特許第5994791号(P5994791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5994791アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法、架橋性組成物、積層体および耐熱エアーゴムホース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5994791
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月21日
(54)【発明の名称】アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法、架橋性組成物、積層体および耐熱エアーゴムホース
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20160908BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20160908BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20160908BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20160908BHJP
   B32B 25/14 20060101ALI20160908BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20160908BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCEW
   C08L27/12
   C08L33/08
   C08J3/24 Z
   B32B25/14
   F16L11/04
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-554348(P2013-554348)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2013050849
(87)【国際公開番号】WO2013108856
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2012-7865(P2012-7865)
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(72)【発明者】
【氏名】水野 剛
(72)【発明者】
【氏名】淀川 正英
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/111140(WO,A1)
【文献】 特許第4168189(JP,B2)
【文献】 特開平06−041379(JP,A)
【文献】 特開平06−298899(JP,A)
【文献】 特開2007−056068(JP,A)
【文献】 特開2007−126631(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026549(WO,A1)
【文献】 国際公開第93/021271(WO,A1)
【文献】 国際公開第96/017890(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/055778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−28
B32B
C08L
C08K
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ゴム(A)の連続相中に、架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法であって、
フッ素ゴム(A)と、前記フッ素ゴム(A)と反応しないアクリルゴム用架橋剤と、前記フッ素ゴム(A)と反応しないアクリルゴム用架橋助剤とを混練して、前記アクリルゴム用架橋剤および前記アクリルゴム用架橋助剤を含有するフッ素ゴム組成物を得る工程(1)と、
前記工程(1)で得られたフッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)とを、フッ素ゴム(A)/アクリルゴム(B)=5/95〜50/50の質量比で、加熱下に混練しながら前記アクリルゴム(B)を架橋させて、前記フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋した前記アクリルゴム(B)の粒子を分散させる工程(2)とを含むことを特徴とするアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素ゴム(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位を含有する共重合体である請求項1に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素ゴム(A)における、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位とのモル比((TFEに基づく繰返し単位)/(Pに基づく繰返し単位))が、40/60〜70/30である請求項2に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素ゴム(A)のフッ素含有量が、40〜75質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記アクリルゴム(B)が、(メタ)アクリルモノマーに基づく繰返し単位を30〜100質量%、エチレンに基づく繰返し単位を0〜30質量%、酢酸ビニルに基づく繰返し単位を0〜40質量%、および架橋基含有モノマーに基づく繰返し単位を0.1〜20質量%含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記架橋基含有モノマーの有する架橋基がエポキシ基である請求項5に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において、前記フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、前記アクリルゴム用架橋剤の0.5〜20質量部と、前記アクリルゴム用架橋助剤の0.05〜10質量部とを混練して、前記フッ素ゴム組成物を得る、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、前記フッ素ゴム組成物と、前記アクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながら前記アクリルゴム(B)を架橋させて、前記フッ素ゴム(A)の連続相中に、平均粒子径が2〜30μmの架橋した前記アクリルゴム(B)の粒子を分散させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物と、フッ素ゴム用架橋剤とを含有させることを特徴とする架橋性組成物の製造方法
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法により製造された架橋性組成物と、フッ素ゴム(C)とを積層し、架橋することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法により製造された架橋性組成物が管状の外層をなし、フッ素ゴム(C)が該外層の内周に設けられた管状の内層をなすように積層し、架橋することを特徴とする耐熱エアーゴムホースの製造方法。
【請求項12】
前記管状の外層と前記管状の内層とを、押出成形によって積層する請求項11に記載の耐熱エアーゴムホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物とフッ素ゴム用架橋剤とを含有する架橋性組成物、架橋性組成物を硬化してなる層を有する積層体および耐熱エアーゴムホースに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースは、自動車部品やその他の工業用部品などに用いられている。例えば、ディーゼル車のターボチャージャー等には、耐熱エアーゴムホースが用いられている。ターボチャージャーに装着した耐熱エアーゴムホースは、ターボチャージャーで圧縮された高温高圧の圧縮ガスをエンジンに供給する役割がある。この圧縮ガスには、エンジンから排出される燃料やエンジンオイル等の高温ミストも混入する。このため、耐熱エアーゴムホースには、高い耐熱性、耐薬品性、耐油性および耐圧性が要求される。
【0003】
従来から、耐熱エアーゴムホースには、アクリルゴムが用いられてきた。近年では、耐熱エアーゴムホースの耐熱性に対する要求が厳しくなってきており、アクリルゴムでは、要求特性を満たさなくなってきている。このような要求特性を満たす材料として、フッ素ゴムがある。フッ素ゴムは、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐圧性等の特性に優れることから、耐熱エアーゴムホースの材料として好適である。しかしながら、フッ素ゴムは高価であることから、耐熱エアーゴムホースのコストが高くなるという問題があった。
そこで、フッ素ゴムと、アクリルゴム等の安価な材料との積層体とすることで、ゴムホースのコストを抑える試みが行われている。
【0004】
特許文献1には、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン弾性共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン弾性共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン−プロピレン弾性共重合体等のフッ素ゴムの内層と、アクリルゴムの外層とが共加硫接着されてなる積層ゴムホースが開示されている。
しかしながら、一般的にフッ素ゴムは、アクリルゴム等の他のゴム材料との親和性が乏しく、特許文献1の積層ゴムホースは、フッ素ゴム層とアクリルゴム層との接着性が十分ではなかった。特に高温環境下では、両者の接合界面において剥離する場合があった。
ところで、フッ素ゴム組成物の一つに、フッ素ゴムの連続相中に、架橋したアクリルゴムの粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物がある。該アクリルゴム/フッ素ゴム組成物は、成形し、架橋して、自動車部品や工業用品等の成形品として用いられている。
【0005】
フッ素ゴムの連続相中に、架橋したアクリルゴムの粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法として、特許文献2には、フッ素ゴムと、アクリルゴムと、フッ素ゴムおよびアクリルゴムの両者に共架橋し得る第3のエラストマーと、アクリルゴム用架橋剤とを配合し、せん断変形を与えながら動的架橋して製造する方法が開示されている。
また、特許文献3には、ゲル含量80重量%以上の内部架橋したエポキシ基含有アクリルゴムのラテックスとフッ素ゴムのラテックスとをラテックス状態で混合し、次いで、得られた混合ラテックスを共凝固して製造する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示された方法では、動的架橋は通常200℃以上の高温で行わなければならず、量産性に乏しかった。また、この方法では、第3のエラストマーを配合することが必要であって、第3のエラストマーを配合せずに動的架橋を行うと、フッ素ゴム相とアクリルゴム粒子との界面に剥離が生ずるため、機械的特性が十分ではなかった。
また、特許文献3の方法では、異種材料のラテックス同士を混合しているが、異種材料のラテックス同士を商業的に混合するには、既存製品へのコンタミ懸念などから、新規凝固槽を建設するなどの大幅な設備投資が必要になり、コスト増加の要因となるため工業的に相応しくなかった。
また、特許文献2,3では、フッ素ゴムの積層体とした際の層間接着性に関して何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本特開2004−17485号公報
【特許文献2】日本特開平1−299859公報
【特許文献3】日本特許第4168189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フッ素ゴムを架橋してなる層との層間接着性に優れる層を形成できるアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法、フッ素ゴムを架橋してなる層との層間接着性に優れる層を形成できる架橋性組成物、フッ素ゴムを架橋してなる層との層間接着性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性に優れた安価な積層体、および耐熱エアーゴムホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法、架橋性組成物、積層体および耐熱エアーゴムホースを提供する。
[1]フッ素ゴム(A)の連続相中に、架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法であって、
フッ素ゴム(A)と、前記フッ素ゴム(A)と反応しないアクリルゴム用架橋剤と、前記フッ素ゴム(A)と反応しないアクリルゴム用架橋助剤とを混練して、前記アクリルゴム用架橋剤および前記アクリルゴム用架橋助剤を含有するフッ素ゴム組成物を得る工程(1)と、
前記工程(1)で得られたフッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)とを、フッ素ゴム(A)/アクリルゴム(B)=5/95〜50/50の質量比で、加熱下に混練しながら前記アクリルゴム(B)を架橋させて、前記フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋した前記アクリルゴム(B)の粒子を分散させる工程(2)とを含むことを特徴とするアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[2]前記フッ素ゴム(A)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位とを含有する共重合体である上記[1]に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[3]前記フッ素ゴム(A)におけるテトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位とのモル比(TFEに基づく繰返し単位/Pに基づく繰返し単位)が、40/60〜70/30である上記[2]に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[4]前記フッ素ゴム(A)のフッ素含有量が、40〜75質量%である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[5]前記アクリルゴム(B)が、(メタ)アクリルモノマーに基づく繰返し単位を30〜100質量%、エチレンに基づく繰返し単位を0〜30質量%、酢酸ビニルに基づく繰返し単位を0〜40質量%、および架橋基含有モノマーに基づく繰返し単位を0.1〜20質量%含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[6]前記架橋基含有モノマーの有する架橋基がエポキシ基である上記[5]に記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[7]前記工程(1)において、前記フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、前記アクリルゴム用架橋剤の0.5〜20質量部と、前記アクリルゴム用架橋助剤の0.05〜10質量部とを混練して、前記フッ素ゴム組成物を得る、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
[8]前記工程(2)において、前記フッ素ゴム組成物と、前記アクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながら前記アクリルゴム(B)を架橋させて、前記フッ素ゴム(A)の連続相中に、平均粒子径が2〜30μmの架橋した前記アクリルゴム(B)の粒子を分散させる、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法。
【0009】
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法で製造されたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物と、フッ素ゴム用架橋剤とを含有することを特徴とする架橋性組成物。
[10]前記フッ素ゴム用架橋剤が有機過酸化物である上記[9]に記載の架橋性組成物。
[11]前記フッ素ゴム用架橋剤の含有量が、前記フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、0.1〜10質量部である、上記[9]または[10]に記載の架橋性組成物。
[12]フッ素ゴム用架橋助剤として、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、またはトリアリルホスフェートをさらに含有する上記[9]〜[11]のいずれかに記載の架橋性組成物。
[13]充填剤として、カーボンブラックをさらに含有する上記[9]〜[12]のいずれかに記載の架橋性組成物。
[14]上記[9]〜[13]のいずれかに記載の架橋性組成物を架橋してなる層と、フッ素ゴム(C)を架橋してなる層とを有することを特徴とする積層体。
[15]前記フッ素ゴム(C)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位を含有する共重合体である上記[14]に記載の積層体。
[16]上記[9]〜[13]のいずれかに記載の架橋性組成物を架橋してなる管状の外層と、該外層の内周に設けられた、フッ素ゴム(C)を架橋してなる管状の内層とを有することを特徴とする耐熱エアーゴムホース。
[17]前記フッ素ゴム(C)が、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位とプロピレンに基づく繰返し単位を含有する共重合体である上記[16]に記載の耐熱エアーゴムホース。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法によれば、フッ素ゴム(A)と、アクリルゴム用架橋剤と、アクリルゴム用架橋助剤とを混練するので、アクリルゴム用架橋剤およびアクリルゴム用架橋助剤が分散性よく含有されるフッ素ゴム組成物が得られる。
さらに、該フッ素ゴム組成物とアクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながらアクリルゴム(B)を架橋させることで、せん断力がアクリルゴム(B)に加わって粒子となり、フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物が得られる。
また、フッ素ゴム組成物には、アクリルゴム用架橋剤とアクリルゴム用架橋助剤とがほぼ均一に分散しているので、アクリルゴム(B)の架橋性に優れ、架橋時における加熱温度を低く抑えることができる。このため、ゴムの熱劣化を抑制し、生産性よくアクリルゴム/フッ素ゴム組成物を製造できる。
【0011】
また、本発明の架橋性組成物によれば、フッ素ゴム(A)の含有量が少量であっても、フッ素ゴムを架橋してなる層との層間接着性に優れる層を形成できる。
また、本発明の積層体は、本発明の架橋性組成物を架橋してなる層と、フッ素ゴム(C)を架橋してなる層とを有するので、高温環境下においても両者の層間接着性に優れる。
また、本発明の耐熱エアーゴムホースは、架橋性組成物を架橋してなる管状の外層と、該外層の内周に設けられたフッ素ゴム(C)を架橋してなる管状の内層とを有するので、高温環境下においても両者の層間接着性に優れる。更には、高温高圧耐性が要求される自動車用のエアー系ホースの用途で用いた場合であっても、耐熱エアーゴムホース表面へのオイルの染み出し等がなく、優れた耐久性を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の表面についての、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)での観測結果を示す図面である。
図2】実施例1のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の断面についての、走査型電子顕微鏡(倍率1000倍)での観測結果を示す図面である。
図3】比較例3のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の表面についての、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)での観測結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法で用いるフッ素ゴム(A)は、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。
例えば、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
【0014】
これらの共重合体を、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、テトラフルオロエチレンに基づく繰返し単位(以下、「TFEに基づく繰返し単位」と記す)とプロピレンに基づく繰返し単位(以下、「Pに基づく繰返し単位」と記す)を含有する共重合体が、耐酸性、耐アルカリ性に優れることから好ましい。TFEに基づく繰返し単位とPに基づく繰返し単位を含有する共重合体において、TFEに基づく繰返し単位と、Pに基づく繰返し単位とのモル比((TFEに基づく繰返し単位)/(Pに基づく繰返し単位))は、40/60〜70/30が好ましく、45/55〜65/35がより好ましく、50/50〜60/40が最も好ましい。
また、テトラフルオロエチレンおよびプロピレン以外のモノマーに基づく繰返し単位(以下、「他のモノマーに基づく繰返し単位」と記す)を含有してもよいが、他のモノマーに基づく繰返し単位を含有する場合、その含有量は、共重合体中に10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。特に好ましくは、0.1〜5モル%である。
【0015】
フッ素ゴム(A)の特に好ましい具体例としては、耐酸性、耐アルカリ性により優れるのでテトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体である。テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体の市販品の例としては、「AFLAS150P」(旭硝子社製)等が挙げられる。
フッ素ゴム(A)のフッ素含有量は、40〜75質量%が好ましく、45〜75質量%がより好ましく、50〜75質量%が最も好ましい。フッ素含有量が上記範囲にあると、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、耐スチーム性に優れる。
【0016】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法で用いるアクリルゴム(B)は、特に限定は無く、従来公知のものを用いることができる。
アクリルゴムとしては、例えば、アクリルモノマーもしくはメタクリルモノマー(以下、アクリルモノマーとメタクリルモノマーとの両方を「(メタ)アクリルモノマー」と記す)の1種または2種以上を主成分とするアクリルゴム等が挙げられる。
上記アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアクリレートが挙げられる。
また、上記メタクリルモノマーとしては、上記アクリルモノマーに対応するメタクリレートが挙げられる。
【0017】
アクリルゴム(B)の具体例として、アクリルゴム中の(メタ)アクリルモノマーに基づく繰返し単位の含有量が30〜100質量%、エチレンに基づく繰返し単位の含有量が0〜30質量%、酢酸ビニルに基づく繰返し単位の含有量が0〜40質量%であることが好ましい。アクリルゴム中の(メタ)アクリルモノマーに基づく繰返し単位の含有量は、40〜100質量%がより好ましく、50〜100質量%が更に好ましく、70〜100質量%が特に好ましい。エチレンに基づく繰返し単位を含有する場合には、その含有量は、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。酢酸ビニルに基づく繰返し単位を含有する場合には、その含有量は、0.1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が最も好ましい。この範囲にあると、耐熱性に優れる。
アクリルゴム(B)は、架橋基含有モノマーに基づく繰返し単位を含有することが好ましい。その含有量は0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、2〜5質量%が最も好ましい。この範囲にあると、アクリルゴム(B)は、架橋性に優れる。
架橋基含有モノマーとしては、活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、ジエン基等を有するモノマーが挙げられる。なかでも、架橋基としては、エポキシ基、カルボキシル基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。エポキシ基を有する架橋基含有モノマーとしては、グリシジルメタアクリレート等が好ましい。カルボキシル基を有する架橋基含有モノマーとしては、マレイン酸モノブチル等が好ましい。
【0018】
本発明では、アクリルゴム用架橋剤として、過酸化物架橋するフッ素ゴムと反応しないものを用いるので、アクリルゴム(B)としては、アミン架橋するアクリルゴムが好ましく、エポキシ基を有するアクリルゴムがより好ましい。
エポキシ基を有するアクリルゴムの市販品の例としては、「デンカER−5300」(電気化学工業社製)が挙げられる。
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法で用いるアクリルゴム用架橋剤は、フッ素ゴム(A)に対して反応性を有しないものである。アクリルゴム(B)がエポキシ基を有する場合、アクリルゴム用架橋剤としては、アミド、酸、もしくはイソシアネート基を有する化合物が好ましい。なかでも、グアニジン類またはイミダゾール類やその類似物のようなアミノ基を有するものが好ましい。
【0019】
グアニジン類としては、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、o−トリルビグアニド、ジ−o−トリルグアニジンのジカテコールほう酸塩、ジフェニルグアニジンフタレート、混合ジアリールグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール類としては、イミダゾールのみならず、イミダゾール環の炭素原子および/または窒素原子に結合した水素原子が、各種炭化水素基で置換された置換イミダゾールが挙げられる。具体的には、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどが好ましい。
グアニジン類やイミダゾール類は、1種または2種以上を併用することができる。またグアニジン類とイミダゾール類を併用してもよい。
【0020】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法で用いるアクリルゴム用架橋助剤は、フッ素ゴム(A)に対して反応性を有しないものである。そのような架橋助剤としては、例えば、ポリアミン系架橋助剤、有機酸のアンモニウム塩等が挙げられる。
ポリアミン系架橋助剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるものであれば特に限定されない。脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。その具体例としては、(1)ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;(2)2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;(3)イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;(4)イソシアヌル酸アンモニウムなどが挙げられる。
有機酸のアンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられ、架橋性および入手性にも優れているという理由から安息香酸アンモニウムが好ましい。
【0021】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造方法は、以下の工程(1)および(2)によって製造される。
工程(1):フッ素ゴム(A)と、アクリルゴム用架橋剤と、アクリルゴム用架橋助剤とを混練して、アクリルゴム用架橋剤およびアクリルゴム用架橋助剤を含有するフッ素ゴム組成物を得る工程。
工程(2):工程(1)で得られたフッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながらアクリルゴム(B)を架橋させて、フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋した前記アクリルゴム(B)の粒子を分散させる工程。
以下、各工程についてさらに詳しく説明する。
【0022】
工程(1)では、フッ素ゴム(A)と、アクリルゴム用架橋剤と、アクリルゴム用架橋助剤とを混練する。ロール加工性の良いフッ素ゴム(A)に、アクリルゴム用架橋剤およびアクリルゴム用架橋助剤を加えて混練するので、アクリルゴム用架橋剤およびアクリルゴム用架橋助剤がほぼ均一に分散したフッ素ゴム組成物が得られる。
工程(1)において、フッ素ゴム(A)、アクリルゴム用架橋剤、およびアクリルゴム用架橋助剤の混合割合は、フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、アクリルゴム用架橋剤が0.5〜20質量部、アクリルゴム用架橋助剤が0.05〜10質量部であることが好ましく、アクリルゴム用架橋剤が1.5〜15質量部、アクリルゴム用架橋助剤が0.5〜5質量部であることがより好ましい。アクリルゴム用架橋剤やアクリルゴム用架橋助剤の使用量が少なすぎると、アクリルゴムの架橋密度が低くなり易く、架橋後のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の機械的特性、耐油性、耐熱性などが不十分となる場合がある。一方、アクリルゴム用架橋剤やアクリルゴム用架橋助剤の使用量が多すぎると、アクリルゴムの架橋密度が高くなりすぎ、架橋後のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の伸びが低下する傾向にある。
【0023】
アクリルゴム用架橋剤とアクリルゴム用架橋助剤との割合は、アクリルゴム用架橋剤の100質量部に対し、アクリルゴム用架橋助剤が10〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部がより好ましい。アクリルゴム用架橋剤とアクリルゴム用架橋助剤との割合が上記範囲内であれば、架橋性が高く、所定の時間内で架橋反応を完了できる。
工程(1)において、フッ素ゴム(A)と、アクリルゴム用架橋剤と、アクリルゴム用架橋助剤との混練方法は、特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。混練温度は、30〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。混練時間は5〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。混練装置としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができる。
【0024】
工程(2)では、工程(1)で得られたフッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながらアクリルゴム(B)を架橋させる。フッ素ゴム組成物とアクリルゴム(B)とを、加熱下に混練しながらアクリルゴム(B)を架橋(動的架橋)させることで、せん断力がアクリルゴム(B)に加わることにより、アクリルゴム(B)は粒子として分散し、フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物が得られる。
また、架橋したアクリルゴム(B)の粒径はより小さい状態を保つ。これは、アクリルゴム(B)とフッ素ゴム(A)との界面での分子の絡み合いが、より多く生じているためであると考えられる。この場合、せん断力を加えるのを止めると、アクリルゴム(B)の粒子同士の会合が起き、粒径が大きくなり分子の絡み合いも減少することになる。このように、混錬しながらアクリルゴム(B)を架橋することにより、良好な分散状態のままの系を固定することができる。
【0025】
また、フッ素ゴム組成物には、アクリルゴム用架橋剤とアクリルゴム用架橋助剤とがほぼ均一に分散しているので、アクリルゴム(B)の架橋性に優れ、動的架橋時における加熱温度を低く抑えることができる。
なお、アクリルゴム(B)の動的架橋において、アクリルゴム(B)のみが架橋し、フッ素ゴム(A)は実質的に架橋しないが、フッ素ゴム(A)の一部が、アクリルゴム(B)に物理的に絡み合って、疑似的に架橋していてもよい。フッ素ゴム(A)が、アクリルゴム(B)と疑似的に架橋しているかどうかは、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物のゲル成分比率を測定することで評価できる。すなわち、動的架橋ではフッ素ゴム(A)自体は実質的に架橋しないので、動的架橋後のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物のゲル成分が、アクリルゴム(B)の仕込み量よりも多く検出されれば、フッ素ゴム(A)の一部が、アクリルゴム(B)と物理的に絡み合って、疑似的に架橋していることが分かる。
【0026】
工程(2)において、フッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)との混合割合は、質量比で、フッ素ゴム(A)/アクリルゴム(B)=5/95〜50/50であり、好ましくは10/90〜30/70であり、より好ましくは、15/85〜20/80である。フッ素ゴム(A)が50質量%超であると、コスト低減効果が小さい。フッ素ゴム(A)が5質量%未満であると、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を架橋したゴム組成物の引張強度、伸び、硬度等の常態物性が低下する。更には、積層体とした際において、フッ素ゴムを架橋してなる層との層間接着性が低下する。
【0027】
上記工程(2)において混練される、フッ素ゴム組成物とアクリルゴム(B)においては、アクリルゴム(B)とフッ素ゴム組成物中のアクリルゴム用架橋剤とアクリルゴム用架橋助剤の混練割合は、アクリルゴム(B)の100質量部に対して、アクリルゴム用架橋剤が0.5〜15質量部、アクリルゴム用架橋助剤が0.1〜7質量部であることが好ましく、アクリルゴム用架橋剤が1〜10質量部、アクリルゴム用架橋助剤が0.5〜5質量部であることがより好ましく、アクリルゴム用架橋剤が2〜7質量部、アクリルゴム用架橋助剤が1〜3質量部であることが最も好ましい。
【0028】
工程(2)において、必要に応じて、ゴム用軟化剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、加工助剤、滑剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの各種配合剤を添加して混練してもよい。これらの配合剤は、あらかじめアクリルゴム(B)中に混錬し、これにフッ素ゴム組成物を添加して混錬してもよい。
これらの配合剤の含有量は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部に対して、0.1〜100質量部、好ましくは0.1〜70質量部である。
【0029】
工程(2)において、フッ素ゴム組成物と、アクリルゴム(B)との混練方法は、特に限定されることなく、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールを用いることができる。好ましくは、バンバリーミキサー、ニーダーなどのインターナルミキサーを用いる。
工程(2)において、混練時の加熱温度は、100〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましく、150〜180℃が特に好ましい。100℃未満であると反応性に乏しくアクリルゴム(B)の架橋が不十分な場合があり、250℃を超えるとゴムが劣化する恐れがある。
【0030】
工程(2)において、混練時間は、3〜60分が好ましく、5〜30分がより好ましい。混練時間が3分未満であると、アクリルゴム(B)の架橋が不十分な場合がある。60分を超えると混練コストが上昇し好ましくない。混練時間が上記範囲にあると、アクリルゴム(B)が十分架橋して、フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散してアクリルゴム/フッ素ゴム組成物が得られる。
本発明の製造方法で得られるアクリルゴム/フッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム(A)の連続相中に架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散している。架橋したアクリルゴム(B)の粒子の平均粒子径は、好ましくは2〜30μmであり、より好ましくは5〜20μmであり、最も好ましくは10〜15μmである。なお、本発明において、アクリルゴム(B)の粒子の平均粒子径は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の断面を、走査型電子顕微鏡にて観察し、任意に選択した30個のアクリルゴム粒子の大きさの平均値を、平均粒子径として用いた。
【0031】
また、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物のゲル成分比率は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。特には、ゲル成分比率は、80〜100%が好ましい。
なお、本発明において、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物のゲル成分比率は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物をトルエンに24時間浸漬し、トルエンに溶解しない不溶性成分の質量(W1)を、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の質量(W2)で除した値(W1/W2)を百分率で表した値((W1/W2)×100)を用いた。
【0032】
本発明の架橋性組成物は、上記製造方法で得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物と、フッ素ゴム用架橋剤とを含有する。
フッ素ゴム用架橋剤としては、フッ素ゴムに対して反応性を有するものであれば特に限定は無く、従来公知のものを使用できる。なかでも、耐熱性に優れた架橋ゴムが得られることから有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、加熱下や、酸化還元系の存在下で容易にラジカルを発生するものであれば使用できるが、半減期が1分となる温度が130〜220℃であるものが好ましい。
その具体例としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロへキサン、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキシン−3、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。なかでも、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンは、フッ素ゴム(A)のパーオキシド架橋性に優れるので好ましい。
フッ素ゴム用架橋剤の含有量は、フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜7質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。フッ素ゴム用架橋剤の含有量が上記範囲にあると、架橋効率が高く、無効分解の生成量も抑制できる。
【0033】
本発明の架橋性組成物は、更に、フッ素ゴム用架橋助剤を含有することが好ましい。
フッ素ゴム用架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート等が挙げられる。中でも、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
フッ素ゴム用架橋助剤の含有量は、フッ素ゴム(A)の100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、2〜25質量部が特に好ましい。含有量が少なすぎると、架橋速度が遅く、架橋度も低い。多すぎると、架橋ゴムの伸びが低い場合がある。この範囲にあると、架橋速度が速く、架橋度が高く、特性に優れた架橋ゴムが得られる。
【0034】
本発明の架橋性組成物は、更に、必要に応じて各種配合剤を常法により配合できる。配合剤としては、例えば、ゴム用軟化剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、加工助剤、滑剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。
上記充填剤としては、カーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
カーボンブラックは、架橋ゴムを補強する効果を有する。カーボンブラックとしては、特に制限はなく、フッ素ゴムの充填剤として用いられているものであれば使用できる。
その具体例としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられる。なかでも、ファーネスブラックがより好ましい。ファーネスブラックの具体例としては、HAF−LSカーボン、HAFカーボン、HAF−HSカーボン、FEFカーボン、GPFカーボン、APFカーボン、SRF−LMカーボン、SRF−HMカーボン、MTカーボン等が挙げられる。特にMTカーボンが好ましい。
【0035】
カーボンブラックの含有量は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部に対し、5〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。カーボンブラックの含有量が少なすぎると、架橋ゴムの補強効果が十分得られない場合があり、多すぎると架橋ゴムの伸びが低い場合がある。上記の範囲であると、強度と伸びとのバランスが良好である。
カーボンブラック以外の充填剤の含有量は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部に対し、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
上記加工助剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。加工助剤の含有量は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。
【0036】
本発明の架橋性組成物は、従来公知の種々の成形法により、種々の形状に成形して、成形品として用いられる。成形方法としては、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形などの方法が挙げられる。得られる成形品は、その優れた性質を利用して各種の自動車用部品、工業用品などに利用できる。なかでも、本発明の架橋性組成物は、フッ素ゴム(C)を架橋してなる層との接着性に優れた層を形成できるので、成形品としては、架橋性組成物を架橋してなる層とフッ素ゴムを架橋してなる層とを有する積層体が好ましい。かかる積層体の好ましい一例としては、架橋性組成物を架橋してなる管状の外層と、該外層の内周に設けられた、フッ素ゴム(C)を架橋してなる管状の内層とを有する耐熱エアーゴムホースが挙げられる。この耐熱エアーゴムホースは、高温環境下においても両者の層間接着性に優れる。
【0037】
本発明の積層体および耐熱エアーゴムホースにおいて、架橋性組成物に含まれるフッ素ゴム(A)と、フッ素ゴム(C)は、同じ材料を含むものであることが好ましく、フッ素ゴム(A)およびフッ素ゴム(C)が、ともにテトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体であることが好ましい。フッ素ゴム(A)およびフッ素ゴム(C)がテトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体であれば、層間接着性が高く、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐圧性に優れた積層体および耐熱エアーゴムホースとすることができる。
耐熱エアーゴムホースは、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、内層形成用の架橋性フッ素ゴム組成物の各材料、例えば、フッ素ゴム(C)、フッ素ゴム用架橋剤、フッ素ゴム用架橋助剤、および必要に応じてカーボンブラック等の充填剤やその他の配合剤を準備し、これらを2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機を用いて混練する。
【0038】
フッ素ゴム(C)としては、上述したフッ素ゴム(A)と同様のものを使用できる。また、フッ素ゴム用架橋剤、フッ素ゴム用架橋助剤、その他の配合剤としては、上述したアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の製造に用いるものと同様のものを使用できる。
各成分の混錬の順序は特に制限されないが、混練時の発熱によって、反応や分解しにくい成分である充填剤等をフッ素ゴム(C)と十分に混錬した後、反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分であるフッ素ゴム用架橋剤等を、混練することが好ましい。混練時には、混練機を水冷して、フッ素ゴム用架橋剤が分解しにくい温度である120℃以下を維持することが好ましい。また、各配合剤を溶剤に溶解、分散した状態でフッ素ゴム(C)に混練する方法も採用できる。
【0039】
上記のようにして調製した架橋性フッ素ゴム組成物と、本発明の架橋性組成物とを押出成形機を用いてホース状に共押出成形した後、所定の条件で加熱架橋(例えば、160〜190℃で5〜30分)し、次いで、所定の条件(例えば、165℃で3時間)でオーブンにて2次架橋を行うことにより、本発明の耐熱エアーゴムホースが得られる。
この方法によって得られる耐熱エアーゴムホースは、架橋時に内層と外層の界面が接着剤なしで強固に接着して、積層し一体化している。
また、本発明の耐熱エアーゴムホースは、内層形成用の架橋性フッ素ゴム組成物を押出成形機で押出して単層構造のホースにし、このホース外周面に、本発明の架橋性組成物を押出成形機を用いて押出成形した後、架橋することでも作製できる。この方法によっても、内層と外層の界面が、接着剤なしで強固に接着し、積層一体化する。場合によっては接着剤を補助剤として用いても良い。また、必要に応じ、その層間に補強糸層(ポリエステル、ビニロン、アラミド、ナイロン等)を設けても良い。
【0040】
本発明の耐熱エアーゴムホースの内層の厚みは、0.2〜3.0mmであることが好ましく、コストを抑える点で、0.2〜0.5mmがより好ましい。
なお、本発明の耐熱エアーゴムホースは、例えば、真空サイジング法によってストレート形状に成形しても、コルゲーターを用いて蛇腹構造に成形しても差し支えない。
本発明の耐熱エアーゴムホースは、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐圧性に優れており、高温高圧耐性が要求される自動車用のエアー系ホース(ターボエアーホース、ブローバイガス用ホース、エミッションコントロールホース等)の用途に特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。
【0042】
(使用した材料)
[フッ素ゴム(A)]
(1)AFLAS 150L:旭硝子社製、テトラフルオロエチレン/プロピレン2元共重合体、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は57質量%、ムーニー粘度(100℃、ML1+10=35)。
[アクリルゴム(B)]
(1)デンカER−5300:電気化学工業社製、架橋点としてエポキシ基を含有するn−ブチルアクリレート/エチレン/酢酸ビニル3元系共重合体、アミンおよび過酸化物架橋タイプ。
[フッ素ゴム(C)]
(1)AFLAS 150P:旭硝子社製、テトラフルオロエチレン/プロピレン2元共重合体、過酸化物架橋タイプ、フッ素含有量は57質量%、ムーニー粘度(100℃、ML1+10=95)。
[アクリルゴム用架橋剤]
(1)CN−25:電気化学工業社製、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、
(25%フィラー含有タイプ)、
(2)キュアゾール2MZ−H:四国化成製、2−メチルイミダゾール。
[アクリルゴム用架橋助剤]
(1)バルノック AB−S:大内新興化学工業社製、安息香酸アンモニウム。
【0043】
[フッ素ゴム用架橋助剤]
(1)TAIC:日本化成社製、トリアリルイソシアヌレート。
[フッ素ゴム用架橋剤]
(1)パーブチルP:日油社製、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、
(2)パークミルD:日油社性、ビス(1−フェニル−1−メチルエチル)ペルオキシド、
(3)パーカードックス14R−P:化薬アクゾ製、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン。
[充填剤]
(1)FEFカーボン:東海カーボン社製、シーストSO、
(2)MTカーボン:Canarb Limited社製、THENMAX N−990。
[加工助剤]
(1)St−Na:日油社製、ステアリン酸ナトリウム、ノンサールSN−1パウダー、
(2)St−Zn:日油社製、ステアリン酸亜鉛、ジンクステアレート GP。
[老化防止剤]
(1)ノクラックCD:大内新興化学工業社製、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン。
【0044】
(架橋性組成物の調製)
(実施例1)
フッ素ゴム(A)(AFLAS 150L)の100質量部と、アクリルゴム用架橋剤(CN−25)の12質量部と、アクリルゴム用架橋助剤(バルノック AB−S)の4質量部とをロール混練して、ベースコンパウンド(フッ素ゴム組成物)を得た。
得られたベースコンパウンドの23.2質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の80質量部とを東洋精機社製ラボプラストミルR−30を用い、充填率約80%、ラボプラストミルの回転数40rpm、ラボプラストミル内温度約170℃の条件で、20分間混練して、アクリルゴム(B)の動的架橋を行い、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の表面を、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)にて観察したところ、架橋したアクリルゴム(B)の粒子が分散し、フッ素ゴム(A)の連続相で覆われていた。その理由は、以下のことから推論した。すなわち、表面上に存在する連続相が、フッ素ゴムかどうかを確認するために行った、走査型電子顕微鏡で観察した表面の元素分析結果において、フッ素元素が濃度9.3質量%で検出されたことによる。
走査型電子顕微鏡での観測結果を図1に示す。
【0045】
また、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率1000倍)にて観察し、任意に選択した30個のアクリルゴム粒子の大きさの平均値を、平均粒子径として測定したところ、アクリルゴム粒子の平均粒子径は10μmであった。観測結果を図2に示す。
また、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物を、トルエンに24時間浸漬し、トルエンに溶解しない不溶性成分の質量(W1)を、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の質量(W2)で除した値(W1/W2)を、百分率に換算して、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物のゲル成分比率を算出したところ、ゲル成分比率は96%であった。
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パークミルD)の0.5質量部と、充填剤(FEFカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部とをロールを用いて混練し、実施例1の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物を、170℃で20分間プレス架橋(圧力20MPa)した後、165℃で3時間のオーブン熱風架橋を行い、厚さ2mmの架橋ゴムシートを作製した。この架橋ゴムシートを用いて、JIS K6251およびJIS K 6253に準拠して、常態物性を評価した。引張強度は10.1MPa、伸びは222%、硬度(shore−A)は75であった。
【0046】
(実施例3)
フッ素ゴム(A)(AFLAS 150L)の100質量部と、アクリルゴム用架橋剤(キュアゾール2MZ−H)の1質量部と、アクリルゴム用架橋助剤(バルノック AB−S)の2質量部とをロール混練して、ベースコンパウンド(フッ素ゴム組成物)を得た。
得られたベースコンパウンドの20質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の80質量部とを東洋精機社製ラボプラストミルR−30を用い、充填率約80%、ラボプラストミルの回転数40rpm、ラボプラストミル内温度約170℃の条件で、5分間混練した。その後、加工助剤(St−Zn)の2.5質量部を添加して、同条件で1分間混練し、アクリルゴム(B)の動的架橋を行い、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。
【0047】
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パーカードックス14R−P)の0.5質量部と、充填剤(MTカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部と、老化防止剤(ノクラックCD)の1質量部とをロールを用いて混練し、実施例3の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物を、170℃で20分間プレス架橋(圧力20MPa)した後、165℃で3時間のオーブン熱風架橋を行い、厚さ2mmの架橋ゴムシートを作製した。この架橋ゴムシートを用いて、JIS K6251およびJIS K 6253に準拠して、常態物性を評価した。引張強度は8.5MPa、伸びは250%、硬度(shore−A)は42であった。
【0048】
(実施例4)
フッ素ゴム(A)(AFLAS 150L)の100質量部と、アクリルゴム用架橋剤(キュアゾール2MZ−H)の3質量部と、アクリルゴム用架橋助剤(バルノック AB−S)の3質量部とをロール混練して、ベースコンパウンド(フッ素ゴム組成物)を得た。
得られたベースコンパウンドの20質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の80質量部とを東洋精機社製ラボプラストミルKF70V2を用い、充填率約80%、ラボプラストミルの回転数40rpm、ラボプラストミル内温度約170℃の条件で、5分間混練した。その後、加工助剤(St−Zn)の2.5質量部を添加して、同条件で1分間混練し、アクリルゴム(B)の動的架橋を行い、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パーカードックス14R−P)の0.5質量部と、充填剤(MTカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部と、老化防止剤(ノクラックCD)の1質量部とをロールを用いて混練し、実施例4の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物を、170℃で20分間プレス架橋(圧力20MPa)した後、165℃で3時間のオーブン熱風架橋を行い、厚さ2mmの架橋ゴムシートを作製した。この架橋ゴムシートを用いて、JIS K6251およびJIS K 6253に準拠して、常態物性を評価した。引張強度は8.0MPa、伸びは225%、硬度(shore−A)は61であった。
【0049】
(比較例1)
フッ素ゴム(A)(AFLAS 150L)の100質量部をロール混練して、ベースコンパウンド(フッ素ゴム組成物)を得た。
得られたベースコンパウンドの20質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の80質量部とをラボプラストミルを用い、充填率約80%、ラボプラストミルの回転数40rpm、ラボプラストミル内温度約170℃の条件で、20分間混練して、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。
得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の外観を、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)にて観察したところ、アクリルゴム(B)の相中に、フッ素ゴム(A)の相が分散していた。また、実施例1と同様にしてアクリルゴム(B)の平均粒子径を測定したところ、アクリルゴム(B)の平均粒子径は150μmであった。
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パークミルD)の0.5質量部と、充填剤(FEFカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部とをロールを用いて混練し、比較例1の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物について、実施例1と同様にして常態物性を評価した。引張強度は4.1MPa、伸びは501%、硬度(shore−A)は84であった。
【0050】
(比較例2)
比較例1において、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、アクリルゴム用架橋剤(CN−25)の2.4質量部と、アクリルゴム用架橋助剤(バルノック AB−S)の0.8質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パークミルD)の0.5質量部と、充填剤(FEFカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部とをロールを用いて混練した以外は、比較例1と同様にして比較例2の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物について、実施例1と同様にして常態物性を評価した。引張強度は11.2MPa、伸びは241%、硬度(shore−A)は74であった。
【0051】
(比較例3)
比較例1において、ベースコンパウンドの50質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の50質量部とをラボプラストミルを用い、比較例1と同様にして混練して、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。
得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の表面を、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)にて観察したところ、アクリルゴム(B)の連続相中に、フッ素ゴム(A)の相が分散していた。その理由は、以下のことから推論した。すなわち、表面上に存在する連続相がフッ素ゴムでないことを確認するため、顕微鏡で観察した表面の元素分析結果において、フッ素元素の濃度は0.0質量%とほぼ検出されなかったためである。走査型電子顕微鏡による観測結果を図3に示す。
また、実施例1と同様にしてアクリルゴム(B)の平均粒子径を測定したところ、アクリルゴム(B)の平均粒径は500μm以上であった。
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パークミルD)の0.5質量部と、充填剤(FEFカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部とをロールを用いて混練し、比較例3の架橋性組成物を得た。
得られた架橋性組成物について、実施例1と同様にして常態物性を評価した。引張強度は4.7MPa、伸びは438%、硬度(shore−A)は75であった。
【0052】
(比較例4)
比較例1において、ベースコンパウンドの20質量部と、アクリルゴム(B)(デンカER−5300)の80質量部とをラボプラストミルを用い、比較例1と同様にして混練して、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物を得た。
得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の表面を、走査型電子顕微鏡(倍率500倍)にて表面観察したところ、アクリルゴム(B)の連続相中に、フッ素ゴム(A)の相が分散していた。その理由は、以下のことから推論した。すなわち、表面上に存在する連続相がフッ素ゴムでないことを確認するため、顕微鏡で観察した表面の元素分析結果において、フッ素元素の濃度は0.0質量%となり、ほぼ検出されなかったためである。また、実施例1と同様にしてアクリルゴム(B)の平均粒子径を測定したところ、アクリルゴム(B)の平均粒子径は測定できなかった。
次に、得られたアクリルゴム/フッ素ゴム組成物の100質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パークミルD)の0.5質量部と、充填剤(FEFカーボン)の50質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Zn)の2質量部とをロールを用いて混練し、比較例4の架橋性組成物を得た。
【0053】
得られた架橋性組成物について、実施例1と同様にして常態物性を評価した。引張強度は6.8MPa、伸びは506%、硬度(shore−A)は66であった。
実施例1、3、4、および比較例1〜4の架橋性組成物の組成と常態物性を表1にまとめて記す。
【0054】
【表1】
【0055】
(積層体)
フッ素ゴム(C)(AFLAS 150P)の100質量部と、充填剤(FEFカーボン)の20質量部と、フッ素ゴム用架橋助剤(TAIC)の5質量部と、加工助剤(St−Na)の1質量部と、フッ素ゴム用架橋剤(パーブチルP)の0.5質量部とを準備し、これらを、ロールを用いて混練することにより、架橋性フッ素ゴム組成物を調製した。
上記架橋性フッ素ゴム組成物の未架橋ゴムシートと、実施例1、3、4および比較例1〜4の架橋性組成物の未架橋ゴムシートとを重ね合わせて、170℃で20分間プレス架橋した後、165℃で3時間のオーブン中にて2次架橋して、実施例2,5,6、および比較例5〜8の積層体を作製した。なお、該積層体は、架橋後のフッ素ゴム組成物層の厚みが1mm、架橋後のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物層の厚みが1mmとなるように作製した。
得られた積層体を用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。その結果を、表2に記す。
【0056】
〔常態における層間接着性〕
各積層シートから、厚み2mm(各1mmずつ)、幅25.4mmの試験片を短冊状に切り出し、試験片を作製した。該試験片の外層を、引張試験機(JIS B 7721)を用いて、毎分50mmの速度で引き剥がし、層間接着力(N/mm)を測定した。また、層間の剥離状態を目視にて観察した。剥離面が完全に材破していたものを○(優)、剥離面が一部材破していたものを△(良)、界面で剥離していたものを×(不良)と、評価した。
【0057】
〔高温環境下での層間接着性〕
各積層シートから、厚み2mm(各1mmずつ)、幅25.4mmの試験片を短冊状に切り出し、試験片を作製した、該試験片を、150℃に保持した恒温槽付き引張試験機(JIS B 7721)中に10分間放置した後、試験片の外層を毎分50mmの速度で引き剥がし、層間接着力(N/mm)を測定した。また、層間の剥離状態を目視にて観察した。剥離面が完全に材破していたものを○(優)、剥離面が一部材破していたものを△(良)、界面で剥離していたものを×(不良)と、評価した。
【0058】
【表2】
【0059】
上記表2の結果から、実施例2、5、6の積層体は、常態および高温環境下での層間接着性に関して優れた結果が得られた。
これに対して、比較例5の積層体は、表2に示されるように、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物層の常態物性が低かった。また、層間接着性について、その剥離状態は界面剥離であった。
また、比較例6の積層体は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物層の大部分がアクリルゴムで形成されているため、常態物性が優れていた。しかし、比較例6の積層体層間接着性について、その剥離状態は界面剥離であった。
また、比較例7の積層体は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物層の常態物性は、比較例5に比べて改善されているものの、十分ではなく、また、層間接着性について、その剥離状態は界面剥離であり、層間接着性が低かった。
比較例8の積層体は、アクリルゴム/フッ素ゴム組成物層の大部分がフッ素ゴムで構成されているので常態物性は優れていたが、層間接着性は十分ではなかった。また、フッ素ゴムの含有量が多いため、高コストであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のアクリルゴム/フッ素ゴム組成物を含有する架橋性組成物から得られる耐熱エアーゴムホースは、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐圧性に優れており産業上有用である。特に、高温高圧耐性が要求される自動車用のエアー系ホース(ターボエアーホース、ブローバイガス用ホース、エミッションコントロールホース等)として、良好に用いられる。
なお、2012年1月18日に出願された日本特許出願2012−007865号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
図3