(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の結晶系太陽電池は、pn接合型のフォトダイオード構造を有しており、半導体基板の一方の面がp型半導体、他方の面がn型半導体となっているのが一般的である。また、そのような太陽電池では、受光面に半導体基板の導電型(p型)と反対の導電型(n型)となる拡散層を設け、その上に反射防止膜としてSiNx膜を形成した構成が多かった。
【0003】
図1に、p型半導体基板を用いた従来の太陽電池の断面構成の一例を示す。
図1に示すように、受光面側には、p型半導体基板104の導電型と反対の型(すなわちn型)の薄い拡散層103を設け、その上に反射防止膜102として窒化珪素(SiNx)膜が形成されている。また、反射防止膜102上には、光励起したキャリアを集電するための電極101が数mm間隔(0.1〜5mm程度の間隔)で設けられる。また、裏面には集電用の電極107が数mm関隔で設けられている。これらの電極101、107には導電性の観点から銀(Ag)が用いられることが多く、また太陽電池は安価に形成される必要があることから導電性の金属ペーストを印刷法により電極形状に印刷し、高温焼結で形成されることが多かった。
【0004】
また、
図1のp型半導体基板104の裏面側(p型領域)において電極107以外の領域は酸化珪素(SiO
2)膜からなるパッシベーション膜105で保護(パッシベーション)されている。このような裏面にSiO
2膜をパッシベーション膜として形成する構造は、例えば特開平9−097916号公報(特許文献1)に記載されている。
【0005】
また、SiO
2膜は通常、熱酸化により形成されるが、特開平8−078709号公報(特許文献2)では、良好なパッシベーション効果を示すSiO
2膜を化学的な処理により形成する方法が開示されており、特開2003−347567号公報(特許文献3)、特開2004−006565号公報(特許文献4)では、塗布により形成する方法が記載されている。
【0006】
また、国際公開第2008/065918号(特許文献5)では、p型領域のパッシベーション膜として、酸化アルミニウム膜も有効であることが開示されている。
また、特開平10−229211号公報(特許文献6)では、半導体基板上にシリコンナイトライド(窒化シリコン)膜をパッシベーション膜として形成する構成が開示されている。
【0007】
ところで、近年、シリコン結晶系太陽電池の高効率化の手段として、n型半導体基板の利用が検討されており(例えば、特開2005−327871号公報(特許文献7))、かかるn型半導体基板を用いた場合において、更に光電変換効率を高めることが望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、工程数を増やすことなく、適切なパッシベーション効果が得られ、高い光電変換効率が得られる太陽電池の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
シリコン結晶系太陽電池の光電変換効率を向上させるためには表裏それぞれの面のパッシベーション(不活性化)が重要となっている。ここで、太陽電池基板のパッシベーション膜としては、例えばSiNx膜、SiO
2膜、酸化アルミニウム膜などがあるが、これらのうち、SiNx膜はn型半導体のパッシベーション性に優れている。これは、SiNx膜が正の電荷を帯びているためと考えられている。
したがって、半導体基板がn型である場合は、受光面側にp型拡散層が形成されるが、これに
図1のパッシベーション膜105と同様にSiNx膜を形成しても、p型拡散層のパッシベーション膜として十分な役割を果たさない。
一方、SiO
2膜や酸化アルミニウム膜はp型半導体のパッシベーション性に有効とされている。
本発明者らは、これらの知見を基に鋭意検討を行い、以下の発明を成すに至った。
【0011】
すなわち、本発明は前記課題を解決するための手段として、下記の太陽電池の製造方
法を提供する。
〔1〕
第一主面にのみテクスチャを有するn型半導体基板と、該n型半導体基板の第一主面に形成されたp型拡散層と、該p型拡散層上に形成されたSiO2膜からなるパッシベーション膜と、前記n型半導体基板の第二主面に形成されたSiNx膜からなるパッシベーション膜とを備える太陽電池の製造方法であって、
n型半導体基板の第二主面にSiNx膜を形成する工程と、
前記SiNx膜形成工程の後で、前記SiNx膜をテクスチャ形成に対する処理マスクとしつつ、前記n型半導体基板の第一主面にテクスチャを形成する工程と、
前記
テクスチャ形成工程の後に、
前記SiNx膜をp型拡散層形成に対する拡散マスクとしつつ、前記n型半導体基板の第一主面にp型拡散層を形成
し、次いでふっ酸で該n型半導体基板表面に形成されたガラスを除去する工程と、
前記SiNx膜を
SiO2膜形成に対する酸化マスクと
しつつ、前記p型拡散層上にSiO
2膜からなるパッシベーション膜を形成する工程と、
を有
し、前記SiNx膜を最終的にパッシベーション膜とすることを特徴とする太陽電池の製造方法。
〔2〕 前記SiO
2膜を熱酸化法により形成することを特徴とする〔1〕に記載の太陽電池の
製造方法。
〔3〕 前記SiNx膜の膜厚が
150nm以上250nm以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の太陽電池の製造方法。
〔4〕
前記p型拡散層をBBr3を拡散源とした気相拡散法により形成することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
〔5〕 前記パッシベーション膜上に反射防止膜を形成する工程を有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
〔6〕
第一主面にのみテクスチャを有するp型半導体基板と、該p型半導体基板の第一主面に形成されたSiO2膜からなるパッシベーション膜と、前記p型半導体基板の第二主面に形成されたn型拡散層と、該n型拡散層上に形成されたSiNx膜からなるパッシベーション膜とを備える太陽電池の製造方法であって、
p型半導体基板の第二主面にn型拡散層を形成する工程と、
前記n型拡散層上にSiNx膜を形成する工程と、
前記SiNx膜形成工程の後で、前記SiNx膜をテクスチャ形成に対する処理マスクとしつつ、前記p型半導体基板の第一主面にテクスチャを形成する工程と、
前記
テクスチャ形成工程の後に、前記SiNx膜を
SiO2膜形成に対する酸化マスクと
しつつ、前記p型半導体基板の第一主面にSiO
2膜からなるパッシベーション膜を形成する工程と、
を有
し、前記SiNx膜を最終的にパッシベーション膜とすることを特徴とする太陽電池の製造方法。
〔7〕 前記SiO
2膜を熱酸化法により形成することを特徴とする〔6〕に記載の太陽電池の
製造方法。
〔8〕 前記SiNx膜の膜厚が
150nm以上250nm以下であることを特徴とする〔6〕又は〔7〕に記載の太陽電池の製造方法。
〔9〕
前記n型拡散層をオキシ塩化リンを拡散源とした気相拡散法により形成することを特徴とする〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
〔10〕 前記パッシベーション膜上に反射防止膜を形成する工程を有することを特徴とする〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池の製造方法によれば、最終的にパッシベーション膜となるSiNx膜が、製造過程において、p型拡散層形成に対する拡散マスクとなり、更にSiO
2膜形成に対する酸化マスクとなるので、余分な工程を必要とせず、表裏面それぞれに適切なパッシベーション膜を有する太陽電池を製造することができ、光電変換の高効率化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る太陽電池の製造方法及び太陽電池の構成について説明する。
〔第1の実施形態〕
図2は、本発明に係る太陽電池の第1の実施形態における構成を示す断面図であり、半導体基板がn型の場合を示している。
図2に示すように、n型半導体基板204の受光面(第一主面ともいう。)にはp型拡散層(p
+1層)203、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206、反射防止膜202がその順番で積層された構造を有している。また、n型半導体基板204の裏面(第二主面、非受光面ともいう。)にはSiNx膜205を有している。更に、n型半導体基板204の表裏それぞれの面には、太陽電池の正負の極に対応する集電電極201、207をそれぞれ有している。
【0015】
ここで、反射防止膜202は、SiNx膜からなる。
【0016】
このような断面構造を有する太陽電池は、SiNx膜205、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206がそれぞれ裏面、表面のパッシベーション膜として機能するので、高い光電変換効率を示す。
【0017】
図2に示す構成の太陽電池は、例えば
図3に示す工程で製造される。以下、
図3を参照しながら各工程を説明する。なお、
図3において、
図2の太陽電池の対応する層には
図2と同じ参照符号を付している。
【0018】
(工程1) 高純度シリコンにリン、砒素、アンチモンのようなV族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}n型シリコン基板(以下、単に基板と称する)204の表面のスライスダメージを濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくはふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチング処理する。単結晶シリコン基板は、CZ法(Czochralski法)、FZ法(Floating Zone法)いずれの方法によって作製されてもよく、更には基板は多結晶であっても何ら問題ない(
図3(a))。
【0019】
(工程2) この基板204の非受光面(裏面)にSiNx膜205を製膜する(
図3(b))。このSiNx膜205はパッシベーション膜として機能するだけでなく、入射光の基板内部反射膜、ならびに、後の工程での拡散マスク、酸化マスクとして機能する。
【0020】
SiNx膜205の厚さは、50〜250nmが好ましい。SiNx膜205の厚さが50nmより薄いとパッシベーション効果やマスク効果が得られなくなるおそれがある。また、その厚さが250nmより厚いと、内部反射膜としての効果が低下してしまう場合がある。なお、SiNx膜205等の膜の厚さはエリプソメータや電子顕微鏡等で測定できるほか、目視により色調にてある程度の厚みを推定することも可能である。
【0021】
また、SiNx膜205の製膜はプラズマCVD装置などを用いCVD(Chemical Vapor Deposition)法により行われる。CVD法の反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能である。また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板204に多結晶シリコンを用いた場合には基板204のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合してもよい。CVD法の反応ガスの励起方法としては、前述のプラズマによるもののほか、熱CVDや光CVDなどを用いてもよい。
【0022】
SiNx膜205の形成後、テクスチャと呼ばれる微小な凹凸形成を行うことが好ましい。この場合、SiNx膜205の保護によりテクスチャが基板204の裏面に形成されなくなるため、基板204の裏面の表面積はテクスチャ形成する場合に比べて小さくなり、再結合による光電変換特性の低下を抑えることができ、有効である。
【0023】
テクスチャ形成は太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に10〜30分程度浸漬することで作製される。前記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。なお、テクスチャ形成は、必要によっては、SiNx膜の形成前に行うことができる。
【0024】
(工程3) SiNx膜205を形成した後に、基板204の受光面側のテクスチャ形成面上にp型拡散層203を形成する(
図3(c))。p型拡散層203の形成にはBBr
3を拡散源とした気相拡散法が用いられる。具体的には、BBr
3が0.1〜5vol%となるようにキャリアガス流量を調整し、更にボロンガラスを形成するために酸素も同程度混合する。このガス雰囲気下で温度850〜1050℃で時間5〜60分の熱処理を行う。この際、基板204の裏面にはSiNx膜205が形成されているため、これが拡散マスクとして働き、該裏面におけるp型拡散層の形成を防ぐことができる。
【0025】
また、p型拡散層203の形成には、ホウ素を拡散源とする塗布層を基板204の表面全面に塗布する方法を用いてもよい。すなわち、塗布層を刷毛で塗ったり、インクジェット印刷やスクリーン印刷したり、スピン塗布したりしてから前記と同様の条件で熱処理することでp型拡散層203を形成できる。
【0026】
次いで、拡散の熱処理後の基板204の表面に形成されたガラスをふっ酸などで除去した後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ硝酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素水を混合させ、60〜90℃に加湿して洗浄してもよい。
【0027】
(工程4) この洗浄済み基板のp型拡散層203上に厚さ5〜50nm程度のSiO
2膜もしくは酸化アルミニウム膜206を形成する(
図3(d))。SiO
2膜206は、熱酸化やCVD法、酸化膜塗布等で形成できるが、優れたパッシベーション特性を得るためには熱酸化法が好ましい。具体的には、700〜1000℃の酸素雰囲気中の炉内に前記工程3までの処理が済んだ基板204を配置し、5〜60分間の熱処理を行うことで高品質のSiO
2膜が形成される。この際、基板204の裏面にはSiNx膜205が形成されているため、該裏面へのSiO
2膜の形成を防ぐことができる。
【0028】
また、酸化アルミニウム膜206は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等での形成が可能である。特にCVD法の一手段であるALD(Atomic Layer Deposition)法は、優れたパッシベーション特性が得られ好ましい。一方で、ALD法は、被覆効率が非常に高いため、製膜面以外への回り込みが極めて大きくなってしまうという問題がある。しかしながら、本発明においては、基板204の裏面にSiNx膜205が形成されているため、該裏面への酸化アルミニウム膜の形成を防ぐことができる。
【0029】
(工程5) 次に、基板204の受光面側のSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206上に反射防止膜202を形成する(
図3(e))。ここでは、裏面側のSiNx膜205の場合と同様に、プラズマCVD装置等を用い、SiNx膜等を反射防止膜202として厚さ50〜80nmで製膜する。
【0030】
(工程6) 次いで、基板204の裏面側にSiNx膜205を介して集電電極207を形成し、受光面側に反射防止膜202、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206を介して集電電極201を形成する(
図3(f))。集電電極201、207の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、印刷法などが挙げられる。このうち、経済的観点からインクジェット印刷やスクリーン印刷などの印刷法を用いるのが好ましい。すなわち、工程5までの処理が済んだ基板204の裏面側ならびに受光面側に、Agなどの金属微粒子を有機溶媒中に分散させた導電性ペーストを電極パターン状に印刷し、乾燥する。このときの電極パターン形状としては、受光面側の集電電極201は櫛歯型の形状を取るとよく、裏面側の集電電極207は基板全面を覆う形態でもよいし、受光面側の集電電極201と同じ櫛歯型としてもよいし、あるいは格子状としてよく、様々な形状とすることが可能である。これらの印刷の後、600〜900℃程度の熱処理により、Agの焼結ならびに、反射防止膜202、SiNx膜205及びSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206に銀粉末を貫通(ファイアースルー)させ、電極と基板204のシリコンを導通させる。なお、集電電極201、207の焼成は別々に行ってもよいし、一度に行うことも可能である。
【0031】
以上の本発明の製造方法によれば、
図2に示す基板204の表裏面それぞれに適切なパッシベーション膜となるSiNx膜205、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206を有する太陽電池を製造することができ、光電変換の高効率化を図ることができる。また、SiNx膜205は、最終的にパッシベーション膜となるが、製造の早い段階でSiNx膜205を形成するので、それ以降に行われるテクスチャ形成に対する処理マスクとなり、太陽電池として再結合による光電変換特性の低下を抑えることができる。また、SiNx膜205は工程3におけるp型拡散層形成に対する拡散マスクとなり、また、工程4におけるSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜206形成に対する酸化マスクとなり、簡単に太陽電池作製を行うことができる。
【0032】
なお、本実施形態における太陽電池の製造方法において、前記工程2の前に、基板204の受光面とは反対側の面(裏面)にn
+型拡散層208を形成し、次いで前記工程2以降の処理を行ってもよい。これにより、
図4に示すようなn型半導体基板204の受光面側にp型拡散層203、裏面側にn
+型拡散層208を備える高い光電変換効率を有する太陽電池を得ることができる。
【0033】
〔第2の実施形態〕
図5は、本発明に係る太陽電池の第2の実施形態における構成を示す断面図であり、半導体基板がp型の場合を示している。
図5に示すように、p型半導体基板404の受光面(第一主面ともいう。)にはSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406、反射防止膜402がその順番で積層された構造を有している。また、p型半導体基板404の裏面(第二主面、非受光面ともいう。)にはn型拡散層(n
+層)403、SiNx膜405を有している。更に、p型半導体基板404の表裏それぞれの面には、太陽電池の正負の極に対応する集電電極401、407をそれぞれ有している。
【0034】
ここで、反射防止膜402は、SiNx膜からなる。
【0035】
このような断面構造を有する太陽電池は、SiNx膜405、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406がそれぞれ裏面、表面のパッシベーション膜として機能するので、高い光電変換効率を示す。
【0036】
図5に示す構成の太陽電池は、例えば
図6に示す工程で製造される。以下、
図6を参照しながら各工程を説明する。なお、
図6において、
図5の太陽電池の対応する層には
図5と同じ参照符号を付している。
【0037】
(工程i) アズカットのp型半導体基板(以下、基板と称する。)404のスライスダメージを化学的エッチングにより除去する。詳しくは、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくはふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチング処理する(
図6(a))。
【0038】
(工程ii) 次に、基板404の受光面とは反対側の面(裏面)にn型拡散層403を形成する(
図6(b))。n型拡散層403の形成にはオキシ塩化リンを拡散源とした気相拡散法が用いられる。具体的には、オキシ塩化リンが0.1〜5vol%となるようにキャリアガス流量を調整し、更にリンガラスを形成するために酸素も同程度混合する。このガス雰囲気下で温度750〜950℃で時間5〜60分の熱処理を行う。この際、2枚の基板404を表面同士を重ねあわせた状態で熱処理を行えば、裏面にのみn型拡散層403を形成することができる。
【0039】
また、n型拡散層403の形成には、リンを拡散源とする塗布層を基板表面全面に塗布する方法を用いてもよい。すなわち、塗布層を刷毛で塗ったり、インクジェット印刷やスクリーン印刷したり、スピン塗布したりしてから前記と同様の条件で熱処理することでn型拡散層403を形成できる。なお、形成されたリンガラスをふっ酸などで除去後、拡散の熱処理後の基板404の表面に形成されたガラスをふっ酸などで除去する。
【0040】
(工程iii) n型拡散層403上にSiNx膜405をプラズマCVD法などにより製膜する(
図6(c))。このSiNx膜405はパッシベーション膜として機能するだけでなく、入射光の基板内部反射膜、ならびに、後の工程での拡散マスク、酸化マスクとして機能する。
【0041】
SiNx膜405の厚さは、50〜250nmが好ましい。SiNx膜405の厚さが50nmより薄いとパッシベーション効果やマスク効果が得られなくなるおそれがある。また、その厚さが250nmより厚いと、内部反射膜としての効果が低下してしまう場合がある。
【0042】
SiNx膜405を形成した後に、テクスチャと呼ばれる微細な凹凸形成を行うことが好ましい。この場合、基板404の裏面におけるテクスチャの形成を防止するだけでなく、工程iiにおいて少なからず形成されてしまう受光面のn型拡散層を、裏面側のn型拡散層403をSiNx膜405で保護しつつ除去できるため、高い光電変換特性を得るのに極めて有効である。
【0043】
テクスチャ形成は、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に基板404を10〜30分程度浸漬することで作製する。前記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。なお、テクスチャ形成は、必要によっては、n型拡散層403の形成前に行うことができる。
【0044】
次いで、基板404を塩酸、硫酸、硝酸、ふっ硝酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加湿して洗浄してもよい。
【0045】
(工程iv) 次に、基板404の受光面に厚さ10〜50nmのSiO
2膜もしくは酸化アルミニウム膜406を形成する(
図6(d))。SiO
2膜406は、熱酸化やCVD法、酸化膜塗布等で形成できるが、優れたパッシベーション特性を得るためには熱酸化法が好ましい。具体的には、700〜1000℃の酸素雰囲気中の炉内に前記工程iiiまでの処理が済んだ基板404を配置し、5〜60分間の熱処理を行うことで高品質のSiO
2膜が形成される。この際、基板404の裏面にはSiNx膜405が形成されているため、該裏面へのSiO
2膜の形成を防ぐことができる。また、酸化アルミニウム406は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等での形成が可能であり、特にALD法が優れたパッシベーション特性が得られ好ましい。本発明においては、基板404の裏面にSiNx膜405が形成されているため、該裏面への酸化アルミニウム膜の形成を防ぐことができる。
【0046】
(工程v) 次いで、基板404の受光面側のSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406上に反射防止膜402を形成する(
図6(e))。ここでは、裏面側のSiNx膜405の場合と同様に、プラズマCVD装置等を用い、SiNx膜等を反射防止膜402として厚さ50〜80nmで製膜する。
【0047】
(工程vi) 最後に、基板404の裏面側にSiNx膜405を介して集電電極407を形成し、受光面側に反射防止膜402、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406を介して集電電極401を形成する(
図6(f))。集電電極401、407の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、印刷法などが挙げられる。
【0048】
以上の本発明の製造方法によれば、
図5に示す基板404の表裏面それぞれに適切なパッシベーション膜となるSiNx膜405、SiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406を有する太陽電池を製造することができ、光電変換の高効率化を図ることができる。また、SiNx膜405は、最終的にパッシベーション膜となるが、製造の早い段階でSiNx膜405を形成するので、それ以降に行われるテクスチャ形成に対する処理マスクとなり、太陽電池として再結合による光電変換特性の低下を抑えることができる。また、SiNx膜405は工程ivにおけるSiO
2膜又は酸化アルミニウム膜406形成に対する酸化マスクとなり、簡単に太陽電池作製を行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態における太陽電池の製造方法において、前記工程ivの前に、基板404の受光面側にp
+型拡散層408を形成し、次いで前記工程iv以降の処理を行ってもよい。これにより、
図7に示すようなp型半導体基板404の受光面側にp
+型拡散層408、裏面側にn型拡散層403を備える高い光電変換効率を有する太陽電池を得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の有効性を確認するため、
図2に示す断面構造を有する太陽電池を以下に示す条件Aで作製し、評価を行った。
【0051】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmのリンドープ{100}n型アズカットシリコン基板6枚を用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。
次に、シリコン基板の片面にのみSiNx膜205をプラズマCVD法により製膜した。このときの反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は150nm、屈折率は2.1とした。次いで、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。この際、SiNx膜がマスクとなり、SiNx膜形成面とは反対側の面上にのみ、テクスチャが形成された。
次に、p型拡散層203の形成を行った。詳しくは、シリコン基板2枚をその裏面同士を重ねあわせた状態で、BBr
3及び酸素をそれぞれ0.8vol%窒素中に混合させたガス雰囲気の中に配置し、1000℃で15分熱処理を行った。続いて、シリコン基板の表面に形成されたボロンガラスをふっ酸で除去した。このときのシート抵抗は43Ωとなった。
次に、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、SiNx膜205形成面とは反対面に熱酸化膜(SiO
2膜)206を形成した。
引き続き、SiO
2膜206上に、SiNx膜からなる反射防止膜202を製膜した。この場合もプラズマCVD法を用い、膜厚は75nm、屈折率は2.1とした。
最後に、その裏面ならびに受光面に櫛歯状のパターンでAgペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。Agペーストは、粒径数〜数十nmのAg微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。この後、750℃の空気雰間気中で10秒程度熱処理し、Agを焼結させて太陽電池を完成させた。
【0052】
[比較例1]
比較のため、従来の太陽電池を以下に示す条件Bで作製し、評価を行った。
【0053】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmのリンドープ{100}n型アズカットシリコン基板6枚を用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。
次に、シリコン基板を水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。
次に、実施例1と同じ条件でp型拡散層の形成を行った。
次に、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、シリコン基板の両面に熱酸化膜(SiO
2膜)を形成した。
引き続き、両面の熱酸化膜それぞれの上にSiNx膜からなる反射防止膜を製膜した。この場合もプラズマCVD法を用い、膜厚は75nm、屈折率は2.1とした。
最後に、その裏面ならびに受光面に櫛歯状のパターンで実施例1と同じAgペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。この後、750℃の空気雰間気中で10秒程度熱処理し、Agを焼結させて太陽電池を完成させた。
【0054】
(評価方法)
以上のようにして得られた太陽電池のサンプルについて、山下電装社製ソーラーシミュレータを用いてAM1.5スペクトル、照射強度100mW/cm
2、25℃の条件下で、太陽電池特性を測定した。得られた結果の平均値を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
以上の結果、実施例1の太陽電池は、シリコン基板の裏面をSiNx膜205で直接不活性化し、更にSiNx膜205によりシリコン基板の裏面にテクスチャを形成しないようにしたので、比較例1よりも開放電圧が大幅に増加し、最大出力も増加した。また、工程数を増やすことなくこれらの効果が得られた。