【文献】
James F.Buckwalter,et al.,Cancellation of Crosstalk-Induced Jitter,IEEE Journal of Solid-State Circuits,2006年 3月,Volume:41 , Issue: 3,p.621-632
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して実施例について説明する。
図1は、ジッタ耐性試験システムを説明する図である。
【0015】
本実施例のジッタ耐性試験システム100は、ジッタ耐性試験装置200、プローブカード300、プローブカードアダプタ400を有する。
【0016】
ジッタ耐性試験装置200は、クロストーク誘起ジッタ(CIJ;Crosstalk-Induced Jitter)補償付信号発生ユニット210、制御ユニット220、解析ユニット230を有する。CIJ補償付信号発生ユニット210は、ジッタ耐性試験を行うための試験信号(擬似ランダム・ビット・シーケンス信号;PRBS信号)をプローブカード300へ出力する。本実施例の試験信号は、CIJ補償付信号発生ユニット210によりCIJ補償が施された信号である。CIJ補償付信号発生ユニット210の詳細は後述する。制御ユニット220は、CIJ補償付信号発生ユニット210を制御する。解析ユニット230は、プローブカード300から出力されるジッタ耐性試験の結果のステータス信号を解析する。
【0017】
プローブカード300は、CIJ補償付信号発生ユニット210と、同軸ケーブル310及びマイクロストリップ伝送線路(以下、単に伝送線路と呼ぶ。)320〜329を介して接続されており、CIJ補償付信号発生ユニット210からの試験信号が入力される。またプローブカード300は、試験対象デバイスと接続されるプローブ端子340、350を有する。
【0018】
プローブ端子340は、伝送線路320〜329を介して伝送される試験信号を試験対象デバイスに伝送する。本実施例の試験信号は、高速データ信号である。プローブ端子350は、一端が同軸ケーブル350と接続されており、試験対象デバイスから出力されるステータス信号を解析ユニット230へ伝送する。本実施例のステータス信号は、試験信号に比べて低速の信号である。
【0019】
プローブカードアダプタ400は、CIJ補償用LSI(Large Scale Integration)410を有する。CIJ補償用LSI410は、プローブ端子340、350と接続されるプローブ接続用端子420を有する。
【0020】
本実施例のプローブカードアダプタ400は、CIJ補償を行う際に、プローブカード300と接続される。本実施例では、プローブカード300とプローブカードアダプタ400のCIJ補償用LSI410とが接続されて、CIJ補償が行われた後に、プローブカード300に試験対象デバイスが接続され、ジッタ耐性試験が行われる。
【0021】
このように本実施例では、CIJ補償を行ってから試験対象デバイスのジッタ耐性試験を行うため、伝送線路320〜329から出力される信号のCIJを低減した状態でジッタ耐性試験を行うことができる。
【0022】
尚本実施例では、ジッタ耐性試験システム100としたが、これに限定されない。後述するCIJ補償は、マイクロストリップ伝送線路を介して高速データ信号の伝送を行う伝送システムに適用できる。この場合、ジッタ耐性試験装置200は、高速データ信号を伝送する伝送装置に該当し、CIJ補償用LSI410は高速データ信号の受信装置に該当する。
【0023】
次に本実施例のCIJ補償について説明する。
【0024】
図2は、CIJ補償を説明する図である。
【0025】
本実施例は、CIJ補償付信号発生ユニット210と、CIJ補償用LSI410とが伝送線路320〜329を介して接続されている。
【0026】
本実施例では、CIJ補償付信号発生ユニット210は、CIJ補償を行うための遅延デバイスを有し、試験信号をCIJ補償用LSI410に送信しつつ、プローブカード300の伝送線路320〜329で発生したCIJをキャンセルするために最適な遅延時間を調整する。そして調整された最適な遅延時間がCIJ補償付信号発生ユニット210の遅延デバイスに設定される。
【0027】
具体的にはCIJ補償用LSI410は、隣接チャンネル間の位相差を制御電圧(遅延制御信号)に変換してCIJ補償付信号発生ユニット210にフィードバックする。本実施例では、このフィードバックによりDLL(Delay Locked Loop)が形成される。CIJ補償付信号発生ユニット210では遅延制御信号を受け取り、遅延デバイスの遅延時間を制御する。
【0028】
本実施例のCIJ補償用LSI410は、ここで形成されるDLLにおいて隣接チャンネル間の位相差が所定値以下になると、CIJ補償付信号発生ユニット210に対してロック信号を出力する。すなわちロック信号が出力されたとき、遅延デバイスには隣接チャンネル間の位相差が所定値以下となる遅延時間が設定されていることになる。本実施例では、全てのチャンネルについてロック信号が出力されたとき、遅延デバイスの遅延時間の調整が完了したものとし、CIJ補償用の遅延時間を遅延デバイスに設定する。
【0029】
本実施例の伝送線路320〜329は、全ての伝送線路において伝播時間が同じになるように配線長を揃え、配線長を揃えるミアンダ配線は長さを最小限として同軸ケーブル310が接続される同軸コネクタの付近に配置した。さらに本実施例の伝送線路320〜329は、各配線間の間隔が等しくなるようにした。
【0030】
次に、伝送線路間で発生するCIJについて説明する。
図3は、マイクロストリップ伝送線路間で生じるCIJを説明する第一の図である。
図3では、伝送線路が2本の場合を示している。
図3(A)は伝送線路の模式図であり、
図3(B)は発生するCIJの変化を示している。
【0031】
図3(A)では、信号源1から伝送線路1により信号を伝送し、信号源2から伝送線路2により信号を伝送する。ここでCIJは、信号源1,2から出力される信号の極性により変化する。
【0032】
例えば信号源1から出力される信号の極性と信号源2から出力される信号の極性が同じ場合、伝送線路1と伝送線路2間のモードは、位相が同じ信号を扱うEven(同相)モードとなる。また信号源1から出力される信号の極性と信号源2から出力される信号の極性が異なる場合、伝送線路1と伝送線路2間のモードは、位相が180度異なる信号を扱うOdd(差動)モードとなる。
【0033】
伝送線路1,2間のモードがEvenモードの場合、伝送線路1の遠端に発生するCIJ及び伝送線路2の遠端に発生するCIJは共に+teである。伝送線路1,2間のモードがOddモードの場合、伝送線路1の遠端に発生するCIJ及び伝送線路2の遠端に発生するCIJは共に−toである。尚+teと−toは、クロストークを受けずに信号が伝播される際の伝播時間に対する各モードにおける時間偏差であり、te=toである。
【0034】
すなわち
図3の例では、2つの伝送線路間のモードがEvenモードである場合、クロストークを受けない場合の伝播時間よりもte遅い(+te)タイミングで信号が伝送される。よってこの時間偏差をキャンセルするためには、この伝播時間をte早める(-te)ように遅延時間を設定にすれば良い。また2つの伝送線路間のモードがOddモードである場合、クロストークを受けない場合の伝播時間よりもto早い(-to)タイミングで信号が伝送される。よってこの時間偏差をキャンセルするためには、伝播時間をto遅く(+to)するように遅延時間を設定にすれば良い。
【0035】
図4は、マイクロストリップ伝送線路間で生じるCIJを説明する第二の図である。
図4では、伝送線路が3本の場合を示している。
図4(A)は伝送線路の模式図であり、
図4(B)は発生するCIJの変化を示している。
【0036】
図4(A)では、信号源1から伝送線路1により信号を伝送し、信号源2から伝送線路2により信号を伝送し、信号源3から伝送線路3により信号を伝送する。
【0037】
図4の例では、伝送線路2は、両隣の伝送線路1,3の両方から影響を受ける。したがってCIJの変化は伝送線路が2本の場合と異なる。
【0038】
図4では、信号源1から出力される信号の極性と信号源2から出力される信号の極性とが同じである場合、伝送線路1と伝送線路2間のモードはEvenモードである。また信号源2から出力される信号の極性と信号源3から出力される信号の極性とが同じである場合、伝送線路2と伝送線路3間のモードはEvenモードである。本実施例では、この場合をEven−Evenモードと呼ぶ。
【0039】
Even−Evenモードの場合、伝送線路1と伝送線路3のCIJは+teである。伝送線路2のCIJは、伝送線路1,3からの影響があるため、概ね+2teとなる。
【0040】
また本実施例では、伝送線路1と伝送線路2間のモードがEvenモードであり、伝送線路2と伝送線路3間のモードがOddモードである場合、Even−Oddモードと呼ぶ。Even−Oddモードの場合、伝送線路2のCIJは、伝送線路1から受ける影響が+teであり、伝送線路3から受ける影響が−toであるためにお互いが相殺され、0となる。伝送線路1と伝送線路2間のモードがOddモードであり、伝送線路2と伝送線路3間のモードがEvenモードであるOdd−Evenモードの場合も同様に、伝送線路2のCIJは0となる。
【0041】
また伝送線路1と伝送線路2間がOddモードであり、伝送線路2と伝送線路3間もOddモードである場合、伝送線路2のCIJは−2toとなる。
【0042】
図4(B)の例によれば、伝送線路2のように両隣に伝送線路が配置されている場合、伝送線路2は両隣の伝送線路のクロストークの影響を受けるため、時間偏差が大きくなることがわかる。
【0043】
本実施例では、伝送線路間のモードに対応したCIJの変化に着目し、このCIJをキャンセルするために最適な遅延時間を設定することで、CIJを低減する。
【0044】
次にCIJ補償付信号発生ユニット210の構成について説明する。
図5は、CIJ補償付信号発生ユニットの機能構成を説明する図である。
【0045】
本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、クロック生成部211、補償部212、DDJ(Data Dependent Jitter)フィルタ213を有する。本実施例のクロック生成部211は、Gaussian Noise Generator(以下、ランダムジッタ生成部)221、結合器222、Signal/Function Generator(以下、周期的ジッタ生成部)223、パルス生成部224を有する。ランダムジッタ生成部221は、ランダムジッタを発生させる。ランダムジッタは結合器222へ出力される。周期的ジッタ生成部223は周期的ジッタを生成する。周期的ジッは、パルス生成部224へ入力される。パルス生成部224は、周期的ジッタが重畳されたパルス信号を出力する。パルス生成部224から出力されたパルス信号は、結合器222においてランダムジッタが重畳されて、補償部212へ出力される。
【0046】
DDJフィルタ213は、補償部212から出力された信号にデータ依存型のジッタを発生させる。
【0047】
以下に
図6を参照して本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210の回路構成を説明する。
図6は、CIJ補償付信号発生ユニットの回路構成を説明する図である。
【0048】
本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、
図4で示したCIJの逆符号に相当する時間偏差をプローブカード300に入力する前の試験信号に予め付加する。本実施例ではこの構成により、プローブカード300の伝送線路320〜329から出力される信号のCIJをキャンセルする。本実施例では、10本の伝送線路320〜329を対象に、3本を単位としてCIJのキャンセルを行う。すなわち本実施例では、伝送線路320〜329の各線路において、両隣の線路の影響をキャンセルする。
【0049】
本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、クロック生成部211から出力された基準クロックが入力される入力バッファアンプCB11、CB12、CB21、CB22、CB31、CB32、CB41、CB42、CB51、CB52を有する。本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210では、各入力バッファアンプに対応して、入力バッファアンプから入力される基準クロックを遅延させる遅延デバイス241、251、242、252が設けられている。遅延デバイス241、251は、出力側に設けられた出力側遅延デバイスであり、遅延デバイス242、252は入力側に設けられた入力側遅延デバイスである。また遅延デバイス241、242は、後述するモード検出部のEven信号が有効になった際に遅延時間が設定されるものであり、遅延デバイス251、252は、後述するモード検出部のOdd信号が有効になった際に遅延時間が設定されるものである。
【0050】
本実施例の遅延デバイス241、251、242、252は、プローブカード300で生じるCIJを事前に補償するCIJ補償用の遅延時間が設定される。遅延時間は制御電圧で可変されるか又は切換器等により変更される。制御電圧は、CIJ補償用LSI410から出力される遅延制御信号により与えられる。本実施例の遅延デバイス241、251、242、252は、例えばインバータ等のロジックデバイスをデイジーチェーン接続し、制御電圧に応じて、出力タップを切り替える方法や、駆動電流を変える方式の遅延デバイス等により実現される。
【0051】
また本実施例の遅延デバイス241、251、242、252は、制御電圧の設定により、遅延時間Tdを基準値(中心値)として、CIJ補償の最大値を示す+to_max、−te_maxまで可変することができる。
【0052】
本実施例では、伝送線路320〜329から出力される信号のうち何れかの隣接する2チャンネルがEvenモードである際のCIJによる時間偏差を+teとしたとき、この時間偏差に対応するCIJ補償用の遅延時間tcompを−tceとする。同様に伝送線路320〜329から出力される信号のうち何れかの2隣接する2チャンネルが信号がOddモードである際のCIJによる時間偏差を−toとしたとき、この時間偏差に対応するCIJ補償用の遅延時間tcompを+tcoとする。
【0053】
また本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210では、パターン生成部PG11、PG12、PG21、PG22、PG31、PG32、PG41、PG42、PG51、PG52を有する。各パターン生成部は、クロック生成部211が発生する基準クロックに同期してランダムなデータパターン信号を生成する。
【0054】
また本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、モード検出部MD12、MD21、MD22、MD31、MD32、MD41、MD42、MD51、MD52を有する。各モード検出部は、隣接する2チャンネル間のデータパターン信号のモードを検出する。
【0055】
また本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、遅延制御部243、253、244、254を有する。遅延制御部243、253は、出力側に設けられた遅延デバイス241、251の遅延時間を設定する。遅延制御部244、254は、入力側に設けられた遅延デバイス242、252の遅延時間を設定する。言い換えれば本実施例の遅延制御部243、244は、モード検出部のEven信号が有効になった際に遅延デバイス241、242の遅延時間を制御する。本実施例の遅延制御部253、254は、モード検出部のOdd信号が有効になった際に遅延デバイス251、252の遅延時間を制御する。
【0056】
また本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210は、フリップフロップ271を有する。フリップフロップ271は、各パターン生成部が生成したデータパターン信号をラッチするものであり、各入力バッファアンプに対応して設けられている。
【0057】
本実施例の各モード検出部MDは、隣接する2チャンネル間の信号極性を比較してモードを検出し、検出したモードを示すモード信号(Even信号、Odd信号)を遅延制御部243、253又は遅延制御部244、254に出力する。
【0058】
隣接する2チャンネル間の信号が、例えばパターン生成部PG11で生成されるデータパターン信号と、パターン生成部PG12で生成されるデータパターン信号である場合を説明する。
【0059】
この場合モード検出部MD12がモード検出を行う。遅延制御部243は、検出したモードがEvenモード(Even信号アクティブ)ならばCIJ補償用の遅延時間をTd−tceとするように、遅延デバイス241を制御する。遅延制御部253は、検出したモードがOddモード(Odd信号アクティブ)ならば、CIJ補償用の遅延時間をTd+tcoとするように遅延デバイス251を制御する。また遅延制御部243、253は、検出されたモードがEvenモードとOddモードのどちらでもない(Even信号とOdd信号がアクティブない)ならば、CIJ補償用の遅延時間を基準値Tdとするように遅延デバイス241、251を制御する。尚遅延制御部243、253は、隣接する2つの伝送線路の遅延デバイスに対し、同じモードで同時に制御する。すなわち遅延制御部243、253は、入力バッファアンプCB12に対応した遅延デバイス241、251に対しても、同時にCIJ補償用の遅延時間を設定する。
【0060】
また隣接する2チャンネル間の信号が、例えばパターン生成部PG12で生成されるデータパターン信号と、パターン生成部PG21で生成されるデータパターン信号である場合を説明する。
【0061】
この場合モード検出部MD21がモード検出を行う。遅延制御部244は、検出したモードがEvenモードならばCIJ補償用の遅延時間をTd−tceとするように、遅延デバイス242を制御する。遅延制御部254は、検出したモードがOddモード(Odd信号アクティブ)ならば、CIJ補償用の遅延時間をTd+tcoとするように遅延デバイス252を制御する。また遅延制御部244、254は、検出されたモードがEvenモードとOddモードのどちらでもない(Even信号とOdd信号がアクティブない)ならば、CIJ補償用の遅延時間を基準値Tdとするように遅延デバイス242、252を制御する。尚遅延制御部244、254は、隣接する2つの伝送線路の遅延デバイスに対し、同じモードで同時に制御する。すなわち遅延制御部244、254は、入力バッファアンプCB21に対応した遅延デバイス242、252に対しても、同時にCIJ補償用の遅延時間を設定する。
【0062】
クロック生成部211が発生した基準クロックは、遅延デバイス241、251、242、252を経由し、CIJ補償用の遅延時間分遅れてフリップフロップ271へ出力される。フリップフロップ271の出力は、出力バッファアンプTXO11を介してプローブカード300の伝送線路320に送出される。尚出力バッファアンプTXO11は、入力バッファアンプCB11に対応したものであり、他の入力バッファアンプに対応した出力バッファアンプが設けられている。
【0063】
このように本実施例のCIJ補償付信号発生ユニット210では、各チャンネル毎に、入力側に設けられた遅延デバイス242、252と、出力側に設けられた遅延デバイス241、251と、を有する。またCIJ補償付信号発生ユニット210は、入力側に設けられた遅延デバイス242、252を制御する遅延制御部244、254と、出力側に設けられた遅延デバイス241、251を制御する遅延制御部243、253を有する。遅延制御部244、254は、隣接する2チャンネルの遅延デバイス242、252に遅延時間を設定し、同じタイミングで遅延時間を制御する。また遅延制御部243、253は、隣接する2チャンネルの遅延デバイス241、251に遅延時間を設定し、同じタイミングで遅延時間を制御する。
【0064】
すなわち本実施例では、チャンネル数を増加させた場合でも、各チャンネルの構成を同様にし、2つの隣接するチャンネルを制御する遅延制御部と、遅延制御部に対応したモード検出部を設けることで対応できる。したがって本実施例では、単純な構成でCIJ補償用の遅延時間を設定することができ、チャンネルの増設にも容易に対応できる。
【0065】
次に
図7を参照して本実施例のCIJ補償用LSI410について説明する。
図7は、CIJ補償用LSIの構成を説明する図である。
【0066】
CIJ補償用LSI410の配線で生じるCIJは、プローブカード300で生じるCIJと比較して、非常に小さく無視できるものとする。
【0067】
CIJ補償用LSI410において、プローブカード300のプローブ端子340より受け取った試験信号は、入力バッファアンプに入力される。本実施例のCIJ補償用LSI410は、10本の伝送線路320〜329に対応した10個の入力バッファアンプRXI11、RXI12、RXI21、RXI22、RXI31、RXI32、RXI41、RXI42、RXI51、RXI52を有する。
【0068】
入力バッファアンプRXI11の出力は、データ再生器(Data Regen.)412とCDR(Clock Data Recovery)413に入力され、CDR413で再生されたクロックを使って、データ再生器412は受信した試験信号からデータを再生する。再生された再生データは、隣接するチャンネルの再生データと共にモード検出部431に入力され、隣接チャンネル間の信号モードが検出される。
【0069】
また入力バッファアンプRXI11の出力は、位相比較器(Phase Comparator)432、433に入力される。位相比較器432、433には、入力バッファアンプRXI12からの出力も入力される。位相比較器432、433は、隣接した2つのチャンネル間の試験信号のエッジの位相を比較する。位相比較器432、433による比較結果の位相差信号はフィルタ(LPF)434、435を通過して、遅延制御部436、437へ供給される。本実施例では、位相比較器432はOddモード用位相比較器であり、位相比較器433はEvenモード用位相比較器である。本実施例では、Evenモード用位相比較器とOddモード用位相比較器とがそれぞれ独立しており、モード検出部431がEvenモードを検出した場合、Evenモード用位相比較器433を有効にして、Evenモード時の試験信号のエッジの位相を比較する。また、Oddモード時も同様に、Oddモード用位相比較器432を有効にしてOddモード時の試験信号のエッジの位相を比較する。尚Oddモード用位相比較器432は、位相差180度を基準として2つの入力信号の位相を比較する。
【0070】
フィルタ434、435の出力は、遅延制御部436、437により制御電圧に相当する遅延制御信号に変換される。この遅延制御信号は、CIJ補償付信号発生ユニット210の遅延制御部243、253に送られる。すなわち本実施例では、遅延制御部436、437と遅延制御部243、253との間で低速のデータ通信がなされる。
【0071】
ロック検出部438、439は、位相比較器432、433でそれぞれ比較された位相差が規定値以下になった場合、ロック信号LockE_1112とロック信号LockO_1112をそれぞれ出力する。ロック信号LockE_1112とロック信号LockO_1112は、CIJ補償付信号発生ユニット210の制御ユニット220に送られる。
【0072】
図7では、入力バッファアンプRXI11以外の各入力バッファアンプに対応したチャンネルでも同様の構成を有している。
【0073】
次に、本実施例におけるCIJ補償用の遅延時間の設定について説明する。本実施例では、制御ユニット220が、CIJ補償用LSI410から受けた信号に基づき、CIJ補償付信号発生ユニット210の各チャンネル毎の遅延時間を設定する制御を行う。
【0074】
本実施例では、遅延時間の設定を3つの手順にわけて行う。始めに
図8を参照して1つめの手順について説明する。
図8は、遅延時間の第一の設定手順を説明する図である。
【0075】
本実施例では、出力バッファアンプTXO11から出力される信号を遅延させる出力側の遅延デバイス241、251を基準値Tdに固定し、パターン生成部PG11、PG12から出力されるデータパターン信号を差動伝送として入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間の設定を行う。
【0076】
ここで出力バッファアンプTXO11から出力される信号は、隣接する伝送線路が片側にしかない信号である。すなわち本実施例では、片側のみに伝送線路が隣接する伝送線路に設けられた入力側の遅延デバイス242、252に設定された遅延時間を基準に、入力側の全ての遅延デバイス242、252の遅延時間を設定する。
【0077】
また本実施例では、伝送線路320〜329に対応する信号において、3つの信号のモード検出を行う際に、隣接する2つの信号間のモード検出を行う。そして本実施例では、隣接する2つの信号のモードを常にOddモードとする差動伝送を用いて遅延デバイスの遅延時間の設定を行う。
【0078】
図9は、遅延時間の第一の設定処理を説明するフローチャートである。本実施例の制御ユニット220は、初期設定を行う(ステップS901)。具体的には制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、CIJ補償付信号発生ユニット210の全ての遅延デバイスの遅延時間を基準値Tdに設定する。全ての遅延デバイスとは、各入力バッファアンプに対応して設けられた遅延デバイス241、251、242、252である。また制御ユニット220は、モードコントロール信号により、入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間の設定に用いられるモード検出部MD21、MD31、MD41、MD51を有効とし、モード検出を可能とする。また制御ユニット220は、出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間の設定に用いられるモード検出部MD12、MD22、MD32、MD42、MD52を無効とする。本実施例では、モード検出が行われない場合の遅延時間は基準値Tdとなる。
【0079】
また制御ユニット220は、パターンコントロール信号により、パターン生成部でデータパターン信号の生成を制御する。本実施例では、制御ユニット220は、パターン生成部PG11,PG12から出力されるデータパターン信号及びパターン生成部PG21,PG22から出力されるデータパターン信号が常にOddモードとなるようにデータパターン信号を生成させる。また制御ユニット220は、パターン生成部PG31,PG32から出力されるデータパターン信号、パターン生成部PG41,PG42から出力されるデータパターン信号、パターン生成部PG51,PG52から出力されるデータパターン信号が常にOddモードとなるようにデータパターン信号を生成させる。
【0080】
すなわち制御ユニット220は、出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間の制御に用いられるデータパターン信号を常にOddモードとする。本実施例では、これにより入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間の設定処理を行う間、出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間を基準値Tdに固定させる。
【0081】
続いて制御ユニット220は、パターンコントロール信号により、各パターン生成部からランダムにパターンデータ信号を出力させる(ステップS902)。ステップS902では、入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間の制御に用いられるデータパターン信号がランダムに出力されることになる。
【0082】
続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、モード検出部MD21のみを有効にする(ステップS903)。続いて制御ユニット220は、モード検出部MD21のEven信号のみを有効とする(ステップS904)。
【0083】
ステップS904の状態となると、出力バッファアンプTXO11から出力された信号と出力バッファアンプTXO12から出力された信号は、伝送線路320と伝送線路321を介してCIJ補償用LSI410へ出力される。伝送線路320の出力信号を信号TLO11とし、伝送線路321の出力信号を信号TLO12(
図2参照)とすると、CIJ補償用LSI410は信号TLO11と信号TLO12の位相差の比較を行う。そしてCIJ補償用LSI410は、信号TLO11と信号TLO12の位相差が所定値以下となったとき、ロック信号LockE_1112を制御ユニット220へ出力する。尚所定値は、信号TLO11と信号TLO12の位相差が取り得る最小の値であり、予め設定されている値である。
【0084】
制御ユニット220は、ロック信号LockE_1112を検出したか否かを判断する(ステップS905)。ステップS905において検出しない場合、後述するステップS918へ進む。
【0085】
ステップS905において検出した場合、入力バッファアンプCB12に対応する遅延デバイス242に設定されている遅延時間は、信号TLO11と信号TLO12の位相差を最小値とする遅延時間である。制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、モード検出部MD21に対応する遅延制御部244内のバッファメモリ等に、ここで遅延デバイス242に設定された遅延時間に相当する遅延制御データを一時保存する(ステップS906)。
【0086】
ここで制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、入力バッファアンプCB12に対応した遅延デバイス242の遅延時間を基準値Tdに戻す(ステップS907)。尚このとき制御ユニット220は、入力バッファアンプCB21に対応した信号を遅延させる遅延デバイス242の遅延時間も基準値Tdに戻す。続いて制御ユニット220は、モード検出部MD21のOdd信号のみを有効とする(ステップS908)。
【0087】
ステップS908の状態となると、出力バッファアンプTXO11から出力された信号と出力バッファアンプTXO12から出力された信号は、伝送線路320と伝送線路321を介してCIJ補償用LSI410へ出力される。CIJ補償用LSI410は信号TLO11と信号TLO12の位相差の比較を行う。そしてCIJ補償用LSI410は、信号TLO11と信号TLO12の位相差が所定値以下となったとき、ロック信号LockO_1112を制御ユニット220へ出力する。
【0088】
制御ユニット220は、ロック信号LockO_1112を検出したか否かを判断する(ステップS909)。ステップS909で検出しない場合、後述するステップS918へ進む。ステップS909で検出した場合、入力バッファアンプCB12に対応する遅延デバイス252に設定されている遅延時間は、信号TLO11と信号TLO12の位相差を最小値とする遅延時間である。制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、モード検出部MD21に対応する遅延制御部254内の遅延時間設定レジスタに、ここで遅延デバイス252に設定された遅延時間に相当する遅延制御データを保存する(ステップS910)。本実施例ではステップS910において、遅延デバイス252の遅延時間が設定される。
【0089】
続いて制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、ステップS906で遅延制御部244内のバッファメモリ等に一時保存されていた遅延制御データを遅延制御部244内の遅延時間設定レジスタに保存する(ステップS911)。本実施例ではステップS911において、遅延デバイス242の遅延時間が設定される。
【0090】
続いて制御ユニット220は、CIJ補償用LSI410からロック信号LockE_1112とロック信号LockO_1112とを検出したか否かを判断する(ステップS912)。ステップS912において検出しない場合、後述するステップS918へ進む。
【0091】
ステップS912において検出した場合、信号TLO11と信号TLO12の位相差が最小の状態となる。すなわちこの状態は、伝送線路320と伝送線路321との間に発生したCIJをほぼ最小となるまで低減させた状態である。ここで本実施例では、入力バッファアンプCB21に対応する遅延デバイス242、252にも、入力バッファアンプCB12に対応する遅延デバイス242、252と同様の遅延時間が設定されるため、信号TLO11と信号TLO21との位相差も最小となる。
【0092】
ステップS912において検出した場合、制御ユニット220は、モード検出部MD31を有効にし、伝送線路322から出力される信号TLO21と伝送線路323から出力される信号TLO22との位相比較を行う。(ステップS913)。具体的には制御ユニット220は、ステップS904〜ステップS912の処理と同様の処理を行い、入力バッファアンプCB22及び入力バッファアンプCB31に対応する遅延デバイス242、252の遅延時間を設定する。この遅延時間は、伝送線路323と伝送線路324に生じるCIJをキャンセルするための遅延時間となる。
【0093】
続いて制御ユニット220は、伝送線路324から出力される信号TLO31と伝送線路325から出力される信号TLO32との位相比較を行う。(ステップS914)。具体的には制御ユニット220は、ステップS904〜ステップS912の処理と同様の処理を行い、入力バッファアンプCB32及び入力バッファアンプCB41に対応する遅延デバイス242、252の遅延時間を設定する。この遅延時間は、伝送線路325と伝送線路326に生じるCIJをキャンセルするための遅延時間となる。
【0094】
続いて制御ユニット220は、伝送線路326から出力される信号TLO41と伝送線路327から出力される信号TLO42との位相比較を行う。(ステップS915)。具体的には制御ユニット220は、ステップS904〜ステップS912の処理と同様の処理を行い、入力バッファアンプCB42及び入力バッファアンプCB51に対応する遅延デバイス242、252の遅延時間を設定する。この遅延時間は、伝送線路327と伝送線路328に生じるCIJをキャンセルするための遅延時間となる。
【0095】
続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_5152とロック信号LockO_5152とを検出したか否かを判断する(ステップS916)。
【0096】
ステップS916で検出しない場合、後述するステップS918へ進む。ステップS916で検出した場合、伝送線路328から出力される信号TLO51と伝送線路329から出力される信号TLO52との位相差が所定値以下であることを示す。すなわち伝送線路320〜329においてそれぞれが隣接する伝送線路間に生じるCIJが低減されていることを示す。
【0097】
ステップS916において検出された場合、制御ユニット220は、全てのロック信号を検出したか否かを判断する(ステップS917)。尚全てのロック信号とは、
図2におけるロック信号LockO_1112、LockE_1112〜ロック信号LockO_5152、LockE_5152の全てのロック信号を示す。
【0098】
ステップS917において全てのロック信号が検出されない場合、制御ユニット220は、ロックコントロール信号により、CIJ補償用LSI410の全てロック検出部における感度設定を変更する(ステップS918)。具体的には制御ユニット220は、ロックを検出する閾値となる位相差の所定値を変更する。
【0099】
ステップS917において全てのロック信号が検出された場合、制御ユニット220は遅延時間の第一の設定処理を終了する。
【0100】
尚
図9の例では、片側のみに伝送線路が隣接する伝送線路として最初に入力バッファアンプCB11に対応する信号を伝送する伝送線路320としたが、入力バッファアンプCB52に対応する信号を伝送する伝送線路329であっても良い。差動伝送に伴うCIJを補償する場合には、
図8に示す第一の設定手順だけでよいが、シングルエンド伝送に伴うCIJを補償するには、次に示す第二の設定手順と第三の設定手順が必要である。
【0101】
次に本実施例の遅延時間の第二の設定手順を説明する。
図10は、遅延時間の第二の設定手順を説明する図である。
【0102】
遅延時間の第一の設定手順では、CIJ補償付信号発生ユニット210の出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間を基準値Tdとして入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間を設定した。
【0103】
本実施例の遅延時間の第二の設定手順では、入力バッファアンプCB11及びCB52(以下、外側のチャンネル)に対応する遅延デバイス242、252以外の入力側の遅延デバイス242、252を基準として、差動伝送により出力側の遅延デバイス241、251を設定する。
【0104】
遅延時間の第二の設定手順では、各チャンネルの入力側の遅延デバイスの遅延時間(
図9で設定された遅延時間)を基準として、
図10に示すように襷がけのように出力側の遅延デバイスの遅延時間を設定する。尚第二の設定手順が実行された後の状態では、外側のチャンネルに対応する遅延デバイスの遅延時間は基準値Tdである。
【0105】
図11は、遅延時間の第二の設定処理を説明するフローチャートである。本実施例の制御ユニット220は、遅延時間の第二の設定処理の初期設定を行う(ステップS1101)。具体的には制御ユニット220は、モードコントロール信号により、全てのモード検出部を有効にする。また制御ユニット220は、パターンコントロール信号により、パターン生成部PG12、PG21から出力されるパターンデータ信号のモードと、パターン生成部PG22、PG31から出力されるパターンデータ信号のモードとを常にOddモードとする。また制御ユニット220は同様に、パターン生成部PG32、PG41から出力されるパターンデータ信号のモードと、パターン生成部PG42、PG51から出力されるパターンデータ信号のモードとを常にOddモードとする。すなわち制御ユニット220は、入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間の制御に用いられるデータパターン信号を常にOddモードとする。
【0106】
続いて制御ユニット220は、パターンコントロール信号により、全てのパターン生成部からランダムにパターンデータ信号を出力する(ステップS1102)。続いて制御ユニット220は、ディレイコントロール信号を遅延制御部244、245へ出力し、遅延制御部244に遅延デバイスの遅延時間を設定させる(ステップS1103)。
【0107】
具体的に制御ユニット220は、遅延制御部244、254により、入力バッファアンプCB12、CB22、CB32、CB42に対応する入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間を、
図9で調整された遅延時間に設定する。
図9で調整された遅延時間は、遅延制御部244、254内の遅延時間設定レジスタに格納されている。また制御ユニット220は、上記の入力側の遅延デバイス242、252を基準として、入力バッファアンプCB21、CB31、CB41、CB51に対応する出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間を設定する。
【0108】
さらに制御ユニット220は、制御ユニット220は、入力バッファアンプCB21、CB31、CB41、CB51に対応する入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間と、入力バッファアンプCB12、CB22、CB32、CB42に対応する出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間とを基準Tdに設定する。
【0109】
続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、全てのモード検出部に対し、Even信号のみを有効とする(ステップS1104)。ステップS1104において制御ユニット220は、信号TLO12と信号TLO21の位相差と、信号TLO22と信号TLO31の位相差とが最小になるようにDLL制御により制御する。またステップS1104において制御ユニット220は、信号TLO32と信号TLO41の位相差と、信号TLO42と信号TLO51の位相差とが最小になるようにDLL制御により制御する。
【0110】
続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_1221、ロック信号LockE_2231、ロック信号LockE_3241、ロック信号LockE_4251を検出したか否かを判断する(ステップS1105)。ステップS1105で検出しない場合、後述するステップS1117へ進む。
【0111】
ステップS1105で検出した場合とは、信号TLO12と信号TLO21との位相差、信号TLO22と信号TLO31の位相差、信号TLO32と信号TLO41の位相差と、信号TLO42と信号TLO51の位相差が最小となる遅延時間が各遅延デバイスに設定された状態である。
【0112】
よって制御ユニット220は、信号TLO21を出力する出力バッファアンプTX21に対応する遅延デバイス241に設定された遅延時間に相当する遅延制御データを対応する遅延制御部243内のバッファメモリ等に一時保存する。出力バッファアンプTX31に対応する遅延デバイス241、出力バッファアンプTX41に対応する遅延デバイス241、出力バッファアンプTX51に対応する遅延デバイス241に設定される遅延時間に相当する遅延制御データも同様に一時保存する(ステップS1106)。
【0113】
続いて制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、入力バッファアンプCB11及び入力バッファアンプCB52に対応する遅延デバイス241以外の遅延デバイスの遅延時間を基準値Tdに戻す(ステップS1107)。
【0114】
続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、全てのモード検出部に対してOdd信号のみを有効にする(ステップS1108)。ステップS1108の処理はステップS1104の処理と同様であるから説明を省略する。
【0115】
続いて制御ユニット220は、ロック信号LockO_1221、ロック信号LockO_2231、ロック信号LockO_3241、ロック信号LockO_4251を検出したか否かを判断する(ステップS1109)。ステップS1109で検出しない場合、後述するステップS1117へ進む。ステップS1109で検出した場合には、信号TLO12と信号TLO21との位相差、信号TLO22と信号TLO31の位相差、信号TLO32と信号TLO41の位相差、信号TLO42と信号TLO51の位相差が最小となる遅延時間が遅延デバイスに設定された状態である。尚本実施例では、隣接する2チャンネルの信号の位相差が最小となる遅延時間を遅延時間の最適値と呼ぶ。
【0116】
よって制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、信号TLO21を出力する出力バッファアンプTXO21に対応する遅延デバイス251に設定された遅延時間に相当する遅延制御データを対応する遅延制御部253内の遅延時間設定レジスタに保存する。同様に制御ユニット220は、出力バッファアンプTXO31に対応する遅延デバイス251と、出力バッファアンプTXO41に対応する遅延デバイス251と、出力バッファアンプTXO51に対応する遅延デバイス251とに遅延時間に相当する遅延制御データをそれぞれ対応する遅延制御部253内の遅延時間設定レジスタに保存する(ステップS1110)。
【0117】
続いて制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、ステップS1106で遅延制御部243内に一時保存された遅延制御データを遅延制御部243内の遅延時間設定レジスタに保存する。同様に制御ユニット220は、出力バッファアンプTXO31に対応する遅延デバイス241と、出力バッファアンプTXO41に対応する遅延デバイス241と、出力バッファアンプTXO51に対応する遅延デバイス241に対応する遅延制御部243でも、遅延制御データを遅延時間設定レジスタに保存する(ステップS1111)。
【0118】
本実施例ではステップS1110とステップS1111により、外側の遅延デバイスを除く出力側の遅延デバイスの遅延時間が設定される。
【0119】
続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、全てのモード検出部においてEven信号とOdd信号の両方を有効にする(ステップS1112)。続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_1221、ロック信号LockE_2231、ロック信号LockE_3241、ロック信号LockE_4251、ロック信号LockO_1221、ロック信号LockO_2231、ロック信号LockO_3241、ロック信号LockO_4251を検出したか否かを判断する(ステップS1113)。ステップS1113で検出しない場合、後述するステップS1117へ進む。
【0120】
ステップS1113で検出した場合、制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により各遅延デバイスへ遅延時間の設定を行う(ステップS1114)。具体的には遅延制御部244、254は、入力バッファアンプCB21、CB31、CB41、CB51に対応する入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間を
図9の設定処理で設定された遅延時間に設定する。
図9で調整された遅延時間は、遅延制御部244、254内の遅延時間設定レジスタに格納されている。また制御ユニット220は、上記の入力側の遅延デバイス242、252を基準として、入力バッファアンプCB12、CB22、CB32、CB42に対応する出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間を設定する。
【0121】
さらに制御ユニット220は、入力バッファアンプCB12、CB22、CB32、CB42に対応する入力側の遅延デバイス242、252の遅延時間と、入力バッファアンプCB21、CB31、CB41、CB51に対応する出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間とを基準Tdに設定する。
【0122】
続いて制御ユニット220は、ステップS1104〜ステップS1113の処理と同様の処理を行い、入力バッファアンプCB12、CB22、CB32、CB42に対応する出力側の遅延デバイス241、251の遅延時間を設定する(ステップS1115)。
【0123】
続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_1112、ロック信号LockO_1112、ロック信号LockE_5152、ロック信号LockO_5152以外のロック信号を検出したか否かを判断する(ステップS1116)。ステップS1116において検出しない場合、制御ユニット220は、ロックコントロール信号により、CIJ補償用LSI410の全てロック検出部における感度設定を変更する(ステップS1117)。
【0124】
ステップS1116において検出した場合、制御ユニット220は、遅延時間の第二の設定処理を終了する。
【0125】
本実施例では、この第二の設定処理により、第一の設定処理で遅延時間を基準値Tdに固定していた出力側の遅延デバイスの遅延時間が設定される。この第二の設定処理では、第一の設定処理で入力側の遅延デバイスに設定された遅延時間が最適値を用いて出力側の遅延デバイスの遅延時間を設定する。本実施形態では、この第二の設定処理と次の第三の設定処理により、シングルエンド伝送においてもCIJを低減させることができる。尚本実施形態における第二の設定処理と第三の設定処理は、シングルエンド伝送に対応し、且つシングルエンド伝送における遅延時間の最適化を目的とした処理である。
【0126】
次に本実施例の遅延時間の第三の設定手順を説明する。
図12は、遅延時間の第三の設定手順を説明する図である。
【0127】
本実施例の遅延時間の第三の設定手順は、片側のみに伝送線路が隣接する外側の伝送線路のCIJをキャンセルするための遅延時間を設定する手順である。具体的には入力バッファアンプCB11及びCB52に対応する遅延デバイス241、251の遅延時間を隣接する信号の遅延時間を基準に設定する。第三の設定手順では、シングルエンド伝送により遅延時間を設定する。
【0128】
図13は、遅延時間の第三の設定処理を説明するフローチャートである。本実施例の制御ユニット220は、初期設定を行う(ステップS1301)。具体的には制御ユニット220は、モードコントロール信号により、全てのモード検出部のEven信号とOdd信号とを有効にする。また制御ユニット220は、パターンコントロール信号により、全てのパターン生成部から異なるランダムのパターンデータ信号が出力されるように設定する。
【0129】
続いて制御ユニット220は、パターンイネーブル信号により、全てのパターン生成部からランダムにパターンデータ信号を出力させる(ステップS1302)。続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、モード検出部MD12及びMD52に対してEven信号のみを有効とする(ステップS1303)。続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_1112、ロック信号LockE_5152を検出したか否かを判断する(ステップS1304)。
【0130】
ステップS1304において検出しない場合、後述するステップS1314へ進む。ステップS1304においてロック信号LockE_1112を検出した場合とは、伝送線路320から出力される信号TLO11と伝送線路321から出力される信号TLO12との位相差が所定値以下となるように、入力バッファアンプCB11に対応した遅延デバイス241の遅延時間が設定された状態である。
またロック信号LockE_5152を検出した状態とは、伝送線路328から出力される信号TLO51と伝送線路329から出力される信号TLO52との位相差が所定値以下となるように、入力バッファアンプCB52に対応した遅延デバイス241の遅延時間が設定された状態である。
【0131】
ステップS1304において検出した場合、制御ユニット1304は、ディレイコントロール信号により、入力バッファアンプCB11とCB52に対応する遅延デバイス241に設定する遅延時間に相当する遅延制御データを、遅延制御部243内のバッファメモリ等に一時保存する(ステップS1305)。
【0132】
続いて制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、入力バッファアンプCB11とCB52に対応する遅延デバイス241の遅延時間を基準Tdに戻す(ステップS1306)。続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、モード検出部MD12及びMD52に対してOdd信号のみを有効とする(ステップS1307)。続いて制御ユニット220は、ロック信号LockO_1112、ロック信号LockO_5152を検出したか否かを判断する(ステップS1308)。
【0133】
ステップS1308において検出しない場合、後述するステップS1314へ進む。ステップS1308において検出した場合、制御ユニット220は、ディレイコントロール信号により、入力バッファアンプCB11に対応した遅延デバイス251に、このときの遅延時間を設定させる。また制御ユニット220は、入力バッファアンプCB52に対応した遅延デバイス251に、このときの遅延時間を設定させる(ステップS1309)。
【0134】
続いて制御ユニット220は、ステップS1305で遅延制御部243に一時保存された遅延時間を入力バッファアンプCB11とCB52に対応する遅延デバイス241に設定する(ステップS1310)。
【0135】
続いて制御ユニット220は、モードコントロール信号により、モード検出部MD12、MD52のEven信号とOdd信号の両方を有効にする(ステップS1311)。続いて制御ユニット220は、ロック信号LockE_1112、ロック信号LockE_5152、ロック信号LockO_1112、ロック信号LockO_5152を検出したか否かを判断する(ステップS1312)。
【0136】
ステップS1312において検出しない場合、後述するステップS1314へ進む。ステップS1312において検出した場合、制御ユニット220は、全てのロック信号を検出したか否かを判断する(ステップS1313)。ステップS1313において検出しない場合、制御ユニット220は、ロックコントロール信号により、CIJ補償用LSI410の全てロック検出部における感度設定を変更する(ステップS1314)。ステップS1313において検出した場合、制御ユニット220は、第三の設定処理を終了する。
【0137】
以下に本実施例のジッタ耐性試験システム100を用いたシミュレーション結果を示す。
図14は、シミュレーションモデルを説明する図である。
図14(A)は、シングルエンド伝送の場合に使用した伝送線路のモデルを示し、
図14(B)は差動伝送の場合に使用した伝送線路のモデルを示している。
【0138】
図14(A)では、8本の伝送線路を用いてシングルエンド伝送を行い、
図14(B)では、8本の伝送線路を4組の差動対として差動伝送を行った。
【0139】
図15は、シミュレーション結果を説明する第一の図である。
図15(A)は、
図14に示す伝送線路の入力端1〜8に入力された信号を重ねたアイパターンを示す。
図15(B)は、
図14に示す伝送線路5のみに信号を入力した場合の遠端5(fe5)のアイパターンを示す。
図15(B)は、CIJがない場合のジッタ量を示している。尚シミュレーションに使用した信号源は、伝送レート6.25Gbps、PRBS7の疑似ランダムパターン信号である。
【0140】
図16は、シミュレーション結果を説明する第二の図である。
図16は、
図14(B)に示す差動伝送のモデルでのCIJ補償の有無におけるジッタ量の変化を示している。
図16(A)はCIJ補償を行っていない場合のアイパターンを示し、
図16(B)はCIJ補償を行った場合のアイパターンを示す。
【0141】
図16(A)と
図16(B)を比較すると、CIJ補償によりCIJが低減されていることがわかる。
【0142】
図17は、シミュレーション結果を説明する第三の図である。
図17は、
図14(A)に示すシングルエンド伝送のモデルでのCIJ補償の有無におけるジッタ量の変化を示している。
図17(A)はCIJ補償を行っていない場合のアイパターンを示し、
図17(B)はCIJ補償を行った場合のアイパターンを示す。
図17においても、CIJ補償によりCIJが低減することがわかる。
【0143】
尚本実施例では、CIJ補償機能をジッタ耐性試験システム100に適用した例を説明したが、これに限定されない。本実施例で説明したCIJ補償機能は、例えば、マイクロストリップ伝送線路を介して高速データ通信を行うデータ送信部とデータ受信部とを有する通信ユニット等にも適用できる。この場合、データ送信部にCIJ補償付信号発生ユニット210が設けられ、データ受信部にCIJ補償用LSI410が設けられることが好ましい。
【0144】
以上、好ましい実施の形態及びその変形例について詳説したが、上述した実施の形態及びその変形例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態及びその変形例に種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、各実施の形態やその変形例は、適宜組み合わせることができる。