(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(A)と前記フラーレン類の合計の含有量に対する前記フラーレン類の含有量(=前記フラーレン類の単層換算での膜厚/(前記化合物(A)の単層換算での膜厚+前記フラーレン類の単層換算での膜厚))が、50体積%以上である、請求項6に記載の光電変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、導電性膜と、光電変換材料を含有する光電変換膜と、透明導電性膜とをこの順に備え、上記光電変換材料が、後述する式(1)で表される化合物(A)とn型半導体とを含む。
【0014】
以下に、本発明の光電変換素子について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とも記す)11と、下部電極11上に形成された電子ブロッキング層16Aと、電子ブロッキング層16A上に形成された光電変換膜12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とも記す)15とがこの順に積層された構成を有する。
図1(b)に別の光電変換素子の構成例を示す。
図1(b)に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換膜12と、正孔ブロッキング層16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、
図1(a)、
図1(b)中の電子ブロッキング層16A、光電変換膜12、正孔ブロッキング層16Bの積層順は、用途、特性に応じて逆にしても構わない。
【0015】
光電変換素子10a(10b)の構成では、透明導電性膜15を介して光電変換膜12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(10b)を使用する場合には、電場を印加することができる。この場合、導電性膜11と透明導電性膜15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10
-3〜1×10
7V/cmの電場を印加することが好ましく、1×10
-4〜1×10
7V/cmの電場を印加することがより好ましい。性能および消費電力の観点から、1×10
-4〜1×10
6V/cmの電場を印加することが好ましく、1×10
-5〜5×10
5V/cmの電場を印加することがより好ましい。
なお、電圧印加方法については、
図1(a)および(b)において、電子ブロッキング層16A側が陰極であり、光電変換膜12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧の印加を行うことができる。
【0016】
以下に、光電変換素子を構成する各層(光電変換膜、下部電極、上部電極、電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層など)の態様について詳述する。
まず、光電変換膜について詳述する。
【0017】
〔光電変換膜〕
光電変換膜は、光電変換材料として後述する式(1)で表される化合物(A)とn型半導体とを含む膜である。
本発明の光電変換素子は光電変換材料として後述する化合物(A)とn型半導体とを併用するため、蒸着により作製可能であり、また、優れた応答性および高い光電変換効率を示すものと考えられる。
【0018】
その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
化合物(A)は、後述するとおり、芳香族アミン部位と上記Aで表される基が結合する少なくとも三環が縮合する環とが連結された構造を有する。上記芳香族アミン部位は電子供与性(ドナー性)を示し、上記Aで表される基が結合する少なくとも三環が縮合する環は電子受容性(アクセプター性)を示すと考えられるため、光吸収により上記化合物の分子内では良好な電荷分離が生じるものと推測される。ここで、本発明の光電変換材料は芳香族アミン部位を有しており、分子間でのホールの速やかな移動が可能となり、応答性が向上したと考えられる。また、本発明では光電変換材料としてn型半導体を併用するため、化合物(A)とn型半導体との間で励起子生成後の電子移動が速やかに行われ、光電変換効率が高くなったと考えられる。また、化合物(A)とn型半導体とを併用することで結晶化が抑制されたことも応答性が向上した理由に挙げられる。さらに、上記Aで表される基は、後述するとおりカルボキシ基およびヒドロキシ基を有さないため、蒸着時の分解が抑えられるものと考えられる。
結果として、本発明の光電変換素子は蒸着により作製可能であり、また、優れた応答性および高い光電変換効率を示すものと考えられる。これらのことは、後述する比較例が示すように、Aがカルボキシ基を有する場合(比較例1)には蒸着時に分解して素子を作製することができないこと、トリアリールアミンを有さない場合(比較例5)および光電変換材料がn型半導体を含まない場合(比較例3および4)には応答性および/または光電変換効率が不十分になることからも推測される。
【0019】
<化合物(A)>
本発明の光電変換素子において、光電変換材料に含まれる化合物(A)は下記式(1)で表される。
【0021】
上記式(1)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
R
1〜R
6のうち少なくとも1つは、応答性がより優れる理由から、ハロゲン原子(特に塩素原子)であることが好ましく、R
5がハロゲン原子(特に塩素原子)であることがさらに好ましい。
【0022】
R
1とR
2、R
3とR
4は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては、例えば、後述する環Rなどが挙げられる。なかでも、ベンゼン環であることが好ましい。形成される環は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
R
1とR
2は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成しないのが好ましい。
R
3とR
4は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環(特にベンゼン環)を形成するのが好ましい。
【0023】
上記式(1)中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
【0024】
Ar
1またはAr
2がアリール基である場合、炭素数6〜30のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましい。アリール基を構成する環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環(2個のフェニル基は任意の連結様式で連結してもよい)、ターフェニル環(3個のベンゼン環は任意の連結様式で連結してもよい)などが挙げられる。
【0025】
Ar
1またはAr
2がヘテロアリール基である場合、5員、6員もしくは7員の環またはその縮合環からなるヘテロアリール基であることが好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子など挙げられる。ヘテロアリール基を構成する環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、トリアジン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノキサジン環、チアントレン環、インドリジン環、キノリジン環、キヌクリジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環などが挙げられる。
【0026】
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基としてアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を有するのが好ましく、応答性がより優れる理由から、置換基としてアリール基を有するのがさらに好ましい。アリール基およびヘテロアリール基の具体例および好適な態様は上述のとおりである。
【0027】
Ar
1とAr
2、Ar
1と上記R
1、Ar
2と上記R
6は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては、例えば、後述する環Rなどが挙げられる。形成される環は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
Ar
1とAr
2は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成しないのが好ましい。
Ar
1と上記R
1、および、Ar
2と上記R
6、のうち少なくとも一方は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成するのが好ましい。
【0028】
上記式(1)中、Xは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、>CR
C1R
C2、>NR
N1、および、>SiR
Si1R
Si2からなる群より選択される基を表す。ここで、R
C1、R
C2、R
N1、R
Si1およびR
Si2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。置換基は炭化水素基であることが好ましい。
上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられ、なかでも、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜20)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜20)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜20)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6〜18のアリール基などが挙げられる。
Xは、光電変換効率がより高くなる理由から、酸素原子であることが好ましい。
【0029】
上記式(1)中、Aは、酸素原子、硫黄原子、=CR
C3R
C4、および、=NR
N2からなる群より選択される基を表す。ここで、R
C3、R
C4およびR
N2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基W(ただし、カルボキシ基およびヒドロキシ基、並びに、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有する置換基を除く)などが挙げられる。
Aは、応答性がより優れる理由から、酸素原子、硫黄原子、および、=CR
C3R
C4からなる群より選択される基であることが好ましく、酸素原子または=CR
C3R
C4であることがより好ましい。
【0030】
R
C3とR
C4は、互いに結合して環を形成してもよい。Aが=NR
N2である場合、R
N2とR
4は、互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては、例えば、後述する環Rなどが挙げられる。形成される環は、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、後述する置換基W(ただし、カルボキシ基およびヒドロキシ基、並びに、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有する置換基を除く)などが挙げられる。
【0031】
Aは、カルボキシ基(−COOH)およびヒドロキシ基(−OH)を有さない。すなわち、Aは、カルボキシ基またはヒドロキシ基でなく、かつ、置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する基ではない。
【0032】
Aは、応答性により優れる理由から、酸素原子または下記式(Z1)で表される基であることが好ましく、下記式(Z1)で表される基であることがより好ましい。
【0034】
上記式(Z1)中、Zは、少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。
このような環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0035】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば、1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えば、バルビツール酸または2−チオバルビツール酸およびその誘導体等。誘導体としては、例えば、1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えば、ローダニンおよびその誘導体等。誘導体としては、例えば、3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0036】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば、3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば、3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば、4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン−5−オン核:例えば、2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば、1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えば、ベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェン−3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば、1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノン等。
【0037】
Zは、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、後述する置換基W(ただし、カルボキシ基およびヒドロキシ基、並びに、カルボキシ基またはヒドロキシ基を有する置換基を除く)などが挙げられる。
【0038】
Zは、カルボキシ基およびヒドロキシ基を有さない。すなわち、Zは、置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する環ではない。
【0039】
上記式(Z1)中、*は、結合位置を表す。
【0040】
化合物(A)は、光電変換効率がより高くなる理由から、下記式(2)で表される化合物(a1)であることが好ましい。
【0042】
上記式(2)中、R
1、R
2、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
R
1、R
2、R
5およびR
6のうち少なくとも1つは、応答性がより優れる理由から、ハロゲン原子(特に塩素原子)であることが好ましく、R
5がハロゲン原子(特に塩素原子)であることがさらに好ましい。
【0043】
上記式(2)中、R
7〜R
20は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、後述する置換基Wなどが挙げられる。
R
7〜R
16は、応答性がより優れる理由から、それぞれ独立に、アリール基またはヘテロアリール基であることが好ましい。アリール基およびヘテロアリール基の具体例および好適な態様は上述のとおりである。
【0044】
R
1とR
2、R
1とR
16、R
6とR
7、R
11とR
12は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
R
1とR
2は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成しないのが好ましい。
R
11とR
12は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成しないのが好ましい。
R
1とR
16、および、R
6とR
7、のうち少なくとも一方は、応答性がより優れる理由から、互いに結合して環を形成するのが好ましい。
【0045】
上記式(2)中のAの定義、具体例および好適な態様は、上述した式(1)中のAと同じである。
【0046】
(置換基W)
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基などが挙げられる。
なお、置換基の詳細については、特開2007-234651号公報の段落[0023]に記載される。
【0047】
(環R)
本明細書における環Rについて記載する。
環Rとしては、例えば、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、非芳香族炭化水素環、非芳香族複素環、またはこれらが組み合わされて形成された多環縮合環などが挙げられる。より具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ピロリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環などが挙げられる。
環Rは、置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、上述した置換基Wなどが挙げられる。
【0048】
化合物(A)は、公知の方法に従い、一部改変して実施することで製造することができる。以下に、化合物(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
化合物(A)のイオン化ポテンシャル(以下IPと略すことがある)は6.0ev以下であることが好ましく、5.8eV以下がより好ましく、5.6eV以下が特に好ましい。この範囲であれば、電極および他の材料が存在する場合、その材料との電子の授受を小さな電気抵抗で行うために好ましい。IPは理研計器(株)製AC−2を用いて、求めることができる。
【0052】
化合物(A)は、紫外可視吸収スペクトルにおいて400nm以上720nm未満に吸収極大を有するものが好ましく、吸収スペクトルのピーク波長(吸収極大波長)は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から450nm以上700nm以下が好ましく、480nm以上700nm以下がより好ましく、510nm以上680nm以下が更に好ましい。
化合物(A)の吸収極大波長は、化合物(A)のクロロホルム溶液を、例えば、島津製作所社製UV−2550を用いて測定することができる。クロロホルム溶液の濃度は5×10
-5〜1×10
-7mol/lが好ましく、3×10
-5〜2×10
-6mol/lがより好ましく、2×10
-5〜5×10
-6mol/lが特に好ましい。
【0053】
化合物(A)は、紫外可視吸収スペクトルにおいて400nm以上720nm未満に吸収極大を有し、その吸収極大波長のモル吸光係数が10000mol
-1・l・cm
-1以上であるものが好ましい。光電変換膜の膜厚を薄くし、高い電荷捕集効率、高感度特性の素子とするには、モル吸光係数が大きい材料が好ましい。化合物(A)のモル吸光係数としては10000mol
-1・l・cm
-1以上が好ましく、30000mol
-1・l・cm
-1以上がより好ましく、50000mol
-1・l・cm
-1以上が特に好ましい。化合物(A)のモル吸光係数は、クロロホルム溶液で測定したものである。
【0054】
化合物(A)は、融点と蒸着温度との差(融点−蒸着温度)が大きいほど蒸着時に分解しにくく、高い温度をかけて蒸着速度を大きくすることができ好ましい。また、融点と蒸着温度の差(融点−蒸着温度)は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
また、化合物(A)の融点は240℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。融点が300℃以上であれば蒸着前に融解することが少なく、安定して成膜できることに加え、化合物の分解物が比較的生じにくいため、光電変換性能が低下しにくいため好ましい。
化合物の蒸着温度は、4×10
-4Pa以下の真空度でるつぼを加熱し、蒸着速度が1.5オングストローム/s(1.5×10
-10m/s)に到達した温度とする。
【0055】
化合物(A)のガラス転移点(Tg)は、95℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、135℃以上がさらに好ましく、150℃以上が特に好ましく、160℃以上が最も好ましい。
【0056】
化合物(A)の分子量は、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましく、500〜900が特に好ましい。分子量を低くすることによって、蒸着温度を低くすることができるため、蒸着時における化合物の熱分解をより防ぐことができる。また、蒸着時間を短縮して、蒸着に必要なエネルギーを抑えることもできる。化合物(A)の蒸着温度は好ましくは400℃以下であり、より好ましくは380℃以下であり、さらに好ましくは360℃以下であり、最も好ましくは340℃以下である。
【0057】
化合物(A)は光電変換素子や撮像素子を作製する前に、昇華精製することが望ましい。昇華精製により、昇華前に含有していた不純物や残存溶媒を除くことができる。その結果、光電変換素子や撮像素子の性能を安定させることができる。また、蒸着速度を一定に保ちやすい。
【0058】
昇華精製前の化合物(A)の純度としては、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で99%以上が好ましく、99.5%以上が好ましく、99.9%以上であることが更に好ましい。さらに、化合物(A)を得るまでの工程で用いた反応溶媒や精製溶媒などの残存溶媒の含有量は3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、検出限界以下であることが特に好ましい。残存溶媒(水分も含む)の含有量の測定には
1H−NMR測定やガスクロマトグラフィー測定、カールフィッシャー測定などが用いられる。純度を高め、残存溶媒を減らすことで、昇華精製時の熱分解を抑制することができる。
【0059】
化合物(A)は、撮像素子、光センサ、または光電池に用いる光電変換膜の材料として特に有用である。なお、通常、化合物(A)は、光電変換膜内で有機p型半導体(化合物)として機能する。また、他の用途として、着色材料、液晶材料、有機半導体材料、有機発光素子材料、電荷輸送材料、医薬材料、蛍光診断薬材料、等としても用いることもできる。
【0060】
<n型半導体>
本発明の光電変換素子において、光電変換材料に含まれるn型半導体(例えば、有機n型半導体)は、アクセプター性半導体であり、主に電子輸送性化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある化合物をいう。更に詳しくは、2つの化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の化合物をいう。したがって、アクセプター性半導体は、電子受容性のある化合物であればいずれの化合物も使用可能である。好ましくは、フラーレンおよびその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有するヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。
【0061】
上記n型半導体としては、フラーレンおよびその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類が好ましい。フラーレンとは、フラーレンC
60、フラーレンC
70、フラーレンC
76、フラーレンC
78、フラーレンC
80、フラーレンC
82、フラーレンC
84、フラーレンC
90、フラーレンC
96、フラーレンC
240、フラーレンC
540、ミックスドフラーレンを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007−123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0062】
光電変換膜は、上記化合物(A)と、フラーレン類とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造をなしていることが好ましい。バルクヘテロ構造は光電変換膜内で、化合物(A)とn型化合物が混合、分散している膜であり、湿式法、乾式法のいずれでも形成できるが、共蒸着法で形成するものが好ましい。へテロ接合構造を含有させることにより、光電変換膜のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報の[0013]〜[0014]等において詳細に説明されている。
【0063】
上記化合物(A)とフラーレン類の合計の含有量に対するフラーレン類の含有量(=フラーレン類の単層換算での膜厚/(化合物(A)の単層換算での膜厚+フラーレン類の単層換算での膜厚))が、50体積%以上であることが好ましく、55体積%以上であることがより好ましく、65体積%以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限されないが、95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましい。
【0064】
本発明の光電変換素子における光電変換膜は非発光性膜であり、有機電界発光素子(OLED)とは異なる特徴を有する。非発光性膜とは発光量子効率が1%以下の膜の場合であり、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
【0065】
<その他材料>
光電変換膜は、さらに化合物(A)以外の有機p型半導体を含有してもよい。
有機p型半導体は、ドナー性有機半導体であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物等を用いることができる。
【0066】
<成膜方法>
光電変換膜は、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜することができる。乾式成膜法の具体例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法,MBE法等の物理気相成長法、または、プラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。好ましくは乾式成膜法であり、真空蒸着法がより好ましい。真空蒸着法により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
【0067】
光電変換膜の厚みは、10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上800nm以下がより好ましく、100nm以上500nm以下が特に好ましい。
【0068】
〔電極〕
電極(上部電極(透明導電性膜)と下部電極(導電性膜))は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。
透明導電性膜を介して光電変換膜に光が入射される場合、上部電極は検知したい光に対し十分透明であることが好ましい。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、透明導電性金属酸化物である。
【0069】
TCOなどの透明導電膜を上部電極とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換膜に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の下部電極との間の導通が増すためと考えられる。そのため、アルミなど膜質が比較的劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極の膜厚を、光電変換膜の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御することにより、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極の厚みは、光電変換膜の厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにすることが望ましい。
【0070】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換膜での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmであることが望ましい。
【0071】
下部電極は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属およびこれらの金属の酸化物や窒化物などの導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる)、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOまたは窒化チタンとの積層物などが挙げられる。
【0072】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。電極の材料がTiNの場合、反応性スパッタリング法をはじめとする各種の方法が用いられ、更にUV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0073】
〔電荷ブロッキング層:電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層〕
本発明の光電変換素子は、電荷ブロッキング層を有していてもよい。該層を有することにより、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる。電荷ブロッキング層としては、電子ブロッキング層と正孔ブロッキング層とが挙げられる。以下に、それぞれの層について詳述する。
【0074】
<電子ブロッキング層>
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポルフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。具体的には特開2008−72090号公報の[0083]〜[0089]や特開2011−176259号公報の[0050]〜[0063]に記載の化合物が好ましい。
【0075】
電子ブロッキング層は一般式(F−1)で表される化合物を含有することも好ましい。該化合物を使用することにより、得られる光電変換膜の応答速度がより優れると共に、各製造ロッド間の応答速度のばらつきがより抑制される。
【0077】
(一般式(F−1)中、R”
11〜R”
18、R’
11〜R’
18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R”
15〜R”
18中のいずれか一つは、R’
15〜R’
18中のいずれか一つと連結し、単結合を形成する。A
11およびA
12はそれぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される基を表し、R”
11〜R”
14、およびR’
11〜R’
14中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)
【0079】
(一般式(A−1)中、Ra
1〜Ra
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、または−NR
a−(R
aは、水素原子または置換基(例えば、上述した置換基W)を表す)を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。S
11はそれぞれ独立に下記置換基(S
11)を示し、Ra
1〜Ra
8中のいずれかひとつとして置換する。n’は0〜4の整数を表す。)
【0081】
(R’
1〜R’
3はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。)
【0082】
一般式(F−1)中、R”
11〜R”
18、R’
11〜R’
18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基の具体例は上述した置換基Wが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基であり、更に好ましくはフッ素原子、アルキル基、またはアリール基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基であり、最も好ましくはアルキル基である。
R”
11〜R”
18、R’
11〜R’
18として好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、または複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基である。中でも一般式(A−1)で表される置換基がR”
12およびR’
12にそれぞれ独立に置換することが好ましく、一般式(A−1)で表される置換基がR”
12およびR’
12にそれぞれ独立に置換し、R”
11、R”
13〜R”
18、R’
11、R’
13〜R’
18が水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、特に好ましくは一般式(A−1)で表される置換基がR”
12およびR’
12にそれぞれ独立に置換し、R”
11、R”
13〜R”
18、R’
11、R’
13〜R’
18が水素原子である。
【0083】
Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。すなわち、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子からなる二価の連結基を表す。このうち−C(R’
21)(R’
22)−、−Si(R’
23)(R’
24)−、−N(R’
20)−、が好ましく、−C(R’
21)(R’
22)−、−N(R’
20)−、がより好ましく、−C(R’
21)(R’
22)−が特に好ましい。
R’
20〜R’
24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。その更なる置換基の具体例は上述した置換基Wが挙げられる。R’
20〜R’
24として好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、または複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基であり、更に好ましくは水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。
【0084】
一般式(A−1)におけるRa
1〜Ra
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。その更なる置換基の具体例は上述した置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0085】
Ra
1〜Ra
8として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。アルキル基は分岐を有するものであってもよい。
好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。
また、Ra
3およびRa
6が水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、かつRa
1、Ra
2、Ra
4、Ra
5、Ra
7、Ra
8は、水素原子である場合が特に好ましい。
【0086】
Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、または−NR
a−(R
aは、水素原子または置換基(例えば、上述した置換基W)を表す)を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。
Xaは、単結合、炭素数1〜13のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、またはシリレン基が好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば−CH
2=CH
2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、またはシリレン基がより好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)が更に好ましい。これらの置換基に更に上述した置換基Wを有していてもよい。
一般式(A−1)で表される基の具体例としては、下記N1〜N11で例示される基が挙げられる。但し、これらに限定されない。一般式(A−1)で表される基として好ましくはN−1〜N−7であり、N−1〜N−6がより好ましく、N−1〜N−3がより好ましく、N−1〜N−2が特に好ましく、N−1が最も好ましい。
【0088】
置換基(S
11)において、R’
1は水素原子またはアルキル基を表す。R’
1として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、またはtert−ブチル基である。
【0089】
R’
2は、水素原子またはアルキル基を表す。R’
2として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、またはプロピル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0090】
R’
3は水素原子またはアルキル基を表す。R’
3として好ましくは水素原子、またはメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0091】
また、R’
1〜R’
3はそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合、環員数は特に限定されないが、好ましくは5または6員環であり、更に好ましくは6員環である。
【0092】
S
11は上記置換基(S
11)を示し、Ra
1〜Ra
8中のいずれかひとつとして置換する。一般式(A−1)におけるRa
3およびRa
6のいずれか少なくとも1つがそれぞれ独立に、上記置換基(S
11)を表すことが好ましい。
置換基(S
11)として好ましくは下記(a)〜(x)を挙げることができ、(a)〜(j)がより好ましく、(a)〜(h)がより好ましく、(a)〜(f)が特に好ましく、更に(a)〜(d)が好ましく、(a)が最も好ましい。
【0094】
n’はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、1〜2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0095】
上記一般式(A−1)としては、下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、または下記一般式(A−5)で表される基でもよい。
【0097】
(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra
33〜Ra
38、Ra
41、Ra
44〜Ra
48、Ra
51、Ra
52、Ra
55〜Ra
58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc
1、Xc
2、およびXc
3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、または−NR
a−(R
aは、水素原子または置換基(例えば、上述した置換基W)を表す)を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z
31、Z
41、およびZ
51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0098】
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra
33〜Ra
38、Ra
41、Ra
44〜Ra
48、Ra
51、Ra
52、Ra
55〜Ra
58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、またはアルキル基を表す。極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Ra
33〜Ra
38、Ra
41、Ra
44〜Ra
48、Ra
51、Ra
52、Ra
55〜Ra
58がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、またはシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra
33〜Ra
38、Ra
41、Ra
44〜Ra
48、Ra
51、Ra
52、Ra
55〜Ra
58のうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては上述した環Rが挙げられる。該環としては、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
【0099】
Xc
1、Xc
2、およびXc
3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、または−NR
a−(R
aは、水素原子または置換基(例えば、上述した置換基W)を表す)を表す。Xc
1、Xc
2、およびXc
3がアルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、または−NR
a−を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、上述した置換基Wが挙げられる。
【0100】
Xc
1、Xc
2、およびXc
3は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば、−CH
2=CH
2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)がさらに好ましい。
【0101】
Z
31、Z
41、およびZ
51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表す。一般式(A−3)〜(A−5)において、Z
31、Z
41、およびZ
51はベンゼン環と縮合している。光電変換素子の高い耐熱性と高い正孔輸送能が期待できるという理由から、Z
31、Z
41、およびZ
51は芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0102】
電子ブロッキング層は下記一般式(F−2)で表される化合物を含有することも好ましい。
【化15】
【0103】
上記式(F−2)中のR’
11〜R’
14の定義、具体例および好適な態様は、それぞれ、上述した一般式(F−1)中のR’
11〜R’
14と同じである。
上記式(F−2)中のR”
11〜R”
14の定義、具体例および好適な態様は、それぞれ、上述した一般式(F−1)中のR”
11〜R”
14と同じである。
上記式(F−2)中のXaの定義、具体例および好適な態様は、上述した一般式(A−1)中のXaと同じである。
上記式(F−2)中、A
11およびA
12は、それぞれ独立に、上述した一般式(A−1)で表される基を表し、それぞれ、R”
11〜R”
14およびR’
11〜R’
14中のいずれか一つとして置換する。
上記式(F−2)中、Rf
21は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、例えば、上述した置換基Wなどが挙げられる。Rf
21は、置換基を有してもよいアリール基 であることが好ましい。
【0104】
なお、電子ブロッキング層は、複数層で構成してもよい。
電子ブロッキング層としては無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電子ブロッキング層に用いた場合に、光電変換膜に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電子ブロッキング層となりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。電子ブロッキング層が単層の場合にはその層を無機材料からなる層とすることができ、または、複数層の場合には1つまたは2以上の層を無機材料からなる層とすることができる。
【0105】
<正孔ブロッキング層>
正孔ブロッキング層には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。具体的には特開2008−72090号公報の[0073]〜[0078]に記載の化合物が好ましい。
【0106】
電荷ブロッキング層の製造方法は特に制限されず、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜できる。乾式成膜法としては、蒸着法、スパッタ法等が使用できる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。湿式成膜法としては、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能であるが、高精度パターニングの観点からはインクジェット法が好ましい。
【0107】
電荷ブロッキング層(電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層)の厚みは、それぞれ、10〜200nmが好ましく、更に好ましくは20〜150nm、特に好ましくは30〜50nmである。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0108】
〔基板〕
本発明の光電変換素子は、さらに基板を含んでいてもよい。使用される基板の種類は特に制限されず、半導体基板、ガラス基板、またはプラスチック基板を用いることができる。
なお、基板の位置は特に制限されないが、通常、基板上に導電性膜、光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層する。
【0109】
〔封止層〕
本発明の光電変換素子は、さらに封止層を含んでいてもよい。光電変換材料は水分子などの劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまうことがあり、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物・金属窒化物・金属窒化酸化物などセラミクスやダイヤモンド状炭素(DLC)などの封止層で光電変換膜全体を被覆して封止することが上記劣化を防止することができる。
なお、封止層としては、特開2011−082508号公報の段落[0210]〜[0215]に記載に従って、材料の選択および製造を行ってもよい。
【0110】
[光センサ]
光電変換素子の用途として、例えば、光電池と光センサが挙げられるが、本発明の光電変換素子は光センサとして用いることが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いたものでもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサや、平面上に配した2次元センサの形態とするものが好ましい。本発明の光電変換素子は、ラインセンサでは、スキャナー等の様に光学系および駆動部を用いて光画像情報を電気信号に変換し、2次元センサでは、撮像モジュールのように光画像情報を光学系でセンサ上に結像させ電気信号に変換することで撮像素子として機能する。
光電池は発電装置であるため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率が重要な性能となるが、暗所での電流である暗電流は機能上問題にならない。更にカラーフィルタ設置等の後段の加熱工程が必要ない。光センサは明暗信号を高い精度で電気信号に変換することが重要な性能となるため、光量を電流に変換する効率も重要な性能であるが、暗所で信号を出力するとノイズとなるため、低い暗電流が要求される。更に後段の工程に対する耐性も重要である。
【0111】
[撮像素子]
次に、光電変換素子を備えた撮像素子の構成例を説明する。
なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号または相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
撮像素子とは画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つの光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
図2は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、電子内視鏡、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いられる。
この撮像素子は、
図1に示したような構成の複数の光電変換素子と、各光電変換素子の光電変換膜で発生した電荷に応じた信号を読み出す読み出し回路が形成された回路基板とを有し、該回路基板上方の同一面上に、複数の光電変換素子が1次元状または二次元状に配列された構成となっている。
【0112】
図2に示す撮像素子100は、基板101と、絶縁層102と、接続電極103と、画素電極(下部電極)104と、接続部105と、接続部106と、光電変換膜107と、対向電極(上部電極)108と、緩衝層109と、封止層110と、カラーフィルタ(CF)111と、隔壁112と、遮光層113と、保護層114と、対向電極電圧供給部115と、読出し回路116とを備える。
【0113】
画素電極104は、
図1に示した光電変換素子10aの下部電極11と同じ機能を有する。対向電極108は、
図1に示した光電変換素子10aの上部電極15と同じ機能を有する。光電変換膜107は、
図1に示した光電変換素子10aの下部電極11および上部電極15間に設けられる層と同じ構成である。
【0114】
基板101は、ガラス基板またはSi等の半導体基板である。基板101上には絶縁層102が形成されている。絶縁層102の表面には複数の画素電極104と複数の接続電極103が形成されている。
【0115】
光電変換膜107は、複数の画素電極104の上にこれらを覆って設けられた全ての光電変換素子で共通の層である。
【0116】
対向電極108は、光電変換膜107上に設けられた、全ての光電変換素子で共通の1つの電極である。対向電極108は、光電変換膜107よりも外側に配置された接続電極103の上にまで形成されており、接続電極103と電気的に接続されている。
【0117】
接続部106は、絶縁層102に埋設されており、接続電極103と対向電極電圧供給部115とを電気的に接続するためのプラグ等である。対向電極電圧供給部115は、基板101に形成され、接続部106および接続電極103を介して対向電極108に所定の電圧を印加する。対向電極108に印加すべき電圧が撮像素子の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給する。
【0118】
読出し回路116は、複数の画素電極104の各々に対応して基板101に設けられており、対応する画素電極104で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。読出し回路116は、例えばCCD、CMOS回路、またはTFT回路等で構成されており、絶縁層102内に配置された図示しない遮光層によって遮光されている。読み出し回路116は、それに対応する画素電極104と接続部105を介して電気的に接続されている。
【0119】
緩衝層109は、対向電極108上に、対向電極108を覆って形成されている。封止層110は、緩衝層109上に、緩衝層109を覆って形成されている。カラーフィルタ111は、封止層110上の各画素電極104と対向する位置に形成されている。隔壁112は、カラーフィルタ111同士の間に設けられており、カラーフィルタ111の光透過効率を向上させるためのものである。
【0120】
遮光層113は、封止層110上のカラーフィルタ111及び隔壁112を設けた領域以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換膜107に光が入射する事を防止する。保護層114は、カラーフィルタ111、隔壁112、及び遮光層113上に形成されており、撮像素子100全体を保護する。
【0121】
このように構成された撮像素子100では、光が入射すると、この光が光電変換膜107に入射し、ここで電荷が発生する。発生した電荷のうちの正孔は、画素電極104で捕集され、その量に応じた電圧信号が読み出し回路116によって撮像素子100外部に出力される。
【0122】
撮像素子100の製造方法は、次の通りである。
対向電極電圧供給部115と読み出し回路116が形成された回路基板上に、接続部105,106、複数の接続電極103、複数の画素電極104、および絶縁層102を形成する。複数の画素電極104は、絶縁層102の表面に例えば正方格子状に配置する。
【0123】
次に、複数の画素電極104上に、光電変換膜107を例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、光電変換膜107上に例えばスパッタ法により対向電極108を真空下で形成する。次に、対向電極108上に緩衝層109、封止層110を順次、例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、カラーフィルタ111、隔壁112、遮光層113を形成後、保護層114を形成して、撮像素子100を完成する。
【0124】
撮像素子100の製造方法においても、光電変換膜107の形成工程と封止層110の形成工程との間に、作製途中の撮像素子100を非真空下に置く工程を追加しても、複数の光電変換素子の性能劣化を防ぐことができる。この工程を追加することで、撮像素子100の性能劣化を防ぎながら、製造コストを抑えることができる。
【実施例】
【0125】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
<実施例1>
図1(a)の形態の光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング層16A、光電変換膜12および上部電極15からなる。
具体的には、ガラス基板上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、下部電極11(厚み:30nm)を形成し、さらに下部電極11上に下記化合物(EB−1)を真空加熱蒸着法により成膜して、電子ブロッキング層16A(厚み:100nm)を形成した。
さらに、基板の温度を25℃に制御した状態で、電子ブロッキング層16A上に、下記(1)の化合物およびフラーレン(C
60)をそれぞれ単層換算で133nmおよび267nmとなるように真空加熱蒸着により共蒸着して成膜し、光電変換膜12を形成した。ここで、蒸着は、真空下(4×10
-4Pa以下の真空度)で、下記(1)の化合物の入ったるつぼを加熱することにより行った。また、下記(1)の化合物の蒸着速度が1.5Å(オングストローム)/秒(1.5×10
-10m/秒)となるように蒸着した。
さらに、光電変換膜12上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、上部電極15(透明導電性膜)(厚み:10nm)を形成した。上部電極15上に、加熱蒸着により封止層としてSiO膜を形成した後、その上にALCVD法により酸化アルミニウム(Al
2O
3)層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0127】
【化16】
【0128】
<実施例2〜15および比較例1〜5>
(1)の化合物の代わりに表1に示される化合物を使用し、化合物およびフラーレン(C
60)の蒸着量を表1「化合物(nm):C
60(nm)」に示される蒸着量で共蒸着した以外は、実施例1と同様の手順に従って、光電変換素子を作製した。
【0129】
下記(1)〜(15)の化合物は上記式(1)で表される化合物(A)に該当する。また、下記比較化合物(1)は特開2010−40280号公報に記載の化合物である。また、下記比較化合物(2)は特開平7−211457号公報に記載の化合物である。
【0130】
【化17】
【0131】
上記(1)〜(15)の化合物は公知の方法を利用することで合成した。化合物の同定はMS測定および
1H-NMR測定により行った。
以下に、上記(3)の化合物について具体的な合成スキームを示す。また、
図3に上記(3)の化合物の
1H-NMRスペクトル図を示す。
【0132】
【化18】
【0133】
<素子駆動の確認>
得られた各光電変換素子について、光電変換素子として機能するかどうかの確認を行った。具体的には、得られた光電変換素子の下部電極および上部電極に、2.0×10
5V/cmの電界強度となるように電圧を印加して、暗所と明所における電流値を測定した。結果、いずれの光電変換素子においても、暗所では100nA/cm
2以下の暗電流を示すが、明所では10μA/cm
2以上の電流を示し、光電変換素子として機能することが確認された。
【0134】
<応答性の評価>
得られた各光電変換素子について応答性を評価した。
具体的には、得られた各光電変換素子に2×10
5V/cmの電場を印加した状態で上部電極(透明導電性膜)側から光を照射し、そのときの0から98%信号強度への立ち上がり時間を求めた。表1に実施例1の立ち上がり時間を10としたときの相対値を示す(「>200」は、相対値が200超であることを表す)。なお、相対値の求め方は以下のとおりである。
(相対値)=10×(各実施例および比較例における0から98%信号強度への立ち上がり時間)/(実施例1における0から98%信号強度への立ち上がり時間)
相対値が小さいほど、立ち上がり時間が短く、応答性に優れることを表す。実用上、相対値は20以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0135】
<光電変換効率(外部量子効率)の評価>
得られた各光電変換素子について光電変換効率を評価した。
具体的には、得られた各光電変換素子の下部電極および上部電極に、2.0×10
5V/cmの電界強度となるように電圧を印加し、この電圧における各化合物(光電変換材料)の最大波長で外部量子効率を測定した。その結果、実施例1の外部量子効率を1としたときの相対値が0.8以上のものを「A」、0.8未満0.6以上のものを「B」、0.6未満のものを「C」とした。結果を表1に示す。実用上、「A」または「B」であることが好ましく、「A」であることがより好ましい。
【0136】
表1中、「化合物(nm):C
60(nm)」における「化合物(nm)」は、化合物の単層換算での蒸着量を示す。また、「化合物(nm):C
60(nm)」における「C
60(nm)」は、フラーレン(C
60)の単層換算での蒸着量を示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1から分かるように、光電変換材料が上記式(1)で表される化合物(A)を含まず、光電変換材料として上記式(1)中のAがカルボキシ基を有する比較化合物(1)を使用する比較例1は、蒸着時に分解し、素子を作製することができなかった。また、光電変換材料が上記式(1)で表される化合物(A)を含まず、光電変換材料として芳香族アミン部位を有さない比較化合物(2)を使用する比較例5は、蒸着により素子を作製することはできたが、応答性が不十分であった。
また、光電変換材料が上記式(1)で表される化合物(A)を含むがn型半導体を含まない比較例3および4は応答性および光電変換効率が不十分であった。
【0139】
一方、光電変換材料が上記式(1)で表される化合物(A)とn型半導体とを含む本願実施例は、いずれも蒸着により作製可能であり、また、得られた素子はいずれも優れた応答性および高い光電変換効率を示した。なかでも、式(1)中のAが酸素原子または=CR
C3R
C4である実施例1〜14はより優れた応答性を示した。そのなかでも、化合物(A)が上記式(2)で表される化合物(a1)である実施例1〜10はより高い光電変換効率を示した。
実施例1と13との対比から、上記R
3と上記R
4が互いに結合してベンゼン環を形成する実施例1の方がより優れた応答性およびより高い光電変換効率を示した。
実施例1と2との対比から、上記R
1と上記R
2が互いに結合して環を形成しない実施例1の方がより優れた応答性を示した。
実施例1と3との対比から、上記R
1〜R
6のうち少なくとも1つがハロゲン原子である実施例3の方がより優れた応答性を示した。
実施例3と4との対比から、上記Ar
1または上記Ar
2が置換基としてアリール基またはヘテロアリール基を有する実施例4の方がより優れた応答性を示した。
実施例1と11と12との対比から、上記Xが酸素原子である実施例1の方がより高い光電変換効率を示した。
実施例1と7と8〜10との対比から、上記式(1)または上記式(2)中のAが酸素原子または上記式(Z1)で表される基である実施例1および8〜10の方がより優れた応答性を示した。
実施例1と7と8〜10と13と14の対比から、上記式(1)または上記式(2)中のAが上記式(Z1)で表される基である実施例8〜10および14の方がより優れた応答性を示した。
実施例9と10との対比から、上記Ar
1と上記Ar
2が互いに結合して環を形成しない実施例9の方がより優れた応答性を示した。
実施例1と6との対比から、上記Ar
1と上記R
1、および、上記Ar
2と上記R
6、のうち少なくとも一方が互いに結合して環を形成する実施例6の方がより優れた応答性を示した。
【0140】
<撮像素子の作製>
図2に示す形態と同様の撮像素子を作製した。すなわち、CMOS基板上に、アモルファス性TiN30nmをスパッタ法により成膜後、フォトリソグラフィーによりCMOS基板上のフォトダイオード(PD)の上にそれぞれ1つずつ画素が存在するようにパターニングして下部電極とし、電子ブロッキング層の形成以降は実施例1〜15および比較例1〜5と同様の手順に従って、撮像素子を作製した。その評価も同様に行ったところ、表1と同様の結果が得られ、本発明の光電変換素子は撮像素子として使用した場合にも、蒸着により作製可能であり、また、得られた素子は優れた応答性および高い光電変換効率を示すことが分かった。