特許第5992994号(P5992994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5992994基板処理装置の消費エネルギー監視システム及び基板処理装置の消費エネルギー監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5992994
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】基板処理装置の消費エネルギー監視システム及び基板処理装置の消費エネルギー監視方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   H01L21/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-503492(P2014-503492)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013001427
(87)【国際公開番号】WO2013132854
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2014年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-53403(P2012-53403)
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 琢
(72)【発明者】
【氏名】波岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 一司
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−230146(JP,A)
【文献】 特開2007−88429(JP,A)
【文献】 特開2004−193401(JP,A)
【文献】 特開2003−100576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の消費エネルギーを監視する基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、
前記基板処理装置において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データを収集するデータ収集器と、
前記プロセス処理のうちエネルギーの消費を伴う個々のイベントと、当該イベントの発生によって消費される単位時間当たりのエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを格納する記憶手段と、
エネルギーの消費を伴うイベントの発生を検出し、当該イベントの継続時間と、前記記憶手段に記憶された当該イベントの単位時間当たりの消費エネルギーデータとから消費エネルギー量を積算して算出する手段と
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視システム。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、
前記基板処理装置における消費エネルギーを計測するための各種センサの測定データを用いることなく、消費エネルギーを算出する
ことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、
前記基板処理装置における処理のうちエネルギーの消費を伴うイベントと、当該イベントの発生によって消費されるエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを登録する手段
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視システム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、
前記基板処理装置で消費される消費エネルギーの実測値に基づいて、前記記憶手段に記憶された消費エネルギーデータを修正する手段
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視システム。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、
前記基板処理装置が、被処理基板を洗浄する基板洗浄装置、被処理基板にフォトレジストの塗布及び現像を行う塗布現像装置、被処理基板のエッチングを行うエッチング装置、被処理基板に成膜する成膜装置、被処理基板に熱処理を施す熱処理装置のいずれかである
ことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視システム。
【請求項6】
被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の消費エネルギーを監視する基板処理装置の消費エネルギー監視方法であって、
前記基板処理装置において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データを収集する工程と、
前記プロセス処理のうちエネルギーの消費を伴う個々のイベントと、当該イベントの発生によって消費される単位時間当たりのエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを記憶手段に格納する工程と、
エネルギーの消費を伴うイベントの発生を検出し、当該イベントの継続時間と、前記記憶手段に記憶された当該イベントの単位時間当たりの消費エネルギーデータとから消費エネルギー量を積算して算出する工程と
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視方法。
【請求項7】
請求項6記載の基板処理装置の消費エネルギー監視方法であって、
前記基板処理装置における処理のうちエネルギーの消費を伴うイベントと、当該イベントの発生によって消費されるエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを登録する工程
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の基板処理装置の消費エネルギー監視方法であって、
前記基板処理装置で消費される消費エネルギーの実測値に基づいて、前記記憶手段に記憶された消費エネルギーデータを修正する工程
を具備したことを特徴とする基板処理装置の消費エネルギー監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の消費エネルギー監視システム及び基板処理装置の消費エネルギー監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ用基板あるいは太陽電池パネル等の製造においては多数の基板処理装置が使用されている。例えば、半導体デバイスの製造においては、半導体ウエハの洗浄装置、塗布現像装置、エッチング装置、成膜装置、熱処理装置等の各種の基板処理装置が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このような基板処理装置は、その基板処理工程において多くのエネルギーを必要とする。そのため基板処理装置には、環境負荷低減および基板処理コストの低減等の観点から、省エネルギーを図ることが求められており、その消費エネルギーを把握すること等が求められている。
【0003】
基板処理装置において、その消費エネルギーを表示しようとすると、実際に使用されている電力量等を測定するためのセンサを配設するとともに、センサから測定データを収集するためのデータ収集器を配設し、センサによって測定された値に基づいて消費エネルギーを表示することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−19156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように基板処理装置において消費エネルギーを表示するためには、多数のセンサ及びセンサから測定データを収集するためのデータ収集器を配設する必要があり、装置の製造コストの上昇を招くという問題があった。
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたものであり、装置の製造コストの上昇を抑制しつつ消費エネルギーの監視を行うことのできる基板処理装置の消費エネルギー監視システム及び基板処理装置の消費エネルギー監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の基板処理装置の消費エネルギー監視システムの一態様は、被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の消費エネルギーを監視する基板処理装置の消費エネルギー監視システムであって、前記基板処理装置において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データを収集するデータ収集器と、前記プロセス処理のうちエネルギーの消費を伴う個々のイベントと、当該イベントの発生によって消費される単位時間当たりのエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを格納する記憶手段と、エネルギーの消費を伴うイベントの発生を検出し、当該イベントの継続時間と、前記記憶手段に記憶された当該イベントの単位時間当たりの消費エネルギーデータとから消費エネルギー量を積算して算出する手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
本発明の基板処理装置の消費エネルギー監視方法の一態様は、被処理基板に所定の処理を施す基板処理装置の消費エネルギーを監視する基板処理装置の消費エネルギー監視方法であって、前記基板処理装置において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データを収集する工程と、前記プロセス処理のうちエネルギーの消費を伴う個々のイベントと、当該イベントの発生によって消費される単位時間当たりのエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを記憶手段に格納する工程と、エネルギーの消費を伴うイベントの発生を検出し、当該イベントの継続時間と、前記記憶手段に記憶された当該イベントの単位時間当たりの消費エネルギーデータとから消費エネルギー量を積算して算出する工程とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ消費エネルギーの監視を行うことのできる基板処理装置の消費エネルギー監視システム及び基板処理装置の消費エネルギー監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の構成を示す図。
図2】消費エネルギー量の計算方法の例を説明するための図。
図3】消費エネルギー登録画面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の消費エネルギー監視システムの構成を模式的に示す図である。図1において、100は、基板処理装置の消費エネルギー監視システムであり、110は、基板処理装置、本実施形態では半導体ウエハの洗浄装置である。
【0012】
基板処理装置(半導体ウエハの洗浄装置)110は、半導体ウエハを吸着保持して回転可能とされたスピンチャック、このスピンチャック上に保持された半導体ウエハの表面に洗浄用の薬液やリンス用の純水等を供給するための複数のノズル、スピンチャック上に保持された半導体ウエハの周囲を囲繞するように配設されたカップ等の周知の洗浄装置の構成を具備している。
【0013】
そして、スピンチャック上に保持された半導体ウエハに複数のノズルから洗浄用の薬液及びリンス用の純水等を供給し、また、半導体ウエハを回転させることによって、薬液及びリンス用の純水等を振り切ることによって、半導体ウエハの洗浄及び乾燥を行うよう構成されている。
【0014】
なお、基板処理装置110としては、洗浄装置の他、例えば、半導体ウエハ(被処理基板)にフォトレジストの塗布及び現像を行う塗布現像装置、半導体ウエハ(被処理基板)のエッチングを行うエッチング装置、半導体ウエハ(被処理基板)に成膜する成膜装置、半導体ウエハ(被処理基板)に熱処理を施す熱処理装置等に適用することができる。
【0015】
基板処理装置の消費エネルギー監視システム100は、データ収集器101、トレースデータデータベース102、バーチャルエンジン103、モニター104、モニタデータベース105を具備している。
【0016】
基板処理装置110のI/Oポート111からは、基板処理装置110において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データ112が出力される。この基板処理装置110からのプロセス処理データ112は、基板処理装置の消費エネルギー監視システム100のデータ収集器101に入力され、トレースデータデータベース102に格納される。
【0017】
バーチャルエンジン103は、基板処理装置110における処理のうちエネルギーの消費を伴うイベントと、当該イベントの発生によって消費されるエネルギー量との関係を示す消費エネルギーデータを格納する記憶手段と、基板処理装置110からデータ収集器101に入力され、トレースデータデータベース102に格納されたプロセス処理データからエネルギーの消費を伴うイベントの発生を検出し、当該イベントの継続時間と、記憶手段に記憶された当該イベントの消費エネルギーデータとから消費エネルギー量を積算して算出する手段とを具備している。
【0018】
すなわち、バーチャルエンジン103は、トレースデータデータベース102に格納されたプロセス処理データ112に基づいて、プロセス処理で実行されるイベントとその継続時間とを所定時間毎、本実施形態では1秒毎に検出する。そして、記憶手段にイベント毎に予め登録されている単位時間当たりの消費エネルギー量(消費エネルギーデータ)と、イベントの継続時間とから消費エネルギー量を積算してイベントが継続している間に消費される消費エネルギー量を算出する。
【0019】
モニター104は、バーチャルエンジン103によって算出された消費エネルギー量を集計してモニタデータベース105に保存するとともに、保存したデータの表示を行う。
【0020】
バーチャルエンジン103における消費エネルギー量の算出では、例えば、図2に示すように、プロセス処理で実行されるイベント(図2に示されるセンサイベント)の発生の有無を検出し、センサイベントがオンの期間、仮想データとしての消費エネルギーの積算を行う。
【0021】
なお、図2において左端部分には、年月日及び時間が示されており、その右隣りには装置ステータスが示されている。図2に示された装置ステータスは「プロセッシング」であるが、図2中右側に示す消費エネルギー登録例の部位に示されているとおり、装置ステータスとしては、プロセスを実行中であることを示す「プロセッシング」の他、起動中であることを示す「スタートアップ」、アイドリング中であることを示す「アイドル」等がある。
【0022】
上記の消費エネルギー登録例に示されているとおり、センサイベントがオンの際に消費される単位時間当たりのエネルギー消費量は、消費エネルギーデータとして予め登録しておく。図2に示す消費エネルギー登録例では、装置ステータスが「スタートアップ」の時は0(L/min)、「アイドル」時は0(L/min)、「プロセッシング」の時は1.5(L/min)となっている。この例では、仮想データの単位がL/minと流量の単位になっているので、後述するように1秒当たりのエネルギー量に換算して消費エネルギー量を算出する。
【0023】
また、図2には、実データについても記載されているが、実データの場合イベント条件の指定がないので、全期間の実測値を積算することになる。なお、図2に示す例では、実データについても単位がL/minとなっているので、上述した仮想データの場合と同様に、1秒当たりのエネルギー量に換算して消費エネルギー量を算出する。
【0024】
図3は、バーチャルエンジン103における消費エネルギー量の登録画面の一例を示している。図3に示す登録画面の例では、ユニットネーム、アイテムネーム等によって対象を特定する。そして、コンバージョンパターン及びコンバージョンファクター等によって、前述した流量から消費エネルギー量に換算する際に使用する式及び数値等を登録する。この登録された内容については、バーチャルエンジン103内の記憶手段に記憶され、消費エネルギー量の算出の際に呼び出されて使用される。
【0025】
図3に示す例では、コンバージョンパターンは、
Quantity×Factor/1000
であり、コンバージョンファクターは
0.2600(kwh/m
である。また、変数Xは1.0000、変数Yは1.0000である。
【0026】
そして、装置のステータスが、「スタートアップ」、「アイドリング」、「プロセッシング」の際に夫々使用する数値を登録する。図3に示す例では、「スタートアップ」時及び「アイドリング」時は、0.0000(L/min)であり、「プロセッシング」時は1.5000(L/min)である。
【0027】
上記構成の基板処理装置の消費エネルギー監視システム100では、基板処理装置110に、消費エネルギーを計測するための各種のセンサ及びこれらのセンサから測定データを収集するためのデータ収集器を配設することなく、基板処理装置110において各レシピに基づいて実行されるプロセス処理に関するプロセス処理データ112を入力することで、基板処理装置110の消費エネルギー量を仮想的に算出し表示することができる。
【0028】
したがって、基板処理装置110の製造コストの上昇を抑制しつつ消費エネルギーの監視を行うことができる。
【0029】
ところで、上述した基板処理装置の消費エネルギー監視システム100では、消費エネルギーを計測するための各種のセンサを用いることなく、消費エネルギー量を仮想的に算出し表示する構成となっている。このため、算出される消費エネルギー量が、消費エネルギー量の実測値とずれる可能性がある。このため、任意のタイミングで較正を行い消費エネルギー量の実測値と仮想的に算出される消費エネルギー量とが精度良く一致するように補正を行うことが好ましい。
【0030】
この場合、例えば、基板処理装置110の保全作業を行うタイミング等において、基板処理装置110の各部に消費エネルギー量を測定するためのセンサを設置する。そして、これらのセンサによって測定される消費エネルギー量と、基板処理装置の消費エネルギー監視システム100で仮想的に算出される消費エネルギー量とが一致するように、バーチャルエンジン103によって消費エネルギー量を算出する際のパラメータ等を変更する。これによって、基板処理装置の消費エネルギー監視システム100で仮想的に算出される消費エネルギー量を、実測される消費エネルギー量に精度良く一致させることができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。例えば、上述した実施形態では、基板処理装置110と別体で基板処理装置の消費エネルギー監視システム100を配設した場合について説明したが、基板処理装置の消費エネルギー監視システム100を基板処理装置110内に組み込んで配設することもできる。また、この場合、基板処理装置110の動作を制御するための制御用コンピュータ内に、トレースデータデータベース102、バーチャルエンジン103、モニター104、モニタデータベース105の機能を持たせるようにすることができる。
【0032】
さらに、バーチャルエンジン103において消費エネルギー量を算出するためのモデルは、上述したものに限らず他のモデルであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の基板処理装置の消費エネルギー監視システムは、半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ用基板あるいは太陽電池パネル等の製造分野等で利用することができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0034】
100……基板処理装置の消費エネルギー監視システム、101……データ収集器、102……トレースデータデータベース、103……バーチャルエンジン、104……モニター、105……モニタデータベース、110……基板処理装置、111……I/Oポート、112……プロセス処理データ。
図1
図2
図3