特許第5994564号(P5994564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994564
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】光配向性を有する熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20160908BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20160908BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20160908BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20160908BHJP
   C08F 220/30 20060101ALN20160908BHJP
   C08F 220/32 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   C08L33/14
   C08L79/08 D
   G02F1/1337 520
   G02B5/20 101
   !C08F220/30
   !C08F220/32
【請求項の数】19
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2012-232885(P2012-232885)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-84355(P2014-84355A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】岡本 優紀
(72)【発明者】
【氏名】江頭 友弘
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−282377(JP,A)
【文献】 特開2004−144964(JP,A)
【文献】 特開2012−193339(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/018121(WO,A1)
【文献】 米国特許第05753145(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02457964(EP,A1)
【文献】 特表2011−507041(JP,A)
【文献】 特表2009−520702(JP,A)
【文献】 特開2009−237017(JP,A)
【文献】 米国特許第6174649(US,B1)
【文献】 特開2009−282341(JP,A)
【文献】 特開2010−117684(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/010483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
G02B 5/20
G02F 1/1337
C08F 12/00− 34/04
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光配向性を有する重合体(A)およびポリエステルアミド酸(B)を含み、
光配向性を有する重合体(A)が、環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)と光配向性を有する重合性モノマー(a2)との共重合体であり、
光配向性を有する重合性モノマー(a2)が、式(I−1−1)、(I−2−1)又は(I−3−1)で表される構成単位となるモノマーであり、
重合体(A)とポリエステルアミド酸(B)との混合割合は、(A)と(B)との総量に対して、(A)の含有量が、50〜95重量%である
光配向性を有する熱硬化性組成物。
【化1】
(上記式中、添え字xが付された括弧部分がポリマー主鎖中に含まれる部分であり、xは光配向性を有する重合体中に含まれる上記構成単位のモル分率(x<1)を表す。
上記式中、R4は水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキルを示す。
上記式中、R5は水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキル、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルコキシを示す。
上記式中、R6は水素又はメチルを示す。
上記式中、Z1は単結合、−COO−又は−OCO−を示す。
上記式中、oは2〜6の整数を表し、pは0〜2の整数を表す。
上記式中に含まれるフェニレンの任意の水素1〜4個はフッ素、メチル、メトキシで置き換えられてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレートおよび(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のポリエステルアミド酸(B)が、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンおよび多価ヒドロキシ化合物を必須成分として含む原料の反応物である、請求項1または2に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリエステルアミド酸(B)がテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、多価ヒドロキシ化合物および1価アルコールを必須成分として含む原料の反応物である、請求項1〜3の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項5】
1価アルコールがイソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたは3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンである請求項4に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のポリエステルアミド酸(B)が、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、YモルのジアミンおよびZモルの多価ヒドロキシ化合物を、下記式(1)および式(2)の関係が成立するような比率で含む原料の反応物である、請求項1〜5の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦1.5 ・・・(2)
【請求項7】
請求項1に記載のポリエステルアミド酸(B)が下記式(3)および(4)で示される構成単位を有する化合物である請求項1〜6の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【化2】
(式中、R1はテトラカルボン酸二無水物残基であり、R2はジアミン残基であり、R3は多価ヒドロキシ化合物残基である。)
【請求項8】
テトラカルボン酸二無水物が3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−(ビス(3,4−ジカルボキシフェニル))ヘキサフルオロプロパン酸二無水物およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)から選択される1種以上の化合物である請求項3〜7の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項9】
ジアミンが3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンおよびビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンから選択される1種以上の化合物である請求項3〜8の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項10】
多価ヒドロキシ化合物がエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよび1,8−オクタンジオールから選択される1種以上の化合物である請求項3〜9の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項11】
グリコール系、ケトン系、乳酸エステル系の溶剤を更に含む請求項1〜10の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエステルアミド酸(B)の重量平均分子量が1,000〜500,000である請求項1〜11の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の光配向性を有する重合体(A)の重量平均分子量が2,000〜200,000である請求項1〜12の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を加熱することにより得られる硬化膜。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化膜を保護膜として用いたカラーフィルター。
【請求項16】
請求項15に記載のカラーフィルターを用いた液晶表示素子。
【請求項17】
請求項15に記載のカラーフィルターを用いた固体撮像素子。
【請求項18】
請求項1〜13の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるパターン化位相差板。
【請求項19】
請求項1〜13の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて得られる位相差板を備えた光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性を有する熱硬化性組成物及び、それから形成される硬化膜に関する。より詳しくは、本発明は熱硬化膜において、透明性、液晶配向能、耐溶剤性及び耐熱性に優れる熱硬化性組成物及びその熱硬化膜の適用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子などの素子の製造工程中には、有機溶剤、酸、アルカリ溶液などの種々の薬品処理がなされたり、スパッタリングにより配線電極を成膜する際に、表面が局部的に高温に加熱されたりすることがある。そのため、各種の素子の表面の劣化、損傷、変質を防止する目的で表面保護膜が設けられる場合がある。これらの保護膜には、上記のような製造工程中の各種処理に耐えることができる諸特性が要求される。具体的には、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラスなどの下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性、平坦性、長期に亘って着色などの変質がおこらない耐光性などが要求される。
【0003】
また、特に近年、液晶表示素子の高視野角化、高速応答化、高精細化などの高性能化が進むなか、カラーフィルター保護膜として用いられる場合には、カラーフィルターを透過する光の透過率を維持するために、高い透明性を有する膜であることが必要とされる。
【0004】
一方、近年液晶ディスプレイのセル内に位相差材を導入することで、低コスト化、軽量化が検討されており、このような位相差材としては重合性液晶溶液を塗布し配向させた後に、光硬化させた材料が一般的に用いられる。この位相差材を配向させるためには下層膜がラビング処理または偏光UV照射された後、配向性を有する材料で処理される必要がある。そのため、カラーフィルターのオーバーコート上に液晶配向層を成膜した後、位相差材が形成される。
【0005】
液晶配向層とカラーフィルターのオーバーコートを兼ねる膜を形成できれば、コストの低減、プロセス数の削減等が期待される。そのため、近年、液晶配向層とカラーフィルターのオーバーコートを兼ねる材料が盛んに研究されている。
【0006】
一般にカラーフィルターのオーバーコートには、透明性の高いアクリル樹脂が用いられ、このアクリル樹脂を熱硬化又は光硬化させることにより、耐熱性及び溶剤耐性を高める手法がとられている(特許文献1および2)。
【0007】
一方、液晶配向層には溶剤可溶性ポリイミド又はポリアミド酸からなる材料が通常用いられている。これらの材料はポストベークにより、完全にイミド化し、溶剤耐性が付与され、ラビング処理により十分な配向性を示すものになることが報告されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜2に記載の熱硬化性もしくは光硬化性のアクリル樹脂は適当な透明性及び溶剤耐性を有するものの、この種のアクリル樹脂からなるオーバーコートをラビング処理あるいは偏光UV照射しても十分な配向性を示すことはできなかった。
【0009】
特許文献3に記載の液晶配向層は、カラーフィルターのオーバーコート材として用いるには透明性が低いという問題があった。また、ポリイミドおよびポリアミド酸は、グリコール系溶剤、エステル系溶剤及びケトン系溶剤に対する溶解性が低く、そのような溶剤が用いられるオーバーコート作製ラインへの適用は難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−103937号公報
【特許文献2】特開2001−194797号公報
【特許文献3】特開2005−037920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、硬化膜形成後には平坦性、高い耐溶剤性、重合性液晶に対する優れた光配向性、十分な耐熱性並びに高い透明性を示し、しかも硬化膜形成時においては、カラーフィルターのオーバーコートの作製において適用可能なグリコール系溶剤、ケトン系溶剤又は乳酸エステル系溶剤に溶解できる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の問題点を克服すべく種々検討した結果、光配向性を有する重合体およびポリエステルアミド酸を含む、光配向性を有する熱硬化性組成物が、上記の課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は以下の構成を有する。
[1] 光配向性を有する重合体(A)およびポリエステルアミド酸(B)を含む、光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0014】
[2] 前記[1]に記載の光配向性を有する重合体 (A)が、環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)と光配向性を有する重合性モノマー(a2)との共重合体である、前記[1]に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0015】
[3] 前記[2]に記載の環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレートおよび(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートからなる群から選択される1種以上である、前記[2]に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0016】
[4] 前記[2]に記載の光配向性を有する重合性モノマー(a2)の光配向性部位が、光二量化または光異性化する構造の官能基である、前記[2]または[3]に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0017】
[5] 前記[2]に記載の光配向性を有する重合性モノマー(a2)の光配向性部位がシンナモイルである、前記[2]〜[4]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0018】
[6] 前記[1]に記載のポリエステルアミド酸(B)が、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンおよび多価ヒドロキシ化合物を必須成分として反応させることにより得られるポリエステルアミド酸である、前記[1]〜[5]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0019】
[7] 前記[1]に記載のポリエステルアミド酸(B)がテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、多価ヒドロキシ化合物および1価アルコールを必須成分として反応させることにより得られるポリエステルアミド酸である前記[1]〜[5]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0020】
[8] 1価アルコールがイソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテルまたは3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンである前記[7]に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0021】
[9] 前記[1]に記載のポリエステルアミド酸(B)が、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、YモルのジアミンおよびZモルの多価ヒドロキシ化合物を、下記式(1)および式(2)の関係が成立するような比率で反応させて得られる前記[1]〜[8]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦1.5 ・・・(2)
【0022】
[10] 前記[1]に記載のポリエステルアミド酸(B)が下記式(3)および(4)で示される構成単位を有する化合物である前記[1]〜[9]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0023】
【化1】
(式中、R1はテトラカルボン酸二無水物残基であり、R2はジアミン残基であり、R3は多価ヒドロキシ化合物残基である。)
【0024】
[11] テトラカルボン酸二無水物が3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−(ビス(3,4−ジカルボキシフェニル))ヘキサフルオロプロパン酸二無水物およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)から選択される1種以上の化合物である前記[6]〜[10]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0025】
[12] ジアミンが3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンおよびビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンから選択される1種以上の化合物である前記[6]〜[11]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0026】
[13] 多価ヒドロキシ化合物がエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよび1,8−オクタンジオールから選択される1種以上の化合物である前記[6]〜[12]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0027】
[14] 前記[1]に記載のポリエステルアミド酸(B)の重量平均分子量が1,000〜500,000である前記[1]〜[13]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0028】
[15] 前記[1]に記載の光配向性を有する重合体(A)の重量平均分子量が2,000〜200,000である前記[1]〜[14]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
【0029】
[16] 前記[1]〜[15]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を加熱することにより得られる硬化膜。
[17] 前記[16]に記載の硬化膜を保護膜として用いたカラーフィルター。
【0030】
[18] 前記[17]に記載のカラーフィルターを用いた液晶表示素子。
[19] 前記[17]に記載のカラーフィルターを用いた固体撮像素子。
[20] 前記[1]〜[15]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて得られる位相差層を備えた光デバイス。
[21] 前記[1]〜[15]の何れかに記載の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるパターン化位相差板。
【発明の効果】
【0031】
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、高い透明性、高い溶剤耐性および高い耐熱性、さらに平坦性に加えて、光照射による液晶配向能(光配向性)を有する硬化膜を形成することができるため、光配向性の液晶配向膜及びオーバーコートの形成材料として用いることができる。特に、液晶配向層とカラーフィルターのオーバーコートの層との両者の特性を兼ね備える膜を一度に形成することが可能となり、製造工程の簡略化及びプロセス数低減による低コスト化を実現できる。
【0032】
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、特に、3Dディスプレイに用いられるパターン化位相差板、液晶ディスプレイにおける内蔵位相差板、光配向機能を有するカラーフィルターのオーバーコートなどに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物
本発明は、光配向性を有する重合体(A)およびポリエステルアミド酸(B)を含有する、光配向性を有する熱硬化性組成物に関する。
【0034】
光配向性を有する重合体(A)とポリエステルアミド酸(B)との好ましい混合割合は、光配向性の観点からは、光配向性を有する重合体(A)とポリエステルアミド酸(B)との総量に対して、光配向性を有する重合体(A)の含有量が、通常50〜95重量%であり、より好ましくは50〜90重量%であり、さらに好ましくは50〜85重量%である。また、ポリエステルアミド酸(B)の含有量は、光配向性を有する重合体(A)とポリエステルアミド酸(B)との総量に対して、通常5〜50重量%であり、より好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは15〜50重量%である。
【0035】
1−1.光配向性を有する重合体(A)
前記光配向性を有する重合体(A)は、環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)と光配向性を有する重合性モノマー(a2)との共重合体である。環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)と光配向性を有する重合性モノマー(a2)との好ましい混合割合(モル比)は、光配向性の観点から、環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)1モルに対して、光配向性を有する重合性モノマー(a2)を、1〜20モルであり、より好ましくは1〜10モルであり、さらに好ましくは1〜5モルである。
【0036】
1−2.環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)
環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレートおよび(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレートが挙げられ、中でもグリシジルメタクリレートが好ましい。これらの環状エーテルを有する重合性モノマーは、得られる熱硬化性組成物の耐熱性、薬品耐性の観点から望ましい。
【0037】
1−3.光配向性を有する重合性モノマー(a2)
光配向性を有する重合性モノマー(a2)の光配向性部位とは、光を照射することで光二量化、光異性化、光分解、光架橋等の反応により異方性が生じる構造を有する官能基であり、なかでも光二量化、光異性化を生じる構造が好ましい。
【0038】
光二量化を生じる官能基としては、例えば桂皮酸骨格を有する物質(K. Ichimura et al., Macromolecules, 30, 903(1997))、アゾベンゼン骨格を有する物質(K. Ichimura et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., 298, 221(1997))、ヒドラゾノ−β−ケトエステル骨格を有する物質(S. Yamamura et al., Liquid Crystals, vol. 13, No. 2, page 189 (1993))、スチルベン骨格を有する物質(J. G. Victor and J. M. Torkelson, Macromolecules, 20, 2241(1987))、及びスピロピラン骨格を有する物質(K. Ichimura et al., Chemistry Letters, page 1063 (1992) ;K. Ichimura et al., Thin Solid Films, vol. 235, page 101 (1993) )由来の基などが挙げられ、その具体例としては、シンナモイル、カルコン、クマリン、アントラセン等が挙げられる。これらのうち、可視光領域での高い透明性及び光二量化反応性を有するシンナモイルが好ましい。
【0039】
前記シンナモイルとしては、例えば下記一般式(I−1)〜(I−3)で表される構造のうち少なくとも1種を有する基が挙げられる。
【0040】
【化2】
上記式中、R4は水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキルを示し、好ましくは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルを示し、より好ましくはメチルを示す。mは0〜6の整数を表し、好ましくは2、4または6を表す。また、上記式中に含まれるフェニレン中の任意の水素1〜4個はフッ素、メチル、又はメトキシで置き換えられてもよい。
【0041】
上記(I−1)〜(I−3)で示される基の中でも、(I−3)で示される基が好ましい。
光配向性を有する重合性モノマー(a2)の光配向性部位として挙げられる光異性化を生じる構造部位としては、光照射によりシス体とトランス体とに変わる構造部位のことを指し、その具体例としては、アゾベンゼン構造、スチルベン構造等が挙げられる。これらのうち、反応性の高さからアゾベンゼン構造が好ましい。
【0042】
光配向性を有する重合性モノマー(a2)としては、下記式(I−1−1)、(I−2−1)、又は(I−3−1)で表される構成単位となるモノマーを例示することができる。
【0043】
【化3】
上記式中、添え字xが付された括弧部分がポリマー主鎖中に含まれる部分であり、xは光配向性を有する重合体中に含まれる上記構成単位のモル分率(x<1)を表す。
【0044】
上記式中、R4は水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキルを示し、好ましくは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキルを示し、より好ましくはメチルを示す。
【0045】
上記式中、R5は水素、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキル、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルコキシを示し、好ましくは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシを示し、より好ましくはメチル又はメトキシを示す。
【0046】
上記式中、R6は水素又はメチルを示し、好ましくはメチルを示す。
上記式中、Z1は単結合、−COO−又は−OCO−を示し、好ましくは−COO−を示す。
【0047】
上記式中、oは2〜6の整数、好ましくは2、4又は6を表し、pは0〜2の整数、好ましくは0を表す。
上記式中に含まれるフェニレンの任意の水素1〜4個はフッ素、メチル、メトキシで置き換えられてもよいが、好ましくは未置換又はメトキシ置換である。
【0048】
上記式(I−1−1)の構成単位となる光配向性を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(I−1−1−a)〜(I−1−1−l)で表されるモノマー(下記式中、R7は水素又はメチル、R8は炭素数1〜20のアルキル、好ましくは炭素数1〜10のアルキルを示す。)などが挙げられる。
【0049】
【化4】
上記式(I−2−1)の構成単位となる光配向性を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(I−2−1−a)〜(I−2−1−l)で表される重合性モノマー(下記式中、R7は水素又はメチルを示し、R8は炭素数1〜20のアルキルを示す。)などが挙げられ、中でも式(I−2−1−a)が好ましい。
【0050】
【化5】
上記式(I−3−1)の構成単位となる光配向性を有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式(I−3−1−a)〜(I−3−1−i)で表される重合性モノマー(下記式中、R7は水素又はメチルを示し、R8は炭素数1〜20のアルキルを示す。)などが挙げられる。
【0051】
【化6】
これら重合性モノマーの中でも、上記式(I−3−1)の構成単位となる光配向性を有する重合性モノマーが好ましく、上記式(I−3−1)で表され、R6がメチル、o=2、p=0、R4がメチルの構成単位となる光配向性を有する重合性モノマーがより好ましい。
【0052】
1−4.その他の重合性モノマー
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の、光配向性、密着性を向上させる観点から、前記光配向性を有する重合体(A)は、その他の重合性モノマーを含有してもよい。その他の重合性モノマーの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸又はカルボン酸無水物を含有するラジカル重合性モノマー、例えばスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、ヒドロキシスチレン等のスチレン系ラジカル重合性モノマー、例えばヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系ラジカル重合性モノマー、例えばトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート等の縮合環を有するラジカル重合性モノマー、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド系ラジカル重合性モノマー、例えばポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等の前記モノマーのマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン等の窒素及び酸素の一方又は両方を含むヘテロ環を有するラジカル重合性モノマー、インデン等の縮合環系ラジカル重合性モノマー、例えば3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシラン系ラジカル重合性モノマー、4−ヒドロキシフェニルビニルケトン、3−アセチル−4−ヒドロキシフェニルビニルケトンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
その他の重合性モノマーを含有する場合の、前記光配向性を有する重合体(A)を構成する各モノマーの混合割合(モル比)は、環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)1モルに対して、光配向性を有する重合性モノマー(a2)が5〜50モル、好ましくは10〜45モル、より好ましくは15〜40モルであり、その他の重合性モノマーが5〜40モル、好ましくは10〜35モル、より好ましくは15〜30モルである。
【0054】
前記光配向性を有する重合体(A)は、たとえば前記環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)、光配向性を有する重合性モノマー(a2)、要すれば、その他のモノマーを反応溶媒(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、例えばジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類、γ−ブチロラクトン、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等の多価アルコール類など)中で反応させることにより得られる。なお、これらの反応溶媒は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0055】
前記光配向性を有する重合体(A)の製造方法は、前記環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)および光配向性を有する重合性モノマー(a2)を上記溶剤中で反応させ、必要に応じて、前記環状エーテルを有する重合性モノマー(a1)、光配向性を有する重合性モノマー(a2)、およびその他のモノマーを上記溶剤中で反応させる。
【0056】
得られた光配向性を有する重合体(A)の重量平均分子量は、通常2,000〜200,000、好ましくは5,000〜100,000である。これらの範囲にあれば、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の平坦性が良好となる。
【0057】
1−5.ポリエステルアミド酸(B)
前記ポリエステルアミド酸(B)は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を必須成分として反応させることにより得られる。前記ポリエステルアミド酸(B)の合成には、少なくとも溶剤が必要であり、この溶剤をそのまま残してハンドリング性等を考慮した液状やゲル状の熱硬化性樹脂組成物としてもよいし、この溶剤を除去して運搬性などを考慮した固形状の組成物としてもよい。また、ポリエステルアミド酸の合成には、原料として、必要に応じて、1価アルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体、またシリコン含有モノアミンを含んでいてもよく、なかでも、分子量制御の観点から1価アルコールを含むことが好ましい。
【0058】
さらに、前記ポリエステルアミド酸(B)は、光配向性向上の観点から、光配向性部位及びヒドロキシを有する化合物を含んでいてもよい。
前記ポリエステルアミド酸(B)としては、たとえば下記式(3)および(4)で示される構成単位を有する化合物が挙げられる。
【0059】
【化7】
(式中、R1はテトラカルボン酸二無水物残基であり、R2はジアミン残基であり、R3は多価ヒドロキシ化合物残基である。)
【0060】
1−6.テトラカルボン酸二無水物
本発明で用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、炭素数2〜30の有機酸が挙げられ、その具体例としては、例えば3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4ージカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、及びエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG−100、新日本理化株式会社製)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、例えばシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、例えばエタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(商品名;リカシッドBT−100、新日本理化株式会社製)等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0061】
これらのなかでも透明性の良好な樹脂を与える芳香族テトラカルボン酸に無水物が好ましく、特に3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG−100、新日本理化株式会社製)がより好ましく、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0062】
1−7.ジアミン
本発明で用いられるジアミンとしては、炭素数2〜30のものが挙げられ、その具体例としては、例えば4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のジアミノジフェニルスルホン類、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができる。
【0063】
これらのなかでも透明性の良好な樹脂を与えるジアミノジフェニルスルホン類が好ましく、中でも3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、及びビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンがより好ましく、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0064】
1−8.多価ヒドロキシ化合物
本発明で用いられる多価ヒドロキシ化合物としては、炭素数2〜20のものが挙げられ、その具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の分子量1,000以下のポリエチレングリコール、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等の分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、3,6−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等のジオール類、例えば1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2,10−デカントリオール等のトリオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールA(商品名)、ビスフェノールS(商品名)、ビスフェノールF(商品名)、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0065】
これらのなかでも溶剤への溶解性が良好なエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールが特に好ましい。
【0066】
1−9.1価アルコール
本発明で用いられる1価のアルコールの具体例としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、フェノール、ボルネオール、マルトール、リナロール、テルピネオール、ジメチルベンジルカルビノール、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどを挙げることができる。
【0067】
これらのなかでもイソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好ましい。これらを使用してできるポリエステルアミド酸と、エポキシ樹脂およびエポキシ硬化剤を混合した場合の相溶性や、最終製品である熱硬化性組成物のカラーフィルター上への塗布性を考慮すると、1価のアルコールにはベンジルアルコールの使用がより好ましい。
【0068】
1−10.重合反応に用いる溶剤
ポリエステルアミド酸(B)を得るための重合反応に用いる溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0069】
これらのなかでもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールメチルエチルエーテルが好ましい。
これらの溶剤は単独、または2種以上の混合溶剤として使用できる。また、溶媒の使用量が仕込み量全量に対して30重量%以下の割合であれば上記溶剤以外に他の溶剤を混合して用いることもできる。
【0070】
1−11.光配向性部位及びヒドロキシを有する化合物
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の、光配向性をさらに向上させる観点から、前記ポリエステルアミド酸(B)は、光配向性部位及びヒドロキシを有する化合物を含有してもよい。光配向性部位及びヒドロキシを有する化合物の具体例としては、例えば4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸メチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸メチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシエチルオキシけい皮酸エチルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸エチルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸フェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸フェニルエステル、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシメチルオキシけい皮酸ビフェニルエステル、4−ヒドロキシけい皮酸ビフェニルエステル、けい皮酸8−ヒドロキオクチルエステル、けい皮酸6−ヒドロキシヘキシルエステル、けい皮酸4−ヒドロキシブチルエステル、けい皮酸3−ヒドロキシプロピルエステル、けい皮酸2−ヒドロキシエチルエステル、けい皮酸ヒドロキシメチルエステル等のけい皮酸エステル類、例えば4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)アゾベンゼン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)アゾベンゼン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)アゾベンゼン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)アゾベンゼン、4−ヒドロキシメチルオキシアゾベンゼン、4−ヒドロキシアゾベンゼン等のアゾベンゼン類、例えば4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4−ヒドロキシカルコン、4’−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)カルコン、4’−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)カルコン、4’−(4−ヒドロキシブチルオキシ)カルコン、4’−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)カルコン、4’−(2−ヒドロキシエチルオキシ)カルコン、4’−ヒドロキシメチルオキシカルコン、4’−ヒドロキシカルコン等のカルコン類、例えば7−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)クマリン、7−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)クマリン、7−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、7−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、7−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、7−ヒドロキシメチルオキシクマリン、7−ヒドロキシクマリン、6−ヒドロキシオクチルオキシクマリン、6−ヒドロキシヘキシルオキシクマリン、6−(4−ヒドロキシブチルオキシ)クマリン、6−(3−ヒドロキシプロピルオキシ)クマリン、6−(2−ヒドロキシエチルオキシ)クマリン、6−ヒドロキシメチルオキシクマリン、6−ヒドロキシクマリン等のクマリン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
1−12.ポリエステルアミド酸の製造方法
本発明で用いられるポリエステルアミド酸の製造方法は、テトラカルボン酸二無水物Xモル、ジアミンYモル、及び多価ヒドロキシ化合物Zモルを上記溶剤中で反応させる。このときX、Y及びZはそれらの間に下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような割合に定めることが好ましい。この範囲であれば、ポリエステルアミド酸の溶剤への溶解性が高く、したがって組成物の塗布性が向上し、結果として平坦性に優れた硬化膜を得ることができる。
【0072】
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦1.5 ・・・(2)
(1)式の関係は、好ましくは0.7≦Z/Y≦7.0であり、より好ましくは1.3≦Z/Y≦7.0である。また、(2)式の関係は、好ましくは0.5≦(Y+Z)/X≦0.9であり、更に好ましくは0.7≦(Y+Z)/X≦0.8である。
【0073】
本発明で用いられるポリエステルアミド酸が、分子末端に酸無水物基を有している場合には、必要により、上述した1価アルコールを添加して反応させることができる。1価アルコールを添加して反応することにより得られたポリエステルアミド酸は、エポキシ樹脂およびエポキシ硬化剤との相溶性が改善されるとともに、それらを含む本発明の熱硬化性樹脂組成物の塗布性が改善される。
【0074】
また、上述したシリコン含有モノアミンを分子末端に酸無水物基を有するポリエステルアミド酸と反応させる場合には、得られた塗膜の耐酸性が改善される。更に、1価アルコールとシリコン含有モノアミンを同時にポリエステルアミド酸と反応させることもできる。
【0075】
1−13.シリコン含有モノアミン
本発明で用いられるシリコン含有モノアミンの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、及びm−アミノフェニルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0076】
これらのなかでも塗膜の耐酸性が良好な3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及びp−アミノフェニルトリメトキシシランが好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0077】
反応溶剤は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の合計100重量部に対し100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は40℃〜200℃で、0.2〜20時間反応させるのがよい。シリコン含有モノアミンを反応させる場合には、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の反応が終了した後に、反応液を40℃以下まで冷却した後、シリコン含有モノアミンを添加し、10〜40℃で0.1〜6時間反応させるとよい。また、1価アルコールは反応のどの時点で添加してもよい。
【0078】
反応原料の反応系への添加順序は、特に限定されない。すなわち、(1)テトラカルボン酸二無水物とジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を同時に反応溶剤に加える、(2)ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を反応溶剤中に溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加する、(3)テトラカルボン酸二無水物と多価ヒドロキシ化合物をあらかじめ反応させた後、その反応生成物にジアミンを添加する、または(4)テトラカルボン酸二無水物とジアミンをあらかじめ反応させた後、その反応生成物に多価ヒドロキシ化合物を添加するなどいずれの方法も用いることができる。
【0079】
また、本発明に用いられるポリエステルアミド酸は、酸無水物基を3個以上有する化合物を添加して合成反応を行ってもよい。酸無水物基を3個以上有する化合物の具体例としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。スチレン−無水マレイン酸共重合体を構成する各成分の比率については、スチレン/無水マレイン酸のモル比が0.5〜4、好ましくは1〜3であり、具体的には、0.8〜1.2が好ましい。
【0080】
スチレン−無水マレイン酸共重合体の具体例としては、川原油化株式会社製、SMA3000P、SMA2000P、SMA1000Pなどの市販品を挙げることができる。これらのなかでも耐熱性及び耐アルカリ性が良好なSMA1000Pが特に好ましい。
【0081】
このようにして合成されたポリエステルアミド酸は前記一般式(3)及び(4)からなる構成単位を含み、その末端は原料であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン若しくは多価ヒドロキシ化合物に由来する酸無水物基、アミノ基若しくはヒドロキシであるか、またはこれら化合物以外の添加物がその末端を構成することが好ましい。一般式(3)及び(4)において、R1はテトラカルボン酸二無水物残基であり、好ましくは炭素数2〜30の有機基である。R2はジアミン残基であり、好ましくは炭素数2〜30の有機基である。R3は多価ヒドロキシ化合物残基であり、好ましくは炭素数2〜20の有機基である。
【0082】
得られたポリエステルアミド酸の重量平均分子量は1,000〜500,000であることが好ましく、2,000〜200,000がより好ましい。これらの範囲にあれば、得られる硬化膜の平坦性および耐熱性が良好となる。
【0083】
1−14.その他の成分
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外の他の成分を含有してもよい。このような他の成分として、エポキシ硬化剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤などが挙げられる。
【0084】
1−14−1.エポキシ硬化剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物には、平坦性、耐薬品性を向上させる観点から、エポキシ硬化剤を含有してもよい。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、及び触媒型硬化剤などがあるが、着色及び耐熱性の点から酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0085】
平坦性、耐薬品性の向上を目的としてエポキシ硬化剤を添加する場合、エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤の比率は、エポキシ樹脂100重量部に対し、エポキシ硬化剤1〜13重量部である。好ましくは、5〜13重量部であり、より好ましくは8〜11重量部である。エポキシ硬化剤の添加量について、より詳細には、エポキシ基に対し、エポキシ硬化剤中のカルボン酸無水物基またはカルボキシルが0.1〜1.5倍当量になるよう添加するのが好ましい。このとき、カルボン酸無水物基はカルボキシルを2個生成するとして計算する。カルボン酸無水物基またはカルボキシルが0.15〜0.8倍当量になるよう添加すると平坦性、耐薬品性が一層向上するので、さらに好ましい。
【0086】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、脂肪族ジカルボン酸無水物、芳香族多価カルボン酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体などを挙げることができる。
脂肪族ジカルボン酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物などを挙げることができる。芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物などを挙げることができる。これらのなかでも耐熱性と溶剤に対する溶解性のバランスの点からトリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0087】
1−14−2.カップリング剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、基板との密着性を向上させる観点から、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、1重量%以上であることが耐熱性及び耐溶剤性を向上させる観点から好ましく、他特性とのバランスを考慮すると1〜20重量%であることがより好ましい。
【0088】
カップリング剤としては、シラン系、アルミニウム系及びチタネート系の化合物を用いることができる。具体的には、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名 S510、JNC株式会社製)などのシラン系、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム系、並びにテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなどのチタネート系を挙げることができる。中でもシラン系が好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため特に好ましい。
【0089】
1−14−3.界面活性剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、下地基板への濡れ性、レベリング性、または塗布性を向上させる観点から、界面活性剤を含有してもよい。このような観点から、界面活性剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、0.005〜10重量%であることが好ましく、0.01〜8重量%であることがより好ましく、0.01〜5重量%であることがさらに好ましい。
【0090】
このような界面活性剤としては、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名、共栄社化学工業株式会社製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK346(以上いずれも商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商品名、信越化学工業株式会社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商品名、セイミケミカル株式会社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商品名、株式会社ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商品名、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックF−477(以上いずれも商品名、DIC株式会社製)、デノン1826M、PC−6862、PC−7062C、エリミナ208M(以上いずれも商品名、丸菱油化工業株式会社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、またはアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられ、中でもPC−7062Cが好ましい。
【0091】
1−14−4.酸化防止剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、耐候性の観点から、酸化防止剤を含有してもよい。このような観点から、酸化防止剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜8重量%であることがより好ましく、0.1〜5重量%であることがさらに好ましい。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物が挙げられる。酸化防止剤は、中でもヒンダードフェノール系がより好ましい。
【0092】
酸化防止剤の具体例としては、例えばIrganoxFF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425 WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(以上いずれも商品名、BASFジャパン株式会社製)、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80(以上いずれも商品名、ADEKA株式会社製)等のヒンダードフェノール系が挙げられる。この中でもアデカスタブ AO−60が、透明性、耐熱性、耐クラック性の点からより一層好ましい。
【0093】
1−14−5.溶剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。その際に使用する溶剤は、(A)成分及び(B)成分、必要に応じてその他添加剤を溶解できればよく、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0094】
溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン、γ―ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0095】
これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上の組合せで使用することができる。これら溶剤のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル及び3−エトキシプロピオン酸メチルは、カラーフィルタのオーバーコートの作製ラインで適用可能であり、成膜性が良好で、安全性が高いためより好ましい。
【0096】
1−15.光配向性を有する熱硬化性組成物の保存
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0097】
1−16.塗布液の調整
形成する硬化膜の膜厚により、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を前述した溶剤でさらに希釈して、塗布液を調整してもよい。
【0098】
2.本発明の硬化膜
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、光配向性を有する重合体およびポリエステルアミド酸を混合し、目的とする特性によっては、さらに溶剤、エポキシ硬化剤、カップリング剤及び界面活性剤を必要により選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0099】
上記のようにして調製された、光配向性を有する熱硬化性組成物(溶剤がない固形状態の場合には溶剤に溶解させた後)を、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)等の基体表面に塗布し、例えば加熱などにより溶剤を除去すると、塗膜を形成することができる。基体表面への熱硬化性樹脂組成物の塗布は、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、及びスリットコート法など従来から公知の方法により塗膜を形成することができる。次いでこの塗膜はホットプレート、またはオーブンなどで加熱(プリベーク)される。加熱条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常70〜120℃で、オーブンなら5〜15分間、ホットプレートなら1〜5分間である。その後、塗膜を硬化させるために180〜250℃、好ましくは200〜250℃で、オーブンなら30〜90分間、ホットプレートなら5〜30分間加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0100】
このようにして得られた硬化膜は、加熱時において、1)ポリエステルアミド酸のポリアミド酸部分が脱水環化しイミド結合を形成、2)ポリエステルアミド酸のカルボン酸が光配向性を有する重合体の環状エーテルと反応して高分子量化、及び、3)光配向性を有する重合体が硬化し高分子量化しているため、非常に強靭であり、透明性、耐熱性、耐溶剤性、平坦性、密着性及び耐スパッタ性に優れている。したがって、本発明の硬化膜は、カラーフィルター用の保護膜として用いると効果的であり、このカラーフィルターを用いて、液晶表示素子や固体撮像素子を製造することができる。
【0101】
また、本発明の硬化膜は、カラーフィルター用の保護膜以外にも、TFTと透明電極間に形成される透明絶縁膜や透明電極と配向膜間に形成される透明絶縁膜として用いると効果的である。さらに、本発明の硬化膜は、LED発光体の保護膜として用いても効果的である。
【0102】
さらにまた、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物から得られる液晶配向膜を用いて、光学フィルムを得ることができる。上記光学フィルムは、液晶表示素子のコントラスト向上や視野角範囲の拡大を実現するための光学補償フィルム、パターン化位相差板などの位相差板などに好適である。
【0103】
上記光学フィルムは、一般的に基材と、液晶配向膜と、光学異方性層とを有する。光学異方性層は、重合性液晶性化合物、及びその他必要に応じて添加する各種成分を含有する重合性液晶組成物を、基材上に形成された上記液晶配向膜上に塗布し、液晶性化合物の分子を配向させたのち重合させることにより得ることができる。上記光学異方性層は、液晶性化合物の分子配向によって発現した光学異方性を示す。そのため、この光学フィルムは、例えばパターン化位相差板として好適に使用できる。このような光学フィルムは種々の光デバイス、例えば液晶表示素子に好適に用いることができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[合成例1]光配向性を有する重合体(A1)の合成
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、2−{4−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロペ−1−エン−1−イル]フェノキシ}エチル=2−メチルプロペ−2−エノアート135.00g、グリシジルメタクリレート15.00g、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15.00g、反応溶媒として、シクロペンタノン50.00gを仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。反応液を30℃以下に冷却することにより、光配向性を有する重合体(A1)の25重量%溶液を得た。この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は6,400(ポリスチレン換算)であった。
【0105】
なお、本発明において、重量平均分子量は、カラムオーブンCTD−20A、検出器RID−10A、システムコントローラーCBM−20A、送液ポンプLC−20AD、オートサンプラーSIL−10AF(以上いずれも商品名、株式会社島津製作所製)のGPCシステムを用いて測定した。また、標準のポリスチレンには重量平均分子量が645〜132,900のポリスチレン(例えば、VARIAN社のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010−0102)、カラムにはPLgel MIXED−D(VARIAN社)を用い、移動相としてTHFを使用して、カラム温度35℃、流速1mL/minの条件で測定した。
【0106】
[合成例2]光配向性を有する重合体(A2)の合成
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、2−{4−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロペ−1−エン−1−イル]フェノキシ}エチル=2−メチルプロペ−2−エノアート120.00g、グリシジルメタクリレート30.00g、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)15.00g、反応溶媒として、シクロペンタノン50.00gを仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。反応液を30℃以下に冷却することにより光配向性を有する重合体(A2)の25重量%溶液を得た。この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は7,300(ポリスチレン換算)であった。
【0107】
[合成例3]光配向性を有する重合体(A3)の合成
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、2−{4−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロペ−1−エン−1−イル]フェノキシ}エチル=2−メチルプロペ−2−エノアート100.00g、グリシジルメタクリレート20.00g、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート40.00g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40.00g、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)20.00g、反応溶媒として、シクロペンタノン66.60gを仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。反応液を30℃以下に冷却することにより光配向性を有する重合体(A2)の25重量%溶液を得た。この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は8,100(ポリスチレン換算)であった。
【0108】
[合成例4]光配向性を有する重合体(A4)の合成
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、2−{4−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロペ−1−エン−1−イル]フェノキシ}エチル=2−メチルプロペ−2−エノアート100.00g、グリシジルメタクリレート20.00g、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート80.00g、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)20.00g、反応溶媒として、シクロペンタノン66.60gを仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。反応液を30℃以下に冷却することにより光配向性を有する重合体(A2)の25重量%溶液を得た。この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は7,100(ポリスチレン換算)であった。
【0109】
[合成例5]光配向性を有する重合体(A5)の合成
温度計、攪拌機、原料投入口および窒素ガス導入口を備えた500mlの四つ口フラスコに、2−{4−[(1E)−3−メトキシ−3−オキソプロペ−1−エン−1−イル]フェノキシ}エチル=2−メチルプロペ−2−エノアート100.00g、グリシジルメタクリレート20.00g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン80.00g、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)20.00g、反応溶媒として、シクロペンタノン66.60gを仕込み、90℃の重合温度で2時間加熱して重合を行った。反応液を30℃以下に冷却することにより光配向性を有する重合体(A2)の25重量%溶液を得た。この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は6,800(ポリスチレン換算)であった。
【0110】
[合成例6]ポリエステルアミド酸(B1)の合成
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlの四つ口フラスコに、脱水精製した3−メトキシプロピオン酸メチル(以下「MMP」と略記)446.96g、1,4−ブタンジオール31.93g、ベンジルアルコール25.54g、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下「ODPA」と略記)183.20gを仕込み、乾燥窒素気流下130℃で3時間攪拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(以下「DDS」と略記)29.33g、MMP183.04gを投入し、20〜30℃で2時間攪拌した後、115℃で1時間攪拌、30℃以下に冷却することにより淡黄色透明なポリエステルアミド酸(B1)の30重量%溶液を得た。
この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は4,200(ポリスチレン換算)であった。
【0111】
[合成例7]ポリエステルアミド酸(B2)の合成
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlの四つ口フラスコに、脱水精製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と略記)504.00g、ODPA47.68g、SMA1000P(商品名;スチレン・無水マレイン酸共重合体、川原油化株式会社製)144.97g、ベンジルアルコール55.40g、1,4−ブタンジオール9.23g、脱水精製したジエチレングリコールメチルエチルエーテル(以下「EDM」と略記)96.32gの順に仕込み、乾燥窒素気流下130℃で3時間攪拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、DDS12.72g、EDM29.68gを投入し、20〜30℃で2時間攪拌した後、115℃で1時間攪拌、30℃以下に冷却することにより淡黄色透明なポリエステルアミド酸(B2)の30重量%溶液を得た。
この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は21,000(ポリスチレン換算)であった。
【0112】
[合成例8]ポリエステルアミド酸(B3)の合成
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlの四つ口フラスコに、MMP446.96g、4−(ヒドロキシエチルオキシ)けい皮酸メチルエステル31.93g、1,4−ブタンジオール25.54g、ODPA183.20gを仕込み、乾燥窒素気流下130℃で3時間攪拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、DDS29.33g、MMP183.04gを投入し、20〜30℃で2時間攪拌した後、115℃で1時間攪拌、30℃以下に冷却することにより淡黄色透明なポリエステルアミド酸(B3)の30重量%溶液を得た。
この溶液のGPCで測定した重量平均分子量は3,200(ポリスチレン換算)であった。
【0113】
[実施例1]熱硬化性組成物の製造
合成例1で得られた光配向性を有する重合体(A1)の25重量%溶液(以下では、ポリマー(A1)と呼ぶ)、合成例3で得られたポリエステルアミド酸(B1)の30重量%溶液(以下では、ポリマー(B1)と呼ぶ)、エポキシ硬化剤であるトリメリット酸無水物(以下では、TMAと呼ぶ)、カップリング剤であるS510(商品名、JNC株式会社製)、界面活性剤であるPC−7062C(商品名、丸菱油化工業株式会社製)、溶媒としてシクロペンタノンを下記表1の重量で混合溶解し、メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過して熱硬化性組成物を得た。得られた熱硬化性組成物の組成を表2に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
[実施例2〜11、参考例1]熱硬化性組成物の製造
以下同様にして、表2に示す組成で混合溶解し、実施例2〜11、参考例1の熱硬化性組成物を得た。なお、表2中の括弧内の数字は重量部を表し、A1〜A5はそれぞれ光配向性を有する重合体(A1)〜(A5)の25重量%溶液のことであり、B1〜B3はそれぞれポリエステルアミド酸(B1)〜(B3)の30重量%溶液のことである。
【0116】
【表2】
【0117】
[比較例1〜]熱硬化性組成物の製造
実施例1〜11と同様にして、表3に示す組成で混合溶解し、比較例1〜の熱硬化性組成物を得た。
【0118】
【表3】
【0119】
[評価方法]
1)硬化膜の形成
熱硬化性組成物をガラス基板上及びカラーフィルター基板上に400〜1,200rpmの任意の回転数で10秒間スピンコートした後、ホットプレート上で80℃で3分間プリベークして塗膜を形成させた。その後、オーブンで、230℃で30分間加熱することにより塗膜を硬化させ、膜厚0.5μmの硬化膜を得た。オーブンから取り出した基板を室温まで戻した後、得られた硬化膜の膜厚を測定した。膜厚の測定にはKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計P−15を使用し、3箇所の測定の平均値を硬化膜の膜厚とした。
【0120】
2)平坦性
上記1)で得られた硬化膜付きカラーフィルター基板の硬化膜表面の段差をKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計P−15を用いて測定した。ブラックマトリクスを含むR、G、B画素間での段差の最大値(以下、最大段差と略記)を平坦性の数値とした。また、使用したカラーフィルター基板は、最大段差約1.1μmの樹脂ブラックマトリクスを用いた顔料分散カラーフィルター(以下、CFと略記)である。
【0121】
3)透明性
有限会社東京電色製TC−1800を使用し、硬化膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして、上記1)で得られた硬化膜が形成されている基板の波長400nmでの光透過率を測定した。透過率が95T%以上の場合は良好(G:Good)と、95T%未満の場合は不良(NG:No Good)と判定した。
【0122】
4)耐熱性
上記1)で得られた硬化膜が形成されている基板を230℃のオーブンで1時間加熱し、上記3)と同様に光透過率を測定し、さらに加熱の前後で上記1)と同様に膜厚を測定し、次式から計算した。
(加熱後膜厚/加熱前膜厚)×100(%)
膜厚の変化率が−5%未満の時が良好(G:Good)、加熱後の膜厚の変化率が−5%以上の時は不良(NG:No Good)と判定した。
【0123】
5)耐溶剤性
上記1)で得られた硬化膜が形成されている基板を25℃のN-メチル-2-ピロリドン(以下では、NMPと呼ぶ)に30分間浸漬し、膜厚の変化を測定した。浸漬の前後で上記1)と同様に膜厚を測定し、次式から計算した。
(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚)×100(%)
膜厚の変化率が−5〜5%の時が良好(G:Good)、膨潤により5%を超えたり、溶解により−5%より減少した時は不良(NG:No Good)と判定した。
【0124】
6)光配向性
上記1)で得られた硬化膜表面に、塗布面に対して90°の方向から313nm付近の波長の直線偏光紫外線を500mJ/cm2照射した。この基板上に液晶モノマーからなる位相差材料溶液をスピンコーターを用いて塗布した後、80℃で1分ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚0.5μmの膜を形成した。この基板を365nm換算で、露光量1000mJ/cm2で露光した。偏光UVの313nmでの露光量500mJ/cm2で配向するものは良好(G:Good)、配向しないものは不良(NG:No Good)と判定した。
実施例1〜11の熱硬化性組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
比較例1〜3の熱硬化性重合体脂組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表4に示す。
【0127】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明による光配向性を有する熱硬化性組成物は、光学異方性フィルムや液晶表示素子の液晶配向層の材料として非常に有用であり、更に、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料、特に、位相差フィルム、3Dディスプレイ用のパターン化位相差板、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルターのオーバーコート、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。