特許第5993182号(P5993182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993182
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】発酵乳およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/123 20060101AFI20160901BHJP
   A23C 9/142 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
   A23C9/123
   A23C9/142
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-85252(P2012-85252)
(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2013-212095(P2013-212095A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 真
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雅子
(72)【発明者】
【氏名】大井 航
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/116686(WO,A1)
【文献】 特開2002−253116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無脂乳固形分が12.1〜15.0重量%、炭水化物が6.7〜8.4重量%、カ ルシウム/ナトリウムの含有比が3.0〜4.8であることを特徴とする発酵乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無脂乳固形分含量、炭水化物含量およびミネラル組成を調整して、乳の濃厚さがあり、酸味・甘味・塩味のバランスに優れた、なめらかで口解けが良い発酵乳およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロシアの免疫学者でノーベル医学生理学賞を受賞したメチニコフが発酵乳の一種であるブルガリアのヨーグルトに健康増進効果があると主張して以来、健康を訴求する世界中の人々から発酵乳は注目を浴びる存在となった。近年、わが国においても健康増進を求める風潮の高まりに合わせ、発酵乳の消費が堅調に増加している。加えて、消費者の嗜好のバラエティー化に伴い、多種多様な発酵乳が求められており、その一つが発酵乳への濃厚感の付与である。濃厚な発酵乳とは、風味が強く、粘性があり、硬度が高い発酵乳である。
【0003】
発酵乳に濃厚感を付与するための物性改善方法としては、粘性物質を産出する乳酸菌を使用して発酵乳に高い粘性を付与する方法や、寒天やゼラチン、ペクチン、増粘多糖類などの安定剤を添加することにより、発酵乳の硬度の上昇、離水の抑制、粘度の上昇などといった効果を付与する方法が知られている。
【0004】
また、乳由来の原料で発酵乳の濃厚感を付与する方法としては、乳タンパク質濃縮物や脱乳糖パーミエイトを配合することで発酵乳の物性をコントロールする方法(特許文献1)、原料として逆浸透膜で濃縮した全脂乳を用いた静置発酵型濃厚ヨーグルトを製造する方法(特許文献2)、分画分子量が6000〜80000の限外濾過膜を用いて処理した乳原料から調製した発酵乳の製造方法(特許文献3)およびカード形成後に膜処理することを特徴とするソフトタイプの発酵乳(特許文献4)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-28056号公報
【特許文献2】特開平6-14707号公報
【特許文献3】特開平1-112947号公報
【特許文献4】特開2005-318855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発酵乳に濃厚感を付与するために粘性物質を産出する乳酸菌を用いる方法では、使用できる乳酸菌が限定される。安定剤により物性を改善する方法では、発酵乳の風味を損なう恐れがあり、また、近年では、天然由来の原料を嗜好する傾向が高まっていることもあるため、発酵乳に安定剤を添加することは必ずしも好ましくない。特許文献1に記載の方法は、原材料として乳タンパク質濃縮物や脱乳糖パーミエイトを配合することにより、発酵乳に適度な硬度の付与、滑らかな組織、離水量の低減といった物性改善効果を付与しているが、風味が好ましくない。特許文献2の方法では、逆浸透膜で濃縮した全脂乳を用いてヨーグルトを製造しているが、逆浸透膜ではナトリウムやカリウム、塩素等が濃縮されるため、塩味が際立つ発酵乳となる。特許文献3および特許文献4の方法では、原材料を濃縮することで適度な粘度と乳の濃厚な味わいを持つ発酵乳となるが、濃縮の際に精密濾過膜および限外濾過膜を用いると、乳糖が透過することで無脂乳固形分(以下SNF)当たりの乳糖割合が減少して、発酵乳の甘みが損なわれる。
【0007】
本発明は、新規の発酵乳およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、発酵乳のSNF含量、炭水化物含量およびカルシウム/ナトリウム含有比に着目して鋭意研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)無脂乳固形分(SNF)が12.1〜15.0重量%、炭水化物が6.7〜8. 4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有比が3.0〜4.8であることを特徴とす る発酵乳。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、乳の濃厚さを有し、酸味・甘味・塩味のバランスに優れた、なめらかで口解けが良い発酵乳を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の発酵乳は、乳および乳製品を原料とし、加水してからナノ濾過(以下NFという)膜で濃縮する方法もしくはNF膜で濃縮した後に加水する方法にて原料ミックスを調製し、この原料ミックスを用いて発酵乳を製造することにより得られる。詳しくは、NF膜濃縮前に水を添加して希釈する方法とNF膜濃縮後にダイアフィルトレーションを行う方法があるが、いずれにおいても脱塩を促進させて、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率を変化させることができる。ダイアフィルトレーションとは、供給液を溶媒(主に水)で希釈しながらろ過することにより、溶媒と低分子物質を透過させて、目的とする物質を精製する方法である。供給液量と同量の水を添加すると、ダイアフィルトレーション1倍と定義した。この方法により調製した原料ミックスを用いることにより、本発明品の、無脂乳固形分(SNF)が10.0〜15.0重量%、炭水化物が5.5〜8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有比が3.0〜5.2であることを特徴とする発酵乳が得られる。
【0012】
原料乳の濃縮の際に用いるNF膜は、限外濾過膜と逆浸透膜の中間領域である分子量数10ダルトンから1000ダルトンを分画対象とする膜であり、水とNaやClなどの一価のイオンを選択的に透過する性質を有する。本発明で用いるNF膜としては、DK(GE-W&PT社製)、DL(GE-W&PT社製)、NF245(Dow Chemical社製)、Alfa Laval NF97(Alfa Laval社製)、Alfa Laval NF99(Alfa Laval社製)、Alfa Laval NF99 HF(Alfa Laval社製)等を例示することができるが、これらに限定されるものではなく、通液する溶液の状態で適宜選択すればよい。NF膜濃縮温度は1℃〜50℃、好ましくは3℃〜45℃の範囲で実施するが、選択する膜種に応じて適宜設定する。NF膜モジュールにおける圧力損失、膜間差圧、洗浄条件は使用するNF膜に応じて設定する。一般的にNF膜設備は、原液タンク、高圧ポンプ、NF膜から構成されている。
【0013】
本発明では、原料ミックス調製後の工程は一般的な発酵乳の製造方法に準じる。すなわち、以下の方法によって発酵乳を製造する。原料ミックスをホモミキサーで適宜混合した後、均質圧0〜500kg/cmで均質処理する。次いで、均質化した原料ミックスを殺菌する。殺菌は、プレート式熱交換機、チューブラー式殺菌機、ジャケット付タンク等を用いることができ、70〜140℃で、1秒〜30分間行えばよく、好ましくは90〜95℃で1分〜10分間行うとよい。その後、プレート式熱交換機、チューブラー式冷却機、ジャケット式タンク等を用いて、40〜50℃に冷却する。冷却した原料ミックスに乳酸菌スターターを1〜8重量%添加し、用いる乳酸菌の生育に好適な温度(32〜43℃前後)にて保持し、1〜24時間程度、好ましくは2〜5時間程度発酵させて、静置型発酵乳とする。このとき、使用する乳酸菌スターターとしては、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・アシドフィルス 、ラクトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・サーモフィラス等、発酵乳の製造に通常用いられている乳酸菌スターターであれば特に制限されることはない。また市販の乳酸菌スターターも用いることができる。必要に応じて、得られた静置型発酵乳を破砕して容器に充填して、攪拌型発酵乳とする。破砕方法としては、均質機、撹拌、目皿などを使用して組織を微細化する方法を用いることができる。
【0014】
本発明において、「発酵乳」とは、牛乳等の獣乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌、ビフィズス菌、酵母で発酵させたものである。発酵乳を性状と製法により分類すると1)静置型発酵乳、2)攪拌型発酵乳、3)液状発酵乳に分けられる。この1)静置型発酵乳は、ハードタイプの発酵乳と称され、小売容器に充填して発酵させたプリン状の組織を有するものであり、以下のように製造される。まず、乳、乳製品、ショ糖、安定剤等の原材料を混合・溶解して調製した原料ミックスを均質化、殺菌、冷却した後、乳酸菌スターターを接種し、容器に充填して密封してから培養室や発酵トンネル内で発酵させ、適度な酸度になった時点で直ちに 5℃に冷却して発酵を終了させ、最終製品とする。2)攪拌型発酵乳は、ソフトタイプの発酵乳とも称され、原料ミックスに乳酸菌スターターを添加し、タンクで発酵後、カードを破砕して容器に充填して、最終製品とする。3)液状発酵乳は原料ミックスを攪拌型発酵乳と同様の方法で発酵させ、カードを破砕後に均質化して液状にした発酵乳を最終製品とする。本発明においては、上記のものを総称して発酵乳と称する。
【0015】
本発明において、発酵乳の原料となる乳および乳製品は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)の「乳」および「乳製品」に該当するものである。すなわち、「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいい、「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分3.0%以上を含むものに限る。)及び乳飲料をいう。
本発明では「乳」および「乳製品」をそのまま、あるいは希釈して、調製する。生乳を用いる場合、望ましくは、生乳を遠心分離機でクリームと分離した脱脂乳を原料に使用する。
【0016】
成分分析は、以下の方法で行った。
水分:乾燥減量法
タンパク質:ケルダール法
脂質:レーゼ・ゴットリーブ法
灰分:550℃で加熱し、残留物質量を測定
炭水化物:差し引き法
ナトリウム、カルシウム:ICP法
【0017】
次に本発明の具体例を実施例として示すが、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。なお、実施例における百分率は全て重量%である。
【実施例1】
【0018】
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)で1.4倍濃縮後、ダイアフィルトレーション0.1倍、0.3倍、0.6倍、0.9倍を実施した。膜濃縮温度は10℃とした。この濃縮乳にクリーム(脂肪分45重量%)を添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。原料ミックスを65℃まで昇温させ、溶解液を均質機にかけた。次いで、95℃まで昇温して5分間の殺菌後、42℃に冷却した。これに乳酸菌スターターを3.0重量%添加した。42℃付近で発酵させ、pH4.75になったところで、5℃まで冷却し、静置型発酵乳を得た。得られた発酵乳はSNFが12.1重量%、炭水化物が6.7重量%であり、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率がそれぞれ3.0(実施例品1)、3.5(実施例品2)、3.9(実施例品3)および4.4(実施例品4)であった。
【0019】
〔比較例1〕
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプの逆浸透膜(RO−3838/30−FF、Dow Chemical社製)で1.4倍濃縮した。この濃縮乳にクリーム(脂肪分45重量%)を添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以後の工程は実施例1と同様に実施し、SNFが12.1重量%、炭水化物が6.7重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が2.7の静置型発酵乳を得た(比較例品1)。
【0020】
〔比較例2〕
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)で1.4倍濃縮後、ダイアフィルトレーション1.6倍を実施した。この濃縮乳にクリーム(脂肪分45重量%)を添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以後の工程は実施例1と同様に実施し、SNFが12.1重量%、炭水化物が6.7重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が6.1の静置型発酵乳を得た(比較例品2)。
【0021】
〔試験例1〕
実施例品1〜4および比較例品1〜2について、官能評価を行った。乳の濃厚感があり、酸味・塩味・甘味のバランスが優れた、なめらかで口解けが良い発酵乳であるかを総合的に判断し、大変良い:5点、やや良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、悪い:1点として採点した。評価は8名のパネラーにて行い、平均点を算出し、総合評価点3点以上を良好な風味とした。官能評価の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から、実施例品1〜4はすべてが3点以上の評価で良好であったが、比較例1および2については評価が2.67および2.00で好ましくない結果であった。発酵乳のSNFが12.1重量%、炭水化物が6.7重量%においては、カルシウム/ナトリウムの含有比が3.5〜4.4の時に好ましい結果が得られた。
【実施例2】
【0024】
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)で1.9倍濃縮後、ダイアフィルトレーション0.5、0.7、0.9、1.1倍を実施した。膜濃縮温度は10℃とした。この濃縮乳に脂肪分45重量%のクリームを添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスに調製した。原料ミックスを65℃まで昇温させ、溶解液を均質機にかけた。次いで、95℃まで昇温して5分間の殺菌後、42℃に冷却した。これに乳酸菌スターターを3.0重量%添加した。42℃付近で発酵させ、pH4.75になったところで、撹拌によりカードを破砕し、5℃まで冷却して攪拌型発酵乳を得た。得られた発酵乳はSNFが15.0重量%、炭水化物が8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が4.0、4.5、4.8、5.2であった。これらの発酵乳をそれぞれ実施例品5〜8とした。
【0025】
〔比較例3〕
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプの逆浸透膜(RO−3838/30−FF、Dow Chemical社製)で1.9倍濃縮した。この濃縮乳に脂肪分45重量%のクリームを添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以後の工程は実施例2と同様に実施し、SNFが15.0重量%、炭水化物が8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が2.7の攪拌型発酵乳を得た(比較例品3)
【0026】
〔比較例4〕
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)で1.9倍濃縮後、ダイアフィルトレーション1.6倍を実施したこの濃縮乳に脂肪分45重量%のクリームを添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以後の工程は実施例2と同様に実施し、SNFが15.0重量%、炭水化物が8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が6.4の攪拌型発酵乳を得た(比較例品4)。
【0027】
〔試験例2〕
実施例品5〜8および比較例品3、4について、官能評価を行った。評価方法は試験例1と同様にして行い、総合評価点3点以上を良好な風味とした。官能評価の結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表2の結果から、実施例品5〜8については3点以上の評価で良好であったが、比較例3および4については評価が2.33および1.67で好ましくない結果であった。発酵乳のSNFが15.0重量%、炭水化物が8.4重量%においては、カルシウム/ナトリウムの含有比が4.0〜5.2の時に好ましい結果が得られた。
【実施例3】
【0030】
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳に対して2.1倍、1.9倍、1.6倍の水を添加後、スパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)でそれぞれ2.5、2.8、3.0倍濃縮した。膜濃縮温度は10℃とした。この濃縮乳にクリーム(脂肪分45重量%)を添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以降の工程は実施例1と同様に実施し、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率がそれぞれ3.8〜4.0であり、SNFが10.0重量%かつ炭水化物が5.5重量%、SNFが12.1重量%かつ炭水化物が6.7重量%、SNFが15.0重量%かつ炭水化物が8.4重量%の静置型発酵乳を得た。これら発酵乳をそれぞれ実施例品9〜11とした。
【0031】
〔比較例5〕
生乳を50℃に加温後、遠心分離装置を用いて脱脂乳を調製した。この脱脂乳に対比で2.8倍、1.3倍の水を添加後、スパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)でそれぞれ2.9倍、2.7倍濃縮した。膜濃縮温度は10℃とした。この濃縮乳にクリーム(脂肪分45重量%)を添加して、脂肪分が4.0重量%の原料ミックスを調製した。以後の工程は実施例1と同様に実施し、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が4.0、SNFが8.7重量%かつ炭水化物が4.7重量%、SNFが17.0重量%かつ炭水化物が9.6重量%の発酵乳を得た。(比較例品5、比較例品6)
【0032】
〔試験例3〕
実施例品9〜11および比較例品5、6について、官能評価を行った。評価方法は試験例1と同様にして行い、総合評価点3点以上を良好な風味とした。官能評価の結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
表3の結果から、実施例品9〜11ついては3点以上の評価で良好であったが、比較例5および6については評価が1.33および2.33で好ましくない結果であった。発酵乳のカルシウム/ナトリウムの含有比が3.8〜4.0において、SNFが10.0〜15.0重量%、炭水化物が5.5〜8.4重量%の時に好ましい結果が得られた。
【実施例4】
【0035】
脱脂粉乳(雪印メグミルク社製)を5重量%、8重量%で水に加えて、常温で溶解撹拌した。この調製乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)でそれぞれ2倍、1.25倍濃縮した。膜濃縮温度は10℃とした。濃縮液を65℃まで昇温させ、溶解液を均質機にかけた。以後の工程は実施例1と同様に実施し、SNFが10.0重量%、炭水化物が5.5重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率がそれぞれ3.0および3.6の発酵乳を調製した。これら発酵乳をそれぞれ実施例品12〜13とした。
【0036】
〔比較例6〕
脱脂粉乳(雪印メグミルク社製)を10重量%で水に加えて、常温で溶解撹拌した。濃縮液を65℃まで昇温させ、溶解液を均質機にかけた。以後の工程は実施例1と同様に実施し、SNFが10.0重量%、炭水化物が5.5重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が2.7の発酵乳を得た。(比較例品7)
【0037】
〔比較例7〕
脱脂粉乳(雪印メグミルク社製)を2重量%で水に加えて、常温で溶解撹拌した。この調製乳をスパイラルタイプのNF膜(DK、GE−W&PT社製)で5倍濃縮した。膜濃縮温度は10℃とした。濃縮液を65℃まで昇温させ、溶解液を均質機にかけた。以後の工程は実施例1と同様に実施し、SNFが10.0重量%、炭水化物が5.5重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率が5.3の発酵乳を調製した。(比較例品8)
【0038】
〔試験例4〕
実施例品12〜13および比較例品7〜8について、官能評価を行った。評価方法は試験例1と同様にして行い、総合評価点3点以上を良好な風味とした。官能評価の結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果から、実施例品12〜13ついては3点以上の評価で良好であったが、比較例7および8については評価が2.67および2.33で好ましくない結果であった。発酵乳のSNFが10.0重量%および炭水化物が5.5重量%においては、カルシウム/ナトリウムの含有比が3.0〜3.6の時に好ましい結果が得られた。
【0041】
乳の濃厚さがあり、酸味・甘味・塩味のバランスに優れた、なめらかで口解けが良い発酵乳として、官能評価の総合評価点3点を目安とすると、SNFは10.0〜15.0重量%、炭水化物は5.5〜8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率は3.0〜5.2の範囲にすることが望ましいと判断した。より好ましくは、総合評価点4点を目安とすると、SNFが12.1〜15.0重量%、炭水化物が6.7〜8.4重量%、カルシウム/ナトリウムの含有量の比率は3.0〜4.8の発酵乳であった。