(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994733
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの評価方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20160908BHJP
【FI】
H01L21/66 P
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-118784(P2013-118784)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-236182(P2014-236182A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 崇
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−345208(JP,A)
【文献】
特開2005−268530(JP,A)
【文献】
特開2004−153262(JP,A)
【文献】
特開2010−238970(JP,A)
【文献】
特開2012−256780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/027
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハ表面にレジストを塗布する際にレジスト膜の厚さが均一となるウェーハを選別するための半導体ウェーハの評価方法であって、
前記半導体ウェーハの重心位置と外形中心位置を算出し、前記重心位置と前記外形中心位置との距離の値によって前記半導体ウェーハを選別し、前記重心位置を、前記半導体ウェーハの厚さ形状から算出することを特徴とする半導体ウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記外形中心位置を、前記半導体ウェーハの外形形状の最小自乗円の中心とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記重心位置と前記外形中心位置との距離の値が5μm以下の前記半導体ウェーハを選別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法を用いて前記半導体ウェーハを選別し、該選別された半導体ウェーハにレジストを塗布することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜の厚さが均一となるウェーハを選別するための半導体ウェーハの評価方法、及び、該半導体ウェーハの評価方法を用いた半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の基板として、一般的に半導体ウェーハ(以下ウェーハ)が用いられる。ウェーハ上へ集積回路のパターンを形成する方法としては、リソグラフィを用いることが一般的である。リソグラフィ工程は、大まかに、ウェーハ表面にレジストを塗布する工程、露光をする工程、現像をする工程に分割できる。
【0003】
ウェーハ表面にレジストを塗布する工程では、一般的にスピンコート法を用いる。スピンコート法とはウェーハ表面にレジストを滴下した後に、ウェーハを1分間あたり数千回程度の回転数にて回転させて、ウェーハ表面全体にレジストを塗布する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ウェーハ表面にレジストを塗布する際には、ウェーハ面内に形成されるレジスト膜の厚さが均一であった方が、その後の露光をする工程において、ウェーハ面内に均一なパターニングをすることが可能となるため、望ましいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−256780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ウェーハ表面へレジストを塗布する工程において、使用するウェーハによってレジスト膜の厚さが不均一となり、レジストを塗布したウェーハの良品の収得率が低くなる場合がある。
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、半導体ウェーハ表面にレジストを塗布する際にレジスト膜の厚さが均一となるウェーハを選別するための半導体ウェーハの評価方法、及び、均一な厚さのレジスト膜を有する半導体ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、半導体ウェーハ表面にレジストを塗布する際にレジスト膜の厚さが均一となるウェーハを選別するための半導体ウェーハの評価方法であって、前記半導体ウェーハの重心位置と外形中心位置を算出し、前記重心位置と前記外形中心位置との距離の値によって前記半導体ウェーハを選別することを特徴とする半導体ウェーハの評価方法を提供する。
このような半導体ウェーハの評価方法であれば、レジストを塗布する工程の前に、レジスト膜の厚さの均一性が高くなる半導体ウェーハを選別することができ、その結果、厚さが均一なレジスト膜を有するウェーハの収得率を向上させることができる。
【0008】
このとき、前記重心位置を、前記半導体ウェーハの厚さ形状から算出することができる。
このようにすれば、半導体ウェーハの重心位置を正確に算出することができる。
【0009】
またこのとき、前記外形中心位置を、前記半導体ウェーハの外形形状の最小自乗円の中心とすることができる。
このようにすれば、正確に外形中心位置を算出することができる。
【0010】
このとき、前記重心位置と前記外形中心位置との距離の値が5μm以下のウェーハを選別することが好ましい。
このようにすれば、さらに厚さの均一性が高いレジスト膜を形成できるウェーハを得ることができる
【0011】
また、本発明によれば、本発明の半導体ウェーハの評価方法を用いて前記半導体ウェーハを選別し、該選別された半導体ウェーハにレジストを塗布することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法を提供する。
このようにすれば、ウェーハ表面のレジスト膜の厚さが均一な半導体ウェーハを安定かつ確実に製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、レジストを塗布する前に、半導体ウェーハの重心位置と外形中心位置を算出し、重心位置と外形中心位置の間の距離の値によって、レジストを塗布する半導体ウェーハを選別することで、ウェーハ表面のレジスト膜の厚さが均一な半導体ウェーハの収得率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の評価方法を説明するフロー図である。
【
図2】実施例において測定したノッチに対して90°方向の厚さ形状の分布の一例を示す図である。
【
図3】実施例において測定したシリコンウェーハの外形形状と、外形形状に対する最小自乗円の一例を示す図である。
【
図4】実施例において測定した重心位置と外形中心位置の距離毎のウェーハの分布を示す図である。
【
図5】実施例、比較例における厚みばらつきが0.5%未満のウェーハの収得率を示す図である。
【
図6】実施例における合格割合と、重心位置と外形中心位置の距離との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
前述のように、ウェーハ表面にレジストを塗布した際に、そのレジスト厚さの面内均一性の良いウェーハの収得率を向上させる方法の開発が待たれていた。
そこで、本発明者は、レジストを塗布する前に、レジストを塗布した際に表面のレジスト膜の厚さが均一になるウェーハを選別できる方法についてウェーハの形状の観点から検討した。
まず、本発明者は、レジストを塗布する際の方法に着目した。上記したように、ウェーハ表面へのレジストの塗布は、一般的にスピンコート法によって、ウェーハを回転させながら行う。
【0015】
本発明者は、スピンコート法でレジストを塗布する際のウェーハの回転に対して、ウェーハ重心位置が重要になると考えた。そこで、ウェーハの外形形状から算出される外形中心位置とウェーハの重心位置との距離を用いて、レジストを塗布するウェーハを選別することに想到し、本発明の半導体ウェーハの評価方法を完成させた。
【0016】
本発明の評価方法について以下、
図1を参照しながら説明する。
まず、レジストを塗布する前の半導体ウェーハを準備する(
図1の(A))。ここで、準備するウェーハとしては、パターン形成のため表面にレジストが塗布されるものであれば、特に限定されない。例えば、シリコンウェーハをはじめ、ゲルマニウムや化合物半導体のウェーハであって良い。
【0017】
次に、半導体ウェーハの重心位置を算出する(
図1の(B))。
このとき、重心位置を、半導体ウェーハの厚さ形状から算出することができる。
以下に算出方法の具体例を説明する。まず、ウェーハの任意の直径方向の直線上の厚さ形状を測定する。次に、ウェーハの半径と測定した厚さ形状とを用いて、モーメントが最小となる、その直線上の重心位置を定める。これを、複数の直径方向の直線上において実施し、それらの結果からウェーハの重心位置を算出する。
このようにすれば、ウェーハの重心位置を正確に算出することができる。
【0018】
次に、半導体ウェーハの外形中心を算出する(
図1の(B))。
このとき、外形中心位置を、半導体ウェーハの外形形状の最小自乗円の中心とすることができる。外形形状及びその最小自乗円は、例えば真円度測定装置を用いて測定することができる。
このような方法であれば、正確な外形中心位置を算出することができる。
この場合、当然、重心位置と外形中心位置は、どちらを先に求めても良い。
【0019】
続いて、上記で求めた重心位置と外形中心位置との距離を求める(
図1の(C))。
そして、重心位置と外形中心位置との距離の値によって半導体ウェーハを選別する(
図1の(D))。この時、例えば、この距離の値が小さい半導体ウェーハを選別することが好ましい。
具体的には、重心位置と外形中心位置との距離の値を5μm以下とすれば、ウェーハ面内におけるレジスト膜の厚さのばらつきを、より確実に抑制することができる。
【0020】
上記、本発明のような半導体ウェーハの評価方法であれば、ウェーハ表面にレジスト膜を形成したい時に、その厚さのばらつきが少ない半導体ウェーハを得ることができる。
【0021】
また、本発明によれば、上記の本発明の半導体ウェーハの評価方法を用いて半導体ウェーハを選別し、該選別された半導体ウェーハにレジストを塗布することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法が提供できる。レジストを塗布する方法としては、例えば、従来と同様にスピンコート法などを用いても良い。
【0022】
このような、半導体ウェーハの製造方法であれば、半導体ウェーハ表面に、レジストを塗布した際、形成されるレジスト膜の厚さが均一な半導体ウェーハを製造することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(実施例)
評価対象の、抵抗率10Ωcm、直径300mmのP型シリコンウェーハを56枚用意した。また、シリコンウェーハの重心位置は以下のように求めた。
まず、シリコンウェーハの厚さ形状の分布を黒田精工社製のナノメトロを用いて測定した。厚さ形状はウェーハ全周に対して12方向(15°刻み)についてそれぞれの直径方向の直線上の厚さ形状の分布を求めた。
図2に、シリコンウェーハのノッチに対して90°方向の厚さ形状の分布の一例を示す。
それぞれの直線上での重心位置を各厚さ形状とシリコンウェーハの半径から求め、各直線上での重心位置からシリコンウェーハの重心位置を算出した。
【0025】
また、シリコンウェーハの外形中心位置を、そのシリコンウェーハの最小自乗円の中心とした。Talor Hobson社製の真円度測定装置タリロンド365を用いて、
図3に示すように、シリコンウェーハの外形形状1、及び、外形形状1に対する最小自乗円2を測定し、最小自乗円2の中心3を決定した。
【0026】
上記で得たシリコンウェーハの重心位置と外形中心位置、すなわち最小自乗円の中心の位置との距離を算出した。上記を、シリコンウェーハ全てに実施し、
図4に重心位置と外形中心位置の距離毎のウェーハの分布を示す。
重心位置と外形中心位置との距離が5μm以下であるシリコンウェーハを40枚選別し、これらのシリコンウェーハにレジストを塗布した。このレジストは、東京応化製のOMR−100を用いた。レジストの塗布は、大日本スクリーン社製のコータデベロッパSK−3000を用いてシリコンウェーハの回転数1000rpm、回転時間25秒の条件にてレジスト膜の厚さ1μm狙いの条件で実施した。
【0027】
塗布したレジスト膜の厚さの面内分布は、フィルメトリクス社製の自動マッピング膜厚測定システムF50で測定した。このときレジスト膜の厚みばらつきが狙い厚さに対して±0.5%未満であるものを合格とした。
図5に示すように、レジスト膜の厚みばらつきが0.5%未満の合格品の収得率は90%となり、後述する比較例の場合よりも高い割合で、レジスト膜厚の均一なウェーハを得ることができた。
【0028】
(比較例)
本発明の評価方法によるシリコンウェーハの選別を実施しないこと以外、実施例と同様な条件で準備したシリコンウェーハ56枚にレジストを塗布し、実施例と同様な方法で合格品の割合を算出した。
図5に示すように、レジスト膜の厚みばらつきが0.5%未満の合格品の収得率は71%となった。
【0029】
準備した56枚について、ウェーハの重心位置と外形中心位置の距離の選別基準を1〜10μmの間で変更した場合の合格品の割合を
図6に示す。その結果、ウェーハの重心位置と外形中心位置の距離の選別を行うことにより、合格品の割合を向上させることができ、特にウェーハの重心位置と外形中心位置の距離が5μm未満のものは極めて高い合格割合を得ることができた。
【0030】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0031】
1…外形形状、2…最小自乗円、3…最小自乗円の中心。