特許第5993263号(P5993263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993263
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20160901BHJP
【FI】
   H03F3/45 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-208054(P2012-208054)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-64165(P2014-64165A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】新井 義明
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−219617(JP,A)
【文献】 特開2008−098845(JP,A)
【文献】 特開2007−129722(JP,A)
【文献】 特公平06−091379(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対して差動増幅を行う差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力を電圧・電流変換して出力するプリドライバ回路と、前記プリドライバ回路の出力により駆動される出力段とを具備し、
前記出力段は、PNP型の第1の出力段用トランジスタとNPN型の第2の出力段用トランジスタを有し、前記第2の出力段用トランジスタにシンク電流が流入するよう設けられてなる演算増幅器であって、
前記プリドライバ回路を構成するプリドライバ用トランジスタの動作状態をモニタし、そのモニタ結果に応じて前記第2の出力段用トランジスタのベースへの電流供給を制御可能に構成されてなるシンク電流補助回路が設けられ、
前記シンク電流補助回路は、PNP型で、エミッタが前記第1の出力用トランジスタのベースに接続されてなる前記プリドライバ用トランジスタの電流検出を行う電流検出回路と、前記電流検出回路により前記プリドライバ用トランジスタのコレクタ電流が検出された場合には、前記第2の出力段用トランジスタのベース電流を一定以下に抑える一方、前記プリドライバ用トランジスタのコレクタ電流の途絶が検出された場合には、ブーストした電流を前記第2の出力段用トランジスタのベース電流へ供給可能に構成された電流補助回路とを具備してなり、
前記電流検出回路は、PNP型の電流検出回路用トランジスタと電流検出回路用定電流源とを具備し、前記電流検出回路用トランジスタのベースは、前記プリドライバ用トランジスタのベースに接続され、コレクタには第2の電源電圧が印加可能とされる一方、前記電流検出回路用トランジスタのエミッタは前記電流検出回路用定電流源の一方の端子に接続され、前記電流検出回路用定電流源の他方の端子には第1の電源電圧が印加可能に構成されてなり、
前記電流補助回路は、NPN型の第1の電流補助回路用トランジスタと、PNP型の第2の電流補助回路用トランジスタと、電流補助回路用バイアス用定電圧源とを具備し、前記第1の電流補助回路用トランジスタのベースは、前記電流検出回路用トランジスタのエミッタに接続され、コレクタには第1の電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1の電流補助回路用トランジスタのエミッタは前記第2の電流補助回路用トランジスタのエミッタと接続され、前記第2の電流補助回路用トランジスタのコレクタは前記第2の出力段用トランジスタのベースに接続される一方、前記第2の電流補助回路用トランジスタのベースは、前記電流補助回路用バイアス用定電圧源の負極側に接続され、前記電流補助回路用バイアス用定電圧源の正極側には第1の電源電圧が印加可能に構成されてなることを特徴とする演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算増幅器に係り、特に、レイル・ツー・レイル動作可能な演算増幅器におけるシンク電流能力の向上等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラトランジスタによって構成され、レイル・ツー・レイル出力を可能とした演算増幅器としては、例えば、特許文献1等に提案されたたものなどがある。
図5には、特許文献1に開示された回路構成例を、理解を容易とするため簡略化した従来回路例が示されており、以下、同図を参照しつつ、かかる従来回路について説明する。
この演算増幅器は、電圧増幅器A1と、プリドライバ用トランジスタQ1と、プッシュプル出力段102Aと、アイドリング電流供給回路104Aとに大別されて構成されたものとなっている。
【0003】
かかる構成において、電圧増幅器A1の入力端子+INと−INの間に、差動電圧信号が入力されると、その増幅電圧出力がプリドライバ用トランジスタQ1のベースに印加され、電流変換されてエミッタに電流信号として出力される。
この電流信号は、トランジスタQ2、Q3により構成されたプッシュプル出力段102Aを駆動することとなる。
プッシュプル出力段102Aのアイドリング電流は、アイドリング電流供給回路104Aにより供給されるようになっている。このアイドリング電流供給回路104Aは、第4及び第5のトランジスタQ4,Q5と、2つの定電流源I1,I2と、2つの定電圧源Vb1,Vb2とから構成されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平6−91379号公報(第3−4頁、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来回路において、電圧増幅器A1の2つの入力間に大きな電圧差が生じ、電圧増幅器A1の出力電位が極端に下降すると、トランジスタQ1、Q2からなるダーリントン構成により、大きなソース電流を流すことが可能であるが、シンク電流の場合には、ソース電流のように大きな電流を得ることは難しい。
【0006】
以下、上記従来回路におけるソース電流能力について説明する。
まず、電圧増幅器A1の2つの入力間に大きな電圧差が生じ、電圧増幅器A1の出力電位が極端に上昇すると、トランジスタQ1がオフする。
これに対応して、電流源I1の電流が全て、トランジスタQ4、Q5を介してトランジスタQ3のベースと電流源I2に供給される。この状態が、トランジスタQ3のベースに供給される電流が最大となり、トランジスタQ3のコレクタ電流が最大となる条件、すなわち、演算増幅器のシンク電流が最大となる条件である。
しかして、シンク電流能力ISINKは、下記する式1により表される。
【0007】
ISINK≒βQ3×(I1−I2)・・・式1
【0008】
ここで、βQ3はトランジスタQ3の電流増幅率、I1は電流源I1の電流値、I2は電流源I2の電流値である。
式1で表されたように、先に図5に示された構成にあっては、シンク電流能力は、プロセス定数であるβと電流源I1、I2の電流値によって決定されることとなる。
【0009】
したがって、図5に示された構成において、シンク電流能力を向上させるためには、電流値I1を増加させる必要がある。
例えば、シンク電流能力として10mA必要な場合、仮に、βQ3の値を100とすると、I1を100μA以上にする必要がある。
このように、図5に示された従来回路においては、低消費電流で仕様する場合に高いシンク電流能力を得ることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、低消費電流下であっても、レイル・ツー・レイル動作と高いソース電流能力を維持しつつ、高いシンク電流能力を確保可能とする演算増幅器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る演算増幅器は、
入力信号に対して差動増幅を行う差動増幅回路と、前記差動増幅回路の出力を電圧・電流変換して出力するプリドライバ回路と、前記プリドライバ回路の出力により駆動される出力段とを具備し、
前記出力段は、PNP型の第1の出力段用トランジスタとNPN型の第2の出力段用トランジスタを有し、前記第2の出力段用トランジスタにシンク電流が流入するよう設けられてなる演算増幅器であって、
前記プリドライバ回路を構成するプリドライバ用トランジスタの動作状態をモニタし、そのモニタ結果に応じて前記第2の出力段用トランジスタのベースへの電流供給を制御可能に構成されてなるシンク電流補助回路が設けられ
前記シンク電流補助回路は、PNP型で、エミッタが前記第1の出力用トランジスタのベースに接続されてなる前記プリドライバ用トランジスタの電流検出を行う電流検出回路と、前記電流検出回路により前記プリドライバ用トランジスタのコレクタ電流が検出された場合には、前記第2の出力段用トランジスタのベース電流を一定以下に抑える一方、前記プリドライバ用トランジスタのコレクタ電流の途絶が検出された場合には、ブーストした電流を前記第2の出力段用トランジスタのベース電流へ供給可能に構成された電流補助回路とを具備してなり、
前記電流検出回路は、PNP型の電流検出回路用トランジスタと電流検出回路用定電流源とを具備し、前記電流検出回路用トランジスタのベースは、前記プリドライバ用トランジスタのベースに接続され、コレクタには第2の電源電圧が印加可能とされる一方、前記電流検出回路用トランジスタのエミッタは前記電流検出回路用定電流源の一方の端子に接続され、前記電流検出回路用定電流源の他方の端子には第1の電源電圧が印加可能に構成されてなり、
前記電流補助回路は、NPN型の第1の電流補助回路用トランジスタと、PNP型の第2の電流補助回路用トランジスタと、電流補助回路用バイアス用定電圧源とを具備し、前記第1の電流補助回路用トランジスタのベースは、前記電流検出回路用トランジスタのエミッタに接続され、コレクタには第1の電源電圧が印加可能とされる一方、前記第1の電流補助回路用トランジスタのエミッタは前記第2の電流補助回路用トランジスタのエミッタと接続され、前記第2の電流補助回路用トランジスタのコレクタは前記第2の出力段用トランジスタのベースに接続される一方、前記第2の電流補助回路用トランジスタのベースは、前記電流補助回路用バイアス用定電圧源の負極側に接続され、前記電流補助回路用バイアス用定電圧源の正極側には第1の電源電圧が印加可能に構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回路の動作状態に応じてシンク電流の流れるプッシュプル段を構成するトランジスタのベース電流を、シンク電流補助回路により従来に比して格段に増大できるようにしたので、低消費電流下でも高いシンク電流能力を維持することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における演算増幅器の基本回路構成例を示す回路図である。
図2図1に示された基本回路構成例におけるシンク電流補助回路の具体回路構成例を示す回路図である。
図3図2に示された回路構成例におけるより具体的な回路構成例を示す回路図である。
図4】本発明の実施の形態における演算増幅器のシンク電流と出力端子電圧との関係のシミュレーション結果を示す特性線図である。
図5】従来回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における演算増幅器の基本回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この演算増幅器は、差動増幅回路としての電圧増幅器(図1においては「A1」と表記)20と、プリドライバ回路101と、プッシュプル出力段102と、シンク電流補助回路103と、アイドリング電流供給回路104とに大別されて構成されたものとなっている。
電圧増幅器20は、非反転入力端子(図1においては「+IN」と表記)35と、反転入力端子(図1においては「−IN」と表記)36に外部から印加された信号の差分に応じた電圧信号を出力するよう構成されたものである。
【0015】
プリドライバ回路101は、プリドライバ用トランジスタとしてのPNP型の第1のトランジスタ(図1においては「Q1」と表記)1を用いてなり、電圧増幅器20の出力電圧を電流変換してプッシュプル出力段102を駆動するようになっている。
具体的には、第1のトランジスタ1のベースは、電圧増幅器20の出力端子に接続され、電圧増幅器20の出力電圧が印加されるようになっている。
また、第1のトランジスタ1のエミッタと第1の電源ライン41との間には、第1の定電流源21が直列接続されて設けられると共に、第1のトランジスタ1のエミッタは、プッシュプル出力段102を構成する第2のトランジスタ(図1においては「Q2」と表記)2のベースと接続される一方、コレクタは第2の電源ライン42に接続されている。
なお、第1の電源ライン41には、所定の第1の電源電圧が、第2の電源ライン42には、所定の第2の電源電圧が、それぞれ印加されるものとなっている。
【0016】
プッシュプル出力段102は、PNP型の第2のトランジスタ(第1の出力段用トランジスタ)2とNPN型の第3のトランジスタ(図1においては「Q3」と表記)3とから構成されており、AB級出力段となっている。
すなわち、第2及び第3のトランジスタ2,3は、コレクタが相互に接続されると共に、出力端子37に接続されている。
また、第2のトランジスタ2のエミッタは第1の電源ライン41に、第3のトランジスタ(第2の出力段用トランジスタ)3のエミッタは第2の電源ライン42に、それぞれ接続されている。
【0017】
アイドリング電流供給部104は、第2及び第3のトランジスタ2,3のアイドリング電流の供給を行うもので、PNP型の第4のトランジスタ(図1においては「Q4」と表記)4と、NPN型の第5のトランジスタ(図1においては「Q5」と表記)5と、2つの定電圧源31,32と、第2の定電流源22とを具備して構成されたものとなっている。
具体的には、第4のトランジスタ4のエミッタと第5のトランジスタ5のコレクタは、共に第2のトランジスタ2のベースに接続される一方、第4のトランジスタ4のコレクタと第5のトランジスタ5のエミッタは、共に第3のトランジスタ3のベースに接続されている。
また、第4のトランジスタ4のコレクタと第2の電源ライン42との間には、第2の定電流源22が接続されている。
【0018】
さらに、第4のトランジスタ4のベースには、第1の定電圧源31の負極側が接続され、この第1の定電圧源31の正極側は第1の電源ライン41と接続されている。
また、第5のトランジスタ5のベースには、第2の定電圧源32の正極側が接続され、この第2の定電圧源32の負極側は第2の電源ライン42と接続されている。
【0019】
シンク電流補助回路103は、第1のトランジスタ1の動作状態をモニタし、そのモニタ結果に応じて、第3のトランジスタ3のベースへの電流供給を制御可能としたもので、換言すれば、第1のトランジスタ1の動作状態に応じて第3のトランジスタ3のベースへの電流供給を制御可能としたものである。
すなわち、シンク電流補助回路103は、第1のトランジスタ1のコレクタ電流ICQ1が流れている状態において、第3のトランジスタ3のベースへの供給電流を一定以下に抑える一方、コレクタ電流ICQ1が途絶した状態においてのみ、ブーストした電流を第3のトランジスタ3のベースへ供給するよう構成されたものとなっている。
シンク電流補助回路103のこのような動作、特に、コレクタ電流ICQ1が途絶した状態においてのみ、ブーストした電流を第3のトランジスタ3のベースへ供給することで、出力端子37における出力電流のブーストが行われるものとなっている。
【0020】
図2には、シンク電流補助回路103を具体回路化した回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路について説明する。
なお、図1に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この回路構成例において、シンク電流補助回路103は、電流検出回路103Aと、電流補助回路103Bとから構成されたものとなっている。
【0021】
電流検出回路103Aは、第1のトランジスタ1の動作状態をモニタするよう構成されてなるもので、この構成例においては、PNP型の第6のトランジスタ(図2においては「Q6」と表記)6と第3の定電流源(電流検出回路用定電流源)23とを具備して構成されたものとなっている。
すなわち、第6のトランジスタ(電流検出用トランジスタ)6のベースは、電圧増幅器20の出力端子に接続される一方、エミッタと第1の電源ライン41との間に第3の定電流源23が直列接続されて設けられ、コレクタは第2の電源ライン42に接続されたものとなっている。
【0022】
電流補助回路103Bは、電流検出回路103Aの動作に応じて、換言すれば、モニタされた第1のトランジスタ1の動作状態に応じて、第3のトランジスタ3のベースへの電流供給を制御可能に構成されたものである。
かかる電流補助回路103Bは、NPN型の第7のトランジスタ(図2においては「Q7」と表記)7と、PNP型の第8のトランジスタ(図2においては「Q8」と表記)8と、第3の定電圧源(電流補助回路用バイアス用定電圧源)33とを具備して構成されたものとなっている。
【0023】
すなわち、第7のトランジスタ(第1の電流補助回路用トランジスタ)7と第8のトランジスタ(第2の電流補助回路用トランジスタ)8は、エミッタ同士が接続される一方、第7のトランジスタ7のコレクタは、第1の電源ライン41に接続され、第8のトランジスタ8のコレクタは第3のトランジスタ3のベースに接続されたものとなっている。
また、第7のトランジスタ7のベースは、第6のトランジスタ6のエミッタに接続される一方、第8のトランジスタ8のベースには、第3の定電圧源33の負極側が接続されており、この第3の定電圧源33の正極側は第1の電源ライン41に接続されている。
【0024】
次に、第1乃至第3の定電圧源31〜33を、より具体化した回路構成例が図3に示されており、以下、同図を参照しつつ、この回路構成例について説明する。なお、図1図2に示された回路構成例における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この回路構成例においては、第1の定電圧生成部105と第2の定電圧生成部部106とが設けられており、第1の定電圧生成部105は、先に図2に示された第1の定電圧源31と第3の定電圧源33の機能を果たすものとなっており、第2の定電圧生成部106は、図2に示された第2の定電圧源32の機能を果たすものとなっている。
【0025】
第1の定電圧生成部105は、PNP型の第9及び第10のトランジスタ(図3においては、それぞれ「Q9」、「Q10」と表記)9,10と、ダイオード(図3においては「D1」と表記)15と、第4の定電流源24とを具備して構成されたものとなっている。
すなわち、まず、第9のトランジスタ9のエミッタは第10のトランジスタ10のコレクタ及びベースと接続され、第10のトランジスタ10のエミッタは第1の電源ライン41に接続されている。
【0026】
また、第9のトランジスタ9のベースとコレクタは、共に第4のトランジスタ4のベースに接続されると共に、ダイオード15のアノードに接続されている。
ダイオード15のカソードと第2の電源ライン42との間には、第4の定電流源24が直列接続されて設けられると共に、ダイオード15のカソードは第8のトランジスタ8のベースに接続されている。
【0027】
また、第8のトランジスタ8は、NPN型の第13及び第14のトランジスタ(図3においては、それぞれ「Q13」、「Q14」と表記)13,14により構成されるカレントミラーを介して、第1のトランジスタ1と接続されている。
すなわち、第13及び第14のトランジスタ13,14は、第13のトランジスタ13のコレクタとベースが共に第14のトランジスタ14のベースと接続されると共に、第1のトランジスタ1のコレクタと接続されている。
そして、第14のトランジスタ14のコレクタは、第8のトランジスタ8のコレクタと接続される一方、第13及び第14のトランジスタ13,14のエミッタは、共に第2の電源ライン42と接続されている。
【0028】
第2の定電圧生成部106は、NPN型の第11及び第12のトランジスタ(図3においては、それぞれ「Q11」、「Q12」と表記)11,12と、第5の定電流源25とを具備して構成されたものとなっている。
すなわち、まず、第11のトランジスタ11のコレクタと第1の電源ライン41との間には、第5の定電流源25が直列接続されて設けられると共に、第11のトランジスタ11のコレクタとベースが共に、第5のトランジスタ5のベースに接続されている。
また、第11のトランジスタ11のエミッタは、第12のトランジスタ12コレクタとベースに接続され、第12のトランジスタ12のエミッタは第2の電源ライン42に接続されている。
【0029】
次に、かかる構成における動作について説明する。
まず、電流補助回路103Bを構成する第8のトランジスタ8は、電流バッファとして機能するものとなっている。第7及び第8のトランジスタ7,8がトランジスタとして正常に動作する範囲であれば、第8のトランジスタ8のコレクタ電位に関係なく第3のトランジスタ3のベースに、第7のトランジスタ7のエミッタ電流IEQ7とほぼ同等の電流が第8のトランジスタ8を介して出力される。
【0030】
仮に、第8のトランジスタ8がなく、第7のトランジスタ7のエミッタが、第3のトランジスタ3のベースに直接接続された構成を採る場合には、電源電圧、すなわち、第1の電源ライン41の電位と第2の電源ライン42の電位の電位差の値が、3×Vbeのみに限定されることとなる。
これは、第7のトランジスタ7のエミッタが、第1及び第2のトランジスタ1,2、第6及び第7のトランジスタ6,7のベース・エミッタ間電圧によって、第1の電源ライン41から2×Vbe分低い電圧に固定され、第3のトランジスタ3のベースは、第3のトランジスタ3のベース・エミッタ間電圧によって、第2の電源ライン42から1×Vbe分高い電圧に固定されるためである。
【0031】
このような第3のトランジスタ3のベースに対する第8のトランジスタ8の作用を前提に、以下、全体の回路動作について説明する。
最初に、電圧増幅器20の2つの入力+INと−INの電位差が小さく、第1のトランジスタ1が動作してコレクタ電流が流れている状態にあっては、第6のトランジスタ6も動作する。このとき、第3の定電流源23の電流I3は、殆ど第6のトランジスタ6のエミッタに流入するため、第7のトランジスタ7のベース電流IBQ7は非常に小さくなる。これと同時に、第1のトランジスタ1のコレクタ電流ICQ1は、第13及び第14のトランジスタ13,14によって構成されたカレントミラーによりICQ14としてミラーされているため、ICQ1と同等の電流が第3のトランジスタ3のベースから流出する。
【0032】
その結果、電圧増幅器20の2つの入力+INと−INの電位差が小さく、第1のトランジスタ1が動作している状態にあっては、シンク電流補助回路103から第3のトランジスタ3のベースへ供給される電流は小さくなるため、アイドリング電流が抑えられることとなる。
【0033】
次に、電圧増幅器20の2つの入力+INと−INの電位差が大きくなり、電圧増幅器20の出力電位が極端に上昇すると、第1及び第6のトランジスタ1,6が共にオフ状態となる。
第1のトランジスタ1がオフ状態となることで、そのコレクタ電流ICQ1と、カレントミラー電流ICQ14は零となると共に、第1の定電流源21の電流I1は、全て第3のトランジスタ3のベースに流入する。同時に、第6のトランジスタ6がオフとなることで、第3の定電流源23の電流I3は全て第7のトランジスタ7のベースに流入するため、I3=IBQ7となる。
【0034】
したがって、第7のトランジスタ7のエミッタ電流IEQ7は、電流I3を(β+1)倍した電流となる。なお、ここで、βは、第7のトランジスタ7の電流増幅率である。
しかして、第3のトランジスタ3のベース電流は、下記する式2により表され、このときの第3のトランジスタ3のシンク電流、すなわち、コレクタ電流ISINKは下記する式3により表されることとなる。
【0035】
IBQ3≒(βQ7+1)×I3+(I1−I2)・・・式2
【0036】
ISINK≒βQ3×{(βQ7+1)×I3+(I1−I2)}・・・式3
【0037】
図4には、I1≒3μA、I2≒1μA、I3≒1μAの条件の下、上述した回路構成におけるシンク電流と出力電圧との関係をシミュレーションした結果が、従来回路(図5参照)の同様なシミュレーション結果と共に示されており、以下、同図について説明する。
図4において、横軸はシンク電流を、縦軸は出力端子電圧を、それぞれ表しており、点線の特性線(符号Aを付した特性線)は、従来回路のシミュレーション結果を、実線の特性線(符号Bを付した特性線)は本発明の実施の形態における回路のシミュレーション結果を、それぞれ示している。かかる図4によれば、本発明の実施の形態における回路のシンク電流能力が従来回路に比して格段に向上されていることが確認できるものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
レイル・ツー・レイル出力と高いソース電流能力を維持しつつ高いシンク電流能力が所望される演算増幅器に適用できる。
【符号の説明】
【0039】
101…プリドライバ回路
102…プッシュプル出力段
103…シンク電流補助回路
103A…電流検出回路
103B…電流補助回路
104…アイドリング電流供給回路
105…第1の定電圧生成部
106…第2の定電圧生成部
図1
図2
図3
図4
図5