(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に例示説明する。
【0014】
図1に示すシート材巻き付け装置1は、断面が一様の部材の外周面にシート材を巻き付けるために用いられるものである。本実施の形態においては、このシート材巻き付け装置1を、ウールワックス等の硬化特性のない油性防錆剤を塗布した矩形形状のシート材(布材)を、橋梁添架管路群を構成する断面円形の管路(鋼管)の外周面に巻き付ける作業に用いるものとした場合を示す。
【0015】
図1〜
図3に示すように、シート材巻き付け装置1は本体フレーム10を有している。本体フレーム10は一対のフレーム体(第1支持体、第2支持体)11と一対のサイドプレート(連結体)12とを備える。なお、シート材巻き付け装置1は、その一方のフレーム体11の側の構成と他方のフレーム体11の側の構成とが左右対称であるが基本的に同一の構成となっている。
【0016】
これらのフレーム体11は、例えば鋼板やアルミ板等の板材に開放孔11aと肉抜き孔11bとを設けることにより、薄い矩形形状に形成されている。フレーム体11の両側部には、それぞれ外側に向けて直角に折り曲げられた側部フランジ11cが一体に設けられ、フレーム体11の上部には、斜め外側に向けて突出する上部フランジ11dが一体に設けられている。
【0017】
これら一対のフレーム体11は、互いに各フランジ11c、11dを反対側に向けるとともに互いに平行となる姿勢で所定の間隔を空けて対向して配置されている。
【0018】
一対のサイドプレート12は、例えば鋼板やアルミ板等により矩形の板状に形成される。これらのサイドプレート12は、それぞれ一方の側部において一方のフレーム体11の側部フランジ11cの下端側部分にボルトとナット等の締結手段を用いて固定され、他方の側部において他方のフレーム体11の側部フランジ11cの下端側部分にボルトとナット等の締結手段を用いて固定されている。
【0019】
このように、一対のフレーム体11がその下端側において一対のサイドプレート12により互いに連結されることで本体フレーム10が構成されている。サイドプレート12により互いに連結された一対のフレーム体11の間隔は一定であり、これら一対のフレーム体11に挟まれた部分は、フレーム体11の上端側が開放端となるU字状の配置空間13となっている。また、一対のフレーム体11の間隔はこのシート材巻き付け装置1によりシート材を巻き付ける対象となる管路の直径よりも僅かに大きくされている。したがって、シート材巻き付け装置1は配置空間13に管路を挿通することができる。
【0020】
なお、本実施の形態においては、一対のフレーム体11を、その一端側(下端側)において一対のサイドプレート12により連結するようにしているが、これに限らず、一対のフレーム体11の間に配置空間13が区画形成されれば、フレーム体11を何れの部位においてサイドプレート12で連結するようにしてもよい。
【0021】
また、各フレーム体11は、配置空間13が橋梁添架管路群の直列に並ぶ複数本の管路を同時に収容することができる高さ寸法に形成されるのが好ましい。本実施の形態においては、各フレーム体11は、配置空間13に、橋梁添架管路群の直列に並ぶ3本の管路を同時に収容することができる高さ寸法に形成されている。
【0022】
各サイドプレート12の外面には、それぞれ外向きに突出する取っ手14が取り付けられている。これらの取っ手14を両手で把持することで、本体フレーム10を両手で容易に取り扱うことができる。
【0023】
フレーム体11には、それぞれ押付け体(第1押付け体、第2押付け体)20が取り付けられている。これらの押付け体20は、シート材を管路の外周面に押し付けるためのものであり、フレーム体11の開放孔に配置されて、フレーム体11の下端側から上端側に向けて移動可能であるとともに、フレーム体11に沿う位置からフレーム体11に対して配置空間の内部に向けてずれた位置に向けて変位可能となっている。
【0024】
押付け体20は、例えば回転軸21に回動自在に支持されたローラー22で構成することができる。ローラー22で構成された押付け体20は、その回転軸21の軸方向をフレーム体11の幅方向つまりフレーム体11の上端と平行になるように配置される。押付け体20をローラー22で構成することにより、シート材の表面を滑らかに移動させて当該シート材を管路の外周面に確実に巻き付けることができる。
【0025】
なお、押付け体20を構成するローラー22の直径は、フレーム体11の側部フランジ11cの幅寸法と同一または僅かに小さく設定されるのが好ましい。これにより、フレーム体11に沿う位置において、ローラー22をフレーム体11から突出させることなく側部フランジ11cの間に収容しておくことができる。
【0026】
また、ローラー22を、磁力を有する構成とすることもできる。つまり、ローラー22を磁石で構成することもできる。この場合、ローラー22を鋼材等の金属製とし、これを磁化させることにより磁力を有する構成とすることができる。ローラー22を磁力を有する構成とすることにより、その磁力により鋼管で構成された管路の外周面にローラー22を強く押し付けて、シート材を管路の外周面により確実に巻き付けることができる。
【0027】
各フレーム体11には、それぞれ作業者の操作により押付け体20つまりローラー22を当該フレーム体11の下端側から上端側に向けて移動させるとともに他方のフレーム体11の側つまりフレーム体11に沿う位置からフレーム体11に対して配置空間の内部に向けてずれた位置に向けて変位させる駆動機構(第1駆動機構、第2駆動機構)30が設けられる。これらの駆動機構30は、それぞれスライド体(第1スライド体、第2スライド体)31を備えている。スライド体31は、一対のアングル材31aの上下端を細長い連結平板31bで連結した矩形のフレーム状に形成され、それぞれフレーム体11の外側に重ねて配置されている。
【0028】
スライド体31を、フレーム体11に沿ってその下端側から上端側に向けて移動自在に支持するために、フレーム体11の一対の側部フランジ11cの内側には、それぞれ開放孔11aに隣接して上側ガイドレール32が取り付けられ、肉抜き孔11bに隣接して下側ガイドレール33が取り付けられている。これらのガイドレール32、33は、それぞれ側部フランジに11c沿って上下に延びるガイド孔32a、33aを有している。
【0029】
スライド体31のアングル材31aの上端には側部フランジ11cと平行な支持片35が一体に設けられ、この支持片35には上側係合ねじ34aが固定されている。また、スライド体31のアングル材31aの側面には、上側係合ねじ34aに対して下方側に離れて下側係合ねじ34bが固定されている。上側係合ねじ34aは上側ガイドレール32のガイド孔32aに該ガイド孔32aに沿って移動自在となるように係合し、下側係合ねじ34bは下側ガイドレール33のガイド孔33aに該ガイド孔33aに沿って移動自在となるように係合している。したがって、スライド体31はガイドレール32、33に案内されて、フレーム体11に沿ってフレーム体11に対して上下に相対的に移動することができる。なお、スライド体31の移動ストロークは、上側係合ねじ34aが上側ガイドレール32のガイド孔32aの上縁に当接する位置と、下側係合ねじ34bが下側ガイドレール33のガイド孔33aの下縁に当接する位置との間で規制される。
【0030】
スライド体31の支持片35の内側面には、それぞれレバー(第1レバー、第2レバー)36が装着されている。
図4、
図5からも解るように、一対のレバー36は、それぞれ係合アーム部36aと接続アーム部36bとを備えたL字の板状に形成されており、係合アーム部36aと接続アーム部36bとの中間部分において支持片35の内側面に上側係合ねじ34aにより回動自在に取り付けられている。なお、係合アーム部36aは、上側係合ねじ34aの軸心を中心として回動したときに開放孔11aを通して配置空間13の一対のフレーム体11の中間位置にまで突出可能な長さ寸法に形成されるのが好ましい。
【0031】
押付け体20はこれらのレバー36の係合アーム部36aの先端に取り付けられる。本実施の形態では、係合アーム部36aの先端に回転軸21の端部が固定され、この回転軸21に回転自在に支持されたローラー22が一対の係合アーム部36aの間に配置される。一対のレバー36は押付け体20により互いに連結されて一体的に回動する。
【0032】
レバー36の接続アーム部36bは係合アーム部36aに対して直角に突出している。接続アーム部36bは、その先端に接続用ワイヤ37の一端が接続される接続部となっている。レバー36は、接続アーム部36bに接続された接続用ワイヤ37が下方に向けて引き下げられることにより係合アーム部36aを配置空間13に突出させる方向に回動して押付け体20を配置空間13の内部に向けて変位させることができる。
【0033】
押付け体20を、これが設けられるフレーム体11とは反対側のフレーム体11に向けてつまり配置空間13の内部に向けて付勢するために、付勢部材としてのリール式ばね(第1付勢部材、第2付勢部材)38が設けられている。リール式ばね38は、リール体38aとリール体38aに巻き付けられたベルト38bとを有しており、ベルト38bをリール体38aにより一定の張力で巻き取るものである。スライド体31には、上側の連結平板31bに隣接して接続平板39が当該スライド体31に設けられたスリットに嵌め込まれてスライド体31に対して上下の相対移動自在に装着されている。そして、この接続平板39にベルト38bの先端が固定されている。一方、リール体38aはフレーム体11に装着されている。接続平板39には、レバー36の接続アーム部36bに接続された接続用ワイヤ37の他端が接続されている。これにより、レバー36はリール式ばね38により押付け体20を配置空間13の内部に向けて変位させる方向に向けて付勢される。なお、上記のように、リール式ばね38はベルト38bをリール体38aにより一定の張力で巻き取るものであるので、フレーム体11に対してスライド体31が移動しても、その移動位置に拘わらずリール式ばね38からレバー36に加えられる付勢力は一定である。
【0034】
図1、
図2に示すように、押付け体20がフレーム体11の下端側から上端側へ向けて所定位置にまで移動したときに当該押付け体20を配置空間13の側へ変位させるために、それぞれのフレーム体11にストッパ機構Sが設けられる。これらのストッパ機構Sは、押付け体20の回転軸21に設けられるストッパ突起(第1ストッパ突起、第2ストッパ突起)S1とフレーム体11に一体に設けられるストッパ壁S2とを有する。
【0035】
図5に示すように、ストッパ壁S2は、フレーム体11の開放孔11aの両側縁に沿って当該開放孔11aの下端縁から上下方向中間位置にまで延びて設けられている。フレーム体11のストッパ壁S2の上側部分は切り欠かれて開放孔11aを形成する。
【0036】
一方、ストッパ突起S1は円筒状に形成され、レバー36の外側において押付け体20の回転軸21に回転自在に支持されている。スライド体31がフレーム体11の下端側のストローク端にあるときには、ストッパ突起S1はストッパ壁S2の外面に当接している。これにより、レバー36の押付け体20を配置空間13の側に変位させる回動が阻止される。また、スライド体31がフレーム体11に対してその下端側のストローク端から上方に向けて移動する際には、ストッパ突起S1はストッパ壁S2上を回転しながら上方に移動する。そして、スライド体31とともに押付け体20が上方に向けて所定位置にまで移動すると、ストッパ突起S1がストッパ壁S2の上端にまで達してその係合が解除されることになる。ストッパ突起S1のストッパ壁S2に対する係合が解除されると、レバー36はリール式ばね38から加えられる付勢力により押付け体20を配置空間13の側に変位させる方向に回動し、押付け体20は配置空間13の側に変位することになる。
【0037】
なお、ストッパ突起S1のストッパ壁S2への係合が解除されて押付け体20が配置空間13の側に変位させられる上下方向位置は、このシート材巻き付け装置1の配置空間13に配置されてシート材が巻き付けられることになる管路の上下方向中心位置に一致する位置または管路の上下方向中心位置よりも下方に設定されるのが好ましい。
【0038】
スライド体31の下側の連結平板31bの外面には、それぞれ操作用取っ手(第1操作部、第2操作部)15が取り付けられており、これらの操作用取っ手15を操作することによりスライド体31をフレーム体11の下端側から上端側に向けて移動させ、
図6に示すように、押付け体20をフレーム体11の下端側から上端側に向けて移動させるとともに配置空間13の側に変位させることができる。
【0039】
このようなシート材巻き付け装置1を用いて橋梁添架管路群を構成する断面円形の管路の外周面にシート材を巻き付ける作業を行う場合には、その作業を補助するために、シート材送り込み台座40を用いることができる。以下に、シート材送り込み台座40の構成について説明する。
【0040】
図7に示すシート材送り込み台座40は、多段に段組された橋梁添架管路群の所定の管路の下方の狭隘箇所に、その管路に巻き付けるシート材を送り込むためのものであり、例えば鋼板やアルミ板等の板材により矩形の板状に形成された台座本体41を備えている。台座本体41の両側部には、上方に向けて折り曲げられたフランジ部41aが設けられている。シート材送り込み台座40の橋梁添架管路群への送り込み方向は、これらのフランジ部41aが延びる方向とされる。台座本体41の上面の送り込み方向についての一端側には一対の取っ手42が幅方向(送り込み方向に直交する方向)に間隔を空けて並べて取り付けられている。これらの取っ手42を両手で把持することで、シート材送り込み台座40を橋梁添架管路群へ送り込む作業を容易にすることができる。
【0041】
シート材送り込み台座40には、このシート材送り込み台座40を橋梁添架管路群のシート材を巻き付ける対象となる所定の管路に対して正確に位置決めするために、位置決め機構43が設けられている。位置決め機構43は台座本体41の両方のフランジ部41aに設けられている。
【0042】
図8に示すように、位置決め機構43は、一対の支持片44を有している。例えば樹脂製とされるこれらの支持片44は、フランジ部41aの内側面に互いに間隔を空けてボルトとナット等の締結手段を用いて固定されている。また、それぞれの支持片44には、その一部が段差状に切り欠かれることによりフランジ部41aに間隔を空けて対向する支持部44aが一体に設けられている。また、これらの支持部44aには台座本体41の上面に対して接近・離反する方向に延びる案内溝44bが設けられている。
【0043】
一対の支持片44の間にはガイド本体45が設けられている。例えば樹脂製とされるガイド本体45は、その上面に管路の外周面に対応した曲率で凹む凹部45aを有している。また、ガイド本体45の凹部45aの両側部分は、送り込み方向に沿って凹部45aから離れるに連れて台座本体41の上面からの高さが低くなるように傾斜した傾斜面45bとなっている。ガイド本体45の長手方向(送り込み方向)の両端部は段差状に切り欠かれて厚みが薄く形成され、支持片44の支持部44aとフランジ部41aとの間に配置されている。ガイド本体45の両端部にはそれぞれピン部材46が固定され、これらのピン部材46が対応する支持部44aの案内溝44bに挿通されている。ピン部材46は案内溝44bの長手方向に沿って移動自在であり、また、その直径が案内溝44bの溝幅よりも小さいことにより案内溝44b内で長手方向に垂直な幅方向にも若干の移動することができる。したがって、ガイド本体45は、台座本体41の上面に対して接近・離反する方向に移動することができるとともに、送り込み方向の両端部が、それぞれ別々に上下に移動するように若干傾動することができる。
【0044】
ガイド本体45と台座本体41の上面との間には弾性体47が装着され、この弾性体47によりガイド本体45は台座本体41の上面から離れる方向に付勢されている。図示する場合では、弾性体47として2つのスプリング(圧縮コイルばね)を装着した場合を示す。なお、弾性体47はスプリングに限らず、例えば、ゴム片や板ばねなどの他の形態のものとすることもできる。ガイド本体45は、弾性体47の弾性力に抗して台座本体41の上面に接近する方向に移動することができる。
【0045】
台座本体41には一対の挿通用スリット41bが設けられている。これらの挿通用スリット41bは、それぞれ送り込方向に直交するとともに互いに平行に延びて設けられている。また、一対の挿通用スリット41bは、一対のガイド本体45の凹部45aの中心を結ぶ仮想線を中心として対称に設けられている。これらの挿通用スリット41bは、シート材巻き付け装置1の一対のフレーム体11を挿入可能な大きさおよび間隔に形成されており、台座本体41の下面側からシート材巻き付け装置1の一対のフレーム体11を同時に挿通させることができる。
【0046】
なお、
図12〜
図14に示すように、シート材巻き付け装置1の各フレーム体11の側部フランジ11cの外側面に、それぞれストッパ片48を取り付けた構成とすることもできる。この場合、ストッパ片48のフレーム体11の上端を基準とした取付け高さは全て同一とされる。シート材巻き付け装置1の一対のフレーム体11を台座本体41の下面側から挿通用スリット41bに挿入し、当該ストッパ片48を台座本体41の下面に当接させることにより、シート材巻き付け装置1のシート材送り込み台座40に対する挿入量を所定量に規制することができる。これにより、シート材巻き付け装置1をシート材の巻き付け対象となる管路に対して所定位置にセットすることができる。
【0047】
台座本体41の上面の一対の挿通用スリット41bの間の部分に、矩形で薄い板状のスポンジ49を貼り付けた構成とすることもできる。
【0048】
次に、このような構成のシート材巻き付け装置1およびシート材送り込み台座40を用いて、
図9に示す橋梁添架管路群50を構成する断面円形の管路51の外周面にシート材52を巻き付ける手順について説明する。なお、
図9においては、便宜上、9条設けられる管路のうち1つの管路51にのみ符号を付している。
【0049】
図9に示す橋梁添架管路群50は、通信用や電力用のケーブルを橋梁53に添架するためのものであり、例えば、橋梁53の橋桁53aの下部に3条、3段に段組して設置された9条の管路51を有した構成とされる。これらの管路51は、それぞれ断面円形で長尺の鋼管で形成されており、橋桁53aの長手方向に沿って延び、その内部に通信用や電力用のケーブル(不図示)を収容している。本実施の形態においては、各管路51の直径は75mmとされ、隣り合う管路51の間隔はそれぞれ12.5mmとされている。
【0050】
上記橋梁添架管路群50を構成する管路51の、特に中央列の上2段の管路51は、その作業スペースに手を入れることができないため、当該管路51に手作業でシート材52を巻き付けることは困難であるが、上記したシート材巻き付け装置1およびシート材送り込み台座40を用いることで、このような周辺環境が狭隘な管路51に対してもシート材52を容易に巻き付けることができる。
【0051】
シート材52は、その一面にウールワックス等の硬化特性(経年変化によって硬化する特性)のない油性防錆剤を塗布した矩形形状の布材とされ、これらの管路51を防錆処理するために当該管路51の外周面に巻き付けられる。なお、シート材52は、管路51の全周を覆うことができるように、その一辺の長さが管路51の外周長に対応した長さに設定される。このようなシート材52を用いた管路51の防錆処理は、例えば、経年変化によりその外周面に錆びが生じた既設の管路51を補修する際に行うことができるが、新設された管路51に対して行うこともできる。
【0052】
シート材52を構成する布材としては種々のものを用いることができるが、特に不織布を用いるのが好ましい。なお、シート材52としては、布材に限らず、塗布された油性防錆剤を定着させることができるものであれば、例えば紙など種々の材質のものを用いることもできる。
【0053】
また、シート材52の表面に塗布される硬化特性のない油性防錆剤としては、例えばゲル状のウールワックス(ユウレカ防錆剤)を用いるのが好ましい。この場合、油性防錆剤は、ヘラ等を用いて、500μm以上の膜厚となるようにシート材52の表面全体に均一に塗布されるのが好ましい。
【0054】
油性防錆剤が塗付されたシート材52は、
図10に示すように、シート材送り込み台座40の台座本体41の上面に配置される。このとき、シート材52は、その送り込方向の中心位置が、一対の挿通用スリット41bの中間位置に一致するように配置される。
【0055】
図11に示すように、シート材52を載せたシート材送り込み台座40を、巻き付け対象となる管路51とその下側の管路51との間に向けて橋梁添架管路群50の側方から水平に挿入することで、シート材52を巻き付け対象となる管路51の下側に送り込むことができる。以下では、
図11〜
図14に示すように、橋梁添架管路群50を構成する9条の管路51のうち、その中央列の最上段の管路51にシート材52を巻き付ける場合を示す。
【0056】
シート材送り込み台座40に設けられた位置決め機構43は、そのガイド本体45の上端から台座本体41の下面までの距離が、上下に並ぶ管路51の間隔よりも大きくなっている。したがって、シート材送り込み台座40を管路51の間に挿入すると、ガイド本体45は傾斜面45bが管路51の外周面に当接することにより、徐々に弾性体47の弾性力に抗して下方に押し下げられる。そして、シート材52が管路51の真下に配置される位置にまでシート材送り込み台座40が移動すると、ガイド本体45の凹部45aに管路51の外周面が係合する。作業者は、ガイド本体45の凹部45aに管路51の外周面が係合する際の手応えにより、シート材送り込み台座40に載せられたシート材52の送り込み方向の中心位置が巻き付け対象となる管路51の中心と鉛直方向で一致するように当該管路51の真下に配置されたことを認識することができる。また、ガイド本体45の凹部45aが管路51の外周面に係合することにより、シート材送り込み台座40は管路51に対して所定位置に保持されることになる。したがって、シート材送り込み台座40を、橋梁添架管路群50の内側の段に配置される管路51に対しても正確に位置決めすることができる。
【0057】
シート材巻き付け装置1は、シート材送り込み台座40により管路51の真下に配置されたシート材52を、当該管路51の外周面の全周に巻き付けることができる。すなわち、
図12に示すように、シート材巻き付け装置1を、その両方の取っ手14を掴んで、巻き付け対象となる管路51の下方側から橋梁添架管路群50に挿入し、一対のフレーム体11を台座本体41の挿通用スリット41bに挿通させることにより、台座本体41に乗せられているシート材52を挿通用スリット41bから台座本体41の上面に突出する一対のフレーム体11の上端で上方に持ち上げ、管路51の下半分における外周面に巻き付けることができる。
【0058】
このとき、台座本体41の上面にスポンジ49を設けた構成とすれば、フレーム体11に持ち上げられる際にシート材52を安定して管路51の下側の外周面に押し付けることができるとともに、シート材52を管路51の下側の外周面に対してより確実に押し付けることができる。したがって、シート材52を管路51の下側の外周面に確実に巻き付けることができる。
【0059】
ストッパ片48が台座本体41の下面に当接する所定位置にまでシート材巻き付け装置1を上方に押し上げると、シート材52は、管路51の下半分における外周面に巻き付けられ、その両側方部分はフレーム体11に沿って上方に延びた状態とされる。このとき、シート材巻き付け装置1の配置空間13には3つの管路51が縦に並んで収容されるので、シート材巻き付け装置1を下方側の管路51に干渉させることなく所定の管路51に達する位置にまで押し上げることができる。
【0060】
次に、
図12に示す状態から、
図13に示すように、一方(図中左側)の駆動機構30の操作用取っ手15を手で押し上げてスライド体31を上方に向けて移動させる。スライド体31が所定位置にまで上昇すると、ストッパ突起S1のストッパ壁S2への係合が解除され、押付け体20つまりローラー22は管路51の上下方向中心位置に一致する高さにおいて配置空間13の側への変位が可能な状態とされる。したがって、押付け体20はリール式ばね38により付勢された状態でシート材52を挟んで管路51の外周面に押し付けられる。そして、さらに操作用取っ手15を手で押し上げてスライド体31を上昇させると、押付け体20つまりローラー22は、上方に移動しつつ他方のフレーム体11の側に向けて変位し、リール式ばね38の付勢力によりシート材52を管路51の外周面に押し付けた状態で当該管路51に沿って上方に移動する。
【0061】
押付け体20が管路51の頂点付近に達すると、シート材52の一方の側方部分の管路51の上方一方側の外周面への巻き付けが完了する。
【0062】
次に、一方の駆動機構30の操作用取っ手15を下方に引き下げてスライド体31を下側のストローク端位置にまで戻し、
図14に示すように、他方(図中右側)の駆動機構30の操作用取っ手15を手で押し上げて他方のスライド体31を上方に向けて移動させる。スライド体31が所定位置にまで上昇すると、ストッパ突起S1のストッパ壁S2への係合が解除され、押付け体20つまりローラー22は管路51の上下方向中心位置に一致する高さにおいて配置空間13の側への変位が可能な状態とされる。したがって、押付け体20はリール式ばね38により付勢された状態でシート材52を挟んで管路51の外周面に押し付けられる。そして、さらに操作用取っ手15を手で押し上げてスライド体31を上昇させると、押付け体20つまりローラー22は、上方に移動しつつ他方のフレーム体11の側に向けて変位し、リール式ばね38の付勢力によりシート材52を管路51の外周面に押し付けた状態で当該管路51に沿って上方に移動する。
【0063】
押付け体20が管路51の頂点付近に達すると、シート材52の他方の側方部分の管路51の上方他方側の外周面への巻き付けが完了する。
【0064】
なお、ローラー22を磁力を有する構成とすれば、当該磁力によりローラー22の管路51に対する押付け力を高めて、シート材52をより確実に管路51の外周面に巻き付けることができる。
【0065】
上記のように、シート材巻き付け装置1を用い、その操作用取っ手15を操作してスライド体31を押し上げることで、押付け体20をシート材52を挟んだ状態で管路51の外周面に沿って移動させることにより、シート材52の管路51から上方に突出した両側方部分を管路51の外周面の上方側部分に巻き付けることができる。なお、シート材52は、その表面に塗布された油性防錆剤の粘性により管路51の外周面に付着し、当該管路51に巻き付けられた状態に保持される。
【0066】
上記のように、左右の押付け体20を交互に湾曲させることにより、シート材52の両端を互いに重ねて配置することができるが、左右の押付け体20を同時に湾曲させてシート材52の両側方部分を同時に管路51の外周面に巻き付けるようにしてもよい。
【0067】
橋梁添架管路群50を構成する9条の管路51の外周面の所望の範囲の全てに、上記と同様の手順によりシート材52を巻き付けることができる。なお、
図9、
図11〜
図14においては、便宜上、1つの管路51にのみ符号を付してある。
【0068】
全ての管路51にシート材52を巻き付けた後には、橋梁添架管路群50の全体を板状の外装材(外装カバー)により覆うのが好ましい。
【0069】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0070】
例えば、前記実施の形態では、上記シート材巻き付け装置1は、橋梁添架管路群50を構成する管路51の外周面に、油性防錆剤が塗付されたシート材52を巻き付けるために用いられているが、これに限らず、例えば、背面側に手が入らない周辺環境が狭隘な場所に配置されたダクト等の管路の外周面にシート状の断熱材を巻き付けるために用いることもできる。その他にも、例えば、背面側に手が入らない場所に設置された電柱等の長尺円柱状部材の外周面に広告ポスター等を巻き付ける作業にも上記シート材巻き付け装置1を用いることができる。また、例えば四角形や楕円形等の断面が円形ではない部材の外周面にシート材を巻き付ける作業に上記シート材巻き付け装置1を用いることもできる。つまり、断面が一様の部材の外周面にシート材を巻き付ける作業であれば、種々の作業に上記シート材巻き付け装置1を用いることができる。
【0071】
また、前記実施の形態では、本体フレーム10は、その配置空間13に橋梁添架管路群50を構成する3本の管路51を収容できる寸法に形成されているが、これに限らず、配置空間13の大きさは任意に設定することができる。
【0072】
さらに、前記実施の形態では、押付け体20はローラー22を有する構成となっているが、回転しない断面円形や半円形の棒形状など他の形状としてもよい。この場合においても、押付け体を磁力を有する構成とすることができる。
【0073】
さらに、前記実施の形態では、押付け体20を管路51の上半分に対してその外周面に沿って移動させるようにしているが、これに限らず、押付け体20を管路の下端部分から上端部分の全ての範囲に沿って移動させるように構成することもできる。
【0074】
さらに、前記実施の形態では、押付け体20は、レバー36、リール式ばね38およびストッパ機構S等を用いて配置空間13側に変位させられる構成とされているが、これに限らず、押付け体20を管路51の外周面に沿って移動させることができる構成であれば、例えば他の構成のリンク機構等を用いた構成とすることもできる。