(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記復元処理部及び前記鮮鋭化処理部は直列に設けられ、前記画像データは、前記復元処理及び前記鮮鋭化処理のうちの一方の処理を受けた後に他方の処理を受ける請求項1〜23のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
撮影シーン(被写体)や撮影条件によっては、点像復元処理により画像にアーティファクト(リンギング等)が生じることがあり、アーティファクトなどの画質劣化を防ぐために点像復元処理の復元強度を弱くせざるをえない場合がある。アーティファクトは理想的な条件下での点像復元処理では出現しないはずであるが、実際の処理では、レンズやセンサの個体ばらつき、点像復元処理よりも前段の信号処理の非線形特性、等によって、入力画像の周波数特性が不正になり、アーティファクトが発生することがある。
【0010】
あるいは点像復元処理のオン及びオフを切り替え可能な画像処理系において、点像復元処理をオフにする場合がある。このような場合であっても、レンズの光学特性(PSF、OTF)やウィナーフィルタ設計基準を考慮せずに設計された「PSFとは異なる基準に基づいて決定される画像処理」を行うことが可能である。この「PSFとは異なる基準に基づいて決定された画像処理」として、例えば、設計者の主観評価に基づく画像処理、ユーザの好みに基づく画質微調整、レンズの個体ばらつきを考慮したユーザによるシャープネス微調整などがある。
【0011】
ここで「点像復元処理オン画像」及び「点像復元処理オフ画像(「PSFとは異なる基準に基づいて決定された画像処理」オン画像)」を比較すると、「点像復元処理オフ画像」の方が、「点像復元処理オン画像」よりもシャープネスが強くなってしまうことが生じうる。これは処理内容的には妥当だが、点像復元処理(画質回復処理)を行った画像であるにもかかわらず、点像復元処理を行わない画像よりもシャープネスが弱くなるため、実画像の画質と直感との間の不一致感をユーザにもたらしうる。また「点像復元処理オン画像」と「点像復元処理オフ画像」との間でのシャープネスの乖離が過大となる場合もあり、操作性の不便をユーザに感じさせうる。また画質劣化を回避するなどの目的において復元強度を変更することにより点像復元処理を行う場合にも同様の不便がもたらされることがあり、点像復元処理を行った画像間でシャープネスがばらついて、ユーザに対し違和感を与えてしまう。
【0012】
復元強度の異なる点像復元処理が施された画像間での画質鮮鋭度のばらつきや、「点像復元処理オン画像」と「点像復元処理オフ画像」との間での画質鮮鋭度の乖離を防ぐための有効な提案は、従来なされていなかった。例えば特許文献1に記載の装置では画像回復フィルタを使用した画像処理及びエッジ強調フィルタを使用した画像処理が行われるが、両画像処理を相関させて画像回復度及びエッジ強調度を調整することについて、特許文献1は開示も示唆もしていない。また特許文献2〜4に開示される画像処理技術に関しても同様であり、点像復元処理と鮮鋭化処理との間で復元度及び鮮鋭化度の統合的な調整を行って画像鮮鋭度の統一化を図ることを、特許文献2〜4は開示も示唆もしていない。
【0013】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、点像復元処理の復元強度の変動や点像復元処理のオン及びオフの切り替えがあっても、画像鮮鋭度を過大に変化させずに画質改善を安定的に行うことが可能な画像処理技術及びその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、光学系を用いた被写体の撮影により撮像素子から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う復元処理部と、画像データに対し、鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う鮮鋭化処理部と、復元処理部及び鮮鋭化処理部を制御することにより、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率を調整可能な鮮鋭回復制御部とを備え、鮮鋭回復制御部は、復元率及び鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出する画像処理装置に関する。
【0015】
本態様によれば、復元率及び鮮鋭化率がトータル鮮鋭復元率に基づいて定められるため、復元率の増減に応じて鮮鋭化率が調整され、或いは鮮鋭化率の増減に応じて復元率が調整される。したがって、復元処理による復元強度及び鮮鋭化処理による鮮鋭化強度を過大に変化させることなく、画像データの画質を安定的に改善することができる。
【0016】
「点拡がり関数に基づく復元フィルタ」は、光学系の点拡がり関数(PSF)を用いて生成される逆フィルタやウィナーフィルタ等に基づく復元フィルタであり、「復元処理」はそのような復元フィルタを画像データに適用する処理を含む。また「点拡がり関数」は光学系の点光源に対する応答を表す関数であり、PSF及びOTF(MTF(Modulation Transfer Function)、PTF(Phase Transfer Function))に基づいて表現可能である。
【0017】
一方、「鮮鋭化フィルタ」は、「光学系の点拡がり関数(PSF)から逆フィルタやウィナーフィルタを用いて生成されたフィルタ(復元フィルタ)」以外のフィルタ類を使用することが可能である。したがって「鮮鋭化フィルタ」として、例えば光学系の点拡がり関数に基づかないフィルタを好適に用いることができ、点拡がり関数以外の他の要素(パラメータ)に基づいて算出されるフィルタを「鮮鋭化フィルタ」として採用しうる。点拡がり関数に基づかない鮮鋭化フィルタとしては、点拡がり関数に基づかずに作成されたフィルタであれば、点拡がり関数が異なる絞り値等に応じて切り替え可能なフィルタを鮮鋭化フィルタとして採用しうる。同様に、点拡がり関数が異なる像高に応じて切り替え可能なフィルタを鮮鋭化フィルタとして採用しうる。また、鮮鋭化処理における鮮鋭化フィルタの強度(ゲイン)が絞り値や像高に応じて変えられてもよい。
【0018】
「鮮鋭化処理」は、画像データの高周波成分を補償又は強調する処理であって、画像の輪郭成分を強調する処理である。したがって、例えば輪郭強調処理、エッジ強調処理或いはシャープネス強調処理と呼ばれる処理が、ここでいう「鮮鋭化処理」に含まれうる。
【0019】
なお、復元フィルタ及び鮮鋭化フィルタはFIR(Finite Impulse Response)フィルタとして構成することができる。
【0020】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、復元率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び復元率に基づいて鮮鋭化率を算出する。
【0021】
本態様によれば、復元率に応じて鮮鋭化率が調整され、復元率の増減による影響をトータル鮮鋭復元率に基づいて鮮鋭化率により補償することができる。
【0022】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、ユーザが指定する指定回復率に基づいて復元率を定める。
【0023】
本態様によれば、復元処理の復元率をユーザが指定する指定回復率に基づいて定めることができる。
【0024】
望ましくは、復元率は、光学系の特性を表す光学特性情報に基づいて定められる。
【0025】
本態様によれば、光沢特性情報を反映した復元処理を行うことができる。
【0026】
望ましくは、光学系は、光学特性情報を記憶する光学系記憶部を有し、復元率は、光学系記憶部に記憶される光学特性情報に基づいて定められる。
【0027】
本態様によれば、光学系記憶部が記憶する光学特性情報に基づいて復元率を定めることができ、光学特性情報が変動する場合であっても適切な復元率を定めることができる。例えば光学系が交換可能な場合に、本態様は好適である。
【0028】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、鮮鋭化率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び鮮鋭化率に基づいて復元率を算出する。
【0029】
本態様によれば、鮮鋭化率に応じて復元率が調整され、鮮鋭化率の増減による影響をトータル鮮鋭復元率に基づいて復元率により補償することができる。
【0030】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、画像データの撮影における撮影設定条件に基づいて鮮鋭化率を決定する。
【0031】
本態様によれば、撮影設定条件に応じた鮮鋭化率によって鮮鋭化処理を行うことができる。したがって例えば撮影設定条件が変動しても、適切な鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことが可能である。
【0032】
望ましくは、鮮鋭化率は、光学系の特性を表す光学特性情報に基づいて定められる。
【0033】
本態様によれば、光学特性情報に応じた鮮鋭化率によって鮮鋭化処理を行うことができる。したがって例えば光学特性情報が変動しても、適切な鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことが可能である。
【0034】
望ましくは、光学系は、光学特性情報を記憶する光学系記憶部を有し、鮮鋭化率は、光学系記憶部に記憶される光学特性情報に基づいて定められる。
【0035】
本態様によれば、光学系記憶部が記憶する光学特性情報に基づいて鮮鋭化率を定めることができ、光学特性情報が変動する場合であっても適切な鮮鋭化率を定めることができる。例えば光学系が交換可能な場合に、本態様は好適である。
【0036】
望ましくは、光学特性情報は、光学系が有するレンズの種類情報を含む。
【0037】
本態様によれば、光学系の有するレンズの種類情報に応じて、適切な復元率または鮮鋭化率を決定できる。光学的な特性はレンズの種類によって左右され、特に点拡がり現象はレンズ種類毎に固有のPSFによって定まる。したがって、点拡がり関数に基づく復元処理の復元率を、光学系が有するレンズの種類情報を考慮して決めることにより優れた復元効果が奏され、特に光学系の点拡がり関数と復元フィルタとのマッチングにズレがある場合であっても、そのズレを復元率によってカバーできる。また復元率及びトータル鮮鋭復元率に基づいて算出された鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことにより、画像データの画質を安定的に改善することができる。
【0038】
望ましくは、光学特性情報は、光学系の個体差情報を含む。
【0039】
本態様によれば、光学系の個体差情報に応じて、適切な復元率または鮮鋭化率を決定できる。光学的な特性は個々の光学系によって左右され、特に点拡がり現象は光学系毎に固有のPSFによって定まるが、同じ種類の光学系であっても製造誤差等によって個体差が存在する。したがって、点拡がり関数に基づく復元処理の復元率を、光学系の個体差情報を考慮して決めることにより優れた復元効果が奏され、特に光学系の点拡がり関数と復元フィルタとのマッチングにズレがある場合であっても、そのズレを復元率によってカバーできる。また復元率及びトータル鮮鋭復元率に基づいて算出された鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことにより、画像データの画質を安定的に改善することができる。
【0040】
なお「個体差情報」は、製造誤差等による光学系に個別的に生じうる誤差に関する情報を含む。個体差情報は個体差を直接的に示すものであってもよいし間接的に示すものであってもよく、例えば光学系に割り当てられるロットナンバーやシリアルナンバーを個体差情報として用いてもよい。
【0041】
望ましくは、光学特性情報は、撮影設定条件を含む。
【0042】
本態様によれば、撮影設定条件に応じて、適切な復元率及び鮮鋭化率を決定できる。光学的な特性は撮影設定条件によって左右され、特に点拡がり現象は光学系毎に固有のPSFによって定まるが、PSFは撮影設定条件によって変動する。したがって、点拡がり関数に基づく復元処理を、撮影設定条件を考慮して決めることにより優れた復元効果が奏され、特に光学系の点拡がり関数と復元フィルタとのマッチングにズレがある場合であっても、そのズレを復元率によってカバーできる。また復元率及びトータル鮮鋭復元率に基づいて算出された鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことにより、画像データの画質を安定的に改善することができる。
【0043】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、画像データを取得した際の光学系の絞り値を取得し、絞り値と第1の閾値とを比較し、少なくとも絞り値が、第1の閾値によって表される絞り度よりも絞りが開放されていることを示す場合に、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出する。
【0044】
本態様によれば、絞りが開放されている場合に、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方が取得され、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方がトータル鮮鋭復元率に基づいて算出される。
【0045】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、画像データを取得した際の撮影モード情報を取得し、撮影モード情報が動画記録モードを示す場合には、トータル鮮鋭復元率を一定に保つ。
【0046】
本態様によれば、動画記録モードでトータル鮮鋭復元率が一定に保たれ、動画記録の間にトータル鮮鋭復元率が変動することを防ぐことができる。これにより、記録動画(画像データ)の画質の連続性を良好に保持できる。
【0047】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、撮影モード情報が動画記録モードを示す場合には、撮影モード情報が静止画記録モードを示す場合よりも、復元率を小さくする。
【0048】
本態様によれば、動画記録モードの復元率が静止画記録モードの復元率よりも小さくされ、動画に対する復元処理において過補正等を効果的に防ぐことができる。
【0049】
望ましくは、復元フィルタは、画像データの撮影における撮影設定条件に基づいて決定される。
【0050】
本態様によれば、撮影設定条件に応じた復元フィルタを用いて復元処理を行うことができる。
【0051】
望ましくは、撮影設定条件は、点拡がり関数に影響する設定条件を含む。
【0052】
本態様によれば、点拡がり関数に影響する設定条件が撮影設定条件として使用されるため、点拡がり現象の影響を効果的に取り除くことが可能な画像処理(復元処理)を行うことができる。
【0053】
望ましくは、設定条件は、絞り情報、ズーム情報、被写体距離情報、及び光学系が有するレンズ種類情報のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0054】
本態様によれば、点拡がり現象の影響を効果的に取り除くことが可能な画像処理(復元処理)を行うことができる。
【0055】
望ましくは、撮影設定条件は、点拡がり関数に影響を及ぼさない撮影条件を含む。
【0056】
本態様によれば、点拡がり現象以外の影響を効果的に取り除くことが可能な画像処理を行うことができる。
【0057】
望ましくは、撮影条件は、撮影感度情報及び撮影モード情報のうち少なくともいずれか1つを含む。
【0058】
本態様によれば、撮影感度情報及び撮影モード情報のうち少なくともいずれか1つに基づく画像処理を行うことができる。
【0059】
望ましくは、画像処理装置は、複数の光学系の点拡がり関数に基づく複数の復元フィルタを記憶する復元フィルタ記憶部と、画像データの撮影に用いられた光学系の点拡がり関数に基づく復元フィルタを、撮影設定条件に基づいて復元フィルタ記憶部から選択する復元フィルタ選択部とを更に備え、復元処理部は、復元フィルタ選択部が選択した復元フィルタを用いて復元処理を行う。
【0060】
本態様によれば、撮影設定条件に基づく復元フィルタが復元フィルタ記憶部から選択されて復元処理に用いられ、復元フィルタの決定を簡便に行うことができる。
【0061】
望ましくは、復元フィルタは、複数の光学系に関して共通に用いられる。
【0062】
本態様によれば、複数の光学系に関して復元フィルタが共通に用いられるため、復元フィルタの決定処理を簡略化して、復元処理を簡便に行うことができる。また、複数の光学系に関して復元フィルタが共通に用いられることにより光学系の点拡がり関数と復元フィルタとのマッチングにズレがある場合であっても、そのズレを復元率によってカバーすることができる。さらに、復元率及びトータル鮮鋭復元率に基づいて算出された鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことにより、画像データの画質を安定的に改善することができる。なお本態様は、光学系が交換可能な場合に好適である。
【0063】
望ましくは、復元フィルタは、複数の撮影設定条件に関して共通に用いられる。
【0064】
本態様によれば、複数の撮影設定条件に関して復元フィルタが共通に用いられるため、復元フィルタの決定処理を簡略化して、復元処理を簡便に行うことができる。また、複数の撮影設定条件に関して復元フィルタが共通に用いられることにより光学系の点拡がり関数と復元フィルタとのマッチングにズレがある場合であっても、そのズレを復元率よってカバーすることができる。さらに、復元率及びトータル鮮鋭復元率に基づいて算出された鮮鋭化率により鮮鋭化処理を行うことにより、画像データの画質を安定的に改善することができる。
【0065】
望ましくは、複数の撮影設定条件は、光学系のズーム情報を含む。
【0066】
本態様によれば、複数の光学系ズーム条件に関して復元フィルタが共通に用いられるため、復元フィルタの決定処理を簡略化することにより、復元処理を簡便に行うことができる。
【0067】
望ましくは、鮮鋭回復制御部は、第1の周波数においてトータル鮮鋭復元率を目標鮮鋭復元率に調整する。
【0068】
本態様によれば、画像データのうち少なくとも第1の周波数における復元率及び鮮鋭化率が目標鮮鋭復元率によって定まるため、少なくとも第1の周波数における画像成分の復元度及び鮮鋭化度を良好に保つことが可能となる。
【0069】
なお「第1の周波数」及び「目標鮮鋭復元率」は特に限定されないが、例えばユーザの視覚特性に基づいて「第1の周波数」及び「目標鮮鋭復元率」を決定してもよい。
【0070】
望ましくは、復元処理部及び鮮鋭化処理部は直列に設けられ、画像データは、復元処理及び鮮鋭化処理のうちの一方の処理を受けた後に他方の処理を受ける。
【0071】
本態様によれば、復元処理及び鮮鋭化処理が直列的に行われる。
【0072】
望ましくは、復元処理部及び鮮鋭化処理部は並列に設けられ、画像データは復元処理部及び鮮鋭化処理部に入力され、復元処理による画像データの増減分データと、鮮鋭化処理による画像データの増減分データとが加算される。
【0073】
本態様によれば、復元処理及び鮮鋭化処理が並列的に行われる。
【0074】
望ましくは、画像処理装置は、画像データの非線形処理を行う非線形処理部を更に備える。
【0075】
本態様によれば、画像データの非線形処理が行われるシステムにおいて、適切な復元率及び鮮鋭化率を決定できる。ここでいう非線形処理は、一次式で表される演算処理以外の処理を含む処理全般を含みうるものであり、典型的には条件分岐処理を含む処理が非線形処理となる。
【0076】
望ましくは、非線形処理部は、復元処理部及び鮮鋭化処理部のうち少なくともいずれか一方に含まれる。
【0077】
本態様によれば、復元処理及び/又は鮮鋭化処理が非線形処理を含む場合であっても、適切な復元率及び鮮鋭化率を決定できる。
【0078】
望ましくは、非線形処理は、画像データのうちクリップ閾値を超える画素値をクリップ閾値に調整するクリップ処理である。
【0079】
本態様によれば、クリップ処理が行われる場合であっても、適切な復元率及び鮮鋭化率を決定できる。
【0080】
望ましくは、光学系は、撮像素子が搭載される撮像本体に交換可能に装着される。
【0081】
本態様によれば、光学系が交換可能であっても、適切な復元率及び鮮鋭化率を決定できる。
【0082】
本発明の他の態様は、上記のいずれかの画像処理装置を備える撮像装置に関する。
【0083】
本発明の他の態様は、光学系を用いた被写体の撮影により撮像素子から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う復元処理部と、画像データに対し、鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う鮮鋭化処理部とを含む画像処理部において用いられるパラメータを生成するパラメータ生成方法であって、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得するステップと、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出するステップと、を備えるパラメータ生成方法に関する。
【0084】
本発明の他の態様は、光学系を用いた被写体の撮影により撮像素子から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う復元処理ステップと、画像データに対し、鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う鮮鋭化処理ステップと、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得するステップと、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出するステップとを含む画像処理方法に関する。
【0085】
本発明の他の態様は、光学系を用いた被写体の撮影により撮像素子から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う手順と、画像データに対し、鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う手順と、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得する手順と、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出する手順と、をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0086】
本発明によれば、トータル鮮鋭復元率に基づいて復元率及び鮮鋭化率が定められるため、復元処理及び鮮鋭化処理による画像の復元率及び鮮鋭化率が過大又は過小になることが防がれる。したがって、復元処理の復元強度の変動や復元処理のオン・オフの切り替えがあっても、鮮鋭度を過大に変化させず、良画質の画像データを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0088】
添付図面を参照することにより本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態においては、一例として、コンピュータ(PC:パーソナルコンピュータ)に接続可能なデジタルカメラ(撮像装置)に本発明を適用する場合について説明する。
【0089】
図1は、コンピュータに接続されるデジタルカメラを示すブロック図である。本例のデジタルカメラ10においては、撮像素子26が搭載されるカメラ本体(撮像本体)14に光学系の一例であるレンズユニット12が交換可能に装着され、カメラ本体14に画像処理装置が設けられている。
【0090】
すなわちデジタルカメラ10は、交換可能なレンズユニット12と、撮像素子26を具備するカメラ本体14とを備え、レンズユニット12のレンズユニット入出力部22とカメラ本体14のカメラ本体入出力部30とを介し、レンズユニット12とカメラ本体14とが電気的に接続される。
【0091】
光学系の一例であるレンズユニット12は、レンズ16及び絞り17と、この光学系を制御する光学系操作部18とを具備する。光学系操作部18は、レンズユニット入出力部22に接続されるレンズユニットコントローラ20と、各種の情報(光学系情報等)を記憶するレンズユニット記憶部21と、光学系を操作するアクチュエータ(図示省略)とを含む。レンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、アクチュエータを介して光学系を制御し、例えばレンズ移動によるフォーカス制御やズーム制御、絞り17の絞り量制御、等を行う。またレンズユニットコントローラ20は、カメラ本体14からレンズユニット入出力部22を介して送られてくる制御信号に基づき、レンズユニット記憶部21に記憶される各種情報を読み出してカメラ本体14(本体コントローラ28)に送信する。
【0092】
カメラ本体14の撮像素子26は、集光用マイクロレンズ、R(赤)G(緑)B(青)等のカラーフィルタと、イメージセンサ(フォトダイオード;CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等)とを有する。この撮像素子26は、レンズユニット12において光学系を構成するレンズ16、絞り17等を介して照射される被写体像の光を電気信号に変換し、画像信号(原画像データ)を本体コントローラ28に送る。
【0093】
本体コントローラ28は、詳細については後述するが(
図2参照)、デジタルカメラ10の各部を統括的に制御するデバイス制御部としての機能と、撮像素子26から送られてくる画像データの画像処理を行う画像処理部としての機能とを有する。
【0094】
デジタルカメラ10は、さらに、撮影等に必要なその他の機器類(シャッター等)を具備し、それらの機器類の一部はユーザによって確認及び操作可能なユーザインターフェース29を構成する。ユーザインターフェース29はレンズユニット12及び/又はカメラ本体14に配置可能であり、
図1に示す例ではカメラ本体14にユーザインターフェース29が設けられている。ユーザは、ユーザインターフェース29を介し、撮影等のための各種設定(EV値(Exposure Value)等)の決定及び変更、撮影指示、ライブビュー画像及び撮影画像の確認、等を行うことができる。ユーザインターフェース29は本体コントローラ28に接続され、ユーザによって決定及び変更された各種設定及び各種指示が本体コントローラ28における各種処理(デバイス制御処理、及び画像処理等)に反映される。
【0095】
本体コントローラ28において画像処理された画像データは、カメラ本体14に設けられる本体記憶部31に記憶され、必要に応じ、入出力インターフェース32を介してコンピュータ92等に送られる。本体記憶部31は任意のメモリ体によって構成され、メモリカード等の交換可能メモリが好適に用いられる。本体コントローラ28から出力される画像データのフォーマットは特に限定されず、RAW、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tagged Image
File Format)等の任意のフォーマットとしうる。また本体コントローラ28は、いわゆるExif(Exchangeable Image File Format)のように、ヘッダ情報(撮影情報(撮影日時、機種、画素数、絞り値等)等)、主画像データ及びサムネイル画像データ等の複数の関連データを相互に対応づけて1つの画像ファイルとして構成し、その画像ファイルを出力してもよい。
【0096】
コンピュータ92は、カメラ本体14の入出力インターフェース32及びコンピュータ入出力部93を介してデジタルカメラ10に接続され、カメラ本体14から送られてくる画像データ等のデータ類を受信する。コンピュータコントローラ94は、コンピュータ92を統括的に制御し、デジタルカメラ10からの画像データを画像処理し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ入出力部93に接続されるサーバ97等との通信を制御する。コンピュータ92はディスプレイ95を有し、コンピュータコントローラ94における処理内容等が必要に応じてディスプレイ95に表示される。ユーザは、ディスプレイ95の表示を確認しながらキーボード等の入力手段(図示省略)を操作することにより、コンピュータコントローラ94にデータやコマンドを入力可能である。これによりユーザは、コンピュータ92や、コンピュータ92に接続される機器類(デジタルカメラ10、サーバ97)を制御可能である。
【0097】
サーバ97は、サーバ入出力部98及びサーバコントローラ99を有する。サーバ入出力部98は、コンピュータ92等の外部機器類との送受信接続部を構成し、インターネット96等のネットワーク回線を介してコンピュータ92のコンピュータ入出力部93に接続される。サーバコントローラ99は、コンピュータ92からの制御指示信号に応じ、コンピュータコントローラ94と協働し、コンピュータコントローラ94との間において必要に応じてデータ類の送受信を行い、データ類をコンピュータ92にダウンロードし、演算処理を行ってその演算結果をコンピュータ92に送信する。
【0098】
各コントローラ(レンズユニットコントローラ20、本体コントローラ28、コンピュータコントローラ94、サーバコントローラ99)は、制御処理に必要な回路類を有し、例えば演算処理回路(CPU(Central Processing Unit)等)やメモリ等を具備する。またデジタルカメラ10、コンピュータ92及びサーバ97間の通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。またコンピュータ92及びサーバ97を一体的に構成してもよく、またコンピュータ92及び/又はサーバ97が省略されてもよい。またデジタルカメラ10にサーバ97との通信機能を持たせ、デジタルカメラ10とサーバ97との間で直接的にデータ類の送受信が行われるようにしてもよい。
【0099】
図2は、本体コントローラ28の構成例を示すブロック図である。本体コントローラ28は、デバイス制御部34と画像処理部35とを有し、カメラ本体14を統括的に制御する。
【0100】
デバイス制御部34は、例えば、撮像素子26からの画像信号(画像データ)の出力を制御し、レンズユニット12を制御するための制御信号を生成してカメラ本体入出力部30を介してレンズユニット12(レンズユニットコントローラ20)に送信し、画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を本体記憶部31に記憶し、入出力インターフェース32を介して接続される外部機器類(コンピュータ92等)に画像処理前後の画像データ(RAWデータ、JPEGデータ等)を送信する。またデバイス制御部34は、表示部(EVF:Electronic View Finder、背面液晶表示部:ユーザインターフェース29)等、デジタルカメラ10が具備する各種デバイス類を適宜制御する。
【0101】
一方、画像処理部35は、撮像素子26からの画像信号に対し、必要に応じた任意の画像処理を行う。例えばセンサ補正処理、デモザイク(同時化)処理、画素補間処理、色補正処理(オフセット補正処理、ホワイトバランス処理、カラーマトリック処理、ガンマ変換処理、等)、RGB画像処理(シャープネス処理、トーン補正処理、露出補正処理、輪郭補正処理、等)、RGB/YCrCb変換処理及び画像圧縮処理、等の各種の画像処理が、画像処理部35において適宜行われる。特に本例の画像処理部35は、光学系の点拡がり関数に基づく復元処理(点像復元処理)と、点拡がり関数には基づかない輪郭強調処理等の鮮鋭化処理とを画像信号(画像データ)に対して行う。
【0102】
図3は、画像処理部35の構成例を示すブロック図であり、とりわけ点像復元処理及び鮮鋭化処理に係る構成を示す。
【0103】
本例の画像処理部35は、鮮鋭回復制御部37、復元処理部38及び輪郭強調処理部(鮮鋭化処理部)39を有する。
【0104】
復元処理部38は、光学系(レンズ16等)を用いた被写体の撮影により撮像素子26から取得される画像データに対し、点拡がり関数に基づく復元フィルタを用いた復元処理を行う(復元処理ステップ)。復元フィルタは、PSF劣化を回復するためのフィルタであり、例えばウィナーフィルタを復元フィルタとして好適に使用できる。一方、輪郭強調処理部39は、画像データに対し、点拡がり関数に基づかない鮮鋭化フィルタを用いた鮮鋭化処理を行う(鮮鋭化処理ステップ)。鮮鋭化フィルタは、点拡がり関数を直接的に反映するフィルタでなければ特に限定されず、公知の輪郭強調フィルタを鮮鋭化フィルタとして使用可能である。
【0105】
なお復元フィルタ及び鮮鋭化フィルタの各々に関し、画像全体で単一のフィルタが用意されていてもよいし、画像内の位置毎(像高毎)に異なるフィルタが用意されていてもよい。
【0106】
鮮鋭回復制御部37は、復元処理部38及び輪郭強調処理部39を制御し、復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率を調整する。この復元率及び鮮鋭化率の調整に関して本例の鮮鋭回復制御部37は、復元率及び鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出する。
【0107】
鮮鋭化処理に加えて点像復元処理を行う場合、従来の手法においては鮮鋭復元強度が強くなり過ぎて画像の過補正等を招き、画質を損なうことがある。したがって鮮鋭化処理及び点像復元処理の両者を行う場合は、鮮鋭化処理のみ或いは点像復元処理のみを行う場合に比べ、鮮鋭化処理における鮮鋭化強度や点像復元処理における復元強度を弱めることが好ましい。
【0108】
また点像復元処理は、撮影シーンや被写体次第によっては誤補正によってアーティファクト(リンギング等)などを招くことがある。また撮影条件に応じて異なる復元フィルタを使用する場合、点像復元処理後の画像の復元率や解像感(鮮鋭度)にばらつきが生じることがある。これらの誤補正や画像の鮮鋭度のばらつきは、鮮鋭化処理が行われるとより一層際立つ。
【0109】
以下の実施形態は、点像復元処理及び鮮鋭化処理を組み合わせた場合であっても上述の過補正や誤補正を効果的に防ぎ、光学系の点拡がり現象によって損なわれた画質を回復して鮮明な画像を得る技術に関する。
【0110】
図4は、点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整を説明するための概念図である。
図4の「トータル鮮鋭復元強度(トータル鮮鋭復元率)」は、所望の画質から決まる最終鮮鋭度目標強度値であり、画像処理全体に対する入力と出力との大きさの比率を直接的又は間接的に示す。本例の「トータル鮮鋭復元強度(トータル鮮鋭復元率)」は、撮影設定条件(光学特性情報の一例)に応じて変動しうるが、撮影設定条件が決まれば一定の値となる。ここでいう撮影設定条件には、例えばレンズ、絞り、ズーム、被写体距離、感度、撮影モード等の各種の撮影条件及び設定条件が含まれうる。また「点像復元強度」は、点像復元処理による復元強度であって、撮影設定条件(光学特性情報の一例)に応じて定められる。また「鮮鋭化強度」は、鮮鋭化処理による鮮鋭化の強度である。
【0111】
これらのトータル鮮鋭復元強度、点像復元強度及び鮮鋭化強度は、それぞれの画像処理の前後における画像変化の程度を表す指標であり、画像の変化の程度を適切に表すことが可能な任意の基準に則って定められる。したがって、点像復元処理及び鮮鋭化処理の各々がフィルタ適用処理及びゲインコントロール処理を含む場合には、「フィルタ適用処理及びゲインコントロール処理」の前後の変化が点像復元強度及び鮮鋭化強度によって表される。
【0112】
例えば点像復元処理と鮮鋭化処理とが並列的に行われ、「点像復元処理による画像復元の程度(点像復元強度)」と「鮮鋭化処理による画像鮮鋭化の程度(鮮鋭化強度)」とが「トータル鮮鋭復元強度」によって定められる場合を想定する。この場合には「点像復元強度+鮮鋭化強度=トータル鮮鋭復元強度」の関係が成立し、点像復元強度の増減分だけ鮮鋭化強度が増減し、
図4に示される点像復元強度と鮮鋭化強度との境界位置(B)が変動しうる。したがって、例えばトータル鮮鋭復元強度及び点像復元強度が定まれば、両者から最適な鮮鋭化強度を算出することが可能である。同様に、トータル鮮鋭復元強度及び鮮鋭化強度が定まれば、両者から最適な点像復元強度を算出することが可能である。
【0113】
なお
図4は理解を容易にするために直感的な概念図を示すに過ぎず、点像復元処理と鮮鋭化処理とが行われる処理系において「点像復元強度+鮮鋭化強度=トータル鮮鋭復元強度」の関係が常に成立することを示すものではない。例えば点像復元処理と鮮鋭化処理とが直列的に行われた場合、点像復元強度と鮮鋭化強度との積に基づいてトータル鮮鋭復元強度が定められる。したがって以下の実施形態においては、「点像復元強度及び鮮鋭化強度の両者による周波数増幅率」が「トータル鮮鋭復元強度による周波数増幅率」と一致するように、点像復元強度及び鮮鋭化強度が決められる。
【0114】
例えば点像復元強度を優先的に設定し、その設定された点像復元強度に応じて鮮鋭化強度を調整することが可能である。この場合、光学系(レンズ16等)のPSFに応じた点像復元処理を高精度に行うことができる。また、点像復元処理は繊細な処理であり基礎パラメータが正確でないと過補正等の弊害を招き易いが、点像復元強度を優先的に決めることにより、過補正等の弊害を効果的に防げる。
【0115】
一方、鮮鋭化強度を優先的に設定し、その設定された鮮鋭化強度に応じて点像復元強度を調整することも可能である。この場合、弊害の少ない安定した処理である鮮鋭化処理が優先的に行われる。この鮮鋭化処理を優先的に行うケースは、光学特性に優れた精度を持つ光学系(レンズ16等)を用いて撮影を行う場合、撮影シーンが夜景やポートレートの場合、アートフィルタ処理が行われる場合、点像復元処理による効果が得難い場合、点像復元処理による弊害が出やすい場合、等に好適である。
【0116】
点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整は様々な基準によって行うことができ、例えば特定の周波数や特定の画像位置(像高位置)における周波数増幅率が同じになるように、トータル鮮鋭復元強度を定められる。
【0117】
このようにトータル鮮鋭復元強度を設定して点像復元強度及び鮮鋭化強度を調整することにより、点像復元処理及び鮮鋭化処理を受けた画像の鮮鋭度(復元率及び解像感)のばらつきを抑え、出力画像の総合的な画質を向上できる。
【0118】
点像復元強度及び鮮鋭化強度の調整に関する具体的な実施形態について、以下に説明する。
【0119】
<第1実施形態>
本実施形態に係る鮮鋭回復制御部37は、点像復元処理における復元率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び復元率に基づいて鮮鋭化処理における「鮮鋭化率」を算出する。
【0120】
図5は、第1実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0121】
本実施形態の画像処理システムモデルでは、「点像復元処理のための信号処理ブロック」と「任意のシャープネス強調処理のための信号処理ブロック」とが直列に接続(カスケード結合)され、両信号処理ブロックにおいて連続的な信号強度調整が可能となっている。すなわち復元処理部38及び輪郭強調処理部39は直列に設けられ、画像データは点像復元処理及び鮮鋭化処理のうちの一方の処理(
図5に示す例においては「点像復元処理」)を受けた後に他方の処理(
図5に示す例においては「鮮鋭化処理」)を受ける。
【0122】
復元処理部38は、点像復元フィルタ処理部42、復元乗算器43及び復元加算器44を含む。点像復元フィルタ処理部42は、光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に対応する復元フィルタを入力画像データに適用し、画像の増減分データを算出する。復元乗算器43は、点像復元フィルタ処理部42において算出された増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び復元強度倍率Uの乗算を行う。復元加算器44は、点像復元フィルタ処理部42に入力される前の画像データ(入力画像)と、復元強度倍率Uが乗算された増減分データとの加算を行う。点像復元処理は、これらの点像復元フィルタ処理部42、復元乗算器43及び復元加算器44における一連の処理によって構成される。
【0123】
なお復元処理部38は、任意の手法によって復元強度倍率Uを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に対応する復元フィルタを入力画像データに適用して得られる画像データ(入力画像データ+増減分データ)に対して復元強度倍率Uの乗算を行う一方で、入力画像データに倍率(1−U)の乗算を行い、両者を加算するようにしてもよい。
【0124】
輪郭強調処理部39は、輪郭強調フィルタ処理部46、鮮鋭化乗算器47及び鮮鋭化加算器48を含む。本例においては点像復元処理後の画像データが、入力画像データとして輪郭強調フィルタ処理部46に入力される。輪郭強調フィルタ処理部46は、鮮鋭化フィルタ(輪郭強調フィルタ)を入力画像データに適用して画像の増減分データを算出する。鮮鋭化フィルタは任意の手法によって決められ、輪郭強調フィルタ処理部46は、単一の鮮鋭化フィルタを用いてもよいし、複数のフィルタの中から適宜選択されるフィルタを鮮鋭化フィルタとして用いてもよい。鮮鋭化乗算器47は、輪郭強調フィルタ処理部46において算出された増減分データのゲインコントロールを行い、増減分データ及び鮮鋭化強度倍率Vの乗算を行う。鮮鋭化加算器48は、輪郭強調フィルタ処理部46に入力される前の画像データ(点像復元処理後の画像データ)と、鮮鋭化強度倍率Vが乗算された増減分データとの加算を行って出力画像データを生成する。鮮鋭化処理は、これらの輪郭強調フィルタ処理部46、鮮鋭化乗算器47及び鮮鋭化加算器48における一連の処理によって構成される。
【0125】
なお、復元強度倍率Uの反映手法と同様に、輪郭強調処理部39は、任意の手法によって鮮鋭化強度倍率Vを画像データに反映することができ、本実施形態及び他の実施形態において、上記手法の代わりに上記手法と等価な他の手法を採用してもよい。例えば、鮮鋭化フィルタ(輪郭強調フィルタ)を入力画像データに適用して得られる画像データ(入力画像データ+増減分データ)に対して鮮鋭化強度倍率Vの乗算を行う一方で、入力画像データに倍率(1−V)の乗算を行い、両者を加算するようにしてもよい。
【0126】
鮮鋭回復制御部37は、強度自動調整部52、復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54を含む。復元フィルタ選択部53は、画像データの撮影に用いられた光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に基づく復元フィルタXを、撮影設定条件S(ズーム段、F値、被写体距離等)に基づいて復元フィルタ記憶部58から選択する。そして復元フィルタ選択部53は、選択した復元フィルタXを、強度自動調整部52と復元処理部38の点像復元フィルタ処理部42とに送信する。点像復元フィルタ処理部42は、復元フィルタ選択部53から送られてくる復元フィルタXを入力画像に適用する。
【0127】
一方、輪郭強調強度選択部54は、撮影設定条件Sに対応する鮮鋭化強度倍率(輪郭強調強度)V0を輪郭強調強度リスト記憶部60から選択し、その選択した鮮鋭化強度倍率V0を強度自動調整部52に送信する。本例において輪郭強調強度選択部54により選択される鮮鋭化強度倍率V0は、復元処理部38(点像復元フィルタ処理部42)において点像復元処理が実質的に行われない場合の鮮鋭化強度倍率である。
【0128】
この「点像復元処理が実質的に行われない場合の鮮鋭化強度倍率」は、トータル鮮鋭復元率(トータル鮮鋭復元強度)に相当する。すなわち、本例では点像復元強度と鮮鋭化強度とがトータル鮮鋭復元強度によって定められ(
図4参照)、点像復元処理が行われない場合のトータル鮮鋭復元強度は鮮鋭化強度のみによって定まる。したがって、点像復元処理が行われない場合の鮮鋭化強度倍率を鮮鋭化強度倍率V0として取得して強度自動調整部52に供給する本例の輪郭強調強度選択部54は、実質的には、トータル鮮鋭復元率(トータル鮮鋭復元強度)を強度自動調整部52に供給する。
【0129】
復元フィルタ記憶部58は、複数の光学系(レンズ16等)の点拡がり関数に基づく複数の復元フィルタを撮影設定条件毎に記憶する。輪郭強調強度リスト記憶部60は撮影設定条件毎に輪郭強調強度を記憶し、特に本例においては、点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0(最大輪郭強調強度)が輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶される。なお復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60は、カメラ本体14に設けられてもよいし、レンズユニット12に設けられてもよい。
【0130】
強度自動調整部52は、復元フィルタ選択部53からの復元フィルタX及び輪郭強調強度選択部54からの鮮鋭化強度倍率V0に基づいて、点像復元回復率(復元率)Gに応じた復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する(ただし、「復元強度倍率U≧0」及び「鮮鋭化強度倍率V≧0」を満たす)。そして強度自動調整部52は、決定した復元強度倍率Uを復元乗算器43に送信し、鮮鋭化強度倍率Vを鮮鋭化乗算器47に送信する。復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vはそれぞれ復元処理部38及び輪郭強調処理部39における強度調整パラメータであり、復元乗算器43及び鮮鋭化乗算器47は、強度自動調整部52から送られてくる復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを使用して乗算処理を行う。
【0131】
なお強度自動調整部52は、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46の各々により使用されるフィルタの周波数特性を取得する。例えば、点像復元フィルタ処理部42により使用される復元フィルタXは復元フィルタ選択部53から強度自動調整部52に送られる。また輪郭強調フィルタ処理部46により使用される鮮鋭化フィルタも強度自動調整部52は任意の手法により取得する。例えば、輪郭強調フィルタ処理部46により使用される鮮鋭化フィルタが固定されている場合、強度自動調整部52はその鮮鋭化フィルタの周波数特性を予め記憶しておくことにより取得してもよい。また、使用される鮮鋭化フィルタを輪郭強調フィルタ処理部46から強度自動調整部52に送信し、強度自動調整部52は、受信した鮮鋭化フィルタを解析することにより鮮鋭化フィルタの周波数特性を取得してもよい。強度自動調整部52は、後述のトータル鮮鋭度評価値に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する際に、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46により使用するフィルタの周波数特性を考慮する。具体的には、強度自動調整部52は、トータル鮮鋭度評価値に各フィルタの周波数特性を反映させ、フィルタの周波数特性を反映したトータル鮮鋭度評価値に基づいて、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。
【0132】
強度自動調整部52における復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの決定は、例えば以下のフローに従って行うことができる。
【0133】
まず撮影設定条件Sが本体コントローラ28によって取得され、その撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXが復元フィルタ選択部53によって選択される。また点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0が、輪郭強調強度選択部54により撮影設定条件Sに応じて選択される。
【0134】
復元フィルタXは、撮影設定条件Sに対応する光学系(レンズ16等)のPSFに基づく画像劣化の程度を最小二乗基準により最小化するように設計され、復元フィルタXの理想的な周波数特性は、ウィナーフィルタ特性によって設計可能である。本例においては、復元フィルタXの理想的な周波数特性が決定された後、その周波数特性を反映したFIRフィルタが復元フィルタXとして決定される。なお復元フィルタXは実空間フィルタ及び周波数空間フィルタのいずれであってもよく、複数タップによって構成される実空間フィルタによって復元フィルタXを構成する場合、理想的な周波数特性を所望タップ数によって実現可能な範囲において最良に近似したFIRフィルタを復元フィルタXとすることが好ましい。また、一般にPSFの形状は像高によって異なるため、復元フィルタXは画像内の像高に応じて異なる周波数特性を持つことが望ましい。したがって、画像内位置に応じて定められる複数の復元フィルタによって構成されるセットを広義には「復元フィルタX」と呼称し、画像内の座標(i,j)の位置(画素)に適用される復元フィルタを「X
i,j」と表記する。
【0135】
上述のように復元フィルタXは、画像データの撮影における撮影設定条件Sに基づいて決定されるが、この撮影設定条件Sは「点拡がり関数に影響する設定条件」及び「点拡がり関数に影響を及ぼさない撮影条件」を含みうる。「設定条件」は、例えば絞り情報(F値)、ズーム情報(ズーム倍率等)、被写体距離情報、及び光学系が有するレンズ種類情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。また「撮影条件」は、撮影感度情報(ISO
感度等)及び撮影モード情報のうち少なくともいずれか1つを含みうる。
【0136】
なお、撮影設定条件Sは任意の方式により復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54に入力可能であり、本体コントローラ28のデバイス制御部34及び画像処理部35のうち撮影設定条件Sを管理する制御処理部(図示せず)から復元フィルタ選択部53及び輪郭強調強度選択部54に撮影設定条件Sが適宜送信される。
【0137】
一方、点像復元回復率Gは、復元処理部38及び輪郭強調処理部39における画像処理の前に、予めユーザによって指定される。ユーザによる点像復元回復率Gの指定方法は特に限定されず、例えば点像復元回復率Gを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより点像復元回復率Gを簡易に定めることも可能である。この点像復元回復率Gは復元乗算器43による点像復元処理の復元強度倍率Uをコントロールするための基礎データである。後述するように、例えば点像復元回復率Gの値が所定の閾値よりも大きい場合を除き、復元強度倍率Uと点像復元回復率Gとは等しい(復元強度倍率U=点像復元回復率G)。点像復元回復率Gが0(ゼロ)の場合は、点像復元処理がオフにされていることに相当する。この点像復元処理における復元強度倍率Uは、連続的な値をとるように変化してもよいし、離散的な値をとるように変化してもよいし、オン又はオフ(所定倍率か「0(ゼロ)」か)によって変化してもよく、復元強度倍率Uを任意の方式により変更可能な処理回路等を実装することが可能である。
【0138】
点像復元回復率Gの決め方はユーザによる指定に限定されず、任意の情報に基づいて点像復元回復率Gが算出決定されてもよい。すなわち鮮鋭回復制御部37(強度自動調整部52)は、ユーザが指定する指定回復率に基づいて点像復元回復率(復元率)Gを定めてもよいし、光学系の特性を表す光学特性情報に基づいて定められる点像復元回復率Gを用いてもよい。ここでいう「光学特性情報」は、光学系が有するレンズ16の種類情報、光学系の個体差情報、その他の撮影設定条件、等を含みうる。また光学系の光学特性が反映された点像復元回復率G自体が「光学特性情報」に含まれていてもよい。この光学特性情報は任意の記憶部に記憶され、例えばレンズユニット12の記憶部(光学系記憶部)に光学特性情報が記憶されてもよいし、カメラ本体14の記憶部(本体記憶部)に光学特性情報が記憶されてもよい。したがって鮮鋭回復制御部37(本体コントローラ28)等において、点像復元回復率Gは、記憶部(光学系記憶部、本体記憶部)に記憶される光学特性情報に基づいて定められてもよい。
【0139】
また点像復元回復率Gの値は撮影設定条件Sに依存してもよく、撮影設定条件Sに応じて異なる値の点像復元回復率Gが鮮鋭回復制御部37(本体コントローラ28)等によって選択されてもよい。この場合、例えば絞り値に依存して発生の程度が変化するアーティファクトを抑えるために、意図的に、特定の絞り値(撮影設定条件S)においては点像復元回復率Gを相対的に低く設定してもよい。
【0140】
輪郭強調フィルタ処理部46において使用されるフィルタ(鮮鋭化処理における輪郭強調成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性を「φ(ω
x,ω
y)」として、復元フィルタX
i,j(点像復元処理における復元成分を抽出するためのフィルタ)の周波数特性を「x
i,j(ω
x,ω
y)」とする。この場合、復元処理部38及び輪郭強調処理部39(点像復元処理及び鮮鋭化処理)を組み合わせた
図5に示す画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式1によって表される。
【0142】
「F(ω
x,ω
y|U,V,x
i,j)」は、復元強度倍率U,鮮鋭化強度倍率V,周波数特性x
i,jをパラメータとした、(ω
x,ω
y)(x方向及びy方向に関する周波数)についての関数を示し、この関数は画像処理システムの構成に依存して決定される。
【0143】
一方、点像復元処理の強度調整(復元乗算器43において用いられる復元強度倍率Uの決定)は、以下の式2によって定義されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)C(U,V,x
i,j)を一定の値に保つように実施される。
【0145】
ここで「w
i,j(ω
x,ω
y)」は、画像内位置(画素位置)(i,j)毎に定義される任意の重み関数であり、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭度評価関数)C(U,V,x
i,j)は、システム全体の周波数特性の重み付き演算によって定義される。重み関数w
i,j(ω
x,ω
y)は、視覚的に有意な周波数成分及び/又は画像内位置において大きな値となるように設計されることが好ましい。上記の式2によって定義されるトータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を用いることによって、点像復元処理の強度を変化させても、注目している周波数帯域及び/又は画像内位置においては周波数強調の程度が変化せず鮮鋭度の大きな乖離は発生しない。一方、重み関数w
i,j(ω
x, ω
y)が比較的小さい周波数帯域及び/又は画像内位置においては、点像復元処理による画質の差が目立ち易くなる。
【0146】
上述を踏まえ、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの値は次のように決定できる。すなわち、強度自動調整部52に入力される点像復元回復率Gに基づいて、単調増加関数により復元強度倍率Uの値が決定され、その後、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)が一定の値に保たれるように鮮鋭化強度倍率Vの値が決定される。したがって、復元強度倍率Uの値が大きくなると鮮鋭化強度倍率Vの値が小さくなり、復元強度倍率Uの値が小さくなると鮮鋭化強度倍率Vの値が大きくなるように、強度自動調整部52は調整を実施する。ただし復元強度倍率Uの値が大き過ぎると、鮮鋭化強度倍率Vの値をゼロ「0」にした場合であってもトータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定に保てない場合が発生しうる。すなわち、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定に保つことが可能な復元強度倍率Uの範囲には制限が存在しうる。
【0147】
復元強度倍率Uの上限値を「U
MAX」と表記すると、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)は「C(U
MAX,0,x
i,j)=C(0,V0,x
i,j)」の関係を満たすため、復元強度倍率Uの最大値は以下の式3に示すように制限される。
【0149】
上記の式3は、点像復元回復率Gが復元強度倍率Uの上限値U
MAX以下の場合には点像復元回復率Gを復元強度倍率Uに設定し(U=G)、点像復元回復率Gが復元強度倍率Uの上限値U
MAXを超える場合には復元強度倍率Uの上限値U
MAXを復元強度倍率Uに設定する(U=U
MAX)ことを示す。
【0150】
鮮鋭化強度倍率Vの値は、
図5の画像処理システムにおいては、トータル鮮鋭度評価値が「C(U,V,x
i,j)=C(0,V0,x
i,j)」の関係を満たす鮮鋭化強度倍率Vを探すことにより算出される。これは1次方程式の解を求めることに等しく、強度自動調整部52は、鮮鋭化強度倍率Vを容易に求められる。鮮鋭化強度倍率Vの算出の難易度は、システム全体の周波数特性F(ω
x,ω
y|U,V,x
i,j)の定義に依存する。この周波数特性F(ω
x,ω
y|U,V,x
i,j)が非線形関数となって上記の等式を厳密に成立させる鮮鋭化強度倍率Vを探すのが難しい場合、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)をトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,x
i,j)に最も近づける鮮鋭化強度倍率Vを採用するという定式化が行われてもよい。
【0151】
上述の一連の処理によって、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定に保つ復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを算出することができる。
【0152】
以上説明したように本実施形態によれば、トータル復元鮮鋭度(トータル鮮鋭度評価値)に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが定められるため、点像復元処理及び鮮鋭化処理を経た画像(出力画像)の鮮鋭度のばらつきが抑えられ、出力画像における総合的な解像度や画質を安定化できる。
【0153】
特に視覚上主要な周波数帯域及び/又は画像内位置における重み付けが大きくなるようにトータル鮮鋭度評価値を定めることにより、視覚上主要な周波数帯域及び/又は画像内位置における復元強度及び鮮鋭化強度が一定化され、鮮鋭度の乖離が過大になることを防げる。
【0154】
また点像復元処理は、光学系のPSFに応じた高精度な画像回復処理を実現可能だが、撮影シーンや撮影条件によってアーティファクトを発生させ易く、画質への影響度が高い。したがって、本実施形態のように点像復元処理の復元強度倍率U(復元率)を優先的に設定することにより、総合的な解像度や画質を効果的に向上できる。例えば復元率(点像復元回復率G、復元強度倍率U)を低く設定することにより、撮影シーン等に応じて生じうるアーティファクト(リンギング等)を目立たせないようにでき、その一方で、鮮鋭化処理によって鮮鋭度を向上させることも可能である。
【0155】
また2つの画像処理(点像復元処理及び鮮鋭化処理)の強度調整パラメータの制御は、一般に「2変数(復元強度、鮮鋭化強度)」の制御が必要となり、制御の自由度は「2」となる。しかしながら本実施形態に係る強度調整処理によれば、必要とされる制御の自由度は「1」となり、点像復元回復率Gを決めるだけで、適切な復元強度及び鮮鋭化強度(復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V)を定めることが可能である。
【0156】
<第2実施形態>
本実施形態に係る鮮鋭回復制御部37は、鮮鋭化処理における鮮鋭化率を取得し、トータル鮮鋭復元率及び鮮鋭化率に基づいて点像復元処理における「復元率」を算出する。
【0157】
図6は、第2実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0158】
本実施形態において、
図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0159】
本実施形態の鮮鋭回復制御部37(強度自動調整部52)には、鮮鋭化率(鮮鋭化強度倍率V)が入力される。この強度自動調整部52に入力される鮮鋭化強度倍率Vは、復元処理部38及び輪郭強調処理部39における画像処理の前に、予めユーザによって指定される。ユーザによる鮮鋭化強度倍率Vの指定方法は特に限定されず、例えば鮮鋭化強度倍率Vを指定するためのスライダ等の調整手段をユーザインターフェース29(背面表示部等)に表示し、ユーザがその調整手段を介した操作を行うことにより鮮鋭化強度倍率Vを簡易に定めることも可能である。この強度自動調整部52に入力される鮮鋭化強度倍率Vは、鮮鋭化乗算器47による鮮鋭化処理の鮮鋭化強度倍率Vをコントロールするための基礎データである。強度自動調整部52に入力される鮮鋭化強度倍率Vの値が所定の閾値よりも大きい場合を除き、強度自動調整部52に入力される鮮鋭化強度倍率Vと鮮鋭化乗算器47において用いられる鮮鋭化強度倍率Vとは等しい。鮮鋭化強度倍率Vが0(ゼロ)の場合は、鮮鋭化処理がオフにされていることに相当する。この鮮鋭化処理における鮮鋭化強度倍率Vは、連続的な値をとるように変化してもよいし、離散的な値をとるように変化してもよいし、オン又はオフ(所定倍率又は「0(ゼロ)」か)によって変化してもよく、鮮鋭化強度倍率Vを任意の方式により変更可能な処理回路等を実装することが可能である。
【0160】
上述の第1実施形態においては「点像復元処理ブロックの復元強度倍率Uを先に決定してから、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一致させるように、鮮鋭化処理ブロックの鮮鋭化強度倍率Vを求める」処理が行われる。一方、本実施形態では「鮮鋭化処理ブロックの鮮鋭化強度倍率Vを先に決定してから、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一致させるように、点像復元処理ブロックの復元強度倍率Uを決定する」処理が行われる。
【0161】
点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0は、輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶されている鮮鋭化強度倍率V0の中から選択され、輪郭強調強度選択部54から強度自動調整部52に送られる。
【0162】
強度自動調整部52は、点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0に基づくトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,x
i,j)と、鮮鋭化乗算器47において用いられる鮮鋭化強度倍率Vに基づくトータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)とを一致させる復元強度倍率Uを求める。この復元強度倍率Uは、トータル鮮鋭度評価値が「C(U,V,x
i,j)=C(0,V0,x
i,j)」の関係を満たす復元強度倍率Uを探すことにより算出され、これは1次方程式の解を求めることに等しい。上記の等式を成立させる復元強度倍率Uを探すのが難しい場合には、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)をトータル鮮鋭度評価値C(0,V0,x
i,j)に最も近づける復元強度倍率Uを採用するという定式化が行われてもよい。
【0163】
上述の一連の処理によって、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定に保つ復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを算出することができる。
【0164】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。
【0165】
以上説明したように本実施形態においても、トータル復元鮮鋭度(トータル鮮鋭度評価値)に基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが求められ、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきを抑え、総合的な解像度や画質を安定化できる。
【0166】
特に鮮鋭化処理(輪郭強調処理)は、点像復元処理に比べ、弊害が非常に少ない安定した画像処理である。そのため、例えばユーザがアーティファクト等の弊害の少ない画像を希望する場合、点像復元処理の効果が目立ち難い場合、点像復元処理の弊害が目立ち易い場合、等においては、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に設定することが好ましい。また、撮影に用いるレンズ16の光学性能が良好であり光学系の点拡がり現象の影響が非常に小さい場合、撮影シーンに基づいて定まる撮影モードが夜景モード、ポートレートモード、アートフィルタモードの場合、等のように、点像復元処理の効果が本来的に実感され難いケースにおいては、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に設定することが好ましい。
【0167】
また、後述の非線形処理(クリップ処理、リミッタ処理等)が鮮鋭化処理ブロックに含まれており鮮鋭化強度をあるレベル以上には強くできない場合のように「鮮鋭化強度には制限があるが、点像復元強度には制限がないケース」がある。このケースでは、本実施形態のように鮮鋭化強度倍率Vを優先的に決定した方が、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定にする制御が簡単になることがある。
【0168】
<第3実施形態>
本実施形態に係る鮮鋭回復制御部37は、特定の周波数(第1の周波数)においてトータル鮮鋭復元率を目標鮮鋭復元率に調整することにより、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを求める。
【0169】
本実施形態において、
図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0170】
図7は、画像処理の周波数特性を例示する図であり、(a)は鮮鋭化処理(輪郭強調フィルタ処理部46)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(b)は点像復元処理(点像復元フィルタ処理部42)における「周波数−ゲイン」関係例を示し、(c)は鮮鋭化処理及び点像復元処理全体における「周波数−ゲイン」関係例を示す。
【0171】
本実施形態の画像処理は、上述の第1実施形態に係る画像処理の一部が簡易化され、ある特定の周波数及び/又は画像内のある特定の位置(画面内座標)に注目し、その注目周波数及び/又は注目位置(注目座標)に関して「復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V」をピンポイント調整する。
【0172】
ここでいう注目周波数及び注目位置は特に限定されず、例えば視覚特性上有意な周波数及び画面内座標を注目周波数及び注目位置に設定することができ、例えば画像の中央位置に注目するように設定してもよい。また注目周波数及び注目位置の範囲も限定されず、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0173】
この画像処理は、具体的には、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)の式(上記「式2」参照)の重み関数w
i,j(ω
x,ω
y)を次のように定義することにより実現可能である。
【0175】
上記式において「δ(x)」はクロネッカーのデルタ関数を示し、画像の注目位置の座標(像高)を「i=i
0,j=j
0」とする。例えば画像の注目位置を画像の中央位置とすると、上記式4の重み関数w
i,j(ω
x,ω
y)は、画像中心において特定の周波数f0において特定のゲインg0(トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j))が得られるように定義されている。また上記式4は、周波数に関し、x方向の周波数のみを参照する。これは、画像中心においてはPSFの形状が等方的であるため、その等法的なPSFに基づく復元フィルタの周波数特性も等方的になり、特定の方向(上記式4においては「x方向」)について参照すれば十分だからである。
【0176】
上記式4によって表される重み関数を用いることによって、
図7に示す通り、点像復元回復率Gがいかなる値であったとしても、画像処理システム全体の周波数特性に関して、常に、特定の周波数f0においてゲインg0が一定になる。
【0177】
点像復元処理全体(復元処理部38)の周波数特性は、点像復元フィルタ処理部42によるフィルタ処理と復元乗算器43によるゲインコントロール処理によって決定され、点像復元フィルタ処理部42の周波数特性(
図7(a)参照)の倍率が復元強度倍率Uによって調整されることにより定まる。同様に、鮮鋭化処理全体(輪郭強調処理部39)の周波数特性は、輪郭強調フィルタ処理部46によるフィルタ処理と鮮鋭化乗算器47によるゲインコントロール処理によって決定され、輪郭強調フィルタ処理部46の周波数特性(
図7(b)参照)の倍率が鮮鋭化強度倍率Vによって調整されることにより定まる。したがって画像処理システム全体の周波数特性(
図7(c)参照)は、点像復元フィルタ処理部42及び輪郭強調フィルタ処理部46の周波数特性(
図7(a)及び(b)参照)に適用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vをコントロールすることにより調整可能である。
【0178】
強度自動調整部52における復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの調整は、特定の周波数f0において特定のゲインg0を実現するという制限はあるが、具体的な調整例は1つには定まらない。例えば、画像の高周波成分を強調したい場合には、
図7(c)の「調整例1」に示すように、その高周波成分を強調するゲインが達成されるように復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが決定される。一方、画像の高周波成分は強調せずに、低周波〜中周波の成分を強調したい場合には、
図7(c)の「調整例2」に示すように、その低周波〜中周波の成分にのみゲインが適用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが決定される。
【0179】
なお強度自動調整部52は、点像復元フィルタ処理部42において使用する復元フィルタXが復元フィルタ選択部53から入力され、その復元フィルタXの周波数特性を求める。また強度自動調整部52は、輪郭強調フィルタ処理部46において使用する鮮鋭化フィルタの周波数特性も把握する。例えば輪郭強調フィルタ処理部46において単一の鮮鋭化フィルタが用いられる場合には、その鮮鋭化フィルタの周波数特性を復元フィルタ選択部53が予め記憶しておいてもよい。また輪郭強調フィルタ処理部46において使用する鮮鋭化フィルタが複数のフィルタの中から選択される場合には、選択された鮮鋭化フィルタが強度自動調整部52に入力されて強度自動調整部52がその鮮鋭化フィルタの周波数特性を求めてもよいし、選択された鮮鋭化フィルタの周波数特性が強度自動調整部52に入力されてもよい。
【0180】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。
【0181】
以上説明したように本実施形態によれば、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきを抑え、画質を安定化できる。
【0182】
特に特定の周波数f0におけるゲインg0が固定されるので、例えば「ベースとなる低周波の鮮鋭度を一定に保ちつつ高周波の鮮鋭度を調整する」などの手法をとることができ、画像処理全体の周波数特性を柔軟にコントロールすることが可能である。
【0183】
また画像内のある特定の位置(例えば中央部位置)において一定のトータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)が達成されるように、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを定めることもできる。中央部位置を「特定の位置」とした場合、ユーザが認識し易い画像中央部における鮮鋭度に大きな乖離が生じることを防ぎつつ、画像周辺のボケ画像に対して鮮鋭度を大きく向上させる点像復元処理及び鮮鋭化処理を行うことも可能である。なお、ここでいう「特定の位置」の数は特に限定されず、画像全体を構成する画素数の数%〜数十%に相当する数を「特定の位置」の数に設定することもできる。
【0184】
<第4実施形態>
本実施形態に係る復元処理部38及び輪郭強調処理部39は並列に設けられ、画像データ(入力画像)は復元処理部38及び輪郭強調処理部39の各々に入力され、点像復元処理による画像データの増減分データと鮮鋭化処理による画像データの増減分データとが加算されて出力画像が生成される。
【0185】
図8は、第4実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0186】
本実施形態において、
図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0187】
本実施形態の画像処理部35は鮮鋭復元調整部63を有する。鮮鋭復元調整部63は、復元処理部38からの画像データの増減分データと輪郭強調処理部39からの画像データの増減分データとを加算する第1加算器61と、第1加算器61から出力される加算後増減分データと入力画像データとを加算する第2加算器62とを含む。
【0188】
すなわち本例においては、画像データに対する「点像復元フィルタ処理部42及び復元乗算器43による点像復元処理」と「輪郭強調フィルタ処理部46及び鮮鋭化乗算器47による鮮鋭化処理」とが並列的に行われ、各処理においては画像データ(入力画像)との差分値に相当する増減分データが算出される。点像復元処理による画像データの増減分データと鮮鋭化処理による画像データの増減分データとは第1加算器61によって加算され、点像復元処理及び鮮鋭化処理の全体による画像データの増減分データが算出される。この「処理全体による画像データの増減分データ」と画像データ(入力画像)とが第2加算器62によって加算され、点像復元処理及び鮮鋭化処理が施された画像データ(出力画像)が生成される。
【0189】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。例えば、復元フィルタ選択部53(
図5参照)によって選択される復元フィルタは点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52に供給され、輪郭強調強度選択部54によって選択される鮮鋭化強度倍率V0が強度自動調整部52に供給される。また復元乗算器43及び鮮鋭化乗算器47において使用される復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vは強度自動調整部52によって適宜定められる。
【0190】
本例の画像処理システム全体の周波数特性は、以下の式5によって表される。
【0192】
上記式5において、復元処理部38の周波数特性が「U×x
i,j(ω
x,ω
y)」によって表され、輪郭強調処理部39の周波数特性が「V×φ(ω
x,ω
y)」によって表される。したがって第1加算器61による加算処理は「U×x
i,j(ω
x,ω
y)+V×φ(ω
x,ω
y)」の周波数特性に基づき、第2加算器62による加算処理は「1+U×x
i,j(ω
x,ω
y)+V×φ(ω
x,ω
y)」の周波数特性に基づく。
【0193】
以上説明したように本実施形態においても、復元処理部38及び輪郭強調処理部39が直列的に配置される場合(上述の第1実施形態(
図5)参照)と同様に、点像復元処理及び鮮鋭化処理後の出力画像における鮮鋭度のばらつきが抑えられ、画質を安定化できる。
【0194】
<第5実施形態>
本実施形態に係る画像処理部35は、画像データの非線形処理を行う非線形処理部を更に備え、2段フィルタ処理システム(復元処理部38及び輪郭強調処理部39)において非線形処理が導入されている。この非線形処理部は、復元処理部38及び輪郭強調処理部39のうち少なくともいずれか一方に含まれるが、下記では復元処理部38に非線形処理部が設けられる例について説明する。
【0195】
非線形な処理は一般に加減乗除の演算処理のみからは構成されず、例えばLUT(ルックアップテーブル)の参照や条件分岐を伴う処理が含まれうる。非線形処理は、アーティファクトやノイズの抑制を目的として行われることが多く、例えば「画像信号のうちクリップ閾値を超える画素値をクリップ閾値に調整するクリップ処理」を非線形処理として行ってもよい。
【0196】
図9は、第5実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0197】
本実施形態において、
図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0198】
本例の点像復元処理(復元処理部38)は、復元フィルタによって抽出された点像復元強調成分に対する強調倍率の適用、その強調倍率適用後の点像復元強調成分に対する非線形処理の適用、及び非線形処理後の点像復元強調成分と元画像との合成、という一連の処理を含む。
【0199】
すなわち画像データ(入力画像)は点像復元フィルタ処理部42に入力されて復元フィルタによるフィルタリング処理が行われ、点像復元処理による画像データの増減分データが算出される。その増減分データは復元乗算器43に入力されて復元強度倍率Uに基づくゲインコントロールが行われ、増減分データ及び復元強度倍率Uの乗算が行われ、乗算後の増減分データが非線形処理部65に入力される。
【0200】
非線形処理部65においては、入力された増減分データに対するクリップ処理(非線形処理)が行われ、増減分データ(画像データ)のうち所定のクリップ閾値を超える画素値がクリップ閾値に調整される。なお、クリップ閾値は予め定められて非線形処理部65が記憶していてもよいし、ユーザがユーザインターフェース29を介してクリップ閾値を直接的又は間接的に指定してもよい。クリップ処理後の画像データの増減分データは復元加算器44において点像復元フィルタ処理部42に入力される前の画像データ(入力画像)に加算され、点像復元処理後の画像データが算出される。
【0201】
非線形処理部65において行われるクリップ処理は、以下の式6で示すように、画像データがクリップ閾値θ(≧0)以上の値をとらないように制限する処理である。
【0203】
上記式6によって表されるクリップ処理関数CLIP(x)によれば、画像データ(画素データ)xの絶対値がクリップ閾値θよりも小さい場合(|x|<θ)、その画像データはクリップ処理によって調整されずに保持され、非線形処理部65から「x」が出力される。一方、画像データxの絶対値がクリップ閾値θ以上の場合(|x|≧θ)、その信号成分はクリップ処理によって符号関数(signum function)によって調整され、非線形処理部65から「sign(x)×θ」が出力される。
【0204】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。例えば、輪郭強調処理部39における輪郭強調フィルタ処理部46によるフィルタリング処理、鮮鋭化乗算器47による乗算処理及び鮮鋭化加算器48による加算処理は、上述の第1実施形態と同様に行われる。
【0205】
本例においては、システム全体における周波数特性F(ω
x,ω
y|U,V,x
i,j)として、特定の入力波形をシステム(画像処理部35)に入力した場合の出力に基づいて近似的に得られる周波数特性を用いることができる。すなわち、非線形処理を行う画像処理部が信号処理系に存在する場合、その信号処理系の周波数特性を正確に求めることは原理的に不可能であり、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの強度自動算出処理が適用できない場合がある。したがって非線形処理が行われる場合、周波数成分が予め把握されている特定の入力波形(入力画像データ)に対する出力波形(出力画像データ)から、内部の周波数特性を近似的に評価し、その近似的な評価によって得られる周波数特性を利用することにより、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動算出処理を行ってもよい。この場合、システム全体の周波数特性F(ω
x,ω
y|U,V,x
i,j)を求める必要があり、特定の入力波形に対するシステムの周波数レスポンス近似式を数式によって表現することが求められる。具体的な近似評価手法は任意であり、このシステムの周波数レスポンス近似式の精度は、非線形処理の具体的な内容に依存する。
【0206】
システムの周波数レスポンス近似式の例としては、
図9に示すクリップ処理を含む画像処理システムにおいて、予め特性を把握している入力波形(画像信号)を使用し、入力波形がハイコントラストなステップ関数であると仮定し、上述の実施形態のように特定の周波数f0において特定の値(トータル鮮鋭度評価値)を持つようにw
i,j(ω
x,ω
y)を定義する場合(上記の「式4」参照)、画像処理システム全体の周波数特性を以下の式7によって近似的に表すことができることを本件発明者は経験的に知得した。
【0208】
上記の式7において、「A」はクリップ閾値θと入力画像信号の鮮鋭度(ボケ度)に依存する定数である。また「min(U×ψ(ω
x,ω
y),A)」は「U×ψ(ω
x,ω
y)」及び「A」のうち小さい方を示す関数である。
【0209】
なお、本例においては復元処理部38に非線形処理部65が設けられるが、非線形処理部は、輪郭強調処理部39にのみ設けられてもよいし、復元処理部38及び輪郭強調処理部39の双方に設けられてもよい。ただし、復元処理部38及び輪郭強調処理部39の双方において非線形処理が行われると、画像処理システム全体の周波数レスポンス近似式が複雑になり、トータル鮮鋭度評価値C(U,V,x
i,j)を一定の値に保ちながら復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する制御が難しくなってしまう可能性がある。
【0210】
点像復元処理(点像復元フィルタ処理部42)において用いられる復元フィルタは、想定される周波数特性(ボケ特性)を入力画像が持つことを前提に設計される。しかしながら、点像復元処理及び鮮鋭化処理よりも前段に配置される撮像系や画像処理系における非線形な現象及び信号処理によって、想定とは異なる周波数特性(不正な周波数特性)を画像データ(入力画像)が持ち、出力画像にアーティファクトが生じることがある。このようなアーティファクトを抑制するため、復元フィルタによるフィルタリング処理(点像復元フィルタ処理部42)よりも後段に非線形処理部65を設けることが好ましい。
【0211】
以上説明したように本実施形態によれば、復元処理部38及び/又は輪郭強調処理部39によって非線形処理が行われる場合であっても、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを的確に求めることができる。特に、非線形処理を行うことにより、アーティファクトを効果的に抑制することができる。
【0212】
<第6実施形態>
従来の動画撮影モードにおいては動画撮影中に撮影設定条件は経時的に変化し、変動する撮影設定条件に対応する復元フィルタを逐次選択して点像復元処理を行うと、動画フレーム間において復元率や画像鮮鋭度のばらつきが目立つ虞がある。
【0213】
本実施形態においては、動画フレーム間における復元率や鮮鋭度のばらつきを防ぐため、動画記録中は、トータル鮮鋭度評価値を予め決められた値に保ちつつ、点像復元処理強度及び鮮鋭化処理強度の制御が行われる。すなわち本実施形態においては、トータル鮮鋭度評価値が撮影設定条件毎には切り替えられない。
【0214】
図10は、第6実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0215】
本実施形態に係る鮮鋭回復制御部37(強度自動調整部52)は、画像データ(入力画像)を取得した際の撮影モード情報Mを取得し、撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、トータル鮮鋭復元率を一定に保つ。なお、ここでいう「トータル鮮鋭復元率を一定に保つ」とは、トータル鮮鋭復元率を所定値に保つ場合に限定されるものではなく、トータル鮮鋭復元率が画質に影響の無い範囲内に保たれる場合も含みうる。トータル鮮鋭復元率が画質に影響の無い範囲内に保たれる場合、トータル鮮鋭復元率の変動の程度は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0216】
撮影モード情報Mは任意の方式によって強度自動調整部52に入力される。例えばデジタルカメラ10(レンズユニット12、カメラ本体14)に「動画記録モード及び静止画記録モードを切り替え可能なモード切替部(ユーザインターフェース29)」が設けられる場合には、そのモード切替部から本体コントローラ28(強度自動調整部52)にユーザが選択した撮影モード情報Mが送られてもよい。撮影モード情報Mは、処理対象の画像が動画か静止画かを直接的又は間接的に示す情報であればよく、処理対象の画像に付随する「動画/静止画」を示す情報を撮影モード情報Mとしてもよい。
【0217】
強度自動調整部52は、入力される撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、動画を構成する複数の画像データ(フレーム)間で共通のトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)を用いて、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。すなわち動画記録モードによって撮影された動画像(フレーム)に対する復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する場合、フレーム間で撮影設定条件が変わっても、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)は撮影設定条件毎には切り替えられず固定される。この動画像に対して固定的に使用されるトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)は、任意の手法によて決定可能であり、例えば動画を構成する特定のフレーム(例えば最初のフレーム)の撮影設定条件に対応するトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)が用いられてもよい。
【0218】
なお、強度自動調整部52(鮮鋭回復制御部37)は、撮影モード情報Mが動画記録モードを示す場合には、撮影モード情報Mが静止画記録モードを示す場合よりも、点像復元処理の復元強度倍率U(復元率)を小さくしてもよい。復元処理部38による点像復元処理はPSFに基づく画像回復処理であり、PSFが正確に把握可能な場合には画質を効果的に改善可能な優れた画質改善処理だが、PSFが正確に把握されない場合には過補正等によって画質劣化を引き起こしうる処理である。PSFを忠実に反映する復元フィルタを用いる点像復元処理には相応の時間が必要になるが、動画記録モードにおいては、動画を構成する複数のフレーム画像を限られた時間内に処理することも求められる。また、動画においてはフレーム間の連続性を保持することも求められ、連続フレーム間で画質が大幅に変化することは、必ずしも好ましくない。したがって、動画記録モードにおいては復元強度倍率U(復元率)を比較的小さくすることにより、過補正等による画質劣化やフレーム間の変化を小さくし、総合的に良質な動画を生成することができる。また鮮鋭化強度倍率Vによって復元強度倍率Uの減少が補われ、点像復元処理による復元度が比較的小さくても、鮮鋭化処理によって鮮明な動画を得ることができる。
【0219】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。
【0220】
以上説明したように本実施形態によれば、動画撮影中に撮影設定条件が変化し、撮影設定条件に応じた点像復元処理の復元率が変動した場合であっても、トータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)が一定であるため、復元動画の鮮鋭度のばらつきを抑えることができる。
【0221】
<第7実施形態>
本実施形態では、カメラ本体14に装着される光学系を構成するレンズユニット12の個体差情報が反映された点像復元回復率Gが強度自動調整部52に入力される。したがって、強度自動調整部52は、光学系の個体差情報を含む光学特性情報に基づいて復元強度倍率Uを決定する。
【0222】
図11は、第7実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0223】
本実施形態において、
図5に示す第1実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0224】
レンズユニット12を構成する光学系、特にレンズ16等は製造誤差等のために光学特性に関して個体差があり、その個体差によってレンズユニット12毎にPSFが厳密には異なる。したがって、光学系の一例であるレンズユニット12光学系の個体差を無視して点像復元処理を行うと、同一種類のレンズユニット12を用いて撮影した画像であっても復元度が異なり、復元画像におけるアーティファクトの出現態様も異なることがある。
【0225】
理想的には、レンズユニット12の光学特性を忠実に反映したPSFに基づいて点像復元処理が行われ、復元画像にアーティファクトは生じない。しかしながら実際には、レンズユニット12の個体差に起因して、処理対象画像におけるPSFの影響と、点像復元処理において使用する復元フィルタの基礎を構成するPSFとがマッチングしておらず、復元画像にアーティファクトが生じることがある。個体差が原因で生じるアーティファクトを防ぐための一手法として、点像復元処理における復元強度倍率Uを小さい値に設定することにより復元度を抑える手法があるが、復元強度倍率Uを小さくすると画像が十分には復元されず所望の鮮鋭度が得られない。この鮮鋭度落ちを防ぐための一手法として、レンズユニット12の個体毎に、所望のトータル鮮鋭度を実現するための鮮鋭化強度倍率Vを逐次調整することが考えられるが、そのような逐次調整は手間がかかる作業であり、不便である。
【0226】
本実施形態では、点像復元処理の回復強度がレンズ(光学系)の個体毎に調整され、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの決定が自動化される。
【0227】
すなわち本実施形態においては、レンズユニット記憶部21が復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60を含むとともに、点像復元強度リスト記憶部67を更に含む。点像復元強度リスト記憶部67には、光学系の一例であるレンズユニット12に特有の点像復元回復率Gを記憶し、この点像復元回復率Gはレンズユニット12の個体差情報Qが反映された値となっている。また、復元フィルタ記憶部58にはレンズユニット12(光学系)の種別に応じた復元フィルタXが記憶されている。なお、復元フィルタXは同じ種別の光学系の一例であるレンズユニット12に対して共通に使用される。
【0228】
点像復元強度リスト記憶部67に記憶される点像復元回復率Gは、鮮鋭回復制御部37が有する回復率選択部69によって読み出されて強度自動調整部52に供給される。すなわち回復率選択部69は、撮影設定条件Sに対応する点像復元回復率Gを、点像復元強度リスト記憶部67から読み出して強度自動調整部52に供給する。強度自動調整部52は、上述の第1実施形態と同様に、供給される点像復元回復率Gから復元強度倍率Uを決定し、この復元強度倍率U及びトータル鮮鋭度評価値(トータル鮮鋭復元率)に基づいて鮮鋭化強度倍率Vを決定する。
【0229】
他の構成は、
図5に示す第1実施形態と同様である。
【0230】
本実施形態においては復元フィルタ記憶部58がレンズユニット記憶部21(レンズユニット12)に設けられるため、レンズユニット12が交換されると、復元フィルタ選択部53は新たなレンズユニット12の復元フィルタ記憶部58から復元フィルタXを読み出す。そのため、搭載される光学系の一例であるレンズユニット12のPSFを反映した復元フィルタXを復元フィルタ記憶部58に記憶しておくことにより、各レンズユニット12には自身のPSFを反映した復元フィルタXを記憶する復元フィルタ記憶部58が搭載される。したがって、複数種類のレンズユニット12がカメラ本体14に装着可能であっても、装着されたレンズユニット12に最適化された復元フィルタXを点像復元フィルタ処理部42に供給することができる。更に本実施形態によれば、カメラ本体14に装着される光学系の一例であるレンズユニット12の個体差情報Qが加味された点像復元回復率Gが強度自動調整部52に供給されるため、光学系の個体差によるPSFの不整合に起因するアーティファクトを防ぐことができる。特に本実施形態においては、個体差情報Qを反映した点像復元回復率Gがレンズユニット記憶部21(レンズユニット12)に記憶されるため、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12が交換されても、交換後のレンズユニット12の個体差情報Qに基づく点像復元回復率Gに応じて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定可能である。各フィルタ処理においては決定された復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが使用されるため、個体差を反映した復元処理を行いつつ所望のトータル鮮鋭度を得ることができる。
【0231】
なお、点像復元強度リスト記憶部67、復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60は、上述の実施形態においてはレンズユニット12に設けられているが、カメラ本体14に設けられていてもよい。これらの記憶部がカメラ本体14に設けられる場合、装着されたレンズユニット12に対応するデータが外部機器類(コンピュータ92、サーバ97等)から、点像復元強度リスト記憶部67、復元フィルタ記憶部58及び輪郭強調強度リスト記憶部60にダウンロードされることが好ましい。
【0232】
<第8実施形態>
本実施形態では、復元フィルタが複数の光学系に関して共通に用いられる。
【0233】
図12は、第8実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理を行う処理ブロックの構成を示す図である。
【0234】
本実施形態において、
図11に示す第7実施形態と同様の構成に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0235】
図11に示す上述の第7実施形態においては撮影設定条件毎に復元フィルタXが選択されて点像復元フィルタ処理部42において用いられるが、本実施形態においては複数の撮影設定条件下(光学系種等)においては同一の復元フィルタXが点像復元フィルタ処理部42で用いられる。
【0236】
撮影設定条件毎のPSFに対応した復元フィルタを用いる点像復元処理は処理負荷が比較的大きいが、本実施形態は、所定の許容範囲を設定しその許容範囲内の複数の撮影設定条件下では復元フィルタXを共通化することにより点像復元処理の負荷を軽減する。ただし、撮影設定条件(光学系種等)が異なればPSFも厳密には異なるため、複数の撮影設定条件下において復元フィルタXを共通化する場合、復元画像におけるアーティファクトの出現態様や画像復元率(画像回復率)は撮影設定条件に応じて変わる。
【0237】
本実施形態においては光学系種に応じて変動するアーティファクト等を防ぐために、カメラ本体14に取り付けられるレンズユニット12の種別に応じて、点像復元処理の点像復元回復率Gを変化させて、アーティファクトが強く出現し易いレンズユニット12においては点像復元回復率Gを比較的弱く設定する。点像復元回復率Gを比較的弱く設定することによって鮮鋭度がばらついて所望のトータル鮮鋭回復度が得られない現象を防ぐため、強度自動調整部52による復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動調整を利用する。
【0238】
すなわち
図12に示す本実施形態においては、点像復元強度リスト記憶部67及び輪郭強調強度リスト記憶部60はレンズユニット12(レンズユニット記憶部21)に設けられるが、輪郭強調強度選択部54はカメラ本体14に設けられる。復元フィルタ選択部53は、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12にかかわらず、撮影設定条件Sに対応する復元フィルタXを輪郭強調強度選択部54から選択し、点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52に供給する。
【0239】
一方、強度自動調整部52に供給される点像復元回復率Gは光学系の一例であるレンズユニット12毎に定められる。すなわち回復率選択部69は、レンズユニット記憶部21の点像復元強度リスト記憶部67から撮影設定条件Sに応じた点像復元回復率Gを読み出して強度自動調整部52に供給する。
【0240】
点像復元強度リスト記憶部67に記憶される点像復元回復率Gのリスト及び輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶される鮮鋭化強度倍率V0のリストは、光学系の一例であるレンズユニット12毎に予め算出されて記憶される。
【0241】
本実施形態においてはレンズユニット12の種類によらずに共通の復元フィルタXが点像復元フィルタ処理部42によって用いられるため、その復元フィルタXの共通化を加味した点像復元回復率G及び鮮鋭化強度倍率V0(点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0)が強度自動調整部52に送られる。したがって回復率選択部69は、点像復元強度リスト記憶部67から選択される点像復元回復率Gに対して「復元フィルタXの共通化」を加味した任意の調整処理を行い、その調整後の点像復元回復率Gを強度自動調整部52に供給してもよい。同様に、輪郭強調強度選択部54は、輪郭強調強度リスト記憶部60から選択される鮮鋭化強度倍率V0に対して「復元フィルタXの共通化」を加味した任意の調整処理を行い、その調整後の鮮鋭化強度倍率V0を強度自動調整部52に供給してもよい。
【0242】
以上説明したように本実施形態によれば、複数の撮影設定条件(光学系種類)に関して同一の復元フィルタを使用することを考慮して点像復元回復率Gが予め定められ、復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vが算出される。これにより、復元フィルタの共通化に起因する復元画像におけるアーティファクトを防ぎつつ、点像復元処理及び鮮鋭化処理によって画像の鮮鋭度を向上させることができる。
【0243】
なお、上述の例においては「複数の光学系」に対して復元フィルタが共通に用いられるが、復元フィルタの共通化の基準となる撮影設定条件は光学系の種類に限定されず、他の撮影設定条件(例えばズーム情報等)に関して復元フィルタが共通に用いられてもよい。
【0244】
例えば複数のズーム倍率(特に光学ズーム倍率及びデジタルズーム倍率のうち光学ズーム倍率)に関して同一の復元フィルタを用いる場合、撮影設定条件Sに含まれるズーム情報に基づいて復元フィルタ選択部53が適切な復元フィルタXを選択し、点像復元フィルタ処理部42及び強度自動調整部52に供給する。一方、回復率選択部69は、点像復元強度リスト記憶部67から撮影設定条件Sに応じた点像復元回復率Gを読み出して強度自動調整部52に供給する。強度自動調整部52は、供給される復元フィルタX及び点像復元回復率Gに基づいて復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを決定する。この場合、複数のズーム倍率に関して共通の復元フィルタを用いることを考慮した点像復元回復率Gや鮮鋭化強度倍率V0(最大輪郭強調強度)が強度自動調整部52に供給されてもよい。例えば回復率選択部69及び輪郭強調強度選択部54が、共通復元フィルタの使用を踏まえた点像復元回復率G及び鮮鋭化強度倍率V0(最大輪郭強調強度)を読み出し又は決定してもよい。
【0245】
<他の変形例>
上述の実施形態は例示に過ぎず、他の構成に対しても本発明を適用することが可能である。
【0246】
鮮鋭回復制御部37(例えば
図5参照)は、少なくとも「絞り値が、第1の閾値によって表される絞り度よりも絞りが開放されていることを示す場合」に、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出することも可能である。例えば、絞り値が開放側である場合に上述の復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vの自動調整制御が行われるようにしてもよい。すなわち鮮鋭回復制御部37(例えば
図5参照)は、画像データを取得した際の光学系(レンズユニット12)の絞り値(F値)を取得し、その絞り値と第1の閾値とを比較する。絞り値をF値とした場合、取得したF値が第1の閾値以下(絞り開放側)の場合のみ、鮮鋭回復制御部37は、復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出してもよい。一般に、点像復元処理による復元率及びアーティファクトの出現態様はF値に応じて変動し、特に開放側F値で撮影された画像データでアーティファクトが目立ち易い。したがって(小絞り側ではなく)開放側絞りで撮影された画像データに対してのみ、上述の各実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理による画像処理を行って、開放側絞り値で表れ易いアーティファクトを抑えつつ、鮮鋭化処理による画像鮮鋭度を向上させることができる。この場合、上述の各実施形態に係る点像復元処理及び鮮鋭化処理による画像処理は、少なくともアーティファクトが目立ち易い開放側F値で撮影された画像データに対して適用されればよいが、その他のF値で撮影された画像データに対して適用されてもよく、開放側F値で撮影された画像データに対してのみ適用されてもよい。
【0247】
なお、絞り値(絞り情報)は「撮影設定条件」に含まれ、
図12に示す構成において撮影設定条件Sが強度自動調整部52に供給されることによって、強度自動調整部52において「絞り値と第1の閾値との比較」及び「点像復元回復率G(復元率)及び鮮鋭化強度倍率V(鮮鋭化率)の決定」を行うことができる。また「第1の閾値」は任意の値(F値)に設定可能であり、ズーム等の他の撮影設定条件に応じて決められてもよく、例えばF3.5〜F6.3の範囲のF値に相当する閾値を「第1の閾値」に設定してもよい。
【0248】
また上述の実施形態では点像復元処理がオフの場合の鮮鋭化強度倍率V0(トータル鮮鋭復元率)を撮影設定条件Sに基づいて輪郭強調強度選択部54が決定する例が示されているが、ユーザインターフェース29を介したユーザの指定に基づいて鮮鋭化強度倍率V0(トータル鮮鋭復元率)が決定されてもよい。
【0249】
また上述の各実施形態ではデジタルカメラ10において復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを自動調整計算する例について説明したが、出荷前にメーカ側で予めその自動調整計算を行い、算出した復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vのパラメータ全てをデジタルカメラ10(レンズユニット記憶部21、本体記憶部31等)に記憶保持させてもよい。例えば「復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率V」と「撮影設定条件S」とを対応付けたテーブルをデジタルカメラ10は記憶保持し、強度自動調整部52はこのテーブルを参照することにより撮影設定条件Sから復元強度倍率U及び鮮鋭化強度倍率Vを求めることができる。この場合、デジタルカメラ10(画像処理部)において用いられるパラメータを生成するパラメータ生成方法は、「点像復元処理による画像データの復元率及び鮮鋭化処理による画像データの鮮鋭化率に基づくトータル鮮鋭復元率を取得するステップ」と、「復元率及び鮮鋭化率のうちの一方を取得し、復元率及び鮮鋭化率のうちの他方をトータル鮮鋭復元率に基づいて算出するステップ」と、を備える。これらのステップは、例えば上述の第1実施形態に係る強度自動調整部52と同様にすることにより実行可能である。
【0250】
また、本明細書に記載の実施形態同士を適宜組み合わせてもよく、第1実施形態〜第8実施形態及び変形例のうち、任意の形態同士が組み合わされてもよい。例えば第2実施形態(
図6参照)において輪郭強調強度選択部54は、カメラ本体14に装着されるレンズユニット12の光学特性情報を取得し、その光学特性情報(光学系が有するレンズ種類情報、光学系の個体差情報、撮影設定条件等)に基づいて鮮鋭化強度倍率Vを決定してもよい。この場合、輪郭強調強度選択部54は任意の手法によって光学特性情報を取得することができ、例えば輪郭強調強度選択部54(本体コントローラ28)はレンズユニットコントローラ20と通信することによりレンズユニット12の光学特性情報を取得してもよい。また
図13に示すように、個体差情報Q(光学特性情報の一例)が反映された鮮鋭化強度倍率V0、Vを輪郭強調強度リスト記憶部60に記憶しておくことにより、「光学特性情報の取得」及び「光学特性情報に基づく鮮鋭化強度倍率V0、Vの決定」を同時的に行ってもよい。
【0251】
また、上述の各機能構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の各装置及び処理部(本体コントローラ28、デバイス制御部34、画像処理部35(鮮鋭回復制御部37、復元処理部38、輪郭強調処理部39)等)における画像処理方法(画像処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することができる。
【0252】
また、本発明を適用可能な態様はデジタルカメラ及びコンピュータ(サーバ)には限定されず、撮像を主たる機能とするカメラ類の他に、撮像機能に加えて撮像以外の他の機能(通話機能、通信機能、その他のコンピュータ機能)を備えるモバイル機器類に対しても本発明を適用することが可能である。本発明を適用可能な他の態様としては、例えば、カメラ機能を有する携帯電話機やスマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ゲーム機が挙げられる。以下、本発明を適用可能なスマートフォンの一例について説明する。
【0253】
<スマートフォンの構成>
図14は、本発明の撮像装置の一実施形態であるスマートフォン101の外観を示す図である。
図14に示すスマートフォン101は、平板状の筐体102を有し、筐体102の一方の面に表示部としての表示パネル121と、入力部としての操作パネル122とが一体となった表示入力部120を備える。また、係る筐体102は、スピーカ131と、マイクロホン132、操作部140と、カメラ部141とを備える。なお、筐体102の構成はこれに限定されず、例えば、表示部と入力部とが独立した構成を採用したり、折り畳み構造やスライド機構を有する構成を採用することもできる。
【0254】
図15は、
図14に示すスマートフォン101の構成を示すブロック図である。
図15に示すように、スマートフォンの主たる構成要素として、無線通信部110と、表示入力部120と、通話部130と、操作部140と、カメラ部141と、記憶部150と、外部入出力部160と、GPS(Global Positioning System)受信部170と、モーションセンサ部180と、電源部190と、主制御部100とを備える。また、スマートフォン101の主たる機能として、基地局装置BSと移動通信網NWとを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
【0255】
無線通信部110は、主制御部100の指示に従って、移動通信網NWに収容された基地局装置BSに対し無線通信を行うものである。係る無線通信を使用することにより、音声データ、画像データ等の各種ファイルデータ、電子メールデータなどの送受信や、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。
【0256】
表示入力部120は、主制御部100の制御により、画像(静止画像及び動画像)や文字情報などを表示することにより視覚的にユーザに情報を伝達し、表示した情報に対するユーザ操作を検出する、いわゆるタッチパネルであって、表示パネル121と、操作パネル122とを備える。
【0257】
表示パネル121は、LCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic Electro−Luminescence Display)などを表示デバイスとして用いたものである。操作パネル122は、表示パネル121の表示面上に表示される画像を視認可能に載置され、ユーザの指や尖筆によって操作される一又は複数の座標を検出するデバイスである。係るデバイスをユーザの指や尖筆によって操作すると、操作に起因して発生する検出信号を主制御部100に出力する。次いで、主制御部100は、受信した検出信号に基づいて、表示パネル121上の操作位置(座標)を検出する。
【0258】
図14に示すように、本発明の撮像装置の一実施形態として例示しているスマートフォン101の表示パネル121と操作パネル122とは一体となって表示入力部120を構成しているが、操作パネル122が表示パネル121を完全に覆うような配置となっている。係る配置を採用した場合、操作パネル122は、表示パネル121外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備えてもよい。換言すると、操作パネル122は、表示パネル121に重なる重畳部分についての検出領域(以下、表示領域と称する)と、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、非表示領域と称する)とを備えていてもよい。
【0259】
なお、表示領域の大きさと表示パネル121の大きさとを完全に一致させてもよいが、両者を必ずしも一致させる必要はない。また、操作パネル122が、外縁部分と、それ以外の内側部分の2つの感応領域を備えていてもよい。さらに、外縁部分の幅は、筐体102の大きさなどに応じて適宜設計されるものである。更にまた、操作パネル122において採用される位置検出方式としては、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などが挙げられ、いずれの方式を採用することもできる。
【0260】
通話部130は、スピーカ131やマイクロホン132を備え、マイクロホン132を通じて入力されたユーザの音声を主制御部100にて処理可能な音声データに変換することにより主制御部100に出力が可能であり、無線通信部110或いは外部入出力部160により受信された音声データを復号してスピーカ131から出力するものである。また、
図14に示すように、例えば、スピーカ131を表示入力部120が設けられた面と同じ面に搭載し、マイクロホン132を筐体102の側面に搭載することができる。
【0261】
操作部140は、キースイッチなどを用いたハードウェアキーであって、ユーザからの指示を受け付けるものである。例えば、
図14に示すように、操作部140は、スマートフォン101の筐体102の側面に搭載され、指などで押下されるとオンとなり、指を離すとバネなどの復元力によってオフ状態となる押しボタン式のスイッチである。
【0262】
記憶部150は、主制御部100の制御プログラムや制御データ、アプリケーションソフトウェア、通信相手の名称や電話番号などを対応づけたアドレスデータ、送受信した電子メールのデータ、WebブラウジングによりダウンロードしたWebデータや、ダウンロードしたコンテンツデータを記憶し、またストリーミングデータなどを一時的に記憶するものである。また、記憶部150は、スマートフォン内蔵の内部記憶部151と着脱自在な外部メモリスロットを有する外部記憶部152により構成される。なお、記憶部150を構成するそれぞれの内部記憶部151と外部記憶部152は、フラッシュメモリタイプ(flash memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、カードタイプのメモリ(例えば、MicroSD(登録商標)メモリ等)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの格納媒体を用いて実現される。
【0263】
外部入出力部160は、スマートフォン101に連結される全ての外部機器とのインターフェースの役割を果たすものであり、他の外部機器に通信等(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、IEEE1394など)又はネットワーク(例えば、インターネット、無線LAN、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(Infrared Data Association:IrDA)(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)(登録商標)、ジグビー(ZigBee)(登録商標)など)により直接的又は間接的に接続するためのものである。
【0264】
スマートフォン101に連結される外部機器としては、例えば、有/無線ヘッドセット、有/無線外部充電器、有/無線データポート、カードソケットを介して接続されるメモリカード(Memory card)やSIM(Subscriber Identity Module Card)/UIM(User Identity Module Card)カード、オーディオ・ビデオI/O(Input/Output)端子を介することにより接続される外部オーディオ・ビデオ機器、無線接続される外部オーディオ・ビデオ機器、有/無線接続されるスマートフォン、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、有/無線接続されるPDA、有/無線接続されるパーソナルコンピュータ、イヤホンなどがある。外部入出力部は、このような外部機器から伝送を受けたデータをスマートフォン101の内部の各構成要素に伝達することや、スマートフォン101の内部のデータが外部機器に伝送されるようにしてもよい。
【0265】
GPS受信部170は、主制御部100の指示に従って、GPS衛星ST1〜STnから送信されるGPS信号を受信し、受信した複数のGPS信号に基づく測位演算処理を実行し、スマートフォン101の緯度、経度、高度からなる位置を検出する。GPS受信部170は、無線通信部110や外部入出力部160(例えば、無線LAN)から位置情報を取得できる場合には、その位置情報を用いて位置を検出することもできる。
【0266】
モーションセンサ部180は、例えば、3軸の加速度センサなどを備え、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の物理的な動きを検出する。スマートフォン101の物理的な動きを検出することにより、スマートフォン101の動く方向や加速度が検出される。係る検出結果は、主制御部100に出力されるものである。
【0267】
電源部190は、主制御部100の指示に従って、スマートフォン101の各部に、バッテリ(図示しない)に蓄えられる電力を供給するものである。
【0268】
主制御部100は、マイクロプロセッサを備え、記憶部150が記憶する制御プログラムや制御データに従って動作し、スマートフォン101の各部を統括することにより制御するものである。また、主制御部100は、無線通信部110を通じて、音声通信やデータ通信を行うために、通信系の各部を制御する移動通信制御機能と、アプリケーション処理機能を備える。
【0269】
アプリケーション処理機能は、記憶部150が記憶するアプリケーションソフトウェアに従って主制御部100が動作することにより実現するものである。アプリケーション処理機能としては、例えば、外部入出力部160を制御することにより対向機器とデータ通信を行う赤外線通信機能や、電子メールの送受信を行う電子メール機能、Webページを閲覧するWebブラウジング機能などがある。
【0270】
また、主制御部100は、受信データやダウンロードしたストリーミングデータなどの画像データ(静止画像や動画像のデータ)に基づいて、映像を表示入力部120に表示する等の画像処理機能を備える。画像処理機能とは、主制御部100が、上記画像データを復号し、係る復号結果に画像処理を施することにより、画像を表示入力部120に表示する機能のことをいう。
【0271】
さらに、主制御部100は、表示パネル121に対する表示制御と、操作部140、操作パネル122を通じたユーザ操作を検出する操作検出制御を実行する。
【0272】
表示制御の実行により、主制御部100は、アプリケーションソフトウェアを起動するためのアイコンや、スクロールバーなどのソフトウェアキーを表示したり、或いは電子メールを作成するためのウィンドウを表示する。なお、スクロールバーとは、表示パネル121の表示領域に収まりきれない大きな画像などについて、画像の表示部分を移動する指示を受け付けるためのソフトウェアキーのことをいう。
【0273】
また、操作検出制御の実行により、主制御部100は、操作部140を通じたユーザ操作を検出したり、操作パネル122を通じて、上記アイコンに対する操作や、上記ウィンドウの入力欄に対する文字列の入力を受け付けたり、或いは、スクロールバーを通じた表示画像のスクロール要求を受け付ける。
【0274】
さらに、操作検出制御の実行により主制御部100は、操作パネル122に対する操作位置が、表示パネル121に重なる重畳部分(表示領域)か、それ以外の表示パネル121に重ならない外縁部分(非表示領域)かを判定し、操作パネル122の感応領域や、ソフトウェアキーの表示位置を制御するタッチパネル制御機能を備える。
【0275】
また、主制御部100は、操作パネル122に対するジェスチャ操作を検出し、検出したジェスチャ操作に応じて、予め設定された機能を実行することもできる。ジェスチャ操作とは、従来の単純なタッチ操作ではなく、指などによって軌跡を描いたり、複数の位置を同時に指定したり、或いはこれらを組み合わせて、複数の位置から少なくとも1つについて軌跡を描く操作を意味する。
【0276】
カメラ部141は、CMOSなどの撮像素子を用いて電子撮影するデジタルカメラである。また、カメラ部141は、主制御部100の制御により、撮像によって得た画像データを例えばJPEGなどの圧縮した画像データに変換し、記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することができる。
図14に示すようにスマートフォン101において、カメラ部141は表示入力部120と同じ面に搭載されているが、カメラ部141の搭載位置はこれに限らず、表示入力部120の背面に搭載されてもよいし、或いは、複数のカメラ部141が搭載されてもよい。なお、複数のカメラ部141が搭載されている場合には、撮影に供するカメラ部141を切り替えて単独にて撮影したり、或いは、複数のカメラ部141を同時に使用することにより撮影することもできる。
【0277】
また、カメラ部141はスマートフォン101の各種機能に利用することができる。例えば、表示パネル121にカメラ部141によって取得した画像を表示することや、操作パネル122の操作入力のひとつとして、カメラ部141の画像を利用することができる。また、GPS受信部170が位置を検出する際に、カメラ部141からの画像を参照して位置を検出することもできる。さらには、カメラ部141からの画像を参照して、3軸の加速度センサを用いずに、或いは、3軸の加速度センサと併用することにより、スマートフォン101のカメラ部141の光軸方向を判断することや、現在の使用環境を判断することもできる。勿論、カメラ部141からの画像をアプリケーションソフトウェア内において利用することもできる。
【0278】
その他、静止画又は動画の画像データにGPS受信部170により取得した位置情報、マイクロホン132により取得した音声情報(主制御部等により、音声テキスト変換を行ってテキスト情報となっていてもよい)、モーションセンサ部180により取得した姿勢情報等などを付加する共に記憶部150に記録したり、外部入出力部160や無線通信部110を通じて出力することもできる。
【0279】
上述の画像処理部35(鮮鋭回復制御部37、復元処理部38、輪郭強調処理部39:
図3参照)は、例えば主制御部100によって実現可能である。