特許第5994525号(P5994525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994525
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/30 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
   G02B6/30
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-209687(P2012-209687)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-63110(P2014-63110A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】柳 主鉉
(72)【発明者】
【氏名】須永 義則
(72)【発明者】
【氏名】平野 光樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正尭
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−032255(JP,A)
【文献】 特開2012−133235(JP,A)
【文献】 特開2012−133236(JP,A)
【文献】 特開2003−156650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/26−6/27
G02B 6/30−6/34
G02B 6/36−6/40
G02B 6/42−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
該光ファイバの先端部が収容される光ファイバ収容溝が形成された光導波路と
記光ファイバを前記光ファイバ収容溝に固定する接着剤と、
前記光ファイバを収容し前記接着剤を充填した前記光ファイバ収容溝の上部を覆うように設けられ、前記光ファイバの位置ずれを抑制する押さえ板と、
を備え、
前記光ファイバ収容溝に収容した前記光ファイバの先端面を、コアが露出した前記光ファイバ収容溝の先端側の内壁に突き合わせることで、 前記光ファイバのコアと前記光導波路のコアとが光学的に結合するように構成された光モジュールであって、
前記光ファイバ収容溝は、
前記光導波路の表面から前記光ファイバが突出しないよう前記光ファイバの先端部の全体を収容するように形成され、
かつ、その幅および深さと前記光ファイバの先端部の直径との差が0μm以上20μm以下となるように形成され、
前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤が充填されており、
前記光導波路には、前記光ファイバ収容溝の先端部に連結され、前記接着剤の硬化時の硬化収縮により前記接着剤の剥離が発生しないように前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤を供給する接着剤供給用溝が形成され、
前記光ファイバ収容溝の両側に、前記押さえ板を設ける際に押し出された前記接着剤を回収するための接着剤回収用溝が形成され、
該接着剤回収用溝と前記接着剤供給用溝とが連結されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
光ファイバと、
該光ファイバの先端部が収容される光ファイバ収容溝が形成された基板と
記光ファイバを前記光ファイバ収容溝に固定する接着剤と、
前記光ファイバを収容し前記接着剤を充填した前記光ファイバ収容溝の上部を覆うように設けられ、前記光ファイバの位置ずれを抑制する押さえ板と、
を備え、
前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤が充填されており、
前記基板には、前記光ファイバ収容溝の先端部に連結され、前記接着剤の硬化時の硬化収縮により前記接着剤の剥離が発生しないように前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤を供給する接着剤供給用溝が形成され、
前記光ファイバ収容溝の両側に、前記押さえ板を設ける際に押し出された前記接着剤を回収するための接着剤回収用溝が形成され、
該接着剤回収用溝と前記接着剤供給用溝とが連結されている
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項3】
前記光ファイバ収容溝は、
断面視で矩形状に形成されている、
求項1または2記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光ファイバは、その先端部が被覆ごと前記光ファイバ収容溝に収容され、
前記被覆の厚さが15μmより小さい
請求項1〜3いずれかに記載の光モジュール。
【請求項5】
前記接着剤回収用溝に、前記光導波路の補強用のダミー光ファイバを収容した
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記接着剤の粘度が2000mPa・s以下である
請求項1〜5いずれかに記載の光モジュール。
【請求項7】
光ファイバと、
該光ファイバの先端部が収容される光ファイバ収容溝が形成された光導波路と
記光ファイバを前記光ファイバ収容溝に固定する接着剤と、
前記光ファイバを収容し前記接着剤を充填した前記光ファイバ収容溝の上部を覆うように設けられ、前記光ファイバの位置ずれを抑制する押さえ板と、
を備え、
前記光ファイバ収容溝に収容した前記光ファイバの先端面を、コアが露出した前記光ファイバ収容溝の先端側の内壁に突き合わせることで、前記光ファイバのコアと前記光導波路のコアとが光学的に結合するように構成された光モジュールであって、
前記光ファイバ収容溝は、
前記光導波路の表面から前記光ファイバが突出しないよう前記光ファイバの先端部の全体を収容するように形成され、
かつ、その幅および深さと前記光ファイバの先端部の直径との差が0μm以上20μm以下となるように形成され、
前記光ファイバ収容溝の先端から離間した位置に、前記光ファイバ収容溝を幅方向に拡げた接着剤充填部を形成し、当該接着剤充填部に前記接着剤を充填し、前記光ファイバ収容溝の先端部に接着剤を充填しないようにした
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項8】
光ファイバと、
該光ファイバの先端部が収容される光ファイバ収容溝が形成された基板と
記光ファイバを前記光ファイバ収容溝に固定する接着剤と、
前記光ファイバを収容し前記接着剤を充填した前記光ファイバ収容溝の上部を覆うように設けられ、前記光ファイバの位置ずれを抑制する押さえ板と、
を備え、
前記光ファイバ収容溝の先端から離間した位置に、前記光ファイバ収容溝を幅方向に拡げた接着剤充填部を形成し、当該接着剤充填部に前記接着剤を充填し、前記光ファイバ収容溝の先端部に接着剤を充填しないようにした
ことを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
前記光ファイバ収容溝の先端と前記接着剤充填部との間、あるいは前記接着剤充填部に、前記押さえ板を設ける際に押し出された前記接着剤が前記光ファイバ収容溝の先端に至らないように、前記接着剤を逃がす接着剤逃がし溝を連結して形成した
請求項7または8記載の光モジュール。
【請求項10】
前記接着剤逃がし溝の幅は、前記光ファイバ収容溝の幅よりも狭く形成されている
請求項9記載の光モジュール。
【請求項11】
前記接着剤の粘度が1000mPa・s以上である
請求項7〜10いずれかに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路を介して光ファイバと光素子とを光学的に接続した光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
面発光素子や面受光素子では、実装する基板の表面に対して垂直方向に光を入出射するが、光ファイバを基板の表面に対して垂直に設けると、光ファイバの取り回しが困難になってしまう。そこで、面発光素子や面受光素子を用いても光ファイバを基板の表面に対して平行に配置できるように、光軸変換機能を有する光導波路を介して、光素子と光ファイバとを光学的に接続した光モジュールが知られている。
【0003】
このような光モジュールでは、光素子を実装する基板(フレキシブルプリント基板)の光素子を実装する側と反対側の面に光導波路を形成すると共に、光素子の発光部または受光部と対向する位置の光導波路のコアに光軸変換用の反射ミラーを形成し、当該反射ミラーを介して光素子と光導波路のコアとを光学的に結合している。
【0004】
光導波路には、光ファイバの先端部を収容する光ファイバ収容溝が形成されており、光ファイバ収容溝に収容した光ファイバの先端面を、コアが露出した光ファイバ収容溝の先端側の内壁に突き合わせることで、光ファイバのコアと光導波路のコアとを光学的に結合している。
【0005】
光ファイバ収容溝は、通常、光ファイバの先端部の直径よりも浅く形成されており、光ファイバ収容溝内や光ファイバの周囲に接着剤を塗布し、押さえ板により光ファイバを押さえつけた状態で接着剤を硬化させることで、光ファイバを光導波路に固定するようになっている(光ファイバを光導波路に固定するものではないが、類似した技術として特許文献1がある)。
【0006】
なお、例えば特許文献2のように、押さえ板を用いずに接着剤のみで光ファイバを固定する場合もあるが、特に小型の光モジュールでは、光ファイバの実装作業時に光ファイバの先端部が逃げないように押さえつける押さえ板は必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−93730号公報
【特許文献2】特開平5−11122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光モジュールでは、図6に示すように、光ファイバ61が1本(もしくは数本)と少ない場合に、光導波路62の光ファイバ収容溝63に収容されず突出した部分の光ファイバ61に押さえ板64が干渉し、押さえ板64が傾いてしまう場合がある。その結果、押さえ板64を押さえつける際に押さえ板64が側方へ逃げて押さえ板64の位置ずれが発生したり、押さえ板64による押さえつけが十分でなく光ファイバ61の位置ずれが発生したりする場合があり、光ファイバ61の実装作業が容易でないという問題がある(なお、図6では光素子や基板等を省略している)。
【0009】
押さえ板64の位置ずれは、サイズの変動を生じ、特に小型の光モジュールにおいては、筐体内への収容が困難になるなど歩留の悪化の原因となる。また、光ファイバ61の位置ずれは、光ファイバ61のコアと光導波路62のコアの位置ずれを生じ、光損失を増大させてしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、押さえ板や光ファイバの位置ずれを抑制でき、光ファイバの実装作業を容易にすることが可能な光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、光ファイバと、該光ファイバの先端部が収容される光ファイバ収容溝が形成された光導波路と、前記光ファイバを収容した前記光ファイバ収容溝に充填され硬化されることで、前記光ファイバを前記光ファイバ収容溝に固定する接着剤と、前記光ファイバを収容し前記接着剤を充填した前記光ファイバ収容溝の上部を覆うように設けられ、前記光ファイバの位置ずれを抑制する押さえ板と、を備え、前記光ファイバ収容溝に収容した前記光ファイバの先端面を、コアが露出した前記光ファイバ収容溝の先端側の内壁に突き合わせることで、前記光ファイバのコアと前記光導波路のコアとが光学的に結合するように構成された光モジュールであって、前記光ファイバ収容溝は、前記光導波路の表面から前記光ファイバが突出しないよう前記光ファイバの先端部の全体を収容するように形成され、かつ、前記光ファイバ収容溝内に前記光ファイバの先端部を収容し前記光ファイバ収容溝の開口を前記押さえ板で塞いだときに、前記光ファイバがその半径方向に動くことが許容される距離が20μm以下となるように形成されている光モジュールである。
【0012】
前記光ファイバ収容溝は、断面視で矩形状に形成され、その幅および深さと前記光ファイバの先端部の直径との差が0μm以上20μm以下となるように形成されていてもよい。
【0013】
前記光ファイバは、その先端部が被覆ごと前記光ファイバ収容溝に収容され、前記被覆の厚さが15μmより小さいとよい。
【0014】
前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤が充填されており、前記光導波路には、前記光ファイバ収容溝の先端部に連結され、前記接着剤の硬化時の硬化収縮により前記接着剤の剥離が発生しないように前記光ファイバ収容溝の先端部に前記接着剤を供給する接着剤供給用溝が形成されていてもよい。
【0015】
前記光ファイバ収容溝の両側に、前記押さえ板を設ける際に押し出された前記接着剤を回収するための接着剤回収用溝が形成され、該接着剤回収用溝と前記接着剤供給用溝とが連結されていてもよい。
【0016】
前記接着剤回収用溝に、前記光導波路の補強用のダミー光ファイバを収容してもよい。
【0017】
前記接着剤の粘度が2000mPa・s以下であってもよい。
【0018】
前記光ファイバ収容溝の先端から離間した位置に、前記光ファイバ収容溝を幅方向に拡げた接着剤充填部を形成し、当該接着剤充填部に前記接着剤を充填し、前記光ファイバ収容溝の先端部に接着剤を充填しないようにしてもよい。
【0019】
前記光ファイバ収容溝の先端と前記接着剤充填部との間、あるいは前記接着剤充填部に、前記押さえ板を設ける際に押し出された前記接着剤が前記光ファイバ収容溝の先端に至らないように、前記接着剤を逃がす接着剤逃がし溝を連結して形成してもよい。
【0020】
前記接着剤逃がし溝の幅は、前記光ファイバ収容溝の幅よりも狭く形成されていてもよい。
【0021】
前記接着剤の粘度が1000mPa・s以上であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、押さえ板や光ファイバの位置ずれを抑制でき、光ファイバの実装作業を容易にすることが可能な光モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態に係る光モジュールを示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図である。
図2図1の光モジュールの変形例を示す平面図である。
図3図1の光モジュールの変形例を示す平面図である。
図4】本発明の他の実施の形態に係る光モジュールを示す平面図である。
図5】(a),(b)は、図4の光モジュールの変形例を示す平面図である。
図6】従来の光モジュールの課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る光モジュールを示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【0026】
図1(a),(b)に示すように、光モジュール1は、光ファイバ2と、光ファイバ2の先端部が収容される光ファイバ収容溝3が形成された光導波路4と、光導波路4を介して光ファイバ2と光学的に接続される光素子5と、光ファイバ2を収容した光ファイバ収容溝3に充填され硬化されることで、光ファイバ2を光ファイバ収容溝3に固定する接着剤(図示せず)と、光ファイバ2を収容し接着剤を充填した光ファイバ収容溝3の上部を覆うように設けられ、光ファイバ2の位置ずれを抑制する押さえ板6と、を備えている。
【0027】
本実施の形態では、光素子5として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)などの面発光素子またはフォトダイオードなどの面受光素子を用いた。光素子5は、基板(フレキシブルプリント基板(FPC))7の一方の面に実装されており、その基板7の他方の面に光導波路4が形成されている。基板7の一方の面には、光素子5を駆動するドライバIC(光素子5が発光素子の場合)、あるいは光素子5からの電気信号を増幅するアンプIC(光素子5が受光素子の場合)などが搭載されているが、図1では省略して示している。
【0028】
基板7は、例えば、FPCコネクタ等を介してベース基板(リジッド基板)に搭載され、当該ベース基板に設けられた電気コネクタを介して、外部通信機器等に電気的に接続されるよう構成される。また、光モジュール1では、光ファイバ2の先端部、光導波路4、光素子5、押さえ板6、基板7等を覆うように筐体が設けられているが、図1では図示を省略している。
【0029】
光導波路4は、平面視で矩形状に形成されている。光導波路4の平面視における一辺の長さは、例えば0.8〜3mm程度である。光導波路4の表面(基板7と反対側)には、光ファイバ2を収容する直線状の光ファイバ収容溝3が形成されている。
【0030】
光導波路4のコア4aは、その一端が光ファイバ収容溝3の先端側の内壁(図1(a)の下側の内壁)から露出しており、このコア4aが露出した光ファイバ収容溝3の先端側の内壁に、光ファイバ収容溝3に収容した光ファイバ2の先端面を突き合わせることにより、光ファイバ2のコアと光導波路4のコア4aとが光学的に結合するようになっている。
【0031】
また、光素子5の発光部または受光部と対向する位置のコア4aには、光軸変換用の反射ミラー4bが形成されており、当該反射ミラー4bを介して光素子5と光導波路4のコア4aとが光学的に結合するようになっている。
【0032】
押さえ板6は、平面視で光導波路4よりも一回り小さい矩形状に形成されている。押さえ板6を平面視で光導波路4よりも一回り小さくするのは、押さえ板6を設ける際に位置ずれが発生した場合でも、できるだけ光導波路4の側方に押さえ板6が突出しないようにして、歩留を向上させるためである。
【0033】
接着剤としては、例えば紫外線硬化性樹脂を用いることができる。光ファイバ2を光ファイバ収容溝3に収容し、光ファイバ収容溝3に接着剤を充填し、光ファイバ収容溝3を塞ぐように押さえ板6を押しつけた状態で、接着剤に紫外線を照射するなどして接着剤を硬化させることで、光ファイバ2および押さえ板6が光導波路4に固定(実装)される。
【0034】
なお、ここでは光ファイバ2を1本用いる場合を説明するが、光ファイバ2を複数本備えることも勿論可能である。この場合、光素子5として光素子アレイを用い、光導波路4に、複数本の光ファイバ2に対応する複数の光ファイバ収容溝3を形成すればよい。
【0035】
さて、本実施の形態に係る光モジュール1では、光ファイバ収容溝3は、光導波路4の表面から光ファイバ2が突出しないよう光ファイバ2の先端部の全体を収容するように形成され、かつ、光ファイバ収容溝3内に光ファイバ2の先端部を収容し光ファイバ収容溝3の開口を押さえ板6で塞いだときに、光ファイバ2の先端部がその半径方向(図1(b)における紙面平行方向)に動くことが許容される距離が20μm以下となるように形成されている。
【0036】
より具体的には、本実施の形態では、光ファイバ収容溝3を断面視で矩形状に形成しており、その幅Wおよび深さDを光ファイバ2の先端部の直径d以上とすることで、光ファイバ2の先端部の全体を光ファイバ収容溝3内に収容するようにしている。
【0037】
また、本実施の形態では、光ファイバ収容溝3の幅Wおよび深さDと光ファイバ2の先端部の直径dとの差(W−d、およびD−d)を0μm以上20μm以下とすることにより、光ファイバ収容溝3の開口を押さえ板6で塞いだ際に光ファイバ2の先端部がその半径方向に動くことが許容される距離が20μm以下となるようにしている。なお、光ファイバ収容溝3の開口を押さえ板6で塞いだ際に光ファイバ2の先端部がその半径方向に動くことが許容される距離が20μmより大きくなると、光ファイバ2のコアと光導波路4のコア4aのずれによる光損失が大きくなりすぎる場合があり、歩留が悪化してしまう。
【0038】
光ファイバ収容溝3内に十分な接着剤を充填し、かつ、加工精度等の影響により光ファイバ2が光ファイバ収容溝3から突出してしまうことを抑制するために、光ファイバ収容溝3の深さDと光ファイバ2の先端部の直径dとの差は、5μm以上とすることがより好ましい。また、光ファイバ2のコアと光導波路4のコア4aの位置ずれをなるべく小さくするために、光ファイバ収容溝3の先端側の内壁における幅方向および深さ方向の中心に、光導波路4のコア4aを形成することが望ましい。
【0039】
なお、本実施の形態では光ファイバ収容溝3を断面視で矩形状に形成したが、光ファイバ収容溝3の形状はこれに限定されるものではない。ただし、光ファイバ2と光ファイバ収容溝3との間に接着剤を充填するための隙間が必要があること、光ファイバ収容溝3の容積を大きくしすぎると光導波路4の強度が低下してしまうこと、および加工性等を考慮すると、光ファイバ収容溝3を断面視で矩形状に形成することが望ましいといえる。
【0040】
従来の光モジュールでは、光ファイバ2の先端の被覆を除去して裸線の状態で光ファイバ収容溝3に収容することが多いが、裸線の状態の光ファイバ2は取り扱いが困難で信頼性の観点からも問題があるため、本実施の形態では、光ファイバ2の先端部を、被覆ごと光ファイバ収容溝3に収容するようにした。ただし、この場合、被覆が厚すぎると、被覆の厚さのバラツキに起因するコアの位置ずれの原因となるので、光ファイバ2としては、被覆の厚さが15μmより小さいものを用いることが望ましい。
【0041】
また、本実施の形態に係る光モジュール1では、光ファイバ収容溝3の先端部にも接着剤を充填している。接着剤としては、光ファイバ2のコアおよび光導波路4のコア4aと同等の屈折率を用いることが望ましい。光ファイバ収容溝3の先端部に充填した接着剤は、屈折率整合剤の役割を果たすため、光ファイバ2の先端面がある程度粗い状態(光ファイバ2の先端面に多少の凹凸が存在する状態)であっても、接着剤で補完して光ファイバ2と光導波路4間での光損失を抑制することが可能である。
【0042】
光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤を充填する場合、接着剤が硬化する際の硬化収縮が問題となる。接着剤の硬化収縮により光ファイバ2の先端面と光導波路4の先端側の内壁との間(両者のコアの間)で剥離が生じると、その剥離面で乱反射が発生するなどして光損失が大きくなってしまうためである。
【0043】
そこで、本実施の形態では、光導波路4に、光ファイバ収容溝3の先端部に連結され、接着剤の硬化時の硬化収縮により接着剤の剥離が発生しないように光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤を供給する接着剤供給用溝8を形成した。図1では、接着剤供給用溝8を光ファイバ収容溝3の先端部から両側方に直線状に延びるように形成している。
【0044】
なお、接着剤供給用溝8を形成した場合であっても、接着剤の粘度が高すぎると、接着剤の硬化時に光ファイバ収容溝3の先端部に十分な量の接着剤が供給できずに剥離が発生してしまう可能性があるため、接着剤としては、できるだけ粘度が低いもの、具体的には粘度が2000mPa・s以下であるものを用いることが望ましい。
【0045】
さらに、本実施の形態に係る光モジュール1では、光ファイバ収容溝3の両側に、押さえ板6を設ける際に押し出された接着剤を回収するための接着剤回収用溝9を形成している。図1では、2つの接着剤回収用溝9を、光ファイバ収容溝3を挟み込むように、かつ、光ファイバ収容溝3と平行な直線状に形成している。接着剤回収用溝9を形成することで、押さえ板6を設ける際に接着剤が外部に漏れ出すことを抑制することが可能となり、特に小型の光モジュール1において光ファイバ2の実装時の作業性を向上させることが可能になる。
【0046】
また、本実施の形態では、接着剤回収用溝9と接着剤供給用溝8とを連結している。これにより、押さえ板6を設ける際に押し出された接着剤が、接着剤回収用溝9、接着剤供給用溝8を介して光ファイバ収容溝3の先端部に供給されることとなり、光ファイバ収容溝3の先端部での接着剤の剥離の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0047】
接着剤供給用溝8や接着剤回収用溝9を形成することにより、光導波路4の強度(機械的強度)は低下する。そこで、光導波路4の強度が低下しすぎることを抑制するため、光導波路4が平面視で一辺3mm以下の矩形状に形成されている場合においては、光ファイバ収容溝3、接着剤供給用溝8、接着剤回収用溝9を合わせた溝全体の平面視における面積を、光導波路4全体の平面視における面積の1/3〜2/3程度とすることが望ましい。
【0048】
また、光ファイバ収容溝3、接着剤供給用溝8、接着剤回収用溝9を含む溝全体の形状は、光導波路4の幅方向(図1(a)における左右方向)の中心に対して線対称形状となっていることが望ましい。これは、ヒートショック等大きな温度変化があった場合の熱膨張・熱収縮の影響を小さくし、光導波路4に発生する歪を抑制するためである。
【0049】
なお、図2に示すように、接着剤回収用溝9に、光導波路4の補強用のダミー光ファイバ21を収容するように構成することも可能である。ダミー光ファイバ21は光ファイバ2と同じものであっても異なるものであってもよい。また、ダミー光ファイバ21に替えて樹脂製の棒状部材等を設けることも当然に可能である。ダミー光ファイバ21を備えることにより、光導波路4を補強することは勿論、温度変化による膨張・収縮を抑制し、温度変化により光導波路4に発生する歪を抑制することも可能になる。
【0050】
また、本実施の形態では、接着剤供給用溝8と接着剤回収用溝9を直線状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、接着剤供給用溝8と接着剤回収用溝9を湾曲した形状としても構わない。
【0051】
光モジュール1において光ファイバ2を光導波路4に実装する際には、まず、光ファイバ2を光ファイバ収容溝3に収容し、光ファイバ収容溝3に接着剤を充填する。このとき、光ファイバ収容溝3の先端部にも接着剤を充填する。
【0052】
その後、光ファイバ収容溝3を塞ぐように押さえ板6を押しつける。このとき押し出された接着剤は、接着剤回収用溝9に回収され、接着剤の硬化時に、接着剤供給用溝8を介して光ファイバ収容溝3の先端部に供給されることになる。
【0053】
押さえ板6を押しつけただけの状態では、接着剤が硬化されておらず、光ファイバ2は固定されていないが、光ファイバ2は押さえ板6で塞いだ光ファイバ収容溝3内の空間のみでしか動くことができない。本実施の形態では、このとき光ファイバ2がその半径方向に動くことが許容される距離が20μm以下となっているため、この範囲内で光ファイバ2がいくら動いても、光損失は許容範囲内となり、問題とならない。
【0054】
その後、接着剤に紫外線を照射するなどして接着剤を硬化させると、光導波路4に光ファイバ2と押さえ板6が固定され、光ファイバ2の光導波路4への実装作業が終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係る光モジュール1では、光ファイバ収容溝3が、光導波路4の表面から光ファイバ2が突出しないよう光ファイバ2の先端部の全体を収容するように形成され、かつ、光ファイバ収容溝3内に光ファイバ2の先端部を収容し光ファイバ収容溝3の開口を押さえ板6で塞いだときに、光ファイバ2の先端部がその半径方向に動くことが許容される距離が20μm以下となるように形成されている。
【0056】
光ファイバ収容溝3を光ファイバ2の先端部の全体を収容するように深く形成することにより、押さえ板6が光ファイバ2に干渉してしまうことがなくなり、押さえ板6の傾きや位置ずれ、および光ファイバ2の位置ずれを抑制することが可能になる。
【0057】
また、光ファイバ収容溝3の開口を押さえ板6で塞いだときに、光ファイバ2の先端部がその半径方向に動くことが許容される距離を20μm以下とすることにより、光ファイバ2のコアと光導波路4のコア4aとの位置ずれを確実に抑制することが可能になる。また、光ファイバ2の先端部を光ファイバ収容溝3に収容して押さえ板6で塞げば、自ずと光ファイバ2のコアと光導波路4のコア4aの位置合わせが行われることとなるので、光ファイバ2の実装時の作業性を向上させることが可能になる。
【0058】
つまり、光モジュール1によれば、押さえ板6や光ファイバ2の位置ずれを抑制でき、光ファイバ2の実装作業を容易にすることが可能になる。
【0059】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0060】
図4に示す光モジュール41は、光ファイバ収容溝3の先端から離間した位置に、光ファイバ収容溝3を幅方向に拡げた接着剤充填部3aを形成し、当該接着剤充填部3aに接着剤を充填し、光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤を充填しないようにしたものである。
【0061】
図1の光モジュール1では、光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤を充填したため、接着剤の硬化時に剥離が発生しないように接着剤供給用溝8を形成したが、光モジュール41では、接着剤の硬化時の剥離の影響を避けるため、そもそも光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤を充填しないように構成している。
【0062】
光モジュール41では、光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤が充填されないため、光ファイバ2の先端面を、レーザ加工や機械加工により、凹凸のない平坦な面に加工して、光ファイバ2の先端面の凹凸での乱反射等による光損失を抑制することが望ましい。
【0063】
接着剤を接着剤充填部3aとその周辺の光ファイバ収容溝3にのみ充填すると、押さえ板6の光導波路4への固定が十分でなくなる可能性があるため、光モジュール41では、コア4aの光ファイバ収容溝3と反対側に、幅方向に延びる直線状の補助接着剤充填用溝42を形成し、この補助接着剤充填用溝42にも接着剤を充填して押さえ板6を十分に固定するように構成している。
【0064】
接着剤の充填時に接着剤が光ファイバ収容溝3の先端部に流れ込まないように、接着剤としては、なるべく粘度が高いもの、具体的には、粘度が1000mPa・s以上であるものを用いることが望ましい。
【0065】
また、押さえ板6を押しつけた際に接着剤が光ファイバ収容溝3の先端部に至らないようにするため、例えば、図5(a)に示すように、光ファイバ収容溝3の先端と接着剤充填部3aとの間に、接着剤を逃がすために接着剤逃がし溝51を連結して形成するようにしてもよい。
【0066】
また、図5(b)に示すように、接着剤充填部3aに接着剤逃がし溝52を連結して形成することも可能である。接着剤逃がし溝52の幅は、光ファイバ収容溝3の幅よりも狭く形成されている。接着剤は幅の狭い接着剤逃がし溝52に流れやすくなるため、光ファイバ収容溝3の先端部に接着剤が流れ込むことを抑制することができる。図5(b)では、接着剤充填部3aから後方(コア4aと反対側)に延びるように接着剤逃がし溝52を形成しているが、これに限らず、例えば、接着剤充填部3aから両側方に延びるように接着剤逃がし溝52を形成することも可能である。
【0067】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 光モジュール
2 光ファイバ
3 光ファイバ収容溝
4 光導波路
4a コア
5 光素子
6 押さえ板
7 基板
8 接着剤供給用溝
9 接着剤回収用溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6