(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0017】
(成膜装置)
始めに、本発明の実施形態による成膜方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。
図1から
図3までを参照すると、この成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有するサセプタ2と、を備えている。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(
図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0018】
サセプタ2は、例えば石英により作製されており、中心部にて円筒形状のコア部21に固定されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は、真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(
図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0019】
サセプタ2の表面には、
図2及び
図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお
図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面とサセプタ2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0020】
図2及び
図3は、真空容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。
図2及び
図3に示すように、サセプタ2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、分離ガスノズル41,42、及びガス導入ノズル92が真空容器1の周方向(サセプタ2の回転方向(
図3の矢印A))に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(サセプタ2の回転方向)に、ガス導入ノズル92、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32がこの順番で配列されている。これらのノズル92、31、32、41、42は、各ノズル92、31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート92a、31a、32a、41a、42a(
図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿ってサセプタ2に対して水平に伸びるように取り付けられている。
なお、ガス導入ノズル92の上方には、
図3において、破線にて簡略化して示すようにプラズマ発生源80が設けられている。プラズマ発生源80については後述する。
【0021】
本実施形態においては、反応ガスノズル31は、不図示の配管及び流量制御器などを介して、第1の反応ガスとしてのSi(シリコン)含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、不図示の配管及び流量制御器などを介して、第2の反応ガスとしての酸化ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量制御バルブなどを介して、分離ガスとしての窒素(N
2)ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
本実施形態においては、Si含有ガスとして有機アミノシランガスが用いられ、酸化ガスとしてO
3(オゾン)ガスが用いられている。
【0022】
反応ガスノズル31、32には、サセプタ2に向かって開口する複数のガス吐出孔33が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたSi含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0023】
図2及び
図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、分離ガスノズル41、42とともに分離領域Dを構成するため、後述のとおり、サセプタ2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。また、凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0024】
図4は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32までサセプタ2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられているため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。また、高い天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらの反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、
図4に示すように、反応ガスノズル31が設けられる、高い天井面45の下方の空間を参照符号481で表し、反応ガスノズル32が設けられる、高い天井面45の下方の空間を参照符号482で表す。
【0025】
また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル41、42には、サセプタ2に向かって開口する複数のガス吐出孔41h(
図4参照)が、分離ガスノズル41、42の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。
【0026】
天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hをサセプタ2に対して形成している。分離ガスノズル42の吐出孔42hからN
2ガスが供給されると、このN
2ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、N
2ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るN
2ガスが、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、真空容器1内においてSi含有ガスと酸化ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0027】
なお、サセプタ2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の真空容器1内の圧力、サセプタ2の回転速度、供給する分離ガス(N
2ガス)の供給量などを考慮し、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。
【0028】
一方、天板11の下面には、サセプタ2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(
図2及び
図3)が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
【0029】
先に参照した
図1は、
図3のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している。一方、
図5は、天井面44が設けられている領域を示す断面図である。
図5に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、サセプタ2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面とサセプタ2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えばサセプタ2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0030】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては
図4に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、
図1に示すように例えばサセプタ2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、
図1から
図3に示すように、それぞれ、第1の排気口610及び第2の排気口620が形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図1に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお
図1中、参照符号650は圧力制御器である。
【0031】
サセプタ2と真空容器1の底部14との間の空間には、
図1及び
図4に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、サセプタ2を介してサセプタ2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。サセプタ2の周縁付近の下方側には、サセプタ2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画してサセプタ2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている(
図5)。このカバー部材71は、サセプタ2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられ、内側部材71aは、サセプタ2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0032】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、サセプタ2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるN
2ガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図5には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7とサセプタ2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英で作製することができる。
【0033】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN
2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5とサセプタ2との狭い隙間50を介してサセプタ2の凹部24側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0034】
さらに、真空容器1の側壁には、
図2、
図3に示すように、外部の搬送アーム10とサセプタ2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉される。またサセプタ2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、サセプタ2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0035】
次に、
図6から
図8までを参照しながら、プラズマ発生源80について説明する。
図6は、サセプタ2の半径方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図であり、
図7は、サセプタ2の半径方向と直交する方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図であり、
図8は、プラズマ発生源80の概略を示す上面図である。図示の便宜上、これらの図において一部の部材を簡略化している。
【0036】
図6を参照すると、プラズマ発生源80は、高周波透過性の材料で作製され、上面から窪んだ凹部を有し、天板11に形成された開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81と、フレーム部材81の凹部内に収容され、上部が開口した略箱状の形状を有するファラデー遮蔽板82と、ファラデー遮蔽板82の底面上に配置される絶縁板83と、絶縁板83の上方に支持され、略八角形の上面形状を有するコイル状のアンテナ85とを備える。
【0037】
天板11の開口部11aは複数の段部を有しており、そのうちの一つの段部には全周に亘って溝部が形成され、この溝部に例えばO−リングなどのシール部材81aが嵌め込まれている。一方、フレーム部材81は、開口部11aの段部に対応する複数の段部を有しており、フレーム部材81を開口部11aに嵌め込むと、複数の段部のうちの一つの段部の裏面が、開口部11aの溝部に嵌め込まれたシール部材81aと接し、これにより、天板11とフレーム部材81との間の気密性が維持される。また、
図6に示すように、天板11の開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81の外周に沿った押圧部材81cが設けられ、これにより、フレーム部材81が天板11に対して下方に押し付けられる。このため、天板11とフレーム部材81との間の気密性がより確実に維持される。
【0038】
フレーム部材81の下面は、真空容器1内のサセプタ2に対向しており、その下面の外周には全周に亘って下方に(サセプタ2に向かって)突起する突起部81bが設けられている。突起部81bの下面はサセプタ2の表面に近接しており、突起部81bと、サセプタ2の表面と、フレーム部材81の下面とによりサセプタ2の上方に空間(以下、内部空間S)が画成されている。なお、突起部81bの下面とサセプタ2の表面との間隔は、分離空間H(
図4)における天井面11のサセプタ2の上面に対する高さh1とほぼ同じであって良い。
【0039】
また、この内部空間Sには、突起部81bを貫通したガス導入ノズル92が延びている。ガス導入ノズル92には、本実施形態においては、
図6に示すように、アルゴン(Ar)ガスが充填されるアルゴンガス供給源93aと、酸素(O
2)ガスが充填される酸素ガス供給源93bと、水素含有ガスとしてのアンモニア(NH
3)ガスが充填されるアンモニアガス供給源93cとが接続されている。
【0040】
また、ガス導入ノズル92には、その長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)で複数の吐出孔92hが形成されており、吐出孔92hから上述のArガス等が吐出される。吐出孔92hは、
図7に示すように、サセプタ2に対して垂直な方向からサセプタ2の回転方向の上流側に向かって傾いている。このため、ガス導入ノズル92から供給されるガスは、サセプタ2の回転方向と逆の方向に、具体的には、突起部81bの下面とサセプタ2の表面との間の隙間に向かって吐出される。これにより、サセプタ2の回転方向に沿ってプラズマ発生源80よりも上流側に位置する天井面45の下方の空間から反応ガスや分離ガスが、内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。また、上述のとおり、フレーム部材81の下面の外周に沿って形成される突起部81bがサセプタ2の表面に近接しているため、ガス導入ノズル92からのガスにより内部空間S内の圧力を容易に高く維持することができる。これによっても、反応ガスや分離ガスが内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。
【0041】
ファラデー遮蔽板82は、金属などの導電性材料から作製され、図示は省略するが接地されている。
図8に明確に示されるように、ファラデー遮蔽板82の底部には、複数のスリット82sが形成されている。各スリット82sは、略八角形の平面形状を有するアンテナ85の対応する辺とほぼ直交するように延びている。
【0042】
また、ファラデー遮蔽板82は、
図7及び
図8に示すように、上端の2箇所において外側に折れ曲がる支持部82aを有している。支持部82aがフレーム部材81の上面に支持されることにより、フレーム部材81内の所定の位置にファラデー遮蔽板82が支持される。
【0043】
絶縁板83は、例えば石英ガラスにより作製され、ファラデー遮蔽板82の底面よりも僅かに小さい大きさを有し、ファラデー遮蔽板82の底面に載置される。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82とアンテナ85とを絶縁する一方、アンテナ85から放射される高周波を下方へ透過させる。
【0044】
アンテナ85は、平面形状が略八角形となるように銅製の中空管(パイプ)を例えば3重に巻き回すことにより形成される。パイプ内に冷却水を循環させることができ、これにより、アンテナ85へ供給される高周波によりアンテナ85が高温に加熱されるのが防止される。また、アンテナ85には立設部85aが設けられており、立設部85aに支持部85bが取り付けられている。支持部85bにより、アンテナ85がファラデー遮蔽板82内の所定の位置に維持される。また、支持部85bには、マッチングボックス86を介して高周波電源87が接続されている。高周波電源87は、例えば13.56MHzの周波数を有する高周波を発生することができる。
【0045】
このような構成を有するプラズマ発生源80によれば、マッチングボックス86を介して高周波電源87からアンテナ85に高周波電力を供給すると、アンテナ85により電磁界が発生する。この電磁界のうちの電界成分は、ファラデー遮蔽板82により遮蔽されるため、下方へ伝播することはできない。一方、磁界成分はファラデー遮蔽板82の複数のスリット82sを通して内部空間S内へ伝播する。この磁界成分により、ガス導入ノズル92から所定の流量比(混合比)で内部空間Sに供給されるArガス、O
2ガス、及びNH
3ガス等のガスからプラズマが発生する。このようにして発生するプラズマによれば、ウエハW上に堆積される薄膜への照射損傷や、真空容器1内の各部材の損傷などを低減することができる。
【0046】
また、本実施形態による成膜装置には、
図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の成膜方法を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0047】
(パーティクル低減方法)
次に、
図9及び
図10を参照しながら、本発明の実施形態によるパーティクル低減方法について、上述の成膜装置を用いて実施する場合を例に説明する。また、本実施形態においては、一つのロットのすべてのウエハWについての成膜が終了し、サセプタ2上にウエハWが載置されていないことを前提とする。また、搬送口15(
図2及び
図3)は不図示のゲートバルブにより閉じているものとする。
始めに、ステップS91(
図9)において、真空容器1内が所定の圧力に調整される。具体的には、真空ポンプ640により真空容器1を最低到達真空度まで排気した後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN
2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN
2ガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力調整器650により真空容器1内を予め設定した圧力に調整する。また、ステップS92において、サセプタ2が所定の回転速度で回転される。
【0048】
次に、ステップS93において、アルゴンガス供給源93aからガス導入ノズル92を通して所定の流量でプラズマ生成ガスとしてのArガスが内部空間Sに供給され、ステップS94において、高周波電源87からプラズマ発生源80のアンテナ85に高周波が例えば700Wの電力で供給される。これにより、内部空間Sにプラズマが生成される。
【0049】
サセプタ2の回転により、サセプタ2上の一つの凹部24が、プラズマ発生源80の下方に到達すると、その凹部24は、内部空間Sに生成されるプラズマに曝される。このとき、
図10(a)に示すようにプラズマ中の電子(e
−)が正イオン(ion
+)よりも早く凹部24の底面(サセプタ2)に到達するため、凹部24の底面が負に帯電する。これにより、凹部24の底面の上方には
図10(b)に示すようにシース領域SRが形成される。
【0050】
サセプタ2が更に回転すると、その凹部24はプラズマ発生源80の下方から離れるとともに、次の凹部24がプラズマ発生源80の下方に到達する。そして、同様に凹部24の底面が負に帯電する。
【0051】
このようにして、サセプタ2が一回転すると、すべての凹部24がプラズマ発生源80の下方を通過する際に、その底面(サセプタ2)は負に帯電する。この後、ステップS95において、高周波電源87からの高周波の供給を停止し、ガス導入ノズル92からの混合ガスの供給を停止することにより、本実施形態によるパーティクル低減方法が終了する。なお、サセプタ2の回転数は、1回に限らず、2回以上であっても良い。
【0052】
凹部24は、石英製のサセプタを例えば研削することにより形成されるため、底面には細かい凹凸が残っている場合がある。このような凹部24にウエハWを載置し、サセプタ2を回転すると、凹部24内でウエハWが動き、ウエハWの裏面と凹部24の底面とが擦れ合う。この場合、ミラー状に平坦なウエハWの裏面よりも凹部24の底面の方が削られ易く、その結果、石英の微粒子が発生する。この微粒子が凹部24の底面に付着していると、例えば凹部24にウエハWを載置するとき、又は凹部24からウエハWを取り上げるときに、凹部24の底面から飛散してウエハWの表面側に回りこみ、ウエハWの表面を汚染する場合がある。また、ウエハWの裏面に石英の微粒子が付着すると、例えばウエハWが収容されるウエハキャリア内において、隣接する他のウエハWの表面に付着し、このため、そのウエハWが汚染されることとなる。
【0053】
したがって、ウエハWの汚染を低減するためには、凹部24の底面に付着している石英の微粒子を除去する必要がある。ところが、石英の微粒子は、凹部24の底面がウエハWの裏面と擦れるときに生じるため、摩擦帯電により逆極性で凹部24の底面に付着している場合がある。また、石英の微粒子は、凹部24の底面に残る細かい凹凸の凹部に嵌り込んでいる場合もある。このため、石英の微粒子を例えばパージガスなどで除去することは容易ではない。また、サセプタ2は真空容器1内に配置されており、しかも、ウエハWの裏面とサセプタ2の凹部24の底面とが擦れ合うことにより微粒子が形成されるため、サセプタ2を洗浄することにより石英の微粒子を除去することも容易ではない。
【0054】
しかし、本実施形態のパーティクル低減方法によれば、凹部24の底面(サセプタ2)をプラズマに曝すことにより、
図10(b)に示すように、凹部24の底面も、底面に付着する微粒子Pも共に負に帯電することとなる。このため、
図10(c)に示すように、凹部24の底面と微粒子Pとの間に反発力が働き、微粒子Pは、凹部24の底面から容易に離脱し得る。凹部24の底面から離脱した微粒子Pは、Arガスとともに内部空間Sから排出され、真空容器1内を流れるN
2ガス(分離ガス)とともに第2の排気口620(
図3)から排気される。したがって、凹部24の底面の石英の微粒子Pが効果的に除去され、サセプタ2の凹部24から発生するパーティクルを低減することができる。
【0055】
また、本実施形態によるパーティクル低減方法によれば、真空容器1を分解してサセプタ2を洗浄する必要がないため、容易且つ短時間の作業でパーティクルを低減することができる。さらに、本実施形態によるパーティクル低減方法は、例えば一つのロットのすべてのウエハWに成膜し、次のロットのウエハWに成膜を始めるまで期間や、成膜装置がアイドル状態のときなど、サセプタ2上にウエハWが載置されていないときに実施できるため、成膜装置のスループットを低下させることがない。
【0056】
なお、Arガスによりプラズマを生成した場合には、石英を分解(又はエッチング)することはできない。また、サセプタ2の凹部24以外の部分に酸化シリコン膜が堆積されたとしても、その酸化シリコン膜が、Arガスのプラズマによって分解等されることもない。したがって、本実施形態によるパーティクル除去の効果は、サセプタ2に堆積される酸化シリコン膜の除去によりもたらされるものではなく、上述のとおり、凹部24の底面に付着している微粒子が、その底面と同じく負に帯電するために除去されると考えられる。
【0057】
以上、幾つかの実施形態及び実施例を参照しながら本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更が可能である。
【0058】
例えば、プラズマによって、サセプタ2の凹部24の底面(及びその底面に付着する微粒子)を帯電させることができる限りにおいて、Arガスの代わりに他のプラズマ生成ガスを用いても構わない。この場合にあっても、サセプタ2に対して反応性を有しないガスをプラズマ生成ガスとして使用して良い。
【0059】
また、ステップS91に先だって、サセプタ2上にウエハWが載置されていないことを確認するステップを行っても良い。この確認は、例えば真空容器1に設けられるウエハ位置検出装置により行うことができる。また、上述の昇降ピンを用いた、凹部24に載置されるウエハWを搬送アーム10(
図3)へ受け渡す動作により行うことができる。具体的には、サセプタ2を回転することにより凹部24の一つを搬送口15(
図3)に臨む位置に配置し、上述の昇降ピンを貫通孔を通してサセプタ2の上方に突出させる。次いで、搬送口15を通して搬送アーム10(
図3)を真空容器1内へ挿入し、昇降ピンを下げる。凹部24にウエハWがなかった場合には、搬送アーム10はウエハWを受け取ることができず、その事実は、例えば搬送アーム10に設けられたセンサにより検出される。すなわち、その凹部24にウエハWが載置されていないことが検出される。
【0060】
また、上述の実施形態においては、石英製のサセプタ2を有する成膜装置に対しパーティクル低減方法を実施する場合を説明したが、サセプタ2は石英製に限定されず、例えばカーボンやシリコンカーバイド(SiC)などの絶縁物により作製されて良い。また、表面がSiCでコーティングされたカーボン製のサセプタ2を用いても構わない。このような絶縁物から作製されるサセプタ2がプラズマに曝されると、その表面が負に帯電するため、上述の効果と同様の効果が奏される。
【0061】
上述の実施形態において、プラズマ発生源80は、アンテナ85を有するいわゆる誘導結合プラズマ(ICP)源として構成されたが、容量性結合プラズマ(CCP)源として構成されても良い。