特許第5992387号(P5992387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992387
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】洗浄装置、洗浄方法および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   H01L21/304 642Z
   H01L21/304 642A
   H01L21/304 642F
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-216760(P2013-216760)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-79888(P2015-79888A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大 津 孝 彦
(72)【発明者】
【氏名】百 武 宏 展
【審査官】 ▲高▼須 甲斐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−198689(JP,A)
【文献】 特開2006−141265(JP,A)
【文献】 特開2009−267167(JP,A)
【文献】 特開2005−183627(JP,A)
【文献】 特開2007−059841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、前記洗浄槽を上方から覆うカバーと、前記カバーと前記洗浄槽の間に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルとを備えた洗浄装置を用いて洗浄処理を行なう洗浄方法において、
前記カバーを開として、前記被処理体を前記洗浄槽内へ搬入する工程と、
前記カバーを閉として、前記被処理体が第1処理液で全部かくれる状態で第1洗浄処理を施す工程と、
前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内の第1処理液の液面に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみにより前記カバーの裏面を洗浄する工程と、
を備えたことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記噴射ノズルから第1処理液を噴射する際、前記洗浄槽内に設けられたノズルを介して第1処理液を吐出して前記洗浄槽内から第1処理液をオーバーフローさせることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記カバーの裏面を洗浄した後、前記カバーを閉じたまま、前記洗浄槽内の前記第1処理液を第2処理液に入れ換えて、前記被処理体に対して前記第2処理液により第2洗浄処理を施す工程を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄槽内へ搬送される前記被処理体に薬液としてSPMが付着され、前記第1処理液は純水を含み、前記第2処理液はSC1を含むことを特徴とする請求項3記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記第1処理液の液面から跳ね返る前記第1処理液は40℃〜80℃の純水を含むことを特徴とする請求項4記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記噴射ノズルは前記洗浄内の第1処理液の液面に対して前記第1処理液を噴射するとともに、前記カバーの裏面に対しても前記第1処理液を噴射することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の洗浄方法。
【請求項7】
被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、
前記洗浄槽を上方から覆うカバーと、
前記カバーと前記洗浄槽の間に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルと、
前記洗浄槽と、前記カバーと、前記噴射ノズルを駆動制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記カバーを開として、前記被処理体の前記洗浄槽内への搬入と、
前記カバーを閉として、前記被処理体が第1処理液で全部かくれる状態での第1洗浄処理と、
前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内に貯留された前記第1処理液の液面に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみによる前記カバーの裏面に対する洗浄と、
を実行させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記噴射ノズルから第1処理液を噴射する際、前記洗浄槽内に設けられたノズルを介して前記第1処理液を吐出して前記洗浄槽内から前記第1処理液オーバーフローさせることを特徴とする請求項7に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記カバーの裏面を洗浄した後、前記カバーを閉じたまま、前記洗浄槽内の前記第1処理液を第2処理液に入れ換えて、前記被処理体に対して前記第2処理液により第2洗浄処理を施すことを更に備えたことを特徴とする請求項7または8記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄槽内へ搬送される前記被処理体に薬液としてSPMが付着され、前記第1処理液は純水を含み、前記第2処理液はSC1を含むことを特徴とする請求項9記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記第1処理液の液面から跳ね返る前記第1処理液は40℃〜80℃の純水を含むことを特徴とする請求項10記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記噴射ノズルは前記洗浄槽内の第1処理液の液面に対して前記第1処理液を噴射するとともに、前記カバーの裏面に対しても前記第1処理液を噴射することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか記載の洗浄装置。
【請求項13】
コンピュータに洗浄方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
洗浄方法は、
被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、前記洗浄槽を上方を覆うカバーと、前記カバーの裏面に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルとを備えた洗浄装置を用いて洗浄処理を行なう洗浄方法において、
前記カバーを開として、前記被処理体を前記洗浄槽内へ搬入する工程と、
前記カバーを閉として、前記被処理体が第1処理液で全部かくれる状態で第1洗浄処理を施す工程と、
前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内の第1処理液に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみにより前記カバーの裏面を洗浄する工程と、
を備えたことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用の処理液を貯留した洗浄槽内で被処理体を処理液に浸漬して洗浄する洗浄装置、洗浄方法およびコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)に種々の工程によりトランジスタ等の素子を形成するが、その表面にパーティクル、有機汚染物、金属不純物等のコンタミネーションが存在すると素子の性能が劣化してしまうため、ウエハを洗浄してこれらを除去する必要がある。このようなウエハの洗浄処理としては、洗浄槽内に所定の処理液を貯留し、その中にウエハを浸漬させるものが多用されている。
【0003】
このような洗浄槽を用いた洗浄処理には、各種の処理液を用いてバッチ式に洗浄するための多数の洗浄槽が配置された洗浄装置が用いられている。
【0004】
ところで、洗浄槽上に、この洗浄槽を覆うカバーを設けて、洗浄処理中に洗浄槽内に異物が混入することを防止している。このようなカバーの裏面には、洗浄処理中に異物が付着することがある。
【0005】
例えば、ウエハに前処理工程中の薬液が付着した状態でこのウエハが洗浄槽内に搬入される際、ウエハ上の薬液がカバーの裏面に付着してしまうことがある。この場合、洗浄槽内で処理液を用いて洗浄処理を施すと、カバーの裏面の薬液と洗浄槽内の処理液が反応し、洗浄槽内へ反応物がパーティクルとして落下し、ウエハ表面に残ることがある。
【特許文献1】特開2007−7577号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、洗浄槽を覆うカバーを容易かつ簡単に洗浄することができる洗浄装置、洗浄方法および記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、前記洗浄槽を上方から覆うカバーと、前記カバーと前記洗浄槽の間に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルとを備えた洗浄装置を用いて洗浄処理を行なう洗浄方法において、前記カバーを開として、前記被処理体を前記洗浄槽内へ搬入する工程と、前記カバーを閉として、前記被処理体が第1処理液で全部かくれる状態で第1洗浄処理を施す工程と、前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内の第1処理液の液面に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみにより前記カバーの裏面を洗浄する工程と、を備えたことを特徴とする洗浄方法である。
【0008】
本発明は、被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、前記洗浄槽を上方から覆うカバーと、前記カバーと前記洗浄槽の間に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルと、前記洗浄槽と、前記カバーと、前記噴射ノズルを駆動制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記カバーを開として、前記被処理体の前記洗浄槽内への搬入と、前記カバーを閉として、前記被処理体が前記第1処理液で全部かくれる状態での第1洗浄処理と、前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内に貯留された前記第1処理液の液面に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみによる前記カバーの裏面に対する洗浄と、を実行させることを特徴とする洗浄装置である。
【0009】
本発明は、コンピュータに洗浄方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、洗浄方法は、被処理体の洗浄に用いられる洗浄槽と、前記洗浄槽を上方を覆うカバーと、前記カバーの裏面に設けられて処理液を噴射する噴射ノズルとを備えた洗浄装置を用いて洗浄処理を行なう洗浄方法において、前記カバーを開として、前記被処理体を前記洗浄槽内へ搬入する工程と、前記カバーを閉として、前記被処理体が第1処理液で全部かくれる状態で第1洗浄処理を施す工程と、前記噴射ノズルから前記第1処理液を前記洗浄槽内の第1処理液に対して噴射し、前記第1処理液の液面から跳ね返る第1処理液のみにより前記カバーの裏面を洗浄する工程と、を備えたことを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、洗浄槽を覆うカバーの裏面を容易かつ確実に洗浄することができ、薬液同士が反応してパーティクルが発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施の形態による洗浄装置を示す概略系統図。
図2図2は洗浄装置全体を示す断面図。
図3図3図2にIII−III線断面図。
図4図4(a)〜(i)は本発明の実施の形態による洗浄方法を示す図。
図5図5は本発明の洗浄方法の特徴を示す図。
図6図6(a)(b)(c)はカバー裏面における塩発生のメカニズムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図5により説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態による洗浄装置を示す概略系統図であり、図2は洗浄装置全体を示す断面図、図3図2のIII−III線断面図、図4は本発明の実施の形態による洗浄方法を示す図、図5は本発明の実施の形態による洗浄方法の特徴を示す図である。
【0014】
本実施の形態による洗浄装置は、図1乃至図3に示すように筐体1と、その中に設けられた洗浄槽2および外槽8とを有しており、洗浄槽2内に所定の処理液が貯留されるようになっている。そして、後述するように所定の供給源から洗浄槽2内に設けられたノズル3(図2,3参照)を介して、所定の処理液を洗浄槽2内に供給することによりその中にその処理液が貯留される。そしてその処理液中に複数のウエハWを浸漬させ、洗浄槽2から処理液をオーバーフローさせた状態で洗浄処理が行われる。洗浄槽2からオーバーフローした処理液は、外槽8へ流れるようになっている。
【0015】
洗浄槽2内においては、ウエハ保持部材4によって複数、例えば50枚のウエハWが保持される。ウエハ保持部材4は、ウエハWを立てた状態で水平方向に保持するウエハ保持部5と、ウエハ保持部5の端部から洗浄槽2の内壁に沿って上方に延び、ウエハ保持部5を支持する支持部6とを有しており、図示しない駆動機構により支持部6を介してウエハ保持部5を上下動することにより内槽2に対するウエハWの出し入れが可能となっている。ウエハ保持部材4に対するウエハWの受け渡しは、適宜の搬送装置により行われる。また、ウエハ保持部5は、ウエハWの下端近傍を保持する第1の保持棒5aと、ウエハWのその少し上方を保持する第2の保持棒5bとを有しており、第1および第2の保持棒5a、5bにはウエハWを保持するための複数の溝が形成されている。
【0016】
洗浄槽2の上方には、洗浄槽2を覆うカバー10が開閉自在に設けられている。カバー10は中央において分割片10a,10bに2分割されている。カバー10は、カバー開閉機構20によりシャフト20a、20bを介して分割片10a,10bを回動させることにより、開閉されるようになっている。
【0017】
カバー10は、処理液中に洗浄槽2内へパーティクル等が落下して、処理液中にパーティクル等が混入することを防止するものであり、洗浄槽2の液面を極力広い範囲で覆うことが好ましい。
【0018】
上述のように、洗浄槽2の外側にはオーバーフローした処理液を受けるための外槽8が設けられている。洗浄槽2内のノズル3には、処理液を供給するための処理液供給配管40が接続されている。処理液供給配管40の他端側には、処理液供給機構41が配置されている。処理液供給機構41は、SC1を供給するSC1供給源42と、純水(DIW)を供給するDIW供給源43とを有しており、処理液供給配管40には、これらからそれぞれ延びる配管46,47が、開閉バルブ51,52を介して接続されている。したがって、開閉バルブ51,52を操作することにより、処理液として、SC1、DIWを選択的に洗浄槽2に供給可能となっている。
【0019】
処理液供給配管40には、上流側から順にダンパ58、ヒータ59、フィルタ60、開閉バルブ61が設けられている。そして所定の処理液を洗浄槽2に向けて送給し、ヒータ59によって処理液を所定の温度に加熱し、フィルタ60によって処理液中の不純物を除去した後に洗浄槽2に処理液が供給される。
【0020】
さらにまた図1に示すように、処理液供給配管40には、開閉バルブ54を有する配管45の一端が接続され、この配管45の他端に噴射ノズル2Aが接続されている。
【0021】
噴射ノズル2Aは洗浄槽2の上方に設けられたカバー10と洗浄槽2の間に配置され、処理液供給配管40から供給される処理液を洗浄槽2内のウエハWおよび処理液の液面に対して噴射するようになっている。この際、噴射ノズル2Aから処理液の液面に噴射された処理液は、液面から跳ね返ってカバー10の裏面に達し、液面から跳ね返る処理液によってカバー10の裏面を洗浄することができる。
【0022】
なお、噴射ノズル2Aは上下方向に向って可動式となっていてもよく、この場合図示しない駆動機構によって噴射ノズル2Aの噴射方向を連続的に上下方向に可変とすることができる。例えば、図5に示すように噴射ノズル2Aを洗浄槽2の第1処理液L側に向けて液面から跳ね返る第1処理液Lによってカバー10の裏面を洗浄したり、噴射ノズル2Aをカバー10の裏面に向けて直接、第1処理液Lによりカバー10の裏面を洗浄することができる。
【0023】
一方、洗浄槽2の底部および外槽8の底部中央には、それぞれ処理液排出配管62,63が接続されており、これらにはそれぞれ開閉バルブ64,65が接続されている。そして、処理液を入れ替える際には、開閉バルブ64,65を開にして洗浄槽2および外槽1に貯留されている処理液を処理液排出配管62,63から排出し、その後開閉バルブ64,65を閉じて次の処理液を洗浄槽2内に供給する。
【0024】
以上のような洗浄装置の各構成部、例えば各配管に設けられた開閉バルブや、ウエハWの搬送機構等は、プロセスコントローラ70を有する制御装置70Aに接続されて制御される。プロセスコントローラ70には、工程管理者が洗浄装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、洗浄装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース71が接続されている。
【0025】
また、プロセスコントローラ70には、洗浄装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ70の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶媒体72が接続されている。レシピを格納する記憶媒体72はハードディスクや半導体メモリ等の記憶媒体からなっていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性の記憶媒体からなっていてもよい。なお他の装置から、例えば専用回線を介してレシピをこれら記憶媒体72に適宜伝送させるようにしてもよい。
【0026】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース71からの指示等にて任意のレシピを記憶媒体72から呼び出してプロセスコントローラ70に実行させることで、プロセスコントローラ70の制御下で、洗浄装置での所望の処理が行われる。
【0027】
次に、以上のように構成される洗浄装置における洗浄方法について図4および図5により説明する。
【0028】
本実施の形態においては、洗浄槽2における処理の前処理洗浄装置の洗浄槽100内で、ウエハWに対してSPM(HSOとHを含む薬液)Lを用いた洗浄処理が施される(図4(a)参照)。この場合、洗浄槽100上方には、分割片110a、110bからなるカバー110が設置され、このカバー110により洗浄槽100内へ外方のパーティクルが混入しないようになっている。
【0029】
次にカバー110が開となり、ウエハWは洗浄槽100から外方へ引抜かれ、その後ウエハWは本発明による洗浄装置の洗浄槽2まで搬送装置(図示せず)により搬送される。この場合、洗浄槽2上方へ搬送されたウエハWには前処理洗浄処理中のSPMが付着していることがある。
【0030】
この間洗浄槽2が空の状態から、開閉バルブ52および61を開き、DIW供給源43から処理液供給配管40およびノズル3を介して洗浄槽2内に純水(DIW)を供給し、洗浄槽2内を純水(DIW)で満たす。そして、ウエハWが浸漬されるまでの間は、カバー開閉機構20によりカバー10を閉じた状態としておく。この場合、洗浄槽2内へはヒータ59により加熱され、温度が40°〜80°となるよう温度調整された高温のDIWが供給される。このような高温のDIWを第1処理液Lとよぶ。
【0031】
次いで、カバー開閉機構20により、カバー10を開き、ウエハ保持部材4のウエハ保持部5を洗浄槽2の上方に位置させた状態で、図示しない搬送装置から複数、例えば50枚のウエハWをウエハ保持部5に受け渡し、図示しない駆動機構によりウエハ保持部材4を降下させ、ウエハWを洗浄槽2内の第1処理液(高温のDIW)L中に浸漬する(図4(b)参照)。カバー開閉機構20によりカバー10を開く際には、図2に示すように、カバー開閉機構20のロータリーアクチュエータからなる駆動機構によりシャフト20a、20bを回転させることにより、分割片10a,10bを回動させる。
【0032】
そして、ウエハWを洗浄槽2の第1処理液Lに浸漬した後、図4(c)に示すように、カバー開閉機構20により、カバー10を閉じて液面をカバーで覆った状態する。このように洗浄槽2をカバー10で覆った後、ノズル3から第1処理液Lを洗浄槽2内に供給し、第1処理液Lを洗浄槽2からオーバーフローさせつつ、または、所定時間第1処理液Lを洗浄槽2からオーバーフローさせた後にオーバーフローを止めて第1処理液Lによる洗浄を行う(第1洗浄処理)。
【0033】
なお、第1洗浄処理における洗浄槽2へのウエハWの浸漬については、上記に限ることはなく、洗浄槽2内が空または第1処理液Lで満たされていない状態でウエハWを搬送し、その後、カバー開閉機構20により、カバー10を閉じて洗浄槽2をカバーで覆った状態にして、洗浄槽2内のウエハWが隠れるまで第1処理液Lを供給してウエハWを浸漬してもよく、また、洗浄槽2内が空または第1処理液Lで満たされていない状態でウエハWを搬送し、その後、洗浄槽2内のウエハWが隠れるまで第1処理液Lを供給してウエハWを浸漬して、そして、カバー開閉機構20により、カバー10を閉じて洗浄槽2をカバーで覆った状態にしてもよい。
【0034】
次に、開閉バルブ54が開となり、第1処理液L(高温のDIW)が噴射ノズル2A側へ供給され、この噴射ノズル2Aから第1処理液Lが洗浄槽2内の第1処理液L中に浸清されたウエハWおよび第1処理液L液面に対して噴射される。
【0035】
このように噴射ノズル2Aから第1処理液Lを噴射することにより、ウエハWに対する洗浄処理を確実に行なうことができる。同時に噴射ノズル2Aから噴射される第1処理液Lが液面から跳ね返ってカバー10の裏面に達し、カバー10の裏面を洗浄する。
【0036】
次に図4(c)、図5および図6(a)(b)(c)により、噴射ノズル2Aから第1処理液Lを噴射する際の作用およびカバー10の裏面における塩の発生のメカニズムについて述べる。
【0037】
上述のように、洗浄槽2内へ搬入されるウエハWには、洗浄槽2における処理の前処理洗浄処理中のSPMが付着して残留している。この場合、ウエハWに付着したSPMは洗浄槽2内の第1処理液L中に混入し、第1処理液Lと反応して第1処理液Lが蒸発する。このとき、蒸発した第1処理液Lに含まれるSPMのうちとりわけHSO成分Pがカバー10の裏面に付着する(図5参照)。
【0038】
そして、カバー10の裏面に付着したH2SO4成分Pが、後述のように洗浄槽2内でNHOHとHを含むSC1(第2処理液)を用いてウエハWに対して洗浄処理を施した場合、第2処理液L中のNHOH成分Pが蒸発してカバー10の裏面に付着し、HSO成分PとNHOH成分Pとがカバー10の裏面において反応して塩Pを生成することが考えられる。この場合、カバー10の裏面で生成した塩Pは、その後カバー10から落下してウエハW表面にパーティクルとして付着してしまうことがある。
【0039】
これに対して本実施の形態によれば、噴射ノズル2Aから噴射した第1処理液Lが洗浄槽2内の第1処理液Lの液面から跳ね返り、この跳ね返った第1処理液Lによりカバー10の裏面を洗浄することができる。このためカバー10裏面にHSO成分Pが付着していてもこのHSO成分Pを確実に第1処理液Lにより洗浄することができる。このためその後洗浄槽2内で第2処理液(SC1)を用いてウエハWに対して洗浄処理を施しても、カバー10の裏面においてHSO成分PとSC1のNHOH成分Pとが反応して塩Pを発生させることはない。このため塩PがウエハW上にパーティクルとして残留することはない。
【0040】
なお、噴射ノズル2Aから噴射した第1処理液Lが洗浄槽2内の第1処理液Lの液面から跳ね返った第1処理液Lの温度は40℃〜80℃が好ましく、カバー10の裏面のHSO成分P1を効果的に洗浄することができる。上述では洗浄槽2内に供給される第1処理液Lと噴射ノズル2Aから噴射した第1処理液Lの温度は同じ温度としたが、これに限ることはなく、洗浄槽2内に供給される第1処理液Lと噴射ノズル2Aから噴射した第1処理液Lの温度が異なる温度であってもよく、第1処理液Lの液面から跳ね返った第1処理液Lの温度が40℃〜80℃であれば確実に洗浄することができる。また、噴射ノズル2Aから洗浄槽2内の第1処理液Lの液面に対して噴射している間、洗浄槽2内に設けられたノズル3から第1処理液Lを連続的または断続的に吐出して第1処理液Lを洗浄槽2からオーバーフローさせてカバー10に付着していたHSO成分P1を外槽8へ流れるようにしてもよく、これに限らず、噴射ノズル2Aから洗浄槽2内の第1処理液Lの液面への噴射と浄槽2内に設けられたノズル3からの第1処理液Lの吐出(洗浄槽2から第1処理液Lをオーバーフローさせる)を交互に行なうようにしてもよい。
【0041】
次に図4(d)に示すように、開閉バルブ61を閉じ、ノズル3からの第1処理液Lの供給を停止する。次に開閉バルブ64および65を開き、処理液排出配管62および63を介して洗浄槽2および外槽8から第1処理液Lを排出する。他方開閉バルブ54は開いたまま、ノズル2Aから第1処理液LをウエハWに噴射させ、露出したウエハWが乾かないように抑制しつつ、第1処理液LによるウエハWの表面の洗浄処理を行う。
【0042】
次に図4(e)に示すように、開閉バルブ64、65を閉じ、開閉バルブ51および開閉バルブ61を開き、SC1供給源42から処理液供給配管40およびノズル3を介して洗浄槽2内に、NHOHとHを含むSC1(第2処理液)Lを供給し、洗浄槽2から第2処理液Lをオーバーフローさせながら、または、所定時間第2処理液L2を洗浄槽2からオーバーフローさせた後にオーバーフローを止めてウエハWに対して第2処理液Lを用いた洗浄処理を施す(第2洗浄処理)。
【0043】
この場合、洗浄槽2は上方に設置されたカバー10により覆われており、洗浄槽2内の第2処理液L中のNHOH成分Pが蒸発してカバー10の裏面に達することも考えられる。
【0044】
しかしながら、本実施の形態によれば、前工程において噴射ノズル2Aから第1処理液Lを洗浄槽2内の第1処理液Lへ噴射し、洗浄槽2内の第1処理液Lの液面から跳ね返る第1処理液Lによりカバー10の裏面を洗浄することにより、カバー10の裏面に残留するHSO成分Pを洗浄して除去している(図4(c)参照)。このため、洗浄槽2内の第2処理液L中のNHOH成分Pが蒸発してカバー10の裏面に達しても、カバー10の裏面においてHSO成分PとNHOH成分Pとが反応して塩Pを生成することはなく、生成した塩PからウエハW上にパーティクルとして付着することもない。
【0045】
次に図4(f)に示すように、開閉バルブ52および開閉バルブ61を開き、DIW供給源43から処理液供給配管40およびノズル3を介して洗浄槽2内に、DIWを供給する。この場合、洗浄槽2へは加熱されない低温(室温程度)のDIWが供給される。このような低温のDIWを第3処理液Lとよぶ。
【0046】
このように洗浄槽2内へ低温のDIW(第3処理液)Lを供給し、洗浄槽2から処理液をオーバーフローさせながら第2処理液Lを第3処理液Lに置換し、その後、ウエハWに対して第3処理液Lを用いた洗浄処理を施す(第3洗浄処理)。
【0047】
なお、第3処理液L3を用いた洗浄処理においては、洗浄処理の間、第3処理液L3を供給してオーバーフローさせてもよく、また、第2処理液Lから第3処理液Lへの置換が完了したらオーバーフローを止めてもよい。
【0048】
図4(f)において、カバー10は引き続いて洗浄槽2上を覆っている。
【0049】
次に図4(g)に示すように、開閉バルブ64、65を開とし、洗浄槽2および外槽8から第3処理液Lを排出する。同時に開閉バルブ61を閉とし、開閉バルブ54を開として、噴射ノズル2Aから第3処理液LをウエハWに対して噴射し、ウエハWを第3処理液Lにより洗浄する。洗浄後の第3処理液Lは洗浄槽2から排出される。
【0050】
次に図4(h)に示すように、開閉バルブ54を閉とし、開閉バルブ61を開として、ノズル3から洗浄槽2内へ第3処理液Lを供給し、洗浄槽2から第3処理液Lをオーバーフローさせながら、ウエハWに対して第3処理液Lを用いた洗浄処理(第3洗浄処理)を繰り返す。
【0051】
図4(g)(h)に示す工程中において、洗浄槽2はカバー10により覆われている。
【0052】
次に図4(i)に示すように、カバー10が開き、洗浄槽2内のウエハWは開放されたカバー10を介して外方へ搬送され、後工程においてウエハWに対する乾燥工程が施される。
【0053】
以上のように本実施の形態によれば、図4(c)に示す工程において、噴射ノズル2Aから第1処理液Lを洗浄槽2内の第1処理液Lへ噴射し、洗浄槽2内の第1処理液Lの液面から跳ね返る第1処理液Lによりカバー10の裏面を洗浄することができるので、カバー10の裏面にHSO成分Pが残留していても、このHSO成分Pを確実に洗浄して除去することができる。このため、図4(e)に示す工程において、洗浄槽2内の第2処理液L中のNHOH成分Pが蒸発してカバー10の裏面に達しても、カバー10の裏面においてHSO成分PとNHOH成分Pとが反応して塩Pを生成することはなく、生成した塩PからウエハW上にパーティクルとして付着することもない。
【0054】
また図4(c)に示す工程において、噴射ノズル2Aから第1処理液LをウエハWに噴射してウエハWを確実に洗浄することができ、同時に噴射ノズル2Aから噴射する第1処理液Lが洗浄槽2内の第1処理液Lの液面から跳ね返ってカバー10の裏面を洗浄することができる。
【0055】
なお、本実施例においては、洗浄槽2と外槽8が一体に設けられていたが、外槽8が一体に設けられていなくともよい。例えば、洗浄槽2からオーバーフローした処理液を下方で受け止めるような形態でもよい。特に上述に限ることはない。
【符号の説明】
【0056】
1 筐体
2 洗浄槽
2A 噴射ノズル
3 ノズル
4 ウエハ保持機構
5 ウエハ保持部
8 外槽
10 カバー
10a、10b 分割片
20 カバー開閉機構
20a、20b シャフト
40 処理液供給配管
41 処理液供給機構
62,63 処理液排出配管
70 プロセスコントローラ
70A 制御装置
72 記憶媒体
W 半導体ウエハ
薬液
第1処理液
第2処理液
第3処理液
図1
図2
図3
図4
図5
図6