(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶媒(D)が、さらに、環の構成原子として、二重結合を介して酸素原子と結合する炭素原子を1個以上含み、かつエーテル性酸素原子を含んでもよい、脂肪族環式化合物である溶媒(D2)を、前記溶媒(D)の全量に対して、10〜40質量%の割合で含む、請求項1または2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における「(メタ)アクリロイル…」とは、「メタクリロイル…」と「アクリロイル…」の総称である。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル樹脂もこれと同様である。
【0016】
本明細書における式(1)で表される化合物を、化合物(1)という。他の化合物も同様である。
本明細書における「全固形分」とは、ネガ型感光性樹脂組成物が含有する成分のうち、隔壁形成成分をいい、ネガ型感光性樹脂組成物を140℃で24時間加熱して溶媒を除去した、残存物である。具体的には、溶媒(D)等の隔壁形成過程における加熱等により揮発する揮発性成分以外の全成分を示す。なお、全固形分の量は仕込み量からも計算できる。
本明細書においては、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した膜を「塗膜」、それを乾燥させた状態を「膜」、さらに、それを硬化させて得られる膜を「硬化膜」という。ネガ型感光性樹脂組成物が黒色着色剤を含有することから、基板表面を複数の区画に仕切るように形成された硬化膜からなる「隔壁」によって基板表面が区画に仕切られたものを、「ブラックマトリックス」とする。
【0017】
本明細書における「インク」とは、乾燥硬化した後に、例えば光学的、電気的に機能を有する液状組成物を総称するものであり、従来から用いられている着色材料に限定されるものではない。また、上記インクを注入して形成される「画素」についても同様に、隔壁で仕切られた、光学的、電気的な機能を有する区分を表すものとして用いられる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に説明のない場合、%は質量%を表す。
【0018】
[アルカリ可溶性樹脂(A)]
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂(A)は、1分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有する感光性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂(A)が分子中にエチレン性二重結合を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の露光部は、光重合開始剤(B)から発生したラジカルにより重合して硬化する。このように硬化した露光部分はアルカリ現像液にて除去されない。また、アルカリ可溶性樹脂(A)が分子中に酸性基を有することで、アルカリ現像液にて、硬化していないネガ型感光性樹脂組成物の未露光部を選択的に除去することができる。その結果、隔壁を形成することができる。
【0019】
前記酸性基としては、特に制限されないが、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基およびリン酸基等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記エチレン性二重結合としては、特に制限されないが、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基およびビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、該エチレン性二重結合基が有する水素原子の一部または全てが、アルキル基、好ましくはメチル基で置換されていてもよい。
【0020】
アルカリ可溶性樹脂(A)としては、特に限定されないが、酸性基を有する側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖とを有する樹脂(A1−1)、エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂(A1−2)、酸性基を有する側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖とを有する単量体(A1−3)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
樹脂(A1−1)は、例えば、以下の(i)または(ii)の方法で合成できる。
(i)側鎖に酸性基以外の反応性基、例えば、水酸基、エポキシ基等の反応性基を有する単量体と、側鎖に酸性基を有する単量体とを共重合させ、反応性基を有する側鎖と、酸性基を有する側鎖を有する共重合体を得る。次いで、この共重合体と、上記反応性基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる。または、側鎖に酸性基、例えばカルボキシ基等を有する単量体を共重合させた後、酸性基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物を反応後に酸性基が残る量、反応させる。
(ii)上記(i)と同様の酸性基以外の反応性基を側鎖に有する単量体と、この反応性基に対して結合し得る官能基および保護されたエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる。次いで、この単量体と側鎖に酸性基を有する単量体とを共重合させた後、エチレン性二重結合の保護を外す。または、側鎖に酸性基を有する単量体と、側鎖に保護されたエチレン性二重結合を有する単量体とを共重合させた後、エチレン性二重結合の保護を外す。
なお、(i)または(ii)は溶媒中で実施することが好ましい。
これらのうちでも、本発明においては(i)の方法が好ましく用いられる。以下、(i)の方法について具体的に説明する。
【0022】
反応性基として水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
上述の(i)において、反応性基として水酸基を有する単量体を用いる場合、共重合させる酸性基を有する単量体は、特に限定されない。後述のカルボキシ基を有する単量体の他に、リン酸基を有する単量体として、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。水酸基を反応性基として有する単量体と、酸性基を有する単量体との共重合は、従来公知の方法で行うことができる。
【0024】
得られた共重合体と反応させる、水酸基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物としては、エチレン性二重結合を有する酸無水物、イソシアネート基とエチレン性二重結合とを有する化合物、塩化アシル基とエチレン性二重結合とを有する化合物等が挙げられる。
エチレン性二重結合を有する酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、2−ブテン−1−イルサクシニックアンハイドライド等が挙げられる。
イソシアネート基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
塩化アシル基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、(メタ)アクリロイルクロライド等が挙げられる。
【0025】
反応性基としてエポキシ基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられる。
反応性基としてエポキシ基を有する単量体と共重合させる酸性基を有する単量体としては、上記水酸基を反応性基として有する単量体で説明したのと同様の単量体が使用でき、エポキシ基を反応性基として有する単量体と酸性基を有する単量体の共重合についても、従来公知の方法で行うことができる。
【0026】
得られた共重合体と反応させる、エポキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物として、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物が挙げられる。該化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩等が挙げられる。なお、ここで生じた水酸基とカルボン酸の脱水縮合部分が環状構造の一部をなす酸無水物とを反応させ、樹脂(A1−1)中にカルボキシ基を導入してもよい。
【0027】
反応性基としてカルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩等が挙げられる。なお、これらの単量体は上述した酸性基を有する単量体としても用いられる。
【0028】
反応性基としてカルボキシ基を有する単量体を用いる場合、上記の通り該単量体を重合させる。得られた重合体と反応させる、カルボキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物として、エポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物が挙げられる。該化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられる。なお、この場合、カルボキシ基を有する共重合体と反応させる、カルボキシ基に対して結合し得る官能基およびエチレン性二重結合を有する化合物の量は、反応後に重合体においてカルボキシ基が酸性基として側鎖に残る量とする。
【0029】
樹脂(A1−2)は、エポキシ樹脂と、後述するカルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより合成することができる。
具体的には、エポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させることにより、エポキシ樹脂にエチレン性二重結合が導入される。次に、エチレン性二重結合が導入されたエポキシ樹脂に多価カルボン酸またはその無水物を反応させることにより、カルボキシ基を導入することができる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A1−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A1−2b)で表されるエポキシ樹脂、下式(A1−2c)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
【化2】
(式(A1−2a)中、vは、1〜50の整数であり、2〜10の整数が好ましい。またベンゼン環の水素原子はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、または、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基、で置換されていてもよい。)
【0032】
【化3】
(式(A1−2b)中、R
31、R
32、R
33およびR
34は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子または炭素原子数が1〜5のアルキル基であり、wは、0または1〜10の整数である。)
【0033】
【化4】
(式(A1−2c)中、ベンゼン環の水素原子はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、または、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基、で置換されていてもよい。uは、0または1〜10の整数である。)
【0034】
エチレン性二重結合を導入するためにエポキシ樹脂と反応させる、カルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸およびこれらの塩等が好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸が特に好ましい。すなわち、樹脂(A1−2)としては、酸性基が導入されたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させて得られる樹脂のアルコール性水酸基に、多価カルボン酸無水物を反応させることで樹脂(A1−2)が得られる。多価カルボン酸無水物としては、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物を用いることが好ましい。ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物の比率を変化させることにより、分子量を制御することができる。
【0035】
樹脂(A1−2)は、市販品を使用することができる。市販品としては、いずれも商品名で、KAYARAD PCR−1069、K−48C、CCR−1105、CCR−1115、CCR−1159H、CCR−1235、TCR−1025、TCR−1064H、TCR−1286H、ZAR−1535H、ZAR−2001H、ZAR−2002、ZFR−1491H、ZFR−1492H、ZCR−1571H、ZCR−1569H、ZCR−1580H、ZCR−1581H、ZCR−1588H、ZCR−1642H、ZCR−1664H(以上、日本化薬社製)、EX1010(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0036】
単量体(A1−3)としては、2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルフタル酸(NKエステル CBX−1 新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0037】
アルカリ可溶性樹脂(A)としては、現像時の硬化膜の剥離が抑制されて、高解像度のパターンを得ることができる点、ラインの直線性が良好である点、ポストベーク工程後の外観が維持され、平滑な硬化膜の表面が得られやすい点で、樹脂(A1−2)を用いることが好ましい。
【0038】
樹脂(A1−2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、式(A1−2a)〜(A1−2c)で表されるエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂が好ましい。さらに、樹脂(A1−2)としては、酸性基が導入されたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が特に好ましい。
【0039】
アルカリ可溶性樹脂(A)が1分子中に有するエチレン性二重結合の数は、平均3個以上が好ましく、6個以上が特に好ましい。エチレン性二重結合の数が上記範囲の下限値以上であると、露光部分と未露光部分とのアルカリ溶解度に差がつきやすく、より少ない露光量での微細なパターン形成が可能となる。
【0040】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)は、1.5×10
3〜30×10
3が好ましく、2×10
3〜20×10
3が特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、500〜20×10
3が好ましく、1×10
3〜10×10
3が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)が上記範囲の下限値以上であると、露光時の硬化性に優れ、上記範囲の上限値以下であると、現像性が良好である。
アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価は、10〜300mgKOH/gが好ましく、30〜150mgKOH/gが特に好ましい。酸価が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好になる。
【0041】
ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のアルカリ可溶性樹脂(A)の含有割合は、5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好である。
【0042】
[光重合開始剤(B)]
本発明における光重合開始剤(B)としては、光によりラジカルを発生する化合物が特に制限なく用いられる。このような化合物として、具体的には、O−アシルオキシム化合物が挙げられる。例えば、IRGACURE OXE01(BASF社製:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]に相当する。)、アデカオプトマー N−1919、アデカクルーズ NCI−831、NCI−930(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。該O−アシルオキシム化合物のなかでも、少ない露光量においても良好な形状の隔壁を製造できる下式(3)で表される化合物が好ましい。以下、式(3)で表される化合物を光重合開始剤(3)という。光重合開始剤(B)は、光重合開始剤(3)の1種または2種以上を含むことが好ましく、光重合開始剤(3)のみで構成されることが特に好ましい。
【0044】
式(3)中、R
3は、水素原子、R
61またはOR
62を示し、該R
61およびR
62は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、シクロアルカン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基またはベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基を示す。
【0045】
R
4は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基またはベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基、またはシアノ基を示す。
【0046】
R
5は、炭素原子数1〜20のアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基またはベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基を示す。
R
6、R
7、R
8およびR
9は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、R
61、OR
62、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンジルカルボニル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基、炭素原子数1〜20のアミド基を示す。
R
0は、R
61、OR
62、シアノ基またはハロゲン原子を示す。aは0または1〜3の整数である。
【0047】
光重合開始剤(3)のなかでも、以下の態様である化合物が特に好ましい。
R
3としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、または、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜12のフェニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
R
4としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、または、炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
光重合開始剤(3)として、国際公開第2008/078678号に記載のNo.1〜71も使用できる。
【0048】
光重合開始剤(3)のなかでも、以下の態様である化合物が好ましい。
式(3)中、R
5としては、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、等が挙げられる。炭素原子数2〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
R
6、R
8およびR
9としては、水素原子またはニトロ基が好ましい。
R
7としては、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基またはベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンジルカルボニル基またはニトロ基が好ましく、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基、2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル基、2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、1,3,5トリメチルベンジルカルボニル基、ニトロ基が特に好ましい。
R
0の個数を示すaは0である。
【0049】
光重合開始剤(3)の具体例としては、式(3)において、R
3〜R
9がそれぞれ以下の基であり、R
0の個数を示すaは0である化合物(3−1)〜(3−10)等を挙げることができる。
R
3:フェニル基、R
4:オクチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:ベンゾイル基である化合物(3−1)、
R
3:メチル基、R
4:オクチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:ベンゾイル基である化合物(3−2)、
R
3:メチル基、R
4:ブチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:ベンゾイル基である化合物(3−3)、
R
3:メチル基、R
4:ヘプチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:ベンゾイル基である化合物(3−4)、
R
3:フェニル基、R
4:オクチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチルベンゾイル基である化合物(3−5)、
R
3:メチル基、R
4:オクチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチルベンゾイル基である化合物(3−6)、
R
3:メチル基、R
4:メチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチルベンゾイル基である化合物(3−7)、
R
3:メチル基、R
4:メチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基である化合物(3−8)、
R
3:メチル基、R
4:メチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル基である化合物(3−9)、
R
3:メチル基、R
4:メチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基である化合物(3−10)
【0050】
光重合開始剤(3)は市販品を使用することができる。市販品としては、いずれも商品名で、IRGACURE OXE02(BASF社製:上記化合物(3−7)に相当する。)等が挙げられる。
【0051】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の光重合開始剤(B)の割合は1〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましく、3〜6質量%が特に好ましい。また、光重合開始剤(B)における光重合開始剤(3)の割合は、50〜100質量%が好ましく、75〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。全固形分中の光重合開始剤(B)の割合および光重合開始剤(B)中の光重合開始剤(3)の割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が良好で、塗膜形成後、露光工程および現像工程を経て得られる隔壁やブラックマトリックスにおいてラインパターンや線幅を露光時のマスクパターンに近い形状に形成することができる。
【0052】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において光重合開始剤(B)が、光重合開始剤(3)とともに含有してもよい光重合開始剤としては、以下の光重合開始剤が挙げられる。
【0053】
光重合開始剤(3)と併用してもよい光重合開始剤としては、メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物;アシルホスフィンオキシド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物;トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類;2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,4−ブタノールビス(3−メルカプトブチレート)、トリス(2−メルカプトプロパノイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール化合物等が挙げられる。
【0054】
[黒色着色剤(C)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、その全固形分に対して20質量%超の割合で黒色着色剤(C)を含有する。
黒色着色剤(C)としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料、具体的には、C.I.ピグメントブラック1、6、7、12、20、31等が挙げられる。黒色着色剤(C)としては、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料等の有機顔料や無機顔料の混合物を用いることもできる。有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー15:6、ピグメントレッド254、ピグメントグリーン36およびピグメントイエロー150が挙げられる。黒色着色剤(C)としては、電気特性の点から有機顔料が好ましく、価格および遮光性の点からはカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは樹脂等で表面処理されているのが好ましく、また、色調を調整するため、青色顔料や紫色顔料を併用することができる。なお、有機EL素子の画素部に用いられる隔壁においては、良好な電気特性とコントラスト向上の点から有機顔料が好ましい。
【0055】
有機顔料としては、ブラックマトリックスの形状の観点から、BET法による比表面積が50〜200m
2/gであるものが好ましい。比表面積が50m
2/g以上であると、ブラックマトリックス形状が劣化しにくい。200m
2/g以下であると、有機顔料に分散助剤が過度に吸着することなく、諸物性を発現させるために多量の分散助剤を配合する必要がなくなる。
【0056】
また、有機顔料の透過型電子顕微鏡観察による平均1次粒子径は、20〜150nmであることが好ましい。平均1次粒子径が20nm以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物で高濃度に分散でき、経時安定性の良好なネガ型感光性樹脂組成物が得られやすい。150nm以下であると、ブラックマトリックス形状が劣化しにくい。また、透過型電子顕微鏡観察による平均2次粒子径としては、80〜200nmが好ましい。
【0057】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の黒色着色剤(C)の含有割合は、上記の通り20質量%超である。含有割合を20質量%超とすることで、得られる隔壁およびブラックマトリックスの光の遮光性を示す値である光学濃度(OD)を充分に確保し、隔壁およびブラックマトリックスを用いて作製されるカラーフィルタ等の高コントラスト化が可能となる。黒色着色剤(C)の含有割合は、20〜65質量%が好ましく、25〜65質量%が特に好ましい。上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が良好になり、良好な外観の硬化膜が得られる。
【0058】
黒色着色剤(C)のネガ型感光性樹脂組成物における分散性を向上するためには、高分子分散剤を含有させることが好ましい。該高分子分散剤は、黒色着色剤(C)への親和性の点から、塩基性官能基を有する化合物が好ましい。該塩基性官能基として、1級、2級もしくは3級アミノ基を有すると、特に分散性に優れる。
高分子分散剤としては、ウレタン系、ポリイミド系、アルキッド系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、メラミン系、フェノール系、アクリル系、塩化ビニル系、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系、ポリアミド系、ポリカーボネート系等の化合物が挙げられる。中でも特にウレタン系、ポリエステル系の化合物が好ましい。
高分子分散剤の使用量は、黒色着色剤(C)に対して5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。使用量が上記範囲の下限値以上であると、黒色着色剤(C)の分散が良好になり、上記範囲の上限値以下であると、現像性が良好になる。
【0059】
[溶媒(D)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒(D)を含有する。また、溶媒(D)は、下式(1)で表される化合物である溶媒(D1)を前記溶媒(D)の全量に対して、20〜100質量%の割合で含有する。
R
1O(C
2H
4O)
2R
2 (1)
式(1)中、R
1はメチル基を示し、R
2は炭素原子数が2または3のアルキル基を示す。
【0060】
溶媒(D)は、ネガ型感光性樹脂組成物が含有する上記アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色着色剤(C)および必要に応じて含有する任意成分と、反応性を有しない化合物で構成される。かつ、溶媒(D)は、これらの各固形成分を、特に黒色着色剤(C)を全固形分に対して20質量%超の割合で含有する組成においても、均一に溶解または分散させて適度な粘度とし、隔壁が形成される基材へのネガ型感光性組成物の塗布を均一かつ効率的にする機能を有する。さらに、溶媒(D)は、ネガ型感光性樹脂組成物に、それ自体の乾燥固化物を同じ組成物で溶解させる性質、すなわち再溶解性を付与する機能を有する。
【0061】
ネガ型感光性樹脂組成物における溶媒(D)の含有割合は、ネガ型感光性樹脂組成物の組成や用途、これを用いて基板表面に隔壁等を形成する際の塗工方法等により異なるが、ネガ型感光性樹脂組成物中に50〜99質量%の割合で配合されるのが好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%が特に好ましい。
【0062】
ネガ型感光性樹脂組成物における再溶解性は、特に、該組成物の基板表面への塗布をスリットコート法で行う場合に有することが求められる性質である。スリットコート法では、繰り返し使用するうちにスリットノズルに付着、残留したネガ型感光性樹脂組成物が乾燥固化して突起を形成し、塗工においてノズルの進行方向に対して筋が発生したり、乾燥固化物が落下して塗膜に異物が混入したりする問題があり、これらを防止するためにネガ型感光性樹脂組成物が再溶解性を有することが求められている。
また、ネガ型感光性組成物の塗布を均一かつ簡便にするために好適な粘度としては、用いる塗工方法により異なる。塗工方法としてスリットコート法を用いる場合、塗布速度にもよるが、ネガ型感光性組成物の粘度は3.5mPa・s未満が好ましく、特に好ましくは3mPa・s未満である。下限値は1mPa・s以上である。
【0063】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、溶媒(D)が、上記化合物(1)である溶媒(D1)を上記割合で含有することで、黒色着色剤(C)を高濃度に含有しながら、スリットコート法において必要とされるネガ型感光性樹脂組成物の粘度と再溶解性を確保することを可能としている。
化合物(1)は、式(1)中の−O−C
2H
4−O−C
2H
4−O−の構造が親水性を有することで、親水性を有するアルカリ可溶性樹脂(A)に対する溶解性を良好なものとしている。また、R
1、R
2で示される末端基は、一方(R
1)がメチル基であり、他方(R
2)が、炭素原子数が2または3のアルキル基、すなわち、エチル基、プロピル基、イソプロピル基のいずれかである。R
1、R
2で示される末端基は適度な親油性を有する。化合物(1)は上記親油性基を有する構造と上記親水性の構造とを併せ持つことで、両親媒性を有する化合物である。
【0064】
化合物(1)としては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルが挙げられる。なかでも、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルおよびジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが特に好ましい。
【0065】
ここで、化合物(1)の沸点は176〜200℃の範囲にあり、粘度は1〜1.5mPa・sの範囲にある。ネガ型感光性樹脂組成物をスリットコート法で塗工する際には、塗工時にスリットノズルで該組成物が乾燥固化しないように、用いる溶媒の沸点は150℃以上が好ましい。また、生産性から塗布後の塗膜の乾燥速度は速い方が好ましく、用いる溶媒の沸点の上限は220℃程度が好ましい。また、スリットコート法に用いるネガ型感光性樹脂組成物について、用いる溶媒としては、用いる固形成分の粘度や固形成分に対する溶媒の量にもよるが、溶媒の粘度としては2.5mPa・s以下であることが好ましい。化合物(1)については、このようなスリットコート法に用いるネガ型感光性樹脂組成物において溶媒に求められる沸点および粘度の特性についても満たす化合物である。
【0066】
溶媒(D1)としては、化合物(1)から選ばれる1種を用いても2種以上を併用してもよい。溶媒(D1)の溶媒(D)中の含有量は20〜100質量%であり、30〜90質量%が好ましく、30〜80質量%が特に好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物における溶媒(D)の含有量を上記範囲とし、溶媒(D)の全量に対する溶媒(D1)の含有量を上記範囲にすることで、上記アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)等とともに全固形分に対して20質量%超という高濃度に黒色着色剤(C)を含有するネガ型感光性樹脂組成物において、再溶解性に優れ、スリットコート法で塗布した塗膜において欠陥の発生が抑制され、さらにスリットコート法による塗布が可能な粘度を有するネガ型感光性樹脂組成物が得られる。
【0067】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒(D)として、溶媒(D1)と共に、環の構成原子として、二重結合を介して酸素原子と結合する炭素原子を1個以上含み、かつ酸素原子を含んでもよい、脂肪族環式化合物(D2−1)である溶媒(D2)を併用することが好ましい。溶媒(D)の全量に対する溶媒(D2)の割合は、10〜40質量%が好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。
【0068】
脂肪族環式化合物(D2−1)の環の員数は、沸点および融点の観点から、3〜7が好ましく、5員環または6員環が特に好ましい。脂肪族環式化合物(D2−1)における環を構成する原子は炭素原子またはエーテル性酸素原子であるが、エーテル性酸素原子の数は0であってもよい。また、炭素原子数>エーテル性酸素原子数の関係にある。環を構成する炭素原子のうち少なくとも1個は、二重結合を介して1個の酸素原子と結合する。環を構成する炭素原子のうち、二重結合を介して酸素原子と結合していないものは全て2個の水素原子と結合する。
【0069】
以下、環を構成する炭素原子とこれに二重結合で結合する酸素原子とからなる基を、「環を構成するカルボニル基」という。脂肪族環式化合物(D2−1)において、環を構成するカルボニル基の数としては、1個以上であればよく、1個が好ましい。
【0070】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、溶媒(D)として、溶媒(D1)と併せて溶媒(D2)を用いることで、ネガ型感光性樹脂組成物の再溶解性をさらに向上させることができる。溶媒(D2)である脂肪族環式化合物(D2−1)は、極性基であるカルボニル基を有し、末端アルキル基を有さないため親水性が高いことから、親水性であるアルカリ可溶性樹脂(A)に対する溶解性を良好にできる。ただし、脂肪族環式化合物(D2−1)は、上記化合物(1)に比べて高粘度であることから、得られるネガ型感光性樹脂組成物の粘度を適正なものとするために、溶媒(D)において上記配合量で用いることが好ましい。
【0071】
脂肪族環式化合物(D2−1)としては、環状エステル、環状ケトン等が挙げられる。
環状エステルとしては、α−アセトラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類が挙げられる。環状ケトンとしては、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等のシクロアルカノンが挙げられる。
【0072】
なかでも、溶媒(D2)としては、入手容易性と沸点の点からシクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
溶媒(D2)としては、上記脂肪族環式化合物(D2−1)から選ばれる1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒(D)として、上述の溶媒(D1)および溶媒(D2)以外の溶媒(D3)を必要に応じて含有してもよい。溶媒(D3)としては、上記アルカリ可溶性樹脂(A)や以下の撥インク剤(E)の合成に使用した溶媒等が、アルカリ可溶性樹脂(A)や撥インク剤(E)とともにネガ型感光性樹脂組成物に配合される場合の溶媒等が挙げられる。
【0074】
なお、上記アルカリ可溶性樹脂(A)や撥インク剤(E)の合成に使用する溶媒としては、上記溶媒(D1)や溶媒(D2)を用いる場合もある。ネガ型感光性樹脂組成物がこれら配合成分由来の溶媒(D1)や溶媒(D2)を含有する場合には、それぞれについて、これらを含む溶媒(D1)および溶媒(D2)の各総量により算出される、溶媒(D)における溶媒(D1)および溶媒(D2)の含有量がそれぞれ上記範囲となるように調整すればよい。
【0075】
溶媒(D3)としては、上記溶媒(D1)および必要に応じて用いられる溶媒(D2)とともに用いて、溶媒(D)としての上記機能を阻害しないものであれば特に制限されない。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)や撥インク剤(E)をその合成に用いた溶媒と共にネガ型感光性樹脂組成物に配合する場合には、合成時に用いる溶媒として溶媒(D)としての上記機能を阻害しない溶媒を選択することが好ましい。
【0076】
溶媒(D3)としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類;メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、シクロヘキサノールアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等が挙げられる。
【0077】
溶媒(D)における溶媒(D3)の含有量は、溶媒(D)の全量から溶媒(D1)および溶媒(D2)の量を引いた量であり、具体的には、溶媒(D)の全量に対して1〜70質量%の割合が好ましく、20〜70質量%が特に好ましい。
【0078】
なお、溶媒(D)の具体的な態様として、溶媒(D1)のみで構成される、溶媒(D1)と溶媒(D2)および/または溶媒(D3)で構成される態様が挙げられる。溶媒(D)が溶媒(D1)と溶媒(D2)で構成される場合の好ましい配合割合(質量比)として、溶媒(D1):溶媒(D2)=85:15〜70:30が挙げられる。溶媒(D)が溶媒(D1)と溶媒(D3)で構成される場合の好ましい配合割合(質量比)として、溶媒(D1):溶媒(D3)=30:70〜80:20が挙げられる。また、溶媒(D)が溶媒(D1)、溶媒(D2)、および溶媒(D3)で構成される場合の好ましい配合割合(質量比)として、溶媒(D1):溶媒(D2):溶媒(D3)=30〜80:10〜30:0〜60が挙げられる。
【0079】
[撥インク剤(E)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、任意成分として、撥インク剤(E)を含有してもよい。撥インク剤(E)としては、例えば、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素原子数1〜20のアルキル基(ただし、該アルキル基は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。)および/または下式(4)で表される基を含む重合体(E1)等が挙げられる。
【0081】
(式(4)中、R
11およびR
12は、それぞれ独立してメチル基またはフェニル基を表す。nは1〜200の整数を示す。)
【0082】
撥インク剤(E)としては、重合体(E1)の1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ネガ型感光性樹脂組成物に撥インク剤(E)を配合すれば、これを用いて作製される隔壁やブラックマトリックスの上部表面に撥インク性を付与することができる。隔壁やブラックマトリックスで区分された領域(ドット)にインクジェット法でインクを注入し画素を形成する際の、隣り合うドット間でのインクの混色を防ぐことができる。
【0083】
重合体(E1)の数平均分子量(Mn)は、1,500〜50,000が好ましく、10,000〜50,000が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が上記範囲であると、アルカリ溶解性、現像性が良好である。重合体(E1)がフッ素原子を含有する場合の、重合体(E1)におけるフッ素原子の含有率は、撥インク性と隔壁成形性の点から、5〜35質量%が好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。また、重合体(E1)がケイ素原子を含有する場合の、重合体(E1)におけるケイ素の含有率は、撥インク性と隔壁成形性の点から、0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
【0084】
重合体(E1)は側鎖に、3〜100個/分子の割合で、エチレン性二重結合を有することが好ましい。重合体(E1)が側鎖にエチレン性二重結合を有する場合、その割合は6〜30個/分子が特に好ましい。エチレン性二重結合を有することにより重合体(E1)は、ネガ型感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂(A)にラジカル重合して隔壁上部に固定化されることが可能となる。
【0085】
さらに重合体(E1)は、酸性基、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基およびスルホ基の群から選ばれる少なくとも1つの酸性基を有することが好ましい。その理由は、アルカリ可溶性を有することで、基材上の隔壁やブラックマトリックスで区分された領域(ドット)内に上記撥インク性を有する重合体(E1)が残りにくく、インクを注入した際のインクの濡れ拡がり性が良好となるからである。このような観点から、重合体(E1)の酸価は10〜400mgKOH/gであることが好ましく、20〜300mgKOH/gが特に好ましい。
【0086】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の撥インク剤(E)の含有割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物により形成される隔壁やブラックマトリックスの上部表面に充分な撥インク性が付与される。上記範囲の上限値以下であると、隔壁やブラックマトリックスと基材との密着性が良好になる。
【0087】
[架橋剤(F)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、ラジカル硬化を促進する任意成分として、架橋剤(F)を含んでもよい。架橋剤(F)としては、1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物が好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物が架橋剤(F)を含むことにより、露光時におけるネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が向上し、少ない露光量でも隔壁を形成することができる。
【0088】
架橋剤(F)としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、ウレタンアクリレート等が挙げられる。光反応性の点から多数のエチレン性二重結合を有することが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
架橋剤(F)としては、市販品を使用することができる。市販品としては、KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)、NKエステル A−9530(商品名、新中村化学工業社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物))、NKエステ A−9300(商品名、新中村化学工業社製、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)、NKエステル A−9300−1CL(商品名、新中村化学工業社製、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート)、BANI−M(商品名、丸善石油化学社製、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン)、BANI−X(商品名、丸善石油化学社製、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド))等が挙げられる。ウレタンアクリレートとしては、日本化薬社製のKAYARAD UXシリーズが挙げられ、具体的商品名としては、UX−3204、UX−6101、UX−0937、DPHA−40H、UX−5000、UX−5002D−P20等が挙げられる。
【0090】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の架橋剤(F)の含有割合は、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ現像性が良好となる。
【0091】
[微粒子(G)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、微粒子(G)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が微粒子(G)を含むことにより、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる隔壁は熱垂れが防止された耐熱性に優れる隔壁となる。
微粒子(G)としては、各種無機系、有機系の微粒子が使用可能であるが、塩基性高分子分散剤を吸着能の点から、マイナスに帯電しているものが好ましく用いられる。
【0092】
無機系としては、シリカ、ジルコニア、フッ化マグネシウム、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等が挙げられる。有機系としては、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。耐熱性を考慮すると、無機系微粒子が好ましく、入手容易性や分散安定性を考慮すると、シリカ、またはジルコニアが特に好ましい。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物の露光感度を考慮すると、微粒子(G)は、露光時に照射される光を吸収しないことが好ましく、超高圧水銀灯の主発光波長であるi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を吸収しないことが特に好ましい。
微粒子(G)の粒子径は、隔壁の表面平滑性が良好となることから、平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、200nm以下が特に好ましい。
【0093】
微粒子(G)としてはシリカが好ましい。シリカとしては、コロイダルシリカが好ましい。一般にコロイダルシリカとしては、水に分散されたシリカヒドロゾル、水が有機溶媒に置換されたオルガノシリカゾルがあるが、有機溶媒を分散媒として用いたオルガノシリカゾルが好ましい。
このようなオルガノシリカゾルとしては、市販品を用いることが可能であり、市販品としては、いずれも日産化学工業社製の商品名で、PMA−ST(シリカ粒子径:10〜20nm、シリカ固形分:30質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:70質量%。)、NPC−ST(シリカ粒子径:10〜20nm、シリカ固形分:30質量%、n−プロピルセロソルブ:70質量%。)、IPA−ST(シリカ粒子径:10〜20nm、シリカ固形分:30質量%、イソプロピルアルコール(2−プロパノール):70質量%。)等を挙げることができる。
【0094】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の微粒子(G)の含有割合は、5〜35質量%が好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ポストベークによる隔壁の熱垂れが防止され、上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物の貯蔵安定性が良好になる。
【0095】
[シランカップリング剤(H)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤(H)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物がシランカップリング剤(H)を含むことで、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材密着性を向上させることができる。
シランカップリング剤(H)としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。これらは1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0096】
シランカップリング剤(H)としては、市販品を使用することができる。市販品としては、KBM5013(商品名、信越化学社製、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0097】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のシランカップリング剤(H)の含有割合は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材密着性が向上する。
【0098】
[熱硬化剤(I)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、熱硬化剤(I)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が熱硬化剤(I)を含むことで、隔壁の耐熱性および耐透水性を向上させることができる。
熱硬化剤(I)としては、アミノ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物、ポリカルボジイミド化合物、2個以上のオキサゾリン基を有する化合物、2個以上のアジリジン基を有する化合物、多価金属類、2個以上のメルカプト基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、形成された隔壁の耐薬品性が向上する点から、アミノ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する化合物または2個以上のオキサゾリン基を有する化合物が特に好ましい。
【0099】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の熱硬化剤(I)の含有割合は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0100】
[リン酸化合物(J)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、リン酸化合物(J)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物がリン酸化合物(J)を含むことで、基材との密着性を向上させることができる。
リン酸化合物しては、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0101】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のリン酸化合物(J)の含有割合は、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜1質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材との密着性が良好となる。
【0102】
[界面活性剤(K)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤(K)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が界面活性剤(K)を含むことで、硬化膜の厚さが均一になる。
上述した撥インク剤(E)は、通常、界面活性剤としての作用も有する。インクジェット法以外の方法で画素形成を行うような光学素子用の隔壁を形成するネガ型感光性樹脂組成物は、通常、撥インク剤を含有しないため、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤(K)としては、撥インク剤(E)と同様な重合体を用いてもよく、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤等が挙げられる。
【0103】
界面活性剤(K)は市販品を用いてもよい。いずれもビックケミー・ジャパン社製の商品名で、BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン:12質量%、キシレン:68質量%、モノフェニルグリコール:20質量%)、BYK−307(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK−323(アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン)、BYK−320(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン:52質量%、ホワイトスピリット:43質量%、PGMEA:5質量%)、BYK−350(アクリル系共重合物)等が挙げられる。
【0104】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の界面活性剤(K)の含有割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物の膜の厚さの均一性が良好となる。
【0105】
[その他の添加剤]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、硬化促進剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0106】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、全固形分に対して20質量%超の割合の黒色着色剤(C)、および溶媒(D)を含有する。さらに、必要に応じて、撥インク剤(E)、架橋剤(F)、微粒子(G)、シランカップリング剤(H)、熱硬化剤(I)、リン酸化合物(J)、界面活性剤(K)およびその他の添加剤を含有してもよい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を製造する方法としては、特に制限されず、上記各成分の所定量を秤量し一般的な方法により混合することで製造できる。
【0107】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、通常のネガ型感光性樹脂組成物と同様にフォトリソグラフィ等の材料として用いられ、得られた硬化膜は隔壁として、特に高濃度で黒色着色剤を含有する遮光性が高いブラックマトリックスとして、通常のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜が用いられる光学素子の部材として、使用することが可能である。上記固形成分に加えて、溶媒(D)として化合物(1)である溶媒(D1)を配合した本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、高濃度に黒色着色剤を含有しながら再溶解性に優れ、さらにスリットコート法による塗布が可能な粘度を有するものである。
したがって、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、基材上に隔壁等の硬化膜を形成する際のネガ型感光性樹脂組成物の塗工においてスリットコート法を用いる場合に、好適な粘度を有し、さらにスリットノズル周辺の乾燥固化物に起因する不具合等を解消できることから、特にスリットコート法を用いた塗工から硬化膜を形成するのに好適である。
【0108】
(ネガ型感光性樹脂組成物の好ましい組み合わせ)
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、用途や要求特性に合わせて組成と配合比を適宜選択することが好ましい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における各種配合成分の好ましい組成を以下に示す。
【0109】
<組み合わせ1>
アルカリ可溶性樹脂(A):ビスフェノールA型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、上記式(A1−2a)〜(A1−2c)で表されるエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に10〜60質量%、
【0110】
光重合開始剤(B):O−アシルオキシム系化合物であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に3〜6質量%、
黒色着色剤(C):カーボンブラック、有機顔料から選ばれる少なくとも1つの着色剤であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に25〜65質量%、
溶媒(D):該溶媒(D)の全量に対して、溶媒(D1)を30〜80質量%、溶媒(D3)としてPGMEAを20〜70質量%それぞれ含有する、溶媒(D)をネガ型感光性樹脂組成物中に65〜90質量%、
架橋剤(F):1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に5〜40質量%、
界面活性剤(K):フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびアクリル系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つの界面活性剤であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に0.05〜20質量%。
【0111】
<組み合わせ2>
アルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、黒色着色剤(C)、架橋剤(F)および界面活性剤(K)は組み合わせ1と同様であり、溶媒(D)が以下である。
溶媒(D):該溶媒(D)の全量に対して、溶媒(D1)を30〜80質量%、溶媒(D2)を10〜30質量%、溶媒(D3)としてPGMEAを0〜60質量%それぞれ含有する、溶媒(D)をネガ型感光性樹脂組成物中に65〜90質量%。
【0112】
[隔壁およびその製造方法]
本発明の隔壁は、基板表面に区画を設けるために形成される隔壁であって、上記本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜からなる。本発明の隔壁は、光学素子の用途に好適に用いられ、上記ネガ型感光性樹脂組成物が黒色着色剤(C)を含有することから、得られる隔壁は、ブラックマトリックスとしての適用が可能である。
【0113】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、黒色着色剤(C)を高濃度に含有することから、該ネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁すなわちブラックマトリックスは、高い遮光性、具体的には、光学濃度(OD)が2.5以上となる高い遮光性を有する。本発明においては、さらに条件を調整することにより光学濃度(OD)が3以上のブラックマトリックスの提供も可能である。光学濃度(OD)が2.5以上、特に3以上のブラックマトリックスであれば、例えば、これを用いて製造されるカラーフィルタの高コントラスト化に充分寄与できる。
本発明の隔壁は、例えば、基板表面に複数の画素と隣接する画素間に位置する隔壁とを有する光学素子用の隔壁(ブラックマトリックス)に適用される。
【0114】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて本発明の光学素子用の隔壁(ブラックマトリックス)を製造する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0115】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を上記基板表面に塗布して塗膜を形成し(塗膜形成工程)、次いで、上記塗膜を乾燥して膜とし(乾燥工程)、次いで、上記膜の隔壁となる部分のみを露光して光硬化させ(露光工程)、次いで、上記光硬化した部分以外の膜を除去して上記膜の光硬化部分からなる隔壁を形成させ(現像工程)、次いで、必要に応じて上記形成された隔壁等をさらに熱硬化させる(ポストベーク工程)ことにより、本発明の光学素子用の隔壁(ブラックマトリックス)が製造できる。また、現像工程とポストベーク工程の間に、上記形成された隔壁等をさらに光硬化させる(ポスト露光工程)を入れてもよい。
【0116】
基板の材質は特に限定されるものではないが、各種ガラス板;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性プラスチックシート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂の硬化シート等を使用できる。特に、耐熱性の点からガラス板、ポリイミド等の耐熱性プラスチックが好ましい。また、ポスト露光を、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から行うこともあるため、透明基板であることが好ましい。
基板のネガ型感光性樹脂組成物の塗布面は、塗布前に予めアルコール洗浄、紫外線/オゾン洗浄等で洗浄することが好ましい。
【0117】
(塗膜形成工程)
塗布方法としては、膜厚が均一な塗膜が形成される方法であれば特に制限されず、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法等、通常の塗膜形成に用いられる方法が挙げられる。特に大面積に一度に塗布できるスリットコート法が好ましい。
上記の通り、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は高濃度に黒色着色剤(C)を含有しながら、化合物(1)である溶媒(D1)を含む溶媒(D)を用いることで、再溶解性に優れ、さらにスリットコート法による塗布が可能な粘度を有するものである。よって、スリットノズル周辺の乾燥固化物に起因する不具合等を解消でき、さらに、適度な粘度により塗工自体も負荷なく行えることから、生産性のよい塗工が可能であり、特にスリットコート法を用いた塗工から硬化膜を形成するのに好適である。
塗膜の膜厚は最終的に得られる隔壁の高さとネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度を勘案して決められる。塗膜の膜厚は、最終的に得られる隔壁(ブラックマトリックス)の高さの500〜2,000%が好ましく、550〜1,000%が特に好ましい。塗膜の膜厚は0.3〜100μmが好ましく、1〜50μmが特に好ましい。
【0118】
(乾燥工程)
上記塗膜形成工程で基板表面に形成された塗膜を乾燥し、膜を得る。乾燥によって、塗膜を構成するネガ型感光性樹脂組成物に含まれる溶媒を含む揮発成分が揮発、除去され、粘着性のない膜が得られる。
【0119】
乾燥の方法としては、真空乾燥や加熱乾燥(プリベーク)が好ましい。また、膜外観のムラを発生させず、効率よく乾燥させるために、真空乾燥と加熱乾燥を併用することがより好ましい。
真空乾燥の条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、10〜500Paで10〜300秒間行うことが好ましい。
加熱乾燥は、基板とともに塗膜をホットプレート、オーブン等の加熱装置により、50〜120℃で10〜2,000秒間行うことが好ましい。
【0120】
(露光工程)
得られた膜の一部に所定パターンのマスクを介して露光を行う。露光部のネガ型感光性樹脂組成物は硬化し、未露光部のネガ型感光性樹脂組成物は硬化しない。
照射する光としては、可視光;紫外線;遠紫外線;KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F
2エキシマレーザ、Kr
2エキシマレーザ、KrArエキシマレーザ、Ar
2エキシマレーザ等のエキシマレーザ;X線;電子線等が挙げられる。また、照射光としては、波長100〜600nmの光が好ましく、300〜500nmの範囲に分布を有する光がより好ましく、i線(365nm)、h線(405nm)およびg線(436nm)が特に好ましい。
【0121】
照射装置として、公知の超高圧水銀灯等を用いることができる。露光量は、i線基準で、5〜1,000mJ/cm
2が好ましく、10〜200mJ/cm
2が特に好ましい。露光量が上記範囲の下限値以上であると、隔壁となるネガ型感光性樹脂組成物の硬化が充分であり、その後の現像で溶解や基板からの剥離が生じにくくなる。上記範囲の上限値以下であると、高い解像度が得られる。
【0122】
(現像工程)
現像液により現像し、未露光部分のネガ型感光性樹脂組成物を除去する。現像液としては、無機アルカリ類、アミン類、アルカノールアミン類、第4級アンモニウム塩等のアルカリ類を含むアルカリ水溶液を用いることができる。また現像液には、溶解性の向上や残渣除去のために、界面活性剤やアルコール等の有機溶媒を添加することができる。
現像時間(現像液に接触させる時間)は、5〜180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法等が挙げられる。現像後、高圧水洗や流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板表面の水分を除去できる。
【0123】
(ポスト露光工程)
次に、必要に応じてポスト露光を行ってもよい。ポスト露光は隔壁が形成されている表面、または隔壁が形成されていない裏面(基板側)のいずれから行ってもよい。また、表裏両面から露光してもよい。露光量は、50mJ/cm
2以上が好ましく、200mJ/cm
2以上がより好ましく、1,000mJ/cm
2以上がさらに好ましく、2,000mJ/cm
2以上が特に好ましい。
【0124】
照射する光としては、紫外線が好ましく、光源として、公知の超高圧水銀灯または高圧水銀灯等を用いることができる。これらの光源は隔壁の硬化に寄与する600nm以下の光を発光し、かつ、隔壁の酸化分解の原因となる200nm以下の光の発光が少ないため、好ましく用いられる。さらに水銀灯に用いられている石英管ガラスが200nm以下の光をカットする光学フィルタ機能を有することが好ましい。
【0125】
光源としては、低圧水銀灯を用いることもできる。ただし、低圧水銀灯は200nm以下の波長の発光強度も高く、オゾンの生成により隔壁の酸化分解が起こり易いため、多量の露光を行うことは好ましくない。露光量は500mJ/cm
2以下であることが好ましく、300mJ/cm
2以下が特に好ましい。
【0126】
(ポストベーク工程)
続いて、隔壁を加熱することが好ましい。ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、5〜90分間加熱処理をすることによって、隔壁および隔壁で区分された領域(ドット)とからなるパターンが形成される。
加熱温度は150〜250℃が好ましく、180〜250℃が特に好ましい。加熱温度が上記範囲の下限値以上であると、隔壁の硬化が充分であり、充分な耐薬品性が得られ、その後の画素を形成する際にインクを塗布した場合に、そのインクに含まれる溶媒により隔壁が膨潤したり、インクが滲んでしまうことがない。上記範囲の上限値以下であると、隔壁の熱分解が生じにくい。
【0127】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から形成されるパターンは、隔壁の幅の平均が、100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。隣接する隔壁間の距離(ドットの幅)の平均は、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。隔壁の高さの平均は、0.05〜50μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることが特に好ましい。
【0128】
本発明の隔壁(ブラックマトリックス)が適用される光学素子としては、カラーフィルタ、有機EL素子等が挙げられる。
【0129】
[カラーフィルタの製造方法]
上記のように基板表面に隔壁(ブラックマトリックス)を形成した後、この隔壁(ブラックマトリックス)表面に、透明着色感光性樹脂組成物からなるインクを用いて、隔壁と同様な方法(フォトリソグラフィ法)で、隔壁(ブラックマトリックス)間に位置するように画素を形成して、カラーフィルタを製造する。
【0130】
フォトリソグラフィ法に用いるインクは、主に着色成分と開始剤とバインダー樹脂成分と溶剤とを含む。着色成分としては、耐熱性、耐光性等に優れた顔料および染料を用いることが好ましい。
バインダー樹脂成分としては、透明で耐熱性に優れた樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。水性のインクは、溶剤として水および必要に応じて水溶性有機溶媒を含み、バインダー樹脂成分として水溶性樹脂または水分散性樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。また、油性のインクは、溶剤として有機溶剤を含み、バインダー樹脂成分として有機溶剤に可溶な樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。
【0131】
また、隔壁(ブラックマトリックス)で区分された領域内に、インクジェット法によりインクジェット装置を用いてインクを注入して画素を形成することもできる。
【0132】
上記隔壁(ブラックマトリックス)が形成された基板においては、該隔壁(ブラックマトリックス)で仕切られた領域(ドット)内にインクを投入する前に、ドット内に露出した基板表面に、例えば、アルカリ水溶液による洗浄処理、紫外線洗浄処理、紫外線/オゾン洗浄処理、エキシマ洗浄処理、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理等の方法で親インク化処理が施されてもよい。
【0133】
インクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いた装置を用いることができる。
画素の形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知のいずれの配列とすることも可能である。
【0134】
インクジェット法に用いるインクは、主に着色成分とバインダー樹脂成分と溶剤とを含む。着色成分としては、耐熱性、耐光性等に優れた顔料および染料を用いることが好ましい。
バインダー樹脂成分としては、透明で耐熱性に優れた樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。水性のインクは、溶剤として水および必要に応じて水溶性有機溶媒を含み、バインダー樹脂成分として水溶性樹脂または水分散性樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。また、油性のインクは、溶剤として有機溶剤を含み、バインダー樹脂成分として有機溶剤に可溶な樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。
なお、インクジェット法においては、上記インクジェット装置でドットにインクを注入した後、ドット内に形成されたインク層に対して、必要に応じて、乾燥、加熱硬化、紫外線硬化等の処理を行うことで画素が形成される。
【0135】
画素形成後、必要に応じて、保護膜層を形成する。保護膜層は表面平坦性を上げる目的と隔壁(ブラックマトリックス)や画素部のインクからの溶出物が液晶層に到達するのを遮断する目的で形成することが好ましい。保護膜層を形成する際に、隔壁(ブラックマトリックス)の撥インク性が強い場合は、事前に隔壁(ブラックマトリックス)の撥インク性を除去することが好ましい。この場合、撥インク性を除去しないと、オーバーコート用塗布液をはじき、均一な膜厚が得られないおそれがある。隔壁(ブラックマトリックス)の撥インク性を除去する方法としては、プラズマアッシング処理や光アッシング処理等が挙げられる。
さらに必要に応じて、カラーフィルタを用いて製造される液晶パネル等の高品位化のためにフォトスペーサを隔壁(ブラックマトリックス)上に形成することが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、上記本発明による遮光性の高い隔壁をブラックマトリックスとして用いていることから、充分に高いコントラスト性能を有するカラーフィルタである。
【0136】
[有機EL素子の製造方法]
隔壁を形成する前に、ガラス等の透明基板にスズドープ酸化インジウム錫(ITO)等の透明電極をスパッタ法等によって製膜し、必要に応じて所望のパターンに透明電極をエッチングする。次に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成し、蒸着法、インクジェット法を用いてドットに正孔輸送材料、発光材料の溶液を順次塗布、乾燥して、正孔輸送層、発光層を形成する。その後アルミニウム等の電極を蒸着法等によって形成することによって、有機EL素子の画素が得られる。インクジェット法を用いて正孔輸送層、発光層を形成する場合、必要に応じて、形成前にドットの親インク化処理を行う。
【実施例】
【0137】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例1〜11は実施例、例21〜28が比較例である。
【0138】
合成例および実施例で用いた化合物の略語は以下の通りである。
(アルカリ可溶性樹脂(A))
ZCR1642:上式(A1−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(日本化薬社製、商品名:ZCR−1642H、質量平均分子量(Mw):5,800、酸価:100mgKOH/g、固形分:70質量%、PGMEA:30質量%)。
【0139】
(光重合開始剤(B))
OXE02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(式(3)で表される化合物において、R
3:メチル基、R
4:メチル基、R
5:エチル基、R
6、R
8、R
9:水素原子、R
7:2−メチルベンゾイル基で示される。BASF社製、商品名:OXE02。)。
NCI831:ADEKA社製、商品名:アデカクルーズ NCI−831。
N1919:ADEKA社製、商品名:アデカオプトマー N−1919。
【0140】
(黒色着色剤(C)+高分子分散液)
CB:カーボンブラック分散液(平均2次粒径:120nm、カーボンブラック:20質量%、アミン価18mgKOH/gのポリウレタン系高分子分散剤:5質量%、PGMEA:75質量%。)。
混合有機顔料:C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントイエロー139および高分子分散剤の10:5:5:5の混合物(固形分:25質量%、PGMEA:75質量%。)。
【0141】
(溶媒(D))
(i)溶媒(D1)
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(沸点:176℃、粘度:1.2mPa・s)。
IPDM:ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル(沸点:179℃、粘度:1.3mPa・s)。
(ii)溶媒(D2)
CHN:シクロヘキサノン(沸点:155℃、粘度:2.1mPa・s)。
4−BL:γ−ブチロラクトン(沸点:204℃、粘度:1.8mPa・s)。
(iii)溶媒(D3)
MDM:ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃、粘度:1.1mPa・s)。
PGMEA:プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(沸点:146℃、粘度:1.3mPa・s)。
EDE:ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点:189℃、粘度:1.3mPa・s)。
BDM:ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点:212℃、粘度:1.5mPa・s)。
DMM:ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:171℃、粘度:1.0mPa・s)。
CHXA:酢酸シクロヘキシル(シクロヘキサノールアセテート、沸点:173℃、粘度:2.0mPa・s)。
DPMA:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点:213℃、粘度:2.2mPa・s)。
IPA:イソプロピルアルコール(2−プロパノール、沸点:82℃、粘度:1.8mPa・s)。
BA:酢酸ブチル(n−ブチルアセテート、沸点:126℃、粘度:0.9mPa・s)。
【0142】
(架橋剤(F))
UX5002:多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(日本化薬社製、商品名:KAYARAD UX−5002D−P20、固形分:80質量%、PGMEA:20質量%)。
(微粒子(G))
PMA−ST:商品名(日産化学工業社製。オルガノシリカゾル、固形分:30質量%、PGMEA:70質量%。)。
(シランカップリング剤(H))
KBM5103:商品名(信越化学社製。3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。)。
(熱硬化剤(I))
XD1000:多官能エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:XD1000)。
(界面活性剤(K))
BYK−307:商品名(ビックケミー・ジャパン社製。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)。
【0143】
[例1〜11および21〜28:ネガ型感光性樹脂組成物の調製、隔壁の形成と評価]
(ネガ型感光性樹脂組成物の調製)
表1および表2に示す割合で、アルカリ可溶性樹脂(A)(溶媒としてPGMEAを30質量%含む。)、光重合開始剤(B)、黒色着色剤(C)(溶媒としてPGMEAを75質量%含む。)、溶媒(D)、架橋剤(F)(溶媒としてPGMEAを20質量%含む)、微粒子(G)(溶媒としてPGMEAを70質量%含む。)、シランカップリング剤(H)、熱硬化剤(I)および界面活性剤(K)を配合して、ネガ型感光性樹脂組成物を得た。
【0144】
(ブラックマトリックスの形成)
ガラス基板(75×75mm)表面にスピンナーを用いてネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した(塗膜形成工程)。
次に、ホットプレート上で100℃、2分間の乾燥を行い、例1、2および例21〜27については膜厚1.0μm、例3〜10については膜厚2.0μm、例11については膜厚3.0μmの膜をそれぞれ形成したガラス基板(1)を得た(乾燥工程)。
次に、10μm×10mmの線状の開口部を持つフォトマスクを通して、超高圧水銀灯を用いて、露光量がi線(365nm)基準で50mJ/cm
2の光を照射した(露光工程)。
【0145】
次いで、未露光部分を無機アルカリタイプ現像液(横浜油脂工業社製、商品名:セミクリーンDL−A4の10倍希釈水溶液)に浸漬して現像し、未露光部を水により洗い流し、乾燥させた(現像工程)。
次いで、ホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、表面にパターン(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(2)を得た(ポストベーク工程)。
【0146】
(評価)
得られたネガ型感光性樹脂組成物の粘度を測定、評価した。また、得られたガラス基板(1)およびガラス基板(2)を用いて、再溶解性および遮光性を以下に示す方法で測定、評価した。評価結果を表1および表2に示す。
【0147】
(1)粘度
ネガ型感光性樹脂組成物の粘度は、粘度計校正用標準液JS2.5(日本グリース社製)で校正したTVE25L形粘度計(東機産業社製)を用いて25℃の条件下で測定した。なお、溶媒(D)として用いた各化合物の粘度も同様にして測定したものである。
得られた測定値をスリットコート法において求められる粘度特性に基づいて以下の基準で評価した。
3.0mPa・s未満のものを◎(良好)、3.5mPa・s未満のものを○(可)、3.5mPa・s以上のものを×(不良)と評価した。
【0148】
(2)再溶解性
上記ガラス基板(1)の表面から剥がした膜(0.1mg)を、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分を除いた溶媒に相当する混合液(40g)に加えて、室温で10分間撹拌し、再溶解性液を得た。
得られた再溶解液の10mLをポリプロピレン製2.5μm孔のメンブレンフィルタでろ過し、目視または光学顕微鏡でメンブレンフィルタに付着した沈殿物を観察した。
沈殿物が観察されなかったものを◎(良好)、沈殿物が観察されないが、メンブレンフィルタに着色したものを○(可)、沈殿物が観察されたものを×(不良)と評価した。
【0149】
(3)スリットコート特性
例1および例22で使用したネガ型感光性樹脂組成物をガラス基板(370mm×470mm)の表面に、以下に説明するスリットコート法にて塗布し、塗膜を形成して塗工性を評価した。
スリットコートダイスとして、SUS304製の幅370mm、高さ100mm、厚さ60mmのダイスを用いた。ダイスとガラス基板との間隔は100μmとし、ネガ型感光性樹脂組成物をダイスに供給する手法として、ギアポンプを用いた。該条件でガラス基板に対して50mm/秒の相対速度でダイスを移動させて、ガラス基板表面にネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を形成した。次に、塗膜の乾燥を行い、厚さ1.0μmの膜を形成した。スリットコートダイスは、塗布後、5分間放置して、再度スリットコート法により塗膜を形成し、乾燥することで膜を形成した。これを10回繰り返した。得られた膜を目視で観察した。筋や感光性組成物の乾燥固化物による欠陥が観察されなかったものを○(良好)、欠陥が観察されたものを×(不良)と評価した。
【0150】
(4)遮光性(光学濃度(OD))
上記ガラス基板(2)のパターン(ブラックマトリックス)上の光学濃度(OD)を白黒透過濃度計Ihca−T5(伊原電子工業社製)を用いて測定した。
光学濃度が2.5以上のものを○(良好)、2.5未満のものを×(不良)と評価した。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
表1より、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の再溶解性、粘度、およびネガ型感光性樹脂組成物より形成した隔壁(ブラックマトリックス)の遮光性は良好であった。なかでも、溶媒(D)として溶媒(D1)に加えて溶媒(D2)を用いた例6〜11は、再溶解性が特に良好であった。
【0154】
一方、表2において、溶媒(D1)の含有量が少ない例21および例28では再溶解性が不良であった。
溶媒(D1)を含まない例23〜27においても、再溶解性が不良であった。
式(1)中のR
1およびR
2がともにメチル基である溶媒を全溶媒(D)中に47質量%含むネガ型感光性樹脂組成物を用いた例22のスリットコート特性が不良であったことから、R
1およびR
2がともにメチル基であると沸点が低く、スリットノズルでの乾燥固化が起き、スリットコート特性が不良になったと推定される。
【0155】
式(1)中のR
1およびR
2がともにエチル基である溶媒を全溶媒(D)中に47質量%含むネガ型感光性樹脂組成物を用いた例23の再溶解性が不良であったことから、アルキル鎖の炭素原子数が大きくなると疎水性になり、再溶解性が不良になったと推定される。
さらにR
1がメチル基で、R
2のアルキル鎖の炭素原子数が4である溶媒を含むネガ型感光性樹脂組成物を用いた例24でも再溶解性が不良であったことから、例23と同様な理由で再溶解性が不良になったと推定される。
先行技術文献に記載の溶媒を全溶媒(D)中に47質量%含むネガ型感光性樹脂組成物を用いた例25〜27でも再溶解性が不良であった。