(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992854
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】平版印刷装置、平版印刷方法、ブランケット
(51)【国際特許分類】
B41N 10/02 20060101AFI20160901BHJP
B41N 6/00 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
B41N10/02
B41N6/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-66623(P2013-66623)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-188850(P2014-188850A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】割石 幸司
【審査官】
杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−043166(JP,U)
【文献】
特開2000−190650(JP,A)
【文献】
実開昭63−125537(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0095180(US,A1)
【文献】
特開2002−160345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 6/00
B41N 10/02
B41N 1/22
B41M 1/06
B41F 13/10, 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に印刷版が装着される版胴と、
前記印刷版上に形成されたインキの画線像が転写されるブランケットを有するブランケット胴と、
前記ブランケット胴と対向する位置に配置されて、前記ブランケット上の画線像が転写される前記印刷版よりも幅の広い被記録媒体を加圧する圧胴と、を備え、
前記ブランケットに対して加圧される圧力が、前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジ以外より前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジが低くなるように、前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジが対向する前記ブランケットの位置に凹み部分を設ける、又は、前記印刷版と前記版胴との間であって前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設ける平版印刷装置。
【請求項2】
前記印刷版は、前記版胴に複数枚装着される請求項1に記載の平版印刷装置。
【請求項3】
前記印刷版の両端エッジと対向する前記ブランケットとの距離は、0.12mm以上0.50mm以下である請求項1又は2に記載の平版印刷装置。
【請求項4】
版胴の周面に装着された印刷版上に形成されたインキの画線像をブランケット胴に取り付けられたブランケットの表面に転写するブランケット胴転写工程と、
前記印刷版よりも幅の広い被記録媒体を圧胴により前記ブランケットに加圧し接触させることで、前記ブランケットの表面上の前記画線像を前記被記録媒体に転写する被記録媒体転写工程と、を有し、
前記ブランケット胴転写工程では、前記ブランケットに対して加圧される圧力が、前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジ以外より前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジが低くなるように、前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジが対向する前記ブランケットの位置に凹み部分が設けられたブランケット胴、又は、前記印刷版と前記版胴との間であって前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下が設けられた版胴、を用いる平版印刷方法。
【請求項5】
前記印刷版は、前記版胴に複数枚装着されている請求項4に記載の平版印刷方法。
【請求項6】
前記印刷版の両端エッジと対向する前記ブランケットとの距離は、0.12mm以上0.50mm以下である請求項4又は5に記載の平版印刷方法。
【請求項7】
版胴の周面に装着された印刷版上に形成されたインキの画線像が転写される平版印刷用のブランケットであって、
前記版胴の周面軸線方向における前記印刷版の両端エッジが対向する位置に凹み部分が設けられたブランケット。
【請求項8】
前記凹み部分の深さは、0.12mm以上0.50mm以下である請求項7に記載のブランケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷装置、平版印刷方法、ブランケットに係り、特に、印刷版よりも幅の広い被記録媒体にインキの画線像を転写させる平版印刷装置、平版印刷方法、ブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の商業印刷方式は、オフセット印刷が主流となっている。オフセット印刷は通常PS版(Pre-Sensitized Plate)と呼ばれる印刷版を作成し、印刷版に湿し水とインキを供給して印刷する方式である。印刷版は平版であり、印刷版上で画線部は親油性の表面となるように処理され、非画線部は親水性の表面になるように処理されている。この刷版に湿し水とインキを供給すると、画線部にはインキが、非画線部には水が付着した状態となり、この刷版よりブランケットを介して紙にインキを転移させて印刷する。
【0003】
アルミニウム板を支持体とする感光性平版印刷版は、PS版として市販され、広く用いられている。このPS版を製造する方法としては、一般にシート状あるいはコイル状のアルミニウム版に、例えば、砂目立て、陽極酸化、化成処理などの表面処理を単独または適宜組み合わせて施し、ついで感光液の塗布、乾燥を行った後に所望のサイズに裁断する方法が取られている。
【0004】
一方、このようなPS版に画像感光及び現像等の処理を施して得られた印刷版を用いた印刷には、一般商業印刷機を用いて印刷版の巾サイズよりも小さな紙に印刷を施す場合と、例えば、新聞印刷のように印刷版の巾サイズより大きい印刷紙に印刷する場合がある。後者においては、印刷版の全面が印刷面として扱われる。
【0005】
後者の場合、印刷版の裁断辺(エッジ)に付着した不要なインクが印刷紙面に印刷されて汚れとなり、印刷物の商品価値を損ねることがある。
【0006】
印刷版の不要なインクによる印刷紙面の汚れを防止する方法として、例えば、特許文献1では、印刷版のエッジのだれを0.1mmから0.3mmの幅で、だれ高さを20ミクロンから100ミクロンとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−35130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、印刷版のエッジを緩やかに傾斜させても、印刷版のエッジの形状によりエッジ汚れを防止するための印刷版へのインキ/水バランスの調整や装着される版胴とブランケット胴との間の圧力の条件設定が難しく、印刷版のエッジに付着したインクが印刷紙面に印刷されてしまうのを防ぎきれないことがあった。
【0009】
本発明はこのような事情によりなされたもので、印刷版よりも幅の広い被記録媒体にインキの画線像を転写させる平版印刷装置、平版印刷方法、ブランケットにおいて、印刷版のエッジの形状によりエッジ汚れを防止するための印刷版へのインキ/水バランスの調整や印刷版が装着される版胴とブランケット胴との間の圧力の条件設定の難しさを低減し、プレートのエッジ形状を選ばすエッジ汚れが防止できる平版印刷装置、平版印刷方法、ブランケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前記目的を達成するために、周面に印刷版が装着される版胴と、印刷版上に形成されたインキの画線像が転写されるブランケットを有するブランケット胴と、ブランケット胴と対向する位置に配置されて、ブランケット上の画線像が転写される印刷版よりも幅の広い被記録媒体を加圧する圧胴と、を備え、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるように、印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分を設ける、又は、印刷版と版胴との間であって印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設ける平版印刷装置を提供する。
【0011】
そして、本発明は前記目的を達成するために、版胴の周面に装着された印刷版上に形成されたインキの画線像をブランケット胴に取り付けられたブランケットの表面に転写するブランケット胴転写工程と、印刷版よりも幅の広い被記録媒体を圧胴によりブランケットに加圧し接触させることで、ブランケットの表面上の画線像を被記録媒体に転写する被記録媒体転写工程と、を有し、ブランケット胴転写工程では、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるように、印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分が設けられたブランケット胴、又は、印刷版と版胴との間であって印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下が設けられた版胴、を用いる平版印刷方法を提供する。
【0012】
また、版胴の周面に装着された印刷版上に形成されたインキの画線像が転写される平版印刷用のブランケットであって、印刷版の両端エッジが対向する位置に凹み部分が設けられたブランケットを提供する。
【0013】
本発明により、印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体に印刷されてしまうのを防ぐことができる。
【0014】
本発明において、印刷版は、版胴に複数枚装着されることが好ましい。版胴に複数枚印刷版が装着されている新聞などの印刷に本発明は特に有効である。
【0015】
本発明において、印刷版の両端エッジと対向するブランケットとの距離は、0.12mm以上0.50mm以下であることが好ましい。本発明では、印刷版の両端エッジのブランケットに加圧される圧力が印刷版の両端エッジ以外よりも低くなるようすれば良いが、両端エッジとブランケットとの距離が0.12mm以上0.50mm以下であれば、より確実に印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体に印刷されてしまうのを防ぐことができる。
【0016】
なお、ここで、『印刷版の両端エッジとブランケットとの距離』とは、ブランケット胴に凹み部分を設けた場合には、印刷版により加圧される前の凹み部分の深さであり、印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設けた場合には、印刷版の両端エッジと印刷版の両端エッジ以外の部分との高低差である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る平版印刷装置及び平版印刷方法によれば、印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体に印刷されてしまうのを防ぐことのできる平版印刷装置及び平版印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】平版印刷装置の全体を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る版胴とブランケット胴とを概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明に係る版胴とブランケット胴とを概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明に係る版胴とブランケット胴とを概略的に示す断面図である。
【
図5】従来に係る版胴とブランケット胴とを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って、本発明に係る平版印刷装置及び平版印刷方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、平版印刷装置の一例を示す概略図である。
【0021】
図1の平版印刷装置10は、被記録媒体の両面を同時に印刷する平版印刷装置を示したものである。被記録媒体の表面は図の上側、被記録媒体の裏面は図の下側の装置構成により印刷される。
【0022】
先ず、被記録媒体の表面に印刷する構成について説明する。
【0023】
シート状又はウエブ状の被記録媒体(「印刷用紙」又は「紙」とも言う)12は、圧胴36とブランケット胴16の間に挟まれる。ブランケット胴16は、周面にブランケット15が取り付けられている。ブランケット胴16は、版胴18に接触しており、版胴18には、印刷版19a、19b、19c及び19dを装着している。
【0024】
図1で示すように、平版による新聞印刷では、新聞4頁分の幅に相当するダブル幅(これを全幅ともいう)の版胴18を装備し、新聞1頁分または2頁分の幅に相当する幅を有する印刷版19a、19b、19c及び19dを複数枚版胴の周面軸線方向に並列的に装着している。版胴の周面には、4枚の印刷版19a、19b、19c及び19dがそれぞれ巻かれ、いずれもその両端部が装着部17の凹み内に引掛け固定された状態で装着されている。ここで、印刷版19a、19b、19c及び19dは、それぞれ隣り合う印刷版と3〜15mmの間隔で装着されている。
【0025】
版胴18の外周面に装備された4枚の印刷版19a、19b、19c及び19dは、湿し水供給手段20とインキ供給手段22を用いる水/インキ供給系統によってインキ付けされる。
【0026】
このように、
図1の平版印刷装置10の上側の構成により、印刷版19a、19b、19c及び19d上に形成されたインキの画線像は、ブランケット胴16のブランケット15上に転写され、ブランケット15上に転写されたインキの画線像は、圧胴14による加圧により被記録媒体12に転写されることで、画線像が被記録媒体12の一方の面に印刷される。
【0027】
次に、被記録媒体の裏面に印刷する構成について説明する。
【0028】
被記録媒体12は、圧胴16とブランケット胴36の間に挟まれる。ブランケット胴36は、周面にブランケット35が取り付けられている。ブランケット胴36は、版胴38に接触しており、版胴38には、印刷版39a、39b、39c及び39dを装着している(但し、印刷版39a、39bは不図示)。
【0029】
なお、上記から分かるように、被記録媒体の表面に印刷する場合には、ブランケット胴36は圧胴36として働き、被記録媒体の裏面に印刷する場合には、ブランケット胴16は圧胴16として働く。
【0030】
版胴の周面には、4枚の印刷版がそれぞれ巻かれ、いずれもその両端部が装着部37の凹み内に引掛け固定された状態で装着されている。
【0031】
版胴38の外周面に装備された4枚の印刷版39a、39b、39c及び39dは、湿し水供給手段40とインキ供給手段42を用いる水/インキ供給系統によってインキ付けされる。
【0032】
このように、
図1の平版印刷装置10の下側の構成により、印刷版39a、39b、39c及び39d上に形成されたインキの画線像は、ブランケット胴36のブランケット35上に転写され、ブランケット35上に転写されたインキの画線像は、圧胴16による加圧により被記録媒体12に転写されることで、画線像が被記録媒体12の他方の面に印刷される。
【0033】
上記のように構成された平版印刷装置10により、被記録媒体の表面及び裏面の両面に画線像が印刷される。
【0034】
図1のように、印刷版よりも幅の広い被記録媒体12にインキの画線像を転写させる平版印刷装置10において、印刷版の裁断辺(エッジ)に付着したインクが紙面に印刷されて汚れとなり、印刷物の商品価値を損ねるという問題があった。
【0035】
そこで、本実施形態では、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるように、(1)印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分を設ける、又は、(2)印刷版と版胴との間であって印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設けるようにした。
【0036】
図2は、本実施形態に係る版胴とブランケット胴との一例を概略的に示す断面図である。
【0037】
図2及び
図3は、上記(1)の印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分を設ける場合の一例である。
図4は、上記(2)の印刷版と版胴との間において印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設ける場合の一例である。
【0038】
なお、印刷版やブランケット胴の符号は、
図1の平版印刷装置10の上側の構成の符号のみを付しているが、
図1の平版印刷装置10の下側の構成でも同様に成り立つ。
【0039】
従来では、
図5(A)、(B)、(C)及び(D)の何れか1のように構成されており、印刷版19a、19b、19c及び19dのエッジ26に付着したインクがブランケット胴16のブランケット15に転写されてしまうので、被記録媒体12に印刷されてしまう。
【0040】
なお、
図5(B)では、
図5(A)のブランケット15の下に印圧を調整するアンダーブランケット15Aが更に設けられている。
図5(C)では、
図5(A)の印刷版19a、19b、19c及び19dと版胴18との間に版下18Aが更に設けられている。
図5(D)は、
図5(A)においてアンダーブランケット15Aと版下18Aとが更に設けられている。
【0041】
図2(A)は、
図5(B)の従来のブランケット胴16において、印刷版19a、19b、19c及び19dのエッジ26付近のアンダーブランケット15Aを除去し、印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分30を設けたものである。また、
図2(B)は、
図5(B)のアンダーブランケット15A上に、印刷版のエッジ付近以外の範囲に、追加のアンダーブランケット15Bを重ねて設け、印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分30を設けたものである。印刷版により加圧される前の凹みの深さXは、0.12〜0.50mmが好ましく、0.15〜0.30mmがさらに好ましい。0.12mmより小さい場合には、エッジからブランケットのインキ転写が十分に抑制されない。また、0.50mmより大きくなると、ブランケットの強度低下につながり好ましくない。
【0042】
このようにブランケット胴16を構成することで、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるようにできる。これにより、印刷版のエッジに付着したインクがブランケット胴のブランケットに転写されてしまうのを防ぐので、印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体12に印刷されてしまうのを防ぐことができる。
【0043】
図3は、
図5(A)の従来のブランケット胴16において、ブランケット15に印刷版の両端エッジが対向する位置に凹み部分30を設けたものである。印刷版により加圧される前の凹みの深さYは、0.12〜0.50mmが好ましく、0.15〜0.30mmがさらに好ましい。0.12mmより小さい場合には、エッジからブランケットのインキ転写が十分に抑制されない。また、0.50mmより大きくなると、ブランケットの強度低下につながり好ましくない。
【0044】
このようにブランケット胴16を構成することでも、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるようにできる。これにより、印刷版のエッジに付着したインクがブランケット胴のブランケットに転写されてしまうのを防ぐので、印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体12に印刷されてしまうのを防ぐことができる。なお、
図2(B)の実施形態において、ブランケット15の下にアンダーブランケット15Aを全面に設けていても良い。
【0045】
図4(A)は、
図5(A)の印刷版19a、19b、19c及び19dと版胴18との間であって、印刷版19a、19b、19c及び19dの両端エッジ以外の範囲に版下18Bを設けたものである。このように版下18Bを設けることで、ブランケットに対して加圧される圧力が、印刷版の両端エッジ以外より印刷版の両端エッジが低くなるようにできる。これにより、印刷版のエッジに付着したインクがブランケット胴のブランケットに転写されてしまうのを防ぐことができるので、印刷版のエッジに付着したインクが被記録媒体12に印刷されてしまうのを防ぐことができる。また、
図4(B)のように、あらかじめ全面に存在している版下18Aの上に、印刷版19a、19b、19c及び19dの両端エッジ以外の範囲に追加の版下18Aを設けてもよい。印刷版の両端エッジと、印刷版の両端エッジ以外の部分との高低差Zは、0.12〜0.50mmが好ましく、0.15〜0.30mmがさらに好ましい。
【0046】
なお、本実施形態では、
図2又は
図3の印刷版の両端エッジが対向するブランケットの位置に凹み部分を設けたものと、
図4の印刷版の両端エッジ以外の範囲に版下を設けたものと、を組み合わせても良い。
【0047】
即ち、本実施形態において、印刷版の両端エッジと対向するブランケットとの距離(隙間32)は、0.12〜0.50mmがより好ましく、0.15〜0.30mmがさらに好ましい。0.12mmより小さい場合には、エッジからブランケットへのインキ転写が十分に抑制されない。また、0.50mmより大きくなると、ブランケットの変形から引き起こされるブランケットの割れや裂けが発生しやすくなるなどの耐久性劣化につながり好ましくない。
【0048】
ブランケット15は、一層であっても複層であっても良いが、表層は印刷インキ、インキ洗浄溶剤等を考慮して、耐油性ポリマーが用いられる。耐油性ポリマーとしては、例えば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等の耐油性ゴムに硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤等の1種以上を添加して用いられる。
【0049】
図1の平版印刷装置10において、一例として新聞印刷を行う場合、紙の幅は1626mm、印刷版の幅は390〜410mm又は790〜810mm、隣り合う印刷版との間隔は3〜15mmである。加圧される圧力が印刷版の両端エッジ以外よりも低くする両端エッジのエッジ幅は2〜10mmである。なお、印刷版の幅は、新聞1ページ(見開き半ページ)を1つの印刷版で印刷する場合には390〜410mmであり、見開き1ページ(新聞2ページ)を1つの印刷版で印刷する場合には790〜810mmである。
【0050】
なお、上記実施形態では、版胴の周面に4枚の印刷版が設けられたものを例にしたが、印刷版は1枚でも良いし4枚以外の複数枚でも良い。本実施形態では、印刷版の巾サイズより大きい印刷紙に印刷する場合に有効である。
【符号の説明】
【0051】
10…平版印刷装置、12…被記録媒体、15…ブランケット、15A,15B…アンダーブランケット、16…ブランケット胴(圧胴)、18…版胴、18A,18B…版下、19a,19b,19c,19d…印刷版、20…湿し水供給手段、22…インキ供給手段、26…エッジ、30…凹み部分、32…隙間、35…ブランケット、36…圧胴(ブランケット胴)、38…版胴、39a,39b,39c,39d…印刷版、40…湿し水供給手段、42…インキ供給手段