【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0048】
[平均粒子径の測定]
SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの粒子径を求め、平均粒子径を算出した。具体的には、抽出した微粒子のそれぞれについて面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として一次粒子の平均粒子径とした。
また、BET測定による平均粒子径(BET換算径)は、ニッケルナノ粒子の単位重量当たりの表面積(BET値)を実測し、そのBET値から下記式を用いてBET換算径を算出した。
BET換算径(nm)={[6÷BET値(m
2/g)]÷真密度(g/cm
3)}×1000
また、CV値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、CV値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
【0049】
[複合ニッケル粒子の結晶子径]
粉末X線回折(XRD)結果からシェラーの式により算出した。
【0050】
[被膜の平均厚さの測定]
無作為に200個抽出した複合ニッケル粒子の表面を、加速電圧300KVの透過型電子顕微鏡で観察し、コントラストの濃い格子面間隔からも金属Niと判別できる末端から、コントラストの薄い部分の末端までの長さを測定した。10個の複合ニッケル粒子における測定結果の平均を水酸化物又は酸化物の被膜の平均厚みとした。
【0051】
[熱機械分析(TMA)、熱重量分析(TGA)、5%熱収縮温度]
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析(TMA)および熱重量分析(TGA)を行った。また、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収縮の温度を5%熱収縮温度とした。
【0052】
[脱バインダー時微分ピーク温度]
脱バインダー時微分ピーク温度は、窒素下でTGAを測定し、その減少率の微分から燃焼のピーク温度を算出し、そのピーク温度位置を微分ピーク温度とした。
【0053】
実施例1−1
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物60.0g(241.1mmmol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分保持することによって複合ニッケル粒子スラリーを得た。
<洗浄・乾燥工程>
複合ニッケル粒子スラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄し、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル粒子を得た。元素分析の結果、C;0.5、O;1.3(単位は質量%)であった。
<炭酸水調製>
純水にCO
2ガスをバブリングさせて、pHが4.5となるように炭酸水を調製した。
<炭酸洗浄>
複合ニッケル粒子10gに炭酸水100gを加えて1回洗浄を行い、メタノールでさらに1回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル粒子を得た。元素分析の結果、C;0.6、O;1.6(単位は質量%)であった。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは3nmであった。得られた複合ニッケル粒子(BET値;8.4m
2/g、真密度;8.6g/cm
3)の平均粒子径、CV値を表1に、5%熱収縮温度、及び脱バインダー時の温度変化の微分ピークを表2に示した。また、この複合ニッケル粒子の結晶子径は、22nmであった。
【0054】
[実施例1−2]
<溶解工程>
ギ酸ニッケル二水和物6.0g(32.6mmmol)と塩化ニッケル六水和物54.0g(227.8mmol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって、ギ酸ニッケルと塩化ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分間保持することによって、複合ニッケル粒子スラリーを得た。
<洗浄・乾燥工程>
複合ニッケル粒子スラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄し、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル粒子を得た。元素分析の結果、C;0.4、O;1.3、S;<0.01、Cl;0.13(単位は質量%)であった。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは3nmであった。得られた複合ニッケル粒子(BET値;8.5m
2/g、真密度;8.7g/cm
3)の平均粒子径、CV値を表1に、5%熱収縮温度、及び脱バインダー時微分ピーク温度を表2に示した。また、この複合ニッケル粒子の結晶子径は、30nmであった。
【0055】
[実施例1−3]
<炭酸水調製>
純水にCO
2ガスをバブリングさせて、pHが4.5となるように炭酸水を調製した。
<炭酸洗浄>
実施例1−2で得られた複合ニッケル粒子10gに炭酸水100gを加えて1回洗浄を行い、メタノールでさらに1回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル粒子を得た。元素分析の結果、C;0.6、O;2.0、S;<0.01、Cl;<0.01(単位は質量%)であった。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。得られた複合ニッケル粒子(BET値;8.5m
2/g、真密度;8.7g/cm
3)の平均粒子径、CV値を表1に、5%熱収縮温度、及び脱バインダー時微分ピーク温度を表2に示した。
【0056】
比較例1−1
実施例1−2で得られた複合ニッケル粒子10gに水100gを加えて5回洗浄して塩素を除去し、メタノールでさらに1回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して複合ニッケル粒子を得た。元素分析の結果、C;0.5、O;3.5、S;<0.1、Cl;<0.04(単位は質量%)であった。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは8nmであった。得られた複合ニッケル粒子(BET値;8.8m
2/g、真密度;7.8g/cm
3)の平均粒子径、CV値を表1に、5%熱収縮温度、及び脱バインダー時微分ピーク温度を表2に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
実施例1−1〜1−3の複合ニッケル粒子は、酸素元素を0.2〜2.5質量%の範囲内で含有するものであり、水酸化物又は酸化物の被膜は、平均厚さが1〜6nmの範囲内にあって、XPSによって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、XRDでは結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。代表的に、実施例1−2で得られた複合ニッケル粒子の被膜をXPSで測定した結果を
図1に、XRDで測定した結果を
図2に示した。このように、被膜を構成する水酸化物又は酸化物の結晶性が低いアモルファス構造であることによって、実施例1−1〜1−3の複合ニッケル粒子は、脱バインダー時の微分ピーク温度が高く、脱バインダー時の重量減少の急激な変動がより高温側にシフトしており、良好な挙動を示した。つまり、脱バインダー工程で水酸化物の被膜が速やかに脱水されて酸化物の被膜に変化することにより、粒子の急激な温度上昇を抑制し、300℃以下の低温での粒子の焼結や凝集を防ぐことができると考えられる。また、生成した酸化物の被膜により、焼結時には複合ニッケル粒子の内部への急激な酸化を抑制することができるので、デラミネーションやクラック等の欠陥の発生を抑制できるものと考えられる。一方、比較例1−1の複合ニッケル粒子は、水洗を繰り返したことによって複合ニッケル粒子の表面の酸化物の被膜が増膜して厚くなっており、酸素元素の含有量が多いため、焼結時の熱収縮が大きくなった。
【0060】
また、
図2から、実施例1−2の複合ニッケル粒子は、XRDチャートの金属ニッケル結晶を示すピークの幅(半値幅)が狭く、結晶性が高いことが確認された。
【0061】
[実施例2−1]
塩化ニッケル六水和物1297g(5.47mol)とギ酸ニッケル二水和物226.4g(1.23mol)にオレイルアミン7087g(26.5mol)を加え、窒素フロー下で120℃、120分間加熱することによって、塩化ニッケルとギ酸ニッケルのアミン錯体を形成させた。
【0062】
次いで、上記アミン錯体を含む溶液を、マイクロ波を用いて250℃まで加熱し、その温度を5分間保持することによって、複合ニッケル粒子1を含むスラリーを得た。収率は100%であった。
【0063】
得られたスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、複合ニッケル粒子1(平均粒子径;150nm、CV値;0.19、5%熱収縮温度;420℃、結晶子径;40nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.3、O;1.0、Cl;0.10(単位は質量%)であった(C/O比=0.30)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−1で得られた複合ニッケル粒子1のSEM写真(×5万倍)を
図3に示した。また、複合ニッケル粒子1のTMAのチャートを
図4に示した。
【0064】
上記の複合ニッケル粒子1の10gに、炭酸水(純水にCO
2ガスをバブリングさせて、pHが4.5となるように炭酸水を調製したもの)の100gを加えて1回洗浄を行い、メタノールでさらに1回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、複合ニッケル粒子1’を得た。元素分析の結果、C;0.3、O;1.2、Cl;<0.01(単位は質量%)であった(C/O比=0.25)。
【0065】
[実施例2−2]
塩化ニッケル六水和物1297g(5.47mol)、ギ酸ニッケル二水和物166g(0.9mol)、及びオレイルアミン10700g(40mol)を使用したこと以外、実施例2−1と同様にして、複合ニッケル粒子2(平均粒子径;120nm、CV値;0.16、5%熱収縮温度;390℃、結晶子径;39nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.3、O;0.6、Cl;0.09(単位は質量%)であった(C/O比=0.50)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−2で得られた複合ニッケル粒子2のSEM写真(×5万倍)を
図5に示した。また、複合ニッケル粒子2のTMAのチャートを
図6に示した。
【0066】
[実施例2−3]
塩化ニッケル六水和物581g(2.45mol)、ギ酸ニッケル二水和物193g(1.05mol)、及びドデシルアミン9360g(35mol)を使用したこと以外、実施例2−1と同様にして、複合ニッケル粒子3(平均粒子径;80nm、CV値;0.15、5%熱収縮温度;345℃、結晶子径;32nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、Cl;0.12(単位は質量%)であった(C/O比=0.50)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−3で得られた複合ニッケル粒子3のSEM写真を
図7に示した。また、複合ニッケル粒子3のTEM写真を
図8A示した。また、
図8Bは、
図8Aに示した複合ニッケル粒子3の結晶格子を模式的に示した説明図であり、一点鎖線の斜線は結晶格子模様を表している。
図8Aでは、
図8Bに示したように、結晶格子模様がはっきりと観察されており、単結晶に近いことが推測された。
【0067】
[実施例2−4]
塩化ニッケル六水和物1896g(8mol)とギ酸ニッケル二水和物368g(2mol)にオレイルアミン10700g(40mol)を加え、窒素フロー下で120℃、120分間加熱することによって、塩化ニッケルとギ酸ニッケルのアミン錯体を形成させた。
【0068】
次いで、上記アミン錯体を含む溶液を90℃まで冷却して、硝酸銀8.5g(0.05mol)を添加して、30分間撹拌して硝酸銀を溶解した後、マイクロ波を用いて250℃まで加熱し、その温度を5分間保持することによって、複合ニッケル粒子4を含むスラリーを得た。収率は100%であった。
【0069】
実施例2−1と同様にして、得られたスラリーを乾燥して、複合ニッケル粒子4(平均粒子径;90nm、CV値;0.16、5%熱収縮温度;360℃、結晶子径;25nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.4、O;1.2、Cl;0.12(単位は質量%)であった(C/O比=0.33)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。
【0070】
[実施例2−5]
塩化ニッケル六水和物2133g(9mol)、ギ酸ニッケル二水和物184g(1mol)、硝酸銀0.85g(0.005mol)及びドデシルアミン13375g(50mol)を使用したこと以外、実施例2−4と同様にして、複合ニッケル粒子5(平均粒子径;130nm、CV値;0.17、5%熱収縮温度;415℃、結晶子径;38nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.3、O;0.7、Cl;0.11(単位は質量%)であった(C/O比=0.43)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−5で得られた複合ニッケル粒子5のSEM写真を
図9に示した。
【0071】
[実施例2−6]
塩化ニッケル六水和物1659g(7mol)、ギ酸ニッケル二水和物552g(3mol)、硝酸銀2.55g(0.015mol)及びオレイルアミン10700g(40mol)を使用したこと以外、実施例2−4と同様にして、複合ニッケル粒子6(平均粒子径;70nm、CV値;0.15、5%熱収縮温度;360℃、結晶子径;25nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.8、O;1.6、Cl;0.07(単位は質量%)であった(C/O比=0.50)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−6で得られた複合ニッケル粒子6のSEM写真を
図10に示した。
【0072】
[実施例2−7]
塩化ニッケル六水和物1896g(8mol)、ギ酸ニッケル二水和物368g(2mol)、及びドデシルアミン16050g(60mol)を使用したこと以外、実施例2−1と同様にして、複合ニッケル粒子7(平均粒子径;90nm、CV値;0.17、5%熱収縮温度;430℃、結晶子径;32nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.6、O;1.3、Cl;0.13(単位は質量%)であった(C/O比=0.46)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。
【0073】
[実施例2−8]
塩化ニッケル六水和物2133g(9mol)、ギ酸ニッケル二水和物184g(1mol)、硝酸銀5.1g(0.03mol)及びドデシルアミン16050g(60mol)を使用したこと以外、実施例2−4と同様にして、複合ニッケル粒子8(平均粒子径;60nm、CV値;0.15、5%熱収縮温度;420℃、結晶子径;30nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;1.2、O;1.8、Cl;0.14(単位は質量%)であった(C/O比=0.67)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。
【0074】
[実施例2−9]
塩化ニッケル六水和物1297g(5.47mol)とギ酸銅四水和物 189g(1.23mol)にオレイルアミン7087g(26.5mol)を加え、窒素フロー下で120℃、120分間加熱することによって、塩化ニッケルとギ酸ニッケルのアミン錯体を形成させた。
【0075】
次いで、上記アミン錯体を含む溶液を、マイクロ波を用いて250℃まで加熱し、その温度を5分間保持することによって、複合ニッケル粒子9を含むスラリーを得た。収率は100%であった。
【0076】
得られたスラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥して、複合ニッケル粒子9(平均粒子径;170nm、CV値;0.17、5%熱収縮温度;400℃、結晶子径;38nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.4、O;1.3、Cl;0.08(単位は質量%)であった(C/O比=0.31)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。実施例2−9で得られた複合ニッケル粒子9のSEM写真を
図11に示した。
【0077】
[実施例2−10]
塩化ニッケル六水和物1297g(5.47mol)、ギ酸ニッケル二水和物74g(0.4mol)、及びオレイルアミン10700g(40mol)を使用したこと以外、実施例2−1と同様にして、複合ニッケル粒子10(平均粒子径;180nm、CV値;0.19、5%熱収縮温度;430℃、結晶子径;41nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.4、O;1.1、Cl;0.08(単位は質量%)であった(C/O比=0.36)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。
【0078】
[実施例2−11]
塩化ニッケル六水和物1297g(5.47mol)、ギ酸ニッケル二水和物828g(4.5mol)、及びオレイルアミン10700g(40mol)を使用したこと以外、実施例2−1と同様にして、複合ニッケル粒子11(平均粒子径;85nm、CV値;0.17、5%熱収縮温度;410℃、結晶子径;27nm)を得た。収率は100%であった。また、元素分析の結果、C;0.8、O;1.1、Cl;0.11(単位は質量%)であった(C/O比=0.73)。また、複合ニッケル粒子の表面の水酸化物又は酸化物の被膜は、X線光電子分光(XPS)によって水酸化ニッケル又は酸化ニッケルとして測定されたが、X線回折(XRD)では結晶質の水酸化ニッケル及び酸化ニッケルは観測されなかった。この被膜の平均厚みは2nmであった。
【0079】
上記実施例2−1〜2−11で原料として用いた塩化ニッケル及びギ酸塩に含まれる全金属換算の金属元素100モル部に対するギ酸塩のモル部並びに硝酸銀のモル部と、各実施例で得られたニッケル粒子の物理的特性を表3〜表4に示した。なお、MLCCの内部電極用途に使用するニッケル粒子の物理的特性は、例えば以下のとおりである。平均粒子径は30〜200nmの範囲内が好ましく、CV値は0.2以下であることが好ましい。さらに、十分な耐焼結性を確保する観点から、5%熱収縮温度は300℃以上であることが好ましく、結晶子径は出来るだけ大きい方が好ましいが、例えば25〜60nmの範囲内であればよい。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
表3〜表4から、実施例2−1〜2−11では、粒子径が200nm以下に制御され、結晶性が高く、低温焼結が抑制されていた。
【0083】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。