(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構成単位に含まれる感光基に由来する光配向能を有するポリアミック酸を含む液晶配向剤を基板に塗布し、該塗膜にアミノ化合物を暴露した後、露光、焼成することで得られるポリイミド光配向膜の製造方法。
前記ポリアミック酸の原料であるジアミンが、以下の式(DI−1)〜(DI−17)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の
製造方法。
【化4】
式(DI−1)〜(DI−7)において、mは1〜12の整数であり;
G
21は独立して単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
m’−、−O−(CH
2)
m’−O−、または−S−(CH
2)
m’−S−であり、m’は独立して1〜12の整数であり;
G
22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、または炭素数1〜10のアルキレンであり;
各式中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の任意の−Hは、−F、−CH
3、−OH、−CF
3またはベンジルで置き換えられていてもよく、加えて式(DI−4)においては、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−c)で置き換えられていてもよく、
【化5】
式(DI−4−a)〜(DI−4−c)において、R
20は独立して−Hまたは−CH
3であり;
式(DI−2)〜(DI−7)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;そして、
シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH
2の結合位置は、G
21またはG
22の結合位置を除く任意の位置である。
【化6】
式(DI−8)において、R
21およびR
22は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;
G
23は独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;
nは1〜10の整数であり;
式(DI−9)において、R
23は独立して炭素数1〜3のアルキルであり;
pは独立して0〜3の整数であり;
qは0〜4の整数であり;
式(DI−10)において、R
24は−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルであり;
式(DI−11)において、G
24は−CH
2−または−NH−であり;
式(DI−12)において、G
25は単結合、炭素数2〜6のアルキレンまたは1,4−フェニレンであり;
rは0または1であり;
式(DI−12)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;そして、
式(DI−9)、(DI−11)および(DI−12)において、ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置は任意の位置であり;
【化7】
式(DI−13)において、G
26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−(CH
2)
m’−であり、m’は1〜12の整数であり;
R
25は炭素数3〜20のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−13−a)で表される基であり、このアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、このフェニルの−Hは、−F、−CH
3、−OCH
3、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、炭素数3〜20のアルキル、または炭素数3〜20のアルコキシで置き換えられていてもよく、このシクロヘキシルの−Hは炭素数3〜20のアルキルまたは炭素数3〜20のアルコキシで置き換えられていてもよく、ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置はその環において任意の位置であることを示し;
【化8】
式(DI−13−a)において、G
27、G
28およびG
29は結合基を表し、これらは独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の1以上の−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置き換えられていてもよく;
環B
21、環B
22、環B
23、および環B
24は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
環B
21、環B
22、環B
23、および環B
24において、任意の−Hは−Fまたは−CH
3で置き換えられてもよく;
s,tおよびuは独立して0〜2の整数であり、これらの合計は1〜5であり;
s,tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、2つの環は同じであっても異なっていてもよく;
R
26は−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH
2F、−OCHF
2、または−OCF
3であり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH
2−は下記式(DI−13−b)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化9】
式(DI−13−b)において、R
27およびR
28は独立して炭素数1〜3のアルキルであり;
vは1〜6の整数であり;
【化10】
式(DI−14)および式(DI−15)において、G
30は独立して単結合、−CO−または−CH
2−であり;
R
29は独立して−Hまたは−CH
3であり;
R
30は−H、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルであり;
式(DI−15)におけるベンゼン環の1つの−Hは、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置き換えられてもよく;
式(DI−14)および式(DI−15)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;
ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示し;
【化11】
式(DI−16)および式(DI−17)において、G
31は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
G
32は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
R
31は−Hまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
R
32は炭素数6〜22のアルキルであり;
R
33は−Hまたは炭素数1〜22のアルキルであり;
環B
25は1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
rは0または1であり;そして、
ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、液晶配向性が高く、45度付近の高いプレチルト角を安定的に与える液晶配向膜、該配向膜の製造方法、および該配向膜を有する液晶素子、特に双安定ベンド−スプレイ・モードディスプレイ型液晶表示素子に利用することのできる液晶配向膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、光配向膜を用い、これをアミン処理して基板上に形成することによって、上記の特性を満足できる液晶配向膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は以下の構成からなる。
[1] 構成単位に含まれる感光基に由来する光配向能を有するポリアミック酸にアミン処理を施した塗膜を露光し、その後ポリアミック酸のイミド化温度以上で焼成することで得られるポリイミド光配向膜であって、
液晶に対して3度から70度のプレチルト角を与え、かつ以下の式(1)で表わされる膜の配向指数(Δ)が0.27以上の値を示すことを特徴とする、ポリイミド光配向膜。
(式(1)中、A‖は、偏光した紫外・可視光を、液晶配向膜の表面に対して垂直に、かつ液晶配向膜における液晶配向膜の表面に平行な方向へのポリイミドの主鎖の平均配向方向に対して前記紫外・可視光の偏光方向が平行になるように液晶配向膜に入射させた際の吸収の極大付近の波長における配向膜の吸光度を表し、A⊥は、偏光した紫外・可視光を、液晶配向膜の表面に対して垂直に、かつ液晶配向膜における液晶配向膜の表面に平行な方向へのポリイミドの主鎖の平均配向方向に対して前記紫外・可視光の偏光方向が垂直になるように液晶配向膜に入射させた際の吸収の極大付近の波長における配向膜の吸光度を表し、dは液晶配向膜の膜厚を表し、d’は液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚を表す。)
【0014】
[2] 前記ポリアミック酸が、アゾベンゼン骨格を感光基として有するポリアミック酸である、[1] に記載のポリイミド光配向膜。
【0015】
[3] 前記ポリアミック酸が、以下の式(I−1)〜(I−7)から選ばれる少なくとも1つのジアミンを原料とする、[1] または[2]に記載のポリイミド光配向膜。
【化1】
【0016】
[4] 前記ポリアミック酸の原料であるテトラカルボン酸二無水物が以下の式(AN−I)〜(AN−VII)からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1] 〜[3]のいずれかに記載のポリイミド光配向膜。
【化2】
式(AN−I)、(AN−IV)および(AN−V)において、Xは独立して単結合または−CH
2−であり;
式(AN−II)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、または−C(CF
3)
2−であり;
式(AN−II)〜(AN−IV)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり、
【化3】
これらの基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられてもよく;
式(AN−III)〜(AN−V)において、環Aは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素の基であり、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく、環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく;
式(AN−VI)において、X
10は炭素数2〜6のアルキレンであり;
Meはメチルであり;
Phはフェニルであり;
式(AN−VII)において、G
10は独立して−O−、−COO−または−OCO−であり;そして、
rは独立して0または1である。
【0017】
[5] 前記ポリアミック酸の原料であるジアミンが、以下の式(DI−1)〜(DI−17)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、[1] 〜[4]のいずれかに記載のポリイミド光配向膜。
【化4】
式(DI−1)〜(DI−7)において、mは1〜12の整数であり;
G
21は独立して単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
m'−、−O−(CH
2)
m'−O−、または−S−(CH
2)
m'−S−であり、m’は独立して1〜12の整数であり;
G
22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、または炭素数1〜10のアルキレンであり;
各式中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の任意の−Hは、−F、−CH
3、−OH、−CF
3またはベンジルで置き換えられていてもよく、加えて式(DI−4)においては、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−c)で置き換えられていてもよく、
【化5】
式(DI−4−a)〜(DI−4−c)において、R
20は独立して−Hまたは−CH
3であり;
式(DI−2)〜(DI−7)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;そして、
シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH
2の結合位置は、G
21またはG
22の結合位置を除く任意の位置である。
【化6】
式(DI−8)において、R
21およびR
22は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり;
G
23は独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり;
nは1〜10の整数であり;
式(DI−9)において、R
23は独立して炭素数1〜3のアルキルであり;
pは独立して0〜3の整数であり;
qは0〜4の整数であり;
式(DI−10)において、R
24は−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルであり;
式(DI−11)において、G
24は−CH
2−または−NH−であり;
式(DI−12)において、G
25は単結合、炭素数2〜6のアルキレンまたは1,4−フェニレンであり;
rは0または1であり;
式(DI−12)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;そして、
式(DI−9)、(DI−11)および(DI−12)において、ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置は任意の位置であり;
【化7】
式(DI−13)において、G
26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−(CH
2)
m'−であり、m’は1〜12の整数であり;
R
25は炭素数3〜20のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−13−a)で表される基であり、このアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられてもよく、任意の−CH
2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、このフェニルの−Hは、−F、−CH
3、−OCH
3、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、炭素数3〜20のアルキル、または炭素数3〜20のアルコキシで置き換えられていてもよく、このシクロヘキシルの−Hは炭素数3〜20のアルキルまたは炭素数3〜20のアルコキシで置き換えられていてもよく、ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置はその環において任意の位置であることを示し;
【化8】
式(DI−13−a)において、G
27、G
28およびG
29は結合基を表し、これらは独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の1以上の−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置き換えられていてもよく;
環B
21、環B
22、環B
23、および環B
24は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、またはアントラセン−9,10−ジイルであり;
環B
21、環B
22、環B
23、および環B
24において、任意の−Hは−Fまたは−CH
3で置き換えられてもよく;
s,tおよびuは独立して0〜2の整数であり、これらの合計は1〜5であり;
s,tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、2つの環は同じであっても異なっていてもよく;
R
26は−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH
2F、−OCHF
2、または−OCF
3であり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH
2−は下記式(DI−13−b)で表される2価の基で置き換えられていてもよく;
【化9】
式(DI−13−b)において、R
27およびR
28は独立して炭素数1〜3のアルキルであり;
vは1〜6の整数であり;
【化10】
式(DI−14)および式(DI−15)において、G
30は独立して単結合、−CO−または−CH
2−であり;
R
29は独立して−Hまたは−CH
3であり;
R
30は−H、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルであり;
式(DI−15)におけるベンゼン環の1つの−Hは、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置き換えられてもよく;
式(DI−14)および式(DI−15)において、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示し;
ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示し;
【化11】
式(DI−16)および式(DI−17)において、G
31は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり;
G
32は単結合または炭素数1〜3のアルキレンであり;
R
31は−Hまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく;
R
32は炭素数6〜22のアルキルであり;
R
33は−Hまたは炭素数1〜22のアルキルであり;
環B
25は1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり;
rは0または1であり;そして、
ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示す。
【0018】
[6] 光配向能を有するポリアミック酸を含む液晶配向剤を基板に塗布し、該塗膜にアミノ化合物の蒸気によりアミン処理をした後、露光、該ポリアミック酸のイミド化温度以上に焼成することで得られるポリイミド光配向膜である、[1] 〜[5]のいずれかに記載のポリイミド光配向膜。
【0019】
[7] 構成単位に含まれる感光基に由来する光配向能を有するポリアミック酸を含む液晶配向剤を基板に塗布し、該塗膜にアミノ化合物を暴露した後、露光、焼成することで得られるポリイミド光配向膜の製造方法。
【0020】
[8] 感光基がアゾベンゼン誘導体である[7]に記載のポリイミド光配向膜の製造方法。
【0021】
[9] [1] 〜[6]のいずれかに記載の光配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0022】
本発明に拠れば、従来公知の方法で得ることの出来なかった、液晶配向性が高く、45度付近の高いプレチルト角を安定的に与える液晶配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のポリイミド光配向膜は、構成単位に含まれる感光基に由来する光配向能を有するポリアミック酸にアミン処理を施した塗膜を露光し、その後ポリアミック酸のイミド化温度以上で焼成することで得られるポリイミド光配向膜であって、液晶に対して3度から70度のプレチルト角を与え、かつ以下の式で表わされる膜の配向指数(Δ)が0.27以上の値を示すことを特徴とする、ポリイミド光配向膜である。すなわち、高プレチルト角を安定的に与え、さらに高配向であることを特徴とする、ポリイミド光配向膜である。
(式(1)中、A‖は、偏光した紫外・可視光を、液晶配向膜の表面に対して垂直に、かつ液晶配向膜における液晶配向膜の表面に平行な方向へのポリイミドの主鎖の平均配向方向に対して前記紫外・可視光の偏光方向が平行になるように液晶配向膜に入射させた際の吸収の極大付近の波長における配向膜の吸光度を表し、A⊥は、偏光した紫外・可視光を、液晶配向膜の表面に対して垂直に、かつ液晶配向膜における液晶配向膜の表面に平行な方向へのポリイミドの主鎖の平均配向方向に対して前記紫外・可視光の偏光方向が垂直になるように液晶配向膜に入射させた際の吸収の極大付近の波長における配向膜の吸光度を表し、dは液晶配向膜の膜厚を表し、d’は液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚を表す。)
【0025】
前記光配向能を有するポリアミック酸にアミン処理を施した塗膜とは、アミン化合物をポリアミック酸中のカルボン酸に作用させて得られる塗膜であって、その作用方法については特に制限されるものではないが、例えば、前記ポリアミック酸を含む液晶配向剤を基板に塗布し、塗膜を形成した後、アミン蒸気処理を施す方法や、前記ポリアミック酸を含む液晶配向剤にアミノ化合物を添加し、基板に塗布し、塗膜する方法などが挙げられる。
【0026】
以下、さらに詳細に説明する。
前記光配向能を有するポリアミック酸について説明する。
前記光配向能を有するポリアミック酸は、構造の一部に感光基を有するポリアミック酸である。感光基は特別な制限なく、公知の全ての感光基から選択することができる。中でも、アゾベンゼン骨格を感光基として有するポリアミック酸を好適に用いることができる。さらにアゾベンゼン感光基は主鎖に組み込まれている方が、高い光配向性を発現する上で特に好適である。
【0027】
ポリアミック酸はテトラカルボン酸二無水物およびジアミンとの反応生成物であるが、前記アゾベンゼン骨格を感光基として有するポリアミック酸の原料としては、公知のアゾベンゼン誘導体を特に制限なく用いることができる。中でも高い配向性を有し、着色が少ないことから、以下の式(I−1)〜(I−7)で示されるジアミンを好適に用いることができる。
【0029】
これらのアゾベンゼン誘導体の共重合比は特に限定されないが、光に対する感度の点から全ジアミン量に対し30モル%以上が好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。
【0030】
前記ポリアミック酸はその誘導体であってもよい。しかしながら、本発明の特徴である高いプレチルト角と高い配向性を発現させるため、一定の割合でアミック酸単位を含んでいる方がよい。このポリアミック酸単位の割合は全構成単位中、30%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0031】
ポリアミック酸誘導体とは、例えば可溶性ポリイミド、ポリアミック酸エステル、およびポリアミック酸アミド等が挙げられ、より具体的には1)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、2)ポリアミック酸のカルボキシルがエステルに変換されたポリアミック酸エステル、3)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸−ポリアミド共重合体、さらに4)該ポリアミック酸−ポリアミド共重合体の一部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。前記ポリアミック酸およびその誘導体は、一種の化合物であってもよいし、二種以上であってもよい。また前記ポリアミック酸およびその誘導体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物の構造を有する化合物であればよく、他の原料を用い、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応以外の他の反応による反応生成物を含有してもよい。
【0032】
前記ポリアミック酸を製造する為に使用するテトラカルボン酸二無水物について説明する。本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物は、公知のテトラカルボン酸二無水物から制限されることなく選択することができる。このようなテトラカルボン酸二無水物は、芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合した芳香族系(複素芳香環系を含む)、および芳香環に直接ジカルボン酸無水物が結合していない脂肪族系(複素環系を含む)の何れの群に属するものであってもよい。
【0033】
このようなテトラカルボン酸二無水物の好適な例としては、原料入手の容易さや、ポリマー重合時の容易さ、膜の電気特性の点から、式(AN−I)〜(AN−VII)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0034】
【化13】
式(AN−I)、(AN−IV)および(AN−V)において、Xは独立して単結合または−CH
2−であり、式(AN−II)において、Gは単結合、炭素数1〜20のアルキレン、−CO−、−O−、−S−、−SO
2−、−C(CH
3)
2−、または−C(CF
3)
2−であり、式(AN−II)〜(AN−IV)において、Yは独立して下記の3価の基の群から選ばれる1つであり、結合手は任意の炭素に連結しており、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられてもよく、
【化14】
式(AN−III)〜(AN−V)において、環Aは炭素数3〜10の単環式炭化水素の基または炭素数6〜30の縮合多環式炭化水素の基であり、この基の任意の水素はメチル、エチルまたはフェニルで置き換えられていてもよく、環に掛かっている結合手は環を構成する任意の炭素に連結しており、2本の結合手が同一の炭素に連結してもよく、式(AN−VI)において、X
10は炭素数2〜6のアルキレンであり、Meはメチルであり、そして、Phはフェニルであり、式(AN−VII)において、G
10は独立して−O−、−COO−または−OCO−であり、rは独立して0または1である。
【0035】
さらに詳しくは以下の式(AN−1)〜(AN−16−14)の式で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0036】
【化15】
式(AN−1)において、G
11は単結合、炭素数1〜12のアルキレン、1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンである。X
11は独立して単結合または−CH
2−である。G
12は独立してCHまたはNである。G
12がCHであるとき、CHの水素は−CH
3に置き換えられてもよい。G
12がNであるとき、G
11が単結合および−CH
2−であることはなく、X
11は単結合であることはない。そしてR
11は−Hまたは−CH
3である。式(AN−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
【化16】
式(AN−1−2)および(AN−1−14)において、mは1〜12の整数である。
【0038】
【化17】
式(AN−2)において、R
12は独立して−H、−CH
3、−CH
2CH
3、またはフェニルである。式(AN−2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0040】
【化19】
式(AN−3)において、環A
11はシクロヘキサン環もしくはベンゼン環である。式(AN−3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0042】
【化21】
式(AN−4)において、G
13は単結合、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−O−、−S−、−C(CH
3)
2−、−SO
2−、−CO−または−C(CF
3)
2−である。環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。G
13は環A
11の任意の位置に結合してよい。式(AN−4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0044】
【化23】
式(AN−4−17)において、mは1〜12の整数である。
【0046】
【化25】
式(AN−5)において、R
11は−H、または−CH
3である。ベンゼン環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていないR
11は、ベンゼン環における結合位置が任意であることを示す。式(AN−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0048】
【化27】
式(AN−6)において、X
11は独立して単結合または−CH
2−である。X
12は−CH
2−、−CH
2CH
2−または−CH=CH−である。nは1または2である。式(AN−6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化29】
式(AN−7)において、X
11は単結合または−CH
2−である。式(AN−7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
【化31】
式(AN−8)において、X
11はそれぞれ独立して単結合または−CH
2−である。R
12は−H、−CH
3、−CH
2CH
3、またはフェニルであり、環A
12はシクロヘキサン環もしくはシクロヘキセン環である。式(AN−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化33】
式(AN−9)において、rはそれぞれ独立して0または1である。式(AN−9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0056】
式(AN−10)は下記のテトラカルボン酸二無水物である。
【化35】
【0057】
【化36】
式(AN−11)において、環A
11は独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。式(AN−11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0059】
【化38】
式(AN−12)において、環A
11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。式(AN−12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0061】
【化40】
式(AN−13)において、X
13は炭素数2〜6のアルキレンである。式(AN−13)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0063】
【化42】
式(AN−14)において、G
14は独立して−O−、−COO−または−OCO−であり、rは独立して0または1である。式(AN−14)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0065】
【化44】
式(AN−15)において、wは1〜10の整数である。式(AN−15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式で表される化合物を挙げることができる。
【0067】
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の化合物が挙げられる。
【化46】
【0068】
液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、上記の酸無水物のうち、式(AN−1−1)、(AN−3−2)、(AN−4−17)、および(AN−16−14)で表される化合物がより好ましく、(AN−3−2)で表される化合物が特に好ましい。式(AN−4−17)においては、m=8である化合物が特に好ましい。
【0069】
液晶表示素子のVHRを向上させることを重視する場合には、上記の酸無水物のうち、式(AN−2−1)、(AN−3−1)、(AN−5−1)、および(AN−16−1)で表される脂環式化合物がより好ましく、(AN−2−1)、および(AN−16−1)で表される化合物が特に好ましい。
【0070】
液晶配向膜の体積抵抗値を低下させることを重視する場合には、上記の酸無水物のうち、(AN−3−2)で表される化合物がより好ましい。
【0071】
前記ポリアミック酸を製造する為に使用するジアミンについて説明する。
前記ポリアミック酸を製造する為に使用するジアミン化合物は、公知のジアミン化合物から制限されることなく選択することができる。
【0072】
ここでジアミン化合物の構造について説明する。ジアミン化合物はその構造によって2種類に分けることができる。即ち、2つのアミノ基を結ぶ骨格を主鎖として見たときに、主鎖から分岐する基、即ち側鎖基を有するジアミンと側鎖基を持たないジアミンである。この側鎖基はプレチルト角を大きくする効果を有する基である。このような効果を有する側鎖基は炭素数3以上の基である必要があり、具体的な例として炭素数3以上のアルキル、炭素数3以上のアルコキシ、炭素数3以上のアルコキシアルキル、およびステロイド骨格を有する基を挙げることができる。1つ以上の環を有する基であって、その末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシおよび炭素数2以上のアルコキシアルキルのいずれか1つを有する基も側鎖基としての効果を有する。以下の説明では、このような側鎖基を有するジアミンを側鎖型ジアミンと称することがある。そして、このような側鎖基を持たないジアミンを非側鎖型ジアミンと称することがある。
【0073】
非側鎖型ジアミンと側鎖型ジアミンを適切に使い分けることにより、それぞれに必要なプレチルト角に対応することができる。この目的のためには側鎖型ジアミンは、本発明の特性を損なわない程度に併用するのが好ましい。また側鎖型ジアミンおよび非側鎖型ジアミンそれぞれについて、液晶に対する電圧保持率、焼き付き特性および光配向性を向上させる目的で取捨選択して使用することが好ましい。
【0074】
非側鎖型ジアミンについて説明する。
既知の側鎖を有さないジアミンとしては、以下の式(DI−1)〜(DI−12)のジアミンを挙げることができる。
【0075】
【化47】
上記の式(DI−1)〜(DI−7)において、mは1〜12の整数である。G
21は独立して単結合、−O−、−S−、−S−S−、−SO
2−、−CO−、−CONH−、−NHCO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−(CH
2)
m'−、−O−(CH
2)
m'−O−、または−S−(CH
2)
m'−S−であり、m’は独立して1〜12の整数である。G
22は独立して単結合、−O−、−S−、−CO−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、または炭素数1〜10のアルキレンである。各式中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の任意の−Hは、−F、−CH
3、−OH、−CF
3またはベンジルで置き換えられてもよく、加えて式(DI−4)においては、下記式(DI−4−a)〜(DI−4−c)で置き換えられていてもよい。環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。そして、シクロヘキサン環またはベンゼン環への−NH
2の結合位置は、G
21またはG
22の結合位置を除く任意の位置である。
【0076】
【化48】
式(DI−4−a)〜(DI−4−c)において、R
20は独立して−Hまたは−CH
3である。
【0077】
【化49】
式(DI−8)において、R
21およびR
22は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、G
23は独立して炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり、wは1〜10の整数である。
式(DI−9)において、R
23は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、pは独立して0〜3の整数であり、qは0〜4の整数である。
式(DI−10)において、R
24は−H、炭素数1〜4のアルキル、フェニル、またはベンジルである。
式(DI−11)において、G
24は−CH
2−または−NH−である。
式(DI−12)において、G
25は単結合、炭素数2〜6のアルキレンまたは1,4−フェニレンであり、rは0または1である。そして、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。
式(DI−9)、式(DI−11)および式(DI−12)において、ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置は、任意の位置である。
【0078】
上記式(DI−1)〜(DI−12)の側鎖を有さないジアミンとして、以下の式(DI−1−1)〜(DI−12−1)の具体例を挙げることができる。
【0079】
式(DI−1)〜(DI−3)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化50】
【0080】
式(DI−4)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化51】
【0083】
式(DI−5)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化54】
式(DI−5−1)において、mは1〜12の整数である。
【0084】
【化55】
式(DI−5−12)において、mは1〜12の整数である。
【0085】
【化56】
式(DI−5−15)において、vは1〜6の整数である。
【0086】
【化57】
式(DI−5−29)において、kは1〜5の整数である。
【0087】
式(DI−6)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化58】
【0088】
式(DI−7)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化59】
式(DI−7−3)および(DI−7−4)において、mは1〜12の整数であり、nは独立して1または2である。
【0089】
式(DI−8)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化60】
【0090】
式(DI−9)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化61】
【0091】
式(DI−10)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化62】
【0092】
式(DI−11)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化63】
【0093】
式(DI−12)で表されるジアミンの例を以下に示す。
【化64】
【0094】
このような非側鎖型ジアミンは液晶表示素子のイオン密度を低下させる等、電気特性を改善する効果がある。前記ポリアミック酸を製造する為に使用するジアミンとして非側鎖型ジアミンを用いる場合、ジアミン総量に占めるその割合を0−50モル%とすることが好ましく、0−30モル%とすることがより好ましい。
【0095】
側鎖型ジアミンについて説明する。
側鎖型ジアミンの側鎖基としては、以下の基をあげることができる。
【0096】
側鎖基としてまず、アルキル、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルオキシ、アルケニルオキシカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニル、アルキニルオキシ、アルキニルカルボニル、アルキニルカルボニルオキシ、アルキニルオキシカルボニル、アルキニルアミノカルボニル等を挙げることができる。これらの基におけるアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、いずれも炭素数3以上の基である。但し、アルキルオキシアルキルにおいては、基全体で炭素数3以上であればよい。これらの基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0097】
次に、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のアルコキシまたは炭素数2以上のアルコキシアルキルを有することを条件に、フェニル、フェニルアルキル、フェニルアルキルオキシ、フェニルオキシ、フェニルカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニル、フェニルアミノカルボニル、フェニルシクロヘキシルオキシ、炭素数3以上のシクロアルキル、シクロヘキシルアルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルフェニル、シクロヘキシルフェニルアルキル、シクロヘキシルフェニルオキシ、ビス(シクロヘキシル)オキシ、ビス(シクロヘキシル)アルキル、ビス(シクロヘキシル)フェニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルアルキル、ビス(シクロヘキシル)オキシカルボニル、ビス(シクロヘキシル)フェニルオキシカルボニル、およびシクロヘキシルビス(フェニル)オキシカルボニル等の環構造の基を挙げることができる。
【0098】
さらに、2個以上のベンゼン環を有する基、2個以上のシクロヘキサン環を有する基、またはベンゼン環およびシクロヘキサン環で構成される2環以上の基であって、結合基が独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−もしくは炭素数1〜3のアルキレンであり、末端の環が置換基として炭素数1以上のアルキル、炭素数1以上のフッ素置換アルキル、炭素数1以上のアルコキシ、または炭素数2以上のアルコキシアルキルを有する環集合基を挙げることができる。ステロイド骨格を有する基も側鎖基として有効である。
【0099】
側鎖を有するジアミンとしては、以下の式(DI−13)〜(DI−17)で表される化合物を挙げることができる。
【化65】
式(DI−13)において、G
26は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、−CONH−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、または−(CH
2)
m'−であり、m’は1〜12の整数である。G
26の好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、および炭素数1〜3のアルキレンであり、特に好ましい例は単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−CH
2−および−CH
2CH
2−である。R
25は炭素数3〜30のアルキル、フェニル、ステロイド骨格を有する基、または下記の式(DI−13−a)で表される基である。このアルキルにおいて、任意の−Hは−Fで置き換えられてもよく、そして任意の−CH
2−は−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。このフェニルの−Hは、−F、−CH
3、−OCH
3、−OCH
2F、−OCHF
2、−OCF
3、炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシで置き換えられていてもよく、このシクロヘキシルの−Hは炭素数3〜30のアルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシで置き換えられていてもよい。ベンゼン環に結合する−NH
2の結合位置はその環において任意の位置であることを示すが、その結合位置はメタまたはパラであることが好ましい。即ち、基「R
25−G
26−」の結合位置を1位としたとき、2つの結合位置は3位と5位、または2位と5位であることが好ましい。
【0100】
【化66】
式(DI−13−a)において、G
27、G
28およびG
29は結合基であり、これらは独立して単結合、または炭素数1〜12のアルキレンであり、このアルキレン中の1以上の−CH
2−は−O−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−CH=CH−で置き換えられていてもよい。環B
21、環B
22、環B
23および環B
24は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイルまたはアントラセン−9,10−ジイルであり、環B
21、環B
22、環B
23および環B
24において、任意の−Hは−Fまたは−CH
3で置き換えられてもよく、s、tおよびuは独立して0〜2の整数であって、これらの合計は1〜5であり、s、tまたはuが2であるとき、各々の括弧内の2つの結合基は同じであっても異なってもよく、そして、2つの環は同じであっても異なっていてもよい。R
26は−F、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素置換アルキル、炭素数1〜30のアルコキシ、−CN、−OCH
2F、−OCHF
2、または−OCF
3であり、この炭素数1〜30のアルキルの任意の−CH
2−は下記式(DI−13−b)で表される2価の基で置き換えられていてもよい。
【0101】
【化67】
式(DI−13−b)において、R
27およびR
28は独立して炭素数1〜3のアルキルであり、vは1〜6の整数である。R
26の好ましい例は炭素数1〜30のアルキルおよび炭素数1〜30のアルコキシである。
【0102】
【化68】
式(DI−14)および式(DI−15)において、G
30は独立して単結合、−CO−または−CH
2−であり、R
29は独立して−Hまたは−CH
3であり、R
30は−H、炭素数1〜20のアルキル、または炭素数2〜20のアルケニルである。式(DI−15)におけるベンゼン環の1つの−Hは、炭素数1〜20のアルキルまたはフェニルで置き換えられてもよい。そして、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。式(DI−14)における2つの基「−フェニレン−G
30−O−」の一方はステロイド核の3位に結合し、もう一方はステロイド核の6位に結合していることが好ましい。式(DI−15)における2つの基「−フェニレン−G
30−O−」のベンゼン環への結合位置は、ステロイド核の結合位置に対して、それぞれメタ位またはパラ位であることが好ましい。式(DI−14)および式(DI−15)において、ベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示す。
【0103】
【化69】
式(DI−16)および式(DI−17)において、G
31は独立して−O−または炭素数1〜6のアルキレンであり、G
32は単結合または炭素数1〜3のアルキレンである。R
31は−Hまたは炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルの任意の−CH
2−は、−O−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。R
32は炭素数6〜22のアルキルであり、R
33は−Hまたは炭素数1〜22のアルキルである。環B
25は1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキシレンであり、rは0または1である。そしてベンゼン環に結合する−NH
2はその環における結合位置が任意であることを示すが、独立してG
31の結合位置に対してメタ位またはパラ位であることが好ましい。
【0104】
側鎖型ジアミンの具体例を以下に例示する。
上記式(DI−13)〜(DI−17)の側鎖を有するジアミン化合物として、下記の式(DI−13−1)〜(DI−17−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0105】
式(DI−13)で表される化合物の例を以下に示す。
【化70】
式(DI−13−1)〜(DI−13−11)において、R
34は水素原子、炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜25のアルキルまたは炭素数5〜25のアルコキシである。R
35は炭素数1〜30のアルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜25のアルキルまたは炭素数3〜25のアルコキシである。
【0106】
【化71】
式(DI−13−12)〜(DI−13−17)において、R
36は炭素数1〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜25のアルキルである。R
37は炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜25のアルキルである。
【0109】
【化74】
式(DI−13−18)〜(DI−13−33)において、R
38は水素原子または炭素数1〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜12のアルキルである。R
39は水素原子または炭素数6〜30のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜12のアルキルである。G
30は、独立して単結合、−CO−または−CH
2−である。
【0110】
式(DI−14)で表される化合物の例を以下に示す。
【化75】
【0111】
式(DI−15)で表される化合物の例を以下に示す。
【化76】
【0112】
式(DI−16)で表される化合物の例を以下に示す。
【化77】
【0115】
【化80】
式(DI−16−1)〜(DI−16−12)において、R
40は−Hまたは炭素数1〜20のアルキル、好ましくは−Hまたは炭素数1〜10のアルキルであり、そしてR
41は−Hまたは炭素数1〜12のアルキルである。
【0116】
式(DI−17)で表される化合物の例を以下に示す。
【化81】
式(DI−17−1)〜(DI−17−3)において、R
37は炭素数6〜30のアルキルであり、R
41は−Hまたは炭素数1〜12のアルキルである。
【0117】
本発明の液晶表示素子が大きなプレチルト角を必要とする場合、特に3度以上のプレチルト角を短い処理時間で効率的に発現させるためには、前記ポリアミック酸の製造に際して、側鎖型ジアミンのジアミン総量に占める割合を0−20モル%とすることが好ましく、0−10モル%とすることがより好ましい。
【0118】
上記のジアミンの具体例のうち、液晶の配向性をさらに向上させることを重視する場合には、式(DI−4−1)、(DI−5−1)、(DI−5−12)、(DI−6−7)、(DI−7−3)、(DI−16−2)、(DI−16−5)、および(DI−16−7)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−5−1)、および(DI−7−3)で表されるジアミンがさらに好ましい。また式(DI−5−1)においては、m=2、3、4、または6である化合物が特に好ましい。式(DI−7−3)においては、m=3または6であり、n=1である化合物が特に好ましい。
【0119】
上記のジアミンの具体例のうち、高いVHRを液晶配向膜に付与することを重視する場合には、式(DI−5−1)、(DI−5−29)、(DI−9−1)、および(DI−11−1)で表されるジアミンを用いるのが好ましく、式(DI−5−1)、(DI−5−29)、および(DI−9−1)で表されるジアミンがさらに好ましい。式(DI−5−1)においては、m=1である化合物が特に好ましい。式(DI−5−29)においては、k=2である化合物が特に好ましい。
【0120】
前記ポリアミック酸は、上記の酸無水物とジアミンを溶剤中で反応させることによって得られる。この合成反応においては、原料の選択以外に特別な条件は必要でなく、通常のポリアミック酸合成における条件をそのまま適用することができる。使用する溶剤については後述する。
【0121】
前記アミン処理について説明する。
前述通り、アミン処理とは、アミノ化合物をポリアミック酸中のカルボン酸に作用させる処理のことであって、その処理方法は公知の処理方法なら特に制限されるものではない。例えば、前記ポリアミック酸を含む液晶配向剤を基板に塗布し、塗膜を形成した後、アミノ化合物を吸着させたり、前記ポリアミック酸を含む液晶配向剤にアミノ化合物を添加し、基板に塗布し、塗膜する方法などが挙げられる。前者のアミンを吸着させる方法について、アミンが吸着できればどのような方法でもよいが、操作が簡単に行えることから、一定時間、塗膜された基板とアミノ化合物を同一の容器内に静置し、暴露する方法、例えば蒸気処理などにより吸着させる方法が好ましい。この時、容器内は常圧または減圧下でよく、常温、低温、または加熱下であってもよい。塗膜に特に安定的に高プレチルト角を与えることができることから、アミン蒸気処理をより好適に用いることができる。具体的には、後述する実施例記載の方法が挙げられる。
【0122】
本発明において、前記アミン処理としてポリアミック酸を含む液晶配向剤にアミノ化合物を添加する方法は、ポリアミック酸を生成する際の重合反応のアミンによるターミネーションとは基本的に異なる処理である。アミンによるターミネーションは、ポリアミック酸を生成する際の重合反応中の成長反応を抑えるためのものである。本発明のアミン処理は、既に重合反応を停止したポリアミック酸を含む液晶配向剤に、アミノ化合物を接触させカルボキシル残基と相互作用せしめることで、塗膜に特に安定的に高プレチルト角を与えることができるものであり、本発明者らが初めて見出したものである。
【0123】
上記アミン処理に用いることができるアミノ化合物は、ポリアミック酸残基と反応して、または塩を形成して、所望の特性を発現していると考えられることから、1級、2級、または3級のアミノ化合物であることが好ましい。この1級、2級、または3級のアミノ化合物の種類は特に制限がなく、公知の脂肪族または芳香族アミノ化合物から任意に選択すればよいが、所望の高いプレチルト角を得るためには、炭素数が3以上またはフッ素化された脂肪族または芳香族アミノ化合物が好ましい。
【0124】
このようなアミノ化合物として好適な化合物を以下に示す。n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン、ジイソプロピルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、2,2-トリフルオロエチルアミン、1H,1H-ヘプタフルオロブチルアミン、1H,1H-ノナフルオロペンチルアミン、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘプタデカフルオロウンデシルアミン、ベンジルアミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン3-フルオロアニリン、3-アミノベンゾトリフルオリド、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、m-アミノフェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0125】
前記塗膜を形成する液晶配向剤について説明する。
前記液晶配向剤は、ポリアミック酸以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分は、1種であっても2種以上であってもよい。
【0126】
他の成分としては、例えば、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物、ラジカル重合不飽和二重結合を有する化合物、オキサジン化合物、オキサゾリン化合物、およびエポキシ化合物から選ばれる少なくとも1つをさらに含有していてもよい。前記化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸の重量を基準にして1〜50重量%であることが好ましく、1〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。前記液晶配向剤は、前述通りアミン処理方法の一つとして、ポリアミック酸以外にアミノ化合物を含有してもよい。
【0127】
更に、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性や配向性を制御する目的から、ポリアミック酸以外のポリマーをさらに含有していてもよい。該ポリマーとしては、有機溶剤に可溶であるポリマーが挙げられる。該ポリマーは一種で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。該ポリマーの含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸の重量を基準にして0.01〜100重量%であることが好ましく、0.1〜70重量%であることがより好ましく、0.1〜50重量%であることがさらに好ましい。該ポリマーとしては、例えばポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエポキサイド、ポリエステルポリオール、シリコーン変性ポリウレタン、シリコーン変性ポリエステル、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピレングリコールジアクリレートおよびポリオキシプロピレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0128】
また、本発明の液晶配向剤は低分子化合物をさらに含有していてもよい。低分子化合物としては、例えば1)塗布性の向上を望むときにはこの目的に沿った界面活性剤、2)帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、3)基板との密着性の向上を望むときにはシランカップリング剤やチタン系のカップリング剤、また、4)低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒が挙げられる。低分子化合物の含有量は、上記の観点から、ポリアミック酸の重量を基準にして0.1〜50重量%であることが好ましく、0.1〜40重量%であることがより好ましく、0.1〜20重量%であることがさらに好ましい。
【0129】
シランカップリング剤には、エポキシ化合物の例として挙げたエポキシ基を含有するシラン化合物も含まれる。基板との密着性に加え、電気特性を長期に安定させる目的で、エポキシ基を含有するシランカップリング剤を本発明の液晶配向剤に添加してもよい。
【0130】
シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0131】
前記光配向能を有するポリアミック酸の1種類以上の他に、その他のポリアミック酸またはその誘導体を混合して用いてもよい。その他のポリアミック酸またはその誘導体を組み合わせる場合の混合割合は、光配向能を有するポリアミック酸の重量を基準として5〜50重量%であることが好ましい。
【0132】
本発明のポリイミド光配向膜は、ポリアミック酸またはポリアミック酸と他の成分の混合物を溶剤に溶解した溶液(以下ワニス溶液)を基板に塗布し、所定の処理を行うことで形成される。この時ワニス溶液の溶剤は公知のポリアミック酸の製造や使用において用いられている溶剤から、使用目的に応じて適宜選択することができる。該溶剤は一種で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの溶剤を例示すれば以下のとおりである。
【0133】
溶剤としては、非プロトン性極性有機溶剤が例示できる。非プロトン性極性有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド(DMAc)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)等のラクトンが挙げられる。
【0134】
上記以外の溶剤であって、塗布性改善等を目的とした溶剤の好ましい例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS))、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノブチルエーテル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、およびこれらグリコールモノエーテル類のエステル化合物が挙げられる。これらの内、NMP、ジメチルイミダゾリジノン、GBL、BCS、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0135】
ワニス溶液中のポリマーの濃度は、0.1〜40重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。この配向剤を基板に塗布するに当たって膜厚の調整が必要とされる場合には、予め溶剤により希釈して含有ポリマーの濃度を調整することができる。
【0136】
ワニス溶液の粘度は、塗布する方法、ポリアミック酸の濃度、使用するポリアミック酸の種類、溶剤の種類と割合によって好ましい範囲が異なる。例えば、印刷機による塗布の場合は5〜100mPa・s(より好ましくは10〜80mPa・s)である。5mPa・sより小さいと十分な膜厚を得ることが難しくなり、100mPa・sを超えると印刷ムラが大きくなることがある。スピンコートによる塗布の場合は5〜200mPa・s(より好ましくは10〜100mPa・s)が適している。インクジェット塗布装置を用いて塗布する場合は5〜50mPa・s(より好ましくは5〜20mPa・s)が適している。液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業製TVE−20L型)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0137】
本発明の光配向膜を形成する工程について説明する。
本発明の光配向膜は、前述通り、光配向能を有するポリアミック酸にアミン処理を施した塗膜を形成し、塗膜に露光を行い、その後ポリアミック酸のイミド化温度以上で焼成する工程を経て、形成することを特徴とし、以下の
図1に示す所定の方法によって製作されることが好ましい。
図1に示す1〜5の工程について、詳細に説明する。
【0138】
<1の工程について>
まず、前述のワニス溶液をスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等により基板に塗布する。基板には、ITO(Indium TinOxide)電極などの電極やカラーフィルターなどが設けられていてもよいガラス基板が挙げられる。
【0139】
<2の工程について>
予備焼成とは溶剤を比較的低温で加熱除去する工程であり、ポリアミック酸のイミド化を防ぐ目的で、150℃以下の温度で行う。その他の条件に特に限定はなく、均一な膜を形成できれば、時間や雰囲気に制限はない。
【0140】
<3の工程について>
3の工程はアミン処理の工程である。詳細は前述どおりである。
【0141】
<4の工程について>
アミン処理を施された前記塗膜に露光する。この時の光線の種類としては直線偏光と無偏光の組み合わせ、無偏光、または楕円偏光のどれでもよい。また光源としては、ポリアミック酸を配向させることができる光であれば特に限定されないが、膜の吸収スペクトルと一致した波長の光を用いることが、感度向上の観点から好ましい。光源の種類としては高圧水銀灯、Deep UVランプ、キセノンランプ、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、各種レーザー等があり、どれを用いてもよい。
【0142】
本発明の光配向膜において液晶を配向させるためには、直線偏光、無偏光、または楕円偏光が使用される。この時、より高い液晶配向性を短時間で発現させるためには、直線偏光を使用することが好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。
【0143】
本発明の光配向膜においてプレチルト角を発現させるために膜に照射される光としては、無偏光または楕円偏光が使用される。この時照射される光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、30〜60度であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。
【0144】
<5の工程について>
最後に本焼成を行う。本焼成は、ポリアミック酸が脱水・閉環反応を呈するのに必要な条件で行う。実際にはオーブンまたは赤外炉の中で加熱する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法などが知られている。ポリイミド膜は300℃以上に加熱すると、ポリマーそのものの分解が起こる場合が多い。一般に150〜300℃程度の温度で1分間〜3時間行うのが好ましく、180〜280℃が特に好ましく、200〜250℃がさらに好ましい。
【0145】
本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面の少なくとも一方に形成された本発明の液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層とを有する液晶表示素子である。
【0146】
前記電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えば双安定ベンドースプレイ・モードディスプレイ型液晶表示素子の場合は前記一対の基板の一方に櫛歯電極、他方にはコモン電極が配置され、OCBモード(光学補償ベントモード)の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0147】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。前記液晶組成物には、特に限定されず公知の液晶組成物を用いることができる。
【0148】
本発明の配向膜は、液晶配向膜として液晶表示素子を形成したときに、公知の全ての液晶組成物に対してその特性を改善できる。前記の方法によって製造された本発明の配向膜は、特に残像特性が要求される大画面ディスプレイに対して効果が大きい。このような大画面ディスプレイはTFTにより駆動制御されている。またこのようなTFT型液晶表示素子に使用される液晶組成物は、特許第3086228号公報、特許2635435号公報、特表平5−501735号公報、および特開平9−255956号公報に記載されている。従って、本発明の配向膜は、これらに記載された液晶組成物と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0149】
本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子の信頼性に係る電気特性においても優れている。このような電気特性としては、電圧保持率(VHR)およびイオン密度が挙げられる。電圧保持率は、フレーム周期間に液晶表示素子に印加された電圧が液晶表示素子に保持される割合であり、液晶表示素子の表示特性を示す。本発明の液晶表示素子は、5Vおよび周波数30Hzの矩形波を用い、60℃の温度条件で測定される電圧保持率が97.0%以上であり、5Vおよび周波数0.3Hzの矩形波を用い、60℃の温度の条件で測定される電圧保持率が85.0%以上であることが、表示不良を防ぐ観点から好ましい。
【0150】
イオン密度は、液晶表示素子に電圧を掛けたときに生ずる液晶の駆動に起因する以外の過渡電流であり、液晶表示素子中の液晶に含まれるイオン性不純物の濃度の大小を示す。本発明の液晶表示素子は、イオン密度が300pC以下であることが、液晶表示素子の焼き付きを防ぐ観点から好ましい。
【実施例】
【0151】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0152】
実施例における液晶表示素子の評価法は次の通りである。
<プレチルト角測定>
クリスタルローテーション法の測定配置で、He−Neレーザー(発振波長632.8nm)を用いて、アンチパラレルセルの透過率の入射角依存性を測定し、理論計算値(下記文献1)とフィッティングさせることによって決定した。プレチルト角の測定時の温度は25℃であった。5CBのNI点(ネマティック・等方相転移温度)は35℃であり、測定時の温度25℃、波長632.8nmでの屈折率はne=1.705(異常光)、no=1.530(常光)であった。
文献1:K. Y. Han, T. Miyashita, and T. Uchida, Jpn. J. Appl. Phys. 32, L277 (1993).
【0153】
<配向膜の配向指数測定>
ポリアミック酸およびポリイミド配向膜の偏光紫外―可視光吸収スペクトルを、30Wの重水素ランプ光源(Hamamatsu L9893)、グランレーザー偏光プリズム、リニアCCDアレイ・スペクトログラフ (BWTEK BTC112)から構成される分光システムを用いて測定した。グランレーザー偏光プリズムを通して直線偏光とした光を配向膜表面に対して垂直方向から照射した。サンプルの配向処理方向(ポリイミド主鎖の平均配向方向)と偏光方向とが平行で測定したときの紫外―可視光吸収スペクトル(A‖)および垂直で測定したときの紫外―可視光吸収スペクトル(A⊥)を測定した。アゾベンゼンのπ-π
*遷移に帰属される吸収バンドのピーク値、すなわち吸収極大の波長(ポリアミック酸膜の場合374nm〜386nm付近、ポリイミド膜の場合、307nm〜355nm付近にピークをもつ)で測定し、配向膜の吸光度の差(A‖−A⊥)および配向膜の吸光度の和(A‖+A⊥)を算出し、
で定義される配向指数Δを決定した。ここで、dは液晶配向膜の膜厚を表し、d’は液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚を表す。d/d’は配向膜の全膜厚にわたる平均配向度から配向膜の表面層の配向度への換算係数である。
【0154】
<重量平均分子量(Mw)>
液晶配向剤におけるポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC、Shodex社製、GF7MHQ)を用いて、溶出液として0.6重量%リン酸含有DMFを用い、カラム温度50℃、東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを標準溶液として測定した。
【0155】
<粘度>
粘度計(東機産業社製、TV−22)を用いて、25℃で測定した。
【0156】
実施例で用いるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、溶剤およびアミンの名称を略号で示す。以降の記述にはこの略号を使用することがある。化合物PMDA、DAZは市販の化合物を精製して実験に用いた。C18−アミン、C12−アミン、CF8−C3−アミンは市販の化合物をそのまま用いた。
【0157】
・テトラカルボン酸二無水物
ピロメリット酸二無水物:PMDA
・ジアミン
4,4’−ジアミノアゾベンゼン:DAZ
・溶剤
N−メチル−2−ピロリドン:NMP
・アミン
オクタデシルアミン:C18−アミン
ドデシルアミン:C12−アミン
4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-heptadecafluoro-undecylamine:CF8−C3−アミン
【0158】
<配向剤の調製>
温度計、攪拌機、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた200mlの四つ口フラスコにDAZを2.4660g、脱水NMPを30.00g導入し、乾燥窒素気流下攪拌溶解した。反応系の温度を5℃に保ちながらPMDAを2.5340g添加し(PMDA/DAZの原料モル比=50/50)、30時間反応させた後、脱水NMPを65.00g加えて、5重量%のポリアミック酸の配向剤を調製した。前記反応中に反応熱により温度が上昇するときは、反応温度を約70℃以下に抑えて反応させた。ここで得られたポリアミック酸は、重量平均分子量がMw=24600、多分散度が2.9であった。
【0159】
<実施例1>
前記配向剤をNMPで希釈して1.6重量%とした後、厚さ1mmの合成石英ガラス基板上にスピンナーにて塗布した。塗布条件は3000rpm、60秒であった。塗布後、80℃に設定されたホットプレート上で2分間乾燥した。
【0160】
塗布後、ポリスチレン製の角型ケース(外寸:87mm(幅)×57mm(奥行)19mm(高さ))の中にアルミホイルで仕切りを作製し、上記合成石英ガラス基板4枚とC18―アミン0.1gを
図2のように配置し、ケースに蓋をした後、全体をアルミホイルで包み、ホットプレート(アズワン社製ND−1)上に置いた。さらに、
図3に示すようにアルミホイルを巻きつけた1リットルのパイレックス製ビーカーをかぶせた後、ホットプレートを55℃に加熱して22時間そのままの状態で保持することにより、C18―アミンの蒸気を合成石英ガラス基板上に形成されたポリアミック酸膜に暴露した(アミン処理)。
【0161】
アミン処理後、ウシオ電機株式会社製の500W Deep UVランプ(UXM−501MD)を光源とし、朝日分光社製のバンドパスフィルターを通して光の波長領域を340〜500nmとし、グランテーラー偏光プリズムを通して直線偏光とした光を基板面垂直方向から1〜30分間照射し、光配向処理を行った。試料表面での照射光強度は81mW/cm
2であった。
【0162】
アミン処理と光配向処理を行った後、イナートガス・オーブン(アドバンテック社製FH−332)を用いて、窒素雰囲気中250℃にて120分間加熱処理を行い、配向膜を熱イミド化した。
【0163】
アミン処理と光配向処理を行わないことを除いてはまったく同じ条件で、石英ガラス基板上に形成されたポリアミック酸膜(アミン処理前)の厚さと、アミン処理後、窒素雰囲気中250℃にて120分間加熱処理を行い焼成したポリイミド膜の厚さを、株式会社ジェー・エー・ウーラム社製の多入射角分光エリプソメーター(M−2000)を用いて、入射角50度、60度、70度で測定した。
【0164】
上記ポリアミック酸膜(アミン処理前)の厚さは、19nm、アミン処理後に熱イミド化して得られた膜の厚さは13nmであった。
【0165】
<配向膜の全膜厚にわたる平均配向度から配向膜の表面層の配向度への換算係数d/d’の決定>
ウシオ電機株式会社製の500W Deep UVランプ(UXM−501MD)光源は波長364nmに強い発光バンドをもつので、波長364nmにおけるポリアミック酸膜(アミン処理なし)の吸収係数αを用いて、液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚d’を決定する。ポリアミック酸膜(アミン処理なし)の複素屈折率(n+iκ)を株式会社ジェー・エー・ウーラム社製の多入射角分光エリプソメーター(M−2000)を用いて、入射角50度、60度、70度で測定した。波長364nmにおける複素屈折率は1.87+i0.816であった。ポリアミック酸の吸収係数αはα=2k
0κ=2×(2π/364)×0.816=0.0282nm
-1と求まる。ここで、k
0は真空(空気)中を伝搬する光の波数である。
【0166】
光配向処理を基板法線方向から光を照射して行った場合の液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚d’は、次式より求まる。
d’=(1/α)×γ
上式中、αは、光配向処理に用いる光の波長における、光配向処理していないポリアミック酸膜の吸収係数である。γはイミド化による液晶配向膜の厚さの補正係数で、イミド化前のポリアミック酸膜の膜厚をd
PAA、イミド化後のポリイミド膜の膜厚をd
PIとするとd
PI/d
PAAで与えられる。液晶配向膜の膜厚dがd’より小さい場合はd’=dとする。本実施例、比較例の場合、γ=0.68で、d’は24nmであり、d=13nm<d’ =24nmであることから、d’=dとすることができる。
【0167】
光配向処理を入射角45°(入射角は基板法線からの角度として定義する)で光を照射して行った場合の液晶配向膜の光配向処理された領域の実効膜厚d’は、屈折を考慮して次式より求まる。
d’=(1/α)cosθ
r×γ
ここで、θ
rは屈折角で、空気中からポリアミック酸膜に光を入射角45°で入射したときθ
r=22°で、d’は22nmとなる。本実施例、比較例の場合、d=13nm<d’=22nmであることから、入射角45°の場合もd’=dとすることができる。
【0168】
図4に膜厚19nmのポリアミック酸膜にC18−アミン処理を行った後、直線偏光を基板面垂直方向から30分間照射して、光配向処理を行った試料の偏光紫外―可視光吸収スペクトルを示す。この膜の配向指数Δは0.28であった。その試料を250℃で熱イミド化して得られたポリイミド配向膜の偏光紫外―可視光吸収スペクトルを
図5に示す。この膜の配向指数Δは0.73であった。
【0169】
C18−アミン処理されたポリアミック酸膜に、直線偏光の照射量を0〜146J/cm
2まで変えて光配向処理したときの、光照射されたポリアミック酸膜の配向指数Δ(黒丸)とその膜を熱イミド化することによって得られたポリイミド光配向膜の配向指数Δ(黒四角)を
図6に示す。ポリアミック酸膜の配向指数Δが光照射量の増加と共に単調に増加していることがわかる。また、熱イミド化過程で、配向指数Δが顕著に増大していることがわかる。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは、直線偏光の照射量が5〜146J/cm
2のとき0.27〜0.73であった。
【0170】
<比較例1>
C18−アミン処理を行わないことを除いては実施例1とまったく同じ条件でポリイミド配向膜を作製した。光配向処理後のポリアミック酸膜の配向指数Δ(中抜き丸)と、その膜を熱イミド化して得られたポリイミド配向膜の配向指数Δ(中抜き四角)を
図6に示す。ポリアミック酸膜の配向指数Δが光照射量の増加と共に単調に増加し、熱イミド化過程で、配向指数Δが顕著に増大しているが、得られる配向指数Δはアミン処理を行った場合に較べ小さい。
【0171】
<比較例2>
ポリアミック酸膜に30分間の光配向処理を行った後、C18−アミン処理を行ったことを除いては実施例1とまったく同じ条件でポリイミド配向膜を作製した。そのポリイミド配向膜の配向指数Δは0.38であった。
【0172】
実施例1と比較例1の配向指数Δの光照射量依存性(
図6)を比較することにより、C18−アミン処理をポリアミック酸膜に施した後、光照射を行うことによってポリアミック酸の主鎖の回転が起こりやすくなり、約2倍大きな配向指数Δが得られることが分かる。また、熱イミド化後のポリイミド配向膜においてもC18−アミン処理を施した場合、非常に大きな配向指数Δが得られている。また、比較例2の結果を合わせることにより、C18−アミン処理をポリアミック酸膜に施した後、光照射を行い、熱イミド化することによって、光配向効率を増大させることができることがわかる。
【0173】
<実施例2>
実施例1とまったく同じ条件でポリアミック酸膜を石英ガラス基板上に製膜し、C18−アミン処理を行った後、ウシオ電機株式会社製の500W Deep UVランプ(UXM−501MD)を光源とし、朝日分光社製のバンドパスフィルターを通して光の波長領域を340〜500nmとし、グランテーラー偏光プリズムを通して直線偏光とした光を基板面垂直方向から30分間照射した(光照射量146J/cm
2)。プレチルト角を発現させるため、上記グランテーラー偏光プリズムを取り除き、波長領域を340〜500nmの無偏光の光を、上記の直線偏光照射の偏光方向に垂直な面を入射面とし、入射角(基板法線から定義)45度で、1〜60分間で照射した。試料表面での照射光強度は129mW/cm
2であった。その膜を、実施例1と同じ条件で熱イミド化し、ポリイミド光配向膜を得た。得られたポリイミド光配向膜の配向指数Δを
図7に黒四角で示す。実施範囲において、0.55〜0.64の配向指数Δが得られた。
【0174】
同一条件で作製した一対の石英ガラス基板を厚さ25μmのポリエステルフィルムをスペーサーとして用い、配向膜を形成した面を内側にして2枚の基板を対向させ、アンチパラレルセルを作成した。ここでいうアンチパラレルセルとは配向剤を塗布した基板に光配向処理をおこなったときの無偏光の光の伝播方向が反平行になるように組んだセルを意味する。前記セルにシアノビフェニル液晶(5CB)を80℃で注入し、室温まで徐冷してプレチルト角測定用のセルとした。
【0175】
光配向処理における、入射角45度での無偏光照射の光照射量と、発現するプレチルト角の関係を
図8に示す。無偏光照射の前に行った、基板法線に沿った直線偏光照射の光照射量は146J/cm
2に固定した。無偏光照射量の増加と共に急激にプレチルト角が大きくなり、光照射量8J/cm
2のとき、プレチルト角は8度、光照射量464J/cm
2のとき、プレチルト角は45度に達した。光照射量464J/cm
2において、まだ増加傾向にあることから、無偏光の光照射量をさらに増加させることにより、より大きなプレチルト角が発現した。
【0176】
また、偏光顕微鏡観察の結果、上記アンチパラレルセル(無偏光照射時間0〜60分)において液晶の配向不良は全く観察されなかった。偏光顕微鏡観察は、倍率が100倍、クロスニコル条件で行った。例として、無偏光光照射量464J/cm
2のアンチパラレルセルの偏光顕微鏡写真を
図9に示す。
【0177】
<比較例3>
C18−アミン処理を行わないこと、斜入射無偏光照射時間を30分(光照射量228J/cm
2)とすることを除いては実施例2と全く同じ条件でポリイミド光配向膜を2枚作製した。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは0.30であった。上記2枚のポリイミド光配向膜を用いて、アンチパラレル液晶セルを組み、プレチルト角を測定した。プレチルト角は2.0度であった(
図8:黒丸)。また偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向不良は全く観察されなかった。
【0178】
<比較例4>
光配向処理を行った後に実施例1と同じ条件でC18−アミン処理をした以外は、比較例3と同様にして光配向膜を作成し、アンチパラレル液晶セルを組み、プレチルト角を測定した。プレチルト角は8.5度であった(
図8:黒三角)。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは0.26であった。また偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向欠陥が観察された(
図10)。
【0179】
実施例2における斜入射無偏光照射時間30分(光照射量228J/cm
2)の結果と、比較例3、比較例4の結果とを比較することにより、より大きなプレチルト角を発現させるため、さらには液晶の配向欠陥の発生を防ぐためには、ポリアミック酸膜に対して、光配向処理の前にC18−アミン処理を行うことが有効であることがわかる。即ち、アミン処理のあとに光配向処理を行い、熱イミド化する順番が重要である。
【0180】
<実施例3>
C18−アミンの代わりにC12−アミンを用いて室温でアミン処理を16時間おこなうこと、入射角(基板法線から定義)45度で、無偏光紫外光照射を30分間行うこと以外は、実施例2と全く同じ条件で、ポリイミド配向膜を2枚作製し、アンチパラレルセルを組み、液晶のプレチルト角を測定した。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは0.77で、プレチルト角は26度であった。また偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向不良は全く観察されなかった。
【0181】
<実施例4>
C12−アミンの代わりにCF8−C3−アミンを用いること以外は、実施例3と全く同じ条件でポリイミド配向膜を2枚作製し、アンチパラレルセルを組み、液晶のプレチルト角を測定した。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは0.33で、プレチルト角は8.6度であった。また偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向不良は全く観察されなかった。
【0182】
実施例2、3、4の結果から、アミン処理に用いるアミンは、特定アミンに限定されるものではなく、上記したアミノ化合物いずれをも用いることができる。
【0183】
<実施例5>
光配向処理において直線偏光照射を行わないことと、斜め無偏光照射量を15分(115J/cm
2)とすることを除いて、実施例2と全く同じ条件でポリイミド配向膜を2枚作製し、アンチパラレルセルを組み、液晶のプレチルト角を測定した。ポリイミド光配向膜の配向指数Δは0.42であった。プレチルト角は25度であった。また偏光顕微鏡観察の結果、液晶の配向不良は全く観察されなかった。
【0184】
実施例2における斜入射無偏光照射時間15分(照射量115J/cm
2)の結果と、実施例5の結果を比較することにより、光配向処理において斜め無偏光照射のみでも、高いプレチルト角で配向不良のない液晶配向状態が得られることがわかる。
【0185】
実施例4と比較例4との比較から、プレチルト角約8.5度の液晶セルにおいて配向欠陥の発生を防ぐためには、配向指数Δが0.26では不足であり、0.33であれば十分であることがわかる。したがって、プレチルト角約8.5度の場合には、液晶の配向欠陥の発生を防ぐためには、少なくとも0.27以上の配向指数Δが必要であることがわかる。
【0186】
文献Aにおいて、プレチルト角が2度程度の場合、配向指数Δが0.07以上であれば液晶の欠陥の発生を防げることが記載されている。しかし、比較例4では配向指数Δが0.26であるにも関わらず、配向欠陥が発生した。また、文献Bにおいては、配向指数Δが0.26から0.20のポリイミド光配向膜を用いて30度から70度の範囲のプレチルト角を発生させた時、液晶の配向欠陥が発生することが記載されている。これらの結果から、液晶の配向欠陥の発生を防ぐために必要な最低配向指数Δはプレチルト角に依存しており、3度から70度のプレチルト角において、配向欠陥の発生を防ぐためには少なくとも0.27以上の配向指数Δが必要であると予想される。したがって、アゾベンゼン骨格を感光基として有するポリアミック酸を基板に塗布した後、該ポリアミック酸から成る膜にアルキルアミンを吸着させた後、露光処理を行い、その後焼成する工程は、配向欠陥の発生を防ぐ観点からも非常に有効である。
文献A: K. Sakamoto, K. usami, T. Sasaki, Y. Uehara, and S. Ushioda, Jpn. J.
Appl. Phys. 45, 2705 (2006).
文献B: K. Usami, K. Sakamoto, J. Yokota, Y. Uehara, and S. Ushioda, J. Appl.
Phys. 104, 113528 (2008).