(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献に記載の吸収性物品には、以下の問題があった。吸収性物品のターゲット印刷部は、吸収体の裏面側に配置された不液透過性シートに印刷されている。不液透過性シートの外側には外面シートが配置されているため、使用者は、外面シートを介してターゲット印刷部を視認する。よって、外面シートの厚みや繊維密度によってターゲット印刷部の視認性が低下するおそれがある。
【0005】
また、視認性を向上させるために、外面シートの外側表面に印刷を施してターゲット印刷部を設けることが考えられる。しかし、外面シートの外側表面は、止着部材の着脱に伴って摩耗するため、ターゲット印刷部の表示状態を維持できず、視認性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、吸収性物品の外側表面から視認した際の視認性を確保でき、かつ止着部材を繰り返し着脱した場合であっても表示状態を維持できるターゲット部を有する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本開示に係る吸収性物品は、身体前側と身体後側とに延びる前後方向、前記前後方向に直交する幅方向、前記着用者に向かう内方向、及び前記内方向と反対側に向かう外方向を有する吸収体を備え、前記着用者の腹側に配置される前胴回り領域と、着用者の背側に配置される後胴回り領域と、前記前胴回り領域と前記後胴回り領域との間に位置し、着用者の股下に配置される股下領域とを有し、前記後胴回り領域には、幅方向外側に延出する止着部材が設けられ、前記後胴回り領域の外方向に位置する外面には、前記止着部材が止着されるターゲット部が設けられた吸収性物品であって、前記ターゲット部は、第1不織布層と前記第1不織布層よりも前記外方向に配置された第2不織布層とが積層され、かつ前記第1不織布層と前記第2不織布層とが積層された状態で厚み方向に圧搾された圧搾部が形成されており、前記第1不織布層は、少なくともメルトブローン不織布層を含んでおり、前記第2不織布層は、スルーエアー不織布層であり、前記第1不織布層には、印刷が施された印刷部が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
使用者は、吸収性物品の外方向外側に配置されたターゲット部を直接視認できるため、シートを介して視認する構成と比較して視認性を向上させることができる。
【0009】
印刷部は、メルトブローン不織布層を含む第1不織布層に設けられている。メルトブローン不織布層は、紡糸ノズルから出た樹脂をホットエアーで延伸し、その繊維を捕集するため、長繊維であり、その繊維径が比較的細い。印刷部の着色成分は、細かい繊維間に侵入し、メルトブローン不織布層の内部まで浸透し易くなる。よって、ターゲット部の着色状態を維持し易くなる。また、メルトブローン不織布層は、比較的密度が高いため、着色成分を細かく配置でき、細かい柄を表現することが可能となる。
【0010】
更に、吸収性物品の外方向外側に配置される第2不織布層は、スルーエアー不織布層であり、メルトブローン不織布層と比較して嵩高であり、止着部材を止着し易い。また、印刷が施された第1不織布層には止着部材が直接止着しないため、止着部材を繰り返し着脱した場合であっても、印刷部が摩耗することを抑制し、印刷部の表示状態を維持できる。
【0011】
また、ターゲット部に圧搾部が形成されており、圧搾部が形成された部分の厚みは薄く、かつ光が透過し易い。よって、ターゲット部の印刷部のうち、圧搾部に重なる印刷部の視認性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、実施形態に係る吸収性物品について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、吸収性物品1は、オープンタイプのおむつである。本実施形態において、オープンタイプのおむつとは、予めパンツ型に成形されたおむつではなく、使用前の状態において展開された状態になっており、製品の所定部分同士をテープなどで留めることによって使用者に装着するおむつをいう。なお、おむつは、大人用のおむつであってもよいし、子供用のおむつであってもよい。
【0014】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
図1は、吸収性物品1の平面図であり、
図2は、
図1に示すX−X断面の断面図である。吸収性物品1は、着用者の腹側に配置される前胴回り領域S1と、着用者の背側に配置される後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、前胴回り領域S1と後胴回り領域S2との間に位置する股下領域S3と、を有する。
【0016】
吸収性物品1は、吸収性本体1Aと、外装体1Bと、を備える。吸収性本体1Aは、液透過性の表面シート10と、液不透過性の外装シート20と、表面シート10と外装シート20との間に配置される吸収体30、を有する。吸収体30は、着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向Lと、前後方向に直交する幅方向Wと、着用者に向かう内方向T1と、内方向と反対側(着用者から離れる側)に向かう外方向T2とを有する。外装体1Bは、吸収性本体1Aよりも外方向に配置されており、着用者の腰回り及び胴回りを覆うように配置される。
【0017】
表面シート10は、着用者の肌に接する側に設けられる。表面シート10は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成される。
【0018】
外装シート20は、衣服に当接するバック不織布21と、バック不織布よりも肌側に位置し、防水フィルム(例えば、ポリエチレン)などで形成された液不透過性のバックフィルム22とを有する。バックフィルム22は、透湿又は非透湿性のフィルムからなる。
【0019】
吸収体30は、表面シート10と外装シート20との間に設けられる。吸収体30は、着用者の体液を吸収する。吸収体30は、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの吸収性コアと、吸収性コアを被覆するティッシュ等の吸収性シートとによって形成される。
【0020】
表面シート10及び外装シート20の幅方向における外側端部は、股下領域S3において幅方向内側に凹んでいる。股下領域S3の凹みの周囲の領域は、着用者の脚周りに沿って配置される脚周り領域となる。脚周り領域には、ギャザーを形成する脚周り弾性部材が配置されている。
【0021】
前胴回り領域S1には、吸収体30よりも幅方向外側に延出した前部サイドフラップ40Aが形成されており、後胴回り領域S2には、吸収体30よりも幅方向外側に延出した後部サイドフラップ40Bが形成されている。前部サイドフラップ40A及び後部サイドフラップ40Bは、表面シート10及び外装シート20によって構成されている。
【0022】
後部サイドフラップ40Bには、前胴回り領域S1の外装シート20に係止する止着部材41が設けられる。止着部材41は、表面シート10に接合されている。止着部材41は、表面シート10よりも幅方向外側に延出している。止着部材41は、後述するターゲット部50に係合するフック部41Aと、フック部41Aが取り付けられる固定片41Bとによって構成される。フック部41Aには、ターゲット部50を構成する不織布層に引っ掛かるフック(図示せず)が複数形成されている。止着部材41とターゲット部50は、フックとループの係止システムを構成し、フックでループを引っ掛けて試着するものであり、止着部材41はフックとして機能し、ターゲット部50はループとして機能する。
【0023】
ターゲット部50は、前胴回り領域の外方向の外面となるバック不織布21の外方向の外面に配置されている。
図3は、
図2のA部分の拡大断面図である。
図4は、ターゲット部を示しており、
図4(a)は、平面図であり、
図4(b)は、B部分の模式拡大図である。
【0024】
ターゲット部50は、第1不織布層51と、第2不織布層52と、が積層されて構成されている。ターゲット部50は、止着部材41のフック部41Aに設けられたフックが引っ掛かるように構成されており、ループとして機能する。第2不織布層52は、第1不織布層51よりも外方向に配置されている。ターゲット部は、第1不織布層51と第2不織布層52とが積層された状態で厚み方向に圧搾された圧搾部Cが形成されている。第1不織布層51には、印刷が施された印刷部54が設けられている。
【0025】
第1不織布層51は、スパンボンド不織布層51Aと、メルトブローン不織布層51Bと、スパンボンド不織布層51Aと、が積層されたSMS不織布によって構成されている。第2不織布層52は、スルーエアー不織布層によって構成されている。
【0026】
スパンボンド不織布層51Aは、紡糸ノズルから出た樹脂を冷却し、その繊維を直接捕集して不織布を形成するため、長繊維であり、その繊維径が比較的太い。一般的に、スパンボンド不織布層51Aの繊維は、メルトブローン不織布層51Bを構成する繊維と比較して、繊維径が太く、その繊維長が長い。
【0027】
メルトブローン不織布層51Bは、紡糸ノズルから出た樹脂をホットエアーで延伸し、その繊維を捕集するため、長繊維であり、その繊維径が細い。一般的に、メルトブローン不織布層51Bを構成する繊維は、スパンボンド不織布層51Aを構成する繊維と比較して、繊維径が細く、その繊維長が短い。
【0028】
スルーエアー不織布層は、紡糸ノズルから出た樹脂を予め切断した短繊維を積層した後、熱風を与え、繊維を低密度の状態で互いに融着させた不織布である。スルーエアー不織布層は、低密度であるため、嵩高性とクッション性を有している。
【0029】
吸収性物品の外方向外側に配置される第2不織布層は、スルーエアー不織布層であり、メルトブローン不織布層と比較して嵩高である。よって、止着部材41を止着させることができる。また、印刷が施された第1不織布層51には止着部材41が直接止着しないため、止着部材41を繰り返し着脱した場合であっても、印刷部54が摩耗することを抑制し、印刷部54の表示状態を維持できる。
【0030】
また、2層のスパンボンド不織布層とメルトブローン不織布層とを積層して第1不織布層を構成することにより、耐久性を高めることができる。また、スパンボンド不織布層は、光を透過しやすく、光が拡散し難くなり、スパンボンド不織布層を介しても、印刷部を認識させ易くすることができる。
【0031】
印刷部54は、第1不織布層51に形成されており、具体的には、内方向側のスパンボンド不織布層側から印刷が施されている。印刷部54は、第1色で印刷された第1印刷部54Aと、第1色よりも濃い第2色によって印刷された第2印刷部54Bと、を有している。なお、印刷部の色は、1色以上であればよく、3色以上でもよい。
【0032】
印刷部54の着色成分は、内方向のスパンボンド不織布層を介してメルトブローン不織布層を構成する細かい繊維間に侵入し、メルトブローン不織布層51Bの内部まで浸透し易い。よって、印刷部の着色状態を維持し易くなる。また、メルトブローン不織布層51Bは、スパンボンド不織布層51Aよりも密度が高いため、着色成分を細かく配置でき、細かい柄を表現することが可能となる。
【0033】
また、印刷部は、内方向のスパンボンド不織布層51A側から印刷を施した場合、比較的密度の高いメルトブローン不織布層51Bで着色成分が留まる。よって、印刷を施す側と反対の面(外面)まで着色成分が通過することを抑制し、印刷時の色抜けを防止できる。例えば、吸収性物品1は、鞄等に入れて運搬することが多く、印刷部54が第2不織布層52側に配置されていると、印刷部54の着色成分が剥離して鞄内の別の収容物に付着するおそれがある。しかし、ターゲット部の内方向の面側に印刷部54を設けることにより、色移りを抑制できる。
【0034】
ターゲット部50には、厚み方向に圧搾された圧搾部Cが形成された圧搾領域53Aと、圧搾部Cが形成されていない非圧搾領域53Bとが設けられている。圧搾部Cは、平面視にて、凸状の湾曲形状と、凹状の湾曲形状と、が幅方向に隣接し、かつ前後方向に隣接して配置されている。圧搾部は、第1不織布層と第2不織布層とが積層された状態で、第2不織布側から第1不織布側に向かって圧縮されることによって形成されている。
【0035】
圧搾部は、ターゲット部の少なくとも一部の領域に設けられていればよく、ターゲット部の全体に設けられていてもよいし、一部の領域であってもよい。例えば、ターゲット部の全体面積に対する圧搾領域の面積比率は、25%〜60%とすることができる。
【0036】
圧搾領域53Aは、非圧搾領域53Bに比べて厚み方向の寸法が小さく、光が透過し易い。よって、ターゲット部50の印刷部54のうち、圧搾領域53Aに設けられた印刷部54の視認性を、非圧搾領域53Bの印刷部54の視認性よりも高くすることができる。具体的には、圧搾領域53Aの印刷部54がくっきりと表示され、非圧搾領域53Bの印刷部54が圧搾領域53Aに比べてぼんやりと表示される。よって、平面状に配置された印刷部54によって立体的な表示を実現することができる。
【0037】
図4に示すように、ターゲット部50には、圧搾領域53Aと非圧搾領域53Bとが設けられ、圧搾領域53Aの方が濃く表示される。また、印刷部54は、第1印刷部54Aと第2印刷部54Bとが設けられ、第2印刷部54Bの方が濃く表示される。この印刷部54の色と圧搾部Cの有無との組み合わせにより、4つのパターンで表示することができる。4つのパターンは、圧搾領域53Aに配置された第1印刷部54Aの表示態様と、非圧搾領域53Bに配置された第1印刷部54Aの表示態様と、圧搾領域53Aに配置された第2印刷部54Bの表示態様と、非圧搾領域53Bに配置された第2印刷部54Bの表示態様とである。
【0038】
印刷部54のうち比較的濃い第2印刷部54Bは、圧搾領域53Aと非圧搾領域53Bに跨って配置されている。濃い色によって着色された第2印刷部54Bを圧搾領域53Aと非圧搾領域53Bとに跨って配置することにより、圧搾部の有無によって厚みが異なる領域に跨って第2印刷部54Bを表示でき、立体的な装飾を施すことができる。
【0039】
例えば、圧搾領域53A及びその周囲に第2印刷部を設けると、印刷部によるデザインは明確に見えるが、圧搾領域と非圧搾領域の濃淡が明確になり過ぎ、印刷部によるデザインに加えて、圧搾領域の外形によるデザインが浮かび上がってしまう。また、ターゲット部の全体の色が濃くなるため、ターゲット部の立体感(嵩)がでないように見えてしまう。
【0040】
一方、圧搾領域及びその周囲に第1印刷部を設けると、印刷部によるデザインがぼやけてしまうことがあり、止着部材を止める位置を示す目印の機能を低下させてしまう。また、ターゲット部の全体の色が薄くなるため、ターゲット部の立体感(嵩)がでるように見える。
【0041】
しかし、本実施の形態に係るターゲット部のように、第2印刷部を部分的に圧搾領域に跨って配置することにより、デザイン性と立体感を両立することができる。さらに圧搾部を通して奥側に濃い色が表示されるので奥行きを出すことができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、第1印刷部及び第2印刷部を、圧搾領域及び非圧搾領域に跨るように配置しているが、少なくとも第2印刷部を圧搾領域及び非圧搾領域に跨るように配置すればよく、第1印刷部を圧搾領域のみに配置してもよいし、第1印刷部を非圧搾領域のみに配置してもよい。
【0043】
また、本実施の形態に係る第1印刷部の第1色と第2印刷部の第2色は、例えば、色差が12〜100の範囲となる関係が好ましい。このような色差となる関係であれば、第1色と第2色とによって濃淡を表示することができる。
【0044】
なお、色差は、例えば、以下の方法によって測定することができる。
【0045】
・測定機器
機種:CR−300
ヘッド仕様:板径40mm、穴径8mm
表色系:CIE 1976(L*a*b)
・測定方法
測定機器を用いて、白板(L:48.05, a:+2.50, b:+19.68)の上に印刷されたシートを配置し、印刷された面を測定面として測定し、校正白色値(Y:92、x:31.45、y:31.98)に対する色差を算出する。
【0046】
第2印刷部54Bは、止着部材の位置を合わせるための位置決め部として機能している。この位置決め部として機能する第2印刷部は、前後方向に延び、圧搾領域53Aと非圧搾領域53Bとに跨って配置されているため、位置決め部の視認性を高めることができる。位置決め部の視認性を高めることにより、お母さんが赤ちゃんのおむつを装着する際に止着部材を適切に装着し易くなり、また体の大きさに応じてどのくらいの位置につければいいのかを判断しやすくなり、操作性を向上させることができる。
【0047】
また、ターゲット部の面積に対する圧搾領域の面積の比率である圧搾比率は、20%〜55%が好ましく、より好適には35%〜50%であることが望ましい。例えば、圧搾比率が20%よりも低いと、印刷部の視認性が低下するおそれがあり、また止着部材を着脱した際に止着部材のフック部に引っ掛かって抜けてしまう繊維が増えてしまうおそれがある。一方、圧搾比率が55%よりも高いと、止着部材が引っ掛かり難くなるおそれがある。よって、圧搾比率は、印刷部の視認性や止着部材との掛かり態様を考慮して適宜設定することが望ましい。
【0048】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。