(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5993649
(24)【登録日】2016年8月26日
(45)【発行日】2016年9月14日
(54)【発明の名称】プローブカードへの基板当接装置、基板当接装置を備えた基板検査装置、及びプローブカードへの基板当接方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20160901BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20160901BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01R31/28 K
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-169512(P2012-169512)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29916(P2014-29916A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/026036(WO,A1)
【文献】
特開2009−295686(JP,A)
【文献】
特開平07−074219(JP,A)
【文献】
特開2009−276215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された半導体デバイスの電気的特性を検査する検査部と、該検査部の上部に配置された基板検査用インターフェースとを有する基板検査装置の前記基板検査用インターフェースのプローブカードに前記基板を当接するプローブカードへの基板当接装置において、
前記基板を板状部材と共に前記プローブカードと対向する位置まで搬送する搬送機構と、
該搬送機構で搬送された前記基板を前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって移動させて前記基板に設けられた半導体デバイスの複数の電極を前記プローブカードに設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させた後、前記基板をさらに前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって所定量移動させる当接機構と、
前記基板が前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって前記所定量移動した後に前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を減圧して前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接状態を保持する保持機構と、
前記保持機構によって前記当接状態を保持した後、前記搬送機構を前記板状部材から切り離す脱離機構と、を有し、
前記保持機構は、前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を、前記プローブカードと前記基板との当接部に前記基板及び前記板状部材の自重と、前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接反力との合計に耐えうる当接力が作用する圧力に減圧することを特徴とするプローブカードへの基板当接装置。
【請求項2】
前記所定量は、10μm〜150μmであることを特徴とする請求項1記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記空間の圧力を段階的に減圧することを特徴とする請求項1記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項4】
前記板状部材の周囲には、該板状部材と前記プローブカードとの間の空間をシールするシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項5】
前記脱離機構によって、前記搬送機構を前記板状部材から切り離した後、前記空間を更に減圧して前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接圧力を高くする減圧機構を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項6】
前記板状部材の基準面と前記プローブカードの取り付け面又は前記プローブカードの下面との間の距離を検出する距離検出センサを設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の基板当接装置。
【請求項7】
前記板状部材は、チャック部材に支持されたウエハプレートであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項8】
前記板状部材は、前記搬送機構に載置されたチャック部材であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のプローブカードへの基板当接装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のプローブカードへの基板当接装置を有することを特徴とする基板検査装置。
【請求項10】
基板に形成された半導体デバイスの電気的特性を検査する検査部と、該検査部の上部に配置された基板検査用インターフェースとを有する基板検査装置の前記基板検査用インターフェースのプローブカードに前記基板を当接するプローブカードへの基板当接方法であって、
前記基板を板状部材と共に前記プローブカードと対向する位置まで搬送機構によって搬送する搬送工程と、
前記搬送された前記基板を前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって移動させて前記基板に設けられた半導体デバイスの複数の電極を前記プローブカードに設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させた後、前記基板をさらに前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって所定量移動させる当接工程と、
前記基板が前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって前記所定量移動した後に前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を減圧して前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接状態を保持する保持工程と、
前記当接状態が保持された後、前記搬送機構を前記板状部材から切り離す脱離工程と、を有し、
前記保持工程では、前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を、前記プローブカードと前記基板との当接部に前記基板及び前記板状部材の自重と、前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接反力との合計に耐えうる当接力が作用する圧力に減圧することを特徴とするプローブカードへの基板当接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板、例えばウエハに形成された半導体デバイスの複数の電極を、基板検査装置のプローブカードに設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させるプローブカードへの基板当接装置
、基板当接装置を備えた基板検査装置
、及びプローブカードへの基板当接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板検査装置として、例えば、ウエハに形成された複数の半導体デバイスについて電気的特性検査を行うプローブ装置やバーンイン検査装置が知られている。
【0003】
図9は、従来の代表的なプローブ装置の概略構成を示す断面図である。
【0004】
このプローブ装置100は、ウエハWを搬送するローダ室111と、該ローダ室111に隣接して設けられ、ウエハWに形成された半導体デバイスの電気的特性検査を行う検査室112と、ローダ室111の上部に設けられた制御装置113とを備え、ローダ室111及び検査室112内の各種の機器を制御装置113によって制御して半導体デバイスの電気的特性検査を行うように構成されている。
【0005】
検査室112は、ローダ室111を経て検査室112内に搬入されるウエハWを受け取るチャック部材114と、該チャック部材114をウエハWと共に載置し、X、Y、Z及びθ方向に移動する載置台115と、検査室112の天井部分に配置され、ヘッドプレート117、該ヘッドプレート117の下面を形成するポゴフレーム118及び該ポゴフレーム118の下面に支持されたプローブカード119を備えたウエハ検査用インターフェース116と、載置台115と協働してプローブカード119に設けられた複数のプローブ(検査針)119b及びウエハWに形成された複数の半導体デバイスの各電極の相対位置を合わせるアライメント機構120とを備える。
【0006】
アライメント機構120は、検査室112の天井部分を移動する上部撮影部121と、チャック部材114に固定された下部撮影部122とを有する。
【0007】
上部撮影部121及び下部撮影部122を有するアライメント機構120と載置台115との協働によってウエハWとプローブカード119との相対位置が合わされ、その後、載置台115の昇降装置(図示省略)が伸長してチャック部材114を、
図9中、上方向に移動させることによって該チャック部材114に載置されたウエハWの各電極をプローブカード119の各プローブ119bにそれぞれ当接させ、この状態で、ウエハWに形成された複数の半導体デバイスの電気的特性検査が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−140241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の基板検査装置におけるプローブカードとウエハとの当接技術は、ウエハWとプローブカード119との相対位置が合わされた後、ウエハWを載置したチャック部材114を載置台115によって、ウエハ検査用インターフェース116のプローブカード119の真下まで移動させ、その後、載置台115の昇降装置を伸長させてウエハWをチャック部材114と共に上方向に移動させ、これによってウエハWに設けられた半導体デバイスの各電極をプローブカード119に設けられた各プローブ119bに当接させるものであり、半導体デバイスの各電極とプローブカード119の各プローブ119bとの当接部における電気的接触抵抗にばらつきが生じ易く、半導体デバイスの電気的特性を良好に検査できないという問題があった。
【0010】
本発明の課題は、基板に設けられた半導体デバイスの電気的特性検査を良好に行うことができる基板検査装置のプローブカードへの基板当接装置
、基板当接装置を備えた基板検査装置
、及びプローブカードへの基板当接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、
本発明のプローブカードへの基板当接装置は、基板に形成された半導体デバイスの電気的特性を検査する検査部と、該検査部の上部に配置された基板検査用インターフェースとを有する基板検査装置の前記基板検査用インターフェースのプローブカードに前記基板を当接するプローブカードへの基板当接装置において、前記基板を板状部材と共に前記プローブカードと対向する位置まで搬送する搬送機構と、該搬送機構で搬送された前記基板を前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって移動させて前記基板に設けられた半導体デバイスの複数の電極を前記プローブカードに設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させた後、前記基板をさらに前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって所定量移動させる当接機構と、
前記基板が前記板状部材と共に前記プローブカードに向かって前記所定量移動した後に前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を減圧して前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接状態を保持する保持機構と、前記保持機構によって前記当接状態を保持した後、前記搬送機構を前記板状部材から切り離す脱離機構と、を有
し、前記保持機構は、前記プローブカードと前記板状部材との間の空間を、前記プローブカードと前記基板との当接部に前記基板及び前記板状部材の自重と、前記半導体デバイスの複数の電極と前記プローブカードの複数のプローブとの当接反力との合計に耐えうる当接力が作用する圧力に減圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、搬送機構で搬送された基板を板状部材と共に検査室の上部に配置されたプローブカードに向かって当接機構によって移動させることによって、基板に設けられた半導体デバイスの複数の電極をプローブカードに設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させた後、基板を板状部材と共にさらにプローブカードに向かって所定量移動させ、その後、保持機構によってプローブカードと板状部材との間の空間を減圧して電極とプローブとの当接状態を保持し、次いで、脱離機構によって搬送機構を板状部材から離脱させるので、基板におけるプローブカードへの当接面が、プローブカードのプローブの先端部で形成される仮想平面に倣い、これによって、基板に設けられた半導体デバイスの各電極とプローブカードに設けられた各プローブとを電気的接触抵抗のばらつきを生じることなく接触させることができ、もって、基板に設けられた半導体デバイスの電気的特性の検査を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置の変形例を示す断面図である。
【
図9】従来の代表的なプローブ装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置の概略構成を示す断面図である。
【0025】
図1において、このプローブカードへの基板当接装置(以下、単に「基板当接装置」という。)は、基板検査装置の一部を構成するものであって、基板としてのウエハWに形成された半導体デバイスの電気的特性を検査する検査部としての検査室12と、該検査室12の上部に配置されたウエハ検査用インターフェース16とを有する基板検査装置におけるウエハ検査用インターフェース16に支持されたプローブカード19にウエハWを当接するものである。
【0026】
図1の基板当接装置は、ウエハWを板状部材としての、例えばウエハプレート24と共に、プローブカード19と対向する位置まで搬送する搬送機構としての載置台15と、該載置台15で搬送されたウエハWをウエハプレート24と共にプローブカード19に向かって移動させてウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極をプローブカード19に設けられた複数のプローブにそれぞれ当接させ、その後、ウエハWをさらにウエハプレート24と共にプローブカード19に向かって所定量移動させる当接機構としての昇降装置15aと、該昇降装置15aによってウエハWを所定量移動させた後、プローブカード19とウエハプレート24との間の空間Sを減圧して半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19の複数のプローブ19bとの当接状態を保持する保持機構としての減圧経路26と、該減圧経路26によって当接状態を保持した後、載置台15上のチャック部材14をウエハプレート24から切り離す脱離機構として機能する昇降装置15aとを備えている。
【0027】
このような構成の基板当接装置を備えた基板検査装置は、ウエハWを検査室12に搬送するためのローダ室11と、該ローダ室11内に設けられた基板搬送機構(共に図示省略)とを備えている。
【0028】
次に、このような構成の基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法について説明する。
【0029】
図2〜
図7は、それぞれ本発明の実施の形態に係る基板当接装置を用いたプローブカードへの基板当接方法の工程の一部を示す図である。
【0030】
図2において、プローブカードへの基板当接方法が実行される基板当接装置の検査室12内には、その天井部分にウエハ検査用インターフェース16が配置されている。ウエハ検査用インターフェース16は、ヘッドプレート17と、該ヘッドプレート17の下面に設けられたポゴフレーム18と、該ポゴフレーム18の下面に支持されたプローブカード19とから主として構成されている。プローブカード19は、基板19aと、該基板19aのウエハWとの対向面に設けられた複数のプローブ19bとを備えている。
【0031】
検査室12は、また、ウエハWを載置するチャック部材14と、該チャック部材14に載置されてその上面でウエハWを支持する板状部材としてのウエハプレート24と、チャック部材14、ウエハプレート24及び該ウエハプレート24に載置されたウエハWをX方向、Y方向若しくはZ方向に移動し、又はθ方向に回動する載置台15と、チャック部材14にウエハプレート24を介して載置されたウエハWにおける半導体デバイスの電極位置を撮影する上部撮影部21と、プローブカード19におけるプローブ19bの位置を撮影する下部撮影部22を有している。上部撮影部21は、例えば、処理室12の天井に沿ってX方向に設けられたガイドレール及び該ガイドレールに沿ってY方向に移動可能に設けられた横方向移動部(共に、図示省略)によってX方向及びY方向に移動可能に構成されており、下部撮影部22は、チャック部材14に固定されて、該チャック部材14と共に載置台15によって検査室12内をX方向、Y方向若しくはZ方向に移動し、又はθ方向に回動する。
【0032】
このような基板当接装置の検査室12において、プローブカードへの基板当接処理を開始すると、まず、チャック部材14を載置した載置台15が移動して、ローダ室11(
図1参照)を経て検査室12内に搬入されるウエハWを、ウエハプレート24を介してチャック部材14の上面で受け取る。次いで、載置台15は、チャック部材14、ウエハプレート24及びウエハWをこの順で載置した状態で上部撮影部21の下部まで移動し、チャック部材14に固定された下部撮影部22を上部撮影部21に対向させ、上部撮影部21と下部撮影部22との焦点を一致させる(
図2)。このとき、上部撮影部21と下部撮影部22との焦点を一致させるいわゆるカメラ合わせをプローブカード19の中央部(プロービングセンター)の近傍で行うために、上部撮影部21は、ウエハ検査用インターフェース16に隣接するウエハ撮影位置まで進出する。
【0033】
上側撮影部21と下側撮影部22との焦点が一致した後、上部撮影部21によって、チャック部材14に載置されたウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極位置を撮影する(
図3)。このとき、例えば、上部撮影部21をウエハWの撮影位置に停止させた状態で、ウエハWに設けられた半導体デバイスの電極位置が撮影される。すなわち、上部撮影部21をウエハWの撮影位置まで進出させ、該ウエハWの撮影位置に停止させた状態で、上部撮影部21の下方において、載置台15を用いてチャック部材14に載置されたウエハWを、上部撮影部21がウエハWのX方向の両端とY方向の両端をカバーする領域(以下、「ウエハWの第1移動領域」という。)内で移動させ、これによって、上部撮影部21がウエハWに形成された全半導体デバイスの各電極位置を撮影する。
【0034】
このようにして、上部撮影部21によるウエハWに設けられた半導体デバイスの全電極位置を撮影した後、上部撮影部21は、ウエハWの第1移動領域の外側及び後述するウエハWの第2移動領域の外側に退避する(
図4)。
【0035】
次に、下部撮影部22を用いてウエハ検査用インターフェース16のプローブカード19に設けられた全プローブ19bの位置を撮影する(
図5)。プローブカード19に設けられた全プローブ19bの撮影は、プローブカード19の下方をX方法及びY方向に移動する下部撮影部22が撮影する。すなわち、下部撮影部22は、プローブカード19の中心を通るX方向の両端と、Y軸方向の両端を撮影する必要があり、該下部撮影部22がこの撮像領域をカバーできる領域(ウエハWの第2移動領域)内を移動してプローブカード19の全プローブ19bの位置を撮影する。なお、ウエハWの第1移動領域とウエハWの第2移動領域は大部分で重なるが、下部撮影部22がウエハWの中心、すなわちチャック部材14の中心からずれた位置に設けられていることに起因して両者はずれている。
【0036】
このようにして、上部撮影部21によるウエハWに設けられた半導体デバイスの電極位置の撮影及び下部撮影部22によるプローブカード19に設けられたプローブ19bの位置の撮影が終了した後、その撮影結果に基づいて、制御装置(図示省略)が、ウエハWに設けられた半導体デバイスの各電極がそれぞれ対応するプローブ19bに接触するためのX、Y、Z座標を算出し、その後、算出結果に基づいて、載置台15が、チャック部材14を、例えばX方向若しくはY方向に移動し又はθ方向に回動して該チャック部材14に載置されたウエハWを、該ウエハWに設けられた半導体デバイスの電極とプローブカード19のプローブ19bが位置合わせされた状態となるようにウエハ検査用インターフェース16の真下まで搬送する(搬送工程)。
【0037】
次いで、載置台15は、該載置台15に設けられた昇降装置15aを伸長してウエハWをウエハプレート24と共に、図中、上方向に移動させてウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極をプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bに当接させ、その後、さらに、所定量だけウエハWをウエハプレート24と共に、プローブカード19に向かって上方向に移動させて該ウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bとをそれぞれより確実に当接させる(当接工程)(
図6)。この場合、ウエハWをプローブカード19に向かってさらに所定量だけ移動(以下、この移動を「オーバードライブ」という。)させる移動量は、例えば10〜150μmであることが好ましい。
【0038】
ウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bとが当接すると、ウエハプレート24の上面の周囲に沿って設けられたシール部材としてのOリング25の上端部がプローブカード19の基部19aの下部外周部に当接し、これによって、プローブカード19と該プローブカード19に対向するウエハプレート24との間に密閉された空間Sが形成される。
【0039】
次に、図示省略した保持機構(
図1参照)によってプローブカード19とウエハプレート24との間の空間Sを減圧して当接状態を保持し(保持工程)、その後、載置台15の昇降装置を短縮させてチャック部材14をウエハプレート24から切り離し、チャック部材14を下降させる(脱離工程)(
図7)。このとき、空間Sの圧力は、ウエハW及びウエハプレート24の自重と、半導体デバイスの複数の電極とプローブカードの複数のプローブとの当接力に対向する反力との合計に耐えうる当接力が得られる圧力、例えば、−0.2kPa〜−20kPaに調整される。なお、空間Sの最適減圧圧力は、処理条件、例えば、プローブカード19に設けられたプローブ19bの数等によって変化する。また、保持機構としての減圧経路26(
図1参照)は、圧力調整装置に接続されている。
【0040】
このようにして検査室12におけるウエハ検査用インターフェース16のプローブカード19にウエハWを当接させた後、検査室12がウエハWに設けられた半導体デバイスの電気的特性検査を行う。
【0041】
本実施の形態によれば、ウエハプレート24に載置されたウエハWをプローブカード19に当接させた後、更に所定量オーバードライブさせ、その後、プローブカード19とウエハプレート24との間の空間Sを減圧してウエハWとプローブカード19との当接状態を保持するので、半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19の複数のプローブ19bとを確実に当接させて電気的接触抵抗を低減することができ、もって、半導体デバイスの電気的特性の検査精度を向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、ウエハWに設けられた半導体デバイスの各電極とプローブカード19に設けられた各プローブ19bとの当接部における電気的接触抵抗のばらつきを低減することができる。
【0043】
これは、ウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bとを当接させた後、板状部材としてのウエハプレート24からチャック部材14が脱離するので、ウエハWとウエハプレート24からなる構造系の剛性が低下し、これによってウエハWにおけるプローブカード19への当接面が、プローブカード19のプローブ19bの先端部で形成される仮想平面に倣うように変形するので、例えば、プローブカード19のプローブ長さが一定でない場合、またはプローブカード19とウエハWとが平行でない場合であっても、プローブ19bの先端部とウエハWの半導体デバイスの各電極とが良好に接触することによるものである。板状部材として、ウエハプレート24を適用した場合について説明したが、板状部材は、ウエハプレート24に限定されるものではなく、チャック部材14を、ウエハWに当接させる板状部材として適用することもできる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、半導体デバイスの電極とプローブカード19のプローブ19bとの当接位置がずれることに起因する製品不良の発生を防止することができる。
【0045】
すなわち、本実施の形態では、空間Sを減圧する前に、ウエハWに設けられた半導体デバイスの電極とプローブカード19に設けられたプローブ19bとをオーバードライブ状態に当接させるので、電極とプローブ19bとの当接状態がそのまま維持され、当接位置がずれることはない。従って、針位置がずれることに起因する製品不良の発生を未然に防止することができる。これに対して、例えば、半導体デバイスの電極とプローブカードのプローブとを当接させる前に、空間Sを形成し、該空間Sを減圧して電極とプローブとを当接させる方法では、プローブに対する電極の当接力が不足して電極とプローブとの当接位置がずれ易くなり、針跡が大きくなって製品不良が発生する虞がある。
【0046】
また、本実施の形態によれば、上側撮影部21をウエハWの第1移動領域及び第2移動領域の外部まで退避可能に構成したので、上側撮影部21がウエハWを載置したチャック部材14の移動の妨げになることはない。
【0047】
本実施の形態では、空間Sの圧力を段階的に減圧することが好ましい。これによって、空間Sの過減圧を防止して針跡が大きくなって製品の品質が低下することを防止できる。空間Sの圧力を段階的に減圧する方法としては、例えば、保持工程における最終的な減圧状態までに減圧する減圧圧力を100%とした場合、例えば20%ずつ段階的に減圧量を多くする減圧方法が挙げられる。これによって、ウエハWの半導体デバイスの電極とプローブカード19のプローブ19bとの当接部に悪影響を与えることなく、空間Sを減圧することができる。また、減圧圧力を規則的に段階的に変化させる方法の他、不規則的に段階的に変化させることもできる。
【0048】
本実施の形態に係る基板当接装置は、一の検査室内に一のウエハ検査用インターフェースに対向する一のチャック部材(基板搬送機構)を備えたプローブ装置をはじめ、複数の検査部と、該複数の検査部相互間又は該複数の検査部と複数の単位搬出入領域との間においてそれぞれ基板を搬送する基板搬送機構を備えた基板検査装置においても適用することができる。
【0049】
本実施の形態において、板状部材としてのチャック部材14の基準面、例えば上面(チャックトップ)14aからプローブカード19の取り付け面であるポゴフレーム18の下面18aまでの距離又はチャックトップ14aからプローブカード19の下面(各プローブ19bの先端で構成される仮想面)までの距離を検出する距離検出センサ26を適用することができる。
【0050】
すなわち、ウエハWに設けられた半導体デバイスの各電極とプローブカード19に設けられた各プローブ19bとの当接状態は、当接工程後の保持工程においてプローブカード19とウエハプレート24との間の空間Sを減圧することによって保持されるが、保持工程における空間S内の圧力が変動するとウエハプレート24の上面又はウエハプレート24の下面に当接するチャック部材14の上面であるチャックトップ14a(基準面)が変位する。チャックトップ14aが変位するとチャックトップ14に載置されたウエハWにおける半導体デバイスの各電極とプローブカード19に設けられた各プローブ19bとの当接状態、すなわち、当接部におけるオーバーロード量が変動し、安定な当接状態を保持できなくなる。
【0051】
そこで、チャックトップ14aからポゴフレーム18の下面18aまでの距離(L1)又はチャックトップ14aからプローブカード19の下面までの距離(L2)(以下、単に「チャックトップ14aの高さ」という。)を検出する距離検出センサ26を適用し、保持工程において、距離検出センサ26の検出データをフィードバックしつつ空間Sを減圧することによって、空間S内の圧力変動に起因するチャックトップ14aの変位、ひいては、ウエハWに設けられた半導体デバイスの各電極とプローブカード19に設けられた各プローブ19bとの当接部におけるオーバーロード量の変動を回避することができる。
【0052】
図8は、本発明の実施の形態に係るプローブカードへの基板当接装置の変形例を示す断面図である。
【0053】
図8において、チャック部材14の端部に、チャックトップ14aの高さを検出する距離検出センサ26が設けられている。
【0054】
このような構成の検査室12において、ウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極をプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bに当接させた後、さらに、所定量だけウエハWを上昇させて該ウエハWに設けられた半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19に設けられた複数のプローブ19bとをそれぞれ所定のオーバードライブ量をもって当接させる当接工程後の保持工程において、距離検出センサ26によって検出したチャックトップ14aの高さに関するデータをフィードバックしつつ空間S内を減圧する。
【0055】
このとき、例えば、基板検査装置の雰囲気温度の変化、空間Sのリーク等に起因して空間S内の圧力が変動すると、チャックトップ14aの高さが変位し、所定のオーバードライブ量を保持できなくなるが、本実施の形態の変形例では、距離検出センサ26によってチャックトップ14aの高さを検出し、該検出したチャックトップ14aの高さに関するデータを減圧経路26(
図1参照)に接続された圧力調整装置にフィードバックしつつ空間Sを減圧することによって、チャックトップ14aの変位、ひいてはオーバードライブ量の変動を回避し、良好な当接状態を保持することができる。これによって、雰囲気温度の変動等に起因して空間S内の圧力が変動しようとしても該圧力変動を抑制して半導体デバイスの電極とプローブカード19のプローブ19bとの当接部における所定のオーバードライブ量を良好に保持することができ、もって、半導体デバイスの電気的特性の検査精度をさらに向上させることができる。
【0056】
本実施の形態において、ウエハプレート24とチャック部材14とを離脱させた後、空間Sを更に減圧してウエハWの半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19の複数のプローブ19bとの当接圧力をより高くすることもできる。これによって、半導体デバイスの複数の電極とプローブカード19の複数のプローブ19bとを確実に当接させて、当接部における電気的接触抵抗のさらなる低減を図ることもできる。
【0057】
以上、本発明について、実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
W ウエハ
S 空間
12 検査室
14 チャック部材
15 載置台
16 ウエハ検査用インターフェース
17 ヘッドプレート
18 ポゴフレーム
19 プローブカード
19b プローブ
21 上部撮影部
22 下部撮影部
24 ウエハプレート
25 Oリング
26 距離検出センサ