特許第5994406号(P5994406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5994406カラーフィルタ用有機顔料組成物及びカラーフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994406
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用有機顔料組成物及びカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20160908BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20160908BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20160908BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20160908BHJP
   C09B 11/00 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   C09B67/46 A
   C09B67/20 F
   G02B5/22
   !C09B11/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-130874(P2012-130874)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-254152(P2013-254152A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 正典
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 真由美
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】福島 香代子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠治
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−090147(JP,A)
【文献】 特開2000−104005(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039416(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/039417(WO,A1)
【文献】 特開2012−013758(JP,A)
【文献】 特開2011−145379(JP,A)
【文献】 特開2008−040477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0248097(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01884359(EP,A1)
【文献】 特開2012−252319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09B 67/20
C09B 67/46
G02B 5/22
C09B 11/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)不揮発分0.1〜15部を含有することを特徴とするカラーフィルタ用有機顔料組成物。
【請求項2】
トリアリールメタン顔料(A)が、下記式(I)で表されるトリアリールメタン顔料である請求項1記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物。
【化1】
〔但し、式(I)中、R、R、RおよびRは同一でも異なっていても良い水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、もしくはフェニル基、Xは、(PMo18−y626−/6で、y=1,2または3の整数で表されるか、または(SiMoW12404−/4で表されるヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物を、青色画素部に含有することを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度、色相変化の耐熱性に優れたカラーフィルタが得られるカラーフィルタ用有機顔料組成物、その製造方法及び当該顔料組成物を画素部に含有する、カラーフィルタ作成時の高温での熱履歴を受けても輝度の低下が少なく、なおかつ色相変化が小さい画像が得られるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルタは、赤色画素部(R)、緑色画素部(G)及び青色画素部(B)を有する。これらの各画素部は、いずれも有機顔料が分散した合成樹脂の薄膜が基板上に設けられた構造であり、有機顔料としては、赤、緑及び青の各色の有機顔料が用いられている。
【0003】
カラーフィルタを作成する際の有機顔料は、従来の汎用用途とは全く異なる特性、具体的には、液晶表示装置の表示画面がよりハッキリ見える様にする(高コントラスト化)、或いは、同じく表示画面がより明るくなる様にする(高輝度化)等の要求がある。この様な要求に応じるため、平均一次粒子径が100nm以下となる様に微細化された粉体の有機顔料が多用されている。
しかし、一方この様に微細化が進むほど、顔料の表面積が大きくなることで、表面エネルギーが増大し、カラーフィルタ作成時の熱履歴により有機顔料の凝集が起こり、結果として、輝度、コントラストが低下するという問題がある。
そこで、耐熱性を付与させるため、有機顔料誘導体や界面活性剤や合成樹脂による表面処理よく行われる。この表面処理により、何も表面処理をされていない有機顔料の分散性や分散安定性、耐熱性を向上させることが出来る。
【0004】
表面処理の手法としては、混練法、酸・アルカリ析出法、加圧加熱法等が知られている。具体的には、アクリル樹脂不揮発分の存在下で有機顔料をソルベントソルトミリングする方法などが知られている。
【0005】
有機顔料の合成樹脂による表面処理については、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等といった、大括りのポリマーのカテゴリー別には検討がなされているが、具体的にどの様なカテゴリーのポリマーが分散性や分散安定性での改良効果が高いのか、及び同じカテゴリーのポリマー内でどの様な構造のポリマーが、選択的に、最も前記改良効果が高いのかについては、体系的な検討が行われているわけではなく、不明な点も多い。
しかしながら、微細な有機顔料は、汎用有機顔料よりも凝集しやすいことから、必ずしも、汎用用途で用いられている有機顔料の表面処理の手法によって、どの様な合成樹脂を用いて表面処理しても、期待した通りの改良効果が得られるわけではなく、試行錯誤によって、最適なカテゴリーで最適な構造の合成樹脂を選択しているのが実態である。
【0006】
具体的には、例えば、カラーフィルタ用カラーレジストの調製に用いる有機顔料の表面処理方法としては、(メタ)アクリル樹脂不揮発分の存在下で有機顔料をソルベントソルトミリングする方法(特許文献1)、液媒体中、ポリウレタン樹脂の存在下で有機顔料を加圧加熱する方法が知られている(特許文献2)。
また、塗料中のチキソインデックス値改良のため、塩基性基を有する顔料誘導体とリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体とメタクリル酸と、他のリン酸基を有しないエチレン性不飽和単量体とを共重合してなる顔料組成物の記載がある(特許文献3)。
さらに、本発明のトリアリールメタン顔料(A)である特定のアニオンとカチオンによりレーキ化した化合物の記載がある(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−179111号公報
【特許文献2】WO10/061830公報
【特許文献3】特許第3797103号広報
【特許文献4】WO2012/039416広報
【特許文献5】WO2012/039417広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、トリアリールメタン顔料に関して、具体的に表面処理を行った実施例等が記載された公知文献は未だ知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべく、各種の合成樹脂を用いてトリアリールメタン顔料の表面処理効果を鋭意検討したところ、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体で表面処理を行うと、熱履歴を長時間に亘り受けても着色物の色差が大きい、すなわち着色の耐熱性に劣った着色物しか得られないという、上記した欠点が解消された着色物が得られること、特に、製造工程或いは使用条件で高温に長時間曝される様な液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて、輝度の耐熱性に優れた液晶表示が可能なカラーフィルタとなることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)不揮発分0.1〜15部を含有することを特徴とするカラーフィルタ用有機顔料組成物を提供する。
また本発明は、上記したいずれかの有機顔料組成物を、画素部に含有することを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機顔料組成物は、トリアリールメタン顔料(A)と特定共重合体(B)とを所定割合で含有していることから、熱履歴を長時間に亘り受けても着色物の色相が小さい、すなわち着色の耐熱性に優れた着色物が得られるという格別顕著な技術的効果を奏する。
また本発明の有機顔料組成物の製造方法は、上記した有機顔料組成物が簡便に得られるという格別顕著な技術的効果を奏する。
更に本発明のカラーフィルタは、上記した有機顔料組成物又は上記した製造方法にて得られた有機顔料組成物を画素部に含有することから、輝度の耐熱性により優れた液晶表示が可能であるという格別顕著な技術的効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の有機顔料組成物は、質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)不揮発分0.1〜15部を含有することを特徴とする。
【0013】
トリアリールメタン顔料(A)としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1や、下記構造のトリアリールメタン顔料を挙げることが出来る。
【0014】
【化1】
〔但し、式(I)中、アニオンX−は(P2MoyW18−yO62)6−/6かつy=3〜1で表されるか、または(SiMoW11O40)4−/4で表されるヘテロポリオキソメタレートである。〕
【0015】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、いずれも水不溶性の有機顔料であり、X−からなるアニオン部分と、X−を除いた部分である、塩基性トリアリールメタン染料カチオンからなる。本発明における特定トリアリールメタン顔料と、従来公知のトリアリールメタン顔料であるC.I.ピグメントブルー1とは、アニオンである、ヘテロポリオキソメタレートアニオンの化学構造の点で相違する。
【0016】
塩基性トリアリールメタン染料カチオンは、市販品染料である、例えばビクトリアピュアブルーBO(ベーシックブルー7)、ビクトリアブルーB(ベーシックブルー26)、ビクトリアブルーR(ベーシックブルー11)、ビクトリアブルー4R(ベーシックブルー8)等から容易に調製することが出来る。カッコ内はカチオン部分の構造が同一である、対応する染料のカラーインデックス番号を指す。これらのカチオン構造だけ見れば、これらはいずれも公知である。
【0017】
X−が塩化物イオンである塩基性トリアリールメタン染料は、予め4,4’−ビス(ジ置換アミノ)ベンゾフェノン化合物を調製した後、それと、芳香環、複素環またはアミノ基に置換基を有していても良い、アミノナフタレン化合物またはインドール化合物とを、無水溶媒中で、オキシ塩化リン(塩化ホスホリル)等の脱水触媒下にて、100〜150℃で1〜5時間、加熱することで調製することが出来る。
【0018】
こうして得られたトリアリールメタン染料の塩化物イオンを、後記するヘテロポリ酸アニオンで置換することで、特定トリアリールメタン顔料を得ることが出来る。
【0019】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、対アニオンX−が、特定のアニオンであることに特徴がある。アニオン部分が特定構造を有することにより、従来のトリアリールメタン顔料に無い、際立った耐熱性が発現される。特定トリアリールメタン顔料は、上記したカチオンと、リンモリブデン酸及び/又はケギン型リンタングステンモリブデン酸以外のヘテロポリ酸アニオンとからなる。本発明では、ヘテロポリ酸アニオンを、ヘテロポリオキソメタレートアニオンという。
【0020】
ヘテロポリ酸は、有機構造を含まない比較的大きな分子量の無機酸であり、塩酸や硫酸の様な低分子の無機酸や有機酸に無い、特異な性質を発現させることが出来る。その第一は、カチオンのヘテロポリ酸によるレーキ化で水不溶のトリアリールメタン顔料を生成することである。第二は、レーキ化に用いるヘテロポリ酸を選択することで、得られるトリアリールメタン顔料の耐熱性や耐光性を向上させうる余地があることである。ヘテロポリ酸は、有機構造を含ませない或いは金属を含めた上で分子量も比較的大きく出来るが故に、それを適切に選択することで、高温や光線に曝された場合でも、アニオン構造に由来するトリアリールメタン顔料の変質を大きく抑制することが可能となる。
【0021】
本発明において、C.I.ピグメントブルー1より遥かに高い耐熱性を有する、式(I)のトリアリールメタン顔料は、X−が、(P2MoyW18−yO62)6−/6で表され、y=1,2または3の整数であるヘテロポリオキソメタレートアニオンか、(SiMoW11O40)4−/4で表されるヘテロポリオキソメタレートアニオンから選ばれる少なくとも一種のアニオンのトリアリールメタン顔料である。
【0022】
ヘテロポリ酸またはそのアルカリ金属塩としては、例えば、H6(P2MoyW18−yO62)、Na6(P2MoyW18−yO62)、H4(SiMoW12O40)、Na4(SiMoW12O40)、H6(P2W18O62)、Na6(P2W18O62)、H10(P2W17O61)及びNa10(P2W17O61)等を用いることが出来る。
【0023】
H6(P2MoyW18−yO62)といったヘテロポリ酸は、例えば、Inorganic Chemistry, vol47, p3679に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、タングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩とを水に溶解させ、これに燐酸を加え、加熱撹拌しながら5〜10時間加熱還流することで得ることが出来る。こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩であるNa6(P2MoyW18−yO62)とすることが出来る。
【0024】
モリブデン(Mo)とタングステン(W)の仕込みモル比を変えること、すなわちタングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩のモル比を調整することで、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおけるモリブデン数yを、1〜3の範囲に調製することが出来る。
【0025】
別法としては、モリブデン酸アルカリ金属塩を水に溶解させ、これに塩酸を加え、次いで、K10(α2型P2W17O61)の様な、α2型の欠損ドーソン型リンタングステン酸アルカリ金属塩を加えて、10〜30℃にて、30分〜2時間撹拌することで得ることが出来る。こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ドーソン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることが出来る。
【0026】
例えば、P2W18O62より加水分解反応でα2型P2W17O61を調製して、これにMoを反応させることで、P2Mo1W17O62のみを得ることも出来る。こうすることで、yの数値に分布の無い上記したヘテロポリ酸やそのアルカリ金属塩を得ることが出来る。
【0027】
H4(SiMoW11O40)といったヘテロポリ酸、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩は、例えばJournal of American Chemical Society, 104(1982) p3194 に記載された方法に従って、容易に得ることが出来る。具体的には、硝酸水溶液とモリブデン酸アルカリ金属塩水溶液を混合撹拌し、これにK8(α型SiW11O39)を加え、2〜6時間撹拌することで得ることが出来る。こうして得られたヘテロポリ酸は、アルカリ金属塩化物と反応させることで、上記と同様にして、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることが出来る。
【0028】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、例えば、上記した対応する染料と、上記した対応するヘテロポリ酸またはヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とを反応させることで容易に製造することが出来る。アニオンが塩化物イオンの上記染料を用いかつヘテロポリ酸を用いる場合には、脱塩化水素反応により、アニオンが塩化物イオンの上記染料を用いかつヘテロポリオキソメタレート金属塩を用いる場合には、脱アルカリ金属塩化物反応により、塩置換することで製造することが出来る。
【0029】
上記ヘテロポリ酸を用いる脱塩化水素反応に比べて、ヘテロポリ酸をいったんヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩としてから脱アルカリ金属塩化物反応を行う方が、塩置換を確実に行うことが出来、より収率高く特定トリアリールメタン顔料が得られるばかりでなく、副生成物がより少ない純度の高い特定トリアリールメタン顔料が得られるので好ましい。勿論、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩は、再結晶等により精製してから用いることも出来る。
【0030】
反応液からの沈殿が得られ難い場合には、当該反応液を冷却するなどして溶解度を低下させることにより、対応するヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩をより収率高く得ることが出来る。
【0031】
染料由来のカチオンは、一価であることから、アニオン源である、ヘテロポリ酸またはヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩の使用量は、それらのイオン価に応じて、等モル数となる様に仕込んで上記反応を行うことが好ましい。
【0032】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、ヘテロポリ酸でレーキ化(水不溶化)する工程を含むので(或いはヘテロポリ酸でレーキ化(水不溶化)されているので)、製造工程中または製造後の何らかの工程で水を用いる場合、より確実な反応を行ったり、得られた化合物のレーキ構造が破壊されないようにするには、例えば、精製水、イオン交換水、純水等のような、金属イオンやハロゲンイオンの含有率が極力少ない水を用いることが好ましい。
【0033】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、それ自体公知のカチオン構造と、それ自体公知のアニオン構造とを選択し組み合わせた構造を有することから、上記製造方法に従って得られた生成物について、上記カチオン構造とアニオン構造とがいずれも含まれていることを確認することで、容易に同定することが出来る。生成物の赤外線吸収スペクトルを測定することで、上記反応に用いた原料の構造が残っていることを確認できる。また生成物には、反応に用いた原料の、染料のアニオンやヘテロポリオキソメタレートのカチオンが含まれていないことから、蛍光X線分析による原料に固有のピーク強度の低下やピーク消失により、上記レーキ化反応が行われたことを確認することが出来る。(必要であれば、生成物について元素分析を行うことで、より確実な同定が可能となる。)
【0034】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、その構造が堅牢性に大きく寄与しており、カチオンとアニオンから構成されていたとしても染料である場合には、本発明の優れた技術的効果は発揮できない。また、本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、1〜10個の結晶水を持つ水和物であっても良いし、結晶水を持たない無水物であっても良い。
【0035】
本発明における式(I)のトリアリールメタン顔料は、レーキ構造を有し水不溶であることから顔料である。こうして得られたトリアリールメタン顔料は、そのままで、合成樹脂等の着色剤として用いることが出来るが、必要であれば、公知慣用の粉砕や増粒により、粒子径を調整することで、各種の用途に最適な着色剤とすることが出来る。着色剤は、乾燥粉体において、一次粒子の平均粒子径100nm以下であると、より鮮明な青色の着色物を得られやすいので好ましい。
【0036】
本発明において一次粒子の平均粒子径とは、次の様に測定される。まず、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の内径の最長の長さ(最大長)を求める。個々の粒子の最大長の平均値を一次粒子の平均粒子径とする。
【0037】
一方、本発明者等によれば、共重合体(B)は、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルの構成により、単なるリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステル共重合体よりも、熱履歴を受けてもより色相が変化し難く、耐熱性に優れていることを知見した。
(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸とその他の各種アルコールとから形成される様なエステル結合を含有する化合物であり、上記アルコールに由来する、エステル結合COOの末端に炭素原子鎖を含有するものを言う。典型的には、前記炭素鎖がアルキル基であるものが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと称されている。(メタ)アクリル酸アルキルエステルで言えば、側鎖はアルキル基を意味する。当業界では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルばかりでなく、上記炭素鎖がアルキル基以外の化合物もよく知られていることから、本発明においては(メタ)アクリル酸アルキルエステルだけでなく、炭素鎖が、アルキル基以外の化合物を含めて、(メタ)アクリル酸エステルと称するものとする。
リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、例えば、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、及びアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールメタクリレートフォスフェート、プロピレングリコールメタクリレートフォスフェート、エチレングリコールアクリレートフォスフェート、プロピレングリコールアクリレートフォスフェート等、が挙げられる。市販品としては、ホスマーM、ホスマーC L 、ホスマーP E 、ホスマーM H ( 以上ユニケミカル社製) 、ライトエステルP − 1 M ( 以上共栄社化学社製) 、J A M P − 5 1 4 ( 以上城北化学工業社製) 、K AY A M E R P M − 2 、K A Y A M E R P M − 2 1 ( 以上日本化薬社製) 等がある。
【0038】
他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート〔ラウリル(メタ)アクリレート〕、オクタデシル(メタ)アクリレート〔ステアリル(メタ)アクリレート〕等のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;
【0039】
メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル;
などを挙げることが出来る。
【0040】
本発明において、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)とは、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルを共重合させることにより得られた重合体を意味する。
【0041】
共重合体(B)としては、ガラス転移温度(Tg)が出来るだけ高い方が、それ自体の耐熱性に優れるものの、有機顔料(A)と併用した際に、相互作用により優れた耐熱性を発揮できる点で、Tg0〜150℃である共重合体がより好ましい。
【0042】
共重合体(B)としては、どの様な分子量のものでも用いることは出来るが、具体的には、重量平均分子量5,000〜100,000の共重合体が、有機顔料(A)に対する親和性が大きく、耐熱性の向上効果もより大きいことから好ましい。
【0043】
共重合体(B)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することが出来る。この際には、公知慣用の重合開始剤、界面活性剤及び消泡剤を併用することも出来る。
【0044】
共重合体(B)は、上記したリン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルを必須単量体として、それらに共重合可能なその他の共単量体を併用して共重合させたものであっても良い。
【0045】
この様な共単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
【0046】
共重合体(B)として、好適な、前記したリン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)を構成する全単量体を質量換算で100%としたときに、リン酸基を有する単量体が全単量体の3〜35質量%である共重合体が、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体に比べても、より高い耐熱性が得られると共に、着色が必要な被着色媒体への分散性も良好となることから好ましい。
【0047】
リン酸基を有する単量体が全単量体の3〜35質量%である共重合体においては、リン酸基を有する単量体の占める量が多いほど、熱履歴を受けた際の彩度や色度の変化が小さくなる傾向にある。
【0048】
本発明の有機顔料組成物は、質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体(B)不揮発分が0.1〜15部となる様に含有されていれば良いが、中でも有機顔料(A)100部当たり0.5〜12部、特に1〜10部であると、共重合体(B)を含有させることより、本発明における技術的効果、被着色媒体への分散性や分散安定性等のその他の技術的効果、経済性等の最もバランスが取れた有機顔料組成物と出来るので好ましい。
【0049】
この様な本発明の有機顔料組成物は、トリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)とを任意の手段で混合することで調製することが出来る。トリアリールメタン顔料は、フタロシアニン顔料ほどはそれ自体の耐久性が高くはないことから、加圧加熱法やソルベントソルトミリング法を適用するのには適していない。このため調製方法としては、例えば、トリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)不揮発分とを混合する方法、共重合体(B)の液媒体溶液中にトリアリールメタン顔料(A)を混合し撹拌し、濾過乾燥する方法等がある。
【0050】
トリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)不揮発分とを均一に混合するために、例えばトリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)不揮発分以外の有機溶剤などを含む混合物は、例えば冷却し、そこから液媒体を除去し、必要に応じて、固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、トリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)不揮発分とを含有する本発明の有機顔料組成物の粉体を得ることが出来る。
【0051】
上記した通り、トリアリールメタン顔料はフタロシアニン顔料ほどにはその化学構造の耐久性が無いことから、著しい高温で乾燥させたり、強い機械的応力をかけて粉砕したりすることは好ましくない。
【0052】
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。洗浄することで、トリアリールメタン顔料(A)に吸着していない共重合体(B)を容易に除去することが出来る。有機顔料組成物に含有された、有効成分である、共重合体(B)不揮発分の量(いわゆる歩留まり)は、例えば有機顔料組成物の溶媒抽出による共重合体抽出量から、或いは、仕込共重合体(B)に対する濾液中の流出量から求めることが出来る。
【0053】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、減圧乾燥を行うことが好ましい。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。こうして、トリアリールメタン顔料(A)と共重合体(B)とを含有する有機顔料組成物を主成分として含む乾燥粉末が得られる。
【0054】
本発明の有機顔料組成物は、遊離金属、遊離金属イオン源の様な不純物を含んでいても良いが、それをカラーフィルタの画素部の着色に用いる様な場合は、前記した不純物は出来るだけ少ない方が好ましい。
【0055】
本発明における有機顔料組成物は、液媒体中への分散性、分散安定性が高く、後記する顔料分散液の粘度は低く、かつ微細な粒子に分散していることからニュートン流動性も高いまま安定し、例えばこれからカラーフィルタ画素部を製造した場合には、均質な塗膜を形成して輝度、コントラストおよび光透過率のいずれもが高いカラーフィルタを得ることができる。
【0056】
こうして得られた本発明の有機顔料組成物は、被着色媒体を着色した際の着色物は鮮明で彩度に優れ、熱履歴を長時間に亘り受けても着色物の色相が大きく変化せずに耐熱性に優れている。従って、カラーフィルタの画素部の着色をはじめとして、塗料、プラスチック、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、電子写真用トナー、インクジェットインキ、熱転写インキなどの着色にも適する。
【0057】
本発明の有機顔料組成物をカラーフィルタの画素部を形成するために用いる場合には、必要に応じて、ε型銅フタロシアニン顔料やジオキサジン顔料を更に含有させることが出来る。
【0058】
更には、本発明の有機顔料組成物には、ビックケミー社のディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150、ディスパービックLPN21116、ディスパービックLPN6919エフカ社のエフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、LP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503、ルーブリゾール社のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000、ソルスパース71000、味の素株式会社のアジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111等の分散剤や、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノール等のロジン誘導体等の、室温で液状かつ水不溶性の合成樹脂を含有させることが出来る。これら分散剤や、樹脂の添加は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の向上、分散体の粘度特性を向上にも寄与する。
【0059】
本発明の有機顔料組成物は、公知慣用の用途にいずれも使用できるが、カラーフィルタの画素部に含有させる場合には、それは、特に一次粒子の平均粒子径が0.01〜0.10μmであると、顔料凝集も比較的弱く、着色すべき合成樹脂等への分散性がより良好となる。
【0060】
上記した本発明の有機顔料組成物を、カラーフィルタのB画素部に含有させることで、カラーフィルタとすることが出来る。また、例えばC.I.ピグメントレッド254の様なジケトピロロピロール顔料からはR画素を、C.I.ピグメントグリーン36や同58の様なハロゲン化金属フタロシアニン顔料からはG画素を得ることが出来る。
【0061】
上記した通り、本発明の有機顔料組成物は、公知の方法でカラーフィルタのB画素部のパターンの形成に用いることが出来る。典型的には、本発明のカラーフィルタ用顔料組成物と、感光性樹脂とを必須成分して含むカラーフィルタ画素部用感光性組成物を得ることが出来る。
【0062】
カラーフィルタの製造方法としては、例えば、本発明の有機顔料組成物を感光性樹脂からなる分散媒に分散させた後、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を溶剤等で洗浄して各色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。
【0063】
その他、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法の方法で各色画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。本発明の有機顔料組成物は、熱履歴を受けても色相変化が小さいため、例えば、ベーキングを工程に含む様なカラーフィルタの製造方法においては、極めて有用である。
【0064】
カラーフィルタ画素部用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明の有機顔料組成物と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明の有機顔料組成物と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
【0065】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DisperbyK登録商標)130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、エフカ社のエフカ46、エフカ47等が挙げられる。また、レベンリグ剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0066】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0067】
本発明の有機顔料組成物100質量部当たり、300〜1000質量部の有機溶剤と、必要に応じて0〜100質量部の分散剤及び/又は0〜20質量部のフタロシアニン誘導体とを、均一となる様に攪拌分散して分散液を得ることができる。次いでこの分散液に、本発明の有機顔料組成物1質量部当たり、3〜20質量部の感光性樹脂、感光性樹脂1質量部当たり0.05〜3質量部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ画素部用感光性組成物を得ることができる。
【0068】
この際に使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
【0069】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4'−アジドベンザル)−2−プロパン−2'−スルホン酸、4,4'−ジアジドスチルベン−2,2'−ジスルホン酸等がある。
【0070】
こうして調製されたカラーフィルタ画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルタとなすことができる。
【0071】
以下、合成例、比較合成例、実施例、比較例を用いて、本発明を具体的に示す。これらの例中、「%」は質量パーセントを意味するものとする。
【0072】
(合成例1)
攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を装備した4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1540部を仕込み、窒素気流下で110℃に昇温した後、メチルメタクリレート647部、n−ブチルメタクリレート350部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート3部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下、TBPEHと略称する。)18部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃にて7時間反応させて、不揮発分40.8%、重量平均分子量16,000の重合体(B−1)の溶液を得た。
【0073】
(合成例2)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1540部を仕込み、窒素気流下で110℃に昇温した後、ベンジルメタクリレート997部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート3部及びTBPEH18部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃にて7時間反応させて、不揮発分38.1%、重量平均分子量14,000の重合体(B−2)の溶液を得た。
【0074】
(合成例3)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール1000部を仕込み、窒素気流下で80℃に昇温した後、メチルメタクリレート647部、n−ブチルメタクリレート350部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート3部及びTBPEH10部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下が終了して1時間後に、メチルエチルケトン500部を添加し、さらに6時間反応を継続させて、不揮発分39.8%、重量平均分子量54,000の重合体(B−3)の溶液を得た。
【0075】
(合成例4)
合成例1と同様の4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール1000部を仕込み、窒素気流下で80℃に昇温した後、メチルメタクリレート647部、n−ブチルメタクリレート350部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート3部及びTBPEH20部からなる混合液を4時間かけて滴下した。滴下が終了して1時間後に、メチルエチルケトン500部を添加し、さらに6時間反応を継続させて、不揮発分40.0%、重量平均分子量37,000の重合体(B−4)の溶液を得た。
【0076】
(合成例5)
<ドーソン型(P2MoW17O62)6−ヘテロポリオキソメタレートでレーキされたトリアリールメタン顔料の合成>
【0077】
WO2012/039416に記載されている方法と同様な操作を行い、黒青色個体10.4gを得た。
該固体を市販のジューサーにて粉砕して、上記式(I)においてR1がいずれもエチル基であり、X−が(P2MoW17O62)/6で表されるヘテロポリオキソメタレートからなるアニオンであるトリアリールメタン顔料を得た。
【0078】
FT−IR分析結果:(KBr/cm−1)
2970,1579,1413,1342,1273,1185,1155,1073,954,911,786。
【0079】
C.I.ベーシックブルー7のFT−IRの分析結果、及びK6(P2MoW17O62)のFT−IR分析結果及び上記生成物のFT−IRの分析結果から、この生成物は、C.I.ベーシックブルー7のカチオン構造とK6(P2MoW17O62)のアニオン構造が維持されていることを確認した。一次粒子の平均粒子径は、100nm以下であった。
【実施例1】
【0080】
上記合成例5で得たトリアリールメタン顔料20部を容器に入れ、酢酸エチル(試薬一級)400部に入れて撹拌翼でゆっくり撹拌し、均一なスラリーが得られたことを確認した後、そこに上記合成例3の共重合体(B−3)溶液(固形分39.8%)2.5部を加え、引き続き60分間撹拌翼で撹拌した後、吸引濾過し、減圧乾燥を行うことで、質量換算でトリアリールメタン顔料(A)100部当たり、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他のリン酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステルの共重合体(B)不揮発分0.1〜15部の範囲にある有機顔料組成物を得た。
【実施例2】
【0081】
上記実施例1で得た有機顔料組成物1.80部、BYK―2164(ビックケミー社製分散剤)2.10部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.10部、0.3−0.4mmφセプルビーズをポリビンに入れ、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、顔料分散液を得た。
この顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックス(商標名)M7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD(商標名)DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE(商標名)BP−100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEEP(ユニオンカーバイド社製)13.5部を分散撹拌機で撹拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。このカラーレジストは50mm×50mm、1mmの厚ガラスに乾燥膜厚が2μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後90℃で20分間予備乾燥して塗膜を形成させ、青色画素部を含むカラーフィルタとした。
【0082】
(比較例1)
実施例1で得た有機顔料組成物に代えて、市販のトリアリールメタン顔料であるFANAL BLUE D6340の同量を用いる以外は、実施例2と同様の操作を行い、カラーフィルタを得た。
【0083】
これら実施例2及び比較例1の各カラーフィルタを用いて、C光源における輝度を、大塚電子(株)製MCPD−3000で測定した。また、カラーフィルタを230℃で1時間加熱後の輝度も合わせて測定した。なお、色差(ΔE*)は、L*a*b*表色系にて、230℃で1時間加熱前後での明度L*および色度a*、b*の差Δより求められるものであり、以下の式にて表わされる。
ΔE*=(Δa2+Δb2+ΔL2)1/2
この式より、ΔE*の数値が大きいほど、230℃で1時間加熱前後での明度L*および色度a*、b*の変化が大きいことを表す。
これらの結果を表1に示した。
【0084】
表1
【0085】
上記表1の実施例2と比較例1との対比からわかる通り、共重合体(B)を含んでおりトリアリールメタン顔料の含有率が小さい実施例の方が、従来用いられて来た(無処理の)トリアリールメタン顔料に比べて、初期とPB後の輝度値及び色度値の差が小さく、熱履歴を受けても輝度及び色度の変動が小さく耐熱性に優れていることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、トリアリールメタン顔料(A)と、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との相互作用による特異な耐熱性により、熱履歴を受けても色相変化の小さい着色物を提供でき、特に、カラーフィルタの画素部の調製に用いた際に、高輝度で、熱履歴を長時間に亘って受けても、輝度に優れた液晶表示が可能となる液晶表示装置を提供できる。