特許第5993076号(P5993076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993076
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】集光型太陽電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20160901BHJP
   H01L 31/052 20140101ALI20160901BHJP
【FI】
   H01L31/04 620
   H01L31/04 600
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-205191(P2015-205191)
(22)【出願日】2015年10月19日
(62)【分割の表示】特願2012-286075(P2012-286075)の分割
【原出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2016-28446(P2016-28446A)
(43)【公開日】2016年2月25日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−83006(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058941(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/091082(WO,A1)
【文献】 特開2000−68547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルを搭載するための複数の搭載領域及び前記太陽電池セルと外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有する基台部を準備する準備工程と、
前記準備した基台部の前記搭載領域のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で支持体を成型する支持体成型工程と、
前記太陽電池セルを前記搭載領域に搭載する搭載工程と、
前記太陽電池セルを封止するように前記搭載領域の上方に集光レンズを成型する集光レンズ成型工程とを有する集合型の集光型太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記準備工程後かつ前記搭載工程前に、前記準備した基台部の前記搭載領域の表面にメッキを施すメッキ工程を有し、
前記集光レンズ成型工程において、前記集光レンズを透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型し、
前記集光レンズ成型工程後に、前記基台部の一部を切断することによって電気的回路を形成することを特徴とする集光型太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記支持体成型工程後かつ集光レンズ成型工程前に、前記支持体の内壁表面を金属で蒸着、又はメッキする工程を有することを特徴とする請求項1に記載の集光型太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記搭載工程において、前記搭載した太陽電池セルを金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で前記メッキが施された搭載領域と接合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の集光型太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記集光レンズ成型工程において、前記集光レンズの成型を圧縮成型、トランスファー成型、射出成型、鋳型成型によって行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の集光型太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記電気的回路の形成後に、電気的接続状況を確認する検査工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の集光型太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルに高エネルギーの太陽光を照射する集光構造を有する集光型太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの方式として、太陽光の受光面に太陽電池セルを一面に敷き詰めた平板方式が多く用いられている。しかし、この受光面積に応じて敷き詰める太陽電池セルが高価であるため、太陽電池モジュールは高コストであった。このような背景から、集光レンズにより小径の太陽電池セルに太陽光を集光させる集光型太陽電池モジュールの開発が行われてきた。この集光型太陽電池モジュールは、光を数百倍に集光することで、平板方式に比較して必要とする太陽電池セルの数を大幅に削減できる。
【0003】
しかし、光を数百倍に集光させる集光型太陽電池モジュールでは、受光面を太陽光の動きに追尾する機構が必要となる。そのため、この機構を設置するためにコストが増加したり、太陽電池モジュールの大きさが増加する問題がある。
この問題に対し、太陽電池モジュールの小型化、低コスト化を図る目的で、太陽電池セルの上方に樹脂製の集光構造体(例えば、フレネルレンズ又は凸レンズ)を形成した集光型太陽電池モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、支持体の凹部内に集光構造体を形成し、これらに屈折率の異なる材料を用いることで集光構造を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−83006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の集光型太陽電池モジュールでは支持体へ光が侵入してしまい、光電変換効率が低下してしまう問題や、支持体及び集光構造体の材料の選定が煩雑であるという問題がある。
また、集光型太陽電池モジュールでは、受光中の太陽電池セルの温度が80℃以上にも達することがあり、このことに起因する集光型太陽電池モジュールの出力低下が問題となっている。そのため、集光型太陽電池モジュールでは、高光電変換効率に加えて放熱性を向上することが重要な課題となっている。
【0006】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、高放熱性で、高光電変換効率の集光型太陽電池モジュール、及びこの集光型太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、太陽電池セルを搭載するための複数の搭載領域及び前記太陽電池セルと外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有する基台部と、該基台部の前記搭載領域のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で成型された支持体と、前記搭載領域に搭載された前記太陽電池セルと、該太陽電池セルを封止するように前記搭載領域の上方に成型された集光レンズとを具備する集光型太陽電池モジュールであって、前記基台部の前記搭載領域の表面にメッキが施され、前記集光レンズは透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型されたものであることを特徴とする集光型太陽電池モジュールが提供される。
【0008】
このような集光型太陽電池モジュールであれば、透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型された集光レンズによって光電変換効率、耐熱性及び耐久性に優れたものとなる。また、搭載領域の表面に施されたメッキによって放熱性が向上され、高温による光電変換効率の悪化を抑制できるものとなる。
【0009】
このとき、前記支持体は、350nm以上、900nm以下の波長の光に対する反射率が90%以上であるシリコーン樹脂を含有する熱硬化性樹脂で成型されたものであることが好ましい。
このようなものであれば、光電変換効率が確実に向上されたものとなると同時に、耐熱性、耐久性を高めることができる。
【0010】
また、前記支持体の内壁表面が金属で蒸着、又はメッキされたものであることが好ましい。
このようなものであれば、光電変換効率がより向上されたものとなり、しかも低コストである。
【0011】
また、前記搭載された太陽電池セルは、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で前記メッキが施された搭載領域と接合されたものであることが好ましい。
このようなものであれば、放熱性に優れたものとなる。
【0012】
また、前記支持体は、熱硬化性シリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂のうちから選ばれる少なくとも1種の材料からなるものとすることができる。
このようなものであれば、耐光性、耐熱性に優れたものとなる。
【0013】
また、前記支持体には、フィラー、拡散剤、顔料、蛍光物質、反射性物質、遮光性物質、繊維状無機材料からなる群から選択される少なくとも1つが混合されているものとすることができる。
このようなものであれば、支持体が高反射性、高強度を有するものとなり、集光型太陽電池モジュールの高耐久性、高光電変換効率を実現できる。
【0014】
また、本発明によれば、太陽電池セルを搭載するための複数の搭載領域及び前記太陽電池セルと外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極を有する基台部を準備する準備工程と、前記準備した基台部の前記搭載領域のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で支持体を成型する支持体成型工程と、前記太陽電池セルを前記搭載領域に搭載する搭載工程と、前記太陽電池セルを封止するように前記搭載領域の上方に集光レンズを成型する集光レンズ成型工程とを有する集光型太陽電池モジュールの製造方法であって、前記準備工程後かつ前記搭載工程前に、前記準備した基台部の前記搭載領域の表面にメッキを施すメッキ工程を有し、前記集光レンズ成型工程において、前記集光レンズを透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型することを特徴とする集光型太陽電池モジュールの製造方法が提供される。
【0015】
このような製造方法であれば、透明の熱硬化性シリコーン樹脂で集光レンズを成型することによって光電変換効率、耐熱性及び耐久性に優れた集光型太陽電池モジュールを製造できる。また、搭載領域の表面にメッキを施すことによって放熱性が向上され、高温による光電変換効率の悪化を抑制できる集光型太陽電池モジュールを製造できる。
【0016】
このとき、前記支持体成型工程後かつ集光レンズ成型工程前に、前記支持体の内壁表面を金属で蒸着、又はメッキする工程を有することが好ましい。
このようにすれば、光電変換効率がより向上された集光型太陽電池モジュールを低コストで製造できる。
【0017】
また、前記搭載工程において、前記搭載した太陽電池セルを金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂で前記メッキが施された搭載領域と接合することが好ましい。
このようにすれば、一層放熱性に優れた集光型太陽電池モジュールを製造できる。
【0018】
また、前記集光レンズ成型工程後に、前記基台部の一部を切断することによって電気的回路を形成することができる。
このようにすれば、集光型太陽電池モジュールの製造段階で各太陽電池セルの電気的接続状況を確認でき、不具合のある太陽電池セルを製造段階で選別できる。このように、工程内検査の簡略化、低コスト化を図ることができる。
【0019】
また、前記集光レンズ成型工程において、前記集光レンズの成型を圧縮成型、トランスファー成型、射出成型、鋳型成型によって行うことができる。
このようにすれば、製造を簡略化でき、生産効率を向上し、コストを削減できる。
【0020】
また、前記集光レンズ成型工程後に、前記集光型太陽電池モジュールをダイシングによって個片化する工程を有することができる。
このようにすれば、集光型太陽電池モジュールを一度に大量に生産することができ、量産によるコストの低下を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、集光型太陽電池モジュールの製造において、基台部の太陽電池セルの搭載領域の表面にメッキを施し、また、集光レンズを透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型するので、製造した本発明の集光型太陽電池モジュールは光電変換効率及び耐熱性に優れ、放熱性が向上されて高温による光電変換効率の悪化を抑制できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の集光型太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。
図2】個片化された本発明の集光型太陽電池モジュールの一例を示す概略図である。
図3】個片化された本発明の集光型太陽電池モジュールの別の一例を示す概略図である。
図4】本発明の集光型太陽電池モジュールの製造方法の一例を示すフロー図である。
図5】集光型太陽電池モジュールに電気的回路を形成する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
上記したように、集光型太陽電池モジュールの製造において、高光電変換効率に加えて、放熱性を向上することでその高光電変換効率を維持することが重要な課題となっている。
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、太陽電池セルを搭載するための搭載領域の表面にメッキを施すことで、この課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0025】
図1は、本発明の集光型太陽電池モジュールの一例を示す模式図である。図1に示すように、集光型太陽電池モジュール10は、基台部1、支持体2、太陽電池セル3、集光レンズ4を具備するものである。
基台部1は、太陽電池セル3を搭載するための搭載領域5、及び太陽電池セル3と外部電極を電気的に接続するためのリード電極6を有する。搭載領域5及びリード電極6は、搭載する複数の太陽電池セル3にそれぞれ対応するように複数設けられている。
【0026】
基台部1の搭載領域5の表面にはメッキが施されている。また、リード電極6の表面にもメッキを施すことができる。このメッキに用いる金属としては特に限定されないが、例えば、アルミ、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、パラジウム、これらの合金(例えば、Ni−Ag、Ni−Pd−Auなど)を用いることができる。
また、基台部1として、例えば、金属板をエッチングしてリード電極を形成した金属リードフレームを用いることができる。この場合、例えば図1に示すように、リード電極を形成するためにエッチングした部分7には樹脂を埋め込んで基台部1の強度を向上させることができる。或いは、基台部1として、樹脂基板、セラミック基板、ガラスクロス基板などの表面にメッキを施すことによって、メッキされた搭載領域5及びリード電極6を形成したものとすることができる。
【0027】
支持体2は、基台部1の搭載領域5のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で成型されたものである。基台部1上に支持体2を成型することによって、搭載領域5が底面に位置する凹部を有した支持体2が成型された集合型の太陽電池セル収納パッケージの形態となる(図4の(B)参照)。図1に示す集光型太陽電池モジュール10の例では、支持体2は上記凹部が上方に向かって広がるテーパ形状を有するように成型されている。
【0028】
太陽電池セル3は上記のようにメッキが施された搭載領域5上に受光部を上にして搭載される。そのため、集光型太陽電池モジュールの放熱性を大幅に向上できる。太陽電池セル3としては、特に限定されないが、例えば、単結晶又は多結晶シリコン、若しくは砒化ガリウム、アルミニウム−ガリウム砒素、インジウム燐ガリウム−インジウム燐等のIII−V族化合物半導体を構成材料とするものを用いることができる。
【0029】
搭載された太陽電池セル3は、金属又は導電性熱硬化性シリコーン樹脂でメッキが施された搭載領域5と接合されたものであることが好ましい。
太陽電池セル3と搭載領域5を接合すれば、集光型太陽電池モジュールの製造における集光レンズ4を成型する際にこれらの取り扱いが容易になるとともに、放熱性が低下することもない。
【0030】
集光レンズ4は、それぞれの太陽電池セル3を封止するように搭載領域5の上方に透明の熱硬化性シリコーン樹脂で成型されたものである。集光レンズ4は、例えば凸レンズやフレネルレンズの形態とすることができる。このような集光型太陽電池モジュールであれば、光電変換効率に優れたものとなる。
【0031】
高光電変換効率を実現するためには支持体2への光の透過や吸収がなくなるようにすることが有効である。そこで、支持体2は高い反射率を有するものであることが好ましい。特に、350nm以上、900nm以下の波長の光に対する反射率が90%以上であるシリコーン樹脂を含有する熱硬化性樹脂で成型されたものであることが好ましい。このようなものであれば、集光効率を向上して高光電変換効率とすることができるとともに、高耐熱性、高耐久性のものとなる。
【0032】
支持体2の反射率を向上するために、支持体2の内壁表面を金属で蒸着、又はメッキされたものとすることができる。例えば、支持体2の内壁表面をニッケルでメッキすることによって、支持体2の反射率を99%まで向上することが可能となる。これにより、従来のような煩雑な材料選定を行う必要がなく、集光構造、すなわち太陽電池セルに太陽光を照射する構造を支持体2、基台部1及び集光レンズ4の形状のみで設計できる。
【0033】
ここで、支持体2の内壁表面のメッキに用いる金属はニッケルに限定されず、例えば、反射率の高い金を用いることもできる。その他、アルミ、クロム、亜鉛、銀、プラチナなどの金属類やSiO、TiO、ZrO、MgFなどの酸化物やフッ化物を使用しても良い。また、メッキだけでなく蒸着も可能である。また、支持体2内に酸化チタン等の高反射物質を混合することで支持体2の反射率を高めることもできる。
また、必要に応じて集光レンズ4又は太陽電池セル3の表面に合成樹脂による保護や屈折率調整用の膜を被覆しても良い。これによって外部から傷を防いだり、屈折率を調整することで太陽光の集光効率を更に向上できるものとなる。
【0034】
支持体2には、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
このような熱硬化性樹脂の例として、1)熱硬化性シリコーン樹脂組成物、2)トリアジン誘導体エポキシ樹脂、酸無水物、硬化促進剤、無機質充填剤からなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物、3)熱硬化性のシリコーン樹脂とエポキシ樹脂からなるハイブリッド樹脂(混成樹脂)組成物などが挙げられる。しかし、熱硬化性樹脂はこれらに限定されることはなく、最終的な集光型太陽電池モジュールの使用用途に合わせて決定すれば良い。
【0035】
上記1)の熱硬化性シリコーン樹脂組成物としては、下記平均組成式(1)で表される縮合型熱硬化性シリコーン樹脂組成物などが代表的なものである。
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、Rは同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
【0036】
上記2)の熱硬化性エポキシ樹脂組成物のトリアジン誘導体エポキシ樹脂としては、1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂が耐熱性、耐光性などの観点から好ましい。熱硬化性エポキシ樹脂組成物はトリアジン誘導体、硬化剤としての酸無水物などからなるものに限らず、従来から公知のエポキシ樹脂やアミン、フェノール硬化剤なども適宜使用しても良い。
上記3)のシリコーン樹脂とエポキシ樹脂のハイブリット樹脂としては、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる共重合体などが挙げられる。
【0037】
上記シリコーン樹脂やエポキシ樹脂の組成物には、無機充填材を配合することができる。配合される無機充填材としては、通常シリコーン樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物等に配合されるものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状充填材、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填材の平均粒径や形状は特に限定されない。
【0038】
本発明で使用する樹脂組成物には、二酸化チタンも配合することができる。二酸化チタンは、白色着色材として、白色度を高め、光の反射効率を向上させるために配合するものであり、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型のどちらでも構わない。また、平均粒径や形状も限定されない。二酸化チタンは、樹脂や無機充填材との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。
【0039】
二酸化チタンの充填量は、組成物全体の2〜30質量%、特に5〜10質量%が好ましい。2質量%以上であれば十分な白色度が得られ、30質量%以下であれば未充填やボイド等の成型性が低下することもない。
【0040】
支持体2には、フィラー、拡散剤、顔料、蛍光物質、反射性物質、遮光性物質、繊維状無機材料からなる群から選択される少なくとも1つが混合されているものとすることができる。
このようなものであれば、支持体が高反射性、高強度を有するものとなり、集光型太陽電池モジュールの高耐久性、高光電変換効率を実現できる。
【0041】
次に、本発明の集光型太陽電池モジュールの製造方法について説明する。
図4に示すように、まず、複数の太陽電池セルを搭載するための複数の搭載領域5及び太陽電池セルと外部電極を電気的に接続するための複数のリード電極6を有する基台部1を準備する。この準備した基台部1の搭載領域5の表面にメッキを施す(図4の(A):準備工程、メッキ工程)。ここで、基台部1として上記した金属リードフレームを準備する場合には、金属板をエッチングすることによってリード電極を形成し、搭載領域5の表面、及び必要に応じてリード電極6の表面にメッキを施す。このようにすれば、高放熱性を有する集光型太陽電池モジュールを低コストで製造できる。
【0042】
或いは、樹脂基板、セラミック基板、ガラスクロス基板などの表面にメッキを施すことによって、メッキされた搭載領域5及びリード電極6を形成したものを基台部1として準備しても良い。
【0043】
次に、準備した基台部1の搭載領域5のそれぞれを取り囲むように熱硬化性樹脂で支持体2を成型する(図4の(B):支持体成型工程)。この工程によって、搭載領域5が底面に位置する凹部を有した支持体2が成型された集合型の太陽電池セル収納パッケージが作製できる。ここで、支持体2を上記凹部が上方に向かって広がるテーパ形状を有するように成型することができる。
【0044】
支持体2の成型は、トランスファー成型又は射出成型により行うことができる。この際、外部電極を電気的に接続するリード電極6上に樹脂バリが生じるのを防ぐために、トランスファー成型法を用い、上下金型によりリード電極6をクランプしながら支持体2を成型することが好ましい。また、支持体2の成型に用いる熱硬化性樹脂は上記集光型太陽電池モジュールで説明したものと同様とすることができる。基台部1として金属リードフレームを用いる場合には、図4の(B)に示すように、支持体2と同時にリード電極を形成するためにエッチングした部分7に熱硬化性樹脂を埋め込むように成型することもできる。このようにすれば、集光型太陽電池モジュールの強度を向上できる。
【0045】
支持体2に高反射構造を保有させるため、熱硬化性樹脂に酸化チタン等の高反射物質を混合することができる。或いは、支持体2を成型した後、支持体の内壁表面を金属で蒸着、又はメッキする工程を実施することもできる。この場合、基台部1のリード電極6への高反射性物質が付着するのを防ぐためにポリイミドテープ等でマスキングすることも可能である。この工程は、支持体成型工程後かつ集光レンズ成型工程前に実施すれば良い。この工程でメッキに用いる金属は上記集光型太陽電池モジュールで説明したものと同様とすることができる。
【0046】
次に、太陽電池セル3をメッキが施された搭載領域5に搭載する(図4の(C):搭載工程)。太陽電池セル3は受光部が上を向くようにして搭載する。また、太陽電池セル3を金属又は導電性樹脂ペーストで搭載領域5と接合することが好ましい。この場合、放熱性や導電性を考慮すると、金属としてはAu―Sn、導電性樹脂ペーストとしては導電性熱硬化性シリコーン樹脂を用いることが望ましい。
【0047】
太陽電池セル3とリード電極6は金ワイヤーや銅ワイヤーなどのワイヤー8を用いてワイヤーボンディングにて電気的に接続することができる。或いは、太陽電池セル3とリード電極6をサブマウント基板を介して電気的に接続することもできる。
ここで、例えば、支持体2の大きさの影響により太陽電池セル3とリード電極6をワイヤーボンディングにより電気的に接続できない場合は、搭載工程後に支持体成型工程を実施しても良い。
【0048】
次に、太陽電池セル3を封止するように搭載領域5の上方に集光レンズ4を成型する(図4の(D):集光レンズ成型工程)。この工程では、支持体2の凹部に流動性のある透明の熱硬化性シリコーン樹脂を充填し、集光レンズ4を成型する。このようにすれば、光電変換効率、耐熱性及び耐久性に優れた集光型太陽電池モジュールを製造できる。
集光レンズ4の成型は圧縮成型、トランスファー成型、射出成型によって行うことができる。このようにすれば、製造を簡略化でき、生産効率を向上し、コストを削減できる。或いは、樹脂の滴下によって集光レンズ4を成型することもできる。
【0049】
集光レンズ成型工程後に、必要に応じて、基台部1の一部を切断することによって電気的回路を形成することができる(図4の(E))。図5は電気的回路を形成する方法の一例を示した図である。図5の(A)は、集光レンズ4の成型後の集光型太陽電池モジュール10を裏面側から見た図であり、図5の(B)〜(D)はダイシングブレードを用いて基台部1を切断する様子を示す図である。図5の(B)〜(D)に示すように、この工程では、ダイシングブレード9を用いて集光型太陽電池モジュールの裏面から基台部1の一部を切断する。このとき、図4(E)の11で示すように、基台部1のみ又は基台部1と支持部2の一部分のみを切断し、支持部2は完全には切断しない(ハーフダイシング)。これにより、直列回路(図5の(B))、並列回路(図5の(C))、直列並列回路(図5の(D))の3種類の電気的回路を形成することが可能である。
【0050】
このようにして電気的回路を形成すれば、電気的なショートやオープン状態を確認する製造工程内での検査を可能にするだけでなく、外部に電気的に接続する実装基板を省略することができ、集光型太陽電池モジュールを低コストで製造可能となる。
また、集光レンズ成型工程後に、集光型太陽電池モジュールをダイシングによって個片化する工程を実施しても良い(図4の(F))。この工程では、図4の(F)に示すように、基台部1と支持部2とをダイシングにより完全に切断する(フルダイシング)。このようにすれば、複数の個片化された集光型太陽電池モジュールを一度に大量に生産することができ、量産性が飛躍的に向上する。
【0051】
図2及び図3に個片化された集光型太陽電池モジュールの一例を示す。図2は金型を用いて集光レンズ4が上向きの凸形状を有するように成型し、個片化した集光型太陽電池モジュールである。また、図3はディスペンサー装置等を用いて表面張力によって樹脂を滴下して集光レンズ4が下向きの凸形状を有するように成型し、個片化した集光型太陽電池モジュールである。
このように集光型太陽電池モジュールを個片化する工程を有する製造方法であれば、太陽電池を配置する場所を制限することなく、省スペース化を実現できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
厚み0.25mmのCuベースの基材(三菱伸銅製Tamac194)を用いて、エッチング工程を通じて複数の搭載領域、リード電極を形成し、搭載領域及びリード電極の表面にNi/Pd/Auメッキを施した、図4(A)に示すような、金属リードフレームを基台部として作製した。この基台部の表面に対し50W/60秒の条件でプラズマ処理を実施した。その後、トランスファー成型機により熱硬化性シリコーン組成物の支持体を成型した。このようにして、太陽電池セル収納パッケージを作製した。
【0054】
次に、搭載領域をポリイミドテープによりマスキングし、支持体の内壁表面にNiメッキした。マスキングを取り除いた後、搭載領域にカットしたAu/Snリボン(住友金属鉱山製:商品名:アロイプリフォーム Au80%,Sn20%)を配置し、太陽電池セル(Cyrium製:三接合型化合物タイプ 2.5mm×2.5mm)を搭載し、280℃にて共晶接合した。搭載した太陽電池セルとリード電極を30μmの金ワイヤーを用いてワイヤーボンドにて電気的に接続した。
【0055】
その後、TOWA製圧縮成型機を用いて、熱硬化性シリコーン樹脂(信越化学製:商品名KJR−9022)で集光レンズを成型した。
その後、図5の(B)に示すように、厚さ0.4mmのダイシングブレードを用いて基台部の一部を切断し(ハーフダイシング)、太陽電池セル3個の直列電子回路を3列並列させた電子回路を有した集光型太陽電池モジュールを得た。得られた集光型太陽電池モジュールの外周部に通電プローブを設け、通電プローブとリード電極とを接続して通電検査を実施し、太陽電池セルと金ワイヤーの接続状況を確認した。
【0056】
その後、厚さ0.2mmのダイシングブレードを用いて集光型太陽電池モジュールを個片化し(フルダイシング)、図2に示すような9個の集光型太陽電池モジュールを得た。この個片化された集光型太陽電池モジュールは上記で既に通電検査が成されたものであるので、個片化後の通電検査・選別工程は必要なく、一度に複数個のI−V測定情報を得られたため、工程が簡素化し、生産効率を向上できた。また生産コストの低減にもつながった。
【0057】
(実施例2)
金属酸化物としてアルミナ(アドマテックス製:商品名AO−502)を含む熱硬化性シリコーン樹脂組成物をガラス繊維に含浸させた1枚当り70μmのシートを3層積層して、これをベースとし、その上面と下面に75μmの銅層とその表面にNi/Pd/Auのメッキを施した金属被覆層を形成した。その後、エッチングにてリード電極を形成して基台部を作製した。
その後、トランスファー成型機により高反射物質として酸化チタンを含むシリコーン樹脂組成物で支持体を成型した。
その後、実施例1と同様にして集光型太陽電池モジュールを製造した。
【0058】
(比較例)
FR−4(Flame Retardant Type 4)基板上に、凹部が上方に向かって広がるようなテーパ形状を有する支持体をポリメチルメタクリレート(PMMA)で一体成型した基台を作製した。この基台の凹部の平坦な底部に、受光部を上にして太陽電池セルを半田により固定した。ここで、太陽電池セルは砒化ガリウムからなるものを用いた。
その後、凹部にポリスチレンを流し込んで太陽電池セルを封止し、その表面を加工して集光レンズ形成した。その後、ダイシング工程を実施し、個片化した集光型太陽電池モジュールを得た。
【0059】
実施例1、2及び比較例にて製造した集光型太陽電池モジュールの1kW/m照射下における電流電圧特性をソーラーシュミレータ(朝日分光製:HAL−320)を用いて測定し、光電変換効率を評価した。
その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1、2の集光型太陽電池モジュールは比較例よりも光電変換効率に優れていることが分かった。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1、2及び比較例にて製造した集光型太陽電池モジュールのジャンクションからヒートシンクまでの基板熱抵抗値Rj−HSを過渡熱測定装置(Mentor Graphics製:T3star)を用いて測定し、比較した。
その結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1、2の集光型太陽電池モジュールは比較例よりも放熱性が向上していることが分かった。
【0062】
【表2】
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
1…基台部、 2…支持体、 3…太陽電池セル、 4…集光レンズ、
5…搭載領域、 6…リード電極、 7…エッチング部分、
8…ワイヤー、 9…ダイシングブレード、10…集光型太陽電池モジュール、
11…ハーフダイシング。
図1
図2
図3
図4
図5