特許第5994725号(P5994725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994725
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】新規アルミニウムキレート化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/738 20060101AFI20160908BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20160908BHJP
   B01J 31/14 20060101ALN20160908BHJP
   C08G 77/38 20060101ALN20160908BHJP
   C08G 77/50 20060101ALN20160908BHJP
【FI】
   C07C69/738 ZCSP
   C07F5/06 D
   !B01J31/14 Z
   !C08G77/38
   !C08G77/50
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-104046(P2013-104046)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-224066(P2014-224066A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】片山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−225344(JP,A)
【文献】 特開昭57−010622(JP,A)
【文献】 特開2004−162002(JP,A)
【文献】 特開2001−214268(JP,A)
【文献】 米国特許第03463800(US,A)
【文献】 BOUYAHYI,M. et al.,Aluminum complexes of fluorinated β-diketonate ligands: syntheses, structures, intremolecular reduc,Organometallics,2010年,Vol.29,p.491-500
【文献】 KUMAR,S. and SONIKA,Synthesis, spectral studies and antifungal activity of β-diketonate complexes of bimetallic organot,Asian Journal of Chemistry,2007年,Vol.19, No.5,p.3869-3876
【文献】 ATWOOD,J.L. et al.,Bimetallic aluminium and gallium derivatives of 1,1,1,5,5,5-hexafluoropentane-2,4-dione via selectiv,Journal of the Chemical Society Dalton Transactions,1994年,No.13,p.2019-2021
【文献】 TRUNDLE,C. and BRIERLEY,C.J.,Precursors for thin film oxides by photo-MOCVD,Applied Surface Science,1989年,Vol.36,p.102-118
【文献】 HUDSON,M.D. et al.,Photochemical deposition and characterization of Al2O3 and TiO2,Journal of Materials Research,1988年,Vol.3, No.6,p.1151-1157
【文献】 PICKERING,M. et al.,Kinetics, steric course, and mechanism of stereoisomerization of aluminum β-diketonates,Journal of the American Chemical Society,1976年,Vol.98, No.15,p.4503-4515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3)
【化1】
(式中、R1〜R3は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。R8は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基である。)
で表されるβ−ケトエステル及び、下記式(4)
【化2】
(式中、R9及びR10は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基を示し、同一でも異なっていても良い。R4は、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基である。)
で表されるジケトンを有するアルミニウムキレート化合物。ただし、上記β−ケトエステル(3)の平均配位分子数がアルミニウムに対して、0.5〜2.5、上記ジケトン(4)の平均配位分子数が0.5〜2.5であり、(3)及び(4)の合計した平均配位分子数は3.0である。
【請求項2】
下記式(5)
【化3】
〔式中、R1〜R3は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。R4は水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基を示す。R5〜R7は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。)
で表されるジケトン及び、下記式(6)
【化4】
(式中、R11は炭素原子数1〜12の直鎖一価炭化水素基を示し、R8は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基である。)
で表されるβ−ケトエステルを有するアルミニウムキレート化合物。ただし、上記ジケトン(5)の平均配位分子数がアルミニウムに対して、0.5〜2.5、上記β−ケトエステル(6)の平均配位分子数が0.5〜2.5であり、(5)及び(6)の合計した平均配位分子数は3.0である。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアルミニウムキレート化合物を含有する樹脂の硬化触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アルミニウムキレート化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケト− エノール転位が可能なβ-ジケト化合物は、エノール構造においてアルミニウムと錯化合物を形成することができる。すなわち、β-ジケト基を含む化合物のアルミニウムキレート化合物が生成する。これらのアルミニウムキレート化合物はβ-ジケト化合物中に一般にβ-ジケト基と結合したアルキル基を有するため、多くの有機高分子材料とも親和性を有する。そのため塗料、接着剤、インキ等の有機高分子材料を含む組成物中に利用され、組成物に種々の特性を付与してきた。例えば、室温硬化型樹脂の触媒成分として使用されている。
【0003】
このようなアルミニウムキレート化合物としては、例えば、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)76%イソプロパノール溶液(商品名:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)社製)等が知られており、特許文献1にはこれらアルミニウムキレート化合物の合成方法等が開示されている。しかしながら、これら公知のアルミニウムキレート化合物は一般にシーラント等の硬化触媒としては活性が低く、用途によっては必ずしも最適ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3850969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、室温硬化型樹脂の触媒等の用途に有用な新規アルミニウムキレート化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、以下に示すアルミニウムキレート化合物が上述した課題の解決に有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、次のアルミニウムキレート化合物を提供するものである。
〈1〉下記一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
〔式中、R1〜R3は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。R4は水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基を示す。Aは下記式(2)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R5〜R7は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。)
で示される基又は-OR8
(R8は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基である。)
で示される基である。〕
で表されるβ-ジカルボニル化合物を有するアルミニウムキレート化合物。ただし、上記一般式(1)で表されるβ-ジカルボニル化合物のアルミニウムに対する平均配位数は0.5〜2.5である。
【0012】
〈2〉下記式(3)
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R1〜R3は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。R8は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基である。)
で表されるβ−ケトエステル及び、下記式(4)
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R9及びR10は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基を示し、同一でも異なっていても良い。R4は、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基である。)
で表されるジケトンを有する〈1〉に記載のアルミニウムキレート化合物。ただし、上記β−ケトエステル(3)の平均配位分子数がアルミニウムに対して、0.5〜2.5、上記ジケトン(4)の平均配位分子数が0.5〜2.5であり、(3)及び(4)の合計した平均配位分子数は3.0である。
【0017】
〈3〉下記式(5)
【0018】
【化5】
【0019】
〔式中、R1〜R3は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。R4は水素原子又は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基を示す。R5〜R7は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基又はハロゲン原子を示し、同一でも異なっていても良い。)
で表されるジケトン及び、下記式(6)
【0020】
【化6】
【0021】
(式中、R11は炭素原子数1〜12の直鎖一価炭化水素基を示し、R8は置換若しくは非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基である。)
で表されるβ−ケトエステルを有する〈1〉に記載のアルミニウムキレート化合物。ただし、上記ジケトン(5)の平均配位分子数がアルミニウムに対して、0.5〜2.5、上記β−ケトエステル(6)の平均配位分子数が0.5〜2.5であり、(5)及び(6)の合計した平均配位分子数は3.0である。
【0022】
上記で定義した本発明のアルミニウムキレート化合物は、アルミニウムキレート化合物集合体としての平均の構造が上記の範囲にあれば個々のアルミニウムキレート化合物の間で構造に違いがあってもその集合体は本発明に含まれる。
【0023】
また、本発明は、上記アルミニウムキレート化合物を含有する樹脂の硬化触媒をも提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の新規アルミニウムキレート化合物は、樹脂の硬化触媒として用いると触媒活性に優れており、特に室温硬化型樹脂の硬化触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で得られたアルミニウムキレート化合物の1HNMRチャートである。
図2】実施例2で得られたアルミニウムキレート化合物の1HNMRチャートである。
図3】実施例3で得られたアルミニウムキレート化合物の1HNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の上記アルミニウムキレート化合物は、室温硬化型樹脂の硬化剤として好適な化合物である。
【0027】
ここで前記一般式(1)において、R1〜R7で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基及びt−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。ハロゲン原子としては塩素、フッ素、臭素原子等を挙げることが出来る。これらの基は同一であっても異なっていても良い。本発明においてR1〜R3、R5〜R8としては、メチル基やエチル基、又はフッ素原子が好ましく、R4は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0028】
ここで前記一般式(3)において、R1〜R3で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基及びt−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。ハロゲン原子としては塩素、フッ素、臭素原子等を挙げることが出来る。これらの基は同一であっても異なっていても良い。R8で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基及び、t−ブチル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。本発明においてR1〜R3としては、メチル基、フッ素原子が好ましく、R8はメチル基、エチル基であることが好ましい。
【0029】
ここで前記一般式(4)において、R4、R9、R10で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基及びt−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。これらの基は同一であっても異なっていても良い。本発明においてR10、R11としては、メチル基、エチル基が好ましく、R4は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0030】
ここで前記一般式(5)において、R1〜R7で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基及びt−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。これらの基は同一であっても異なっていても良い。本発明においてR1〜R3、R5〜R7としては、メチル基、エチル基が好ましく、R4は水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0031】
ここで前記一般式(6)において、R11で表される非置換の炭素原子数1〜12の一価直鎖炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基等挙げることができる。R8で表される置換又は非置換の炭素原子数1〜5の一価炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等の直鎖アルキル基、シクロペンチル基等の環状アルキル基及び、t−ブチル基等の分岐状アルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したトリフルオロメチル基、ブロモエチル基、トリクロロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等で置換された基等挙げることができる。本発明においてR11としては、メチル基、エチル基が好ましく、R8はメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0032】
本発明のアルミニウムキレート誘導体は、例えば、次の方法により製造することができる。アルミニウムアルコキシドをトルエン等の適当な溶媒に溶解し、この溶液にβ-ケトエステル、β-ジケトンの順で滴下し、室温で撹拌する。その後、反応液から溶媒や、アルコールを留去すれば目的とするアルミニウムキレート化合物を製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
実施例1
50mlナス型フラスコにアルミニウムトリエトキシド0.81g(5.0mmol)およびトルエン2.0mlを仕込み、撹拌しながら4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル1.58g(10.0mmol)、継いで2,4−ペンタンジオン0.50g(5.0mmol)を滴下した。室温で24時間撹拌した後、生成したエタノールを留出させ、黄色粘稠液体のもので平均構造としてはモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(メチルピバロイルアセトアセテート)キレートであるものを2.20g(収率100%)得た。
【0035】
生成物の平均の構造を確認するために、H−NMRスペクトルの測定を行った(図1)。

H-NMRスペクトル:
δ0.91〜0.98ppm(H比18、−C(O)−C(CH
1.84〜1.92ppm(H比6、−C(O)−CH
3.543.62ppm(H比6、−OCH
4.90〜5.40ppm(H比3、−C(O)CHC(O)−)

H−NMRスペクトルの測定の結果から、ここで得られたものは式(7)の構造のモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(メチルピバロイルアセトアセテート)キレートを平均構造とするものであると考えられる。
【0036】
【化7】
【0037】
実施例2
50mlナス型フラスコにアルミニウムトリエトキシド0.81g(5.0mmol)およびトルエン2.0mlを仕込み、撹拌しながら4,4,4−トリフルオロアセト酢酸エチル1.84g(10.0mmol)、継いで2,4−ペンタンジオン0.50g(5.0mmol)を滴下した。室温で24時間撹拌した後、生成したエタノールを留出させ、黄色粘稠液体のもので平均構造としてはモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート)キレートであるものを2.46g(収率100%)得た。
【0038】
生成物の平均の構造を確認するために1H−NMRスペクトルの測定を行った(図2)。
1H-NMRスペクトル:
1H−NMRスペクトルの測定の結果から、ここで得られたものは式(8)の構造のモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート)キレートを平均構造とするものであると考えられる。
【0039】
【化8】
【0040】
実施例3
50mlナス型フラスコにアルミニウムトリエトキシド0.81g(5.0mmol)およびトルエン2.0mlを仕込み、撹拌しながらアセト酢酸エチル1.30g(10.0mmol)、継いでジピバロイルメタン0.92g(5.0mmol)を滴下した。室温で24時間撹拌した後、生成したエタノールおよびトルエンを留出させ、黄色粘稠液体のもので平均構造としてはモノ(ジピバロイルメタン)アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)キレートであるものを2.34g(収率100%)得た。
【0041】
生成物の平均の構造を確認するために、1 H−NMRスペクトルの測定を行った(図3)。
1H-NMRスペクトル:
1H−NMRスペクトルの測定の結果から、ここで得られたものは式(9)の構造のモノ(ジピバロイルメタン)アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)キレートを平均構造とするものであると考えられる。
【0042】
【化9】
【0043】
実施例4
粘度970mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル−エチレン基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部と、実施例1で調製したモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(メチルピバロイルアセトアセテート)キレート0.5部を湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。調製直後の各組成物をガラスシャーレに押し出し、23℃,50%RHの空気に曝し、24時間放置して得た硬化物の硬さを、JIS K−6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
【0044】
実施例5
粘度970mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル−エチレン基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部と、実施例2で調製したモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチル−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート)キレート0.5部を湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。調製直後の各組成物をガラスシャーレに押し出し、23℃,50%RHの空気に曝し、24時間放置して得た硬化物の硬さを、JIS K−6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
【0045】
実施例6
粘度970mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル−エチレン基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部と、実施例3で調製したモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(メチルピバロイルアセトアセテート)キレート0.5部を湿気遮断下で均一になるまで混合して組成物を調製した。調製直後の各組成物をガラスシャーレに押し出し、23℃,50%RHの空気に曝し、24時間放置して得た硬化物の硬さを、JIS K−6249のデュロメーターA硬度計を用いて測定した。
【0046】
実施例7〜9
実施例4〜6において、分子鎖末端がトリメトキシシリル−エチレン基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部の代わりに、分枝鎖末端がトリメトキシシリル−エタン基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【0047】
比較例1、2
実施例4において、実施例1で合成したアルミニウムキレート化合物0.5部の代わりに、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)76%イソプロパノール溶液(商品名:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)社製)、又はモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルへキシルアセトアセテート)0.5部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【0048】
比較例3、4
実施例7において、実施例1で合成したアルミニウムキレート化合物0.5部の代わりに、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)76%イソプロパノール溶液(商品名:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)社製)、又はモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルへキシルアセトアセテート)0.5部を用いた以外は同様に組成物を調製した。
【0049】
これらの結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果より、実施例1〜3に記載の各アルミニウムキレート化合物は、対応するモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)76%イソプロパノール溶液(商品名:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)社製)、及び特許第3850969号公報例示のモノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルへキシルアセトアセテート)と比べて、硬化性が高いことが明らかである。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3