(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の導電膜形成用組成物の好適態様について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
本発明の特徴点の一つとしては、フッ素原子を含有するマイグレーション抑制剤(以後、F含有マイグレーション抑制剤とも称する)を使用する点が挙げられる。本発明の導電膜形成用組成物を用いて基材上に導電膜を形成すると、F含有マイグレーション抑制剤の表面エネルギーが低さのため、F含有マイグレーション抑制剤が導電膜の表面近傍に移動し、導電膜の露出表面(基材と接触していない表面)付近にF含有マイグレーション抑制剤が偏在し、通常トレードオフの関係にある導電膜の導電特性とイオンマイグレーション抑制機能との両者をより高いレベルで両立することができる。より具体的には、導電膜の外側露出表面付近に多くのF含有マイグレーション抑制剤を偏在させることにより、導電膜の露出表面付近から外側に析出する金属イオンの拡散を効率よく抑制することができる。また、導電膜の外側表面付近に多くのF含有マイグレーション抑制剤を偏在させることにより、導電膜内部において金属以外の不純物の量を低減させることができ、結果として導電膜内部で導通路が形成され、優れた導電特性を達成することができる。
【0012】
本発明の導電膜形成用組成物(以後、単に「組成物」とも称する)には、F含有マイグレーション抑制剤と金属粒子とが少なくとも含まれる。
まず、組成物中に含まれる成分について詳述する。
【0013】
<F含有マイグレーション抑制剤>
F含有マイグレーション抑制剤(F含有マイグレーション防止剤)は、フッ素原子を含有し、金属イオンのイオンマイグレーションを抑制する化合物である。
F含有マイグレーション抑制剤中のフッ素原子の含有率(フッ素含有率)は使用される金属粒子の種類などに応じて適宜調整されるが、形成される導電膜間でのイオンマグレーション抑制能がより優れると共に、導電膜の導電特性にもより優れる点(以後、単に「本発明の効果がより優れる点」とも称する)で、20質量%以上65質量%未満であることが好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜55質量%がさらに好ましい。
なお、フッ素含有率とは、マイグレーション抑制剤の全分子量中におけるフッ素原子の占める質量の割合(含有率)を表したものである。
【0014】
F含有マイグレーション抑制剤の種類は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、一般式(1)〜(5)で表される化合物、一般式(22)で表される化合物、一般式(23)で表される化合物、一般式(24)で表される基と一般式(25)で表される基とを有する化合物が好ましい。
以下、これらの化合物について詳述する。
【0015】
(一般式(1)で表される化合物)
まず、一般式(1)で表される化合物について説明する。
P−(CR
1=Y)
n−Q 一般式(1)
一般式(1)中、PおよびQは、それぞれ独立に、OH、NR
2R
3またはCHR
4R
5を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQの両方がCHR
4R
5であることはなく、PおよびQの両方がOHであることもない。Yは、CR
6または窒素原子を表す。
【0016】
一般式(1)中、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。
窒素原子に置換可能な基としては窒素原子に置換できる基であれば特に制限されないが、例えば、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0017】
さらに詳しくは、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5または6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリニル)、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換または無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換または無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)を好ましい例として挙げることができる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに置換されていてもよい。
【0018】
一般式(1)におけるR
2およびR
3で表されるアルキル基は、直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルケニル基を表し、好ましくは炭素数1〜50、さらに好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20である。
好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、トリアコンチルなどを挙げることができる。さらに好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルであり、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
なお、アルキル基には、−CO−、−NH−、−O−、−S−、またはこれらを組み合わせた基などの連結基が含まれていてもよい。なお、アルキル基中に上記連結基が含まれる場合、その位置は特に制限されず、末端であってもよい。例えば、−S−R
x(R
x:アルキル基)であってもよい。
【0019】
R
2およびR
3で表されるアルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよび複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
さらに詳しくは、置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔(直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、
【0021】
アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
【0022】
アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5員または6員の芳香族の複素環基である。例えば2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリニル)、
【0023】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換または無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換または無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0024】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換または無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換または無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換または無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換または無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換または無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
【0025】
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換または無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換または無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0026】
アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換または無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換または無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換または無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
【0027】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよび複素環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換または無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換または無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0028】
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基などが挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基などが挙げられる。
【0029】
R
2およびR
3で表されるアルケニル基は、直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルケニル基を表し、好ましくは炭素数2〜50、さらに好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20である。好ましい例としては、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)などを挙げることができる。さらに好ましくは、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、であり、特に好ましくは、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルである。
R
2およびR
3で表されるアルケニル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
なお、アルケニル基には、上記アルキル基と同様に、−CO−、−NH−、−O−、−S−またはこれらを組み合わせた基などの連結基が含まれていてもよい。
【0030】
R
2およびR
3で表されるアルキニル基は、直鎖、分岐、環状の置換または無置換のアルキニル基を表し、好ましくは炭素数2〜50、さらに好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20である。好ましい例としては、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。
R
2およびR
3で表されるアルキニル基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
なお、アルキニル基には、上記アルキル基と同様に、−CO−、−NH−、−O−、−S−またはこれらを組み合わせた基などの連結基が含まれていてもよい。
【0031】
R
2およびR
3で表されるアリール基は、置換または無置換のアリール基を表し、好ましくは炭素数6〜50、さらに好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20である。好ましい例としては、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニル、2−メチルカルボニルフェニル、4−メチルカルボニルフェニルなどを挙げることができる。
さらに好ましくは、フェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニルなどを挙げることができ、特に好ましくは、フェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニルなどを挙げることができる。
R
2およびR
3で表されるアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0032】
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
R
4およびR
5で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、これらを組み合わせた基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
4およびR
5で表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0033】
R
1およびR
6は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
R
1およびR
6で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、これらを組み合わせた基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
1およびR
6で表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0034】
nは0〜5の整数を表す。ただし、nが0であるとき、PおよびQの両者が共にOHであることはなく、CHR
4R
5であることもない。nが2以上の数を表すとき、(CR
1=Y)で表される複数の原子群は、同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
一般式(1)で表される化合物は、鎖状であっても環状であってもよく、環状である場合は、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、またはR
6で表される基のうちの少なくとも二つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、二つの基が結合する際には、単結合、二重結合および三重結合のいずれかの結合形式が含まれていてもよい。
【0036】
なお、R
1〜R
6の少なくとも一つの基中には、フッ素原子が含まれる。なお、フッ素原子は、フッ素含有率が上述した範囲となるように含有されることが好ましい。フッ素原子は、一般式(1)で表される化合物の任意の炭素原子に置換してもよい。
なお、R
1〜R
6の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)は、フッ素原子で置換されていることが好ましい。なかでも、フッ素原子は、フルオロアルキル基(以下、R
f基もいう)またはR
f基で置換された基として含まれることが好ましい。つまり、R
1〜R
6の少なくとも一つの基中には、フルオロアルキル基が含まれることが好ましい。
R
f基は、炭素原子数1ないし14の直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基、または、炭素原子数1ないし14の直鎖もしくは分岐のパーフルオロアルキル基で置換された、炭素原子数2ないし20の置換基であることが好ましい。
炭素原子数1ないし14の直鎖または分岐鎖パーフルオロアルキル基の例としては、CF
3−、C
2F
5−、C
3F
7−、C
4F
9−、C
5F
11−、(CF
3)
2−CF−(CF
2)
2−、C
6F
13−、C
7F
15−、(CF
3)
2−CF−(CF
2)
4−、C
8F
17−、C
9F
19−、C
10F
21−、C
12F
25−およびC
14F
29−を挙げることができる。
炭素原子数1ないし14のパーフルオロアルキル基により置換された炭素原子数2ないし20の置換基の例としては、(CF
3)
2CF(CF
2)
4(CH
2)
2−、C
9F
19CH
2−、C
8F
17CH
2CH(OH)CH
2−、C
8F
17CH
2CH(OH)CH
2OC=OCH
2−、(CF
3)
2CF(CF
2)
4(CH
2)
2OC=OCH
2−、C
8F
17CH
2CH(OH)CH
2OC=O(CH
2)
2−、(CF
3)
2CF(CF
2)
4(CH
2)
2OC=O(CH
2)
2−、(CF
3)
2CFOC
2F
4−、CF
3CF
2 CF
2O〔CF(CF
3)CF
2O〕
4−CF(CF
3)−、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
R
f基は分子中に1ないし4個含まれることが好ましい。
なお、上述した一般式(1)で表される化合物は、2種以上使用してもよい。
【0037】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(6)〜一般式(21)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、一般式(6)〜一般式(21)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0039】
上記一般式(6)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCR
6であり、nが2であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して二重結合を形成して環を形成した場合の化合物である。
一般式(6)において、V
6は置換基を表す。aは、1〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。なお、V
6のうち少なくとも一つにはフッ素原子が含まれる。つまり、V
6が1つの場合、その置換基にはフッ素原子が含まれ、V
6が2つ以上の場合、少なくとも1つのV
6にフッ素原子が含まれていればよい。フッ素原子は、少なくとも1つのV
6で表される基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)に置換して導入されることが好ましい。なかでも、V
6中に上述したR
f基が含まれることが好ましい。
V
6で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(6)に複数のV
6が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(6)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、化合物の構造式に併記した百分率表示は、フッ素原子の質量含率(フッ素含有率)を示すものである。
【0041】
上記一般式(7)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(7)において、V
7は置換基を表す。aは、1〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。なお、V
7のうち少なくとも一つにはフッ素原子が含まれる。つまり、V
7が1つの場合、その置換基にはフッ素原子が含まれ、V
7が2つ以上の場合、少なくとも1つのV
7にフッ素原子が含まれていればよい。フッ素原子は、少なくとも1つのV
7で表される基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)に置換して導入されることが好ましい。なかでも、V
7中に上述したR
f基が含まれることが好ましい。
V
7で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(7)に複数のV
7が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(7)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
上記一般式(8)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNR
2R
3であり、YがCR
6であり、nが2であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して二重結合を形成して環を形成した場合の一例である。
一般式(8)において、V
8は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
8で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(8)に複数のV
8が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0044】
R
81およびR
82は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
V
8、R
81およびR
82のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
8、R
81およびR
82の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
8、R
81およびR
82のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
8が複数ある場合、複数のV
8、R
81およびR
82のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0045】
以下に、一般式(8)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
一般式(9)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNR
2R
3であり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(9)において、V
9は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
9で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(9)に複数のV
9が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0048】
R
91およびR
92は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
V
9、R
91およびR
92のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
9、R
91およびR
92の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
9、R
91およびR
92のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
9が複数ある場合、複数のV
9、R
91およびR
92のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0049】
以下に、一般式(9)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
一般式(10)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがCHR
4R
5であり、YがCR
6であり、nが2であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して二重結合を形成して環を形成した場合の一例である。
一般式(10)において、V
10は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
10で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(10)に複数のV
10が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0052】
R
101およびR
102は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
R
101およびR
102で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
101およびR
102が置換基を表す場合、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0053】
V
10、R
101およびR
102のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
10、R
101およびR
102の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。なかでも、V
10、R
101およびR
102のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることが好ましい。
なお、V
10が複数ある場合、複数のV
10、R
101およびR
102のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0054】
以下に、一般式(10)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
一般式(11)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがCHR
4R
5であり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(11)において、V
11は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
11で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(11)に複数のV
11が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0057】
R
111およびR
112は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
R
111およびR
112で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
111またはR
112が置換基を表す場合、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0058】
V
11、R
111およびR
112のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
11、R
111およびR
112の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
11、R
111およびR
112のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
11が複数ある場合、複数のV
11、R
111およびR
112のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0059】
以下に、一般式(11)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
一般式(12)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNR
2R
3であり、YがCR
6であり、nが2であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して二重結合を形成して環を形成した場合の一例である。
一般式(12)において、V
12は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
12で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(12)に複数のV
12が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0062】
R
121、R
122、R
123およびR
124は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
【0063】
V
12、R
121、R
122、R
123およびR
124のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
12、R
121、R
122、R
123およびR
124の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
12、R
121、R
122、R
123およびR
124のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
12が複数ある場合、複数のV
12、R
121、R
122、R
123およびR
124のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0064】
以下に、一般式(12)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
一般式(13)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNR
2R
3であり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(13)において、V
13は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
13で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(13)に複数のV
13が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0067】
R
131、R
132、R
133およびR
134は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
【0068】
V
13、R
131、R
132、R
133およびR
134のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
13、R
131、R
132、R
133およびR
134の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
13、R
131、R
132、R
133およびR
134のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
13が複数ある場合、複数のV
13、R
131、R
132、R
133およびR
134のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0069】
以下に、一般式(13)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
一般式(14)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(14)において、V
14は置換基を表す。cは、1〜2の整数(好ましくは11)を表す。なお、V
14のうち少なくとも一つにはフッ素原子が含まれる。つまり、V
14が1つの場合、その置換基にはフッ素原子が含まれ、V
14が2つ以上の場合、少なくとも1つのV
14にフッ素原子が含まれていればよい。フッ素原子は、少なくとも1つのV
14で表される基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)に置換して導入されることが好ましい。なかでも、V
14中に上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
V
14で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(14)に複数のV
14が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0072】
以下に、一般式(14)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
一般式(15)で表される化合物は、一般式(1)において、PがOH、QがNR
2R
3であり、YがCR
6であり、nが1であり、Pに隣接する炭素原子上のR
1およびQに隣接する炭素原子上のR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(15)において、V
15は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
15で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(15)に複数のV
15が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0075】
R
151およびR
152は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
【0076】
V
15、R
151およびR
152のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
15、R
151およびR
152の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
15、R
151およびR
152のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
15が複数ある場合、複数のV
15、R
151およびR
152のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0077】
以下に、一般式(15)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
一般式(16)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNR
2R
3であり、nが0であり、R
2およびR
3が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(16)において、V
16は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
16で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(16)に複数のV
16が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0080】
R
161およびR
162は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
【0081】
V
16、R
161およびR
162のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
16、R
161およびR
162の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
16、R
161およびR
162のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
16が複数ある場合、複数のV
16、R
161およびR
162のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0082】
以下に、一般式(16)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
一般式(17)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNR
2R
3であり、nが0であり、R
2およびR
3が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(17)において、V
17は置換基を表す。dは、0または1を表す。V
17で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(17)に複数のV
17が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0085】
R
171、R
172およびR
173は、それぞれ独立に、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
【0086】
V
17、R
171、R
172およびR
173のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
17、R
171、R
172およびR
173の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
17、R
171、R
172およびR
173のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
17が複数ある場合、複数のV
17、R
171、R
172およびR
173のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0087】
以下に、一般式(17)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
一般式(18)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCR
6および窒素原子であり、nが3であり、R
1およびR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(18)において、V
18は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
18で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(18)に複数のV
18が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0090】
R
181は、水素原子または置換基を表す。R
181で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
181が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0091】
V
18およびR
181のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
18およびR
181の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
18およびR
181のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
18が複数ある場合、複数のV
18およびR
181のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0092】
以下に、一般式(18)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
一般式(19)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれOHであり、YがCR
6および窒素原子であり、nが2であり、R
1およびR
6が互いに結合して環を形成した場合の一例である。
一般式(19)において、V
19は置換基を表す。bは、0〜4の整数(好ましくは1〜2の整数を表し、より好ましくは1)を表す。V
19で表される置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。一般式(19)に複数のV
19が存在している場合、それぞれの基は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0095】
R
191は、水素原子または置換基を表す。R
191で表される置換基としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基であり、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
191が置換基を表す場合、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0096】
V
19およびR
191のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、V
19およびR
191の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、V
19およびR
191のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
なお、V
19が複数ある場合、複数のV
19およびR
191のうち少なくとも1つの基に、フッ素原子が含まれる。
【0097】
以下に、一般式(19)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
一般式(20)で表される化合物は、一般式(1)において、P、QがそれぞれNR
2R
3であり、nが0である場合の一例である。
一般式(20)において、R
201、R
202、R
203およびR
204は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
R
201、R
202、R
203およびR
204のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
201、R
202、R
203およびR
204の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
201、R
202、R
203およびR
204のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0100】
以下に、一般式(20)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
一般式(21)で表される化合物は、一般式(1)において、PがそれぞれNR
2R
3であり、QがOHであり、nが0である場合の一例である。
一般式(21)において、R
211およびR
212は、それぞれ独立に、水素原子、または、窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
R
211およびR
212のうち少なくとも1つには、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
211およびR
212の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
211およびR
212のうち少なくとも1つには、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0103】
以下に、一般式(21)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0105】
また、一般式(1)で表される化合物の最好適態様としては、以下の一般式(X1)で表される化合物が挙げられる。
【0107】
R
x1およびR
x2は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基を表す。アルキル基中の炭素数は、イオンマイグレーション抑制機能がより優れる点で、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜5である。アルキル基の好適な具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、イソブチル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0108】
Aは、炭素数1〜2のアルキレン基を表す。Aとして好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、であり、より好ましくは、−CH
2CH
2−である。
【0109】
X
11は、水酸基を含んでいてもよい炭素数1〜3のアルキレン基を表す。X
11として好ましくは−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH(CH
2OH)−であり、さらに好ましくは−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−であり、特に好ましくは−CH
2−、−CH
2CH
2−である。
【0110】
Y
11は、炭素数4〜12の直鎖状のパーフルオロアルキル基を表す。好ましいパーフルオロアルキル基の例としては、C
4F
9−、C
5F
11−、C
6F
13−、C
7F
15−、C
8F
17−、C
9F
19−、C
10F
21−、C
12F
25−が挙げられる。炭素数が上記範囲内であれば、イオンマイグレーション抑制機能がより優れる。
上記R
x1、R
x2、A、およびX
11は、さらに上述した置換基を有していてもよい。
【0111】
(一般式(2)で表される化合物)
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
R
7−C(=O)−H 一般式(2)
本発明において一般式(2)で表される化合物には、アルデヒド体とヘミアセタール体との間に平衡が存在することにより還元性を示す化合物(アルドースなど)や、ロブリー・ドブリュイン−ファン エッケンシュタイン転位反応によるアルドース−ケトース間の異性化によりアルデヒド体を形成しうる化合物(フルクトースなど)も含有する。
【0112】
一般式(2)中、R
7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または、これらの基を組み合わせた基を表す。
R
7がアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、または、アリール基を表すとき、それぞれの好ましい例としては、前述のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
7が複素環基を表すとき、好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5または6員の芳香族または、非芳香族の複素環基である。好ましい例としては、2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾオキサゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、チアジアゾリル、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニルなどを挙げることができる。
R
7としてさらに好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基である。
R
7で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
【0113】
R
7で表される基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)は、フッ素原子で置換されている。なかでも、R
7中には、上述したR
f基が含まれることが好ましい。なお、一般式(2)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
また、R
7で表される基中には、ヒドロキシル基、または、−COO−で表される基が含まれていてもよい。
【0114】
以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
(一般式(3)で表される化合物)
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0118】
一般式(3)中、R
8、R
9およびR
10で表される基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または、これらの基を組み合わせた基を表す。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の好ましい例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
8、R
9およびR
10で表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
R
8〜R
10の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)は、フッ素原子で置換されている。なかでも、R
8〜R
10の少なくとも一つの基中には、上述したR
f基が含まれることが好ましい。なお、一般式(3)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0119】
以下に、一般式(3)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0121】
(一般式(4)で表される化合物)
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0123】
一般式(4)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または、これらの基を組み合わせた基を表す。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の好ましい例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
R
11およびR
12で表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
R
11〜R
12の少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)は、フッ素原子で置換されている。なかでも、R
11〜R
12の少なくとも一つの基中には、上述したR
f基が含まれることが好ましい。なお、一般式(4)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0124】
以下に、一般式(4)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
(一般式(5)で表される化合物)
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する。
Z−SH 一般式(5)
一般式(5)中、Zは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、または、これらの基を組み合わせた基を表す。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基および複素環基の好ましい例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3の例を挙げることができる。
Zで表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
Zで表される基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)は、フッ素原子で置換されている。なかでも、Z中には、上述したR
f基が含まれることが好ましい。なお、一般式(5)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0127】
一般式(5)で表される化合物は、一般式(51)ないし一般式(54)で表される化合物であることが好ましい。
【0129】
一般式(51)において、R
511は、フッ素原子が含まれる置換基を表す。
置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。R
511で表される基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
なお、R
511には、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
511中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
511には、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0130】
以下に、一般式(51)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0132】
一般式(52)において、R
521およびR
522は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。R
523は、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。また、置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。R
521、R
522およびR
523は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
521、R
522、およびR
523のうち少なくとも一つの基中には、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
521、R
522、およびR
523のうち少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
521、R
522、およびR
523のうち少なくとも一つの基中には、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0133】
以下に、一般式(52)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0135】
一般式(53)において、R
531は、水素原子または置換基を表す。R
532は、水素原子または窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。また、置換基としては、前述の一般式(1)においてR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。R
531およびR
532は同一であっても、異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
531およびR
532のうち少なくとも一つの基中には、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
531およびR
532のうち少なくとも一つの基中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
531およびR
532のうち少なくとも一つの基中には、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0136】
以下に、一般式(53)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
一般式(54)において、R
541はフッ素原子が含まれる窒素原子に置換可能な基を表す。窒素原子に置換可能な基としては、前述の一般式(1)のR
2およびR
3に例示した基を好ましく挙げることができる。
R
541には、フッ素原子が含まれる。なかでも、R
541中の一部または全部の水素原子(好ましくは、炭素原子に結合している一部または全部の水素原子)が、フッ素原子で置換されていることが好ましい。また、R
541には、上述したR
f基が含まれることがより好ましい。
【0139】
以下に、一般式(54)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
また、一般式(5)で表される化合物の最好適態様としては、以下の一般式(Y)で表される化合物が挙げられる。
【0143】
式(1)中、R
y1およびR
y2は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。n1は1または2を表し、好ましくは2を表す。n1が2であるとき、複数のCR
y1R
y2で表される単位の構造は、同一であっても異なっていてもよい。
R
y1およびR
y2がアルキル基を表すとき、好ましくは炭素数1〜30、さらに好ましくは炭素数1〜15、特に好ましくは1〜6であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、クロロメチル、ヒドロキシメチル、アミノエチル、N,N−ジメチルアミノメチル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−ヒドロキシエチル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、2−エチルヘキシルなどが好ましく挙げられる。
(CR
y1R
y2)
n1で表される構造として、好ましくは−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、であり、さらに好ましくは−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、であり、特に好ましくは−CH
2CH
2−である。
【0144】
R
y3およびR
y4は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。m1は1〜6の整数を表す。m1が2以上であるとき、複数のCR
y3R
y4で表される単位の構造は、同一であっても異なっていてもよい。また、R
y3およびR
y4は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、置換基の定義は、上述の通りである。
【0145】
(CR
y3R
y4)
m1で表される構造として、好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH(CH
2OH)−であり、さらに好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、であり、特に好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、である。
【0146】
l1は、1〜6の整数を表す。なかでも、フッ素系樹脂との相溶性により優れる点で、2〜5が好ましく、3〜4がより好ましい。
【0147】
q1は0または1を表し、p1は2または3を表し、p1+q1は3を表す。なかでも、フッ素系樹脂との相溶性により優れる点で、q1が1で、p1が2であることが好ましい。
【0148】
R
y5は、炭素数1〜14のパーフルオロアルキル基を表す。パーフルオロアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
炭素原子数1〜14の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基の例としては、CF
3−、C
2F
5−、C
3F
7−、C
4F
9−、C
5F
11−、C
6F
13−、C
7F
15−、C
8F
17−、C
9F
19−、C
10F
21−、C
12F
25−、C
14F
29−などが挙げられる。
【0149】
(一般式(22)で表される化合物)
次に、一般式(22)で表される化合物について説明する。なお、一般式(22)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0151】
一般式(22)中、Rf
1は、エーテル性酸素原子を有してもよい水素原子の少なくとも一つがフッ素原子に置換された炭素数22以下のフルオロアルキル基、またはフッ素原子を表す。
上記フルオロアルキル基中の水素原子はフッ素原子以外の他のハロゲン原子に置換されていてもよい。他のハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。また、エーテル性酸素原子(−O−)は、フルオロアルキル基の炭素−炭素結合環に存在してもよく、フルオロアルキル基の末端に存在してもよい。また、フルオロアルキル基の構造は、直鎖構造、分岐構造、環構造、または部分的に環を有する構造が挙げられ、直鎖構造が好ましい。
Rf
1としては、ペルフルオロアルキル基または水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、ペルフルオロアルキル基が特に好ましい(ただし、エーテル性酸素原子を有するものを含む。)。
Rf
1としては、炭素原子数が4〜6のペルフルオロアルキル基、または、エーテル性酸素原子を有する炭素原子数が4〜9のペルフルオロアルキル基が好ましい。
Rf
1の具体例としては、以下が挙げられる。
−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CHF
2、−(CF
2)
2CF
3、−(CF
2)
3CF
3、−(CF
2)
4CF
3、−(CF
2)
5CF
3、−(CF
2)
6CF
3、−(CF
2)
7CF
3、−(CF
2)
8CF
3、−(CF
2)
9CF
3、−(CF
2)
11CF
3、−(CF2)
15CF
3、−CF(CF
3)O(CF
2)
5CF
3、−CF
2O(CF
2CF
2O)pCF
3(pは1〜8の整数)、−CF(CF
3)O(CF
2CF(CF
3)O)qC
6F
13(qは1〜4の整数)、−CF(CF
3)O(CF
2CF(CF
3)O)rC
3F
7(rは1〜5の整数)。
Rf
1としては、特に−(CF
2)CF
3または−(CF
2)
5CF
3が好ましい。
【0152】
X
1は、水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。なかでも、フッ素原子、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0153】
L
1は、単結合または炭素数1〜6のアルキレン基を表す。炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
L
2は、単結合、または、水酸基若しくはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。なかでも、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
L
3は、単結合または炭素数1〜6のアルキレン基を表す。なかでも、単結合または炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
【0154】
Y
1およびZ
1は、単結合、−CO
2−、−CO−、−OC(=O)O−、−SO
3−、−CONR
222−、−NHCOO−、−O−、−S−、−SO
2NR
222−、または、−NR
222−を表す。R
222は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。
なかでも、−CO
2−、−O−、−S−、−SO
2NR
222−、または、−CONR
222−が好ましい。
【0155】
R
221は、水素原子、炭素数1〜8に直鎖若しくは分岐のアルキル基、またはRf
1−CFX
1−L
1−Y
1―L
2−Z
1−L
3−を表す。
ただし、Y
1およびZ
1がいずれも単結合以外の場合、L
2はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
【0156】
以下に、一般式(22)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0158】
(一般式(23)で表される化合物)
次に、一般式(23)で表される化合物について説明する。なお、一般式(23)で表される化合物には、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0160】
一般式(23)中、R
231およびR
232は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R
231およびR
232がアルキル基を表すとき、好ましくは炭素数1〜30、さらに好ましくは炭素数1〜15、特に好ましくは1〜6であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、クロロメチル、ヒドロキシメチル、アミノエチル、N,N−ジメチルアミノメチル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−ヒドロキシエチル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、2−エチルヘキシルなどが好ましく挙げられる。
(CR
231R
232)
nで表される構造として、好ましくは−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、であり、さらに好ましくは−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、であり、特に好ましくは−CH
2CH
2−である。
【0161】
R
233およびR
234は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
(CR
233R
234)
mで表される構造として、好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH(CH
2OH)−であり、さらに好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(OH)CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、であり、特に好ましくは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、である。
【0162】
Y
2は、単結合、−CO−、または−COO−を表す。
Y
2が単結合または−CO−のとき、nは0を表し、mは0〜6の整数を表す。なかでも、mは0〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
Y
2が−COO−のとき、nは1または2を表し、好ましくは2を表す。mは1〜6の整数を表し、1〜4が好ましく、1〜2がより好ましい。
【0163】
Rf
2は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のパーフルオロアルキレン基、または、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のパーフルオロエーテル基を表す。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は1〜20であるが、2〜15が好ましく、3〜12がより好ましい。パーフルオロアルキレン基の具体例としては、例えば、−C
4F
8−、−C
5F
10−、−C
6F
12−、−C
7F
14−、−C
8F
16−、−C
9F
18−、−C
10F
20−、−C
12F
24−などが挙げられる。
パーフルオロエーテル基とは、上記パーフルオロアルキレン基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間、またはパーフルオロアルキレン基の結合末端にエーテル性酸素原子(−O−)が挿入された基を意味する。パーフルオロアルキレン基の炭素数は1〜20であるが、2〜15が好ましく、3〜12がより好ましい。パーフルオロエーテル基の具体例としては、−(C
gF
2gO)
h−(式中、gはそれぞれ独立に1〜20の整数であり、hは1以上の整数であり、g×h≦20以下の関係を満たす。)で表されるパーフルオロエーテル基が挙げられる。
【0164】
pは2〜3の整数を表し、lは0〜1の整数を表し、p+l=3の関係を満たす。なかでも、pが3で、lが0であることが好ましい。
【0165】
以下に、一般式(23)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0167】
(一般式(24)で表される基と一般式(25)で表される基とを有する化合物)
次に、一般式(24)で表される基と一般式(25)で表される基とを有する化合物(以後、化合物Xとも称する)について説明する。なお、化合物Xには、上述したフッ素含有率を満たすフッ素原子が含まれることが好ましい。
【0169】
一般式(24)中、R
241、R
242、R
243、およびR
244は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。なかでも、置換基としてはアルキル基が好ましく、特に、R
242およびR
243がアルキル基(特に、tert−ブチル基)であることが好ましい。R
241およびR
244は、水素原子であることが好ましい。
*は、結合位置を示す。
【0170】
一般式(25)中、Xは、水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。なかでも、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基が好ましい。
Rfは、エーテル性酸素原子を有していてもよい水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素原子数20以下のフルオロアルキル基、またはフッ素原子を表す。Rfの定義は、炭素原子数が異なる点を除いて上記Rf
1と同義であり、好適態様も同義である。
*は、結合位置を示す。
【0171】
化合物Xの好適態様としては、以下の一般式(26)で表される繰り返し単位および一般式(27)で表される繰り返し単位を有するポリマーAが挙げられる。
【0173】
一般式(26)および一般式(27)中、R
261およびR
262は、それぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
Z
2は、単結合、エステル基、アミド基、またはエーテル基を表す。
L
4は、単結合または2価の有機基を表す。L
4で表される有機基としては、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、さらに、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。なかでも、L
4中の総炭素数が1〜15であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、L
4で表される置換若しくは無置換の2価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシル基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
L
5は、単結合、または、炭素数1〜6のフッ素を有さない2価の有機基を表す。なかでも、炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましい。
なお、一般式(26)および一般式(27)中のR
241〜R
244、XおよびRfの定義は、上述の通りである。
【0174】
ポリマーA中における一般式(26)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位に対して、5〜90モル%が好ましく、10〜70モル%がより好ましい。
ポリマーA中における一般式(27)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位に対して、10〜95モル%が好ましく、30〜90モル%がより好ましい。
ポリマーAの重量平均分子量は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、3,000〜500,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。
【0175】
化合物Xの他の好適態様としては、以下の一般式(28)で表される基がさらに含まれることが好ましい。*は、結合位置を示す。
*−(R
281O)
qR
282 一般式(28)
R
281は、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。
R
282は、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。なかでも、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。置換基の例としては、前述のR
2およびR
3で表されるアルキル基の置換基を挙げることができる。
qは、1〜210の整数を表す。
一般式(28)で表される基の好適態様としては、以下の一般式(28−1)で表される基が挙げられる。
*−(R
283O)
k(R
284O)
jR
282 一般式(28−1)
R
283は、エチレン基を表す。R
284は、炭素数3〜4のアルキレン基を表す。
kは、0〜100の整数を表す。なかでも、1〜50が好ましく、2〜23がより好ましい。
jは、0〜100の整数を表す。なかでも、0〜50が好ましく、0〜23がより好ましい。
なお、k+jは2≦k+j≦100を満たす。
【0176】
化合物Xの好適態様としては、上記一般式(26)で表される繰り返し単位、上記一般式(27)で表される繰り返し単位、および、一般式(29)で表される繰り返し単位を有するポリマーBが挙げられる。
一般式(26)および一般式(27)の説明は、上述の通りである。
【0178】
一般式(29)中、R
263は、水素原子、または、炭素数1〜4の置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
L
6は、単結合または炭素数1〜10のフッ素原子を有しない2価の有機基である。L
6が上記有機基である場合、直鎖構造、分岐構造、環構造、部分的に環を有する構造の炭素数1〜10のオキシアルキレン基であることが好ましい。オキシアルキレン基として具体的には、CH
2CH
10CH
2O(式中、C
6H
10は、シクロヘキシレン基である。)、CH
2O、CH
2CH
2O、CH
2CH(CH
3)O、CH(CH
3)O、CH
2CH
2CH
2O、C(CH
3)
2O、CH(CH
2CH
3)CH
2O、CH
2CH
2CH
2CH
2O、CH(CH
2CH
2CH
3)O、CH
2(CH
2)
3CH
2O、CH(CH
2CH(CH
3)
2)Oなどが挙げられる。なかでも、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であることが好ましい。
なお、一般式(29)中、R
281、R
282、qの定義は、上述の通りである。
【0179】
ポリマーB中における一般式(26)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位に対して、5〜80モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましい。
ポリマーB中における一般式(27)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位に対して、10〜85モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。
ポリマーB中における一般式(29)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリマー中の全繰り返し単位に対して、10〜85モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。
ポリマーBの重量平均分子量は特に制限されないが、イオンマイグレーション抑制能がより優れる点で、3,000〜500,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。
【0180】
以下に、化合物Xの具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0183】
組成物中におけるF含有マイグレーション抑制剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、後述する金属粒子全質量に対して、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0184】
<金属粒子>
組成物中に含まれる金属粒子は、導電膜を構成する金属成分となる。より具体的には、本発明の組成物を基板上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施すことにより、金属粒子同士が融着してグレインを形成し、さらにグレイン同士が接着・融着して導電膜が形成される。
金属粒子を構成する金属原子の種類は特に制限されず、用途に応じて適宜最適な金属の種類が選択される。なかでも、プリント配線基板などの配線回路としての点から、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの合金などが挙げられる。
【0185】
金属粒子の平均粒径は特に制限されず、主に、マイクロオーダーの平均粒径を有する金属微粒子(以後、金属マイクロ粒子とも称する)、または、ナノオーダーの平均粒径を有する金属微粒子(以後、金属ナノ粒子とも称する)の2種が使用される。
金属マイクロ粒子の平均粒径は特に制限されず、導電膜の導電特性がより優れる点で、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。
金属ナノ粒子の平均粒径は特に制限されず、導電膜の導電特性がより優れる点で、5〜100nmが好ましく、10〜20nmがより好ましい。
なお、金属粒子の平均粒径は、金属粒子を電子顕微鏡(SEM若しくはTEM)により観察して、20個以上の金属粒子の一次粒径(直径)を測定して、それらを算術平均して得られる平均値である。
【0186】
なお、必要に応じて、金属粒子の表面は保護剤により被覆されていてもよい。保護剤により被覆されることにより、組成物中での金属粒子の保存安定性が向上する。
使用される保護剤の種類は特に制限されず、公知のポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど側鎖に自由電子を有する官能基を有するポリマー)や、公知の界面活性剤などが挙げられる。
なかでも、金属ナノ粒子の場合、その表面が保護剤で覆われていることが好ましく、特に、熱重量測定(TGA)において160℃まで加熱した際の重量減少率が30%以上である保護剤を使用することが好ましい。このような保護剤であれば、加熱処理を施して導電膜を形成した際に、保護剤が導電膜中に残存しにくく、導電特性に優れた導電膜が得られる。
【0187】
組成物中における金属粒子の含有量は特に制限されないが、塗布性および組成物の保存安定性の点から、組成物全質量に対して、30〜85質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
【0188】
<その他の成分>
組成物には、必要に応じて、F含有マイグレーション抑制剤および金属粒子以外に他の成分が含まれていてもよい。
例えば、組成物には、樹脂バインダーが含まれていてもよい。樹脂バインダーが含まれることにより、機材と導電膜との密着性がより向上する。使用される樹脂バインダーの種類は特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、またはシランカップリング剤の反応物などが挙げられる。
【0189】
また、組成物には、溶媒が含まれていてもよい。使用される溶媒の種類は特に制限されず、水または有機溶媒が挙げられる。
なお、使用される有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、カルビトール、2−ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、α―テルピネオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン)、炭化水素系溶媒(例えば、ヘプタン、オクタン、ドデカン)芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)、アミド系溶媒(例えば、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルプロピレンウレア)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、エステル系溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、カーボネート系溶媒(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒を、2種以上混合して使用してもよい。
組成物中に溶媒が含まれる場合、溶媒の含有量は、組成物の塗布性および保存安定性に優れる点で、組成物全質量に対して、10〜70質量%が好ましく、15〜55質量%がより好ましい。
【0190】
<導電膜の製造方法>
上記組成物を用いて導電膜を製造することができる。
導電膜の製造方法は特に制限されず、上記組成物を基材上に塗布して、必要に応じて、硬化処理を施して導電膜を製造方法が挙げられる。
組成物が塗布される基材の種類は特に制限されず、使用目的に応じて最適な基材が選択される。例えば、樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材などが挙げられる。配線基板への応用の点からは、絶縁性の基材(絶縁性基材)を使用することが好ましい。
【0191】
組成物との塗布方法は特に制限されず、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法など公知の方法が挙げられる。
なお、組成物の塗布後、必要に応じて、溶媒を除去するために、塗布後に乾燥処理を実施してもよい。乾燥処理の際の加熱条件は特に制限されないが、生産性の点から、50〜150℃(好ましくは80〜120℃)で5分〜2時間(好ましくは、10分〜1時間)程度加熱することが好ましい。
【0192】
組成物を塗布して得られる塗膜に対して施される硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、加熱処理または光照射処理が実施される。
加熱処理の条件は、使用される金属粒子の種類によって適宜最適な条件が選択される。なかでも、短時間で、導電性により優れる導電膜を形成することができる点で、加熱温度は150〜400℃が好ましく、150〜250℃がより好ましく、また、加熱時間は5〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
なお、加熱手段は特に制限されず、オーブン、ホットプレート等公知の加熱手段を用いることができる。
【0193】
光照射処理は、上述した加熱処理とは異なり、室温にて塗膜が付与された部分に対して光を短時間照射することで焼結が可能となり、長時間の加熱による基板の劣化が起こらず、導電膜の基板との密着性がより良好となる。
光照射処理で使用される光源は特に制限されず、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
光照射は、フラッシュランプによる光照射が好ましく、フラッシュランプによるパルス光照射であることがより好ましい。高エネルギーのパルス光の照射は、塗膜を付与した部分の表面を、極めて短い時間で集中して加熱することができるため、基材への熱の影響を極めて小さくすることができる。
パルス光の照射エネルギーとしては、1〜100J/cm
2が好ましく、1〜30J/cm
2がより好ましく、パルス幅としては1μ秒〜100m秒が好ましく、10μ秒〜10m秒がより好ましい。パルス光の照射時間は、1〜100m秒が好ましく、1〜50m秒がより好ましく、1〜20m秒が更に好ましい。
【0194】
上記加熱処理および光照射処理は、単独で実施してもよく、両者を同時に実施してもよい。また、一方の処理を施した後、さらに他方の処理を施してもよい。
【0195】
<導電膜>
上記の手順によって形成された導電膜においては、F含有マイグレーション抑制剤が導電膜の表層部分に偏在する。以下、
図1を用いてより詳細に詳述する。
図1は、配線基板の第1の実施態様の模式的断面図を示し、配線基板10は、基材12と、基材12上の全面に渡って配置された導電膜14とを備える。なお、後述するように、導電膜14の形状は
図1の態様に限定されず、パターン状(例えば、ストライプ状、格子状)に配置されていてもよい。
導電膜14は、基材12上に配置される層で、導体部として機能する。
導電膜14は、上述したように金属粒子に由来する金属で構成される共に、F含有マイグレーション抑制剤が含有される。
【0196】
図1に示すように、導電膜14は、内部領域14aと、内部領域14a上に配置された表層領域14bとを有する。表層領域14bは、内部領域14aの基材12と接していない表面を覆っている。なお、表層領域14bとは、導電膜14の露出表面から導電膜14の全体厚みの1/10に相当する深さ位置までの領域に該当する。つまり、表層領域14bの厚みは、導電膜14の厚みT2の1/10に相当する。なお、導電膜14の全体厚みは、5箇所以上の任意点の導電膜14の全体厚みを測定して、それらを算術平均したものである。
上記F含有マイグレーション抑制剤は、
図1中の表層領域14b内に偏在して存在する。より具体的には、導電膜14にはF含有マイグレーション抑制剤が含まれ、表層領域14bに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Yは、内部領域14aに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Xよりも大きい。つまり、質量Y>質量Xの関係(質量X/質量Yが1未満の関係)を満たす。上記関係を満たしていれば、導電膜14からのイオンマイグレーションが抑制されると共に、導電膜14の導電特性も優れる。なかでも、イオンマイグレーション抑制機能と導電特性とのバランスがより優れる点で、内部領域14aに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Xと、表層領域14bに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Yとの比(X/Y)は0.20以下がさらに好ましく、0.10以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0が最も好ましく、実用上は0.001以上であってもよい。
比(X/Y)の測定方法は特に制限されず、例えば、基材12表面に対して垂直な方向の導電膜14の垂直断面を電子顕微鏡(SEMまたはTEM)で観察して、内部領域14aに相当する領域と表層領域14bに相当する領域とに含まれる成分の元素分析を行い、F含有マイグレーション抑制剤由来の元素の量を比較して、比(X/Y)を求めることができる。
【0197】
導電膜14全体に含まれるF含有マイグレーション抑制剤の含有量は特に制限されないが、導電膜14の導電特性の観点から、導電膜14全質量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
表層領域14bに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の含有量は特に制限されないが、導電膜14の導電特性の観点から、マイグレーション抑制剤全質量に対して、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。
【0198】
導電膜14には、本発明の効果を損なわない範囲で、金属とマイグレーション抑制剤以外の成分が含まれていてもよい。例えば、バインダー樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドンなど)が含まれていてもよい。
【0199】
次に、本発明の配線基板の第2の実施態様について、図面を参照して詳述する。
図2は、配線基板の第2の実施態様の模式的断面図を示し、配線基板100は、基材12と、基材12上に配置された2つの細線状の導電膜114とを備える。
図2に示すような、パターン状の導電膜の製造方法は特に制限されず、上述したインクジェット法により基材上の所定の位置に導電膜形成用組成物を吐出する方法が挙げられる。
導電膜114は、内部領域114aと内部領域114aの基材12と接していない表面を覆う表層領域114bとを有する。
導電膜114は、
図1に示す配線基板10中の導電膜14に相当して同様の構成を有し、その形状のみが異なる。つまり、内部領域114aは
図1に示す配線基板10中の内部領域14aに相当し、表層領域114bは
図1に示す配線基板10中の表層領域14bに相当する。
より具体的には、導電膜114を構成する金属の種類の好適態様は、上述した第1の実施形態の場合と同じである。
また、表層領域114bの厚みT1は、上述した第1の実施形態の場合と同様に、導電膜114の全体厚みT2の1/10の厚みに相当する。
また、表層領域114bに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Yは、第1の実施形態の場合と同様に、内部領域114aに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Xより大きく、その好適態様も同じである。
さらに、導電膜114全体に含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量の好適範囲、および、表層領域114bに含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量の好適範囲は、上述した第1の実施形態の場合と同じである。
【0200】
図2において、内部領域114aは細線状であり、内部領域114aを覆うように(内部領域の上面部分16と2つの側面部分18を覆うように)表層領域114bが存在する。
なお、
図2においては、導電膜114は垂直断面が矩形状の層であるが、特にその形状は制限されず任意の形状であってもよい。
【0201】
図2において、2つの導電膜114がストライプ状に配置されているが、その数および配置パターンは特に制限されない。
導電膜114の幅Wは、配線基板の高集積化の点から、0.1〜10000μmが好ましく、0.1〜300μmがより好ましく、0.1〜100μmがさらに好ましく、0.2〜50μmが特に好ましい。
導電膜114間の間隔Dは、配線基板の高集積化の点から、0.1〜1000μmが好ましく、0.1〜300μmがより好ましく、0.1〜100μmがさらに好ましく、0.2〜50μmが特に好ましい。
導電膜114の厚みT2は、配線基板の高集積化の点から、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜30μmがより好ましく、0.01〜20μmがさらに好ましい。
【0202】
上述した導電膜を備える配線基板は、種々の用途および構造に対して使用することができる。例えば、プリント配線基板、プラズマディスプレイパネル用パネル基板、太陽電池電極用基板、メンブレン配線板、タッチパネル電極用基板などが挙げられる。
また、配線基板は、電子機器に含まれることが好ましい。電子機器とは、タッチパネルもしくはメンブレンスイッチやそれらを搭載したテレビ・モバイル通信機器・パーソナルコンピューター・ゲーム機器・車載表示機器・ネット通信機器、照明・表示用LED、太陽電池制御に関する電子配線機器、RFIDなどの無線通信デバイス、あるいは半導体配線基板や有機TFT配線基板で駆動制御された機器類を指す。
【0203】
本発明の配線基板の導電膜側上には、必要に応じて、さらに絶縁層を設けてもよい。
例えば、
図3に示すように、上述した配線基板100の導電膜114側上には、必要に応じて、さらに導電膜114を覆うように絶縁層20を設けて、絶縁層付き配線基板200を形成してもよい。絶縁層20を設けることにより、導電膜114間の絶縁特性がより向上する。
絶縁層20の材料としては、公知の絶縁性の材料を使用することができる。例えば、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、結晶性ポリオレフィン樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、フッ素含有樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、全フッ素化ポリイミド、全フッ素化アモルファス樹脂など)、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、アクリレート樹脂など挙げられる。
また、絶縁層20として、いわゆる光学用透明粘着シート(OCA)を使用してもよい。OCAは市販品を用いてもよく、例えば、3M(株)製8171CLシリーズ、8146シリーズなどが挙げられる。
また、絶縁層20として、いわゆるソルダーレジスト層を使用してもよい。ソルダーレジストは市販品を用いてもよく、例えば、太陽インキ製造(株)製PFR800、PSR4000(商品名)、日立化成工業(株)製 SR7200Gなどが挙げられる。
【実施例】
【0204】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0205】
<比較例1:F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物A−1>
N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(東京化成、特級)2.04g(20.0mmol)と、n−オクチルアミン(花王、純度98%)1.94g(15.0mmol)と、n−ドデシルアミン(関東化学、特級)0.93g(5.0mmol)とを混合し、この混合溶液にシュウ酸銀〔硝酸銀(関東化学、一級)とシュウ酸アンモニウム一水和物またはシュウ酸二水和物(関東化学、特級)から合成したもの〕6.08g(20.0mmol)を加え、3分間撹拌し、シュウ酸イオン・アルキルアミン・アルキルジアミン・銀錯化合物を調製した。これを95℃で20〜30分加熱撹拌すると、二酸化炭素の発泡を伴う反応が完結し、青色光沢を呈する懸濁液へと変化した。これにメタノール(関東化学、一級)10mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると、青色光沢の被覆銀超微粒子の固体物4.62g(銀基準収率97.0%)が得られた。この固体物をn−ブタノール(関東化学、特級)とn−オクタン(関東化学、特級)の混合溶媒(4/1:v/v)に6.93gに分散し、F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物A−1を得た。
【0206】
<比較例2:F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物A−2>
F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物A−2として、ポリマー型導電性ペーストLS−450−7H(アサヒ化学研究所製)を用いた。
【0207】
<比較例3:F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電性インクA−3>
F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物A−3として、フローメタルSW−1020(バンドー化学製)を用いた。
【0208】
<比較例4:F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物B−9>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、IRGANOX1135(BASF製)(0.12g)を添加して、攪拌し、導電膜形成用組成物B−9を得た。
なお、導電膜形成用組成物B−9には、F含有マイグレーション抑制剤は含まれない。
【0209】
<比較例5:F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物B−10>
比較例2の導電膜形成用組成物A−2(10g)に対し、ベンゾトリアゾール(0.12g)を添加して、攪拌し、導電膜形成用組成物B−10を得た。
なお、導電膜形成用組成物B−10には、F含有マイグレーション抑制剤は含まれない。
【0210】
(合成例1:化合物M−1)
反応容器に、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸(3.5g,12.6mmol)、ジクロロメタン(20ml)、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデカン−1−オール(6.3g,12.6mmol)、テトラヒドロフラン(10ml)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.4g,12.6mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g,0.4mmol)をこの順に加えた。
反応溶液を室温で3時間攪拌した後、反応溶液に1N塩酸(50ml)を加え、酢酸エチル100mlで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。固形分をろ別した後、減圧濃縮し、白色の粗結晶を得た。メタノールで再結晶を行い、化合物M−1を6.0g得た(収率63%)。
得られた化合物M−1の
1H−NMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)
6.98(2H,s)、5.09(1H,s)、4.59(2H,t)、2.90(2H,t)、2.71(2H,t)、1.43(9H,s)
1H−NMRのデータにおいて、各プロトンのピークが特徴的な位置に観察されることから、化合物M−1であると同定した。
【0211】
【化39】
【0212】
(合成例2:化合物M−2)
反応容器に、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジチオール(和光純薬製)(4.0g,26.6mmol)、テトラヒドロフラン(80ml)を加えて完溶させた。その後、アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,8,8,8−ドデカフルオロ−7−(トリフルオロメチル)オクチル(12.5g,26.6mmol)を、滴下漏斗から0.5時間かけて反応溶液に滴下した。反応溶液を65℃で6時間攪拌後、室温まで冷却し、反応溶液を減圧濃縮した。反応溶液にヘキサン200mLを添加し、氷浴にて冷却して、粗結晶16gを得た。粗結晶のうち8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)にて精製し、本発明の化合物M−2を6g得た(収率72%)。
得られた化合物M−2の
1H−NMRスペクトルは以下の通りである。
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)
11.1(1H,br)、4.44(2H,t)、3.40(2H,t)、2.85(2H,t)、2.49(2H,t)、2.49(2H,m)
1H−NMRのデータにおいて、各プロトンのピークが特徴的な位置に観察されることから、化合物M−2であると同定した。
【0213】
【化40】
【0214】
(合成例3:化合物M−3)
反応容器に、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸(1.5g,9.19mmol)、テトラヒドロフラン(27ml)、ジメチルホルムアミド(3ml)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール(3.35g,9.19mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.76g,9.19mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.11g,0.91mmol)をこの順に加えた。70℃で24時間攪拌した後、水50mlを加え、酢酸エチル100mlで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。固形分をろ別した後、溶液を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)にて精製し、化合物M−3を3.1g得た(収率66%)。
【0215】
【化41】
【0216】
(合成例4:化合物M−4)
下記スキームに従って、化合物M−4Aを合成した。
【0217】
【化42】
【0218】
反応容器に、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジチオール(和光純薬製)(4.0g,26.6mmol)、テトラヒドロフラン(80ml)を加えて完溶させた。アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(11.13g,26.6mmol)を、滴下漏斗から0.5時間掛けて滴下した。65℃で6時間攪拌後、室温まで冷却し、溶液を減圧濃縮した。反応混合物にヘキサン200mLを添加し、氷浴にて冷却して、粗結晶15gを得た。粗結晶のうち7.5gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)にて精製し、化合物M−4Aを6g得た(収率79%)。
【0219】
次に、得られた化合物M−4Aを用いて、下記スキームに従って、化合物M−4を合成した。
【0220】
【化43】
【0221】
反応容器に、化合物M−4A(3.0g,5.28mmol)、酢酸エチル(20ml)を加えて完溶させた。ヨウ化ナトリウム(79.1mg,0.528mmol)と30%過酸化水素(22.11mmol,2.39g)をこの順で加えて、室温で1時間撹拌した。析出した結晶を100mlの水で洗浄し、得られた粗結晶2.7gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)にて精製し、化合物M−4を2.4g得た(収率80%)。
得られた本発明の化合物M−4のNMRスペクトルは以下の通りであった。
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン):4.43(2H,t)、3.60(2H,t)、2.95(2H,t)、2.49(2H,m)
1H−NMRのデータにおいて、各プロトンのピークが特徴的な位置に観察されることから、化合物M−4であると同定した。
【0222】
【化44】
【0223】
(合成例5:化合物M−5)
300mLの三口フラスコに、4−メチル−2−ペンタノン(和光純薬工業(株)製)27.3gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱した。そこへ、アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−オクチル37.6g、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)1.42g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.92g、4−メチル−2−ペンタノン(和光純薬工業(株)製)63.8g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間撹拌後、90℃に昇温し、さらに2時間攪拌した。上記の反応溶液に、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸3.34g、ジメチルドデシルアミン(和光純薬工業(株)製)0.21gを加え、120℃に加熱し24時間反応させた。反応終了後、ヘキサン500ml、酢酸エチル500mlを加え、有機層を5%クエン酸水溶液300mlで洗浄後、5%アンモニア水溶液300mlで洗浄した。さらに5%クエン酸水溶液300mlで洗浄後、水300mlで洗浄した。有機層を減圧濃縮後、ヘキサンで再沈を行い、減圧化で乾燥し、化合物M−5(Mw=7,000)を30g得た。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定されたポリスチレン換算値である。重量平均分子量のGPC法による測定は、ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZ4000(TOSOH製、4.6mmI.D.×15cm)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行った。
化合物M−5は、一般式(24)で表される基と一般式(25)で表される基とを有する化合物に該当する。
【0224】
(合成例6:化合物M−6)
300mLの三口フラスコに、1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業(株)製)14.3gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱した。そこへ、アクリル酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−オクチル4.81g、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)1.56g、ブレンマーAE−400(日本油脂社製)14.09g、V−601(和光純薬工業(株)製)0.46g、1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業(株)製)33.4g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間撹拌後、90℃に昇温し、さらに2時間攪拌した。上記の反応溶液に、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸3.67g、ジメチルドデシルアミン(和光純薬工業(株)製)0.23g、を加え、120℃に加熱し24時間反応させた。反応終了後、減圧濃縮後し水200gで希釈した。反応液をフィルターろ過した後、60℃に加熱し、分離したポリマー溶液を取り出し、化合物M−6(Mw=8,000)の35w%水溶液45g得た。
重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定されたポリスチレン換算値である。重量平均分子量のGPC法による測定は、ポリマーをテトラヒドロフランに溶解させ、東ソー(株)製高速GPC(HLC−8220GPC)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZ4000(TOSOH製、4.6mmI.D.×15cm)を用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行った。
化合物M−6は、一般式(24)で表される基と、一般式(25)で表される基と、一般式(28)で表される基とを有する化合物に該当する。
【0225】
<実施例1:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−1>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、合成例1で得られた化合物M−1(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−1を得た。
【0226】
<実施例2:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−2>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、合成例2で得られた化合物M−2(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−2を得た。
【0227】
<実施例3:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−3>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、合成例3で得られた化合物M−3(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−3を得た。
【0228】
<実施例4:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−4>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、合成例4で得られた化合物M−4(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−4を得た。
【0229】
<実施例5:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−5>
比較例1で得られた導電膜形成用組成物A−1(11.55g)に対し、合成例5で得られた化合物M−5(高分子型)(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−5を得た。
【0230】
<実施例6:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−6>
比較例2の導電膜形成用組成物A−2(10g)に対し、合成例1で得られた化合物M−1(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−6を得た。
【0231】
<実施例7:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−7>
比較例2の導電膜形成用組成物A−2(10g)に対し、合成例3で得られた化合物M−3(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−7を得た。
【0232】
<実施例8:F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−8>
比較例3の導電膜形成用組成物A−3(10g)に対し、合成例6で得られた化合物M−6(0.12g)を添加して、攪拌し、F含有マイグレーション抑制剤を含有する導電膜形成用組成物B−8を得た。
【0233】
<インクジェットによる配線形成>
マテリアルプリンターDMP−2831(FUJIFILM Dimatix社製)を用い、吐出量:10pL、吐出間隔:50μmの条件で、ガラス基板上へ導電膜形成用組成物をL/S=75/75μmの櫛形状に描画を行い、これを2層分重ねて描画を行った。その後、オーブンで230℃、1時間ベークを行い、試験用配線基板を作製した。本方法は、表1の「配線形成方法」欄において「IJ」と表記する。
【0234】
<スクリーン印刷による配線形成>
DP―320型スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製)を用いて、ガラス基板上へ導電膜形成用組成物をL/S=75/75μmの櫛形状に印刷を行い(300メッシュスクリーンを使用)、その後、オーブンで230℃、1時間ベークを行い、試験用配線基板を作製した。本方法は、表1の「配線形成方法」欄において「スクリーン」と表記する。
【0235】
<試験用配線膜厚測定方法>
作製した試験用配線基板をエポキシ樹脂で包埋し、研磨による断面出しを行った後、S−3000N(HITACHI社製SEM)を用いて断面を観察、導電膜の厚みの測定を行った。結果を表1にまとめて示す。
なお、各試験用配線基板中の導電膜の露出表面から導電膜の全体厚みの1/10に相当する深さ位置までの領域を表層領域として、残りの部分を内部領域とした。
【0236】
<内部領域に含まれるF含有マイグレーション抑制剤の質量Xと、表層領域に含まれるF含有マイグレーション抑制剤との質量Yとの比(X/Y)の測定方法>
前述のSEM写真と、INCA PentaFETx3(OXFORD社製EDX)を用い、F含有マイグレーション抑制剤の存在部の検出を行い、内部領域と表層領域における検出強度、面積比より質量Xと質量Yの比(X/Y)を求めた。結果を表1にまとめて示す。
【0237】
<導電性評価方法>
得られた試験用配線基板の導電性評価を抵抗率計ロレスタEP MCP−T360(三菱化学アナリテック社製)を用いて行った。
評価方法として、作製した試験用配線基板の抵抗測定値をR1、F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物のみで作製した比較用配線基板の抵抗測定値をR2とし、その変化割合R1/R2を計算した。以下の基準に従って、評価した。結果を表1にまとめて示す。尚、実用上はC以上が使用可能であり、B以上が好ましい。
「A」:R1/R2≦1.1の場合
「B」:1.1<R1/R2≦1.25の場合
「C」:1.25<R1/R2≦2.0の場合
「D」:2.0<R1/R2の場合
なお、実施例1〜5並びに比較例1および4では、導電膜形成用組成物A−1を用いて上記インクジェットにて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
また、実施例6〜7並びに比較例2および5では、導電膜形成用組成物A−2を用いて上記スクリーン印刷にて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
また、実施例8および比較例3では、導電膜形成用組成物A−3を用いて上記インクジェットにて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
【0238】
<絶縁信頼性評価方法>
得られた試験用配線基板を用いて、湿度85%、温度85度、圧力1.0atm、電圧80Vの条件で寿命測定(使用装置:エスペック(株)社製、EHS−221MD)を行った。
評価方法としては、まず、作製した試験用配線基板上に高透明性接着剤転写テープ8146−2(3M社製)貼り合せて、逆側にガラス基板を張り合わせて作製された絶縁信頼性試験用基板を用いて上記条件で寿命測定を行い、配線層間の抵抗値が1×10
5Ωになるまでの時間T1を測定した。
次に、F含有マイグレーション抑制剤を含まない導電膜形成用組成物のみで作製した比較用配線基を用いて同様の方法で絶縁信頼性試験用基板を作製し、上記条件で寿命測定を行い、配線層間の抵抗値が1×10
5Ωになるまでの時間T2を測定した。
得られた時間T1および時間T2を用いて寿命の改善効果(T1/T2)を計算した。以下の基準に従って、評価した。結果を表1にまとめて示す。尚、実用上はC以上が使用可能であり、B以上が好ましい。
「A」:T1/T2≧5の場合
「B」:5>T1/T2≧2の場合
「C」:2>T1/T2>1の場合
「D」:1≧T1/T2の場合
なお、実施例1〜5並びに比較例1および4では、導電膜形成用組成物A−1を用いて上記インクジェットにて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
また、実施例6〜7並びに比較例2および5では、導電膜形成用組成物A−2を用いて上記スクリーン印刷にて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
また、実施例8および比較例3では、導電膜形成用組成物A−3を用いて上記インクジェットにて作製した比較用配線基板を用いて、上記評価を行った。
【0239】
【表1】
【0240】
【表2】
【0241】
表1に示すように、F含有マイグレーション抑制剤を使用した実施例1〜8においては、導電膜中においてF含有マイグレーション抑制剤が表層領域に偏在していることが確認され、導電膜が導電特性に優れると共に、絶縁信頼性(イオンマイグレーション抑制能)も優れていた。
一方、F含有マイグレーション抑制剤を含まない比較例1〜5においては、導電性、または、絶縁信頼性(イオンマイグレーション抑制能)に劣っていた。例えば、マイグレーション抑制剤が含まれない比較例1〜3においては、導電特性は優れるが、絶縁信頼性(イオンマイグレーション抑制能)が劣っていた。また、フッ素原子を含有しないマイグレーション抑制剤を含む比較例4〜5においては、絶縁信頼性(イオンマイグレーション抑制能)は優れるものの、マイグレーション抑制剤の偏在化が起こらないため導電特性に劣っていた。