特許第5992355号(P5992355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992355
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】内視鏡用高周波処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   A61B18/12
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-66029(P2013-66029)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-188160(P2014-188160A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】南辻 睦
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 竜朗
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 良仁
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−142513(JP,A)
【文献】 特開2010−68981(JP,A)
【文献】 特開平11−155876(JP,A)
【文献】 特開2002−78717(JP,A)
【文献】 特開2007−215896(JP,A)
【文献】 特開2012−70857(JP,A)
【文献】 特表2012−533346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシースと、
前記アウターシースの近位端に設けられた操作部と、
互いに電気的に絶縁された状態で、前記アウターシースの軸方向に沿ってそれぞれ設けられた第1導電線および第2導電線と、
前記第2導電線の遠位端と電気的に接続されるとともに、円環状面がアウターシースの軸方向に向くように前記アウターシースの遠位端に取り付けられた、略円環状で導電性のリング部材と、
電極支持部を有し、前記リング部材に対して、相対回転が可能で、かつ、前記アウターシースに対する軸方向への相対移動が禁止されるように固定された、絶縁性の電極支持部材と、
前記第1導電線の遠位端と電気的に接続されるとともに、前記電極支持部材の前記電極支持部に支持された第1電極と、
前記第1電極と電気的に絶縁された状態で、前記電極支持部材の前記電極支持部に支持された第2電極と、
前記第2電極と電気的に接続されるとともに、前記電極支持部材に取り付けられた戻り電極とを備え、
前記リング部材の内周面に摺動可能に圧接する導電性の弾性部材を、前記戻り電極に設けたことを特徴とする内視鏡用高周波処置具。
【請求項2】
前記弾性部材が、板バネで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項3】
前記戻り電極が、略円環状で導電性のワッシャー電極部をさらに有し、当該ワッシャー電極部の円環状面が前記リング部材の円環状面に対向して摺動可能に圧接することを特徴とする請求項1または2に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項4】
前記アウターシースの遠位端に取り付けられた略円筒状の導電性の固定部材を備え、
前記電極支持部材は、近位端側に向かって突出するとともに凹陥する環状溝を有する略円筒状の首部を有し、
前記リング部材は、前記環状溝に回転可能に遊嵌され、
前記ワッシャー電極部は、前記首部が挿入された状態で前記電極支持部材に取り付けられ、
前記リング部材が遊嵌された前記首部を前記固定部材に内挿して、該リング部材を該固定部材に固定することにより、前記電極支持部材を前記固定部材に該固定部材の軸線周りに回転可能に取り付けたことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項5】
前記リング部材は、略半円環状の一対のCリング部材を前記環状溝に外側から挿入して相対する端部をそれぞれ固着してなることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項6】
前記アウターシースに挿通された絶縁性のインナーシースと、
前記操作部による回転操作力およびスライド操作力を伝達する前記インナーシースに挿通された導電性の駆動ワイヤーと、
前記駆動ワイヤーの遠位端に取り付けられた、ツナギ金属部材とツナギ絶縁部材とから構成されるツナギ部材と、
その一端が前記ツナギ金属部材に他端が前記第1電極に取り付けられ、前記駆動ワイヤーと前記第1電極とを導通させる導電性の第1線部材と、
その一端が前記ツナギ絶縁部材に他端が前記第2電極に取り付けられた第2線部材と、
前記アウターシースと前記インナーシースとの間に挿通され、その遠位端が前記固定部材に導通されたアウターシース内電線とを備え、
前記駆動ワイヤーと前記ツナギ金属部材と前記第1線部材とで、前記第1導電線が構成され、
前記固定部材と前記アウターシース内電線とで、前記第2導電線が構成されたことを特徴とする請求項4または5に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項7】
前記電極支持部材は、遠位端側に向かって突出する互いに対向する一対のアーム部を有し、
前記第1電極および前記第2電極が、前記電極支持部材の前記アーム部にそれぞれ回転可能に軸支されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の内視鏡用高周波処置具。
【請求項8】
前記電極支持部材は前記アーム部の一方の内側に前記第2電極の軸受部に至る通孔を有し、
前記戻り電極は、前記ワッシャー電極部に立設され、前記通孔を貫通して前記第2電極の軸受部にて露出して前記第2電極に電気的に当接されるピン部を有することを特徴とする請求項7に記載の内視鏡用高周波処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡を利用して高周波電流により止血等の処置を行う内視鏡用高周波処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用高周波処置具としての例えばバイポーラ止血鉗子は、内視鏡の処置具案内管に通されるシースの先端に配置された一対の高周波電極(カップ)の開閉を、シースの後端に設けられた操作部により操作し、該高周波電極で血管等の生体組織を把持した状態で高周波電流を流すことにより、該把持部近傍の組織を焼灼凝固させ、止血を行うために用いられる装置である。電極は目的とする生体組織に対する位置決めのため、シースの軸線周りに回転できる必要があり、また電極に対する高周波電流の供給のため、往復で2本の配線が必要である。
【0003】
このようなバイポーラ止血鉗子としては、例えば、特許文献1に記載のように、一対の高周波電極の一方を固定電極とし、他方を回転可能に軸支して可動電極として、該可動電極を操作部のスライダーとワイヤーにより接続して、該スライダーをスライド操作することにより、片側の電極のみを開閉させるようにしたものが知られている。
【0004】
一対の電極の両方を開閉させる両開きとした技術として、例えば、特許文献2では、一対の電極のそれぞれを回転可能に軸支し、各電極と操作部のスライダーとの間を一対のワイヤーでそれぞれ接続し、該スライダーをスライド操作することにより、一対の電極の双方を回転させて開閉させるようにしている。電極に対する高周波電流の供給は当該一対のワイヤーを介してなされ、各ワイヤーはシース内に挿通されたマルチルーメンチューブに形成された一対のガイド孔にそれぞれ挿通され、電極のシースの軸線周りの回転は該マルチルーメンチューブをシース内で回転させることにより行われる。
【0005】
マルチルーメンチューブを用いない技術としては、特許文献3および4に記載のように、電極に高周波電流を供給するための一対の電線(ワイヤー)の一方を回転伝達性の高いトルクワイヤーとして、該トルクワイヤーをシース内で回転させることにより、電極をシースの軸線周りに回転させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−119083号公報
【特許文献2】特開2007−215896号公報
【特許文献3】特開2009−142513号公報
【特許文献4】特開2010−68981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電極をシース軸線周りに回転できるようにするため、電極を支持する電極支持部材をシースの遠位端にシース軸線周りに回転可能に支持すると、電極のシース軸線周りの回転に伴い高周波電流の供給のための回路を構成する電線に捻れを生じ、回転性や応答性(操作部における回転操作に対する電極回転の追従性)を阻害し、操作性が悪化する場合がある。これを回避するため、電極支持部材のシースに対する回転部において、金属同士を摺動可能に対面接触させる構成を採用することが考えられる。しかしながら、金属同士を単に対面接触させるだけでは、通電の確実性や回転の安定性を十分に確保することができない恐れがある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、シース軸線周りに回転する電極を有する内視鏡用高周波処置具において、電極に対する通電の確実性を十分に確保することができる内視鏡用高周波処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る内視鏡用高周波処置具は、アウターシースと、前記アウターシースの近位端に設けられた操作部と、互いに電気的に絶縁された状態で、前記アウターシースの軸方向に沿ってそれぞれ設けられた第1導電線および第2導電線と、前記第2導電線の遠位端と電気的に接続されるとともに、円環状面がアウターシースの軸方向に向くように前記アウターシースの遠位端に取り付けられた、略円環状で導電性のリング部材と、電極支持部を有し、前記リング部材に対して、相対回転が可能で、かつ、前記アウターシースに対する軸方向への相対移動が禁止されるように固定された、絶縁性の電極支持部材と、前記第1導電線の遠位端と電気的に接続されるとともに、前記電極支持部材の前記電極支持部に支持された第1電極と、前記第1電極と電気的に絶縁された状態で、前記電極支持部材の前記電極支持部に支持された第2電極と、前記第2電極と電気的に接続されるとともに、前記電極支持部材に取り付けられた戻り電極とを備え、前記リング部材の内周面に摺動可能に圧接する導電性の弾性部材を、前記戻り電極に設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記弾性部材は、板バネで構成することができる。
【0011】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記戻り電極は、略円環状で導電性のワッシャー電極部をさらに有し、当該ワッシャー電極部の円環状面が前記リング部材の円環状面に対向して摺動可能に圧接して構成することができる。
【0012】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記アウターシースの遠位端に取り付けられた略円筒状の導電性の固定部材を備え、前記電極支持部材は、近位端側に向かって突出するとともに凹陥する環状溝を有する略円筒状の首部を有し、前記リング部材は、前記環状溝に回転可能に遊嵌され、前記ワッシャー電極部は、前記首部が挿入された状態で前記電極支持部材に取り付けられ、前記リング部材が遊嵌された前記首部を前記固定部材に内挿して、該リング部材を該固定部材に固定することにより、前記電極支持部材を前記固定部材に該固定部材の軸線周りに回転可能に取り付けて構成することができる。
【0013】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記リング部材は、略半円環状の一対のCリング部材を前記環状溝に外側から挿入して相対する端部をそれぞれ固着してなることができる。
【0014】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記アウターシースに挿通された絶縁性のインナーシースと、前記操作部による回転操作力およびスライド操作力を伝達する前記インナーシースに挿通された導電性の駆動ワイヤーと、前記駆動ワイヤーの遠位端に取り付けられた、ツナギ金属部材とツナギ絶縁部材とから構成されるツナギ部材と、その一端が前記ツナギ金属部材に他端が前記第1電極に取り付けられ、前記駆動ワイヤーと前記第1電極とを導通させる導電性の第1線部材と、その一端が前記ツナギ絶縁部材に他端が前記第2電極に取り付けられた第2線部材と、前記アウターシースと前記インナーシースとの間に挿通され、その遠位端が前記固定部材に導通されたアウターシース内電線とを備え、前記駆動ワイヤーと前記ツナギ金属部材と前記第1線部材とで、前記第1導電線を構成し、前記固定部材と前記アウターシース内電線とで、前記第2導電線を構成することができる。
【0015】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記電極支持部材は、遠位端側に向かって突出する互いに対向する一対のアーム部を有し、前記第1電極および前記第2電極が、前記電極支持部材の前記アーム部にそれぞれ回転可能に軸支されるように構成することができる。
【0016】
本発明の内視鏡用高周波処置具において、前記電極支持部材は前記アーム部の一方の内側に前記第2電極の軸受部に至る通孔を有し、前記戻り電極は、前記ワッシャー電極部に立設され、前記通孔を貫通して前記第2電極の軸受部にて露出して前記第2電極に電気的に当接されるピン部を有することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内視鏡用高周波処置具では、第2電極に電気的に接続された戻り電極に、リング部材の内周面に摺動可能に圧接する導電性の弾性部材を設けたので、第2電極はこの弾性部材とリング部材との圧接部を介して第2導電線に電気的に接続される。弾性部材はリング部材に弾性的に圧接しているため、電極支持部材の回転位置にかかわらず、安定した導通を確保することができる。従って、電極に対する通電の確実性を十分に確保することができる。また、本発明の内視鏡用高周波処置具では、弾性部材をリング部材の内周面に摺動するように構成したので、弾性部材とリング部材との導通が、周囲の環境に影響されて妨げられるおそれが小さくなる上に、構造をコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の全体構成を示す平面図である。
図2図1のA−A線に沿った断面図である。
図3】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の操作部の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の操作部の構成を示す切断斜視図である。
図5】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の操作部の構成を示す断面図である。
図6】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の遠位端近傍の構成を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の遠位端近傍の構成を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の遠位端近傍の構成を示す裏面図である。
図9】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の遠位端近傍の構成を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具のシース部と鉗子部との接続部近傍の構成を示す断面図である。
図11】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の電極と駆動ワイヤーとの接続部近傍の構成を示す平面図である
図12】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の駆動ワイヤーの遠位端近傍の構成を示す斜視図である
図13】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の板バネ電極の構成を示す斜視図である。
図14】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具のシース軸線周りの回転機構を示す分解斜視図である。
図15】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具のシース軸線周りの回転機構を示す裏面図であり、樹脂ワクに戻り電極を取り付けた状態を示している。
図16】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具のシース軸線周りの回転機構を示す裏面図であり、樹脂ワクに戻り電極およびリング部材を取り付けた状態を示している。
図17】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具のシース軸線周りの回転機構を示す裏面図であり、戻り電極およびリング部材を取り付けた樹脂ワクを固定金属に取り付けた状態を示している。
図18】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の電極の構成を示す斜視図である。
図19】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の電極の構成を示す斜視図である。
図20】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の絶縁スペーサーの構成を示す斜視図である。
図21】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の鉗子部の構成を示す平面図である。
図22】本発明の実施形態の内視鏡用高周波処置具の鉗子部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る内視鏡用高周波処置具としてのバイポーラ止血鉗子について、図面を参照して具体的に説明する。但し、本発明はバイポーラ止血鉗子には限定されず、開閉可能な一対の高周波電極を備えるバイポーラナイフ等にも適用可能である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のバイポーラ止血鉗子は、シース部1、操作部2および鉗子部3を概略備えて構成されている。シース部1の近位端に操作部2が設けられ、シース部1の遠位端に鉗子部3が設けられている。
【0021】
操作部2はベース21および該ベース21にスライド可能に取り付けられたスライダー22を備え、鉗子部3は互いに開閉可能に設けられた一対の高周波電極(第1電極31a,第2電極31b)からなるカップ31を備えている。操作部2において、スライダー22をベース21に対して先端部側(図1において下側)にスライドさせることによりカップ31を開くことができ、逆にスライダー22をベース21に対して基端部側(図1において上側)にスライドさせることによりカップ31を閉じることができるようになっている。また、操作部2は、一対の電線(ケーブル)24a,24bおよびその先端に設けられたプラグ24を備えており、これらの電線24a,24bがプラグ24を介して、図外の高周波電源装置と電気的に接続され、高周波電流の供給を受けるようになっている。後に詳述するように、電線24aは電極31aに電気的に接続され、電線24bは電極31bに電気的に接続される。
【0022】
シース部1は、図2に示されているように、チューブ状のアウターシース11、同じくチューブ状のインナーシース12、駆動ワイヤー13およびアウターシース内電線14を備えている。アウターシース11は可撓性を有する中空チューブからなり、本実施形態では絶縁性の樹脂から形成されたチューブを用いている。インナーシース12は可撓性を有する中空チューブからなり、本実施形態では絶縁性の樹脂から形成されたチューブを用いている。アウターシース11およびインナーシース12を形成する樹脂材料としては、電気絶縁材料であれば特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂等を用いることができる。
【0023】
駆動ワイヤー13はインナーシース12内に挿通され、インナーシース12はアウターシース11に挿通されている。駆動ワイヤー13はインナーシース12内でその軸線周りの回転および摺動(軸線方向に沿う方向のスライド移動)が可能となっている。
【0024】
駆動ワイヤー13は可撓性および導電性を有するワイヤー(トルクワイヤー)からなり、駆動ワイヤー13としては、ステンレス等の金属からなる単一の線材を用いることができる。但し、駆動ワイヤー13としては、ワイヤーロープやワイヤーチューブを用いてもよい。ここで、ワイヤーロープは、ステンレス等の金属線からなる複数本のワイヤーを螺旋状に撚ってなる撚り線からなるロープである。また、ワイヤーチューブは、ステンレス等の金属線からなる複数本のワイヤーを中空となるように螺旋状に撚ってなる中空撚り線からなるチューブである。駆動ワイヤー13はカップ31を開閉するためのスライド力およびカップ31をその姿勢調整のためのシース軸線周りに回転させる回転力を伝達するための動力伝達部材である。なお、その詳細は後述するが、駆動ワイヤー13の近位端は操作部2の電線24aに電気的に接続されており、遠位端はカップ31を構成する一方の電極(第1電極)31aに電気的に接続されている。
【0025】
アウターシース11とインナーシース12との間には、導電性を有するステンレス等の金属からなるアウターシース内電線14が挿通されている。なお、詳細は後述するが、このアウターシース内電線14の近位端は操作部2の電線24bに電気的に接続されており、遠位端はカップ31を構成する他方の電極(第2電極)31bに電気的に接続されている。
【0026】
操作部2は、図3図5に示されているように、ベース21、スライダー22、先端キャップ23を概略備えて構成されている。ベース21は指輪部21aおよびガイド溝を有するガイド部21bを有している。スライダー22はベース21のガイド部21bに沿って前後に摺動(スライド)可能に取り付けられている。ベース21の先端(遠位端)には先端キャップ23が取り付けられている。ベース21、スライダー22および先端キャップ23は、主として絶縁性の樹脂から形成されている。
【0027】
先端キャップ23はその先端部側の内側に略筒状の空間を備えており、先端キャップ23の先端に形成された貫通部を介して、アウターシース11、インナーシース12、駆動ワイヤー13およびアウターシース内電線14を備えるシース部1の近位端が挿入されている。先端キャップ23内の略筒状の空間内には、ステンレス等の導電性を有する金属から形成された略筒状のスリーブパイプ25が取り付けられており、スリーブパイプ25内にはSKパイプ26が回転可能に内挿されている。SKパイプ26は、ステンレス等の導電性を有する金属から形成されており、遠位端側に薄肉で細径の先端筒部26aを有している。
【0028】
アウターシース11はその近位端の内側にSKパイプ26の先端筒部26aが挿入された状態でSKパイプ26に取り付けられている。インナーシース12はその近位端近傍がSKパイプ26の長手方向に渡って形成された通孔内にその近位端に至るように挿入されている。駆動ワイヤー13はSKパイプ26の通孔を貫通して更に延びており、その近位端はスライダー22に設けられたスリーブ27にネジ28により固定されている。アウターシース11とインナーシース12との間の部分に挿通されているアウターシース内電線14の近位端は、SKパイプ26の先端筒部26aの先端にレーザ溶接やロウ付等により電気的に導通接続されている。
【0029】
スリーブパイプ25の遠位端25a側には、コイルバネ29が内挿されている。コイルバネ29はステンレス等の導電性を有する材料から形成されている。コイルバネ29の遠位端29aは、スリーブパイプ25の遠位端25aにレーザ溶接等により溶接固定されている。従って、コイルバネ29は少なくともこの固定部分においてスリーブパイプ25に電気的に導通されている。コイルバネ29の近位端29bは、適宜な荷重となるように圧縮された状態で、SKパイプ26の先端筒部26aの近位端側の段差面(段差部)26bに自らの付勢力によって圧接している。コイルバネ29の近位端29bは、当該段差面26bとの接触(導通)を十分に確保するため、座巻きになっている。なお、コイルバネ29の遠位端29aも座巻きとしてもよい。この構成により、アウターシース内電線14に先端筒部26aの先端26cにて導通接続されたSKパイプ26は、スリーブパイプ25に対する回転の支障となることなく、少なくともコイルバネ29を介してスリーブパイプ25と導通状態を常に保つことができる。
【0030】
コイルバネ29の長さ、径、素線径、巻き数、ピッチ、バネ定数、圧縮長さ等は、スリーブパイプ25内でSKパイプ26の回転を阻害せず、且つSKパイプ26と常に導通接触するように適宜に選定される。コイルバネ29の諸元は、具体的には、組み込まれた状態(所定量圧縮された状態)で荷重0.05〜1N程度となるように選定されている。荷重0.05N未満では導通が不安定になる場合があり、荷重1Nを越えると円滑な回転を阻害する恐れがあるからである。
【0031】
図示は省略しているが、駆動ワイヤー13の近位端はスライダー22のスリーブ27とのネジ28による固定部において、電線24aに電気的に接続されている。また、スリーブパイプ25は電線24bに電気的に接続されており、従って、アウターシース内電線14は、SKパイプ26、コイルバネ29およびスリーブパイプ25を介して、電線24bに電気的に接続されている。
【0032】
このような構成により、操作部2においてスライダー22をベース21に対して前後(図1において上下)にスライドさせることにより、シース部1内で駆動ワイヤー13をその軸線方向にスライドさせることができるとともに、シース部1(アウターシース11)に対して、操作部2を回転させることにより、シース部1内で駆動ワイヤー13をその軸線周りに回転させることができる。
【0033】
なお、コイルバネ29を設けたのは、スリーブパイプ25とSKパイプ26との間には、回転に支障がない程度のクリアランス(間隙)が存在するため、コイルバネ29を介在させることにより、これらの接触不良の発生を防止し、導通の確実性をより向上させるためである。
【0034】
鉗子部3は、図6図12に示されているように、一対の高周波電極である第1電極31aおよび第2電極31bからなるカップ31、樹脂ワク(電極支持部材)32、戻り電極33、リング部材34、および固定金具(固定部材)35等を備えて構成されている。戻り電極33は、ワク導線(ピン部)33b、ワッシャー電極(スリップリング部)33c、および板バネ電極38を有している。
【0035】
樹脂ワク32は、図14図17にも示されているように、略円筒状の首部32cを有する基端部に互いに対向する一対のアーム部32a,32bを立設して構成されている。樹脂ワク32の首部32cには外側から凹陥する環状溝32dが形成されている。一対のアーム部32a,32bの先端部近傍にはそれぞれ貫通穴32e,32fが形成されている。
【0036】
戻り電極33は、図14に最も良く示されているように、それぞれステンレス等の導電性を有する金属から形成された、略円環状のワッシャー電極(スリップリング部)33cおよびこれに立設された単一のワク導線(ピン部)33bを有している。
【0037】
戻り電極33は、ワク導線33bが樹脂ワク32のアーム部32bに形成された通孔32gに沿って内挿されるように、ワッシャー電極33cの内側の穴に樹脂ワク32の首部32cを挿入して、樹脂ワク32に一体的に取り付けられる。
【0038】
また、戻り電極33は、さらに板バネ電極38を有していて、その板バネ電極38は、図13図14に最も良く示されているように、略円環状の板バネワッシャー部38aの内周面に複数の板バネ部(弾性部材)38bを突出するように一体的に立設配置して構成されている。板バネワッシャー部38aにはワク導線33bが挿入される切欠部38cが形成されている。板バネ電極38は弾性および導電性を有するステンレス等の金属から形成されている。但し、板バネ電極38の形成材料としては、必ずしも金属でなくても良く、導電性ポリマー等を用いても良い。
【0039】
板バネ電極38は、例えば、板厚0.05mmのステンレス等からなる薄い板材をプレス加工して形成することができる。板バネ部38bは、本実施形態では、板バネワッシャー部38aの内周面に4枚を等分に(即ち、90度の位置関係で)配置しているが、枚数は4枚に限定されず、例えば8枚とすることができる。板バネ部38bは、板バネワッシャー部38aの内周面に複数枚を等分に配置する必要は必ずしもないが、安定した回転性を実現する観点から複数枚を等分に配置することが好ましい。板バネ部38bは、後に詳述するが、リング部材34の内周面に摺動可能に圧接して、戻り電極33とリング部材34との間の導通の確実性を確保するものである。
【0040】
リング部材34は、図14図17にも示されているように、ステンレス等の導電性を有する金属からなる略半円環状の一対のCリング(Cリング部)34a,34aを備えており、樹脂ワク32の首部32cに形成された環状溝32dに一対のCリング34a,34aを両側から挟み込みように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着することにより、該首部32cに僅かな隙間(クリアランス)をもって遊嵌され、リング部材34は樹脂ワク32の環状溝32dに取り付けられた状態で、樹脂ワク32に対して自在に回転できるようになっている。リング部材34(Cリング34a,34a)の板厚としては、例えば0.1mm程度のものを用いることができる。
【0041】
なお、リング部材34としては、相対する両端部が僅かな隙間をもって対向するように形成された略円環状の単一のCリングを用い、これを弾性変形させつつ首部32cの環状溝32dに嵌め込む構成を採用することができる。しかしながら、相対する両端部間の当該隙間の部分に段差が生じたり、内周面の形状が正確な円形にならない場合があり、導通性や回転性を阻害する恐れがある。従って、上述したように、一対のCリング34a,34aを両側から挟み込むように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着する構成の方が、その内周面をより正確な円形とすることが可能であることから、導通性および回転性の観点から有利である。
【0042】
固定金具35は、図9図14図17にも示されているように、ステンレス等の導電性を有する金属から形成された略円筒状の部材である。固定金具35の内側には、インナーシース12の遠位端が挿入されて接着固定されている(図9図10参照)。固定金具35は、アウターシース11の遠位端から内側に挿入されて、アウターシース11に接着固定されている(図9図10参照)。また、固定金具35の近位端側の端部には、アウターシース11とインナーシース12との間の部分に配線されたアウターシース内電線14の遠位端が電気的に接続されている(図10参照)。
【0043】
図14に示されているように、樹脂ワク32、戻り電極33(板バネ電極38、ワク導線33b、ワッシャー電極33cを備える)、リング部材34(Cリング34a、34a)および固定金具35が分解されている状態から、まず、板バネ電極38の切欠部38cにワク導線33bを挿入ないし嵌め込み、板バネ部38bをワッシャー電極33cの内側に挿入して該ワッシャー電極33cを越えて突出させるとともに、板バネワッシャー部38aがワッシャー電極33cに対面して当接するように配置して、該当接部分の複数箇所においてレーザ溶接等を行い、板バネ電極38をワッシャー電極33cに一体的に固定する。その後、図15に示されているように、樹脂ワク32のアーム部32bの通孔32gに戻り電極33のワク導線33bを挿入して、板バネ電極38とワッシャー電極33cとが一体的に固定されてなる戻り電極33を樹脂ワク32に取り付ける。
【0044】
次いで、図16に示されているように、樹脂ワク32の首部32cに形成された環状溝32dに一対のCリング34a,34aを両側から挟み込みように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着することにより、該首部32cに遊嵌させる。この状態で、戻り電極33のワッシャー部33cはリング部材34に摺動可能に当接しているとともに、戻り電極33の板バネ電極38の複数の板バネ部38bの外面がリング部材34の内周面に摺動可能に圧接している。
【0045】
その後、図17に示されているように、戻り電極33およびリング部材34が取り付けられた樹脂ワク32を、その首部32cを固定金具35の内側に挿入するとともに、リング部材34を固定部材35に当接させて、この状態で、固定金具35にリング部材34をレーザ溶接等により固着することにより、戻り電極33およびリング部材34が取り付けられた樹脂ワク32を固定金具35に取り付ける。
【0046】
これにより、戻り電極33が一体的に取り付けられた樹脂ワク32は、固定金具35に対してその軸線周りに回転でき、その回転位置にかかわらず、固定金具35と戻り電極33とはワッシャー電極33cおよびリング部材34の当接面を介することに加えて、板バネ電極38の板バネ部38bのリング部材34の内周面に対する圧接面をも介して、電気的に導通された状態を保つことができるようになっている。
【0047】
カップ31を構成する第1電極31aおよび第2電極31bは、図6図9に示されているように、互いに略X字状に配置されて互いの交差部分において、樹脂ワク32の一対のアーム部32a,32b間に回転可能に軸支されている。これらの第1電極31aおよび第2電極31bは、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁スペーサー36により互いに絶縁されている。
【0048】
第1電極31aおよび第2電極31bは、図18および図19に示されているように、先端側の把持部には第1電極31a、第2電極31bの回転軸に沿う方向(以下、横方向という場合がある)に延在する複数(例えば、3本)の山歯31dが該横方向に略直交する方向(以下、縦方向という場合がある)に並列して形成されているとともに、先端凸歯31eが形成されている。先端凸歯31eの中央部分には該縦方向に沿って単一の先端縦溝31fが形成されている。
【0049】
第1電極31aおよび第2電極31bには、その中間部分に貫通穴31cが形成されており、後端側には、第1線部材17aまたは第2線部材17bを取り付けるための貫通穴31gが形成されている。また、第1電極31aの一方の面(絶縁スペーサー36に当接する側の面)には、突起部31hが形成されている(図19参照)。なお、第2電極31bにも、第1電極31aと同様の突起部31hを形成してもよい。
【0050】
絶縁スペーサー36は、中央部に貫通穴36bを有する略円筒状の軸部36aをその一方の面側に有しているとともに(図9図20参照)、他方の面側に略円筒状の金属ワッシャー(ワッシャー部材)39が嵌合される円環状に陥没する凹部36dを有している(図9参照)。
【0051】
絶縁スペーサー36の一方の面には、図20に示されているように、第1電極31aの突起部31hに略対応する位置に、略円弧形状を有するガイド溝36cが形成されている。ガイド溝36cは、第1電極31aの突起部31hが遊嵌されることにより、第1電極31aの回転角度範囲を規定、ひいてはカップ31の開き角度を規定するためのものである(図21図22参照)。なお、第2電極31bにも第1電極31aの突起部31hと同様の突起部を形成した場合には、絶縁スペーサー36の他方の面に、これに対応して当該ガイド溝36cと同様のガイド溝を設ける。
【0052】
図9に示されているように、第1電極31aはその貫通穴31cに絶縁スペーサー36の軸部36aを挿入することにより、絶縁スペーサー36に回転可能に軸支される。第2電極31bは、その貫通穴31cに金属ワッシャー39を挿入し、金属ワッシャー39を絶縁スペーサー36の凹部36dに嵌合することにより、絶縁スペーサー36に回転可能に軸支される。絶縁スペーサー36の貫通穴36bおよび金属ワッシャー39の中央の貫通穴には、略円柱状のキングピン37が挿通される。絶縁スペーサー36の軸部36aの先端部をアーム部32aの貫通穴32eに、金属ワッシャー39の絶縁スペーサー36と反対側の先端部をアーム部32bの貫通穴32fに嵌合固定することにより、絶縁スペーサー36に回転可能に軸支された第1電極31aおよび第2電極31bが一対のアーム部32a,32b間に支持される。
【0053】
図9に示されているように、樹脂ワク32のアーム部32bに形成された通孔32g内を挿通された戻り電極33のワク導線33bの先端部は、アーム部32bの貫通穴32f内に突出して露出しており、アーム部32bの貫通穴32fに嵌合された金属ワッシャー39の先端部とワク導線33bの先端近傍の露出した部分とは、レーザ溶接等により電気的に導通された状態で接続固定される。これにより、第2電極31bはその回転にかかわらず、金属ワッシャー39を介して戻り電極33に電気的に導通された状態を保つようになっている。
【0054】
駆動ワイヤー13の遠位端とカップ31を構成する第1電極31aおよび第2電極31bとの間の動力伝達機構は、図10図12に示されているように、ツナギ金属部材19、ツナギ絶縁部材15、一対の真直線17a,17b、およびパイプ18を備えて構成されている。
【0055】
ツナギ金属部材19は導電性を有する金属から形成された略円筒状の部材であり、その近位端側に駆動ワイヤー13の遠位端を挿入するための穴19aを有しており、この穴19aに駆動ワイヤー13の遠位端が挿入されて、レーザ溶接等により電気的に導通された状態で接続固定されている。
【0056】
ツナギ絶縁部材15は絶縁性を有する樹脂から形成された略円柱状の部材であり、その近位端側に比較的に大径の穴15dを、その遠位端側から穴15dに至る比較的に小径の穴15bを有している。また、ツナギ絶縁部材15は、底面15cを有する凹陥部15aを有している。ツナギ絶縁部材15の凹陥部15aは真直線17aを配置固定するための部分であり、ツナギ絶縁部材15の穴15bは真直線17bを挿入固定するための穴である。
【0057】
真直線17a,17bは、それぞれステンレス等の導電性の金属からなる単一の線材から形成されている。真直線17bの近位端側には、ツナギ絶縁部材15の穴15bに挿通した状態でパイプ18がレーザ溶接等によって接続固定されて、このパイプ18が固定された部分がツナギ絶縁部材15の穴15d内に配置される。ツナギ絶縁部材15はツナギ金属部材19内に遠位端側から挿入され、接着剤によりツナギ金属部材19に接着固定される。真直線17aの近位端側は、ツナギ絶縁部材15の凹陥部15aに沿って配置され、真直線17aの近位端面を凹陥部15aの底面15cに当接させた状態で、ツナギ金属部材19にレーザ溶接等によって電気的に導通された状態で接続固定される。これにより、真直線17aはツナギ金属部材19を介して駆動ワイヤー13に電気的に導通される。これに対して、真直線17bはツナギ絶縁部材15が介装されているため、ツナギ金属部材19とは絶縁された状態とされる。なお、ツナギ絶縁部材15の穴15dはエポキシ系接着剤を充填することにより満たされる。
【0058】
図11に示されているように、真直線17aの遠位端は、第1電極31aの近位端近傍に形成された穴31g(図18参照)に取り付けられており、真直線17bの遠位端は、第2電極31bの近位端近傍に形成された穴31g(図18参照)に取り付けられている。なお、真直線17bは第2電極31bに導通接続される部分を除いて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂で絶縁被覆されている。
【0059】
スライダー22をベース21に対して遠位端側にスライドさせると、これに伴い駆動ワイヤー13が遠位端側にスライドされ、ツナギ金属部材19、ツナギ絶縁部材15を介して、真直線17aおよび真直線17bにスライド力が伝達され、真直線17aを介して第1電極31aが第2電極31bから離間する方向に回転されるとともに、真直線17bを介して第2電極31bが第1電極31aから離間する方向に回転されて、カップ31を開いた状態とすることができる。このとき、図22に示されているように、第1電極31aに形成された突起31hと絶縁スペーサー36に形成されたガイド溝36cとにより、カップ31の開き角度が規定されるので、全開時に常に同じ開き角度にすることができる。
【0060】
一方、スライダー22をベース21に対して近位端側にスライドさせると、これに伴い駆動ワイヤー13が近位端側にスライドされ、ツナギ金属部材19、ツナギ絶縁部材15を介して、真直線17aおよび真直線17bにスライド力が伝達され、真直線17aを介して第1電極31aが第2電極31bに近接する方向に回転されるとともに、真直線17bを介して第2電極31bが第1電極31aに近接する方向に回転されて、カップ31を閉じた状態とすることができる。
【0061】
ベース21およびスライダー22を含む操作部2をシース部1(アウターシース11)に対して、その軸線周りに回転させると、これに伴い駆動ワイヤー13が回転され、ツナギ金属部材19、ツナギ絶縁部材15、真直線17aおよび真直線17bを介して、第1電極31aおよび第2電極31bに均等に回転力(トルク)が伝達され、樹脂ワク32が固定金具35に対して回転し、カップ31を所望の姿勢(回転位置)に調整することができる。
【0062】
このように、操作部2による電極回転のための回転操作力および電極開閉のためのスライド操作力は駆動ワイヤー13、および少なくともツナギ金属部材19とツナギ絶縁部材15とから構成されるツナギ部材を介して伝達され、さらに真直線17aを介して第1電極31aに、真直線17bを介して第2電極31bに伝達される。
【0063】
上述した実施形態によると、戻り電極33のワッシャー電極33cの遠位端側の面に当接して配置される略円環状の板バネワッシャー部38a、および該板バネワッシャー部38aの内周から近位端側に向かってワッシャー電極33cを越えて突出するように設けられ、リング部材34の内周面に摺動可能に弾性的に圧接する板バネ部38bを有する板バネ電極38を設けたので、その回転位置にかかわらず、固定金具(固定部材)35と戻り電極33とはワッシャー電極33cおよびリング部材34の当接面を介することに加えて、板バネ電極38の板バネ部38bのリング部材34の内周面に対する圧接面をも介して、電気的に導通される。板バネ部38bはリング部材34に弾性的に圧接しているため、安定した導通を確保することができ、また、板バネ部38bがリング部材34の内周面に圧接しているため、板バネ部38bとリング部材34との導通が、バイポーラ止血鉗子の周囲の環境に影響されて妨げられるおそれが小さくなる上に、バイポーラ止血鉗子の構造をコンパクトなものとすることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、ワッシャー電極33cと、板バネワッシャー部38aおよび複数の板バネ部38bを一体形成してなる板バネ電極38とを互いに独立した別部材として構成し、これらを溶接固定して一体化して戻り電極33を構成するようにしたが、これに代えて、ワッシャー電極33cの内周面に板バネ部38bと同様の板バネ部を一体的に設けてもよく、このようにすれば、部品点数や組立工数を削減することができる。
【0065】
また、上述した実施形態によると、カップ31を構成する一方の高周波電極である第1電極31aは、真直線17a、ツナギ金属部材19、駆動ワイヤー13、および電線24aを介して、図外の高周波電源装置の一方の極に電気的に接続され、他方の高周波電極である第2電極31bは金属ワッシャー39、戻り電極33、リング部材34、固定金具35、アウターシース内電線14、スリーブパイプ25、SKパイプ26、電線24bを介して、図外の高周波電源装置の他方の極に電気的に接続される。カップ31の開閉やその軸線周りの回転のための動力の伝達は、駆動ワイヤー13によって行われ、アウターシース内電線14と駆動ワイヤー13とはインナーシース12によって分離されているため、アウターシース内電線14が駆動ワイヤー13のスライドまたは回転動作に干渉することがない。従って、カップ31の回転操作の応答性(操作部における回転操作に対する電極回転の追従性)やスライド操作の応答性を向上することができるとともに、シースの湾曲の状態による応答性の変化も少なくなり、高い操作性を実現することができる。
【0066】
さらに、樹脂ワク32の基端部の首部32cの環状溝32dに、リング部材34を回転可能に遊嵌し、このリング部材34が遊嵌された首部32cを固定金具35に内挿して、該リング部材34を該固定金具35に固定するようにしたので、樹脂ワク32を固定金具35に安定して回転可能に支持することができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、ワク導線33bがアーム部32bの内部(通孔32g)を通って外部に露出していないとともに、固定金具35の全体がアウターシース11内に完全に埋没する構成であるため、ワク導線33b、固定金具35が体内組織に触れてしまうことが完全に防止される。
【0068】
さらに、図10を参照して説明したように、ツナギ絶縁部材15はツナギ金属部材19に接着固定されるとともに、真直線17aの基端部側の端面をツナギ絶縁部材15の凹陥部15aの底面15cに当接させた状態で、真直線17aをツナギ金属部材19に溶接固定しているので、ツナギ絶縁部材15のツナギ金属部材19に対する固定が確実であり、長期に渡って安定した性能を実現することができる。
【0069】
また、図18に最も良く示されているように、電極31a,31bの把持部に、横方向に延在する複数の山歯31dを設けているので、体内組織を把持した状態での縦方向への滑り抜けが抑制できることに加えて、先端凸歯31eに先端縦溝31fを設けたので、体内組織を把持した状態での横方向への滑り抜けも抑制することができ、安定した把持を実現することができる。
【0070】
加えて、戻り電極33のワク導線33bは、金属ワッシャー39を介して、第2電極31bに導通されるようにしたので、カップ31の開閉に伴う第2電極31bの回転の支障となることなく、電気的な導通状態を安定して保つことができる。
【0071】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0072】
1…シース部、
11…アウターシース、
12…インナーシース、
13…駆動ワイヤー、
14…アウターシース内電線、
15…ツナギ絶縁部材、
16…ツナギワッシャー、
17a,17b…真直線、
18…パイプ、
19…ツナギ金属部材、
2…操作部、
21…ベース、
22…スライダー、
23…先端キャップ、
24…プラグ、
24a,24b…電線、
25…スリーブパイプ、
26…SKパイプ、
29…コイルバネ、
3…鉗子部、
31…カップ、
31a,31b…電極、
32…樹脂ワク、
32a,32b…アーム部、
32c…首部、
32d…環状溝、
32e…貫通穴、
32g…通孔
33…戻り電極、
33b…ワク導線
33c…ワッシャー電極、
33d…突起部、
33e,33f…貫通穴、
34…リング部材、
34a…Cリング、
35…固定金具、
36…絶縁スペーサー、
37…キングピン、
38…板バネ電極、
38a…板バネワッシャー部、
38b…板バネ部、
38c…切欠部、
39…金属ワッシャー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22