(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開閉ドアにより開閉する搬送口の口縁部にFOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアに設けられた蓋体取り外し機構により前記FOUPの蓋体を取り外す蓋体開閉装置であって、
前記蓋体取り外し機構は、前記FOUPの蓋体と係合するラッチキーと、該ラッチキーを駆動する駆動機構と、該駆動機構を収容するとともに、前記FOUPの蓋体と対向及び接触可能な収容部とを含み、
該収容部内の空間のみを独立して排気する排気手段を備えた蓋体開閉装置。
開閉ドアにより開閉する搬送口の口縁部にFOUPの基板取り出し口の口縁部を密着させ、前記開閉ドアに設けられた蓋体取り外し機構により前記FOUPの蓋体を取り外す蓋体開閉方法であって、
前記FOUPの蓋体を取り外す前に、前記蓋体取り外し機構の駆動機構を収容するとともに、前記FOUPの蓋体と対向及び接触可能な収容部内の空間のみを独立して排気する蓋体開閉方法。
前記蓋体取り外し機構による前記FOUPの前記蓋体の取り外しは、前記蓋体取り外し機構が前進し、前記蓋体に接触してロックを解除した後、前記蓋体を保持して後退することにより行われ、
前記収容部内の空間の排気は、前記蓋体のロックを解除する前に開始される請求項11に記載の蓋体開閉方法。
前記蓋体取り外し機構は、前記FOUPの前記蓋体と係合するラッチキーを有し、前記蓋体を取り外すために前記蓋体と係合した際に、前記蓋体の内部空間を排気する請求項11乃至16のいずれか一項に記載の蓋体開閉方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る蓋体開閉装置が組み込まれた縦型熱処理装置について説明する。
図1は縦型熱処理装置1の縦断面図であり、
図2は縦型熱処理装置1の平面図である。なお、実施形態1に係る蓋体開閉装置は、縦型熱処理装置以外の種々の処理装置の搬入部分に適用することができるが、理解の容易のため、本発明の実施形態においては、蓋体開閉装置を、具体的な処理装置の一つである縦型熱処理装置に用いた例を挙げて説明する。
【0018】
図1及び
図2において示されるように、縦型熱処理装置1は、筐体11に収容されて構成される。筐体11は、縦型熱処理装置1の外装体を構成し、この筐体11内に、被処理体であるウエハWを収納した容器であるキャリアCが装置に対して搬入、搬出されるためのキャリア搬送領域S1と、キャリアC内のウエハWを搬送して後述の熱処理炉内に搬入するための移載領域であるウエハ搬送領域S2とが形成されている。キャリアCは既述のFOUPである。
【0019】
キャリア搬送領域S1とウエハ搬送領域S2とは、隔壁2により仕切られている。キャリア搬送領域S1は、大気雰囲気下にある領域であり、キャリアCに収納したウエハWを搬送する領域である。各処理装置間の領域がキャリア搬送領域S1に該当し、本実施形態においては、縦型熱処理装置1の外部のクリーンルーム内の空間がキャリア搬送領域S1に該当する。一方、ウエハ搬送領域S2は、搬入されたウエハWに酸化膜が形成されることを防ぐために、不活性ガス雰囲気、例えば窒素(N
2)ガス雰囲気とされており、キャリア搬送領域S1よりも清浄度が高く、且つ低酸素濃度に維持されている。以降の説明では、キャリア搬送領域S1及びウエハ搬送領域S2の配列方向を縦型熱処理装置1の前後方向とする。
【0020】
キャリア搬送領域S1について説明する。キャリア搬送領域S1は、第1の搬送領域12と、第1の搬送領域12の後方側(ウエハ搬送領域S2側)に位置する第2の搬送領域13とからなる。
【0021】
図2に示すように、第1の搬送領域12の左右方向には、キャリアCを各々載置する2つの第1の載置台14が設けられている。各第1の載置台14の載置面には、キャリアCを位置決めするピン15が例えば3個所に設けられている。
【0022】
第2の搬送領域13には、第1の載置台14に対して前後に並ぶように、左右に2つの第2の載置台16が配置されている。各第2の載置台16は前後に移動自在に構成されている。第2の載置台16の載置面にも第1の載置台14と同様にキャリアCを位置決めするピン15が、3個所に設けられている。また、前記載置面にはキャリアCを固定するためのフック16aが設けられている。
【0023】
図1に示すように、第2の搬送領域13の上部側にはキャリアCを保管するキャリア保管部18が設けられている。キャリア保管部18は2段以上の棚により構成されており、各棚は左右に2つのキャリアCを載置することができる。
図1では棚が2段である例を示している。
【0024】
そして第2の搬送領域13には、キャリアCを第1の載置台14と第2の載置台16とキャリア保管部18との間で搬送するキャリア搬送機構21が設けられている。このキャリア搬送機構21は左右に伸び、且つ昇降自在なガイド部21aと、このガイド部21aにガイドされながら左右に移動する移動部21bと、この移動部21bに設けられ、キャリアCを保持して水平方向に搬送する関節アーム21cと、を備えている。
【0025】
隔壁2には、キャリア搬送領域S1とウエハ搬送領域S2とを連通させるウエハWの搬送口20が設けられている。搬送口20には、当該搬送口20をウエハ搬送領域S2側から塞ぐ開閉ドア5が設けられている。開閉ドア5には駆動機構50が接続されており、駆動機構50により開閉ドア5は前後方向及び上下方向に移動自在に構成され、搬送口20が開閉される。この開閉ドア5及び搬送口20の周囲の構成については後に詳述する。
【0026】
ウエハ搬送領域S2には、下端が炉口として開口された縦型の熱処理炉22が設けられ、この熱処理炉22の下方側には、多数枚のウエハWを棚状に保持するウエハボート23が断熱部24を介してキャップ25の上に載置されている。キャップ25は昇降機構26の上に支持されており、この昇降機構26によりウエハボート23が熱処理炉22に対して搬入あるいは搬出される。
【0027】
またウエハボート23と隔壁2の搬送口20との間には、ウエハ搬送機構27が設けられている。
図2に示すように、このウエハ搬送機構27は、左右に伸びるガイド機構27aに沿って移動すると共に、
図1に示すように、鉛直軸回りに回動する移動体27bに、5枚の進退自在なアーム27cを設けて構成され、ウエハボート23と第2の載置台16上のキャリアCとの間でウエハWを搬送する。
【0028】
図3、
図4は夫々キャリアC、ウエハWの搬送口20及び開閉ドア5の縦断面図、横断面図であり、
図5は搬送口20及びキャリアCの斜視図である。
図3及び
図4では、第2の載置台16によりキャリアCが、ウエハ搬送領域S2との間でウエハWを受け渡すための受け渡し位置に移動した状態を示している。
【0029】
図5を用いてキャリアCについて説明すると、キャリアCは容器本体であるキャリア本体31と、蓋体41とからなり、キャリア本体31の左右には、ウエハWの裏面側周縁部を支持する支持部32が多段に設けられる。キャリア本体31の前面にはウエハWの取り出し口33が形成されている。図中34は前記取り出し口33の開口縁部であり、開口縁部34の内周側の左右の上下には各々係合溝35が形成されている。
【0030】
キャリア本体31の上部には、既述のキャリア搬送機構21がキャリアCを搬送する際に、キャリアCを把持するための把持部36が設けられる。また、
図3に示すように、キャリア本体31の下部には凹部37と溝部38とが設けられ、凹部37は、第1の載置台14及び第2の載置台16のピン15に嵌合する。溝部38は、第2の載置台16のフック16aに係合し、この係合によってキャリア本体31が第2の載置台16に固定される。
【0031】
図6は、キャリアCの蓋体41の正面断面図である。
図6に示すように、蓋体41には内部空間42が形成されており、内部空間42の左右には各々水平軸回りに回動する円板状の回動部43が設けられている。回動部43は、後述のラッチキー67に係合する係合孔44と、スリット45とを備えている。各回動部43の上下には直動部46が設けられている。直動部46の基端側には、蓋体41の厚さ方向に伸びると共に前記スリット45に進入するピン46aが設けられている。回動部43が90度回動することにより、スリット45の移動に合わせて当該スリット45内をピン46aが移動して直動部46が上下に移動し、直動部46の先端をなす係合部47が、蓋体41の側面側に設けられた開口部48を介して蓋体41の外部へ出入する。図中46bは、直動部46のガイドである。蓋体41の外部へと突出した係合部47が、容器本体31の開口縁部34の係合溝35に係合することにより、蓋体41が容器本体31に固定される。なお、
図6中左側の係合部47は、固定を行うために蓋体41の外部へ突出した状態、右側の係合部47は、固定を解除するために内部空間42に引き込んだ状態を示している。実際には左右の係合部47で互いに揃って、内部空間42への引き込み及び蓋体41の外部への突出が行われる。例えば、キャリアCは、このようなロック機構を備え、蓋体41を容器本体31にロックすることができる。
【0032】
図5に示すように、蓋体41の前面には、回動部43の係合孔44(
図6参照)に重なるようにラッチキー67の差し込み口40が開口している。ラッチキー67が差し込み口40に挿入され、係合孔44まで到達し、回動部43を回転させることにより、キャリアCの蓋体41のロックを解除することができる。
【0033】
更に、
図5に示すように、蓋体41の前面には、位置合わせ用の窪み401が形成されている。対向する支持板61のレジストレーションピン601が挿入され、支持板61と、キャリアCとの位置合わせが行えるように構成されている。かかるレジストレーションピン601は、管状に構成され、窪み401に挿入された際に、真空吸着して蓋体41を保持できる構成とされてもよい。
【0034】
図4を用いて、開閉ドア5及びウエハWの搬送口20の構成について説明する。搬送口20におけるキャリア搬送領域S1側の口縁部には、キャリア本体31の開口縁部34が当接する位置にシール部材51が設けられている。また、搬送口20における側縁部側には、N
2ガス供給管52が垂直に設けられている。
図3及び
図4に示すように、このN
2ガス供給管52は、鉛直方向に延在するガス供給口53を上下に備え、ウエハWの受け渡し位置におけるキャリアCと開閉ドア5とに囲まれる閉塞空間54にN
2ガスを供給する。また搬送口20の下端部には、横長の排気口55が設けられている。
図3中55aは横方向における排気の偏りを抑えるために排気口55に設けられた多孔質体である。
【0035】
図3に示すように、開閉ドア5は、その周縁部がキャリア搬送領域S1側へ向けて凹状に屈曲された箱体として形成されており、この箱体の開口縁にはシール部材56が設けられ、当該シール部材56を介して開閉ドア5は搬送口20の縁部に密着する。
【0036】
開閉ドア5のキャリア搬送領域S1側には、蓋体41を取り外すための蓋体取り外し機構6が設けられている。この蓋体取り外し機構6は、蓋体41に対向するとともに、蓋体取り外し機構6の駆動機構を収容する対向板61を備え、対向板61は進退機構62により前後方向に移動自在に構成される。図中61aは蓋体41に対向する対向面である。なお、対向板61は、蓋体取り外し機構6の駆動機構を収容するため、収容部61と呼んでもよいこととする。
【0037】
上述のように、対向板61の内部には、蓋体取り外し機構6を駆動させるメカ部分の駆動機構が収容されるが、その内部空間に接続される排気ポート602が設けられている。排気ポート602は、真空ポンプ604に接続され、対向板61の内部空間が排気可能に構成されている。
図3において、排気ポート602は、対向板61の下部に接続された下部排気ポート602aと、対向板61の中央部に接続された中央排気ポート602bの2つが設けられ、最終的に合流して排気ポート602が真空ポンプ604に接続された構成となっている。また、しかしながら、対向板61の内部空間を排気できれば、排気ポート602は対向板61の内部空間と連通する種々の場所に設けることができる。また、排気ポート602の数も、用途に応じて種々変化させてよい。
【0038】
図7は、対向板61の内部及びその排気系の一例を示した構成図である。
図7(A)は、対向板61の一例の平面内部構成及びその排気系を示した図であり、
図7(B)は、
図7(A)のA−A断面を示した断面構成図である。
図7を用いて、対向板61の構成についてより詳細に説明する。
【0039】
図7(A)において、対向板61は、ラッチキー67と、レジストレーションピン601と、排気ポート602a、602b、602と、排気口603a、603bと、
真空ポンプ604と、シリンダ611と、ピストン612と、回転軸部材613と、連結部材614と、回動円板615とを有する。
【0040】
ラッチキー67は、キャリアCの蓋体41の差し込み口40と係合し、回転することにより、キャリアCの蓋体41のロックを解除するためのキーである。シリンダ611に挿入されたピストン612が矢印Dの方向に移動することにより、回転軸部材613が回転し、連結部材614を介して回動円板615を回動させ、回動円板615に固定されたラッチキー67が回動する動作を行う。なお、ピストン612の移動は、シリンダ611にエア等の流体が供給され、その供給量を増減させることにより行ってよい。かかる機構によりラッチキー67は回動し、縦から横に90℃回転することにより、キャリアCの蓋体41のロックを解除することができる。このように、対向板61には蓋体取り外し機構6が搭載され、対向板61の内部空間にその駆動機構が収容されている。また、ラッチキー67の駆動機構は対向板61の内部に収容されているが、ラッチキー67は、対向面61aから回動可能に突出して露出している。よって、対向板61は、ラッチキー67の突出部において、必ずしも完全な密閉構造ではない。
【0041】
レジストレーションピン601は、キャリアCの蓋体41の窪み401と係合することにより、キャリアCの位置決めを行うためのピンである。
図7(A)においては、左側上部と右側下部に、合計2つのレジストレーションピン601が設けられている。レジストレーションピン601は、管状に構成されるとともに、真空ポンプ等の排気系に接続され、真空吸着が可能に構成されてよい。つまり、レジストレーションピン601は、キャリアCの蓋体40の窪み401と係合した際に真空排気を行い、蓋体41を真空吸着して保持できるように構成されてよい。なお、レジストレーションピン601に接続される排気系及び真空ポンプは図示されていないが、排気ポート602及び真空ポンプ604とは異なる排気系及び真空ポンプを用いてもよいし、排気ポート602及び真空ポンプ604と併用するようにしてもよい。なお、レジストレーションピン601も、対向板61の対向面61aから突出して露出している。但し、レジストレーションピン601は可動とする必要は無いため、この接合部において密閉構造とすることは可能である。
【0042】
排気ポート602、排気口603a、603b及び真空ポンプ604は、対向板61の内部空間を排気するための排気手段である。一般に、対向板61の容積は1リットル程度であるが、この空間に酸素が残っていると、酸素が漏れ出し、酸素濃度を十分に低くすることができない。つまり、上述のように、対向板61は完全な密閉構造では無いため、内部空間に酸素が残っていると、これが漏れ出し、ウエハ搬送領域S2に入り込むおそれがある。従来、対向板61の内部を排気することは行われていなかったが、本実施形態に係る蓋体開閉装置においては、対向板61の内部空間を排気する。これにより、蓋体41を取り外す際に、酸素濃度を十分低下させ、窒素置換を迅速かつ確実に行うことができる。
【0043】
なお、排気口603aは対向板61の下部、排気口603bは対向板61の中央部に設けられるとともに、それぞれ排気ポート602a、602bに接続され、排気ポート602で合流して真空ポンプ604に接続されている。かかる構成により、真空ポンプ604の真空排気により、排気口603a、603bの各々の場所から対向板61の内部空間の排気を行うことができる。しかしながら、これら排気口603a、603b及び排気ポート602a、602bの設置位置及び設置数は用途に応じて自由に設定することができる。また、
図7(A)においては、1つの真空ポンプ604で排気口603a、603b及び排気ポート602a、602bの双方の排気を行っているが、各々別な真空ポンプに接続して排気を行うようにしてもよい。このように、排気口603a、603b、排気ポート602a、602b、602及び真空ポンプ604の配置構成は、用途に応じて種々のものとすることができる。
【0044】
また、真空ポンプ604は、対向板61の内部空間の排気を行うことができる限り、種々の排気量のものを排気ポンプとして用いることができる。例えば、吐出空気量が1L/min以上の真空ポンプ604を用いることができ、好ましくは3L/min以上、より好ましくは5L/min以上の真空ポンプ604を用いることができる。具体的な一例としては、吐出空気量が7L/min程度の真空ポンプ604を用いてもよい。なお、吐出空気量は、多い分には問題無いので、最大空気吐出流量というのは特に存在しない。
【0045】
図7(B)は、対向板61のA−A断面図であり、ラッチキー67が突出した部分が示されている。回動円板615上にラッチキー67が固定された構成が示されている。
【0046】
このように、対向板61の内部空間を排気する排気手段602a、602b、602、603a、603b、604を設けたことにより、対向板61から漏れる酸素を大幅に低減することができ、キャリアCの蓋体41を取り外す際の窒素置換を迅速かつ確実に行うことができる。
【0047】
また、
図7で説明したように、対向板61の内部には、ラッチキー67を駆動するための駆動機構として、種々の機械要素が収容されている。これらは、機械動作をすると、塵等の異物を発生する蓋然性が高い。本実施形態に係る蓋開閉装置によれば、対向板61の内部空間を排気する際、これらの異物も含めて排気し、内部を清浄化することができるので、蓋体41の取り外しの際の清浄度も高めることができる。
【0048】
図8は、対向板61が、蓋体41を取り外すために蓋体41に密着固定した状態の一例を示した側断面図である。
図8に示すように、レジストレーションピン601が蓋体41の窪み401に挿入されるともに、ラッチキー67が蓋体41の差し込み口40と係合し、蓋体41の内部に挿入された状態となっている。このとき、対向板61の内部空間が十分に排気された状態となっていることにより、対向板61から外部に漏洩する酸素量は極めて少なくなり、低酸素の状態で蓋体41を開放することが可能となる。
【0049】
図9は、実施形態1に係る蓋体開閉装置とキャリアC(FOUP)との関係を示した図である。
図9に示すように、FOUPの蓋体41を取り外す際、N
2置換が行われるべき箇所は、キャリア本体31の内部空間(FOUP内部)と、蓋体41の内部空間と、蓋体41の蓋体取り外し機構6の駆動機構を収容している対向板61の内部空間と、開閉ドア5とFOUPとの間の内部空間との4つがある。例えば、4つの空間の容量は、キャリア本体31の内部空間が約40リットル、蓋体41の内部空間が約1リットル、対向板61の内部空間が約1リットル、開閉ドア5とFOUPとの間の内部空間が約4〜5リットル程度と考えられる。
【0050】
ここで、最も大きい容量(約40リットル)のキャリア本体31内の内部空間は従来からN
2置換が行われており、また、次に容量の大きい(約4〜5リットル)開閉ドア5とFOUPとの間の内部空間も、
図3で説明したように、排気口55から排気され、酸素排気が行われている。
【0051】
しかしながら、少容量(約1リットル)のため大きな問題とされなかった蓋体取り外し機構6の対向板61の内部空間、蓋体41の内部空間については、従来は排気が行われていなかった。本実施形態では、排気ポート602を設けて対向板61の内部空間を排気することにより、効率的に酸素を排気し、次にN
2が供給されたときに迅速にN
2置換を行うことができる。
【0052】
なお、蓋体41の内部も排気を行うことで、酸素低減の効果を高めることができるが、この点については、実施形態2において説明する。
【0053】
図10は、実施形態1に係る蓋体開閉装置の流体回路の一例を示した図である。
図10において、蓋体取り外し機構6の対向板61の内部空間に、排気口603a、排気ポート602aから排気ポート602を経て真空ポンプ604に接続される排気系と、排気口603b、排気ポート602bから排気ポート602に合流して真空ポンプ604に接続される排気系が示されている。
図10に示すように、対向板61の内部は比較的小容量であるため、1つの真空ポンプ604で共通に真空排気することができている。なお、
図10において、ラッチキー67の駆動機構と、蓋体取り外し機構6の前後移動の駆動機構とが模式的に示されているが、これは、排気口603a、603bを、駆動用のエアを吸引するための排気系と兼ねることができるからである。つまり、
図7において、シリンダ611とピストン612からなる駆動機構を示したが、このようなエアで動作する駆動機構付近に、駆動に用いたエアが漏れないように排気口603a、603bを配置するとともに、これを利用して対向板61の内部空間も排気する構成とすることができる。
【0054】
その他、
図10には、対向板61の対向面61aに設けられたレジストレーションピン601の真空吸着用の排気系や、開閉ドア5の上下動による開閉を行う駆動系のエア配管が示されている。このように、駆動用のエア配管、真空吸着用の排気配管等とのバランスを考慮して、排気口603a、603b、排気ポート602a、602b、602及び真空ポンプ604からなる排気系を構成してもよい。
【0055】
なお、
図1に示すように、この縦型熱処理装置1には、例えばコンピュータからなる制御部1Aが設けられている。制御部1Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えており、プログラムには、制御部1Aから縦型熱処理装置1の各部に制御信号を送り、既述の各処理工程を進行させるように命令(各ステップ)が組み込まれている。その制御信号によりキャリアCの搬送、ウエハWの搬送、蓋体41の開閉、開閉ドア5の開閉、蓋体41へのN
2ガスの供給などの動作が制御され、後述のようにウエハWの搬送及び処理が行われる。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されて制御部1Aにインストールされる。
【0056】
次に、
図1、2及び
図11〜15を用いて、実施形態1に係る蓋体開閉装置の動作の一例について説明する。なお、今まで説明したのと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図1及び
図2において、先ずクリーンルームの天井部に沿って移動する図示しない自動搬送ロボットによりキャリアCが第1の載置台14に載置される。続いてキャリア搬送機構21により前記キャリアCが第2の載置台16に搬送され、フック16aにより第2の載置台16に固定され、第2の載置台16が隔壁2へ向けて移動する。
【0058】
図11は、キャリアCが搬送口20に密着した状態を示した図である。
図11に示すように、第2の載置
台16が隔壁2に向けて移動することにより、まず、キャリアCの開口縁部34が隔壁2の搬送口20の周りの口縁部にあるシール部材51に気密に当接する。
【0059】
続いてガス供給口53からN
2ガスがキャリアCと開閉ドア5との間の閉塞空間54に
供給され、排気口55に流れて排気されて、閉塞空間54が大気雰囲気から窒素雰囲気に
置換される。そして対向板61が蓋体41に向けて前進する。なお、N
2ガスの供給と、排気口55からの排気は、以後の動作においても継続される。
【0060】
図12は、蓋体取り外し機構6の対向板61が蓋体41に接触した状態を示した図である。対向板61が前進して蓋体41に接触すると、キー67が蓋体41の前面の差し込み口40を介して蓋体41の内部空間42に進入し、回動部43の係合孔44に差し込まれて回動部43と係合する。
【0061】
図13は、対向板61が蓋体41を真空吸着し、蓋体41が対向板に固定された状態を示す図である。この状態で、真空ポンプ604を起動させ、対向板61の内部空間の排気を開始する。これにより、対向板61内の酸素濃度が低減される。
【0062】
次いで、排気を継続した状態で、キー67が90度回動して蓋体41の回動部43が回動し、それによって直動部46の先端の係合部47が蓋体41内に引き込まれ、当該係合部47と容器本体31の係合溝35との係合が解除される。これにより、蓋体41のキャリア本体31に対する結合が解除され、キー67に蓋体41が保持される。
【0063】
図14は、蓋体41が取り外された状態を示した図である。蓋体41とキャリア本体31とのロックが解除された後は、取り外し機構6が、キー67により蓋体41を保持した状態で開閉ドア5へ向けて後退して、キャリア本体31のウエハWの取り出し口33が開放される。なお、この間も、対向板61内の排気は継続する。
【0064】
ここで、ガス供給口53からN
2ガスは継続的に供給されており、低酸素な雰囲気が形成されているので、短時間でN
2置換が達成される。
【0065】
図15は、開閉ドア5が下降し、ウエハが開放された状態を示した図である。取り外し機構6が後退し、開閉ドア5の内壁面に到達した後は、開閉ドア5も一体となって後退する。その後、開閉ドア5は下降し、搬送口20から退避して、
図15に示すように、キャリアC内がウエハ搬送領域S2に開放される。
【0066】
そして、
図1に示すように、ウエハ搬送機構27によりキャリアC内のウエハWが順次取り出されてウエハボート23に移載される。キャリアC内のウエハWが空になると、上述と逆の動作でキャリアCの蓋体41が閉じられると共にキャリア本体31に固定される。その後、第2の載置台16が後退してキャリアCが隔壁2から離れ、キャリア搬送機構21によりキャリア保管部18に搬送されて一時的に保管される。
【0067】
一方、ウエハWが搭載されたウエハボート23は、熱処理炉22内に搬入され、ウエハWに熱処理例えばCVD、アニール処理、酸化処理などが行われる。その後、処理を終えたウエハWをキャリアCに戻すときも、キャリアCからウエハWを払い出すときと同様の手順で蓋体41が開放される。
【0068】
このように、本実施形態に係る蓋体開閉装置、蓋体開閉方法及び熱処理装置によれば、蓋体取り外し機構6の駆動機構を収納した対向板61の内部空間を排気することにより、酸素濃度を低減させ、N
2置換を迅速かつ確実に行うことができる。
【0069】
次に、
図16を用いて、本実施形態に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法の処理フローについて説明する。
図16は、本実施形態に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法の処理フロー図である。
図16においても、今まで説明した構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図16において、ステップS100では、FOUP(キャリアC)をFIMS、つまり搬送口20の前の所定位置に載置する。
【0071】
ステップS110では、FOUPが前進し、搬送口20の方に進む。
【0072】
ステップS120では、FOUPの口縁部が、搬送口20の口縁部にシール
部材51を介して密着し、固定される。なお、この段階で、ガス供給口53から窒素ガスの供給が開始されることが好ましい。
【0073】
ステップS130では、蓋体取り外し機構6の対向板61の内部空間が排気され、空間内の酸素が排気される。これにより、対向板61から酸素が漏出することを防止することができる。
【0074】
ステップS140では、対向板61が前進してFOUPの蓋体41に接触し、真空吸着により蓋体41が対向板61に固定される。また、同時に、ラッチキー67が、蓋体41の差し込み口40に挿入され、係合孔44まで到達して係合する。
【0075】
ステップS150では、ラッチキー67が回動し、FOUPの蓋体41のロックが解除される。
【0076】
ステップS160では、対向板61が蓋体41を保持したまま後退し、FOUPの蓋体41が取り外される。
【0077】
ステップS170では、ガス供給口53から供給されているN
2ガスにより、N
2置換が行われ、閉塞空間54内は窒素で満たされる。
【0078】
ステップS180では、対向板61が開閉ドア5の内壁面まで到達したら、開閉ドア5が後退する。
【0079】
ステップS190では、開閉ドア5が下降し、ウエハWが縦型熱処理装置1のウエハ搬送領域S2に開放される。
【0080】
ステップS200では、ウエハの移載が行われ、熱処理炉22への所定の搬入位置、つまりウエハボー
ト23に移載される。
【0081】
ステップS210では、酸素排気が終了され、処理フローが終了する。しかしながら、酸素排気は継続して行ってもよく、ステップS210は必ずしも実行しなくてもよい。
【0082】
このような処理フローを実行することにより、閉塞空間54において、酸素濃度が低減されているため、速やかに窒素置換を行うことができる。
【0083】
なお、本処理フローにおいては、FOUPが搬送口に固定された段階で蓋体取り外し機構6の対向板61の内部空間の排気を開始したが、ステップS150、又はステップS160のFOUPの蓋体41が開放されるまでに酸素排気が行われていればよく、もう少し遅いタイミング、例えばステップS150の段階で酸素排気を行うようにしてもよい。
【0084】
酸素排気の開始のタイミングは、FOUPの蓋体41が開放される前であれば、用途に応じて種々のタイミングに設定することができる。
【0085】
〔実施例〕
図17は、実施形態1に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法を実施した場合の実施結果の一例を示した図である。
図17において、Aが本実施例に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法の実施結果の特性を示し、Bが従来例に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法の実施結果の特性を示している。横軸は時間〔s〕、縦軸は酸素濃度〔ppm〕を示している。
【0086】
図17に示すように、酸素濃度は時間の経過とともに減少してゆき、窒素置換が進むが、窒素濃度が30ppmに到達した時間を比較すると、本実施例が233sであり、従来例が364sとなっている。
【0087】
つまり、蓋体取り外し機構の駆動機構の収容部の排気を行う本実施例に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法の方が、排気を行わない従来例に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法よりも短い時間で目標とする酸素濃度に到達できることが示されている。
【0088】
このように、本実施例に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法によれば、蓋体取り外し機構の駆動機構の収容部の排気を行うことにより、酸素濃度を低減させ、窒素置換を迅速かつ確実に行うことができる。
【0089】
〔実施形態2〕
図18は、本発明の実施形態2に係る蓋体開閉装置、蓋体開閉方法及び熱処理装置の対向板の一例を示した斜視図である。実施形態2においては、ラッチキー67にも排気機構を設け、ラッチキー67がキャリアCの蓋体41に挿入された際に、ラッチキー67から蓋体41の内部空間の排気を行う。
【0090】
よって、
図18においては、実施形態1の変更部分である対向板61の箇所のみを示している。その他の構成要素については、実施形態1の構成要素をそのまま適用することができる。
【0091】
図18において、対向板61の内部には内部空間63が形成され、この内部空間63には水平軸回りに回動する円形状の回動部64と、回動部64に接続され、当該回動部64を回動させるためのエアシリンダ65とが設けられている。回動部64の回転中心から対向面61aを突き抜けるように横方向に棒状の接続部66が伸びており、接続部66の先端には例えば円い棒状のラッチキー67が設けられている。ラッチキー67は、蓋体41の回動部43の係合孔44と係合するように形成されている。ラッチキー67の形状としてはこの係合が行えるものであればよいので図示した円柱形状には限られず、例えば角柱形状であったり、これら円柱または角柱の角部を丸く形成したものであったりしてもよい。
【0092】
ラッチキー67は、その長さ方向の両端と、接続部66の延長方向と、前記延長方向から見た左右方向とに排気口68を備えたパージガス吐出部として構成されている。各排気口68の口径は例えば1mm〜2mmである。各排気口68の上流側は、接続部66、回動部64に夫々形成された排気路(図示せず)に接続されており、排気路は配管69に連通している。配管69の上流側は真空ポンプ605に接続されている。配管69はいわゆるフレキシブル配管として構成され、回動部64の回動を阻害しないようにこの回動に追従して撓むように構成されている。
【0093】
このように、実施形態2においては、ラッチキー67に排気口68を設け、これを排気路及び配管69で真空ポンプ605に接続し、ラッチキー67からも排気が可能に構成している。このような構成を有し、キャリアCの蓋体41の差し込み口40及び係合孔44とラッチキー67が係合した際に、排気口68から排気を行うことにより、蓋体41の内部空間を排気することができる。
【0094】
図19は、実施形態2に係る蓋体開閉装置の構成の一例を示した断面図である。
図19に示すように、蓋体41の内部空間に、ラッチキー67が挿入された状態となっている。この状態で、排気ポンプたる真空ポンプ605を起動させることにより、配管69を介して蓋体41の内部空間を排気することができる。また、実施形態1と同様に、対向板61の内部空間は、排気ポート602を介して真空ポンプ605で排気することができ、酸素濃度を低減させることができる。
【0095】
このように、実施形態2に係る蓋体開閉装置及び蓋体開閉方法によれば、対向板61の内部空間のみならず、蓋体41の内部空間をも酸素排気することができ、更に酸素濃度を低減させることができ、N
2置換を更に迅速かつ確実に行うことができる。
【0096】
なお、実施形態2においては、実施形態1と異なる蓋体取り外し機構の駆動部の構成を示しているが、実施形態1と同様の駆動部の構成を有してもよく、駆動部の構成は問わない。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。