【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者 川島信之 発行所 公益社団法人 日本化学会 刊行物名 日本化学会第92春季年会(2012)講演要旨集IV 発行日 平成24年(2012年)3月9日
【文献】
J. Am. Chem. Soc.,2011年,133,pp.7096-7105
【文献】
J. Med. Chem.,1995年,38(26),pp.5045-5050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
【0026】
本明細書において、「アルキル」は直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなるアルキル基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、例えば炭素数1〜10個(C
1〜10)、好ましくは炭素数1〜5個(C
1〜5)である。本明細書において、アルキル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれであってもよい)、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アルキル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アルキル部分を含む他の置換基(例えばアルコシ基、アリールアルキル基など)のアルキル部分についても同様である。
【0027】
本明細書において、「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有している直鎖又は分枝鎖のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1,3−ブタンジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1,3−ペンタンジエニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル及び1,4−ヘキサンジエニル)を含む。これらの中で、C
1〜10アルケニル基が好ましく、C
1〜5アルケニル基が特に好ましい。
【0028】
本明細書中において、「アルキニル」は、少なくとも1の三重結合を有している直鎖又は分枝鎖のアルキニル基、例えば、エチニル、1−プロピニル及びプロパルギルを含む。
【0029】
本明細書中において、「アシル」は、脂肪族アシル基又は芳香族アシル基のいずれであってもよく、芳香族基を置換基として有する脂肪族アシル基であってもよい。アシル基は1個又は2個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、アシル基としてアルキルカルボニル基(アセチル基など)、アルキルオキシカルボニル基(アセトキシカルボニル基など)、アリールカルボニル基(ベンゾイル基など)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基など)、アラルキルカルボニル基(ベンジルカルボニル基など)、アルキルチオカルボニル基(メチルチオカルボニル基など)、アルキルアミノカルボニル基(メチルアミノカルボニル基など)、アリールチオカルボニル基(フェニルチオカルボニル基など)、又はアリールアミノカルボニル基(フェニルアミノカルボニル基など)などのアシル基を挙げることができるが、これらに限定されることはない。これらのアシル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アシル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0030】
本明細書中において、「アリール」は単環性アリール基又は縮合多環性アルール基のいずれであってもよく、環構成原子としてヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子など)を1個以上含んでいてもよい。本明細書において、アリール基はその環上に任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシルなどを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アリール基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。アリール部分を含む他の置換基(例えばアリールオキシ基やアリールアルキル基など)のアリール部分についても同様である。
【0031】
本明細書中において、「アリールアルキル」は、上記アリールで置換されたアルキルを表す。アリールアルキルは、任意の置換基を1個以上有していてもよい。該置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノ若しくはジ置換アミノ基、置換シリル基、又はアシル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。アシル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。代表的には、ベンジル、p−メトキシベンジルなどである。
【0032】
本明細書中において、「スルホンアミド」におけるアミンは上記アルキル等によって任意に置換されていてもよい。2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0033】
(1)6−アザアルテミシニン誘導体
本発明の6−アザアルテミシニン誘導体は、一態様において、上記式(I)で表される構造を有する化合物である。ここで、R
1は、H、又は置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアシル基を表す。好ましくは、H、又は置換されていてもよいC
1〜10アルキルもしくはC
1〜10アシル基であり、より好ましくは、メチル等のC
1〜5アルキルである。
【0034】
R
2は、H、又は置換されていてもよいアルキル、アシル、スルホンアミド、アリール、もしくはアリールアルキルである。好ましくは、R
2は、H、又は置換されていてもよいC
1〜10アルキル、C
1〜10アシル、スルホンアミド、もしくはベンジルであり、より好ましくはベンジル又はp−メトキシベンジルである。
【0035】
R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、アルケニル、もしくはアルキニルである。好ましくは、R
3は、H、又は置換されていてもよいC
1〜10アルキルであり、より好ましくは、Hである。
【0036】
R
4は、=O、OH、置換されていてもよいアルキル、アルコキシ、カルボニル、もしくはカルボキシルであり、また、アルテスネート及びアルテミソン等の従来のアルテミシニン誘導体のC10位に用いられている置換基であることができ、例えば、以下の置換基
【化11】
であることができるが、これらに限られない。好ましくは、R
4は=Oである。
【0037】
具体的な態様として、本発明の化合物は、以下の式(II)又は式(III)で表される化合物である。
【化12】
【0038】
上記式(I)で表される本発明の化合物は、塩として存在する場合がある。塩としては、薬学的に許容される塩であれば特に限定されないが、例えば、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。
【0039】
また、上記式(I)で表される本発明の化合物は、複数の不斉炭素を有し、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在するが、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
【0040】
式(I)で表される本発明の化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
【0041】
式(I)〜式(III)で具体的に表される本発明の化合物のみならず、環状構造における炭素数の増減や更なるヘテロ原子の導入、又はR
1〜R
4等の置換基の導入位置の変更などによって、更なる6−アザアルテミシニン誘導体のバリエーションを構築することもでき、これらも本発明の範囲に包含される。そのような更なる6−アザアルテミシニン誘導体としては、例えば以下のような化合物が挙げられる(いずれの式も、R
4が=Oである態様を例示している)。
【化13】
【0042】
本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物にも関する。医薬組成物におけるような用語「組成物」は、活性成分と、担体を構成する不活性成分(医薬的に許容される賦形剤)とを含む生成物ばかりでなく、任意の2つ以上の成分の会合、複合体化もしくは凝集の結果として、または1つ以上の成分の解離の結果として、または1つ以上の成分の別のタイプの反応もしくは相互作用の結果として、直接もしくは間接的に生ずる任意の生成物も包含する。
【0043】
また、本発明は、式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、マラリア原虫類の感染治療剤にも関する。マラリア原虫とは、主として、ヒト感染性マラリア原虫であって、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫等を意味する。
【0044】
本発明の化合物及び医薬組成物を治療剤として投与する場合、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等として経口投与してもよいし、また注射剤、点滴剤として非経口的に投与してもよい。投与量は症状の程度、年齢、疾患の種類等により異なるが、通常成人1日当たり50mg〜500mgを1日1〜数回に分けて投与することができる。
【0045】
製剤化の際は通常の担体を用い、常法により製造する。経口用固形製剤を調製する場合は、主薬に賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えた後、常法により溶剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とする。注射剤を調製する場合には、主薬に必要によりpH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により皮下、静脈内用注射剤とする。
【0046】
(2)6−アザアルテミシニン誘導体の製造方法
本発明の6−アザアルテミシニン誘導体の製造方法は、1つの態様において、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0047】
工程1:トリメチルアセチレン存在下で以下の式(A)と式(B)の化合物を反応させ、
【化14】
式(C)の中間体を得る。ここで、化合物(A)及び(B)の代表的な例の合成については後述の実施例において説明するが、それら以外のR
1〜R
4の選択に応じて、当該技術分野における有機合成の標準的な知識に基づき適宜所望の出発物質を得ることができる。
【0048】
工程2:次いで、式(C)の化合物を環化して、
【化15】
式(D)の化合物を得る。ここで、当該工程は、チタン錯体触媒下、好ましくは、チタンイソプロポキサイド(IV)の存在下で行われる。これにより、立体選択的な環化を行うことができる。
【0049】
工程3:更に、式(D)の化合物を環化して、
【化16】
目的物である化合物(I)を得る。当該工程は、好ましくは、オゾン及び以下の構造を有するズダンIIIに存在下で行われる。
【化17】
【0050】
当該製造方法におけるこれらの工程における溶媒や反応温度等の反応条件は、後述の実施例において代表的な例として詳細に記載するが、必ずしもそれらに限定されるわけではなく、当該技術分野における当業者であれば、有機合成における一般的な知識に基づいてそれぞれ適宜選択可能である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下の合成例については、
1H−NMR及び
13C−NMRは溶媒としてCDCl
3を用い、日本電子株式会社製JNM−ECX400、又はブルカーバイオスピン株式会社製AV500 ultra shieldにより測定した。NMRスペクトルは重クロロホルムを用いた場合、特記しない限り
1H−NMRではCDCl
3(7.26ppm)を
13C−NMRではCDCl
3(77.16ppm)を基準として測定した。質量分析は日本電子株式会社製JMS−T100LP(ESI)により測定した。カラムクロマトグラフィーによる精製は山善のYFLC−AI−580を用いた。オゾン発生装置は京浜産業株式会社製のSO−O3UN−OXを使用した。μ波反応装置はBiotage社製のInitiatorを使用した。
【実施例1】
【0052】
以下のスキームに従って、本発明の6−アザアルテミシニン誘導体である化合物6(HTOH21)の合成を行った。
【化18】
【0053】
化合物3から4を合成する方法は以下の文献を参考にした。
Nicholas E.L.;Hanna M.T.;Heather T.、Mol.Divers.、2003,7,135.
化合物4から5を合成する方法は以下の文献を参考にした。
Urabe,H.;Suzuki,K.;Sato,F.、J.Am.Chem.Soc.、1997,119,11014.
化合物5から6を合成する方法は以下の文献を参考にした。
1)Avery,M.A.;Chong,W.K.M.;Jennings−Whites,C.、J.Am.Chem.Soc.、1992,114,974.
2)Veysoglu,T.;Mitscher,L.A.;Swayze,J.K.、Synthesis、1980,807.
【0054】
実際の合成手順を以下に示す。
【0055】
[化合物2の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物1から化合物2を製造した。
【化19】
50mlの二口フラスコにN−ベンジル-3-ブテニル2,2,2−トリフルオロアセトアミド1(1.23g,4.80mmol)をジクロロメタン(24.0ml)で溶かし入れ、−78℃に冷却した。オゾン発生装置より発生させたオゾンを15分間バブリングした。その後窒素バブリングを7分間行い、溶存オゾンを除去した後、tert−ブチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート(2.81g,7.46mmol)とトリエチルアミン(1.05ml,7.53mmol)を順に加えて室温まで昇温し、16時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、対応するtert−ブチル(E)−5−(N−ベンジルトリフルオロアセトアミド)ペント−2−エノエート2を得た(1.18g,69%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):2つの回転異性体A及びBの1.0対1.2混合物
δ7.40−7.32(5H,m,回転異性体A及びB),7.24−7.22(2H,d,J=6.9Hz,回転異性体A),7.21−7.20(2H,d,J=7.0Hz,回転異性体B),6.72−6.69(1H,t,J=7.2Hz,回転異性体A),6.69−6.66(1H,t,J=7.2Hz,回転異性体B),5.78−5.75(1H,d,J=15.8Hz,回転異性体A),5.74−5.71(1H,d,J=15.8Hz,回転異性体B),4.67(2H,s,回転異性体A),4.61(2H,s,回転異性体B),3.46−3.43(2H,t,J=7.8Hz,回転異性体A),3.42−3.39(2H,t,J=7.6Hz,回転異性体B),2.48−2.44(2H,dd,J=15.3,7.0Hz,回転異性体A),2.40−2.36(2H,ddd,J=15.0,7.3,1.2Hz,回転異性体B),1.47(9H,s,回転異性体A),1.46(9H,s,回転異性体B).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz) :2つの回転異性体A及びBの1.0対1.2混合物
δ165.47,165.26,142.58,141.55,135.30,134.69,129.26,129.17,128.61,128.37,128.21,127.53,126.10,125.71,80.83,80.61,51.48,51.45,49.68,45.44,45.34,45.32,31.14,29.28,28.25.
MS(ESI): C
18H
22F
3NO
3[M+Na]
+として、計算値380.1450,実測値380.1509.
【0056】
[化合物3の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物2から化合物3を製造した。
【化20】
200mlのナス型フラスコにtert−ブチル(E)−5−(N−ベンジルトリフルオロアセトアミド)ペント−2−エノエート2(1.71g,4.79mmol)をエタノール(48.0ml)で溶かし入れた。これに、5%の炭酸カリウム水溶液(25.0ml)を加え、27時間撹拌した。これにジクロロメタン(150ml)を加えて希釈し、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を30ml加えた。有機層と水層を分液した後、水層をジクロロメタン(200ml×2)で抽出し、炭酸カリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、対応するtert−ブチル(E)−5−(N−ベンジルアミノ)ペント−2−エノエート3を得た(1.20g,96%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)
δ7.34−7.30(4H,m),7.27−7.23(1H,m),6.86−6.81(1H,dt,J=15.5,7.2Hz),5.81−5.78(1H,dt,J=15.6,1.5Hz),3.80(2H,s),2.78−2.75(2H,t,J=6.9Hz),2.41−2.37(2H,ddd,J=14.0,6.9,1.4Hz),1.48(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz)
δ165.97,145.49,140.36,128.57,128.25,127.14,124.65,80.32,54.00,47.73,32.85,28.31,28.25.
MS(ESI): C
16H
23NO
2[M+H]
+として、計算値262.1807,実測値262.1832.
【0057】
[化合物4の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物3から化合物4を製造した。
【化21】
20mlのμ波装置用反応容器にtert−ブチル(E)−5−(N−ベンジルアミノ)ペント−2−エノエート3(797mg,3.05mmol)と1,3−ジオキサン−2−プロパナール2,5,5,−トリメチル(681.7mg,3.66mmol)を1,4−ジオキサン(6.0ml)で溶かし入れた。これに、ヨウ化銅(I)(58.1mg,0.305mmol)とテトラメチルエチレンジアミン(46.0μl,0.305mmol)を加えた。窒素雰囲気下、トリメチルシリルアセチレン(1.05ml,7.43mmol)を加え、μ波反応装置にセットし、150℃で、30分間撹拌した。溶液をセライトろ過した後、減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4:1)で精製することにより、対応する(E)−tert−ブチル5−{ベンジル[5−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−(トリメチルシリル)ペント−1−イン−3−イル]アミノ}ペント−2−エノエート4を得た(1.03g,64%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)
δ7.34−7.27(4H,m),7.24−7.21(1H,m),6.83−6.77(1H,dt,J=15.6,7.1Hz),5.73−5.70(1H,d,J=15.6Hz),3.83−3.80(1H,d,J=13.9Hz),3.50−3.38(7H,m),2.68−2.63(1H,dt,J=16.0,8.0Hz),2.56−2.51(1H,m),2.37−2.26(1H,m),1.87−1.66(5H,m),1.47(9H,s),1.33(3H,s),0.95(3H,s),0.92(3H,s),0.19(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz)
δ166.01,146.16,139.89,128.96,128.37,127.03,124.04,104.74,99.02,89.31,80.12,70.48,55.51,53.94,49.72,34.08,31.19,30.05,28.32,28.08,22.89,22.78,21.27,0.46.
MS(ESI): C
31H
49NO
4Si[M+H]
+として、計算値528.3509,実測値528.3405.
【0058】
[化合物5の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物4から化合物5を製造した。
【化22】
100mlの三口フラスコにトルエン共沸後の(E)−tert−ブチル5−{ベンジル[5−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−(トリメチルシリル)ペント−1−イン−3−イル]アミノ}ペント−2−エノエート4(1.24g,2.36mmol)をtert−ブチルメチルエーテル(47.2ml)で溶かし入れた。窒素を3分間バブリングした後、−78℃に冷却した。チタンイソプロポキサイド(IV)(1.40ml,4.72mmol)とイソプロピルマグネシウムクロライドの2.0Mジエチルエーテル溶液(4.72ml,9.44mmol)を加え、−40℃まで40分かけて昇温した。−40℃で2時間程撹拌した後、反応溶液にシリカゲル(4.2g)を投入し、30分間撹拌した。セライトろ過を行い、溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。分液後、水層を酢酸エチル(100ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4:1)で精製することにより、対応するN−ベンジル−2−(1’,3’−ジオキサン−2’−プロパン−1’−イル)−3−[(トリメチルシリル)メチレン−4−tert−ブトキシアセチル-ピペリジン5を得た(759mg,61%)。
1H−NMR(CDCl
3,400MHz)
δ7.36−7.26(4H,m),7.24−7.20(1H,m),5.42(1H,s),3.80−3.76(1H,d,J=13.7 Hz),3.68−3.64(1H,d,J=13.7Hz),3.57−3.54(2H,d,J=11.0Hz),3.48−3.45(2H,d,J=11.0Hz),3.19−3.15(1H,dd,J=11.2,3.4Hz),3.10−3.02(1H,td,J=14.0,2.4Hz),2.94−2.85(1H,dd,J=14.0,7.1Hz),2.54−2.40(3H,m),2.37−2.29(1H,m),2.22−2.10(1H,m),2.04−1.88(1H,m),1.50−1.33(2H,m),1.43(9H,s),1.37(3H,s),1.26−1.22(1H,m),1.01(3H,s),0.94(3H,s),0.03(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,100MHz)
δ172.06,157.32,140.26,128.79,128.26,126.98,99.21,80.37,77.36,70.45,70.33,64.22,58.29,42.40,42.17,39.63,33.55,30.04,28.55,28.33,25.58,22.97,22.75,22.65,0.62.
MS(ESI): C
31H
51NO
4Si[M+H]
+として、計算値530.3665,実測値530.3489.
【0059】
[化合物6の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物5から化合物6を製造した。
【化23】
50mlのナス型フラスコにN−ベンジル−2−(1’,3’−ジオキサン−2’−プロパン−1’−イル)−3−[(トリメチルシリル)メチレン−4−tert−ブトキシアセチル-ピペリジン5(150mg,0.283mmol)をジクロロメタン(2.8ml)で溶かし入れ、トリフルオロ酢酸(2.80ml)を加えた。30分間撹拌した後、トルエン共沸を行い、トリフルオロ酢酸を完全に留去した。次に、500mlの三口フラスコに残さをジクロロメタン(250ml)で溶かし入れ、ズダンIII(0.73mg)を加えた。溶液を−78℃に冷却し、オゾンを3分間通じた。次に、窒素を10分間バブリングし、室温まで昇温し、アンバーリスト15(790mg)を加えた。9時間半撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を0℃で加えた。分液後、水層をジクロロメタン(100ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製することにより、対応するN−ベンジル−9−デメチル−6−アザアルテミシニン6を得た(35.3mg,36%)。
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):
図1
δ7.35−7.23(5H,m),6.35(1H,s),4.20−4.17(1H,d,J=13.4Hz),3.22−3.16(1H,dd,J=18.1,6.6Hz),3.09−3.05(1H,d,J=13.4Hz),2.84−2.79(1H,ddd,J=11.9,3.7,2.9Hz),2.52−2.44(1H,ddd,J=14.7,13.5,3.8Hz),2.44−2.39(1H,dd,J=10.3,7.0Hz),2.33−2.28(1H,dd,J=18.0,1.0Hz),2.26−2.19(1H,m),2.15−2.09(1H,ddd,J=14.7,5.0,3.2Hz),2.02−1.95(1H,td,J=11.9,3.1Hz),1.93−1.82(2H,m),1.62−1.55(1H,m),1.53−1.46(1H,m),1.48(3H,s).
13C−NMR(CDCl
3,100MHz):
図2
δ168.80,139.11,128.98,128.92,127.69,105.50,94.43,65.72,57.33,51.80,38.47,34.82,31.43,28.93,26.06,25.59.
MS(ESI): C
19H
23NO
5[M+H]
+として、計算値346.1654,実測値346.1850.
【実施例2】
【0060】
以下のスキームに従って、本発明の6−アザアルテミシニン誘導体である化合物13(HTOH22)の合成を行った。
【化24】
【0061】
化合物10から11を合成する方法は以下の文献を参考にした。
Nicholas E.L.;Hanna M.T.;Heather T.、Mol.Divers.、2003,7,135.
化合物11から12を合成する方法は以下の文献を参考にした。
Urabe,H.;Suzuki,K.;Sato,F.、J.Am.Chem.Soc.、1997,119,11014.
化合物12から13を合成する方法は以下の文献を参考にした。
1)Avery,M.A.;Chong,W.K.M.;Jennings−Whites,C.、J.Am.Chem.Soc.、1992,114,974.
2)Veysoglu,T.;Mitscher,L.A.;Swayze,J.K.、Synthesis、1980,807.
【0062】
実際の合成手順を以下に示す。
【0063】
[化合物8の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物7から化合物8を製造した。
【化25】
200mlのナス型フラスコに化合物N−p−メトキシベンジル−3−ブテニルアミン7(10.9g,57.0mmol)をジクロロメタン(53.0mmol)で溶かし入れ、0℃に冷却した。ピリジン(12.9ml,159mmol)とトリフルオロ酢酸無水物(11.0ml,79.5mmol)を加え、室温で10時間半撹拌した。これを酢酸エチル(400ml)で希釈し、水(50ml)を加えた。分液後、有機層を1N塩酸(50ml×3)、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、対応するN−p−メトキシベンジル−3−ブテニル2,2,2−トリフルオロアセトアミド8を得た(10.5g,64%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):2つの回転異性体の1対1混合物
δ7.19−7.18(2H,d,J=8.5Hz,回転異性体),7.14−7.13(2H,d,J=8.5Hz,回転異性体),6.91−6.89(2H,d,J=8.6Hz,回転異性体),6.88−6.87(2H,d,J=8.6Hz,回転異性体),5.75−5.66(2H,m,回転異性体混合物),5.11−5.08(2H,m,回転異性体),5.07−5.03(2H,m,回転異性体),4.60(2H,s,回転異性体),4.55(2H,s,回転異性体),3.81(3H,s,回転異性体),3.80(3H,s,回転異性体),3.38−3.34(4H,m,回転異性体混合物),2.37−2.33(2H,m,回転異性体),2.29−2.25(2H,m,回転異性体).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz):2つの回転異性体の1対1混合物
δ159.76,159.61,134.46,133.57,129.74,128.93,127.62,126.83,118.09,117.58,114.53,114.43,55.48,55.44,50.58,50.55,48.85,45.80,45.78,45.47,32.80,31.08.
MS(ESI): C
14H
16F
3NO
2[M+Na]
+として、計算値310.1031,実測値310.1163.
【0064】
[化合物9の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物8から化合物9を製造した。
【化26】
500mlのナス型フラスコにN−p−メトキシベンジル−3−ブテニル2,2,2−トリフルオロアセトアミド8(10.5g,36.7mmol)をテトラヒドロフラン(123ml)と水(61.5ml)で溶かし入れた。四酸化オスミウム・二水和物(63.5mg,0.172mmol)と過ヨウ素酸ナトリウム(17.4g,81.4mmol)を順次加え、12時間程撹拌した。これをジクロロメタン(500ml)で希釈し、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(200ml)を0℃で加えた。分液後、水層をジクロロメタン(350ml×2)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをジクロロメタン(184ml)に溶かした。これにtert−ブチルトリフェニルホスホラニリデンアセテート(17.8mg)を加え、4時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、対応するtert−ブチル(E)−5−(N−p−メトキシベンジルトリフルオロアセトアミド)ペント−2−エノエート9を得た(8.64g,61%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):2つの回転異性体の1.0対1.2混合物
δ7.18−7.16(2H,d,J=8.7Hz,回転異性体A),7.14−7.12(2H,d,J=8.7Hz,回転異性体B),6.91−6.89(2H,m,回転異性体B),6.88−6.87(2H,m,回転異性体A)6.71−6.65(2H,m,回転異性体A及びB),5.78−5.74(1H,td,J=15.8,1.5Hz,回転異性体A),5.73−5.70(1H,td,J=15.8,1.5Hz,回転異性体B),4.60(2H,s,回転異性体A),4.54(2H,s,回転異性体B),3.82(3H,s,回転異性体B),3.80(3H,s,回転異性体A),3.43−3.40(2H,t,J=7.7Hz,回転異性体A),3.39−3.36(2H,t,J=7.7Hz,回転異性体B),2.47−2.42(2H,m,回転異性体A),2.37−2.33(2H,ddd,J=15.0,7.6,1.5Hz,回転異性体B),1.47(9H,s,回転異性体A),1.46(9H,s,回転異性体B).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz):2つの回転異性体の1.0対1.2混合物
δ165.50,165.29,159.90,159.73,142.71,141.65,129.75,129.05,127.33,126.47,126.03,125.61,114.64,114.54,80.81,80.59,55.48,55.45,50.96,50.93,49.12,45.09,45.04,45.01,31.12,29.27,28.25.
MS(ESI): C
19H
24F
3NO
4[M+Na]
+として、計算値410.1555,実測値410.1547.
【0065】
[化合物10の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物9から化合物10を製造した。
【化27】
300mlのナス型フラスコにtert−ブチル(E)−5−(N−p−メトキシベンジルトリフルオロアセトアミド)ペント−2−エノエート9(4.68g,12.1mmol)をエタノール(121ml)で溶かし入れた。これに、5%炭酸カリウム水溶液(63.1ml)を加えて、17時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残さをジクロロメタン(300ml×3)で抽出し、炭酸カリウムと硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去することで対応するtert−ブチル(E)−5−(N−p−メトキシベンジルアミノ)ペント−2−エノエート10を得た(3.53g,quant.)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)
δ7.23−7.21(2H,d,J=8.7Hz),6.86−6.85(2H,m),6.85−6.79(1H,m),3.79(3H,s),3.72(2H,s),2.76−2.73(2H,t,J=7.0Hz),2.39−2.35(2H,ddd,J=13.9,7.0,1.4Hz),1.47(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz)
δ165.94,158.82,145.51,132.46,129.40,124.58,113.95,80.27,55.39,53.36,47.60,32.80,28.28.
MS(ESI): C
17H
25NO
3[M+H]
+として、計算値292.1912,実測値292.1853.
【0066】
[化合物11の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物10から化合物11を製造した。
【化28】
200mlナス型フラスコにtert−ブチル(E)−5−(N−p−メトキシベンジルアミノ)ペント−2−エノエート10(3.26g,11.2mmol)と1,3−ジオキサン−2−プロパナール2,5,5,トリメチル(2.49g,13.4mmol)をトルエン(56.0ml)で溶かし入れた。ヨウ化銅(I)(153mg,0.803mmol)とテトラメチルエチレンジアミン(118.0μl,0.784mmol)を加え、モレキュラーシーブス4A(6.96g)を加えた。窒素雰囲気下、トリメチルシリルアセチレン(3.96ml,28.0mmol)を加えて、二日間撹拌した。セライトろ過した後、減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィーで(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、対応する(E)−tert−ブチル5−{p−メトキシベンジル[5−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−(トリメチルシリル)ペント−1−イン−3−イル]アミノ}ペント−2−エノエート11を得た(4.81グラム,77%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)
δ7.24−7.23(2H,d,J=8.5Hz),6.84−6.82(2H,d,J=8.7Hz),6.81−6.78(1H,t,J=7.0Hz),5.73−5.70(1H,d,J=15.6Hz),3.79(3H,s),3.76−3.73(1H,d,J=13.6Hz),3.50−3.47(2H,d,J=11.5Hz),3.44−3.41(2H,dd,J=11.5,1.4Hz),3.39−3.36(1H,t,J=7.5Hz),3.34−3.31(1H,d,13.6Hz),2.68−2.62(1H,dt,J=13.2,8.0Hz),2.53−2.47(1H,m),2.37−2.26(1H,m),1.86−1.67(4H,m),1.47(9H,s),1.33(3H,s),0.95(3H,s),0.92(3H,s),0.18(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz)
δ166.04,158.76,146.25,131.80,130.07,123.98,113.78,104.80,99.02,89.23,80.11,70.47,55.39,54.86,53.73,49.47,34.06,31.22,30.05,28.31,28.03,22.88,22.77,21.28,0.46.
MS(ESI): C
32H
51NO
5Si[M+H]
+として、計算値558.3615,実測値558.3510.
【0067】
[化合物12の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物11から化合物12を製造した。
【化29】
200mlの三口フラスコにトルエン共沸した(E)−tert−ブチル5−{p−メトキシベンジル[5−(2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−1−(トリメチルシリル)ペント−1−イン−3−イル]アミノ}ペント−2−エノエート11(2.00g,3.59mmol)をtert−ブチルメチルエーテル(72.0ml)で溶かし入れた。窒素を3分間通じた後、−78℃に冷却した。チタンイソプロポキサイド(IV)(2.12ml,7.17mmol)とイソプロピルマグネシウムクロライドの2.0Mジエチルエーテル溶液(5.92ml,14.3mmol)を加え、−20℃まで1時間程かけて昇温した。−20℃で3時間程撹拌した後、シリカゲル(7.46g)を反応溶液に投入し、10分撹拌した。セライトろ過を行い、溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。分液後、水層を酢酸エチル(300ml)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残さをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1)で精製することにより、対応するN−p−メトキシベンジル−2−(1’,3’−ジオキサン−2’−プロパン−1’−イル)−3−[(トリメチルシリル)メチレン−4−tert−ブトキシアセチル-ピペリジン12を得た(984mg,49%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz)
δ7.27−7.25(2H,d,J=8.4Hz),6.84−6.82(2H,d,J=8.4Hz),5.41(1H,s),3.79(3H,s),3.72−3.70(1H,d,J=13.2Hz),3.60−3.58(1H,d,J=13.3Hz),3.56−3.54(2H,d,J=11.3Hz),3.47−3.45(2H,d,J=11.0Hz),3.18−3.15(1H,dd,J=11.3,3.6Hz),3.06−3.00(1H,td,J=13.6,2.5Hz),2.91−2.87(1H,dd,J=14.3,7.3Hz),2.51−2.40(3H,m),2.33−2.27(1H,m),2.18−2.00(1H,m),1.97−1.89(1H,m),1.48−1.40(2H,m),1.43(9H,s),1.36(3H,s),1.24−1.21(1H,m),1.00(3H,s),0.94(3H,s),0.04(9H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz)
δ172.06,158.74,157.48,132.35,129.86,128.17,113.68,99.24,80.34,70.48,70.36,64.12,57.70,55.42,42.47,42.23,39.54,33.72,30.06,28.57,28.35,25.64,22.97,22.79,22.56,0.66.
MS(ESI): C
32H
53NO
5Si[M+H]
+として、計算値560.3771,実測値560.3622.
【0068】
[化合物13の製造]
次に示す反応式にしたがって化合物12から化合物13を製造した。
【化30】
50mlのナス型フラスコにN−p−メトキシベンジル−2−(1’,3’−ジオキサン−2’−プロパン−1’−イル)−3−[(トリメチルシリル)メチレン−4−tert−ブトキシアセチル-ピペリジン12(81.0mg,0.145mmol)をジクロロメタン(1.5ml)で溶かし入れ、トリフルオロ酢酸(1.5ml)を加えた。30分撹拌した後、トルエン共沸を行い、トリフルオロ酢酸を完全に留去した。次に、50mlの二口フラスコに残さをジクロロメタン(29.0ml)で溶かし入れ、ズダンIII(0.50mg)を加えた。溶液を−78℃に冷却し、オゾンを5分間バブリングした。窒素を5分間通じた後、−10℃まで昇温し、アンバーリスト15(93.2mg)を加えた。室温で7時間程撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5ml)を0℃で加えた。分液後、水層をジクロロメタン(100ml×2)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1)で精製することにより、対応するN−p−メトキシベンジル−9−デメチル−6−アザアルテミシニン13を得た(22.2mg,41%)。
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):
図3
δ:7.18−7.16(2H,d,J=8.7Hz),6.86−6.84(2H,d,J=8.4Hz),6.32(1H,s),4.12−4.09(2H,d,J=13.2Hz),3.80(3H,s),3.20−3.15(1H,dd,J=18.1,6.6Hz),3.03−3.00(1H,d,J=13.2Hz),2.82−2.79(1H,dt,J=12.0,3.2Hz),2.50−2.44(1H,td,J=14.0,3.8Hz),2.40−2.36(1H,dd,J=10.3,7.0Hz),2.31−2.28(1H,d,J=18.1Hz),2.25−2.20(1H,m),2.14−2.09(1H,m),1.97−1.92(1H,td,J=12.1,3.0Hz),1.91−1.82(2H,m),1.61−1.56(1H,m),1.55−1.44(1H,m),1.48(3H,s).
13C−NMR(CDCl
3,125MHz):
図4
δ:168.43,158.98,130.60,129.84,113.97,105.15,94.13,76.51,65.37,56.33,55.42,51.26,38.17,34.54,31.13,28.63,25.75,25.25.
MS(ESI): C
20H
25NO
6Si[M+H]
+として、計算値376.1760,実測値376.1686.
【実施例3】
【0069】
6−アザアルテミシニン類のin vitroにおけるマラリア原虫増殖阻害活性
東京大学大学院医学系研究科の北潔教授より分与された、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の薬剤耐性株であるK1株および薬剤感受性株であるFCR3株を用いて、これらのマラリア原虫に対するin vitroでの6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22の抗マラリア活性の測定は、乙黒らの方法[Otoguro,K.,Kohana,A.,Manabe,C.,Ishiyama,A.,Ui,H.,Shiomi,K.,Yamada,H.and Omura,S.:Potent antimalarial activity of polyether antibiotic,X−206.J.Antibiotics,54:658−663,(2001)]に従って測定した。
【0070】
試験原虫としてはTragerとJensenの方法[Trager,W and Jensen,J.:Human malaria parasites in continuous culture,Science,193:673−677,(1976)]を若干改変し、維持、継代を行ったものを用いた。すなわち、培養シャーレ内で、10%ヒト血漿を添加したRPMI1640培地と新鮮なヒト赤血球を用いて継代した原虫感染赤血球を希釈し(ヘマトクリット値:2〜5%、原虫感染赤血球率:0.25〜1%)、37℃にて3%O
2−4%CO
2−93%N
2の混合ガス下で培養を行い、2〜3日毎に培地交換と新鮮な赤血球を添加して連続培養を行った。
【0071】
薬剤感受性試験は、Desjardinsらの方法[Desjardins,R.E.,Canfield,C.J.,Haynes,D.E.and Chulay,J.D.:Quantitative assessment of antimalarial activity in vitro by a semiautomated microdilution technique.Antimicrob.Agents Chemother.,16:710−718(1979)]を改変して行った。被験化合物としては上述の方法で調製した6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22、及び培養熱帯熱マラリア原虫に対する既知の抗マラリア剤であるアルテミシニン(Aldrich社製、米国)、アルテスネート(Cerbios Pharma社製、スイス国)を用いた。具体的には、96穴プレートの各ウェルに前培養した原虫浮遊液(ヘマトクリット値:2%、原虫感染赤血球率:0.5または1%)190マイクロlと最終濃度100〜0.0001μg/mLとなるような濃度で段階希釈した被験化合物の溶液(50%エタノール溶液)10μlを添加し、混和後、前述の混合ガス下で72時間培養を行った。
【0072】
原虫増殖の測定はMaklerらの方法[Makler,M.T.,Rise,J.M.,Williams,J.A.,Bancroft,J.E.,Piper,R.C.,Gibbins,B.L.and Hinrichs,D.J.:Parasite lactate dehydrogenase as an assay for Plasmodium falciparum drug sensitivity,Am.J.Med.Hyg.,48:739−741(1993)]を改変し、Malstat試薬(Flow社製、米国)にて原虫の乳酸脱水素酵素(p−LDH)を比色定量する方法を用いた。
【0073】
すなわち、培養72時間後に96穴プレートを直接−20℃下で18時間凍結後、37℃下で融解することにより、原虫感染赤血球を溶血させ、かつ原虫を破壊させ粗酵素液を調製した。新たな96穴プレートの各ウェルにMalstat試薬100μlと粗酵素液20μlを添加、混和し、15分間室温にて反応後、ニトロブルーテトラゾリウム(nitroblue tetrazolium)2mg/ml:フェナジンエトサルフェート(phenazine ethosulfate)0.1mg/ml=1:1溶液20μlを各ウェルに添加し、遮光条件下、室温にて2時間反応させた。
【0074】
反応により生じたブルーフォルマザン(blue formazan)生成物をマイクロプレートリーダー(Labosystems社製、フィンランド国)を用いて、測定波長655nmでの吸光度を測定することにより、原虫の増殖の有無を比色定量した。化合物の50%原虫増殖阻止濃度(IC
50値)は化合物濃度作用曲線より求めた。本発明で調製した6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22と既知の抗マラリア剤アルテミシン、アルテスネートの培養熱帯熱マラリア原虫に対する抗マラリア活性は下記の表1に示す通りであった。
【0075】
【表1】
【0076】
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22は熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性のK1株および薬剤感受性のFCR3株に対して26−55nMで有効であり、既存の抗マラリア剤アルテミシニンの約1/2〜1/3倍の抗マラリア活性を示した。さらに既存の抗マラリア剤アルテスネートの約1/5〜1/9倍の抗マラリア活性を示した。6−アザアルテミシニン類が抗マラリア活性を示すことは新しい知見である。
【0077】
6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22は既存の抗マラリア剤アルテミシニンおよびアルテスネートと同様に薬剤耐性のK1株と薬剤感受性のFCR3株に対して同程度の活性があり、構造の類似性より抗マラリア剤アルテミシニンおよびアルテスネートと同様の作用メカニズムで抗マラリア活性を示していると考えられる。
【実施例4】
【0078】
6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22の細胞毒性試験
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22の細胞毒性試験は乙黒らの方法[Otoguro K, Kohana A, Manabe C, Ishiyama A, Ui H, Shiomi K, Yamada H, Omura S. Potent antimalarial activities of polyether antibiotic, X−206. J. Antibiotics,54:658−663,(2001)]に準じて行った。すなわち、宿主細胞のモデルとしてヒト胎児肺由来正常繊維芽細胞MRC−5細胞[Dr. L. Maes(Tibotec NV,Mechelen,ベルギー国)より分与可能]を10%牛胎児血清(FCS)及び抗生物質添加MEM培地にて維持、継代培養を行ったものを用いた。
【0079】
ヒト胎児肺由来正常繊維芽細胞MRC−5細胞を10%FCS−MEMにて1×10
3cells/mLとなるように浮遊液を調整し、96穴プレートに該浮遊液を100μL添加し混和後、37℃、5%CO
2−95%air下で24時間培養を行った。その後、各wellに10%FCS−MEM90μLと本化合物の溶液(50%エタノール水溶液)10μLを添加し、混和後、37℃、5%CO
2−95%air下で7日間培養を行った。MRC−5細胞の増殖の有無はMTT法にて比色定量することにより測定した。本化合物の50%細胞増殖阻止濃度(IC
50値)を化合物濃度作用曲線より求めた。また、選択毒性比(Selectivity Index:SI)は、(細胞毒性のIC
50値)/(抗マラリア原虫活性のIC
50値)により計算して求めた。
【0080】
IC
50と選択毒性比について計算した結果を下記の表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22のヒト胎児肺由来正常繊維芽細胞MRC−5細胞に対する細胞毒性(IC
50値)は116,010および35,908nMであり、抗マラリア原虫活性との選択毒性比(Selectivity Index:SI)は薬剤耐性のK1株の場合で2,109および1,026、薬剤感受性のFCR3株の場合で2,698および1,381と高い選択毒性を示した。
【実施例5】
【0083】
6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22のin vivoにおけるマラリア原虫増殖阻害活性
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22のネズミマラリア原虫P.berghei N株(薬剤感受性株)[Dr.W.Peters(Northwick Park Institute for Medical Research,Meddlesex,英国)より分与可能]感染実験モデルに対するin vivoでの治療効果の測定は乙黒らの方法[Otoguro,K.,Kohana,A.,Manabe,C.,Ishiyama,A.,Ui,H.,Shiomi,K.,Yamada,H.and Omura,S.:Potent antimalarial activity of polyether antibiotic,X−206.J.Antibiotics,54:658−663,(2001)]およびPetersらの方法[Peters,W.;Portus,J.H.and Robinson,B.L.:The chemotherapy of rodent malaria. XXII. The value of drug−resistant strains of P.berghei in screening for blood schizonticidal activity.,Ann.Trop.Med.Parasitol.,69:155−171,(1975)]を若干改変して行った。
【0084】
すなわち、供試動物としてはICRマウス(日本チャールス・リバー社)の雄、体重18〜20gの一群5匹を用い、in vivo passageにて維持・継代した原虫を2x10
6個の寄生虫感染赤血球に調整し、尾静脈接種にて感染させた。治療実験は4 days suppressive testで行った。感染日をday 0とすると、感染2時間後に化合物の溶液(10%ジメチルスルホキサイド溶液-Tween80)を腹腔内(i.p.)で投与し、以後1日1回3日間連続投与し(days1〜3)、day4で尾静脈より血液塗末標本を作成し、原虫感染赤血球率(parasitaemia)を観察し、化合物非投与群の感染率より治療効果(inhibition %)を判定した。
【0085】
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22の腹腔内投与における治療効果の結果を下記の表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
本発明の6−アザアルテミシニン類HTOH−21およびHTOH−22を腹腔内投与した場合、ネズミマラリア原虫P.berghei N株感染実験モデルに対して、HTOH−21は30mg/kgの低用量で薬剤無添加の対照群と比べ95.5%の原虫感染赤血球率の抑制があり、HTOH−22は30mg/kgの低用量で薬剤無添加の対照群と比べ47.3%の原虫感染赤血球率の抑制があり、感染治療効果が認められた。薬剤添加の対照として用いた既存の抗マラリア剤のアルテスネートは30および1mg/kgの用量で94.0%および44.7%の原虫感染赤血球率の抑制が認められた。このことよりHTOH−21はアルテスネートと同程度の低容量で、HTOH−22はアルテスネートの約30倍の容量で治療効果があることが示された。