(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明について詳細に説明するが、初めに
図1〜
図3を参照して、温度制御システムの概要及びその構成ついて説明し、その後に、本発明の各実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
(参考例)
初めに、
図1を参照して温度制御システムの概要及びその構成ついて説明する。
図1に示す温度制御システムは、半導体ウエハWをエッチング処理する処理チャンバ100と、半導体ウエハW及びF/R(Focus Ring)の温度を測定する温度測定装置200と、温度測定装置200で測定される温度に基づき制御信号(温度指示信号)を送信する装置システム300と、装置システム300からの制御信号(温度指示信号)に基づいて冷媒(例えばブライン)の温度を制御するチラー400とを備える。
【0012】
処理チャンバ100は、半導体ウエハWを載置するサセプタ101と、半導体ウエハWの端部におけるエッチングの均一性を向上させるためのF/Rとを備える。サセプタ101は、内部にチラー400から供給される冷媒(温調媒体)を流通させる流路101aを備える。この流路101a内を流れる冷媒によりサセプタ101を介して、半導体ウエハW及びF/Rの温度が制御される。
【0013】
温度測定装置200は、光源210と、この光源210からの光を温度測定用の測定光と参照光とに分けるための第1スプリッタ220と、この第1スプリッタ220からの測定光を、さらにn個(複数)の第1〜第n測定光に分けるための第2スプリッタ230と、上記第1スプリッタ220からの参照光を反射するための参照光反射手段240と、参照光反射手段240から反射する参照光の光路長を変化させるための光路長変化手段250と、測定光の反射光及び参照光の反射光との干渉波形を観察するための受光手段260と、受光手段260で観察された干渉波形から温度を算出する温度算出手段270を備える。
【0014】
光路長変化手段250は、例えば参照ミラーなどで構成される参照光反射手段240を
参照光の入射方向に平行な一方向へ移動させるためのリニアステージ、モータ、He−Neレーザエンコーダ等から構成されている。
【0015】
光源210としては、測定光と参照光との干渉が測定できれば、任意の光を使用することが可能である。なお、半導体ウエハWの温度測定を行う場合には、少なくとも半導体ウエハWの表面と裏面との間の距離(通常は800〜1500μm程度)からの反射光が干渉を生じない程度の光が好ましい。具体的には例えば低コヒーレンス光を用いることが好ましい。
【0016】
低コヒーレンス光とは、コヒーレンス長の短い光をいう。低コヒーレンス光の中心波長は例えば0.3〜20μmが好ましく、更に0.5〜5μmがより好ましい。また、コヒーレンス長としては、例えば0.1〜100μmが好ましく、更に3μm以下がより好ましい。このような低コヒーレンス光を光源210として使用することにより、余計な干渉による障害を回避でき、半導体ウエハWの表面又は内部層からの反射光に基づく参照光との干渉を容易に測定することができる。
【0017】
上記低コヒーレンス光を使用した光源としては、例えばSLD(Super Luminescent Diode)、LED、高輝度ランプ(タングステンランプ、キセノンランプなど)、超広帯域波長光源等を使用することができる。これらの低コヒーレンス光源の中でも、輝度の高いSLD(波長、例えば1300nm)を光源210として用いることが好ましい。
【0018】
第1スプリッタ220としては、例えば光ファイバカプラを用いる。但し、これに限定されるものではなく、参照光と測定光とに分けることが可能なものであればよい。また、第2スプリッタ230についても、例えば光ファイバカプラを用いる。但し、これに限定されるものではなく、第1〜第nの測定光に分けることが可能なものであればよい。第1スプリッタ220、第2スプリッタ230としては、例えば光導波路型分波器、半透鏡などを用いてもよい。
【0019】
参照光反射手段240は、例えばコーナーキューブプリズム、平面ミラー等などを用いることが可能である。これらの中でも、反射光の入射光との平行性の観点からは、コーナーキューブプリズムを用いることが好ましい。但し、参照光を反射できれば、上記のものに限られず、例えばディレーラインなどで構成してもよい。
【0020】
受光手段260としては、低価格性、コンパクト性を考慮すれば、例えばイメージセンサを用いて構成することが好ましい。具体的には例えばSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたイメージセンサにより構成する。なお、半導体ウエハWの温度を測定する場合、中心波長が1000nm以上の光を使用することから、波長が800〜1700nmの光に感度を有するInGaAsフォトダイオードを用いたイメージセンサにより受光手段260を構成することが好ましい。
【0021】
第1スプリッタ220からの参照光は、参照光伝送手段例えばコリメートファイバを介して参照光反射手段240へ照射する参照光照射位置まで伝送されるようになっており、第2スプリッタ230からの第1〜第n測定光は夫々、第1〜第n測定光伝送手段例えばコリメートファイバF
1〜F
nを介して、半導体ウエハW及びF/Rへ照射する測定光照射位置まで伝送されるようになっている。なお、第1〜第n測定光伝送手段としては、上記コリメートファイバF
1〜F
nに限られるものではなく、例えば光ファイバの先端にコリメータを取り付けたコリメータ付光ファイバであってもよい。
【0022】
(第1〜第n測定光の光路長)
上記温度測定装置200では、第1〜第n測定光における第2スプリッタ230から半導体ウエハWまでの各光路長が夫々互いに異なるように構成されている。具体的には例えばコリメートファイバF
1〜F
nの長さが夫々同一の場合は、例えばコリメートファイバF
1〜F
nの先端面、すなわち測定光照射位置が、半導体ウエハW及びF/Rから照射方向に略平行な方向に夫々ずれるように配置される。また、コリメートファイバF
1〜F
nの先端面をずらすことなく、コリメートファイバF
1〜F
nの長さ又は光ファイバの長さを変えることにより、上記第1〜第n測定光における第2スプリッタ230から半導体ウエハW及びF/Rまでの各光路長が異なるようにしてもよい。
【0023】
なお、第1〜第n測定光伝送手段を半導体ウエハW及びF/Rからずらして配設する場合には、少なくとも各測定ポイントで測定される第1〜第n測定光と参照光との干渉波が夫々重ならないようにする必要がある。例えば光源210として低コヒーレンス光源を使用する場合には、第1〜第n測定光伝送手段を半導体ウエハW及びF/Rから、少なくとも干渉波のコヒーレンス長以上ずつずらして配設すれば、干渉波の重なりを防止することができる。
【0024】
また、このような第1〜第n測定光伝送手段を配設する位置は、半導体ウエハWの厚さや厚さの変化率、測定する温度範囲、参照ミラーの移動距離などを考慮して決定することが好ましい。具体的には例えば0.7mm程度の厚みがあるシリコンウエハでは、常温から200℃くらいまでの温度範囲での参照ミラーの移動距離は0.04mm程度であるため、第1〜第n測定光伝送手段を半導体ウエハW及びF/Rから0.1mm程度ずつずらして配設することが好ましい。これにより、各測定ポイントの干渉波が重ならないようにすることができる。
【0025】
これにより、参照光反射手段240を一度走査するだけで各第1〜第n測定光が照射された測定ポイントの干渉波を一度に検出することができる。このため、温度計測にかかる時間を極力短くすることができる。
【0026】
(温度測定装置の動作)
図1に示す温度測定装置200においては、光源210からの光は、第1スプリッタ220の端子aに入射され、第1スプリッタ220により端子bと端子cへと2分波される。このうち、端子bからの光(測定光)は、第2スプリッタ230に入射され、第2スプリッタ230により第1〜第n測定光に分波される。これら第1〜第n測定光はそれぞれコリメートファイバF
1〜F
nを介して照射され、半導体ウエハW及びF/Rで反射される。
【0027】
一方、端子cからの光(参照光)は、コリメートファイバF
n+1から出射され、参照光反射手段(例えば参照ミラー)240によって反射される。そして、第1〜第n測定光の各反射光は第2スプリッタ230を介して第1スプリッタ220へ入射し、参照光の反射光と再び合波されて、例えばSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたで構成された受光手段260で干渉波形が検出される。
【0028】
(測定光と参照光との干渉波形の具体例)
ここで、温度測定装置200の受光手段260により得られる干渉波形の具体例を
図2に示す。
図2は、第2スプリッタ230により分波された第1,第2測定光が、半導体ウエハWの面内における測定ポイントP
1(例えば半導体ウエハWの端部(Edge))、P2(例えば半導体ウエハWの中心(Center))にそれぞれ照射されるようにした場合における第1及び第2測定光と参照光との干渉波形を示したものである。
図2(a)は温度変化前の干渉波形を示したものであり、
図2(b)は温度変化後の干渉波形を示したものである。
図2において縦軸は干渉強度、横軸は参照ミラーの移動距離をとっている。
【0029】
また、光源210としては、上述したような低コヒーレンス光源を用いている。低コヒーレンス光源によれば、光源210からの光のコヒーレンス長が短いため、通常は測定光の光路長と参照光の光路長とが一致した場所で強く干渉が起こり、それ以外の場所では干渉は実質的に低減するという特質がある。このため、参照光反射手段(例えば参照ミラー)240を例えば参照光の照射方向の前後に駆動させ、参照光の光路長を変化させることにより、半導体ウエハWの表面及び裏面の他、ウエハ内部にさらに層があればその各層についても、これらの屈折率差によって反射した測定光と参照光が干渉する。その結果、ウエハの深度方向の温度測定が可能となる。
【0030】
図2(a)、(b)によれば、参照光反射手段(例えば参照ミラー)240を一方向へ走査していくと、先ず半導体ウエハWの測定ポイントP
1の表面と参照光との干渉波が現れ、次いで測定ポイントP
2の表面と参照光との干渉波が現れる。参照光反射手段240をさらに走査していくと、ウエハの測定ポイントP
1の裏面と参照光との干渉波が現れ、次いで測定ポイントP
2の裏面と参照光との干渉波が現れる。このように、参照光反射手段240を一度走査するだけで第1及び第2測定光が照射された測定ポイントP
1、P
2の表面及び裏面の干渉波を一度に検出することができる。
【0031】
(干渉光に基づく温度測定方法)
次に、温度算出手段270における測定光と参照光との干渉波に基づいて温度を測定する方法について説明する。干渉波に基づく温度測定方法としては、例えば温度変化に基づく光路長変化を用いる温度換算方法がある。ここでは、上記干渉波形の位置ズレを利用した温度換算方法について説明する。
【0032】
エッチングが開始されると(プラズマがONされると)、イオンが半導体ウエハW及びF/Rに衝突し、半導体ウエハW及びF/Rの温度が上昇する。温度が上昇すると半導体ウエハW及びF/Rは膨張して屈折率が変化するため、温度変化前と温度変化後では、干渉波形の位置がずれて、干渉波形のピーク間幅が変化する。このとき、測定ポイントごとに温度変化があれば、測定ポイントごとに干渉波形の位置がずれて、干渉波形のピーク間幅が変化する。このような測定ポイントごとに干渉波形のピーク間幅を測定することにより温度変化を検出することができる。例えば
図1に示すような温度測定装置200であれば、干渉波形のピーク間幅は、参照光反射手段240の移動距離に対応しているため、干渉波形のピーク間幅における参照ミラーの移動距離を測定することにより、温度変化を検出することができる。
【0033】
半導体ウエハWの厚さをdとし、屈折率をnとした場合、干渉波形についてのピーク位置のずれは、厚さdについては各層固有の線膨張係数αに依存し、また屈折率nの変化については主として各層固有の屈折率変化の温度係数βに依存する。なお、屈折率変化の温度係数βについては波長にも依存することが知られている。
【0034】
従って、ある測定ポイントPにおける温度変化後のウエハの厚さd′を数式で表すと下記数式(1)に示すようになる。なお、数式(1)において、ΔTは測定ポイントの温度変化を示し、αは線膨張率、βは屈折率変化の温度係数を示している。また、d、nは、夫々温度変化前の測定ポイントPにおける厚さ、屈折率を示している。
【0035】
d′=d・(1+αΔT)、n′=n・(1+βΔT) …(1)
上記数式(1)に示すように、温度変化によって測定ポイントPを透過する測定光の光路長が変化する。光路長は一般に、厚さdと屈折率nとの積で表される。従って、温度変化前の測定ポイントPを透過する測定光の光路長をLとし、測定ポイントにおける温度がΔTだけ変化した後の光路長をL′とすると、L、L′は夫々下記の数式(2)に示すようになる。
【0036】
L=d・n 、 L′=d′・n′ …(2)
従って、測定ポイントにおける測定光の光路長の温度変化前後の差(L′−L)は、上記数式(1)、(2)により計算して整理すると、下記数式(3)に示すようになる。なお、下記数式(3)では、α・β≪α、α・β≪βを考慮して微小項を省略している。
【0037】
L′−L=d′・n′−d・n=d・n・(α+β)・ΔT
=L・(α+β)・ΔT …(3)
【0038】
ここで、各測定ポイントにおける測定光の光路長は、参照光との干渉波形のピーク間幅に相当する。従って、線膨張率α、屈折率変化の温度係数βを予め調べておけば、各測定ポイントにおける参照光との干渉波形のピーク間幅を計測することによって、上記数式(3)を用いて、各測定ポイントの温度に換算することができる。
【0039】
このように、干渉波から温度への換算する場合、上述したように干渉波形のピーク間で表される光路長が線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βによって変るため、これら線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを予め調べておく必要がある。半導体ウエハWを含め物質の線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは一般に、温度帯によっては、温度に依存する場合もある。例えば線膨張率αについては一般に、物質の温度が0〜100℃くらいの温度範囲ではそれほど変化しないので、一定とみなしても差支えないが、100℃以上の温度範囲では物質によっては温度が高くなるほど変化率が大きくなる場合もあるので、そのような場合には温度依存性が無視できなくなる。屈折率変化の温度係数βについても同様に温度範囲によっては、温度依存性が無視できなくなる場合がある。
【0040】
例えば半導体ウエハWを構成するシリコン(Si)の場合は、0〜500℃の温度範囲において線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは例えば二次曲線で近似することができることが知られている。このように、線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βは温度に依存するので、例えば温度に応じた線膨張率α及び屈折率変化の温度係数βを予め調べておき、その値を考慮して温度換算すれば、より正確な温度に換算することができる。
【0041】
なお、測定光と参照光との干渉波に基づく温度測定方法としては上述したような方法に限られることはなく、例えば温度変化に基づく吸収強度変化を用いる方法であってもよく、上記温度変化に基づく光路長変化と温度変化に基づく吸収強度変化とを組み合わせた方法であってもよい。
【0042】
装置システム300は、温度測定装置200で測定される温度をリアルタイムに取り込み、この取り込んだ温度(半導体ウエハW及びF/Rの温度)に基づいてチラー400へ制御信号(温度指示信号)を送信する。具体的には、この取り込んだ温度(半導体ウエハWの温度及びF/R)が一定となるようにチラー400の設定温度を制御する。
【0043】
チラー400は、装置システム300からの制御信号(温度指示信号)に基づいて冷媒を温調する制御回路401と、冷媒をサセプタ101へ供給する流路(往路)402と、サセプタ101からの冷媒をチラー400内へ戻すための流路(復路)403とを備える。制御回路401は、装置システム300から送信される制御信号(温度信号)に基づいて、冷媒の温度を制御するが、この制御には、例えばPID制御を用いることができる。PID制御は、フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、その積分、および微分の3つの要素によって行う。なお、半導体ウエハWの温度及びF/Rを一定に保つことが出来れば、PID制御以外にも種々の制御手法を利用することができる。
【0044】
図3は、半導体ウエハWの温度とチラー400の設定温度の関係を示す図である。
図3は、従来(チラー400の設定温度を一定にした場合)の半導体ウエハWの温度とチラー400の設定温度の関係を示している。
図3において縦軸は半導体ウエハWの温度、横軸はプロセスの時間をとっている。また、半導体ウエハWの温度を実線で、チラー400の設定温度を鎖線で示している。従来のように、半導体ウエハWの温度に関係なくチラー400の温度設定を一定にした場合、
図3に示すように半導体ウエハWのプロセス中にチラー400の設定温度が変化しないためプロセス中の半導体ウエハWの温度が変動する。
【0045】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る温度制御システム1の構成図である。第1の実施形態に係る温度制御システム1では、処理チャンバ100が備えるサセプタ101とチラー400(第1の温調手段)との間に、チラー400とは独立したサブチラー500(第2の温調手段)をさらに備えた点が
図1に示した温度制御システムと異なる。以下、
図4を参照して、第1の実施形態に係る温度制御システム1について説明するが、
図1で説明した構成と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0046】
サブチラー500は、流路(往路)402を流れる冷媒の温度を調整する第1温調部501と、流路(復路)403を流れる冷媒の温度を調整する第2温調部502と、装置システム300からの制御信号(温度指示信号)に基づいて第1温調部501及び第2温調部502を制御する制御回路503とを備える。
【0047】
制御回路503は、装置システム300から送信される制御信号(温度信号)に基づいて、冷媒の温度を制御するが、この制御には、例えばPID制御を用いることができる。なお、半導体ウエハWの温度を一定に保つことが出来れば、PID制御以外にも種々の制御手法を利用することができる。なお、制御回路503は、第1温調部501及び第2温調部502を各々独立して制御する。
【0048】
上述したように、通常、処理チャンバ100は半導体製造工場の二階に設置され、付帯設備であるチラー400は一階に設置されることが多く、この場合、チラー400で温調された冷媒が処理チャンバ100内のサセプタ101へ供給されるまでにタイムラグ(時間差)が生じる。このため、リアルタイムに半導体ウエハの温度を制御することが難しくなる。そこで、この第1の実施形態では、処理チャンバ100とチラー400との間にサブチラー500を備え、このサブチラー500が備える第1温調部501で流路(往路)402を流れる冷媒の温度を温調することにより半導体ウエハWの温度制御の応答性を向上させている。
【0049】
また、チラー400は、半導体ウエハWの温度が安定するように温度調整した冷媒をサセプタ101へ常に供給しているが、プロセスが開始されると冷媒の温度が上昇し、この上昇した冷媒の温度を下げるのに時間がかかる。そこで、本実施形態では、サブチラー500に流路(復路)403を流れる冷媒の温度を調整する第2温調部502を備え、予め冷媒の温度をある程度調整(下げる)ことで、チラー400で冷媒を所望の温度へ温調する時間を短縮している。結果、半導体ウエハWの温度制御の応答性を向上することができる。
【0050】
図5は、半導体ウエハ温度とサセプタ内の冷媒温度の関係を示す図である。
図5(a)は、従来(チラー400の設定温度を一定にした場合)の半導体ウエハWの温度とチラー400の設定温度との関係を示している。
図5(b)は、サブチラー500を備え、温度測定装置200で測定した半導体ウエハWの温度に応じてサブチラー500の設定温度を変化させた場合の半導体ウエハWの温度、チラー400の設定温度、サブチラー500の設定温度との関係を示している。なお、
図5において縦軸は半導体ウエハWの温度、横軸はプロセスの時間をとっている。また、
図5では、半導体ウエハWの温度を実線で、チラー400の設定温度を鎖線で、サブチラー500の設定温度を一点鎖線で示している。
【0051】
チラー400の設定温度を一定にした場合、半導体ウエハWのプロセス中にチラー400の設定温度が変化しない。さらに、チラー400で温調された冷媒が処理チャンバ100内のサセプタ101へ供給されるまでにタイムラグ(時間差)が生じる。このため、
図5(a)に示すようにサセプタ101へ供給される冷媒の温度が変化せずに、プロセス中の半導体ウエハWの温度が変動する。
【0052】
一方、本実施形態では、サセプタ101の近くにサブチラー500を備え、リアルタイムに測定される半導体ウエハWの温度に基づいて、サブチラー500の設定温度を制御している。また、サブチラー500と処理チャンバ100との距離が短いため、第1温調部501で温調された冷媒が処理チャンバ100内のサセプタ101へ供給されるまでにほとんどタイムラグが生じない。このため、
図5(b)に示すように、半導体ウエハWの温度変動を抑制して、プロセス中の半導体ウエハWの温度を略一定に保つことができる。
【0053】
なお、サブチラー500を設ける位置は、処理チャンバ100内のサセプタ101から近いほどよい。サセプタ101とサブチラー500との距離は、流路(往路)402及び流路(復路)403内を流れる冷媒の流速及び流量によるが、2m以内であることが好ましい。
【0054】
以上のように、この第1の実施形態に係る温度制御システム1では、処理チャンバ100が備えるサセプタ101とチラー400との間に、チラー400とは独立したサブチラー500をさらに備え、処理チャンバ100の近くで流路(往路)402及び流路(復路)403を流れる冷媒の温度をプロセス中の半導体ウエハW及びF/Rの温度変化をモニタしながら温調するようにしたので、プロセス中の半導体ウエハW及びF/Rの温度変化を抑制して半導体ウエハWの加工精度を向上することができる。
【0055】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態では、光源210で発生する光を測定光と参照光とに分岐し、半導体ウエハWの測定ポイントで反射された測定光と、参照光反射手段240で反射された参照光を干渉させて半導体ウエハW及びF/Rの温度を測定していた。この第1の実施形態の変形例では、参照光を使用せずに半導体ウエハW及びF/Rの温度を測定する実施形態について説明する。
【0056】
図6は、第1の実施形態の変形例に係る温度測定システム1Aの構成図である。温度測定システム1Aは、温度測定装置200に代わって温度測定装置200Aを備える点が、第1の実施形態に係る温度制御装置1と異なる。
【0057】
温度測定装置200Aは、光源210と、この光源210からの光を第2スプリッタ230へ入力し、第2スプリッタ230からの反射波を受光手段260Aへ入力する光サーキュレータ280と、光サーキュレータ280からの測定光を、さらにn個(複数)の第1〜第n測定光に分けるための第2スプリッタ230と、光サーキュレータ280から入力される反射光を複数の波長に離散化した離散化信号を生成する受光手段260Aと、受光手段260Aからの離散化信号を離散フーリエ変換して光路長を算出し、該光路長から半導体ウエハW及びF/Rの温度を算出する温度算出手段270Aを備える。以下、温度測定装置200Aが備える各構成について詳細に説明するが、
図1及び
図2で説明した構成と同一の構成には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
光サーキュレータ280は、3つのポートA〜Cを備える、ポートAに入力した光はポートBから出力され、ポートBから入力した光はポートCから出力され、ポートCに入力した光はポートAから出力される特性を有する。すなわち、光サーキュレータ280のAポートから入力される光源210からの測定光は、光サーキュレータ280のBポートから第2スプリッタ230へ入力され、光サーキュレータ280のBポートから入力される半導体ウエハW及びF/Rからの反射光は、光サーキュレータ280のCポートから受光手段260Aへ入力される。
【0059】
図7は、受光手段260Aの構成図である。受光手段260Aは、光サーキュレータ280からの反射光を波長分解する回折格子261と、波長分解された反射光を電気信号に変換するイメージセンサ262とを備え、光サーキュレータ280からの反射光を複数の波長に離散化した離散化信号を生成して出力する。なお、イメージセンサ262は、例えばSiフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、Geフォトダイオードなどを用いたイメージセンサで構成するが、半導体ウエハWの温度を測定する場合、InGaAsフォトダイオードを用いることが好ましい。
【0060】
温度算出手段270Aは、例えば、コンピュータ(電算機)等であり、受光手段260Aから入力される離散化信号に基づいて半導体ウエハW及びF/Rの温度を算出する。温度算出手段270Aは、受光手段260Aからの離散化信号を取り込んで、DFT(discrete fourier transform)処理を行う。このDFT処理により、受光手段260Aからの離散化信号を振幅と距離との情報に変換する。
図8は、DFT処理後の信号を示す図である。
図8において縦軸は振幅、横軸は距離になっている。
【0061】
温度算出手段270Aは、離散フーリエ変換された振幅と距離との情報に基づいて光路長を算出する。具体的には、
図8に示すピークAからピークBまでの距離を算出する。
図8に示すピークAとピークBは、半導体ウエハWの表面からの反射光と裏面からの反射光との干渉により生じ、この光路長の差は、半導体ウエハWの温度に依存する。半導体ウエハWの温度が変化すると、半導体ウエハW及びF/Rの熱膨張と屈折率との変化により、半導体ウエハW及びF/Rの表面と裏面との光路長が変化するためである。
【0062】
温度算出手段270Aは、光路長と温度との関係に基づいて、上記光路長から半導体ウエハWの温度を算出し、温度情報として装置システム300へ出力する。なお、光路長と温度との関係は、温度算出手段270Aが備えるHDD(Hard Disk Drive)、Flash Memory(フラッシュメモリ)やFeRAM(強誘電体メモリ)等の不揮発性メモリに予め記憶しておく。
【0063】
以上のように、この第1の実施形態の変形例に係る温度測定システム1Aは、半導体ウエハWからの反射光を、受光手段260Aにより離散化信号に変換し、この離散化信号をDFT処理して光路長を算出しているので、光路長変化手段250により参照光反射手段240を機械的に動作させる必要がないので半導体ウエハW及びF/Rの温度測定を非常に早く行うことができるため、より効果的に半導体ウエハWの温度変化を抑制することができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る温度測定システム1と同じである。
【0064】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る温度制御システム2の構成図である。現在、300mmウエハを処理する半導体製造装置では、一台の半導体製造装置に複数の処理チャンバを備えるマルチチャンバ方式が主流となっている。この第2の実施形態では、本発明をマルチチャンバ方式に適用した場合について説明する。なお、
図4に示した第1の実施形態に係る温度制御システム1と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、第2の実施形態に係る温度制御システム2は、複数の処理チャンバ100と、各処理チャンバ100と1対1に対応する複数のサブチラー500と、複数のサブチラー500で共通して使用するチラー400とを備える。各サブチラー500は、装置システム300から送られる制御信号に基づいて対応する処理チャンバ100に対して温調した冷媒を送出する。この第2の実施形態では、処理チャンバ100を半導体製造工場の二階、付帯設備であるチラー400を一階に設置しているが、サブチラー500を処理チャンバ100が設置される二階に設置している。このため、サブチラー500から各処理チャンバ100までの距離を短くすることができ半導体ウエハW及びF/Rの温度制御の応答性が向上する。
【0066】
なお、
図9に示すように、この第2の実施形態では、複数の処理チャンバ100に対して1台のチラー400しか備えていないが、処理チャンバ100とサブチラー500とを1対1に対応させているので冷媒の温調能力が不足することはない。また、
図9では、サブチラー500を処理チャンバ100と同じ階に設置しているが、処理チャンバ100と対応するサブチラー500との距離を2m以下に抑えることが出来れば、必ずしも同じ階に設置する必要はない(例えば、中二階等に設置してもよい)。さらに、
図9では、複数のサブチラー500に対してチラー400を一台だけ備えた構成としているが、各サブチラー500に対して、チラー400を備えるように構成してもよい。
【0067】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係る温度制御システム3の構成図である。第3の実施形態にかかる温度制御システム3は、処理チャンバ100と、温度測定装置200と、装置システム300と、チラー400(第1の温調手段)と、サブチラー500(第2の温調手段)と、IM600と、バックヘリウム制御手段700とを備える。以下、第3の実施形態に係る温度制御システム3の構成ついて説明するが、
図4に示した第1の実施形態に係る温度制御システム1と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0068】
この第3の実施形態に係る温度制御システム3では、温度測定装置200で測定した半導体ウエハW及びF/Rの温度情報を装置システム300ではなくIM600へ送信している。IM600は、処理チャンバ100で処理が完了した半導体ウエハWの特性(例えば、膜厚、欠陥等、処理チャンバ100のプロセス特性)を確認するIntegrated Metrologyと呼ばれる装置である。
【0069】
IM600は、処理チャンバ100で処理が完了した半導体ウエハWの特性を取得すると、この特性結果に応じて、処理チャンバ100のプロセスパラメータ(各種ガス流量、チャンバ内圧力、RFパワー、バックヘリウム圧力、チラー設定温度等)を変更するよう装置システム300へ指示する。
【0070】
装置システム300は、IM600からの指示に基づいて、処理チャンバ100の各プロセスパラメータを変更する。IM600でのプロセス結果に応じて、サブチラー500の設定温度を変更することにより、半導体ウエハWの加工精度をより向上させることができる。
【0071】
なお、第1の実施形態に係る温度制御システム1、第1の実施形態の変形例に係る温度制御システム1A、第2の実施形態に係る温度制御システム2にもIM600を備え、チラー400又はサブチラー500の設定温度をIM600で得られたプロセス特性に応じて変更するように構成してもよい。
【0072】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態では、処理対象物として半導体ウエハを例に説明したが、処理対象物は半導体ウエハに限られず、例えば、太陽電池用ウエハ、液晶パネルなどであってもよい。また、半導体ウエハをエッチング処理する場合の温度測定について説明したが、プロセス中に半導体ウエハの温度をモニタする必要のあるプロセス(例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)プロセス等)であれば本発明を適用できる。また、第1〜第3の実施形態に係る温度制御システム1〜3が備える温度測定装置200を、第1の実施形態の変形例に係る温度制御システム1A(
図6参照)が備える温度測定装置200Aとしてもよい。