耐湿熱性が良好となり、黄着色が抑制される傾向であることがわかる。
【0209】
一方、比較例1〜3は、上述した一般式(1)では表されないケテンイミン化合物を含むため、ポリエステルフィルムの黄着色が顕著に見られた。また、ケテンイミン化合物の全分子量が500以上のものであっても揮散しており、顔料を添加したことの効果も得られていないことがわかる。
【0210】
3.太陽電池モジュール用バックシートの作製
実施例1で作製したポリエステルフィルムを用いて、太陽電池モジュール用バックシートを作製した。
まず、実施例で作製したポリエステルフィルムの一方の側に反射層及び易接着層を有し、他方の側に下塗り層、バリア層、及び防汚層を有する実施例1の太陽電池モジュール用バックシートを作製した。このようにして得られた太陽電池モジュール用バックシートは太陽電池モジュールに貼付し用いた場合、太陽電池モジュールは良好な動作性を示し、発電効率は低下しなかった。また、太陽電池モジュール用バックシートは、黄着色がなく、良好な意匠性を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明によれば、特定の構造を有するケテンイミン化合物を用いるより、ポリエステルフィルムの耐加水分解性を高めつつも、ポリエステルフィルムが黄色く着色することを抑制することができる。このため、本発明のポリエステル樹脂組成物は、太陽電池モジュール用バックシートとして好ましく用いることができ、産業上の利用可能性が高い。